説明

干渉計及びそれを備えた分光装置

【課題】高価な検出器を用いなくとも測定の精度が低下するおそれのない干渉計及びそれを備えた分光装置を提供する。
【解決手段】干渉計2は、光源11と、該光源11からの光を平行光に変換するコリメータ光学系12と、該平行光を透過光Tと反射光Rに分離して偶数個の固定鏡M1、M2に導くとともに、偶数個の固定鏡M1、M2にて互いに逆方向の光路に反射された透過光Tと反射光Rとを合成して出射するビームスプリッタBSと、該ビームスプリッタBSにて合成され出射された光を集光する集光光学系16と、該集光光学系16にて集光された光を受光する検出器17とを備える。ビームスプリッタBSは、ビームスプリッタBSから離間した回転軸Xの回りに回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンパス型の干渉計、及びその干渉計にて得られた干渉縞をフーリエ変換する分光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からフーリエ分光装置として、試料に光を照射し、その試料から反射または透過して得られた干渉縞を測定し、その測定値をフーリエ変換することにより干渉縞に応じたスペクトル情報を取得するものが知られている。このフーリエ分光装置に用いられる干渉計としては,マイケルソン干渉計、コモンパス干渉計などが周知である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された分光装置では四角コモンパス干渉計が用いられている。この四角コモンパス干渉計は三つのミラーとビームスプリッタにて四角形状の光路を形成する。そして、光源としての試料からの光がビームスプリッタによって分離され、分離された二つの光束は四角形状の光路を夫々逆回りして戻りビームスプリッタにて合成される。ここで、一つのミラーを移動させると、二つの合成された光束はずれて二次元型の検出器上に到着し、干渉縞が形成される。この干渉縞を空間的にフーリエ変換し、その空間周波数分布を分析することによって試料のスペクトル分布を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−134217号公報(3頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した先行技術では、検出器に二次元型のセンサを用いなくてはならず、装置が高価なものとなるという不都合があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高価な検出器を用いなくとも測定の精度が低下するおそれのない干渉計及びそれを備えた分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1の発明の干渉計は、光源と、前記光源からの光を平行光に変換するコリメータ光学系と、該平行光を透過光と反射光に分離して偶数個の固定鏡に導くとともに、前記偶数個の固定鏡にて互いに逆方向の光路に反射された透過光と反射光とを合成して出射するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにて合成され出射された光を集光する集光光学系と、前記集光光学系にて集光された光を受光する検出器とを備え、前記ビームスプリッタは、前記ビームスプリッタから離間した回転軸の回りに回転することを特徴としている。
【0008】
また、第2の発明では、上記の干渉計において、前記ビームスプリッタが平行光を分離する面の接線上に前記回転軸が配置されることを特徴とするとしている。
【0009】
また、第3の発明では、上記の干渉計において、前記偶数個の固定鏡が配置される側に前記回転軸が設けられることを特徴としている。
【0010】
また、第4の発明では、上記の干渉計において、前記偶数個の固定鏡は二つのミラーからなり、前記ビームスプリッタとともに三角形状の光路を形成することを特徴としている。
【0011】
また、第5の発明では上記の構成の干渉計を備える分光装置である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、干渉光を生成するためビームスプリッタを回転させて透過光と反射光との光路長差を形成するときに、ビームスプリッタから離間した回転軸の回りでビームスプリッタは回転する。これによって、ビームスプリッタにて合成される透過光と反射光との光軸の平行ずれが低減するために、干渉光を生成する光量の低下が抑えられ、また、透過光と反射光をビームスプリッタにて合成するときに、透過光と反射光とによる所望の光路長差が得られ、測定精度が向上する。また、ポイントセンサ等の検出器を用いることが可能となり装置が安価なものとなる。また、ビームスプリッタの回転機構を小さくすることできるために、装置の小型化が達成される。
