幹細胞由来のヒト病態モデルとしての遺伝子導入非ヒト哺乳動物
【課題】幹細胞に由来するヒト病態、例えば慢性骨髄性白血病、B細胞系急性リンパ母細胞性白血病、T細胞系急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常や、造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する染色体異常などを再現する遺伝子導入哺乳動物の提供。
【解決手段】Sca−1+細胞において導入遺伝子の発現を導くプロモータを使用して、前記ヒト病態に関与する遺伝子の発現の一使用方法に関して、前記遺伝子導入動物は前記疾病を研究するためかつ前記疾病を治療および/または予防するための化合物を評価するために使用するモデル。
【解決手段】Sca−1+細胞において導入遺伝子の発現を導くプロモータを使用して、前記ヒト病態に関与する遺伝子の発現の一使用方法に関して、前記遺伝子導入動物は前記疾病を研究するためかつ前記疾病を治療および/または予防するための化合物を評価するために使用するモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSca−1細胞において導入遺伝子の発現を導くプロモータの手段によってヒ
ト病態に伴う遺伝子の発現を使用する幹細胞由来のヒト病態を再現する遺伝子導入非ヒト
哺乳動物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子導入動物はそのゲノムに外因性遺伝子(導入遺伝子)を支持する動物であり、該
遺伝子は発生の初期段階でその動物の生殖細胞またはその前身に導入される。動物に対す
る導入遺伝子の導入は導入される遺伝子の行動、発現または機能を研究する目的を有して
いる。また、治療上の目的のために病気におかされている人間を遺伝的によくしたり、動
物を改良したりすることを目的とすることもある。
【0003】
遺伝子導入哺乳動物の産出は十分に確立された技術であり(例えば、ホーガン,コンス
タンチニ および ラシー(1986年)著、マウス胎生触診、研究所手引、コールド
スプリング ハーバー 所在、コールド スプリング バーバ研究所発行(1986年)
を参照「Hogan,Constantini and Lacy(1986),Man
ipulating The Mouse Embryo. A Laboratory
Manual,Cold Spring Harbor(1986)」)、遺伝子導入
哺乳動物について記述した多くの論文および特許文献があることによってもこのことがわ
かる。実例としては、米国特許第4,736,866号、同第4,873,191号、同
第5,175,383号および同第5,175,384号明細書などを挙げることができ
る。
【0004】
導入遺伝子の発現は哺乳動物に新しい表現型を与えることができる。挿入される導入遺
伝子および哺乳動物におけるその発現レベルに依存して、動物は特定の疾病に関して感受
性が強くなったり弱くなったりする。このような遺伝子導入哺乳動物は疾病の診断に対す
る有益な方法の開発および/または疾病の予防及び治療において潜在的に有効となる化合
物の生体内研究における貴重なモデルである。
【0005】
ヒト疾病のグループ「幹細胞由来のヒト病態」という部類において、造血幹細胞および
非造血幹細胞に由来の腫瘍性のものおよび非腫瘍性のもの、例えば、骨髄性白血病、B細
胞リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、リンパ腫、肉腫および幹細胞発生の病態、例
えば、先天性免疫不全症およびファンコーニ貧血等を挙げることができる。ヒトの悪性腫
瘍病態(ほとんど全てが幹細胞由来である)は現在のところ化学療法、照射療法および/
または外科手術を組み合わせて治療されているが、これらの方法では、正常な細胞と腫瘍
細胞を区別することができない。非腫瘍性病態の治療では、これらに代わって、免疫グロ
ブリン、ワクチン、輸血などの治療が行われている。
【0006】
近年、造血性腫瘍および固体腫瘍の両方に関連する染色体異常によって発生する遺伝子
および/または活性化遺伝子が確認された(遺伝学評論年鑑(1997年)第31巻、第
429頁乃至第453頁「Annu. Rev. Genetics(1997)31:
429−453」)。しかし、生体内で前記遺伝子が腫瘍形成することは証明されてはい
るが(現代遺伝学(2000年)第1巻、第71頁乃至第80頁「Current Ge
nomics(2000),1:71−80」)、これらの確認にもかかわらず、前記病
態を再現するための動物モデルは今のところ存在しない(ガン遺伝子(1999年)第1
8巻、第5248頁及びガン遺伝子(1999年)第18巻、第5249頁乃至第525
2頁「Oncogene(1999)18:5248,Oncogene(1999)1
8:5249−5252」)。同様に、近年、ガンが始まるターゲットは幹細胞であるこ
とが示されている(血液(2000年)第95巻、第1007頁乃至第1113頁、ガン
遺伝子(2000年)第19(20)巻、第2143頁乃至第2422頁およびネイチャ
ー(2001年)第414巻、第105頁乃至第111頁「Blood(2000)95
