説明

干渉顔料の混合物

本発明は、干渉顔料の混合物に関する。前記混合物は、基質と金属鉄を含む被膜とを備える少なくとも1種の干渉顔料(A)と、基質と金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含む被膜とを備える干渉顔料(B)と、を含む。本発明は、化粧品、ラッカー、ペイント、プラスチック材料、フィルム、印刷セキュリティ書類、書類および身元証明書におけるセキュリティ特色で、種子の染色、食品の着色、レーザーマーキングのために、または薬剤のコーティング、ならびに顔料調製物および乾燥調製物の製造にそれらを使用することにも関し、本発明の混合物を含む化粧品、ラッカー、ペイント、プラスチック材料、フィルム、書類および身元証明書、種子もしくは食品、または薬剤のコーティング、顔料調製物および乾燥調製物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質と金属鉄を含むコーティングとを備える少なくとも1種の干渉顔料Aと、基質と金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングとを備える干渉顔料Bと、を含む、干渉顔料の混合物に関し、化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、セキュリティ印刷で、書類および身元証明書におけるセキュリティ特色で、種子の着色、食品の着色、レーザーマーキングへの、または薬剤のコーティングで、ならびに顔料組成物および乾燥製剤の調製のためのこれらの使用に関し、本発明による混合物を含む化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、書類および身元証明書、種子、食品、または薬剤のコーティング、顔料組成物および乾燥製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉顔料の混合物は、当業者に既知であり、例えば自動車の仕上げ部門における様々な表面塗装用配合物の中に見られる。
【0003】
特に、干渉顔料が例えば雲母、SiO2またはAl23などの半透明または透明基質をベースにしている場合は、干渉顔料およびそれと共にこれらの顔料の混合物も、多くの場合、表面塗装用途における所望の隠ぺい力を示さない。十分な隠ぺい力を確保するために、通常、カーボンブラックを顔料混合物に加える。しかしながら、カーボンブラックの添加は、その非常に強力な隠ぺい力のせいで、カーボンブラックを計量して加えることに困難を伴わざるを得ないという欠点を有する。ほんのわずかな過剰添加が隠ぺい力の非常に大幅な増大をもたらし、このことは言い換えると、所望の色彩印象を達成するために、表面コーティングが施される基材の意図的な設計上の混合(incorporation)を、完全に不可能ではないにしても、はるかに困難にすることになる。従って、施される表面コーティングに対して事前に指定される隠ぺい力を調節し、確立することに困難を伴わざるを得ない。
【発明の開示】
【0004】
ゆえに目的は、特に表面塗装用途のために、事前に指定される隠ぺい力の確立を可能にし、同時に魅力的な光学効果を示す混合物を提供することであった。
【0005】
この目的は、本発明の混合物により達成される。よって本発明は、混合物が基質と金属鉄を含むコーティングとを備える少なくとも1種の干渉顔料Aと、基質と金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングとを備える干渉顔料Bと、を含む、干渉顔料の混合物に関する。
【0006】
本発明による混合物は、例えば表面コーティングの隠ぺい力を適切に調節することができ、すなわち所望の光学効果をより簡単にかつ精密に確立することができ、または基質を含めるだけ、例えば基質もしくはあらかじめ施される被覆層に色彩印象を与えることだけで、所望の光学効果を達成することさえできることにより、際立っている。加えて、驚いたことに、本発明による混合物が、カーボンブラックを含む混合物と比較して、特に隠ぺい力の良好な角度依存性を有することがわかってきた。従って、本発明の混合物で被覆された表面を浅い角度から見ることで、より急な角度から見るよりもより際立った透明性が認められる。とりわけ例えば自動車部門で使用されるような3回塗り仕上げの場合、これは特に魅力的な効果をもたらす。さらに、本発明による混合物は、塗布システム中に所望の効果を補うために、それらがカーボンブラックなしで、または従来の応用と比較して非常に少量のカーボンブラックの添加で完全に成し遂げることにより際立っている。カーボンブラックの添加は、常に干渉顔料の光沢の損失と関係があるので、同時に高隠ぺい力を有する高光沢色彩効果は、本発明による混合物で達成することができる。
【0007】
