説明

平行2軸ヒンジ並びにこの平行2軸ヒンジを備えた小型電子機器

【課題】 歯車を用いなくとも、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトを同期して回転させることができ、ガタを生じされることのない、平行2軸ヒンジを提供せんとする。
【解決手段】 連結部材へ取り付けられるブリッジ部材と、このブリッジ部材に対して回転可能かつ平行状態で取り付けられる第1の筐体と第2の筐体のいずれか一方を回転可能に支持する第1ヒンジシャフト及び第1の筐体と第2の筐体のいずれか他方を回転可能に支持する第2ヒンジシャフトと、前記第1及び第2ヒンジシャフトとの間に設けられた同期回転伝達手段とを有し、この同期回転伝達手段を、前記第1及び第2ヒンジシャフトに設けた一対の第1リンクカム部材及び第2リンクカム部材と、この各第1及び第2リンクカム部材と係合し、前記ブリッジ部材にスライド可能に取り付けられたスライド部材とで構成することによって解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートパソコン、携帯電話機、電子手帳、PDA、ネットブック等の小型電子機器における第1の筐体である機器本体と、第2の筐体であるディスプレイ部とを互いに開閉可能に連結する平行2軸ヒンジ並びにこの平行2軸ヒンジを備えた小型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
2軸ヒンジには、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトを互いに交わる方向へ配置した交叉2軸ヒンジと、互いに平行方向へ配置した平行2軸ヒンジとがあるが、本願発明は後者の平行2軸ヒンジに属する。
【0003】
この平行2軸ヒンジは、1軸のヒンジに較べて、第1の筐体と第2の筐体を手に持った本を開くように左右均等に開くことができるという利点がある。そこで、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトを同期回転させるために、同期回転伝達手段として歯車を用いたものが下記特許文献1によって公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の平行2軸ヒンジは、取付部材に対し、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトを平行かつ回転可能に取り付け、この第1ヒンジシャフトに取り付けた第1ブラケットを第1の筐体側へ、第2ヒンジシャフトに取り付けた第2ブラケットを第2の筐体側へ取り付け、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトを同期回転させるために歯車が用いられている。
【0006】
このように歯車を用いると、動作時にバックラッシュを避けることができない上に、操作時にガタが生じ易く、このガタは筐体が大きくなるにつけて拡大されてしまうといった問題点があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決しようとするもので、その課題は、歯車を用いなくとも、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトを同期して回転させることができ、ガタを生じさせることのない、平行2軸ヒンジを提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結する平行2軸ヒンジを、連結部材へ取り付けられるブリッジ部材と、このブリッジ部材に対して回転可能かつ平行状態で取り付けられる前記第1の筐体と第2の筐体のいずれか一方を回転可能に支持する第1ヒンジシャフト及び前記第1の筐体と第2の筐体のいずれか他方を回転可能に支持する第2ヒンジシャフトと、前記第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトとの間に設けられた同期回転伝達手段とを有し、この同期回転伝達手段を、前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトに設けた一対の第1リンクカム部材及び第2リンクカム部材と、この各第1リンクカム部材及び第2リンクカム部材と係合し、前記ブリッジ部材にスライド可能に取り付けられたスライド部材とで構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、前記スライド部材を、前記ブリッジ部材へ取り付けたガイドシャフトを介して当該ブリッジ部材へスライド可能に取り付けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記第1及び第2リンクカム部材が前記スライド部材と係合する手段を、それぞれの第1及び第2リンクカム部材に設けた第1及び第2リンクピンと、この各第1及び第2リンクピンと係合する前記スライド部材に設けた第1及び第2係合凹部とで構成することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトのそれぞれと前記ブリッジ部材との間に第1及び第2フリクション機構を有し、この第1及び第2フリクション機構を、前記各第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトと前記ブリッジ部材との間に、前記ブリッジ部材と圧接状態で前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトと共に