:1007−1113,Oncogene(2000)19(20):2413−242
2,Nature(2001)414:105−111」)。
【0007】
現代遺伝子(2000年)第1巻、第71頁乃至第80頁(Cursent geno
mics(2000)1:71−80)には、例えば慢性骨髄性白血病(BCR−ABL
P 2 1 0 )、B細胞急性リンパ母細胞性白血病(BCR−ABLP 1 9 0 )、B
細胞急性リンパ母細胞性白血病(HOX11、RHOM2/LMO−2およびTAL1)
等の異なる病態に関連する染色体異常によって活性化される遺伝子融合または遺伝子を発
現する周知のマウスモデルが示されている。しかし、該モデルは前記遺伝子または遺伝子
融合によって発現されたタンパク質が腫瘍形成することのみが示され、前記モデルと関連
するヒト病態が特別に再現されるものではない。
【0008】
幹細胞由来のヒト病態の破滅的な作用の観点から、該病態の治療および/または予防の
潜在的に有効な化合物を研究することはもちろん、前記ヒト病態を研究するために生体内
モデルを備える適切な動物を生成する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は幹細胞由来のヒト病態を再現する動物モデルを生成する問題に取り組んでいる
。
【0010】
本発明による幹細胞由来のヒト病態を再現する動物モデルは a)このような病態がど
のようにして発現され、維持されるのかを研究するための特別な工具を用いること、 b
)ヒトに対して潜在的に有効な治療の有効性を予想すること、 c)新しい治療方法の発
見、 d)各病態の経過を抑制または増加させる対立遺伝子のゲノム識別が可能になる。
【0011】
従って、本発明の目的は幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成およ
び/または活性化される遺伝子から成るDNA構造体を構成し、前記遺伝子はSca−1
+ 細胞において前記遺伝子の発現を導くプロモータによって制御される。
【0012】
本発明の他の目的は非遺伝子導入哺乳動物と比較した場合に、幹細胞由来のヒト病態を
発生させるために非常に強い性向を与える遺伝子型を持つ遺伝子導入非ヒト哺乳動物を生
成することにある。前記遺伝子導入非ヒト哺乳動物はとりわけ前記病態の研究にとってそ
して前記病態に対して潜在的に有効な治療および/または予防のための化合物の評価にと
って有効である。従って、本発明の目的は導入遺伝子を含有する遺伝子導入非ヒト哺乳動
物およびその子孫を生成することにある。
【0013】
本発明のその他の目的は導入遺伝子を含有する遺伝子導入マウスおよびその子孫を生成
することにある。特別な実施例において、前記遺伝子導入マウスはSca−1+ BCR
−ABLP 2 1 0 、Sca−1+ BCR−ABLP l 9 0 、Sca−1+ Sl
ug、Sca−1+ Snail、Sca−1+ HOX11、Sca−1+ RHOM2
/LMO−2、Sca−1+ TAL1によって構成されるグループから選択される。
【0014】
本発明のその他の別の目的は幹細胞由来のヒト病態を生体内で研究するための動物モデ
ルとして有効な遺伝子導入非ヒト哺乳動物を生成する方法からなっている。
【0015】
本発明のその他の別の目的はそのゲノムに前記DNA構造体を含む有する遺伝子導入非
ヒト哺乳動物の細胞系を構成することにある。
【0016】
本発明のその他の別の目的はその幹細胞由来のヒト病態を再現する動物モデルの発生の
ためSca−1+ 細胞における遺伝子の発現を導くプロモータを使用することからなっ
ている。
【0017】
本発明のその他の別の目的は幹細胞由来のヒト病態を治療および/または予防するため
に潜在的に有効な化合物の評価を行うための遺伝子導入非ヒト哺乳動物を使用することか
らなっている。
【0018】
本発明のその他の別の目的は治療方法の媒体としてSca−1+ 細胞における遺伝子
の発現を導くプロモータを使用することからなっている。また、Sca−1+ 細胞にお
ける遺伝子の発現を導く前記プロモータの使用はもちろん、前記プロモータと治療遺伝子
とから成るDNA構造体を含む医薬組成物も本発明の目的を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明により提供する解決策は各種の白血病と関係する染色体異常または造血幹細胞ま
たは胚幹細胞の移動によって形成および/または活性化される遺伝子からなるDNA構造
体を含有する遺伝子導入マウスが造血幹細胞または非造血幹細胞由来の腫瘍性および非腫
瘍性のヒト病態を種々のレベルで発生させるという発見に基づいており、前記遺伝子は幹
細胞のようなSca−1+ 細胞において前記遺伝子の発現を導くプロモータによって制
御される。Sca−1+ 細胞においてこのような遺伝子の発現を導くプロモータの使用
によって幹細胞の行動に対して各種の遺伝子の発現を導くことにより、ヒト病態を再現す
る動物モデルを発生させることが可能となった。この事実は、非遺伝子導入マウスと比較
した際に幹細胞由来のヒト病態を発生させるために非常に強い性向を与える遺伝子型を有