上述の利点により、本発明の顔料混合物は、様々な分野で使用することができる。それゆえに本発明は、化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、セキュリティ印刷で、書類および身元証明書におけるセキュリティ特色で、種子の着色、食品の着色、レーザーマーキングのために、または薬剤のコーティングで、ならびに顔料組成物および乾燥製剤の調製のために顔料混合物を使用することにも関し、本発明による顔料混合物を含む化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、書類および身元証明書、種子、食品、または薬剤のコーティング、顔料組成物および乾燥製剤にも関する。
【0008】
本発明による顔料混合物においては、上述の効果を達成するために、基質と金属鉄を含むコーティングとを含む干渉顔料と、基質と金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングとを含む干渉顔料と、を互いに配合する。干渉顔料Aの干渉顔料Bに対する比は、具体的な要求に合わせることができ、通常99:1〜1:99である。干渉顔料Aの干渉顔料Bに対する比は、好ましくは10:1〜0.5:1である。達成される塗布特性に応じて、これらの好ましい混合物は、光沢、隠ぺい力および隠ぺい力の角度依存性に関し最適になるので、特に有利である。
【0009】
原則として、干渉顔料AおよびBは、考えられるすべての形状を有することができるが、好ましくはフレーク状である。干渉顔料のサイズは、それ自体重要ではない。一般にフレーク状干渉顔料AおよびBは、0.05〜5μm、特に0.1〜4.5μmの厚さを有する。干渉顔料の長さと幅のサイズは、1〜250μmでよく、好ましくは2〜200μmの範囲であり、非常に特に好ましくは2〜100μmの範囲である。基質のサイズは、具体的な用途の要求に合わせることができる。
【0010】
干渉顔料Aは、基質と金属鉄を含むコーティングとを含む干渉顔料である。混合物で使用される干渉顔料Bは、基質と金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングとを含む。
【0011】
干渉顔料AおよびBの基質は、互いに独立していて、合成物もしくは天然雲母、フィロケイ酸塩、ガラス、ホウケイ酸塩、SiO2、Al23、TiO2、黒鉛および/またはBiOClを含んでもよい。これは、干渉顔料AおよびBが異なる基質をベースとすることができることを意味している。
【0012】
本発明のさらなる実施形態においては、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および/またはこれらの混合物を含む1層または複数の層が、本発明による混合物に使用される干渉顔料AおよびB中における金属鉄を含むコーティングと基質の間に、および/または金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングと基質の間に存在してもよい。
【0013】
金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物もしくは金属酸窒化物の層、またはこれらの混合物は、低屈折率(屈折率<1.8)または高屈折率(屈折率≧1.8)でもよい。適当な金属酸化物および金属酸化物水和物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化鉄、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化チタン、とりわけ二酸化チタン、酸化チタン水和物、および例えばイルメナイト、または擬板チタン石などのこれらの混合物などの層として施されるすべての金属酸化物または金属酸化物水和物である。使用することができる金属亜酸化物は、例えば亜酸化チタンである。適当な金属は、例えば鉄、クロム、アルミニウム、ニッケル、銀、金、チタン、銅または合金であり、適当な金属フッ化物は、例えばフッ化マグネシウムである。使用することができる金属窒化物または金属酸窒化物は、例えば金属チタン、ジルコニウムおよび/またはタンタルの窒化物または酸窒化物である。金属酸化物、金属、金属フッ化物および/または金属酸化物水和物の層、ならびに非常に特に好ましく金属酸化物および/または金属酸化物水和物の層は、好んで基質に施される。高屈折率および低屈折率の金属酸化物、金属酸化物水和物、金属または金属フッ化物の層を備える多層構造は存在してもよく、高屈折率の層と低屈折率の層が交互に存在することが好ましい。
【0014】
適当な高屈折率の材料は、具体的に例えばTiO2、ZrO2、ZnO、SnO2および/またはこれらの混合物である。TiO2は、特に好ましい。これらの層の厚さは、いずれの場合も約3〜300nmであり、好ましくは20〜200nmである。