回転するように設けた一対の第1及び第2フリクションプレートと、この各第1及び第2フリクションプレートと圧接状態で前記第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトへ取り付けられた第1弾性手段及び第2弾性手段を有するものとしたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトは、それぞれに前記ブリッジ部材との間にカム付きの第1及び第2フリクション機構を有するものとし、この各カム付きの第1及び第2フリクション機構を、前記ブリッジ部材の前記第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトの各第1及び第2軸受孔の回りに刻設して成る第1固定カム部及び第2固定カム部と、前記各第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトと前記ブリッジ部材との間に、前記第1固定カム部及び第2固定カム部と圧接状態で前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトと共に回転するように設けた一対の第1カム部材及び第2カム部材と、この各第1カム部材及び第2カム部材と圧接状態で前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトへ取り付けられた第1弾性手段と第2弾性手段とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の本発明は、小型電子機器に、前記請求項1乃至5に各記載の平行2軸ヒンジを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成したので、第1の筐体と第2の筐体を相対的に開くと、この第1の筐体と第2の筐体に取り付けた第1ブラケットと第2ブラケットが、各々第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトと共にブリッジ部材に対して回転し、その際に第1の筐体と第2の筐体のどちらか一方を主体として開閉させても、第1ヒンジシャフト或は第2ヒンジシャフトの各第1或は第2リンクカム部材がスライド部材をスライドさせるので、第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトが同期して回転し、丁度本を開くように第1の筐体と第2の筐体を開くことができるものである。その他の効果は以下の実施例の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る平行2軸ヒンジを用いたノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体の閉成状態の斜視図である。
【図2】本発明に係る平行2軸ヒンジを用いたノートパソコンの第1の筐体と第2の筐体を全開させて見た斜視図である。
【図3】本発明に係る平行2軸ヒンジの動作前の斜視図である。
【図4】本発明に係る平行2軸ヒンジの動作終了時の斜視図である。
【図5】本発明に係る平行2軸ヒンジを一方の側から見た分解斜視図である。
【図6】本発明に係る平行2軸ヒンジを他方の側から見た分解斜視図である。
【図7】本発明に係る平行2軸ヒンジの同期回転伝達手段の動作前の状態を説明する断面図である。
【図8】本発明に係る平行2軸ヒンジの同期回転伝達手段の動作終了時の状態を説明する断面図である。
【図9】本発明に係る平行2軸ヒンジの第1及び第2固定カム部と第1及び第2カム部材の位置関係を説明する説明図であり、(a)は動作開始前の位置関係、(b)は動作中の位置関係、(c)は動作終了時の位置関係を、それぞれ説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の説明では本発明をノートパソコンに実施した場合について述べるが、本発明はノートパソコンに限らず、携帯電話機、電子手帳、PDA、ネットブック等の小型電子機器に用いることができる。
【0017】
図面によれば図1と図2において、指示記号1で示したものは、例えば小型電子機器の一例としてのノートパソコンであり、本発明に係る平行2軸ヒンジ2は、図中A視の部分の一方或は双方にキーボード部3aを設けた第1の筐体である装置本体3(以下、単に第1の筐体という)とディスプレイ部4aを設けた第2の筐体4を開閉可能に連結するものである。そして、指示記号2aで示されたものは、平行2軸ヒンジの後述するブリッジ部材を取り付けるための連結部材である。
【0018】
平行2軸ヒンジ2は、図3乃至図8に示したように、第1の筐体3と第2の筐体4を開閉可能に連結する平行2軸ヒンジ2であって、連結部材2aへ取り付けられるブリッジ部材5と、このブリッジ部材5に対して回転可能かつ平行状態で取り付けられた第1ヒンジシャフト10及び第2ヒンジシャフト11と、この第1ヒンジシャフト10及び第2ヒンジシャフト11との間に設けられた同期回転伝達手段Aとを有し、この同期回転伝達手段Aを、前記第1ヒンジシャフト10及び第2ヒンジシャフト11に設けた一対の第1リンクカム部材7及び第2リンクカム部材8と、この各第1リンクカム部材7及び第2リンクカム部材8と係合し、前記ブリッジ部材5にスライド可能に取り付けられたスライド部材6とで構成されている。
【0019】