する一連の遺伝子導入マウスの発生によって証明されている。従って、本発明によって提
供される遺伝子導入哺乳動物は前記疾病についての研究および前記疾病の治療および/ま
たは予防に有効な化合物の評価に関して新規で有用なモデルである。
【0020】
本発明のその他の目的は以下の説明および特許請求の範囲を参照することによって当業
者にとっては明白である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は慢性骨髄性白血病を有するSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの
表現型および組織学的実施を構成する小区画写真図である。図1Aは、BCR−ABLP
2 1 0 マウスの骨髄(BM)および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な
分析結果を示している。Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスから分離され
た細胞は指定された単クローン抗体を用いて染色され(顆粒球系列はGr−1、骨髄単球
系列はMac1、幹系列はSca1である)、流動血球計算(フローサイトメトリー)に
よって分析された。陽性細胞の割合が示されている。Gr1+Mac1およびGr−1+
Sca1の陽性細胞の分布は寸法(サイズ、SSC)と粒度(foward、FSC)に
よって示されている。図1Bは慢性骨髄性白血病を有するSca−1+ BCR−ABL
P 2 1 0 マウスの脾臓、肝臓およびリンパ節の部分の代表的な組織学的検査の結果を
示す。全ての部分は、ヘマトキシリンおよびエオシンによって染色された。矢印は慢性骨
髄性白血病のプロセスの一般的な線維症および巨核球の存在を示している。図1Cは、S
ca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管に対するギムザ染色の代表的
な事例を示している。
【0022】
図2はSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスにおける骨髄性およびリンパ
性未分化危機の表現型および組織学的実例を構成する小区画写真図である。図2Aは未分
化危機に於けるSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの骨髄(BM)、脾臓
および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析結果を示している。未分化危
機のSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスから分離された細胞は指定された
モノクローナル抗体で染色され(顆粒球系列の場合はGr−1、骨髄性単球系列の場合は
Mac1、Bリンパ系列の場合はB220、幹系列の場合はSca1である)、そしてフ
ローサイトメトリー(flow cytometry)により分析された。Bリンパ性未
分化危機の例(PB#1)と骨髄性未分化危機の例(PB#2)が示されている。Gr−
1+Mac1についての陽性細胞の分布がサイズ(サイズ、SSC)に従って示されてい
る。図2Bは未分化危機を有するSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの肝
臓の部分の代表的な組織学的検査の結果を示す。全ての部分はヘマトキシリンおよびエオ
シンで染色された。白血病細胞による肝臓浸潤が観察された。図2Cはギムザで染色され
た未分化危機のSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管のギムザ染
色の代表的な事例を示し、未分化細胞が観察することができる。
【0023】
図3は、B細胞急性リンパ母細胞性白血病を有するSca−1+ BCR−ABLP 1
9 0 マウスの骨髄系およびリンパ系未分化危機の表現型および組織学的実例を構成す
る小区画写真図である。図3Aは、ABL特別プローブによるハイブリッド コントロー
ルおよびSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスに対するサザン ブロット法
を用いたDNA分析を示している。Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスに
は、導入遺伝子(pl90)の存在が観察される。図3Bは、Sca−1+ BCR−A
BLP 1 9 0 マウスおよびコントロール マウスの脾臓、肝臓、肺に対する代表的な
組織学的検査の結果と末梢血管の染色結果を示している。全ての組織学的な部位に対して
ヘマトキシリンおよびエオシンで染色を行い、末梢血管に対してはギムザ染色を行った。
Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスにおいて白血病細胞の存在が観察され
た。図3Cは、コントロール マウスとSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウ
スの骨髄(BM)および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析を示してい
る。コントロール マウスおよびSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスから
分離された細胞は指定されたモノクローナル抗体を用いて染色し(骨髄単球系列の場合は
Mac1、リンパ系列の場合はB220、CD19およびCD43、幹系列の場合はSc
a1である)、そしてフローサイトメトリーを用いて分析を行った。Sca−1+ BC
R−ABLP 1 9 0 マウスの腫瘍性細胞の割合を示す。B220/CD19に対する
腫瘍性細胞の分布がサイズ(サイズ、SSC)と粒度(foward/FSC)に従って
示されている。
【0024】
本発明は、幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/または活
性化される遺伝子から成るDNA構造体(以下において本発明のDNAと記載する)を提
供するものであり、前記遺伝子はSca−1+ 細胞における前記遺伝子の発現を導くプ
ロモータによって制御される。特別な実施例において、幹細胞由来のヒト病態に関連する
染色体異常は慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母
細胞性白血病に関連する染色体異常か、造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する染色
体異常の中から選択される。c−kitレセプタまたはそのリガンドの変化(幹細胞因子
(SCF))は造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連したヒト病態の一例である。
【0025】
本明細書中、「幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/また
は活性化される遺伝子」という表現(以下において活性化可能な遺伝子と記載する)は遺
伝子および遺伝子融合を意味し、該遺伝子及び遺伝子融合は哺乳動物のゲノムに組み込ま
れた場合に、該哺乳動物が前記遺伝子または遺伝子融合に関連する病態を発生させる可能
性を増大させる。特別な実施例において、活性化可能な遺伝子は慢性骨髄性白血病、B細
胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常か
、造血幹細胞または胚幹細胞に関連する染色体異常から選択された幹細胞由来のヒト病態
に関連する染色体異常によって形成および/または活性化される遺伝子である。実際には
、該活性化可能な遺伝子は、BCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP 1 9 0
、Slug、Snail、HOX11、RHOM2/LMO−2およびTALIとして確
認された遺伝子の中から選択されている。特に詳述すると、前記活性化可能な遺伝子は以
下の遺伝子の中から選択されている。
【0026】
ヒト遺伝子融合BCR− ABLP 2 1 0 − t(9;22)(q34;q11)
の結果として生成され、慢性骨髄性白血病に関連する。この染色体異常を示す患者は時間
の経過において前記疾病の進化現象特色を有する未分化危機を発生する。
【0027】
ヒトBCR−ABLP 1 9 0 − t(9:22)染色体転座によって発生するガン
遺伝子で、B細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する。
【0028】
マウスSlug− 造血幹細胞の動態に関与する遺伝子。
【0029】
マウスSnail− 胚幹細胞の移動に関与するSlugファミリーの遺伝子。
【0030】
ヒトHOX11− T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常によって活
性化される遺伝子。
【0031】
ヒトRHOM2/LMO−2− T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異
常によって活性化される遺伝子。
【0032】
マウスTAL1− T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常によって活
性化される遺伝子。
【0033】
BCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP l 9 0 、HOX11、RHOM2
/LMO−2およびTAL1として確認された活性化可能な遺伝子は、遺伝学評論年鑑(
1997年)第31巻、第429頁乃至第453頁(Annu.Rev.Genet(1
997)31:429−453)に記載されている。Slug遺伝子は ニエト エム
エー,サーゲント エム ジェー,ウィルキンソン デー ジェーおよびコーク ジェイ
著(1994年)、「Slug.ジンク−フィンガー遺伝子による脊椎発育中の細胞行動
の制御」、サイエンス、第264巻、第835頁乃至第849頁(Nieto MA,S
argent MG,Wilkinson DG and Cooke J(1994)