【0015】
適当な低屈折率の材料は、具体的に例えばSiO2、SiO(OH)2、Al23、AlO(OH)、B23、MgF2および/またはこれらの混合物である。SiO2は、特に好ましい。これらの材料による個々の層の厚さは、3〜300nmであり、好ましくは20nmを超えて、200nmまでの厚さである。
【0016】
全体的に、干渉顔料AおよびBの半透明性が維持されるように、追加の層の材料を選択し、かつ層材料に応じて層の厚さを調節するべきである。
【0017】
干渉顔料Aでは、前記基質は外側の光学活性層としての機能を果たす金属鉄を含む鉄含有コーティングを備えている。鉄含有コーティングの層の厚さは、1〜300nmであり、好ましくは1〜100nmである。鉄含有コーティング中の金属鉄の割合は、鉄含有コーティングに対し10〜100重量%であり、好ましくは30〜99重量%であり、特に60〜85重量%である。金属鉄は、鉄含有コーティング中にFeOおよび/またはFe34との組合せで存在するのが非常に特に好ましい。加えて、さらに単純または複雑な金属酸化物、例えばTiO2、イルメナイトまたは擬板チタン石も、鉄含有コーティング中に存在してもよい。この種類の顔料は、酸化鉄含有コーティングで被覆された基質が、窒素および水素を含む還元ガス混合物中で金属鉄の生成を伴う反応をすることにより得ることができる。これは金属鉄を含む鉄含有コーティングの供給を可能にする。
【0018】
干渉顔料Bでは、前記基質は金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングを備えていて、コーティングが外側の光学活性層としての機能を果たす。金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングの層の厚さは、1〜300nmであり、好ましくは1〜100nmである。コーティング中の金属スズの割合は、コーティングに対し0.01〜50重量%であり、好ましくは0.05〜20重量%であり、特に0.1〜10重量%である。追加の少なくとも1種の金属酸化物として適当なのは、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛である。
【0019】
金属スズは、追加の金属酸化物としての酸化チタンとの組合せでコーティング中に存在するのが非常に特に好ましい。加えて、さらに単純なまたは複雑な金属酸化物、例えばイルメナイトまたは擬板チタン石も、スズ含有コーティング中に存在してもよい。
【0020】
この種類の顔料は、二酸化スズに加えて任意に少なくとも1種のさらなる金属酸化物を含むコーティングで被覆された基質が、窒素および水素を含む還元ガス混合物中で金属スズの生成を伴う反応をすることにより得ることができる。これは金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングの供給を可能にする。
【0021】
干渉顔料AおよびBの調製のために使用する窒素および水素を含む還元ガス混合物は、2.5〜25体積%、特に4〜10体積%、および非常に特に好ましくは5〜8体積%の範囲の水素割合を有している。
【0022】
酸化鉄含有コーティングまたは二酸化スズに加えて任意に少なくとも1種のさらなる金属酸化物を含むコーティングの還元は、400〜1200℃、好ましくは500〜1000℃、および特に好ましくは550〜900℃の温度で実施する。焼成継続期間は、15〜240分であり、好ましくは30〜120分であり、特に30〜90分である。
【0023】
本発明のさらなる実施形態においては、干渉顔料AおよびBは外層として追加の有機コーティングをさらに備えることができる。この種類のコーティングの例は、例えば、欧州特許第0632109号、米国特許第5759255号、独国特許第4317019号、独国特許第3929423号、独国特許第3235017号、欧州特許第0492223号、欧州特許第0342533号、欧州特許第0268918号、欧州特許第0141174号、欧州特許第0764191号、国際公開第98/13426号、または欧州特許第0465805号に見られ、これにより、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込んだものとする。
【0024】
すでに述べた改良された光学特性と並んで、例えばオルガノシランまたは有機チタン酸塩または有機ジルコン酸塩を含むこの有機コーティングを備える干渉顔料は、さらに例えば湿気および光などの気候の影響に対して増大した安定性を示すが、これはとりわけ工業用コーティングおよび自動車産業部門において特別の関心事である。有機コーティングを施す工程のステップは、顔料を調製するステップの後、またはそれらから独立して、直ちに実施することができる。ここで施される物質は、顔料全体の0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の重量比率で含まれるに過ぎない。
