平型光ファイバコード
【課題】長径方向に圧力が作用しても、内部のテープ心線が折れ曲がることを抑制し、光ファイバ心線への影響(損傷)を軽度とすることができる平型光ファイバコードを提供する。
【解決手段】1枚または複数枚のテープ心線4と、テープ心線4を収容する断面略矩形状の外被2とを備える平型光ファイバコード1である。外被2の内側面には、対角に他の部分よりも厚肉に形成された厚肉部5が設けられている。
【解決手段】1枚または複数枚のテープ心線4と、テープ心線4を収容する断面略矩形状の外被2とを備える平型光ファイバコード1である。外被2の内側面には、対角に他の部分よりも厚肉に形成された厚肉部5が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ心線を内部に収容する平型光ファイバコードに関する。
【背景技術】
【0002】
平型光ファイバコードは、複数本の光ファイバを樹脂で一体化してテープ状に形成したテープ心線を、断面形状が略長方形状の外被で構成された内側空間部に収容したものであり、外被の長径方向と、テープ心線の幅(断面の長手方向)とがほぼ一致するように外被の内側空間部にテープ心線が収容される。
【0003】
外被の外部から作用する力によりテープ心線の破損を防止するために、外被の断面の長手方向側面のテープ心線と外被との間にシースよりも硬度の小さいクッション材を移動不能に固設することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−295015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図14に示すように、平型光ファイバコード21に対し、足で踏まれる等により長径方向に圧力が作用すると、外被22が変形し、特許文献1に記載の方法を用いても内部のテープ心線24が座屈するおそれがある。一方、これを防止するために外被の強度を高めると、布設性が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、長径方向に圧力が作用しても、内部のテープ心線が折れ曲がることを抑制し、光ファイバ心線への影響(損傷)を軽度とすることができる平型光ファイバコードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、1枚または複数枚のテープ心線と、前記テープ心線を収容する断面略矩形状の外被とを備える平型光ファイバコードにおいて、前記外被の内側面には、対角に他の部分よりも厚肉に形成された厚肉部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の平型光ファイバコードにおいて、前記テープ心線は、幅方向を前記外被の長径方向に対して傾斜させた状態で前記外被の内側空間部に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長径方向に圧力が作用しても、内部のテープ心線が折れ曲がることを抑制し、光ファイバ心線への影響(損傷)を軽度とすることができる平型光ファイバコードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図2】長径方向の側圧が印加された初期における平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図3】長径方向の側圧が印加された終期における平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図4】実施例1の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図5】実施例2の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図6】実施例3の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図7】実施例4の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図8】実施例5の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図9】実施例6の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図10】実施例7の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図11】比較例1の平型光ファイバコード11の概略断面図である。