,「Control of Cell behaviour during verte
brate development−by Slug, A Zinc−finger
gene」Science 264:835−849)に記載され、Snail遺伝子
は ジアング アール,ラン ワイ,ノートン シー アール,サンドバーグ アイ ピ
ーおよびクライドレイ テー著(1998年)、「Slug遺伝子はマウスにおける中胚
葉または神経冠発育のために不可欠ではない」発育生物学、第198巻、第277頁乃至
第285頁(Jiang R,Lan Y,Norton CR,Sundberg I
P and Gridley T(1998),「The Slug gene is
not essential for mesoderm or neural cre
st development in mice」Developmental Bio
logy 198:277−285)に、セフトン エム,サンチス エス,およびニエ
ト エム エー著(1998年)、「ヒヨコおよびマウス胎児における転写因子のSna
ilファミリーの構成員についての保存および分岐役割」、発育、第125巻、第311
1頁乃至第3121頁(Sefton M,Sanchez S and Nieto
MA(1998))「Conserved and divergent roles
for members of The Snail FAMILY of TRANS
CRIPTION Factors in The chick and mouse
embryo」Development 125−3111−3121)に、およびヘマ
ベス ケ,アスザラフ エス アイおよびルプ ワイ ティー著(2000年)、「発育
およびガンの速いレーンにゆっくり移行する抑制体の Snail/Slug ファミリ
ー」遺伝子、第257巻、第1頁乃至第12頁(Hemavathy k,Asthra
f SI and Lp YT(2000)、「Snail/Slug family
of repressors:slowly going into the fast
lane of development and cancer」(Gene 25
7:1−12)に記載されている。これらの活性可能な遺伝子は前述の刊行物により提供
された情報から得られる。これらの遺伝子はいくつかの実施例に対して特殊化されている
が、本発明の教示はガンに存在する染色体異常によって形成および/または活性化される
どのような遺伝子または遺伝子融合に対しても適用することができる。このような遺伝子
または遺伝子融合についての情報は例えば遺伝子学評論年鑑(1997年)第31巻、第
429頁乃至第453頁(Annu.Rev.Genet.(1997)31;429−
453)に見出すことができる。
【0034】
Sca−1+ 細胞において活性化可能な遺伝子の発現を導くプロモータは、Sca−
1+ 細胞において活性化可能な遺伝子の発現を導く転写の開始に関連しかつ必要な核酸
の配列であり、そしてRNAポリメラーゼの結合サイトを含んでいる。本明細書において
は、「プロモータ」という用語は転写調整タンパク質が結合できる他のサイトを含む。特
別な実施例において、Sca−1+ 細胞の活性化可能な遺伝子の発現を導くプロモータ
は、マウスのpLy−6E1プロモータまたはその機能的断片であり、換言すれば、マウ
スにおける各種の導入遺伝子の組織の特別な発現を導くことが可能である。pLy−6E
1プロモータは良好に特徴付けられており、Sca−1+ 細胞における選択的な発現に
必要な全ての要素を含んでいる(ミレス シー,サチス エム ジェイ,シンクライヤ
エーおよびドジエルザク イー著(1997年)、「成人造血幹細胞及び発育マウス退治
におけるLy−6E1(Scal−1)導入遺伝子の発現」、発育、第124巻、第53
7頁乃至第547頁(Miles c.,Sanchez M−J,Sinclair
A,and Dzierzak,E.(1997)「Expression of th
e Ly−6E1(Sca−1)transgene in adult haemat
opoietic stem cells and the developing m
ouse embryo」Development 124:537,547))。
【0035】
「作用的に結合する」という表現は、活性化可能な遺伝子の配列に関するプロモータの
配置に関するものである。プロモータは、活性化可能な遺伝子の発現を制御または調製す
ることができるように配置されている。
【0036】
本発明のDNA構造体は、サムブロック,フィッチおよびマニアチス著(1989年)
、ニューヨーク州,コールド スプリング ハーバー研究所新聞社発行、「分子クローン
化、研究所手引き」(「Molecular Cloning:A Laborator
y Manual」(1989)Sambrook,Fitsch and Mania
tis,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory P
ress,Cold Spring Harbor NY)に示されるように、制限およ