【0025】
本発明による顔料混合物は、干渉顔料AとBの混合により調製し、この混合は当業者に既知のすべての方法で、塗布システムの中に例えば単純な撹拌によって実施することができる。顔料の複雑な粉砕および分散を必要としない。
【0026】
これらの有利な特性により、本発明による顔料混合物は、幅広い範囲の用途に適している。それによって、本発明は、化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、セキュリティ印刷で、書類および身元証明書におけるセキュリティ特色で、種子の着色、食品の着色、レーザーマーキングのために、または薬剤のコーティングならびに顔料組成物および乾燥製剤の調製のために、本発明による顔料混合物を使用することにも関する。
【0027】
化粧品の場合には、本発明による顔料混合物は、例えばマニキュア、カラーパウダー、口紅またはアイシャドーなどの装飾用化粧品の製品に特に適している。本発明の顔料混合物は、もちろん配合物中ですべての種類の化粧品原料および助剤と配合することもできる。これらに含まれるものは、とりわけ、油、脂肪、ワックス、皮膜形成剤、保存料、ならびに塗布特性を一般に決定する助剤、例えば増粘剤およびレオロジー添加剤例えばベントナイト、ヘクトライト、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ゼラチン、高分子量炭水化物、および/または表面活性助剤等々などである。本発明による顔料混合物を含む配合物は、親油性、親水性または疎水性タイプに属すことができる。不連続の水相および非水相を有する不均一な配合物では、本発明による粒子は、各場合で2相のうち一方にのみ存在してもよく、または両相にわたり分布していてもよい。
【0028】
水性配合物のpH値は、1〜14であってよく、好ましくは2〜11であり、特に好ましくは5〜8であるとよい。配合物中の本発明による顔料混合物濃度は、限定されない。それらは用途に応じて、0.001%(洗い流す製品、例えばシャワー用ジェル)〜99%(例えば特殊用途のための光沢効果用品)であってよい。本発明による顔料混合物は、さらに化粧用活性化合物と混合することもできる。適当な活性化合物は、例えば、防虫剤、UV A/BC防護フィルター(例えばOMC、B3、MBC)、老化防止活性化合物、ビタミンおよびその誘導体(例えばビタミンA、C、E等々)、セルフタンニング剤(例えばとりわけDHA、エリトルロース)、ならびに例えばビサボロール、LPO、エクトイン、エンブリカ、アラントイン、ビオフラボノイドおよびこれらの誘導体などのさらなる化粧用活性化合物である。
【0029】
顔料混合物を表面コーティングおよびインクにおいて使用する場合には、当業者に既知のすべての領域で応用が可能であり、例えば、粉末コーティング、自動車用ペイント、印刷用インクとしてグラビア、オフセット、スクリーン、またはフレキソ印刷用のもの、および屋外用途における表面コーティングなどが可能である。本発明における表面コーティングおよびインクは、例えば放射線硬化、物理的乾燥または化学的硬化であってよい。印刷用インクまたは液状コーティング剤を調製するためには、例えばアクリレート、メタクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド、ポリビニルブチラート、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、デンプン、もしくはポリビニルアルコール、アミノ樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニルまたはこれらの混合物をベースとする多種類のバインダーが、特に水溶性グレードのものが適している。表面コーティングは、粉末コーティングまたは水もしくは溶剤ベースのコーティングであってもよく、コーティング成分の選択は、当業者の通常の知識に従う。粉末コーティングのための一般的な高分子バインダーは、例えばポリエステル、エポキシド、ポリウレタン、アクリレートまたはこれらの混合物である。
【0030】
原則として、本発明による顔料混合物は、配合物にあらゆる種類の他の着色剤または充填剤との組合せで使用することもできる。
【0031】
加えて、本発明の顔料混合物は、フィルムおよびプラスチック、例えば農業用シート、ギフト用ホイル、プラスチック容器ならびに当業者に既知のすべての用途のための成形品を着色するために使用できる。本発明による顔料混合物を混入するのに適したプラスチックは、すべての一般的なプラスチック、例えば熱硬化性または熱可塑性プラスチックである。可能な応用ならびに使用することができるプラスチック、加工方法および添加剤は、例えばRD472005またはR.Glausch、M.Kieser、R.Maisch、G.Pfaff、J.Weitzel、Perlglanzpigmente「Pearlescent Pigments」、Curt R.Vincentz Verlag、1996、83ff.に提示されており、その開示内容は、これにより本明細書中に組み込んだものとする。
