説明

平坦材料にエンボス加工及びサテン加工するための装置

【課題】 歯部(2)のピンアップ構造を有するロール(18)と、対応する凹部(4)のピンダウン構造を有するロール(19)を備えた、特に、煙草、食物及び医薬品用のインナーライナーのエンボス加工及びサテン加工のための装置を提供する。
【解決手段】 従来と異なり、ロールの一方のみに、ロゴ対応部分がロゴ形成用に設けられ、他方のロールの凹部は、一方のロールの各々の歯部に対して均一形状であることを特徴とする。これにより、ロールを対として合致させて生産する必要がなくなり、また、磨耗又はロゴの変更に対して対で交換する必要がなくなり、低コストでのロールの生産が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦材料、特に煙草、食物及び医薬品用のインナーライナーをエンボス加工及びサテン加工するための、歯部のピンアップ構造を備えたロールと、対応する凹部を有するピンダウン構造を備えたロールを具備する、平坦材料にエンボス加工及びサテン加工するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図1に示すようなピンアップ−ピンダウン構造を用いてロゴをエンボス加工及びサテン加工する方法が知られており、輪郭のはっきりした正確なロゴの形成を可能にするという利点を有する(特許文献1、2参照)。「ロゴ」という文言は、ロールでエンボス加工する全てのサイン、装飾的な要素及び/又は識別マークを含み、「インナーライナー」という文言は、ラミネートシート、特にアルミニウムのスパッタ金属又は金属膜が一般に付けられた紙又はプラスチック材料シートを含む全ての種類のホイルを含む。そのようなインナーライナーは、巻きタバコ等の煙草製品、チョコレート、バター、又はチューインガム等の食品、又は錠剤や他の薬といった薬品に使用される。
【特許文献1】特開2004−203046
【特許文献2】米国特許第6176819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のエンボス加工用ロールは、3つの異なる領域を有しており、それは、主に、サテン加工領域と、ロゴエンボス加工領域と、調整領域とである。ロゴエンボス加工領域では、インナーライナーの金属処理された部分がサテン加工されずに光ったまま残り、それによってその部分はそのまま使用されるか又は加工されることができる。インナーライナーの品質、エンボス加工及びサテン加工に要求される精度、及びエンボス加工速度に対応して、ロールは高価な軸受と枠とで支持される。ロールが摩耗したりロゴが変更された場合は、ロゴの形成プロセスを停止し、比較的重いハウジングを取り外し、ロールを交換及び再調整し、新たなエンボス加工プロセスを開始せざるを得ない。
【0004】
従来技術のロゴを備えるピンアップ及びピンダウンロールは、対で製造される。例えば、最初に、駆動ロールであるピンアップロールが製造され、ロゴがその上に作られる。通常は、そのロールが硬化され、対向するロール、即ちピンダウンロールを形成するために用いられる。このロールは、図1に示すように、第1のロールに正確に対応する。これは、
a)異なるロゴをエンボス加工する場合、異なるロール対を製造しなければならないこと、及び
b)ロールの1つが摩耗した場合、一方のロールが他方のロールよりも摩耗していない場合であっても、両ロールとも交換しなければならないことを意味する。
【0005】
従来技術のエンボス加工方法は、例えば、図3に示すピンアップ−ピンダウン構造を使用する。両ロールには、1以上の調整手段を提供しなければならない。それは、ピンダウンロールのロゴ部が、凹部の底部に対し隆起し、他方のロールへのロゴ部の合致が非常に重要となるからである。故に、ロールには、操作の開始前の取付段階で、調整又は整列すべき同期ギアと共に、調整のための異なる種類の、より粗い歯部又はリングが更に提供される場合もある。
【0006】
その結果、ロールは対で交換されなければならず、個々のロゴ変更の度にその対のロールを交換しなければならないという事実により、ロール対の製造コストが非常に高くつくという点は、いっそう増長される。
【0007】
