説明

平面表示装置およびその製造方法

【課題】発光層の発光効率を低下させることなく外光の反射を抑制する。
【解決手段】基板200の一方の面に形成される画素電極210と,画素電極210の上に形成されて少なくとも発光層を含む有機膜220と,有機膜220の上に形成される対向電極230と,対向電極230の上に形成される透明膜240と,透明膜240の上に形成される半透過金属層242とを含んで構成されるようにした。そして,透明膜240は,有機膜,無機膜,またはその積層構造からなるようにし,その厚さが400〜1300Å,より好ましくは500〜800Åに形成されるようにした。また,半透過金属層242は,透過率が40〜60%の材質からなるようにし,その厚さが80〜120Åに形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,平面表示装置およびその製造方法にかかり,さらに詳しくは外光の反射を防止する部分に特徴のある平面表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の平面表示装置(平板表示装置)のうち,例えば有機電界発光(有機EL)表示装置は,外光の強度によって画像のコントラストが低下するといった問題があった。例えば,外光の強度が発光層の発光強度よりも大きい場合などには,コントラストが著しく低下するといった問題があった。また,特に黒色を表示する場合,周囲光が電極に反射することにより黒色の表示が良好に行われないといった問題があった。このような問題を解決するために,例えばブラックマトリックス(BM)膜などを発光領域に設けて外光を遮光する方法があるが,発光領域で外光を遮断して良好な黒色表示を行うことは,実際には大変難しい。従って,いかにして外光を遮光して,高コントラストでかつ黒表示が良好な画質を得るかが課題となっていた。
【0003】
上記のような問題を解決するために,例えば図1に示すような,円偏光板140(circular polarizer)で外光を遮断する方法が知られている。円偏光板140は,線形偏光板145(liner polarizer;または直線偏光板)と1/4補償板141(1/4λ;または1/4波長板)からなる。このような円偏光板140においては,1/4補償板141の2軸(高速軸及び低速軸)がそれぞれ線形偏光板145の軸(直線偏光光の偏光方向)に対して45°の角度をなすように配設することにより円偏光を得ることができる。したがって,外光は,先ず上記のように配設された線形偏光板145を通過することにより,1/4補償板141の軸側に45°の角度に偏光される。そして,この偏光された光が1/4補償板141を通過するとき,光は螺旋運動をして円偏光となる。次に,上記円偏光された光がディスプレイの反射板で反射されると,螺旋運動の回転方向が逆転される。この回転方向が逆転された反射光が再び1/4補償板141を通過すると,光の回転は停止し,光は下の線形偏光板145の偏光面に対して90°をなす線形偏光に変換される。そして,この線形偏光が線形偏光板145で吸収されることにより外光を遮断することができる。
【0004】
そして,上記のような円偏光板140を適用した有機電界発光表示装置が開示されている(例えば,特許文献1参照)。かかる有機電界発光表示装置は,図1に示すように,円偏光板140,下部絶縁基板100,透過型第1電極110,有機発光層120,反射型第2電極130などが積層された構造を有する。
【0005】
そして,上記のような構造を有する有機電界表示装置の光透過率を実験により測定してみると,有機発光層120で発光された光のうち円偏光板140を透過する光はおよそ44%であった。
【0006】
このような実験による測定結果から,有機発光層120で発光された光の相当量が円偏光板140により吸収されてしまっていることがわかる。したがって,有機発光層120の実際の発光効率及びコントラストに対して,表示される画像の発光効率及びコントラストはかなり低下するといった問題がある。また,偏光板を使用することにより光の輝度が減少するため,所望の輝度を具現するためには相対的に高い電圧を印加しなければならず,その結果,消費電力が増加し,また,各素子の寿命が短縮するといった問題も生じる。更に,偏光板の値段が高価であるため,製造費用が増加し,製造工程も複雑になるといった問題もある。
【0007】
一方,上記のような問題点を克服するため,カナダのルクセル社(Luxell)では,偏光板を用いる代わりに,無機発光層と電極との間に吸収層および誘電体層を設けた無機EL素子が開発されている(例えば,非特許文献1参照)。上記技術では,例えば,発光層から発光された光と反射型の電極で反射された周囲光との間で光学干渉を発生させることにより,周囲光によって画像表示が損なわれるのを防止しており,その結果,黒画像の表示も良好に行われるようになる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,596,246号明細書
【非特許文献1】Journal of Military and Aerospace Electronics, Volume9,No.6,June,1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし,非特許文献1に記載の技術では,良好な黒表示を行うためには,発光層からの光と電極で反射された周囲光とが効果的に干渉されるように薄膜の屈折率及び吸収率を考慮して各薄膜の厚さを精密に調節しなければならず,製造が困難であるという問題があった。