【図12】比較例2の平型光ファイバコード11の概略断面図である。
【図13】(a)は側圧試験の方法を示す平面図であり、(b)は(a)のB矢視図であり、(c)は(a)のC矢視図である。
【図14】長径方向の側圧が印加された後の従来の平型光ファイバコード21の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る平型光ファイバコード1の断面図である。平型光ファイバコード1は、外被2と、抗張力繊維3と、テープ心線4とから概略構成される。
【0012】
抗張力繊維3には、例えばアラミド繊維、PBO繊維、カーボン繊維等を用いることができ、平型光ファイバコード1に要求される引張張力や外力(側圧等)等の、使用環境に応じて適宜調整可能である。
【0013】
テープ心線4は、ガラス光ファイバを紫外線硬化型樹脂で被覆した光ファイバ心線41を複数本並べ、更に紫外線硬化型樹脂42で被覆することでテープ状に成形したものである。例えばφ125μmのガラス光ファイバに紫外線硬化樹脂でφ250μmに被覆した光ファイバ心線を12本並べ、更に紫外線硬化樹脂で被覆して厚さ0.3mm、幅3.1mmのテープ心線とすることができる。図1では2枚のテープ心線4が重ねられ、積層方向の両面に抗張力繊維3が配置された状態で外被2の内側空間部に収納されている。
【0014】
なお、テープ心線4として、φ250μmの光ファイバ心線を2本又は4本並べて紫外線硬化樹脂でテープ状とした2心テープ心線又は4心テープ心線などを用いてもよい。
【0015】
外被2は押出成形が可能な熱可塑性樹脂からなり、軟質PVC(ポリ塩化ビニル)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)等の樹脂、これらの樹脂に有機系または無機系の難燃剤や難燃助剤を配合した難燃性樹脂や、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂等を単独であるいは複数混合したものを用いることができる。さらに、必要に応じて、これらの樹脂に、カーボンブラックや紫外線防止剤、紫外線吸収剤等を配合することで耐候処方を施すことや、カラー顔料を配合することで着色処方を施すことも可能である。
【0016】
外被2の内側面には、図1に示すように、対角に厚肉部5が設けられている。外被2の厚肉部5が設けられた部分は、外被2の他の部分よりも厚肉に設計され、膨らんだ形状をしている。厚肉部5は外被2が長径方向の側圧を受けたときに、テープ心線4に長径方向の側圧が作用する前にテープ心線4を短径方向に押圧し、傾かせるものである。なお、厚肉部5がテープ心線4に直接接触して傾かせてもよいし、厚肉部5が抗張力繊維3に接触し抗張力繊維3を介してテープ心線4を押圧し傾かせてもよい。
【0017】
厚肉部5の大きさは、平型光ファイバコード1内に内装されているテープ心線4と抗張力繊維3と外被2とのクリアランスにより適宜設計すれば良い。コードが受ける外力(長径方向の側圧)での変形時に、テープ心線4に外被の厚肉部5、或いは抗張力繊維3のいずれか、または同時に接触して、テープ心線4に強い側圧が負荷される前に、テープ心線4が傾くように設計すればよい。
【0018】
外被2の厚肉部5の形状は、外被2を押出成形する時に用いるニップルの外表面の形状を、設計、加工することで、所望の形状とすることができる。
【0019】
このような厚肉部5を設けた場合には、平型光ファイバコード1が外力(長径方向の側圧)を受けたとき、図2に示すように、外被2の長径方向で最も強度が弱い部分(外被2の肉厚が薄い部分または長径方向の中央部)より変形が始まる。この変形の初期段階に於いて、外被2の内側面の対角に設けた厚肉部5が、抗張力繊維3やテープ心線4を押圧することによって、テープ心線4を傾斜させる。このため、テープ心線4が外被2の変形に追従して傾斜し、最大に変形したときでも、図3に示すように、テープ心線4が折れ曲がることを抑制し、光ファイバ心線41への影響(損傷)を軽度とすることができる。
【0020】
なお、図1において、テープ心線4は、外被2の長径方向に対して、光ファイバ心線の配列方向が傾くように収納されている。平型光ファイバコード1の断面において、外被2の短径の中心線を0°、平型光ファイバコード1の断面中心を中心として厚肉部5の方向への回転する方向を−、厚肉部5と反対の方向への回転する方向を+とした場合、外被2の長径方向に対して、光ファイバ心線の配列方向を+5°〜+45°で傾かせると、平型光ファイバコード1が受ける外力(長径方向の側圧)による光ファイバ心線への影響(損傷)がより軽度となり、好ましい。