【0013】
また、第2の発明によれば、ビームスプリッタが平行光を分離する面(光分離面)の接線上にて、ビームスプリッタが回転するので、ビームスプリッタにて合成される透過光と反射光とによる所望の光路長差を形成するためのビームスプリッタの回転量を更に小さくすることができ、装置が小型化する。
【0014】
また、第3の発明によれば、ビームスプリッタが偶数個の固定鏡を配置する側にて回転するので、ビームスプリッタにて合成される透過光と反射光とによる所望の光路長差を形成したときに、ビームスプリッタにて合成される透過光と反射光との光軸の平行ずれが低減し、干渉光を生成する光量の低下が抑えられる。また、ビームスプリッタを回転させる駆動機構は固定鏡を配置する側に設けることが可能となり、回転軸をビームスプリッタから離間させても装置を小型にすることができる。
【0015】
また、第4の発明によれば、二つのミラーとビームスプリッタにて三角形状の光路を形成するので、簡単な光学系であるにもかかわらず、ビームスプリッタにて合成される透過光と反射光との光軸の平行ずれが更に小さくなる構成となり、干渉光を生成するのに充分な光量が得られる。
【0016】
また、第5の発明によれば、二次元型検出器等の高価な検出器を用いなくとも測定の精度が低下するおそれのない干渉計を備える分光装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態である干渉計を備える分光装置の概略を示す図
【図2】第1実施形態である干渉計に用いられる干渉光学系の光路図
【図3】第2実施形態である干渉計に用いられる干渉光学系の光路図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である干渉計を備える分光装置の概略を示す図である。分光装置1は、フーリエ変換型の分光装置であり、干渉計2と、演算部3と、出力部4とを備える。
【0020】
干渉計2は、三角コモンパス干渉計で構成され、光源11と、コリメータ光学系12と、ビームスプリッタBSと、干渉計2の装置本体に固定された固定鏡M1、M2と、集光光学系16とを備え、更に、検出器17と、駆動機構18とを備えている。尚、図1ではコリメータ光学系12及び集光光学系16を夫々一つのレンズで示しているが、複数のレンズで構成してもよい。また、コリメータ光学系12及び集光光学系16は夫々反射光学系で構成してもよい。
【0021】
光源11は、例えば波長900〜2300nmの帯域の赤外光を出射する。コリメータ光学系12は、光源11からの光を平行光に変換してビームスプリッタBSに導く。ビームスプリッタBSは、光源11から出射された平行光を2つの光に分離して、それぞれの光を固定鏡M1、M2に導くとともに、固定鏡M1、M2にて互いに逆方向の光路に反射された各光を合成して出射する。ビームスプリッタBSはハーフミラーや偏光ビームスプリッタ等で構成されている。
【0022】
具体的には、ビームスプリッタBSは、コリメータ光学系12の光軸に対して、その光分離面(コリメータ光学系12の平行光を分離する面)が45°傾斜して配置される。コリメータ光学系12から出射した平行光は、ビームスプリッタBSにてコリメータ光学系12の光軸に対して直角方向に反射される反射光Rと、ビームスプリッタBSを透過して直進する透過光Tとに分離される。
【0023】
固定鏡M1はビームスプリッタBSにて反射された反射光Rを固定鏡M2に向けて反射させる位置に設けられ、一方、固定鏡M2はビームスプリッタBSを透過した透過光Tを固定鏡M1に向けて反射させる位置に設けられる。固定鏡M1、M2は、ビームスプリッタBSとともに直角二等辺三角形状の光路を形成する。尚、固定鏡M1、M2がビームスプリッタBSとともに形成する光路は上記のものに限らず、三辺の長さが異なる直角三角形状の光路でもよい。
【0024】
従って、ビームスプリッタBSにて分離された反射光Rは、固定鏡M1で反射し次に固定鏡M2で反射し、ビームスプリッタBSに導かれる。一方、ビームスプリッタBSにて分離された透過光Tは、固定鏡M2、次に固定鏡M1で反射するように、反射光Rとは逆向きの光路を進み、ビームスプリッタBSに導かれる。次に、ビームスプリッタBSに導かれた反射光RはビームスプリッタBSで反射し、また、ビームスプリッタBSに導かれた透過光TはビームスプリッタBSを透過して、これらの反射光Rと透過光Tは合成される。尚、ビームスプリッタBSをコリメータ光学系12の光軸に対して光分離面を45°傾斜して配置しているが、ビームスプリッタBSの反射膜の分光特性に応じて、ビームスプリッタBSはコリメータ光学系12の光軸に対して光分離面を30°等の45°以外の角度に傾斜させてもよい。この場合には、固定鏡M1、M2とビームスプリッタBSによって形成される光路は直角三角形状のものではなく、ビームスプリッタBSの光分離面の法線方向に装置を小型にすることができる。