【0010】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,発光層の発光効率を低下させることなく外光の反射を抑制することのできる平面表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板の一方の面(上部)に形成される画素電極と;上記画素電極の上に形成されて,少なくとも発光層を含む有機膜と;上記有機膜の上に(上記画素電極と対向して)形成される対向電極と;上記対向電極の上に形成される透明膜と;上記透明膜の上に形成される半透過金属層とを含んで構成されることを特徴とする平面表示装置(平板表示装置)が提供される。
【0012】
このような本発明にかかる平面表示装置によれば,透明膜で位相反転された外光と半透過金属層で反射された外光が干渉して相殺されることにより,外光の反射が低減されて良好な黒表示を実現することができる。また,上記半透過金属層は,発光層で発光された光に対する吸収率が低いので,平面表示装置の発光効率及びコントラストを低下させることなく外光の反射を抑制することができる。
【0013】
このとき,上記基板と上記画素電極との間に,複数の薄膜トランジスタをさらに含んでもよい。また,上記画素電極は反射電極であることができる。そして,上記有機膜は,正孔注入層,正孔輸送層,正孔阻止層,電子輸送層,または電子注入層からなる群より選択される少なくとも一つの薄膜をさらに含んでもよい。
【0014】
そして,上記対向電極は,透過率が10〜40%の材質からなるのがよい。また,上記対向電極は,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種により形成されることができる。また,上記対向電極の厚さは150〜250Åであるのがよく,より好ましくは,180Åであるのがよい。
【0015】
そして,上記透明膜は有機膜または無機膜であることができる。また,上記透明膜の厚さは400〜1300Åであるのがよく,より好ましくは,500〜800Åであるのがよい。更に,上記透明膜は,有機膜と無機膜の積層構造であることができる。このとき,上記無機膜は,SiN,SiO,SiONまたは透過性導電酸化膜(TCO:Transparent Conductive Oxide)からなる群より選択される少なくとも1種の薄膜からなることができる。
【0016】
そして,上記半透過金属層は,透過率が40〜60%の材質からなるのがよい。また,上記半透過金属層は,Mg,Ag,MgAg,Cr,PtまたはAuからなる群より選択される1種からなることができる。そして,上記半透過金属層の厚さは80〜120Åであるのがよい。
【0017】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板の一方の面(上部)に形成される画素電極と;上記画素電極の上に形成されて,少なくとも発光層を含む有機膜と;上記有機膜の上に(上記画素電極と対向して)形成される対向電極と;上記対向電極の上に形成される位相反転層と;上記透明膜の上に形成される反射膜とを含んで構成されること,を特徴とする平面表示装置(平板表示装置)が提供される。
【0018】
このような本発明にかかる平面表示装置によれば,位相反転層で位相反転された外光と反射膜で反射された外光が干渉して相殺されることにより,外光の反射が低減されて良好な黒表示を実現することができる。また,上記反射膜は,発光層で発光された光に対する吸収率が低いので,平面表示装置の発光効率及びコントラストを低下させることなく外光の反射を抑制することができる。
【0019】
このとき,上記基板と上記画素電極との間に,複数の薄膜トランジスタをさらに含んでもよい。また,上記画素電極は反射電極であることができる。そして,上記有機膜は,正孔注入層,正孔輸送層,正孔阻止層,電子輸送層,または電子注入層からなる群より選択される少なくとも一つの薄膜をさらに含んでもよい。
【0020】
そして,上記対向電極は,透過率が10〜40%の材質からなるのがよい。また,上記対向電極は,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種により形成されることができる。また,上記対向電極の厚さは150〜250Åであるのがよく,より好ましくは,180Åであるのがよい。
【0021】
そして,上記位相反転層は有機膜または無機膜であることができる。また,上記位相反転層の厚さは400〜1300Åであるのがよく,より好ましくは,500〜800Åであるのがよい。更に,上記位相反転層は,有機膜と無機膜の積層構造であることができる。このとき,上記無機膜は,SiN,SiO,SiONまたは透過性導電酸化膜(TCO:Transparent Conductive Oxide)からなる群より選択される少なくとも1種の薄膜からなることができる。
【0022】
そして,上記反射膜は,透過率が40〜60%の材質からなるのがよい。また,上記反射膜は,Mg,Ag,MgAg,Cr,PtまたはAuからなる群より選択される1種からなることができる。そして,上記反射膜の厚さは80〜120Åであるのがよい。
【0023】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板の一方の面(上部)に画素電極を形成する工程と;上記画素電極の上部に少なくとも発光層を含む有機膜を形成する工程と;上記有機膜の上部に(上記画素電極と対向して)対向電極を形成する工程と;上記対向電極の上部に透明膜を形成する工程と;上記透明膜の上部に半透過金属層を形成する工程とを含むこと,を特徴とする平面表示装置(平板表示装置)の製造方法が提供される。