【0021】
また、テープ心線4を1枚のみ単独でまたは複数枚を内装してもよいし、異なるテープ心線4をそれぞれ組み合わせて内装してもよい。いずれの組み合わせにおいても、平型光ファイバコード1が受ける外力(長径方向の側圧)での初期変形時に、テープ心線4や抗張力繊維3が外被2の厚肉部5と接触することで、テープ心線4に強い側圧が負荷される前に、テープ心線4を押すことで傾くように設計すればよい。
【実施例1】
【0022】
以下に実施例、比較例による平型光ファイバコード1の側圧特性の評価を説明する。なお、以下で用いた厚肉部5の形状、寸法は一実施例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
外被2の形状及び内装されているテープ心線4の長径方向に対する傾き角度を変えて平型光ファイバコード1を製造した。製造した平型光ファイバコード1を長手方向に5m間隔で1m長さのサンプルを5本切り出した。切り出した1m長さのサンプルのほぼ中央部の位置より、低粘度のエポキシ樹脂を注射器を用いて注入した。注入したエポキシ樹脂が硬化した後にサンプルをスライスして、その断面を万能投影機を用いて10倍に拡大し、内装されているテープ心線4の長径方向に対する傾き角度を分度器にて測定するとともに、外被2の寸法(長径長さ、短径長さ、及び、a〜cの長さ)を測定した。同一の平型光ファイバコード1から切り出した5本の断面の測定結果の平均値を表1に示す。また、測定結果の平均値より再現した平型光ファイバコード1の断面形状を図4〜図12に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
なお、長径長さ、短径長さ、外被厚さ、及び、a〜cの長さの意味は、図4に示すとおりである。ここで、aは図4の点Aと点Bとの距離であり、bは点Aと点Dとの距離であり、cは点Aと点Cとの距離である。また、点Aは図4における外被2の内側面(厚肉部5を除く。以下同じ。)の短径方向の延長線L1と、長径方向の延長線L2との交点であり、点BはL1と厚肉部5の表面との交点であり、点CはL2と厚肉部5の表面との交点であり、点Dは角BACの二等分線L3と厚肉部5の表面との交点である。
【0026】
〔側圧試験〕
表1の実施例1〜7及び比較例1〜2の平型光ファイバコードを用いて、側圧試験を行った。
図13(a)は側圧試験の方法を示す平面図であり、図13(b)は図13(a)のB矢視図であり、図13(c)は図13(a)のC矢視図である。図13(b)に示すように、平型光ファイバコード1のサンプル3mに対し、一端で2番心線と3番心線、4番心線と5番心線、6番心線と7番心線、8番心線と9番心線、10番心線と11番心線の端面を対向させた状態で融着してループ接続するとともに、1番心線の端面にLED51を対向させた。また、図13(c)に示すように、平型光ファイバコード1の他端で1番心線と2番心線、3番心線と4番心線、5番心線と6番心線、7番心線と8番心線、9番心線と10番心線、11番心線と12番心線の端面を対向させた状態で融着してループ接続した。これにより、1枚のテープ心線の1番心線から12番心線の全心線を接続した。ここで、1番心線〜12番心線とは、テープ心線中の光ファイバ心線に配列順に番号をつけたものであり、1番心線、12番心線はテープ心線中の両端の光ファイバ心線を意味する。
【0027】
その後、図13(a)に示すように平型光ファイバコード1のサンプル3mを長径方向が上下方向となるように曲げ直径200mmでU字型に曲げた状態で配置し、平型光ファイバコード1の曲げた部分に100mm四方の側圧平板52(鉄板)を載せた。次に、側圧平板52に対して速度1mm/分で700Nまでの荷重を印加することで、平型光ファイバコード1の長径方向に側圧を印加した。
【0028】
〔通光確認〕
その後、1番心線側よりLED51の可視光を入射して、12番心線端から目視で確認することにより、テープ心線への影響をLED51の可視光光線により確認した。なお、評価判定基準としては、12番心線端末を目視で通光確認を実施し、通光が確認されたものを合格(表2に○と表示)とし、通光が確認されない(1番心線から12番心線の何処かが断線)ものを不合格(表2に×と表示)とした。
【0029】
〔テープ外傷〕
試験後の平型光ファイバコードの外被を除去して、テープ心線の損傷状態を確認した。テープ心線の外傷を目視で確認し、テープ心線表面が無傷のものを合格(表2に○と表示)とし、テープ心線の表面に傷(割れてはいないが外傷があるもの)が確認されるものを合格(表2に△と表示)とし、テープ心線に割れ(含む、各心線の断線)が確認されるものを不合格(表2に×と表示)とした。