【0025】
駆動機構18は、ビームスプリッタBSにて合成された透過光Tと反射光Rとの光路長差を変化させるようにビームスプリッタBSを回転させるものである。ビームスプリッタBSが回転する回転軸Xは、ビームスプリッタBSの光分離面から離間した位置に設けられ、更に、上記光分離面の接線上に配置されている。駆動機構18は、固定鏡M1、M2が配置される側に配置され、例えば圧電素子によってビームスプリッタBSを支持した支持板が揺動されるように構成される。この揺動によりビームスプリッタBSが回転軸Xの回りに所定の角度範囲で回転する。尚、圧電素子の替わりにVCM(ボイスコイルモータ)を用いてビームスプリッタBSを駆動してもよい。また、例えば静電アクチュエータを用いて駆動機構18を構成してもよい。更に、駆動機構18及び回転軸Xは、固定鏡M1、M2が配置される側に配置されると、干渉計2を小型にすることが可能であるが、ビームスプリッタBSの回転角度を小さく設定する場合には、駆動機構18及び回転軸Xは、ビームスプリッタBSに対して固定鏡M1、M2の反対側に配置するとよい。
【0026】
試料SがビームスプリッタBSと集光光学系16との間に配設され、透過光Tと反射光Rとの合成された光(干渉光)が試料Sに照射される。試料Sを透過した干渉光は集光光学系16にて集光され、ポイントセンサからなる検出器17に入射する。検出器17は、上記干渉光を受光してインターフェログラム(干渉パターン)を検出する。
【0027】
演算部3は、干渉計2の検出器17から出力される信号をA/D変換及びフーリエ変換することにより、各波長(波数(=1/波長))の光の強度を示すスペクトルを生成する。出力部4は、演算部3にて生成されたスペクトルを出力(例えば表示)する。
【0028】
上記の構成において、光源11から出射された光は、コリメータ光学系12によって平行光に変換された後、ビームスプリッタBSによって反射光R及び透過光Tに分離される。この反射光Rは固定鏡M1で反射され、次に固定鏡M2で反射され、ビームスプリッタBSに導かれる。一方、透過光Tは、固定鏡M2、次に固定鏡M1で反射するように、反射光Rとは逆向きの光路を進み、ビームスプリッタBSに導かれる。そして、これらの反射光Rと透過光TはビームスプリッタBSにて合成され、干渉光として試料Sに照射される。このとき、駆動機構18によってビームスプリッタBSを連続的に回転軸Xの回りに回転させながら試料Sに光が照射されるが、ビームスプリッタBSの回転にともない、反射光Rと透過光Tで光路長差がつき、合成された光の強度に変化が生じる。反射光Rと透過光Tとの光路長の差が波長の整数倍のときは、合成された光の強度は最大となり、反射光Rと透過光Tとの光路長の差が波長の整数倍から外れていくと、合成された光の強度は徐々に小さくなる。このような干渉縞を生成した光が試料Sを透過し、試料Sを透過した光は、集光光学系16にて集光されながら検出器17に入射し、検出器17でインターフェログラム(干渉パターン)として検出される。
【0029】
検出器17から出力されるインターフェログラム(干渉パターン)は、演算部3にてA/D変換される。更に、演算部3にてビームスプリッタBSの回転角に応じたインターフェログラム(時間的インターフェログラム)をフーリエ変換することにより、スペクトルが生成される。つまり、波数ごとの光の強度が出力部4に出力され、波数ごとの光の強度に基づき、試料Sの特性(材料、構造、成分量など)を知ることができる。
【0030】
図2は、上記の干渉計2に用いられるビームスプリッタBS、固定鏡M1、M2を有する干渉光学系の光路図であり、コリメータ光学系12から集光光学系16に至るまでの光路を示している。この光路図では、ビームスプリッタBSにて分離された光束において、実線の矢印は反射光Rの光束の進路を示し、一点鎖線の矢印は透過光Tの光束の進路を示す。更に、図2では、ビームスプリッタBSが回転軸Xにて基準位置(透過光Tと反射光Rの光路長差が生じない位置)から反時計回り方向に角度α°回転した状態にある。
【0031】
ビームスプリッタBSが基準位置から回転した状態では、透過光Tは固定鏡M2、次に固定鏡M1で反射してビームスプリッタBSを透過するが、この透過光TはビームスプリッタBSを透過するのみであるので、この透過光Tの光路は、ビームスプリッタBSが基準位置にある場合と同じである。一方、反射光Rは、ビームスプリッタBSで反射するときにビームスプリッタBSに入射した光に対して直角に反射せずに固定鏡M1に導かれ、固定鏡M2、次に固定鏡M1で反射して、更にビームスプリッタBSで反射する。このビームスプリッタBSでの反射においても、反射光Rは、ビームスプリッタBSに入射した光に対して直角に反射せずに透過光Tと合成される。これによって透過光Tと反射光Rとによる光路長差が生じる。この光路長差は、ビームスプリッタBSの回転角度α°に対応し、ビームスプリッタBSの回転角度α°が大きくなると、光路長差は大きくなる。