【0024】
このような本発明にかかる平面表示装置の製造方法によれば,透明膜で位相反転された外光と半透過金属層で反射された外光が干渉して相殺されることにより,外光の反射が低減されて良好な黒表示を実現することができる。また,上記半透過金属層は,発光層で発光された光に対する吸収率が低いので,平面表示装置の発光効率及びコントラストを低下させることなく外光の反射を抑制することができる。
【0025】
このとき,上記基板と上記画素電極との間に,一つ以上の薄膜トランジスタをさらに形成する工程を含んでもよい。また,上記画素電極は反射電極であることができる。そして,上記有機膜は,正孔注入層,正孔輸送層,正孔阻止層,電子輸送層,または電子注入層からなる群より選択される少なくとも一つの薄膜をさらに含んでもよい。
【0026】
そして,上記対向電極は,透過率が10〜40%の材質からなるのがよい。また,上記対向電極は,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種により形成されることができる。また,上記対向電極の厚さは150〜250Åであるのがよい。
【0027】
そして,上記透明膜は有機膜または無機膜であることができる。また,上記透明膜の厚さは400〜1300Åであるのがよく,より好ましくは,500〜800Åであるのがよい。更に,上記透明膜は,有機膜と無機膜の積層構造であることができる。このとき,上記無機膜は,SiN,SiO,SiONまたは透過性導電酸化膜(TCO:Transparent Conductive Oxide)からなる群より選択される少なくとも1種の薄膜からなることができる。
【0028】
そして,上記半透過金属層は,透過率が40〜60%の材質からなるのがよい。また,上記半透過金属層は,Mg,Ag,MgAg,Cr,PtまたはAuからなる群より選択される1種からなることができる。そして,上記半透過金属層の厚さは80〜120Åであるのがよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば,対向電極の表示面側に,透明膜と半透過金属層,または位相反転層と反射膜からなる積層構造を設けることにより,発光層の発光効率を低下させることなく外光の反射を防止することのできる平面表示装置及びその製造方法を提供できるものである。このように発光効率を低下させることなく外光の反射を防止できるようにしたことにより,発光効率及びコントラストに優れ,黒色表示が良好な画像を表示することがでる。また,発光層の発光効率が低下されないので,駆動電圧を低くして発光層の輝度を抑制しても,表示画像として要求される輝度を満たすことができるので,低電圧駆動が可能となり,平面表示装置の消費電力の節減及び寿命特性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
先ず,本発明の実施の形態にかかる平面表示装置について説明する。図2は,本実施形態にかかる平面表示装置を示す断面図である。図2に基づいて,平面表示装置が有機電界発光表示装置である場合を例にとって説明する。
【0032】
有機電界発光表示装置は,透明基板200の上部に画素電極210が形成され,画素電極210の上部に少なくとも発光層を含む有機膜220が形成され,有機膜220の上部に対向電極230,透明膜240および半透過金属層242が順次形成される。すなわち,有機電界発光表示装置は,透明基板200の一方の面に,画素電極210とこれに対向して設けられる対向電極230を有し,これら電極間に少なくとも発光層を含む有機膜220が形成される。
【0033】
そして,本実施形態においては,対向電極230の表示面側に透明膜240及び半透過金属層242が更に積層形成される。透明膜240は,対向電極230から反射される光の位相を反転させることができる。半透過金属層242は,外部から入射する外光を反射させることができる。本実施形態においては,半透過金属層242で反射された外光と透明膜240で位相反転された外光が干渉して相殺されることにより,外光の反射を低減させて,良好な黒表示を実現している。また,透明膜240及び半透過金属層242は発光層で発光された光に対する吸収率が低いので,有機電界発光表示装置の発光効率及びコントラストを低下させることなく周囲光の反射を抑制することができる。ここで,本実施形態においては,対向電極230の上に透明膜240と半透過金属層242が順に積層形成されるが,対向電極230の上に位相反転層と反射膜が順に積層形成される構造とすることもできる。
【0034】
ここで,透明基板200と画素電極210間には,複数の薄膜トランジスタをさらに形成することができる。
【0035】
画素電極210は,反射電極であって,Al,Agまたはこれらの合金からなる反射膜の一方の面に,透過性導電酸化膜(TCO:transparent conductive oxide)を積層して形成される。アルミニウム合金の例としては,Al−Nd(アルミネオジウム)などがある。また,透過性導電酸化膜の例としては,ITO(酸化インジウムスズ),またはIZO(酸化インジウム亜鉛)などがある。
【0036】