び結合酵素、および同様の酵素を用いる従来の分解法によって容易に得ることができる。
【0037】
本発明のDNA構造体は、必要に応じて、上記に引用したサムブロック等著による刊行
物に記載の従来の方法を使用して哺乳動物胚を形質転換するためおよび遺伝子導入動物を
発生させるために有用なベクターの生成に使用することができる。
【0038】
変形例において、本発明のDNA構造体は遺伝子導入動物を発生させるため、DNAを
受精卵母細胞に微量注入するために有益であるDNAの線状断片を得るために使用できる
。微量注入に有用なDNAの線状断片は活性化可能な遺伝子からなる線状DNA断片を得
るために制限酵素で切断することによって得ることができる。
【0039】
その他の態様において、本発明はそのゲノムに本発明のDNA構造体換言すれば、幹細
胞由来のヒト病態に関与する異常な染色体例えば慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病、または、造血幹細胞または胚幹細胞の
移動に関連する染色体異常により形成および/または活性化される遺伝子から成る構造体
を含む遺伝子導入非ヒト哺乳動物を提供するものであり、該遺伝子はSca−1+ 細胞
における該遺伝子の発現を導くプロモータによって制御される。本発明が提供する遺伝子
導入非ヒト哺乳動物は、結果として、非遺伝子導入哺乳動物と比較した場合に、幹細胞由
来のヒト病態を発生する強い傾向を与える遺伝子型を所有する。前記非ヒト哺乳動物は、
中でも、前記病態を研究するためおよび前記病態を治療および/または予防するための潜
在的に有効な化合物を評価するために有効である。
【0040】
本明細書中で使用される「非ヒト哺乳動物」という表現は例えばマウスなど哺乳動物の
種に属するヒト以外のすべての動物が含まれる。
【0041】
特別な実施例において、本発明により提供される遺伝子導入非ヒト動物は以下のように
確認された遺伝子導入マウスである。
【0042】
Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 :これらのマウスは慢性骨髄性白血病を
発生する。
【0043】
Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 :これらのマウスはB細胞急性リンパ母
細胞性白血病を発生する。
【0044】
Sca−1+ Slug:これらのマウスは造血幹細胞を動態化する。
【0045】
Sca−1+ Snail:これらのマウスは胚幹細胞を動態化する。
【0046】
Sca−1+ HOX11:これらのマウスはT細胞急性リンパ母細胞性白血病を発
生する。
【0047】
Sca−1+ RHOM2/LMO−2:これらのマウスはT細胞急性リンパ母細胞
性白血病を発生する。
【0048】
Sca−1+ TAL1:これらのマウスはB細胞急性リンパ母細胞性白血病を発生
する。
【0049】
本発明が提供する遺伝子導入非ヒト哺乳動物の発生のために、本発明のDNA構造体は
胚芽状態において、例えば一細胞の状態、または受精卵母細胞の状態で、そして一般的に
はg細胞の段階よりは前に、前記哺乳動物またはその先祖に導入される。
【0050】
従って、本発明は以下のことから成る幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常を有
する遺伝子導入非ヒト哺乳動物を調製する方法を提供する。
(i)本発明のDNA構造体を遺伝子導入非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞に導入すること
。
(ii)子孫を生成するため前記受精卵母細胞を偽妊娠の乳母に移植すること。
(iii)幹細胞由来のヒト病態に関与する染色体異常によって形成された遺伝子および
/または活性化遺伝子の存在を評価するために前記子孫を分析すること。
【0051】
特別な実施例において、幹細胞由来のヒト病体に関与する染色体異常は慢性骨髄性白血
病、急性B細胞リンパ性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常
、または造血幹細胞または胚幹細胞の移動(例えば、レセプターc−kitまたはそのリ
ガンドの変化(SFC))に関連する染色体異常から選択されるヒト病態であり、その場
合に、幹細胞由来のヒト病態に関与する染色体異常によって形成される遺伝子および/ま
たは活性化遺伝子の存在を検査するために子孫の分析が行われる。
【0052】
活性化状態で染色体に組み入れられるように、核酸の配列が動物の胚に導入され得る技
術的な各種の方法が考えらており、これらは全て本発明の遺伝子導入非ヒト哺乳動物の発
生に適用することができる。1つの方法は核酸の配列を胚に自然に発生するように取り込
ませて増殖させ、結果として配列の活性化を与える座に配列が染色体上に組み込まれてい
る遺伝子導入動物を選択することから成っている。他の方法は胚に核酸の配列を導入する
前に、核酸の配列またはその制御配列を変更する方法がある。別の方法としては、導入す
る核酸の配列を含むベクターを使用して胚に取り込ませて増殖させる手段がある。
【0053】
特別な実施例において、本発明のDNA構造体を非ヒト哺乳動物の発芽系列に導入する