【0032】
通常、光路長差がある透過光Tと反射光Rとを合成した光はインターフェログラム(干渉パターン)として用いられるので、この光路長差を大きく設定することができると、干渉計の測定精度が向上する。しかし、コモンパス干渉計ではこの光路長差を大きく設定すると、ビームスプリッタBSによって合成するときに透過光Tと反射光Rの各光束の中心(光軸)が平行にずれることになる。透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれが大きくなると、干渉光を生成する光量が低下し、測定精度が低下する。このことは、ビームスプリッタBSへの入射光束の中心位置を回転軸としてビームスプリッタBSを回転させた時に顕著に現れる。
【0033】
そこで、本実施形態のように、ビームスプリッタBSから離間した回転軸Xの回りにビームスプリッタBSが回転すると、所望の光路長差を設定することができるとともに、ビームスプリッタBSにて合成された透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれを低減させることができる。
【0034】
尚、上記第1実施形態では、コリメータ光学系12から集光光学系16に至る光束幅は、ビームスプリッタBSから固定鏡M1までの軸上距離の0.5倍より小さければ、進行する上記の幅の光束が固定鏡M1、M2のエッジにて遮られるのを防ぐことができる。
【0035】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る干渉光学系の光路図を示す。この第2実施形態の干渉光学系は、図1に示す分光装置1に適用することができる。第2実施形態の干渉計では、四つの固定鏡M1〜M4とビームスプリッタBSと、第1実施形態と同様に光源11と、コリメータ光学系12と、集光光学系16と、駆動機構18とを備える。干渉計2及び分光装置1の全体構成、動作は第1実施形態と同じであり、その説明を省略し、図3に示すコリメータ光学系12から集光光学系16に至るまでの光路について説明する。
【0036】
図3に示すように、ビームスプリッタBSにて分離された光束において、実線の矢印は反射光Rの光束の進路を示し、また、一点鎖線の矢印は透過光Tの光束の進路を示し、図3はビームスプリッタBSが回転軸Xにて基準位置(透過光Tと反射光Rの光路長差が生じない位置)から反時計回り方向に角度α°回転した状態にある。
【0037】
ビームスプリッタBSは、コリメータ光学系12(図1参照)の光軸に対してその光分離面が45°傾斜して配置される。コリメータ光学系12から出射した平行光は、ビームスプリッタBSにてコリメータ光学系12の光軸に対して直角方向に反射される反射光Rと、ビームスプリッタBSを透過して直進する透過光Tとに分離される。
【0038】
固定鏡M1はビームスプリッタBSにて反射された反射光Rを直角方向に反射させ、また、固定鏡M4はビームスプリッタBSを透過した透過光Tを直角方向に反射させるように、固定鏡M1、M4はビームスプリッタBSと平行で、且つビームスプリッタBSの光分離面の接線に対して互いに対称に配置される。更に、固定鏡M1からの光が固定鏡M2にて固定鏡M3に導かれ、固定鏡M2からの光が固定鏡M3にて固定鏡M4に導かれる。また、固定鏡M1から固定鏡M2に至る光と、固定鏡M3から固定鏡M4に至る光とが、ビームスプリッタBSの光分離面の接線上で直角に交差するように、固定鏡M2、M3はビームスプリッタBSの光分離面の接線に対して互いに対称に配置される。尚、ビームスプリッタBSをコリメータ光学系12の光軸に対して光分離面を45°傾斜して配置しているが、ビームスプリッタBSの反射膜の分光特性に応じて、ビームスプリッタBSはコリメータ光学系12の光軸に対して光分離面を30°等の45°以外の角度に傾斜させてもよい。
【0039】
このように固定鏡M1〜M4が配置されると、ビームスプリッタBSにて分離された反射光Rは、固定鏡M1で反射した後、順次、固定鏡M2、M3、M4で反射し、ビームスプリッタBSに導かれる。一方、ビームスプリッタBSにて分離された透過光Tは、固定鏡M4で反射した後、反射光Rとは逆向きの光路を進み、順次、固定鏡M3、M2、M1で反射し、ビームスプリッタBSに導かれる。次に、ビームスプリッタBSに導かれた反射光RはビームスプリッタBSで反射し、また、ビームスプリッタBSに導かれた透過光TはビームスプリッタBSを透過して、これらの反射光Rと透過光Tは合成される。