【0030】
得られた結果を表2に示す。なお、表2では、上側の厚肉部に近い側のテープ心線(図3の状態で上側に位置するテープ心線)を上層とし、下側の厚肉部に近い側のテープ心線(図3の状態で下側に位置するテープ心線)を下層とした。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例1〜7においては、上層、下層のいずれにおいても通光が確認された。また、実施例1の下層、実施例5の上層においてテープ心線の表面に傷が確認されたが、それ以外では無傷であった。厚肉部5を設けることでテープ心線4が外被2の変形に追従して傾斜し、テープ心線4が折れ曲がることを抑制するためと考えられる。
なお、テープ心線4が傾いているもの(実施例2〜4、6〜7)は傷がなく、傾いていないもの(実施例1、5)よりもより好ましいことがわかる。
【0033】
一方、比較例1では通光が確認されず、比較例2の下層においても通光が確認されなかった。また、比較例1では、テープ心線14の表面に割れが確認され、比較例2の下層においてはテープ心線14の表面に割れが確認された。
【0034】
なお、以上の実施形態における外被2の厚肉部5は、対角対称な構造、寸法であるが、対角対称に限定されるものではない。例えば、対角の1つの厚肉部5が実施例1の形状で、他方の厚肉部5が実施例5の様な形状であっても良い。また、それぞれの寸法も対称である必要は無い。また、厚肉部5の断面形状が波状となった形状であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,11,21 平型光ファイバコード
2,12,22 外被
3,13,23 抗張力繊維
4,14,24 テープ心線
5 厚肉部
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ心線を内部に収容する平型光ファイバコードに関する。
【背景技術】
【0002】
平型光ファイバコードは、複数本の光ファイバを樹脂で一体化してテープ状に形成したテープ心線を、断面形状が略長方形状の外被で構成された内側空間部に収容したものであり、外被の長径方向と、テープ心線の幅(断面の長手方向)とがほぼ一致するように外被の内側空間部にテープ心線が収容される。
【0003】
外被の外部から作用する力によりテープ心線の破損を防止するために、外被の断面の長手方向側面のテープ心線と外被との間にシースよりも硬度の小さいクッション材を移動不能に固設することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−295015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図14に示すように、平型光ファイバコード21に対し、足で踏まれる等により長径方向に圧力が作用すると、外被22が変形し、特許文献1に記載の方法を用いても内部のテープ心線24が座屈するおそれがある。一方、これを防止するために外被の強度を高めると、布設性が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、長径方向に圧力が作用しても、内部のテープ心線が折れ曲がることを抑制し、光ファイバ心線への影響(損傷)を軽度とすることができる平型光ファイバコードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、1枚または複数枚のテープ心線と、前記テープ心線を収容する断面略矩形状の外被とを備える平型光ファイバコードにおいて、前記外被の内側面には、対角に他の部分よりも厚肉に形成された厚肉部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の平型光ファイバコードにおいて、前記テープ心線は、幅方向を前記外被の長径方向に対して傾斜させた状態で前記外被の内側空間部に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長径方向に圧力が作用しても、内部のテープ心線が折れ曲がることを抑制し、光ファイバ心線への影響(損傷)を軽度とすることができる平型光ファイバコードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図2】長径方向の側圧が印加された初期における平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図3】長径方向の側圧が印加された終期における平