ことは非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞にSca−1+ 細胞の発現を導くプロモータに作
用的に結合する活性化可能な遺伝子を含む線状DNA断片の微量注入によって行われる。
【0054】
受精卵母細胞は、従来の方法、例えば、メスの排卵を誘発する方法、オスとの交尾に応
じて、または黄体ホルモンを処理するこによって分離することができる。一般的には、ホ
ルモンの作用およびオスとの交尾によって、メスに過剰排卵が生じる。適切な時間の経過
後、メスを屠殺し、受精卵母細胞を卵管から取り出し、これを適切な培養媒体中に保管す
る。受精卵母細胞は顕微鏡下で前核の存在によって確認することができる。線状DNA断
片の微量注入はオスの前核に対して行なわれる。
【0055】
本発明のDNA構造体を含む線状DNA断片を受精卵母細胞に導入した後、これらは適
切な期間中生体内において培養されるか、偽妊娠の乳母(生殖不能なオスとメスを交尾さ
せることよって得る)に再移植される。移植は従来の方法、例えば、メスに麻酔を施して
、十分な数の胚、例えば、10〜20の胚を偽妊娠の乳母の卵管に外科手術で挿入するこ
とによって行う。妊娠期間が終了したとき、いくつかの胚は妊娠が終了し、遺伝子導入非
ヒト哺乳動物が生み出される。これらの遺伝子導入非ヒト哺乳動物は理論的にそのゲノム
に組み込まれた本発明のDNA構造体を支持しており、生物の全ての細胞に存在している
。この子孫はG0世代であり、その各々は「遺伝子導入始祖」である。各々が注入された
核酸を組み込んでおり、そして遺伝子導入されていることの確認は子孫の各々を分析する
ことによって行われる。このためには、それぞれの動物の構成体のサンプル、例えば、動
物の尾から採取した小さなサンプル(マウスの場合など)または血液サンプルなどからD
NAを抽出し、従来の方法、例えば、特定のイニシエーター(initiator)を使
用するポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)や、少なくとも導入遺伝子の一部分に対して補
足するプローブなどを用いるサザンブロット分析法またはノーザンブロット分析法や、導
入遺伝子によってコード化されたタンパク質に対して抗体を使用するウェスタンブロット
分析法よって分析を行う。導入遺伝子の存在を確認するためのこれ以外の方法には、酵素
および/または免疫学的な検査、特定マーカーの組織学的な染色、酵素作用など、数多く
の適切な生化学検査がある。
【0056】
一般的には、遺伝子導入動物においては、挿入された導入遺伝子はメンデルの遺伝法則
の特性として伝達されるので、個々の安定可能な系列を設立することは困難ではない。G
0世代の各々が親の子孫群と交配すると(レトロクロス)され、そして導入遺伝子がメン
デルの特性に従って行動を行う場合に、子孫の50%が挿入された導入遺伝子に対してヘ
テロ接合体(へミ接合体)である。これらの各々は、G1世代の子孫を構成すると共に不
確定に維持され得る遺伝子導入系列を構成し、正常な各々とG1世代のヘミ接合体を交配
させる。変形例において、導入遺伝子は子孫の生存度に影響しないと仮定した場合に、G
1世代の個人が同世代の個人と交配すると、挿入された導入遺伝子に対して25%のホモ
接合体、50%のへミ接合体、および25%の導入遺伝子なしを備える。
【0057】
本発明によって提供される遺伝子導入非ヒト哺乳動物の子孫、例えば本発明により提供
される遺伝子導入マウスの子孫などは、遺伝子導入動物を適切な個人と交尾させることに
より、または生体内で遺伝子導入動物の卵子および/または精子を受精させることによっ
て得ることができる。
【0058】
本明細書中で使用される「子孫」または「遺伝子導入非ヒト動物の子孫」という表現は
最初に形質転換を受けた遺伝子導入非ヒト哺乳動物の前の世代の全ての祖先に関係する。
子孫は、前記方法のいずれかを用いて導入遺伝子の存在を確認するために分析され得る。
【0059】
本発明は、本発明によるDNA構造体、つまり、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ
母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常、もしくは造血
幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する染色体異常によって形成および/または活性化さ
れる遺伝子からなる構造体をゲノムに含む遺伝子導入非ヒト哺乳動物の細胞系にも関する
ものであり、前記遺伝子は、Sca−1+ 細胞において前記遺伝子の発現を導くプロモ
ータによって制御される。特別な実施例において、前記細胞系はマウス細胞系である。
【0060】
他の実施態様において、本発明は、幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常、例え
ば、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白
血病、または造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する染色体異常造血幹細胞または非