さらに詳しくは、ブリッジ部材5は、軸受プレート部5aと、この軸受プレート部5aの上下端部より同一方向へ折り曲げて形成した上部取付プレート部5bと、下部取付プレート部5cとで構成され、軸受プレート部5aには、上部取付プレート部5bと下部取付プレート部5cに対して平行に一対の第1軸受孔5dと第2軸受孔5eが設けられている。第1軸受孔5dと第2軸受孔5eの周囲には、当該軸受プレート部5aに刻設することによって並置して形成させた第1固定カム部14と第2固定カム部15が設けられ、この第1固定カム部14と第2固定カム部15の間に位置して上下方向にガイド長孔16が設けられている。さらに、上部取付プレート部5bの中央部には円形状の取付孔5fが設けられ、下部取付プレート部5cの中央部には取付角孔5gが設けられると共に、この下部取付プレート部5cには、その両端部側に図示してない取付ネジを用いて連結部材2aへ取り付ける際の取付孔5h、5iが設けられている。尚、軸受プレート部5aの第1軸受孔5dと第2軸受孔5eの下方に設けられている一対の角孔5j、5jは、第1固定カム部14と第2固定カム部15を別部材とした場合に、この別部材の固定カム部材を係止するための孔である。
【0020】
スライド部材6は、略角柱状のもので、その中心部軸方向に四角状のガイド孔6aが貫通して設けられ、このガイド孔6aにブリッジ部材5の上部取付プレート部5bの取付孔5fと下部取付プレート部5cの取付角孔5gの間に取り付けたガイドシャフト17を挿通させることにより、上下方向へスライド可能に構成されている。さらに、このスライド部材6にはブリッジ部材5の軸受プレート部5aに設けたガイド長孔16に嵌合させたガイドピン部6bが一体に設けられると共に、このガイドピン部6bの上方左右位置に同一高さと幅の第1係合凹部6c及び第2係合凹部6dが設けられている。そして、スライド部材6と第1及び第2リンクカム部材7、8で第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11の同期回転伝達手段Aを構成している。尚、ガイドピン部6bはこれを別部材としても良い。
【0021】
また、ガイドシャフト17の両端部は、取付孔5fと取付角孔5gにかしめることによって固定されると共に、ガイドピン部6bがガイド長孔16を貫通した端部には、取付孔18aを有する係止用のワッシャー18が嵌められ、その突出端部をかしめることによって取り付けられることにより、抜け止め規制されている。尚、このワッシャー18はEリングその他の係止部材としても良い。
【0022】
第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11は、左右対称であるが、同一構成のもので、それぞれ第1軸部10a、11aと第2軸部10b、11bを有し、第1軸部10a、11aの一側部側には第1フランジ部10c、11cが設けられると共に、第1軸部10a、11aと第2軸部10b、11bとの間には、外形を変形させた第2フランジ部10d、11dが設けられている。
【0023】
第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11の各第1軸部10aと11aの端部には、断面略楕円形状の変形取付部10e、11eが設けられると共に、各第2軸部10b、11bにはそれぞれ断面略楕円形状を呈した第1段部10f、11f、第2段部10g、11g、及び第3段部10h、11hが各端部から形成され、第1段部10f、11fから第3段部10h、11hに向けて徐々に幅が大きくなるように形成されている。
【0024】
第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11の各第2軸部10b、11bの第3段部10h、11hを、その中心部軸方向に設けた変形挿通孔7a、8aへ挿通係合させて第1リンクピン7bと第2リンクピン8bを有する一対の第1リンクカム部材7及び第2リンクカム部材8が、各第2フランジ部10d、11dに接して取り付けられると共に、各第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11は、軸受プレート部5aに設けた第1及び第2軸受孔5d、5eに各第3段部10h、11hを挿通させることによりブリッジ部材5に対して平行かつ回転可能に取り付けられている。そして、各第1及び第2リンクカム部材7、8の第1リンクピン7b及び第2リンクピン8bは、スライド部材6の第1及び第2係合凹部6c、6dと係合している。
【0025】
次に、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11の第2軸部10b、11bの側には、例えばカム付きの第1フリクション機構9aと第2フリクション機構9bが設置されている。このカム付きの第1及び第2フリクション機構9a、9bは、ブリッジ部材5の軸受プレート部5aの第1及び第2軸受孔5d、5eの周囲に設けた第1固定カム部14及び第2固定カム部15と、この第1固定カム部14と第2固定カム部15に対向する側に第2軸部10b、11bの第2段部10g、11gをその中心部軸方向に設けた変形挿通孔19c、20cへ挿通係合させた第1カム部材19及び第2カム部材20と、各第1及び第2カム部材19、20に接して第2軸部10b、11bの第2段部10g、11gをその中心部軸方向に設けた円形の第1及び第2挿通孔21a、22aへ挿通させて設けられた各4枚から成る複数の第1及び第2皿バネから成る第1弾性手段21及び第2弾性手段22と、この第1及び第2弾性手段21、22に接して第2軸部10b、11bの第1段部10f、11fをその中心部軸方向に設けた第1及び第2変形取付孔23a、24aへ挿通させ、その突出端をかしめることによって、第1及び第2カム部材19、20が、第1及び第2固定カム部14、15に圧接するように成した第1及び第2押えワッシャー23、24とで構成されている。尚、第1固定カム部14と第2固定カム部15には、各々一対ずつの凸部14a、14a・15a、15aと凹部14b、14b・15b、15bが設けられると共に、第1カム部材19と第2カム部材20の凸部19a、19a・20a、20a側と凹部19b、19b・20b、20b側とが互いに圧接状態にある。また、第1弾性手段21と第2弾性手段22を構成する皿バネの枚数や配置の仕方は、実施例に限定されるものではなく、皿バネに代えてスプリングワッシャーやスプリングその他の弾性手段に代えることができる。