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図4】実施例1の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図5】実施例2の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図6】実施例3の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図7】実施例4の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図8】実施例5の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図9】実施例6の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図10】実施例7の平型光ファイバコード1の概略断面図である。
【図11】比較例1の平型光ファイバコード11の概略断面図である。
【図12】比較例2の平型光ファイバコード11の概略断面図である。
【図13】(a)は側圧試験の方法を示す平面図であり、(b)は(a)のB矢視図であり、(c)は(a)のC矢視図である。
【図14】長径方向の側圧が印加された後の従来の平型光ファイバコード21の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る平型光ファイバコード1の断面図である。平型光ファイバコード1は、外被2と、抗張力繊維3と、テープ心線4とから概略構成される。
【0012】
抗張力繊維3には、例えばアラミド繊維、PBO繊維、カーボン繊維等を用いることができ、平型光ファイバコード1に要求される引張張力や外力(側圧等)等の、使用環境に応じて適宜調整可能である。
【0013】
テープ心線4は、ガラス光ファイバを紫外線硬化型樹脂で被覆した光ファイバ心線41を複数本並べ、更に紫外線硬化型樹脂42で被覆することでテープ状に成形したものである。例えばφ125μmのガラス光ファイバに紫外線硬化樹脂でφ250μmに被覆した光ファイバ心線を12本並べ、更に紫外線硬化樹脂で被覆して厚さ0.3mm、幅3.1mmのテープ心線とすることができる。図1では2枚のテープ心線4が重ねられ、積層方向の両面に抗張力繊維3が配置された状態で外被2の内側空間部に収納されている。
【0014】
なお、テープ心線4として、φ250μmの光ファイバ心線を2本又は4本並べて紫外線硬化樹脂でテープ状とした2心テープ心線又は4心テープ心線などを用いてもよい。
【0015】
外被2は押出成形が可能な熱可塑性樹脂からなり、軟質PVC(ポリ塩化ビニル)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)等の樹脂、これらの樹脂に有機系または無機系の難燃剤や難燃助剤を配合した難燃性樹脂や、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂等を単独であるいは複数混合したものを用いることができる。さらに、必要に応じて、これらの樹脂に、カーボンブラックや紫外線防止剤、紫外線吸収剤等を配合することで耐候処方を施すことや、カラー顔料を配合することで着色処方を施すことも可能である。
【0016】
外被2の内側面には、図1に示すように、対角に厚肉部5が設けられている。外被2の厚肉部5が設けられた部分は、外被2の他の部分よりも厚肉に設計され、膨らんだ形状をしている。厚肉部5は外被2が長径方向の側圧を受けたときに、テープ心線4に長径方向の側圧が作用する前にテープ心線4を短径方向に押圧し、傾かせるものである。なお、厚肉部5がテープ心線4に直接接触して傾かせてもよいし、厚肉部5が抗張力繊維3に接触し抗張力繊維3を介してテープ心線4を押圧し傾かせてもよい。
【0017】
厚肉部5の大きさは、平型光ファイバコード1内に内装されているテープ心線4と抗張力繊維3と外被2とのクリアランスにより適宜設計すれば良い。コードが受ける外力(長径方向の側圧)での変形時に、テープ心線4に外被の厚肉部5、或いは抗張力繊維3のいずれか、または同時に接触して、テープ心線4に強い側圧が負荷される前に、テープ心線4が傾くように設計すればよい。
【0018】
外被2の厚肉部5の形状は、外被2を押出成形する時に用いるニップルの外表面の形状を、設計、加工することで、所望の形状とすることができる。
【0019】