【0040】
そして、駆動機構18(図1参照)にてビームスプリッタBSが基準位置(透過光Tと反射光Rの光路長差が生じない位置)から回転させられた状態では、透過光TはビームスプリッタBSを透過するのみであるので、この透過光Tの光路は、ビームスプリッタBSが基準位置にある場合と同じである。一方、反射光Rは、ビームスプリッタBSで反射するときにビームスプリッタBSに入射した光に対して直角に反射せずに固定鏡M1に導かれ、その後順次、固定鏡M2〜M4で反射して、更にビームスプリッタBSで反射する。このビームスプリッタBSでの反射においても、反射光Rは、ビームスプリッタBSに入射した光に対して直角に反射せずに透過光Tと合成される。これによって、透過光Tと反射光Rとによる光路長差が生じる。この光路長差は、ビームスプリッタBSの回転角度α°に対応し、ビームスプリッタBSの回転角度α°が大きくなると、光路長差は大きくなる。
【0041】
この光路長差はインターフェログラム(干渉パターン)として用いられるが、本実施形態のように、ビームスプリッタBSから離間した回転軸Xの回りにビームスプリッタBSが回転すると、所望の光路長差を設定することができるとともに、ビームスプリッタBSにて合成された透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれを低減させることができる。
【0042】
尚、上記第2実施形態では、コリメータ光学系12から集光光学系16に至る光束幅は、ビームスプリッタBSから固定鏡M1までの軸上距離の等倍以下であれば、進行する上記の幅の光束が固定鏡M1〜M4のエッジにて遮られるのを防ぐことができる。
【0043】
上記第1及び第2実施形態によれば、干渉計2は、光源11と、該光源11からの光を平行光に変換するコリメータ光学系12と、該平行光を透過光Tと反射光Rに分離して偶数個の固定鏡M1、M2(または、M1〜M4)に導くとともに、偶数個の固定鏡M1、M2(または、M1〜M4)にて互いに逆方向の光路に反射された透過光Tと反射光Rとを合成して出射するビームスプリッタBSと、該ビームスプリッタBSにて合成され出射された光を集光する集光光学系16と、該集光光学系16にて集光された光を受光する検出器17とを備える。ビームスプリッタBSは、ビームスプリッタBSから離間した回転軸Xの回りに回転する。
【0044】
この構成によると、干渉光を生成するためビームスプリッタBSを回転させて透過光Tと反射光Rとの光路長差を形成するときに、ビームスプリッタBSから離間した回転軸Xの回りでビームスプリッタBSは回転する。これによって、ビームスプリッタBSにて合成される透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれが低減するために、干渉光を生成する光量の低下が抑えられる。また、透過光Tと反射光RをビームスプリッタBSにて合成するときに、透過光Tと反射光Rとによる所望の光路長差が得られ、測定精度が向上する。また、偶数個(二つまたは四つ)の固定鏡M1、M2(M1〜M4)によってコモンパス干渉計を構成することによって、時間的インターフェログラムをフーリエ変換することが可能となり、ポイントセンサ等の検出器17を用いて装置を安価なものとすることができる。更に、ビームスプリッタBSを回転させる駆動機構18を小さくすることができるために、装置の小型化が達成される。
【0045】
また、上記第1及び第2実施形態によれば、ビームスプリッタBSの光分離面の接線上にビームスプリッタBSの回転軸Xが配置される。これによって、ビームスプリッタBSにて合成される透過光Tと反射光Rとによる所望の光路長差を形成するためのビームスプリッタBSの回転量を更に小さくすることができ、装置が小型化する。
【0046】
また、上記第1及び第2実施形態によれば、固定鏡M1、M2(M1〜M4)が配置される側にビームスプリッタBSの回転軸Xが設けられる。これによって、ビームスプリッタBSにて合成される透過光Tと反射光Rとによる所望の光路長差を形成したときに、ビームスプリッタBSにて合成される透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれが低減し、干渉光を生成する光量の低下が抑えられる。また、ビームスプリッタBSの駆動機構18は固定鏡M1、M2(M1〜M4)を配置する側に設けることが可能となり、回転軸XをビームスプリッタBSから離間させても装置を小型にすることができる。
【0047】