【0032】
加えて、本発明による顔料混合物は、例えば偽造防止カードならびに身元証明書(例えば入場券、個人身分証明書、銀行券、小切手および小切手保証カードなどの)、ならびにその他の偽造防止書類のためにセキュリティ印刷およびセキュリティ関連の特色で使用するのにも適している。農業部門では、顔料混合物は種子および他の出発材料の着色に、加えて食品部門では食品の着色に使用することができる。また本発明による顔料混合物は、例えば錠剤または糖衣錠などの薬剤における着色コーティングに使用することができる。
【0033】
例えば、Ullmann、第15巻、457頁以下、Verlag VCHに記載されているような既知のすべての熱可塑性プラスチックは、本発明による混合物を用いるレーザーマーキングに使用することができる。適当なプラスチックは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル−エステル、ポリエーテル−エステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンならびにこれらのコポリマーおよび/または混合物である。
【0034】
本発明による混合物は、プラスチック顆粒と混合物を混合し、その後加熱作用の下で成形することにより、熱可塑性プラスチックの中に混入する。混合物を混入している間に、当業者に既知の接着剤、ポリマー相溶性有機溶媒、安定剤および/または界面活性剤で稼働状態下に温度安定性があるものを、プラスチック顆粒に加えることができる。一般に着色プラスチック顆粒は、初めにプラスチック顆粒を適当な混合機の中に導入し、それらをすべての添加剤で湿潤し、その後、本発明による混合物に加えて、混合することによって製造する。その後、この方法で得られた混合物は、押出機または射出成型機の中で直接加工処理することができる。続いて、マーキングは適当な放射線を使用して実施する。
【0035】
マーキングの間、使用される好ましい高エネルギー放射線は、一般に157〜10,600nmの波長範囲であり、特に300〜10,600nmの範囲である。本明細書では例として、CO2レーザー(10,600nm)、Nd:YAGレーザー(1064nmもしくは532nm)または紫外パルスレーザー(エキシマレーザー)を挙げることができる。エキシマレーザーは以下の波長を有する:F2エキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、XeFエキシマレーザー(351nm)、355nm(周波数−3倍)または265nm(周波数−4倍)の波長を有する周波数−複数倍Nd:YAGレーザー。特に好ましいのは、Nd:YAGレーザー(1064nmまたは532nm)およびCO2レーザーの使用である。使用するレーザーのエネルギー密度は、一般に0.3mJ/cm2〜50J/cm2の範囲であり、好ましくは0.3mJ/cm2〜10J/cm2である。
【0036】
レーザー刻印は、試料をパルスレーザー、好ましくはCO2レーザーまたはNd:YAGレーザーの光路上に導入することによって実施する。さらにエキシマレーザーを使用し、例えばマスク技術を用いることで刻印が可能である。しかし、使用するレーザー光吸収物質が高い吸収率を示す範囲の波長を有するものであれば、従来のタイプの他のレーザーを使用して、所望の結果を達成することもできる。得られるマーキングは、照射時間(またはパルスレーザーではパルス数)およびレーザーの照射パワーならびに使用するプラスチック系または表面塗装系により決定される。使用するレーザーのパワーは、具体的な用途に応じて、当業者であればそれぞれ個々の場合について容易に決定することができる。
【0037】
パルスレーザーの使用においては、パルス周波数は一般に1〜30kHzの範囲である。本発明による方法で使用できるふさわしいレーザーは、市販されている。
【0038】
本発明による混合物は、上述のすべてのプラスチックにレーザーマーキングするために使用できる。このように着色したプラスチックは、電気、電子および自動車産業で成型品として使用することができる。レーザー刻印のさらに重要な利用分野は、身分証明書および動物の個体標識用プラスチックマークである。本出願におけるレーザーマーキングの場合、プラスチック中の干渉顔料の割合は、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.05〜5重量%であり、特に0.1〜3重量%である。本発明による顔料で着色されたプラスチックからなる包装材、電線、キーキャップ、装飾用ストリップ、ならびに加熱、換気および冷却領域での機能性部品、またはスイッチ、プラグ、レバーおよびハンドルへのラベル貼付や刻印は、レーザー光を用いてようやく届くような場所でも実施することができる。このマーキングは、耐摩耗性および耐擦過性を有し、次の滅菌プロセスに耐えるものであって、マーキングプロセスでも衛生的に清潔な方法で実施できることにより際立っている。