対向電極230は,半透過金属電極層であって,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種からなる。対向電極230は,150〜250Åの厚さに形成され,より好ましくは180Åの厚さに形成されるのがよい。
【0037】
透明膜240は,対向電極130から反射される光の位相を反転させる位相反転層としての役割りを果たすことができる。透明膜240は,有機膜,無機膜,またはその積層構造であることができる。透明膜240が有機膜である場合,有機膜の材質は特に限定されず,透明膜240が無機膜である場合は,SiN,SiO,SiON,または透過性導電酸化膜などが使用可能である。かかる透明膜240は,400〜1300Åの厚さに形成されるのがよく,より好ましくは500〜800Åの厚さに形成されるのがよい。透明膜240の厚さの範囲が上記の範囲を外れると,半透過金属層242で反射された光との位相差によって外光を消滅させるのが困難になる。
【0038】
半透過金属層242は,外部から入射する外光を反射させる反射膜としての役割りを果たすことができる。すなわち,半透過金属層242は,外光の一部を反射させることができる。半透過金属層242は,Mg,Ag,MgAg,Cr,Pt,またはAuからなる群より選択される1種からなることができる。半透過金属層242は,60〜130Åの厚さに形成されるのがよく,より好ましくは80〜120Åの厚さに形成されるのがよい。また,半透過金属層242には,対向電極230よりも透過率が高い材質を使用するのがよい。例えば,対向電極230には透過率が10〜40%の材質を使用するのがよいが,このとき,半透過金属層242には透過率が40〜60%の材質を使用するのがよい。
【0039】
次に,本発明の実施の形態にかかる平面表示装置の製造方法について説明する。以下に,平面表示装置が有機電界発光表示装置である場合を例にとって,製造方法について説明する。
【0040】
先ず,透明基板200の一方の面(表示面側)に画素電極210を形成する。画素電極210は透明電極であって,ITOまたはIZOなどの透過性導電酸化膜(TCO)からなる。画素電極210は,その下部(透明基板200側の面)に反射膜(図示せず)をさらに含む。この際,透明基板200と画素電極210との間に,一つ以上の薄膜トランジスタをさらに形成することもできる。
【0041】
次に,画素電極210の上部(表示面側)に,少なくとも発光層を含む有機膜220を形成する。ここで,有機膜220は,正孔注入層(HIL),正孔伝達層(HTL),正孔阻止層(HBL),電子輸送層(ETL),または電子注入層(EIL)からなる群より選択される少なくとも一層をさらに含むことができる。
【0042】
その後,有機膜220の上部(表示面側)に,対向電極230を形成する。対向電極230は半透過金属電極層であって,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種からなる。対向電極230は,150〜250Åの厚さに形成され,より好ましくは180Åの厚さに形成されるのがよい。
【0043】
次に,対向電極230の上部(表示面側)に透明膜240を形成する。透明膜240は,有機膜,無機膜またはその積層構造であることができる。透明膜240の厚さは,400〜1300Åに形成されるのがよく,より好ましくは500〜800Åに形成されるのがよい。透明膜240の厚さの範囲が上記の範囲を外れると,半透過金属層242で反射された光との位相差によって外光を消滅させることができなくなるため,良好な黒表示を行うのが難しくなる。透明膜240が有機膜である場合,有機膜の種類としてはどのような種類の有機膜でも使用可能である。また,透明膜240が無機膜である場合,SiN,SiO,SiONまたは透過性導電酸化膜(TCO:Transparent Conductive Oxice)などが使用可能である。かかる透明膜240は,対向電極130から反射される光の位相を反転させる位相反転層としての役割りを果たすことができる。
【0044】
その後,透明膜240の上部(表示面側)に半透過金属層242を形成する。半透過金属層242は,Mg,Ag,MgAg,Cr,PtまたはAuからなる群より選択される1種から形成することができる。半透過金属層242は,80〜120Åの厚さに形成されるのがよい。上記半透過金属層242の厚さの範囲は,透明膜240の厚さと調和して外光を干渉及び相殺させ得る最適の厚さ範囲である。半透過金属層242は反射膜であって,外部から入射する外光を反射させる。かか半透過金属層242で反射された外光と,透明膜240で位相反転された光とが干渉及び相殺されることによって,良好な黒表示を実現することができる。
【0045】
このとき,透明膜240と半透過金属層242は,有機電界発光表示素子の発光領域においてパタニングされることもできる。
【0046】
図3は,本実施形態による有機電界発光表示装置の輝度と,従来の技術による有機電界発光表示装置の輝度とを比較したグラフである。本実施形態においては,有機電界発光表示素子の対向電極の上部(表示面側)に,有機絶縁膜または無機絶縁膜で位相反転層(透明膜240)を形成し,位相反転層の上部(表示面側)に,MgAg膜で反射膜(半透過金属層242)を形成した。また,従来の技術においては,有機電界発光表示素子の対向電極の表示面側に,偏光板を配設した。
【0047】
図3に示すように,対向電極の上部に偏光板を設けた従来の技術と比較すると,対向電極の上部に位相反転層及び反射膜を形成した本実施形態の場合の方が,輝度が著しく向上されていることがわかる。ここで,反射膜としてのMgAg膜の厚さを,50Åの厚さに形成した場合と100Åの厚さに形成した場合とを比較すると,輝度はほぼ同一であった。