この従来技術を基に、本発明の第1の目的は、ピンアップ−ピンダウン構造を備えたインナーライナーのサテン加工及びエンボス加工装置において、ロールを対で製造する必要がないことにより磨耗やロゴ変更によっても対で交換することが不要になるため、ロールの製造コストを低く抑えることができる装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、向上されたロゴエンボス加工能力を有するピンアップ−ピンダウン構造を備えたサテン加工及びエンボス加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明によると、平坦材料、特に煙草、食物及び医薬品用のインナーライナーをエンボス加工及びサテン加工するための、歯部(2)のピンアップ構造を備えたロール(18)と、対応する凹部(4)を有するピンダウン構造を備えたロール(19)を具備する装置において、前記ロールの一方のみにおいて、ロゴに対応する部分がロゴを形成するように形成され、前記ロールの他方の前記凹部が、前記歯部の各々に対して形状において均一であることを特徴とする。
【0010】
また、上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明によると、前記エンボス加工のための部分を有する領域(Z2)が、金属層(20,21)を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記請求項1に記載の発明によると、摩耗又はロゴの変更のために、ロールを対で製造することが不要となり、両ロールを共に取り替える必要がない。
【0012】
上記請求項2に記載の発明によると、向上されたロゴエンボス加工能力を有するピンアップ−ピンダウン構造を備えたサテン加工及びエンボス加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を、実施形態の添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、平坦な頂部を有するピラミッド型の個々の歯部2を有するピンアップロール1と歯部2に対応する凹部4とを備えた従来技術のピンダウンロール3を示す。1つの歯部2は1つの凹部4にそれぞれ合致している。ロール1及び3は、従来技術に従った「L」の形のロゴである、エンボス加工のための2つの部分L1とそれに対応するL3とを更に示す。矢印5及び6は、取り付ける際に、ロール及びロゴ領域をより容易に相互に調整するためのマーキングを指す。
【0015】
図2は、歯部2と、凹部4と、その間のインナーライナー7との噛合状態を示す。インナーライナー7は、紙下地8及びアルミニウム製の金属膜9から構成される。図2で示す部分において、インナーライナーがサテン加工される。
【0016】
図4(b)を除く図3〜8で、歯部を概略的にのみ示すが、それらは、いかなる形状であってもよく、例えば、4つの側部を有するピラミッド形や円錐形であってもよい。突き出た歯部を備えたピンアップロールを常に下方に示し、対応する凹部を有するピンダウンロールを上方に示す。
【0017】
図3は、従来技術の、上述の3つの領域を有するピンアップ−ピンダウン構造のエンボス加工ロールの対を示す。この領域は相互補完的にピンアップロール10及びピンダウンロール11に位置する。機械駆動装置が何れの側に提供されるかにより、いずれのロールも駆動ロールとなりうる。
【0018】
領域Z1はピンアップ−ピンダウンサテン加工領域で、歯部と凹部は、不変な均一状に形成される。領域Z2はロゴ領域を成し、図3では両ロールのロゴ部にロゴが刻印又は製造される。図4〜8では、1つのロールのロゴ領域にはロゴが刻印又は製造され、他のロールの対応するロゴ領域では歯部の形は均一である。
【0019】
領域Z3は、調整手段を備えた領域を画成し、一般にロールの一側又は両側の何れかに、サテン加工より粗い歯部である調整歯部14,15と、調整リング12,13とを備える。ロールは、取付段階で最初に調整リングにより、そして次に調整歯部により調整される。両調整手段により、操作の前に2つのロゴ部を合致させるための正確な調整が可能になる。
【0020】
図3を参照すると、ピンダウンロール11は、他の既知の同期部材を含む代表的な同期手段であるギアホイール16及び17によって駆動ロール10と同期する。
【0021】
ゴム又は温度安定プラスチック材料等の比較的柔軟な材料で作られるピンダウンロールを製造する新たな方法により、硬化したピンアップロールをそのピンダウンロールに押し付け、凹部が形成されるまで該ロールを押圧する。そのような軟質なピンダウンロールの更なる用法は、硬質な金属製ピンダウンロールと同様である。この方法はまた逆にしてもよく、硬化されたピンダウンロールを、ゴム又は温度安定プラスチック材料等の比較的柔軟な材料でできたピンアップロールに対して押し付け、該ピンアップロールにピンアップ歯部が突出して形成されるまで押圧してもよい。このようなピンアップロールの更なる用法も、金属製ピンアップロールに対するものと同じである。