【0039】
上述の利用分野において、本発明による顔料混合物は、同様に既知のすべての有機または無機染料および/もしくは顔料とブレンドして使用するのに適している。有機顔料および染料は、例えばモノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、多環式顔料、カチオン性、アニオン性または非イオン性染料である。無機染料および顔料は、例えば白色顔料、有色顔料、黒色顔料または効果顔料である。適当な効果顔料の例は、金属−効果顔料、真珠光沢顔料、または干渉顔料であり、一般に雲母、ガラス、Al23、Fe23、SiO2等々をベースにした単層または多層被覆フレークをベースにしている。前記顔料の構造および特性の例は、例えばRD471001またはRD472005に提示されていて、これにより、その開示内容を、参照により本発明に組み込んだものとする。加えて、本発明による混合物とブレンドするのに適したさらなる着色剤は、発光染料および/もしくは顔料ならびにホログラフィック顔料またはLCP(液晶高分子)である。本発明による顔料混合物は、市販の顔料および充填剤といかなる比でも混合することができる。
【0040】
名を挙げることができる充填剤は、例えば天然および合成雲母、ナイロン粉末、純粋もしくは充填剤入りメラミン樹脂、タルク、ガラス、カオリンに、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の酸化物もしくは水酸化物、BiOCl、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素、およびこれらの物質の物理的または化学的組合せである。充填剤の粒子形状に関する制限はない。充填剤は要求に合わせて、例えばフレーク状、球形または針状でもよい。
【0041】
さらに本発明による顔料混合物は、1種または複数種の本発明による粒子、バインダーおよび任意に1種または複数種の添加剤を含む流動性顔料組成物および乾燥製剤の調製に適している。乾燥調製物とは0〜8重量%、好ましくは2〜8重量%、特に3〜6重量%、の水および/または溶媒もしくは混合溶媒を含む調製物を意味しているともする。乾燥調製物は、好ましくはペレット、顆粒、チップ、ソーセージ、または豆炭の形状であり、0.2〜80mmの粒径を有する。乾燥調製物は、特に印刷用インクの調製および化粧品配合物に使用される。
【0042】
本発明は同様に、本発明による顔料混合物を含む化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、書類および身元証明書、種子、食品または薬剤のコーティング、顔料組成物および乾燥製剤に関する。
【0043】
次の実施例は、本発明をさらに詳細に説明することを意図するもので、本発明を限定するものではない。
実施例
a)干渉顔料Aの調製
粒径10〜60μmの雲母100gを、脱塩水1.9l中で撹拌しながら75℃に加熱する。
【0044】
懸濁液のpHを、10%塩酸を使用して3.0に調整する。その後30%FeCl3溶液200gを計量して加え、この間、pHは32%水酸化ナトリウム溶液を同時に滴下して加えることにより一定に保つ。生成物をろ過して、洗浄し、乾燥し、さらに窒素および水素(水素の割合:8体積%)を含むガス混合物中700℃で還元して、銀色干渉、灰色〜黒色マストーンおよび高光沢を有し、そのコーティングが74重量%の金属鉄からなる光沢顔料を生成する。
b)干渉顔料Bの調製
粒径10〜60μmの雲母100gを、脱塩水1.9l中で撹拌しながら75℃に加熱する。
【0045】
懸濁液のpHを、5%塩酸を使用して1.8に調整する。この後続いて、四塩化スズ溶液(脱塩水90ml中に3gのSnCl4・5H2Oおよび濃塩酸10mlを含む)を計量して加え、この間、pHは32%水酸化ナトリウム溶液を同時に滴下して加えることにより一定に保つ。この後、30%四塩化チタン溶液(180gの60%TiCl4溶液を180gの脱塩水に溶解)を加え、この間、pHは32%水酸化ナトリウム溶液を同時に滴下して加えることにより一定に保つ。生成物をろ過して、洗浄し、乾燥し、さらに窒素および水素(水素の割合:8体積%)を含むガス混合物中850℃で還元して、銀色干渉、色調−無彩色の灰色マストーンおよび高光沢を有し、金属スズを含む顔料を生成する。
c)顔料混合物の調製