【0048】
図4は,本実施形態による有機電界発光表示装置の発光効率と,従来の技術による有機電界発光表示装置の発光効率とを比較したグラフである。図3の場合と同様に,本実施形態としては,有機電界発光表示素子の対向電極の上部に位相反転層及び反射膜を形成し,従来の技術としては,有機電界発光表示素子の対向電極の上部に偏光板を形成した。図4を参照すると,本実施形態においては,従来の技術よりも発光効率が著しく向上することが分かる。
【0049】
以下に,本実施形態にかかる平面表示装置によって,発光効率が向上されること,及び黒表示が改善されることを,実施例と比較例とを対照させながら説明する。下記に挙げる実施例は,本発明の理解を助けるためのものであり,本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
先ず,基板の上部(表示装置の画像表示側となる面の上)に,画素電極と,少なくとも発光層を含む有機膜と,対向電極とを順に積層形成した。ここで,上記有機膜の厚さは,色相によって異なるように形成し,赤色発光層及び緑色発光層はそれぞれ400Åの厚さに,青色発光層は150Åの厚さに形成した。また,電子輸送層は250〜300Åの厚さに形成した。そして,対向電極は180Åの厚さに形成した。
【0051】
次に,上記対向電極の上部に透明膜及び半透過金属層を順に形成した。上記透明膜は500〜800Åの厚さに形成し,上記半透過金属層は80〜120Åの厚さに形成した。そして,実施例1の有機電界発光表示装置の発光効率を測定したところ,赤色が8cd/A,緑色が28cd/A,青色が1.4cd/Aとなった。
【0052】
<比較例1>
実施例1と同様に基板の上部に,画素電極,有機膜及び対向電極を順に積層形成した。対向電極の上部には,実施例1と同様の透明膜のみを形成した。比較例1の有機電界発光表示装置の発光効率は,赤色が11cd/A,緑色が56cd/A,青色が1.8cd/Aであった。
【0053】
<比較例2>
実施例1と同様に基板の上部に,画素電極,有機膜及び対向電極を順に積層形成した。
対向電極の上部には,偏光板を形成した。比較例2の有機電界発光表示装置の発光効率は,赤色が4.8cd/A,緑色が24cd/A,青色が0.8cd/Aであった。
【0054】
下記表1に,実施例1,比較例1及び比較例2の有機電界発光表示装置の発光効率を比較できるように表示した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1を参照すると,本発明の実施の形態である実施例1では,偏光板を使用した比較例2と比較すると,緑色の発光効率が170%,赤色の発光効率が116%,青色の発光効率が175%向上したことが分かる。
【0057】
次に,本実施形態による平面表示装置によって,黒表示が改善されることを説明する。図5a〜図5cは,黒表示された画面を示す写真である。図5aは,対向電極の上部に透明膜が積層形成された有機電界発光表示装置による黒表示画像である。図5b及び図5cは,対向電極の上部に透明膜及び半透過金属層が積層形成された有機電界発光表示装置による黒表示画像である。そして,図5bの半透過金属層の厚さは50Åであり,図5cの半透過金属層の厚さは100Åである。図5a〜図5cを参照すると,半透過金属層が100Åの厚さに積層された図5cの黒表示(写真の中心部)が最も優れていることが分かる。
【0058】
次に,本実施形態にかかる有機電界発光表示装置の有機電界発光表示素子の反射率を測定した結果を示す。図6は,本実施形態による有機電界発光表示素子の反射率を示すグラフである。グラフのA線は,画素電極の反射率を示す。グラフのC線は,対向電極の上部に透明膜及び半透過金属層が積層されたときの反射率を示す。比較の参考として,反射率の高いアルミニウム(Al)の反射率を,B線として示した。
【0059】
図6のグラフのC線を参照すると,本実施形態の,対向電極の上部に透明膜及び半透過金属層が積層された有機電界発光表示素子により,外光による反射率が著しく減少することが分かる。
【0060】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば,本発明の実施の形態においては,有機電界発光表示装置を例にとって説明したが,本願発明は液晶表示装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は,平面表示装置及びその製造方法に適用可能であり,特に有機電界発光表示装置及びその製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の円偏光板を備えた有機電界発光表示装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による有機電界発光表示装置を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態による有機電界発光表示装置と従来の技術による有機電界発光表示装置の輝度を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態による有機電界発光表示装置と従来の技術による有機電界発光表示装置の発光効率を示すグラフである。