【0022】
図4(a)及び図4(b)は、本発明の第1の実施形態を示す。駆動ピンアップロール18及びピンダウンロール19は領域Z1及びZ2を備え、ピンダウンロール19には、均一の凹部4だけが設けられている。図4(a)及び図4(b)の実施形態に従うと、駆動ロールだけが領域Z2にロゴを有するピンアップ−ピンダウン構造によってロゴをエンボス加工することが可能であり、他のロールによって駆動される対向ロールは、均一の凹部4のみを有する。
【0023】
この逆のケースもまた可能であり、駆動ピンダウンロールだけがロゴ領域を有し、対向ロールは均一の歯部だけを有するピンアップロールとすることもできる。
【0024】
ロールの製造には、2つのピンアップロールを製造することが有利であり、第一のロールを、凹部の形が均一のピンダウンロールを形成するためのマスターロールとして機能させ、第2のピンアップロールには、ロゴを形成する部分が細工される。
【0025】
図4の実施形態で、ロールは調整領域Z3を有さず、同期ギアホイール又は他の同期手段も存在しない。これは以下の効果を有する。
a)ロールの形成が、一方のロールだけがロゴを備え、対向するロールが均一の形状を有する凹部又は歯部を備えるという点でより単純化され、故に、ロールの対を合致させて製造することが不要となる。
b)ロールが、調整歯部と調整リングとを有する調整領域Z3を必要としない。
c)摩耗したロールだけが交換され、ロールを対で交換する必要がない。
d)異なるロゴを有する一連のロールを設計することが可能であり、それらのロゴロールは容易に交換可能で、対向するロールは交換されないままである。
【0026】
対又は1つのロールの交換は、本件出願人の米国特許第6,665,998号公報に記載された手段で容易に達成される。
【0027】
図5〜8は、特殊な効果のためにエンボス加工する場合の、図4に示す実施形態の変形例を示す。特殊な効果を所望する場合、ロゴの領域に圧力を加えてロゴの外観を向上させたり、或いは、ホログラム等の装飾や、識別マーク、見る角度によって変化する外観及びその他の種々の視覚効果を、サテン加工されていない表面に加えるためにロゴ表面を加工したりすることが可能である。
【0028】
図5では、金属層20を、対向ロール19のロゴ領域に付着させる例を示す。その層は例えばCVD、スパッタリング又は他の手段によって付着され、該層は更に加工しなくとも良いし、装飾又は識別マークを有する加工表面にしてもよい。
【0029】
図6では、ピンアップロール18でそれぞれが駆動ロールであるロール上のロゴに前記金属層20と類似した金属層21をそれぞれ付着させる例を示す。図7では、一方のロールのロゴ上に金属層21、他方のロールのロゴ領域上に金属層20が付着される。図8では、領域Z1や、ロゴ領域Z2のいくつかの歯部と凹部に、金属層22を付着してマークをエンボス加工する。これらのコーティング処理では、凹部又は歯部の形は変更されず、薄い金属層が上に加えられるのみである。
【0030】
尚、ある特定の用途によっては、図9で示すように、領域Z3の一方又は両方に調整手段を設けてもよく、図11に示すように、更に同期ギアホイールやその他の同期手段を備えてもよいし、図10に示すように、同期手段のみ設けてもよい。そのような場合であっても、従来技術にはない本願の利点、即ち、ロールの一方にロゴ部を必要とせず、ロールを対で製造する必要がない、という利点は残る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来のピンアップロール及びピンダウンロールの一部分を示した図であり、各々がエンボス加工されるロゴ部を有している。
【図2】図1のロールが係合した状態を示す拡大断面図である。
【図3】調整手段及びロゴエンボス加工用部分を備えた、従来技術の2つの係合したロールの部分の概略断面図である。
【図4】(a)はエンボス加工のために、一方のロールのロゴ部及び他方のロールの均一のロゴ領域を有する、本発明に従った2つの係合ロールの概略断面図であり、(b)は本発明に従った、ピンアップロール及びピンダウンロールの部分を示し、一方のロールはエンボス加工されるロゴを支える部分を備え、他のロールは均一のロゴ領域を備える。