実施例a)およびb)からの顔料を重量比1:0.75(干渉顔料A:干渉顔料B)で混合する。このようにして得られた混合物を、アクリレート−メラミン表面コーティングに3.5重量%の濃度で混入し、赤色塗装の金属板に塗布して、角度変化でかすかに赤みを帯びた色彩印象を示す、光沢のある銀色−有色コーティングを生成する。
比較例
実施例b)からの顔料を、カーボンブラックと重量比1:0.06(干渉顔料B:カーボンブラック)で混合する。このようにして得られた混合物をアクリレート−メラミン表面コーティングに2.5重量%の濃度で混入し、赤色塗装の金属板に塗布すると、浅い角度で見るときでさえ赤色基板をもはや可視できない、光沢のある銀色−有色コーティングを生成する。
レーザーマーキング使用例
PP顆粒(DSM製のPP−HD、Stamylan PPH 10)は、実施例c)からの混合物0.1重量%を加え、射出成型することによって加工処理する。続いて、得られた成型品(プレートレット)を、SHT Nd:YAGレーザーを用いて刻印する。パルス周波数2.5kHzおよび書き込み速度300mm/sで、プレートレットは黒色、高コントラストおよび耐摩耗性の刻印を示す。エネルギー密度の増大に伴って、刻印は次第に濃くなっていく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質と金属鉄を含むコーティングとを備える少なくとも一種の干渉顔料Aと、基質と金属スズに加え少なくとも1種の金属酸化物とを含むコーティングを備える干渉顔料Bと、を含むことを特徴とする干渉顔料の混合物。
【請求項2】
鉄含有コーティング中の金属鉄の割合が、鉄含有コーティングに対し10〜100重量%であることを特徴とする請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
金属鉄が鉄含有コーティング中にFeOおよび/またはFe34との組合せで存在することを特徴とする請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
金属スズを含むコーティング中の金属スズの割合が、金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングに対し0.01〜50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
追加の金属酸化物が、酸化チタンであることを特徴とする請求項1または4に記載の混合物。
【請求項6】
干渉顔料AおよびBの基質が、互いに異なり、合成もしくは天然雲母、フィロケイ酸塩、ガラス、SiO2、Al23、TiO2、黒鉛および/またはBiOClを含むことを特徴とする請求項1から5の一項に記載の混合物。
【請求項7】
金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物および/またはこれらの混合物を含む1層または複数の層が、干渉顔料Aの中では金属鉄を含むコーティングと基質との間に、および/または干渉顔料Bの中では金属スズに加えて少なくとも1種の金属酸化物を含むコーティングと基質との間に追加的に存在することを特徴とする請求項1から6の一項に記載の混合物。
【請求項8】
干渉顔料Aと干渉顔料Bの比が、99:1〜1:99であることを特徴とする請求項1から7の一項に記載の顔料混合物。
【請求項9】
干渉顔料AおよびBがさらに、外層として追加の有機コーティングを備えていることを特徴とする請求項1から8の一項に記載の顔料混合物。
【請求項10】
化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、セキュリティ印刷で、書類および身元証明書におけるセキュリティ特色で、種子の着色、食品の着色、レーザーマーキングへの、または薬剤のコーティングならびに顔料組成物および乾燥調製物の調製のための請求項1に記載の混合物の使用。
【請求項11】
請求項1に記載の混合物が、有機または無機染料および/または顔料とのブレンドの形態であることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項1に記載の混合物を含む化粧品、表面コーティング、インク、プラスチック、フィルム、書類および身元証明書、種子、食品または薬剤のコーティング、顔料組成物および乾燥調製物。

【公表番号】特表2008−546902(P2008−546902A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519816(P2008−519816)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005566
【国際公開番号】WO2007/000233
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】