また、上記第1実施形態によれば、二つの固定鏡(ミラー)M1、M2はビームスプリッタBSとともに三角形状の光路を形成する。これによって、簡単な光学系であるにもかかわらず、ビームスプリッタBSにて合成された透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれが更に小さくなる構成となり、干渉光を生成するのに充分な光量が得られる。
【0048】
尚、上記第1実施形態では固定鏡を二つ設け、第2実施形態では固定鏡を四つ設けた構成を示したが、本発明では、固定鏡が偶数個であるのならば上記の固定鏡の数に限られることはない。固定鏡の数を増やすと、装置構成の自由度が増し、部品が配置し易くなくなる。
【0049】
また、上記第1及び第2実施形態では、ビームスプリッタBSの回転軸Xを固定鏡M1、M2(M1〜M4)を配置する側に設ける構成を示したが、本発明はこれに限らず、ビームスプリッタBSの回転軸Xは、ビームスプリッタBSに対して固定鏡M1、M2(M1〜M4)の反対側に配置する構成にしてもよい。この場合は、ビームスプリッタBSの回転角度を小さくすることができ、圧電素子等の駆動機構18の構成が簡単なものとなる。
【0050】
また、上記実第1及び第2施形態では、ビームスプリッタBSの光分離面の接線上にビームスプリッタBSの回転軸Xを配置する構成を示したが、本発明はこれに限らず、ビームスプリッタBSの回転軸XはビームスプリッタBSの光分離面の接線上から外れる位置に設けても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【実施例】
【0051】
次に本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明する。実施例1、2は、夫々図2、3の干渉光学系に対応した数値実施例であり、そのコンストラクションデータは以下の通りである。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
以下のコンストラクションデータにおいて、Si(i=1、2、・・・)は物体側から数えてi番目の面を指す。また、RDYは面Siの曲率半径(mm)を指し、THIはSi面とS(i+1)面との間の軸上面間隔(mm)を指す。RMDは面の特性を指し、REFLであれば反射面を、表記がない場合は屈折面を指す。GLAはガラス名を指し、表記がない場合は空気であることを指す。また、XDEはX方向の平行偏芯、YDEはY方向の平行偏芯、ZDEはZ方向の平行偏芯の各量(mm)をそれぞれ指し、ADEはX軸周りの回転、BDEはY軸周りの回転、CDEはZ軸周りの回転の角度(°)をそれぞれ指す。GLB GiはSi面を基準とするグローバル偏芯(表記がなければローカルな偏芯)であることを指す。尚、X軸は図2、図3の紙面の表裏面方向、Y軸は光の進行方向、Z軸は光の進行方向に対して垂直な方向である。
【0053】
(実施例1)
下記に示す実施例1のコンストラクションデータおいて、OBJは物体面(光源11)、S1はダミー面、S2は仮想絞り面、S3はダミー面、S4はビームスプリッタBSの光入射面、S5は固定鏡M1の反射面、S6はダミー面、S7は固定鏡M2の反射面、S8はビームスプリッタBSの光射出面、S9は集光光学系16の入射面、IMGは像面をそれぞれ指す。
【0054】
RDY THI RMD GLA
OBJ: INFINITY INFINITY
S1: INFINITY 0.000000
S2: INFINITY 0.000000
S3: INFINITY 0.000000
S4: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: -20.000000 ZDE: 20.000000 GLB G3
ADE: 45.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S5: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: -20.000000 ZDE: 0.000000 GLB G3
ADE: 67.500000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S6: INFINITY 0.000000
XDE: 0.000000 YDE: -10.000000 ZDE: 10.000000 GLB G3
ADE: 45.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S7: INFINITY -2.500000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: 0.000000 ZDE: 20.000000 GLB G3