このような厚肉部5を設けた場合には、平型光ファイバコード1が外力(長径方向の側圧)を受けたとき、図2に示すように、外被2の長径方向で最も強度が弱い部分(外被2の肉厚が薄い部分または長径方向の中央部)より変形が始まる。この変形の初期段階に於いて、外被2の内側面の対角に設けた厚肉部5が、抗張力繊維3やテープ心線4を押圧することによって、テープ心線4を傾斜させる。このため、テープ心線4が外被2の変形に追従して傾斜し、最大に変形したときでも、図3に示すように、テープ心線4が折れ曲がることを抑制し、光ファイバ心線41への影響(損傷)を軽度とすることができる。
【0020】
なお、図1において、テープ心線4は、外被2の長径方向に対して、光ファイバ心線の配列方向が傾くように収納されている。平型光ファイバコード1の断面において、外被2の短径の中心線を0°、平型光ファイバコード1の断面中心を中心として厚肉部5の方向への回転する方向を−、厚肉部5と反対の方向への回転する方向を+とした場合、外被2の長径方向に対して、光ファイバ心線の配列方向を+5°〜+45°で傾かせると、平型光ファイバコード1が受ける外力(長径方向の側圧)による光ファイバ心線への影響(損傷)がより軽度となり、好ましい。
【0021】
また、テープ心線4を1枚のみ単独でまたは複数枚を内装してもよいし、異なるテープ心線4をそれぞれ組み合わせて内装してもよい。いずれの組み合わせにおいても、平型光ファイバコード1が受ける外力(長径方向の側圧)での初期変形時に、テープ心線4や抗張力繊維3が外被2の厚肉部5と接触することで、テープ心線4に強い側圧が負荷される前に、テープ心線4を押すことで傾くように設計すればよい。
【実施例1】
【0022】
以下に実施例、比較例による平型光ファイバコード1の側圧特性の評価を説明する。なお、以下で用いた厚肉部5の形状、寸法は一実施例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
外被2の形状及び内装されているテープ心線4の長径方向に対する傾き角度を変えて平型光ファイバコード1を製造した。製造した平型光ファイバコード1を長手方向に5m間隔で1m長さのサンプルを5本切り出した。切り出した1m長さのサンプルのほぼ中央部の位置より、低粘度のエポキシ樹脂を注射器を用いて注入した。注入したエポキシ樹脂が硬化した後にサンプルをスライスして、その断面を万能投影機を用いて10倍に拡大し、内装されているテープ心線4の長径方向に対する傾き角度を分度器にて測定するとともに、外被2の寸法(長径長さ、短径長さ、及び、a〜cの長さ)を測定した。同一の平型光ファイバコード1から切り出した5本の断面の測定結果の平均値を表1に示す。また、測定結果の平均値より再現した平型光ファイバコード1の断面形状を図4〜図12に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
なお、長径長さ、短径長さ、外被厚さ、及び、a〜cの長さの意味は、図4に示すとおりである。ここで、aは図4の点Aと点Bとの距離であり、bは点Aと点Dとの距離であり、cは点Aと点Cとの距離である。また、点Aは図4における外被2の内側面(厚肉部5を除く。以下同じ。)の短径方向の延長線L1と、長径方向の延長線L2との交点であり、点BはL1と厚肉部5の表面との交点であり、点CはL2と厚肉部5の表面との交点であり、点Dは角BACの二等分線L3と厚肉部5の表面との交点である。
【0026】
〔側圧試験〕
表1の実施例1〜7及び比較例1〜2の平型光ファイバコードを用いて、側圧試験を行った。
図13(a)は側圧試験の方法を示す平面図であり、図13(b)は図13(a)のB矢視図であり、図13(c)は図13(a)のC矢視図である。図13(b)に示すように、平型光ファイバコード1のサンプル3mに対し、一端で2番心線と3番心線、4番心線と5番心線、6番心線と7番心線、8番心線と9番心線、10番心線と11番心線の端面を対向させた状態で融着してループ接続するとともに、1番心線の端面にLED51を対向させた。また、図13(c)に示すように、平型光ファイバコード1の他端で1番心線と2番心線、3番心線と4番心線、5番心線と6番心線、7番心線と8番心線、9番心線と10番心線、11番心線と12番心線の端面を対向させた状態で融着してループ接続した。これにより、1枚のテープ心線の1番心線から12番心線の全心線を接続した。ここで、1番心線〜12番心線とは、テープ心線中の光ファイバ心線に配列順に番号をつけたものであり、1番心線、12番心線はテープ心線中の両端の光ファイバ心線を意味する。
【0027】