【0026】
そして、各第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11の各変形取付部10e、11eには、第1の筐体3側へ取り付けられる第1ブラケット12と、第2の筐体4側へ取り付けられる第2ブラケット13が、それぞれ各第1及び第2取付部12a、13aに設けた第1及び第2変形取付孔12b、13bを挿通させて設けられ、その第1及び第2変形取付孔12b、13bより突出した各端部をかしめることによって第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11に共に回転するように固定されている。尚、第1ブラケット12と第2ブラケット13の取付プレート部12c、13cには、複数の第1取付孔12dと第2取付孔13dが設けられている。
【0027】
次に、本件発明に係る平行2軸ヒンジ2の作用について説明する。まず、平行2軸ヒンジのブリッジ部材5を連結部材2aへ取り付け、第1ブラケット12を第1の筐体3の後端部側に取り付け、第2ブラケット13を第2の筐体4の後端部側へ取り付ける。第1の筐体3と第2の筐体4を閉じた状態においては、同期回転伝達手段Aの第1リンクカム部材7と第2リンクカム部材8は、互いの第1及び第2リンクピン7b、8bをスライド部材6の第1及び第2係合凹部6c、6dと係合させていることにより、スライド部材6を図7に示したように左方向へ押し込んでその始端部側へ位置させている。この状態において、図9(a)に示したように、第1固定カム部14と第2固定カム部15の凹部14b、15b内へ第1及び第2カム部材19、20の凸部19a、20aが完全に落ち込む手前に位置しているので、第2ヒンジシャフト11が第2ブラケット13を介して第2の筐体4を閉成方向へ回転付勢されることによって、第1の筐体3に対する第2の筐体4の閉成状態が維持されている。
【0028】
尚、第1ブラケット12と第2ブラケット13は、前者を第2の筐体4へ、後者を第1の筐体3へ取り付けても良い。また、第1ブラケット12と第2ブラケット13は、これらを省略して、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11を、それぞれ直接第1の筐体3或は第2の筐体4へ取り付けるようにしても良い。
【0029】
次に、ノーパソコン1を使用すべく、第1の筐体3と第2の筐体4を手に持って本を開くようにして左右へ開くと、第1の筐体3と第2の筐体4のどちらの側に力を加えても、同期回転伝達手段Aによって、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11は共に同一回転角度それぞれ反対側へ回転することになる。即ち、第1ヒンジシャフト10と第2ヒンジシャフト11のどちらの側に回転トルクを加えても、共に回転する同期回転伝達手段Aの第1リンクカム部材7或は第2リンクカム部材8によって、スライド部材6が、図8に示したように、上方へスライドして他方の第1リンクカム部材7或は第2リンクカム部材8が第1ヒンジシャフト10或は第2ヒンジシャフト11を介して第1ブラケット12或は第2ブラケット13を回転させるので、第1の筐体3と第2の筐体4は第1及び第2ヒンジシャフト10、11と共に、同じ開角度で開かれて、図8に示したように、左右均等に90°に開かれた状態となる。この時には、図9(c)に示したように、第1及び第2カム部材19、20の凸部19a、20aは、第1及び第2固定カム部14、15のもう一方の凹部14b、15bへ完全に落ち込む寸前で停止し、第1の筐体3と第2の筐体4を全開状態でロックする形となる。
【0030】
それ以外の第1の筐体3と第2の筐体4の中間開閉角度においては、図9(b)に示したように、第1固定カム部14及び第2固定カム部15の凸部14a、15aと第1及び第2カム部材19、20の凸部19a、20a同士が、互いに圧接状態で推移するので、フリクショントルクが発生する。
【0031】
このようにして、第1の筐体3と第2の筐体4は、閉成状態から本を開くように左右均等に開かれ、同期回転伝達手段Aとカムを用いた第1及び第2フリクション機構9a、9bによりガタが生じることが少ないので、スムーズなしっくりとした操作フィーリングを操作者へ与えることができるものである。
【0032】
その他の実施例として、同期回転伝達手段Aのスライド部材6に第1及び第2リンクピンを取り付け第1及び第2リンクカム部材7、8の側に前記第1及び第2リンクピンと係合する第1及び第2係合孔或は第1及び第2係合溝を設けるように構成しても良く、さらに、スライド部材6はガイドシャフト17を省略して、ブリッジ部材5によって抱えるように構成しても良い。さらに、カム付の第1及び第2フリクション機構9a、9bは、第1及び第2固定カム部14、15と第1及び第2カム部材19、20を省略して、公知の第1及び第2フリクション機構とすることも可能である。この場合は、第1及び第2カム部材19、20をブリッジ部材5の軸受プレート部5aと圧接する第1及び第2フリクションワッシャーとする公知構成のものとするものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は以上のように構成したので、小型電子機器の第1の筐体と第2の筐体を互いに重なり合った閉成状態から、ガタのないしっくりとした操作フィーリングで本を開くように開閉する際の平行2軸ヒンジ並びにこの平行2軸ヒンジを用いた小型電子機器として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0034】