【図5a】対向電極の上部に透明膜が積層された構造を有する有機電界発光表示装置の黒表示画面である。
【図5b】対向電極の上部に透明膜と厚さ50Åの半透過金属層が積層された構造を有する有機電界発光表示装置の黒表示画面である。
【図5c】対向電極の上部に透明膜と厚さ100Åの半透過金属層が積層された構造を有する有機電界発光表示装置の黒表示画面である。
【図6】本発明の実施の形態による有機電界発光表示素子の反射率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0064】
100 下部絶縁基板
110 透過型第1電極
120 有機発光層
130 反射型第2電極
140 円偏光板
141 1/4補償板(1/4波長板)
145 線形偏光板(直線偏光板)
200 透明基板
210 画素電極
220 有機膜
230 対向電極
240 透明膜
242 半透過金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に形成される画素電極と,
前記画素電極の上に形成されて,少なくとも発光層を含む有機膜と,
前記有機膜の上に形成される対向電極と,
前記対向電極の上に形成される透明膜と,
前記透明膜の上に形成される半透過金属層とを含んで構成されること,
を特徴とする平面表示装置。
【請求項2】
前記基板と前記画素電極との間に,複数の薄膜トランジスタをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項3】
前記画素電極は反射電極であることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項4】
前記有機膜は,正孔注入層,正孔輸送層,正孔阻止層,電子輸送層,または電子注入層からなる群より選択される少なくとも一つの薄膜をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項5】
前記対向電極は,透過率が10〜40%の材質からなることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項6】
前記対向電極は,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種により形成されることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項7】
前記対向電極の厚さは150〜250Åであることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項8】
前記対向電極の厚さは180Åであることを特徴とする請求項7に記載の平面表示装置。
【請求項9】
前記透明膜は有機膜または無機膜であることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項10】
前記透明膜の厚さは400〜1300Åであることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項11】
前記透明膜の厚さは500〜800Åであることを特徴とする請求項10に記載の平面表示装置。
【請求項12】
前記透明膜は,有機膜と無機膜の積層構造であることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項13】
前記無機膜は,SiN,SiO,SiONまたは透過性導電酸化膜からなる群より選択される少なくとも1種の薄膜からなることを特徴とする請求項9又は12のいずれか1項に記載の平面表示装置。
【請求項14】
前記半透過金属層は,透過率が40〜60%の材質からなることを特徴とする請求項1又は請求項5のいずれか1項に記載の平面表示装置。
【請求項15】
前記半透過金属層は,Mg,Ag,MgAg,Cr,PtまたはAuからなる群より選択される1種からなることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項16】
前記半透過金属層の厚さは80〜120Åであることを特徴とする請求項1に記載の平面表示装置。
【請求項17】
基板の一方の面に形成される画素電極と,
前記画素電極の上に形成されて,少なくとも発光層を含む有機膜と,
前記有機膜の上に形成される対向電極と,
前記対向電極の上に形成される位相反転層と,
前記透明膜の上に形成される反射膜とを含んで構成されること,
を特徴とする平面表示装置。
【請求項18】
前記基板と前記画素電極との間に,複数の薄膜トランジスタをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項19】
前記画素電極は反射電極であることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項20】
前記有機膜は,正孔注入層,正孔輸送層,正孔阻止層,電子輸送層,または電子注入層からなる群より選択される少なくとも一つの薄膜をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項21】
前記対向電極は,透過率10〜40%の材質からなることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項22】
前記対向電極は,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種により形成されることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項23】