【図5】図4に示したロゴエンボス加工のための部分及び領域の変形例を示した図である。
【図6】図4に示したロゴエンボス加工のための部分及び領域の別の変形例を示した図である。
【図7】図4に示したロゴエンボス加工のための部分及び領域の更なる変形例を示した図である。
【図8】図4に示したロゴエンボス加工のための部分及び領域の更なる別の変形例を示した図である。
【図9】図4の実施形態の更なる変形例を示した図である。
【図10】図4の実施形態の更なる変形例を示した図である。
【図11】図4の実施形態の更なる変形例を示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1,10 ピンアップロール
2 歯部
3,11 ピンダウンロール
4 凹部
5,6 マーキング
7 インナーライナー
8 紙下地
9 金属膜
12,13 調整リング
14,15 調整歯部
16,17 ギアホイール
18 駆動ピンアップロール
19 ピンダウンロール
20,21,22 金属層
L1,L3 ロゴ
Z1 ピンアップ−ピンダウン領域
Z2 ロゴ領域
Z3 調整領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦材料、特に煙草、食物及び医薬品用のインナーライナーをエンボス加工及びサテン加工するための、歯部(2)のピンアップ構造を備えたロール(18)と、対応する凹部(4)を有するピンダウン構造を備えたロール(19)を具備する装置において、
前記ロールの一方のみに、ロゴに対応する部分がロゴを形成するように形成され、前記ロールの他方の前記凹部が、前記歯部の各々に対して形状において均一であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ロールの両方が、サテン加工用歯部と個々に凹部とを有する領域(Z1)を備え、前記ロールの1つが、ロゴをエンボス加工するための部分を有する領域(Z2)を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エンボス加工のための部分を有する領域(Z2)が、金属層(20,21)を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
ロゴをエンボス加工するための部分とロゴに対応する他のロールの区域とを有する前記領域(Z2)が金属層(20,21)を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の装置。
【請求項5】
サテン加工するための前記歯部及び前記凹部を有する前記領域(Z1)に、部分的に金属層(2)を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記ロールに、取付段階での調整手段(12,13;14,15)が備えられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記ロールに同期手段が備えられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
特に煙草、食物及び医薬品用のインナーライナーをエンボス加工及びサテン加工するための、歯部(2)のピンアップ構造を備えたロール(18)と、対応する凹部(4)を有するピンダウン構造を備えたロール(19)を具備する装置において、
前記ロールの一方のみに、ロゴに対応する部分がロゴを形成するように形成され、前記ロールの他方の前記凹部が、前記歯部に各々に対して形状において均一であることを特徴とする装置。
【請求項9】
特に煙草、食物及び医薬品用のインナーライナーをエンボス加工及びサテン加工のための、歯部(2)のピンアップ構造を備えたロール(18)と、対応する凹部(4)を有するピンダウン構造を備えたロール(19)を具備する装置において、
少なくとも1つの前記ロールにおいて、ロゴに対応する部分に金属層(20,21)が備えられていることを特徴とする装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−7771(P2006−7771A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178863(P2005−178863)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(501372606)ボエグリ − グラビュル ソシエテ アノニム (12)
【Fターム(参考)】