ADE: 22.500000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S8: INFINITY 2.500000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: 0.000000 ZDE: 0.000000 GLB G4
ADE: 0.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S9: INFINITY 5.000000
XDE: 0.000000 YDE: 5.000000 ZDE: 0.000000 GLB G3
ADE: 90.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
IMG: INFINITY 0.000000
【0055】
上記の構成において、ビームスプリッタBSから離間した位置でビームスプリッタBSを回転させた場合の、透過光Tと反射光Rの光路長差Lと、透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれCとを表1に示す。また表1には、ビームスプリッタBSへの入射光束の中心位置でビームスプリッタBSを回転させた場合を比較例として示した。尚、表1において、回転中心Y、Z(回転軸X)はビームスプリッタBSへの入射光束の中心位置(原点)からの位置である。実施例1A、1Bの回転中心Y、Zは、前記の中心位置(原点)に対して図2の右下側でビームスプリッタBSの光分離面の接線上に位置し、また、実施例1Cの回転中心Y、Zは、前記の中心位置(原点)に対して図2の左上側でビームスプリッタBSの光分離面の接線上に位置することになる。また、BSX軸回転θは、ビームスプリッタBSの回転中心Y、Z(回転軸X)回りの回転角である。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の実施例1Aでは、光路長差Lが比較例1と略同じになるようにビームスプリッタBSを回転させているが、この場合には、光軸ずれCは比較例1に対して大幅に小さくなり、干渉光を生成する光量の低下が抑えられる。
【0058】
実施例1Bでは、光軸ずれCが比較例1と略同じになるようにビームスプリッタBSを回転させているが、この場合には、光路長差Lは比較例1に対して大幅に大きくなり、測定精度が向上する。
【0059】
実施例1Cでは、光路長差Lが比較例1と略同じになるように設定しているが、この場合には、ビームスプリッタBSの回転角が比較例1に対して小さくなり、圧電素子等の駆動機構18の構成が簡単なものとなる。
【0060】
(実施例2)
次に、下記に示す実施例2のコンストラクションデータおいて、OBJは物体面(光源11)、S1はダミー面、S2は仮想絞り面、S3はダミー面、S4はビームスプリッタBSの光入射面、S5は固定鏡M1の反射面、S6は固定鏡M2の反射面、S7は固定鏡M3の反射面、S8は固定鏡M4の反射面、S9はビームスプリッタBSの光射出面、S10は集光光学系16の入射面、IMGは像面をそれぞれ指す。
【0061】
RDY THI RMD GLA
OBJ: INFINITY INFINITY
S1: INFINITY 0.000000
S2: INFINITY 0.000000
S3: INFINITY 0.000000
S4: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: -20.000000 ZDE: 20.000000 GLB G3
ADE: 45.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S5: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: -10.000000 ZDE: 0.000000 GLB G3
ADE: 45.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S6: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: -10.000000 ZDE: 20.000000 GLB G3
ADE: 22.500000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S7: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: -20.000000 ZDE: 10.000000 GLB G3