その後、図13(a)に示すように平型光ファイバコード1のサンプル3mを長径方向が上下方向となるように曲げ直径200mmでU字型に曲げた状態で配置し、平型光ファイバコード1の曲げた部分に100mm四方の側圧平板52(鉄板)を載せた。次に、側圧平板52に対して速度1mm/分で700Nまでの荷重を印加することで、平型光ファイバコード1の長径方向に側圧を印加した。
【0028】
〔通光確認〕
その後、1番心線側よりLED51の可視光を入射して、12番心線端から目視で確認することにより、テープ心線への影響をLED51の可視光光線により確認した。なお、評価判定基準としては、12番心線端末を目視で通光確認を実施し、通光が確認されたものを合格(表2に○と表示)とし、通光が確認されない(1番心線から12番心線の何処かが断線)ものを不合格(表2に×と表示)とした。
【0029】
〔テープ外傷〕
試験後の平型光ファイバコードの外被を除去して、テープ心線の損傷状態を確認した。テープ心線の外傷を目視で確認し、テープ心線表面が無傷のものを合格(表2に○と表示)とし、テープ心線の表面に傷(割れてはいないが外傷があるもの)が確認されるものを合格(表2に△と表示)とし、テープ心線に割れ(含む、各心線の断線)が確認されるものを不合格(表2に×と表示)とした。
【0030】
得られた結果を表2に示す。なお、表2では、上側の厚肉部に近い側のテープ心線(図3の状態で上側に位置するテープ心線)を上層とし、下側の厚肉部に近い側のテープ心線(図3の状態で下側に位置するテープ心線)を下層とした。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例1〜7においては、上層、下層のいずれにおいても通光が確認された。また、実施例1の下層、実施例5の上層においてテープ心線の表面に傷が確認されたが、それ以外では無傷であった。厚肉部5を設けることでテープ心線4が外被2の変形に追従して傾斜し、テープ心線4が折れ曲がることを抑制するためと考えられる。
なお、テープ心線4が傾いているもの(実施例2〜4、6〜7)は傷がなく、傾いていないもの(実施例1、5)よりもより好ましいことがわかる。
【0033】
一方、比較例1では通光が確認されず、比較例2の下層においても通光が確認されなかった。また、比較例1では、テープ心線14の表面に割れが確認され、比較例2の下層においてはテープ心線14の表面に割れが確認された。
【0034】
なお、以上の実施形態における外被2の厚肉部5は、対角対称な構造、寸法であるが、対角対称に限定されるものではない。例えば、対角の1つの厚肉部5が実施例1の形状で、他方の厚肉部5が実施例5の様な形状であっても良い。また、それぞれの寸法も対称である必要は無い。また、厚肉部5の断面形状が波状となった形状であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,11,21 平型光ファイバコード
2,12,22 外被
3,13,23 抗張力繊維
4,14,24 テープ心線
5 厚肉部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚または複数枚のテープ心線と、
前記テープ心線を収容する断面略矩形状の外被とを備える平型光ファイバコードにおいて、
前記外被の内側面には、対角に他の部分よりも厚肉に形成された厚肉部が設けられていることを特徴とする平型光ファイバコード。
【請求項2】
前記テープ心線は、幅方向を前記外被の長径方向に対して傾斜させた状態で前記外被の内側空間部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の平型光ファイバコード。
【請求項1】
1枚または複数枚のテープ心線と、
前記テープ心線を収容する断面略矩形状の外被とを備える平型光ファイバコードにおいて、
前記外被の内側面には、対角に他の部分よりも厚肉に形成された厚肉部が設けられていることを特徴とする平型光ファイバコード。
【請求項2】
前記テープ心線は、幅方向を前記外被の長径方向に対して傾斜させた状態で前記外被の内側空間部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の平型光ファイバコード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−164887(P2010−164887A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8834(P2009−8834)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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