前記対向電極の厚さは150〜250Åであることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項24】
前記対向電極の厚さは180Åであることを特徴とする請求項23に記載の平面表示装置。
【請求項25】
前記位相反転層は有機膜または無機膜であることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項26】
前記位相反転層の厚さは400〜1300Åであることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項27】
前記位相反転層の厚さは500〜800Åであることを特徴とする請求項26に記載の平面表示装置。
【請求項28】
前記位相反転層は,有機膜と無機膜の積層構造であることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項29】
前記無機膜は,SiN,SiO,SiONまたは透過性導電酸化膜からなる群より選択される少なくとも1種の薄膜からなることを特徴とする請求項25又は28のいずれか1項に記載の平面表示装置。
【請求項30】
前記反射膜は,透過率が40〜60%の材質からなることを特徴とする請求項17又は21のいずれか1項に記載の平面表示装置。
【請求項31】
前記反射膜は,Mg,Ag,MgAg,Cr,PtまたはAuからなる群より選択される1種からなることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項32】
前記反射膜は,厚さが80〜120Åであることを特徴とする請求項17に記載の平面表示装置。
【請求項33】
基板の一方の面に画素電極を形成する工程と,
前記画素電極の上部に少なくとも発光層を含む有機膜を形成する工程と,
前記有機膜の上部に対向電極を形成する工程と,
前記対向電極の上部に透明膜を形成する工程と,
前記透明膜の上部に半透過金属層を形成する工程とを含むこと,
を特徴とする平面表示装置の製造方法。
【請求項34】
前記基板と前記画素電極との間に,一つ以上の薄膜トランジスタをさらに形成する工程を含むことを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項35】
前記画素電極は反射電極であることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項36】
前記有機膜は,正孔注入層,正孔輸送層,正孔阻止層,電子輸送層,または電子注入層からなる群より選択される少なくとも一つの薄膜をさらに含むことを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項37】
前記対向電極は,Mg,MgAg,Ca,CaAg,Ag,AlCa,AlAg,LiMgまたはLiからなる群より選択される1種により形成されることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項38】
前記対向電極の厚さは150〜250Åであることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項39】
前記透明膜は有機膜または無機膜であることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項40】
前記透明膜の厚さは400〜1300Åであることを特徴とする請求項39に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項41】
前記透明膜の厚さは500〜800Åであることを特徴とする請求項41に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項42】
前記透明膜は,有機膜と無機膜の積層構造であることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項43】
前記無機膜は,SiN,SiO,SiONまたは透過性導電酸化膜からなる群より選択される少なくとも1種の薄膜からなることを特徴とする請求項39又は42のいずれか1項に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項44】
前記半透過金属層は,透過率40〜60%の材質からなることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項45】
前記半透過金属層は,Mg,Ag,MgAg,Cr,PtおよびAuからなる群から選択される1種からなることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。
【請求項46】
前記半透過金属層は,厚さが80〜120Åであることを特徴とする請求項33に記載の平面表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−156396(P2006−156396A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343939(P2005−343939)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】