ADE: 67.500000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S8: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: 0.000000 ZDE: 10.000000 GLB G3
ADE: 45.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S9: INFINITY 0.000000 REFL
XDE: 0.000000 YDE: 0.000000 ZDE: 0.000000 GLB G4
ADE: 0.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
S10: INFINITY 2.500000
XDE: 0.000000 YDE: 0.000000 ZDE: 0.000000 GLB G3
ADE: 90.000000 BDE: 0.000000 CDE: 0.000000
IMG: INFINITY 0.000000
【0062】
上記の構成において、上記の構成において、ビームスプリッタBSから離間した位置でビームスプリッタBSを回転させた場合の、透過光Tと反射光Rの光路長差Lと、透過光Tと反射光Rとの光軸の平行ずれCとを表2に示す。また表2には、ビームスプリッタBSへの入射光束の中心位置でビームスプリッタBSを回転させた場合を比較例として示した。尚、表2の回転中心Y、Z及びBSX軸回転θの定義は表1での説明と同じである。
【0063】
【表2】

【0064】
表2の実施例2Aでは、光路長差Lが比較例2と略同じになるようにビームスプリッタBSを回転させているが、この場合には、光軸ずれCは比較例2に対して小さくなり、干渉光を生成する光量の低下を抑えられる。
【0065】
実施例2Bでは、光軸ずれCが比較例2と略同じになるようにビームスプリッタBSを回転させているが、この場合には、光路長差Lは比較例2に対して大きくなり、測定精度が向上する。
【0066】
実施例2Cでは、光路長差Lが比較例2と略同じになるように設定しているが、この場合には、ビームスプリッタBSの回転角が比較例2に対して小さくなり、圧電素子等の駆動機構18の構成が簡単なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、コモンパス型の干渉計、及びその干渉計にて得られた干渉縞をフーリエ変換する分光装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 分光装置
2 干渉計
3 演算部
4 出力部
11 光源
12 コリメータ光学系
16 集光光学系
17 検出器
18 駆動機構
BS ビームスプリッタ
M1〜M4 固定鏡(ミラー)
R 反射光
S 試料
T 透過光
X 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を平行光に変換するコリメータ光学系と、該平行光を透過光と反射光に分離して偶数個の固定鏡に導くとともに、前記偶数個の固定鏡にて互いに逆方向の光路に反射された透過光と反射光とを合成して出射するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにて合成され出射された光を集光する集光光学系と、前記集光光学系にて集光された光を受光する検出器とを備え、
前記ビームスプリッタは、前記ビームスプリッタから離間した回転軸の回りに回転することを特徴とする干渉計。
【請求項2】
前記ビームスプリッタが平行光を分離する面の接線上に前記回転軸が配置されることを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
前記偶数個の固定鏡が配置される側に前記回転軸が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の干渉計。
【請求項4】
前記偶数個の固定鏡は二つのミラーからなり、前記ビームスプリッタとともに三角形状の光路を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の干渉計。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の干渉計を備える分光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−237326(P2011−237326A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110171(P2010−110171)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】