A 同期回転伝達手段
1 ノートパソコン
2 平行2軸ヒンジ
2a 連結部材
3 第1の筐体
4 第2の筐体
5 ブリッジ部材
5d 第1軸受孔
5e 第2軸受孔
6 スライド部材
6c 第1係合凹部
6d 第2係合凹部
7 第1リンクカム部材
7b 第1リンクピン
8 第2リンクカム部材
8b 第2リンクピン
9a 第1フリクション機構
9b 第2フリクション機構
10 第1ヒンジシャフト
11 第2ヒンジシャフト
14 第1固定カム部
15 第2固定カム部
17 ガイドシャフト
19 第1カム部材
20 第2カム部材
21 第1弾性手段
22 第2弾性手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体を開閉可能に連結する平行2軸ヒンジであって、連結部材へ取り付けられるブリッジ部材と、このブリッジ部材に対して回転可能かつ平行状態で取り付けられる前記第1の筐体と第2の筐体のいずれか一方を回転可能に支持する第1ヒンジシャフト及び前記第1の筐体と第2の筐体のいずれか他方を回転可能に支持する第2ヒンジシャフトと、前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトとの間に設けられた同期回転伝達手段とを有し、この同期回転伝達手段を、前記第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトに設けた一対の第1リンクカム部材及び第2リンクカム部材と、この各第1及び第2リンクカム部材と係合し、前記ブリッジ部材にスライド可能に取り付けられたスライド部材とで構成したことを特徴とする、平行2軸ヒンジ。
【請求項2】
前記スライド部材は、前記ブリッジ部材へ取り付けたガイドシャフトを介して当該ブリッジ部材へスライド可能に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の平行2軸ヒンジ。
【請求項3】
前記第1及び第2リンクカム部材を前記スライド部材と係合する手段が、それぞれの第1及び第2リンクカム部材に設けた第1及び第2リンクピンと、この各第1及び第2リンクピンと係合する前記スライド部材に設けた第1及び第2係合凹部と、で構成したことを特徴とする、請求項1に記載の平行2軸ヒンジ。
【請求項4】
前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトは、それぞれに前記ブリッジ部材との間に第1及び第2フリクション機構を有し、この各第1及び第2フリクション機構は、前記各第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトと前記ブリッジ部材との間に、前記ブリッジ部材と圧接状態で前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトと共に回転するように設けた一対の第1及び第2フリクションワッシャーと、この各第1及び第2フリクションワッシャーと圧接状態で前記第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトへ取り付けられた第1弾性手段及び第2弾性手段と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の平行2軸ヒンジ。
【請求項5】
前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトはそれぞれに前記ブリッジ部材との間にカム付きの第1及び第2フリクション機構を有し、この各カム付きの第1及び第2フリクション機構は、前記ブリッジ部材の前記第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトの各第1及び第2軸受孔の回りに刻設して成る第1固定カム部及び第2固定カム部と、前記各第1ヒンジシャフト及び第2ヒンジシャフトと前記ブリッジ部材との間に、前記第1固定カム部及び第2固定カム部と圧接状態で前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトと共に回転するように設けた一対の第1カム部材及び第2カム部材と、この各第1カム部材及び第2カム部材と圧接状態で前記第1ヒンジシャフトと第2ヒンジシャフトへ取り付けられた第1弾性手段及び第2弾性手段と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の平行2軸ヒンジ。
【請求項6】
請求項1乃至5に各記載の平行2軸ヒンジを用いたことを特徴とする、小型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−237392(P2012−237392A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107267(P2011−107267)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】