造血幹細胞に由来するヒトの腫瘍または非腫瘍性の病態を再現する非ヒト動物モデルの発
生のために、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータの使用に関するもので
ある。特別な実施例において、前記プロモータは、Sca−1+ 細胞において遺伝子の
発現を導くマウスのpLy−6E.1プロモータである。
【0061】
本発明によって提供される遺伝子導入非ヒト哺乳動物、その子孫または本発明による細
胞系は、例えば、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リン
パ母細胞性白血病に関連する染色体異常や、造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する
染色体異常などの造血幹細胞または非造血幹細胞由来のいずれの腫瘍性または非腫瘍性の
ヒト病態に関連する染色体異常を治療および/または予防するための潜在的に有効な化合
物を評価するために有用なものである。従って、本発明は幹細胞由来のヒト病態に関連す
る染色体異常の治療および/または予防のための潜在的に有効な化合物の評価において本
発明によって提供される遺伝子導入非ヒト哺乳動物、その子孫または細胞系の使用にも関
するものである。実施例において、前記染色体異常は、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リ
ンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病、もしくは造血幹細胞または胚幹
細胞の移動に関与する染色体異常から選択されるものである。
【0062】
遺伝子導入動物の場合において、幹細胞由来のヒト病態に対する治療および/または予
防に関して潜在的に有効な化合物を評価することは、遺伝子導入動物に対して検査する化
合物を種々の投与量で投与しそしてその動物の生理学的反応を時間の経過について評価す
ることによって行われる。検査する化合物の投与は評価する化合物の化学的性質に依存し
て経口または非経口で投与することが可能である。場合によっては、その化合物を、化合
物の効果を向上させる共同因子と共に投与することもできる。
【0063】
本発明における細胞系の場合において、幹細胞由来のヒト病態治療および/または予防
のための潜在的に有効な化合物の評価は検査する化合物を適切な時間に異なる濃度で細胞
培養媒体に加えそして適切な生化学検査および/または組織学的検査を用いて時間経過に
おけるその化合物に対する細胞の反応を評価することによって行うことができる。同時に
、化合物の効果を増長させる共同因子と共に、その化合物を細胞培養媒体に加えることが
必要である。
【0064】
他の実施態様において、本発明は幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常、例えば
、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血
病、もしくは造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関する染色体異常から選択される幹細胞
由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防のための治療手段の媒体
として、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータの使用方法に関するもので
ある。プロモータが、幹細胞などのSca−1+ 細胞に導入遺伝子の発現を導くという
事実は、幹細胞に種々の治療手段の特別で独占的な発現が可能である。特別な具体例にお
いて、前記プロモータは、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くマウスのpLy−6
E.1プロモータである。
【0065】
治療手段用の媒体としてSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータの使用に
よって発生する幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防の
ための治療手段には、腫瘍形成における悪性遺伝子または融合遺伝子の非活性化、もしく
は免疫不全症における機能遺伝子による欠陥遺伝子の置換または欠陥遺伝子を欠損させた
機能遺伝子の導入がある。これらの治療手段は、以下の(i)及び(ii)の方法によっ
て具現化できる。
(i)Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータと治療および/または予防を
行う幹細胞由来のヒト病体に関連する染色体異常の治療および/または予防のための適切
な治療遺伝子とから成るDNA構造体を調製すること(この場合に、前記治療遺伝子はS
ca−1+ 細胞に発現を導く遺伝子の制御下にある)、および(ii)細胞に外因性遺
伝子を導入するプロセスにおいて遺伝子が正常に機能するように細胞内の伝達およびのそ
の生物学的利用能を促進するベクターまたはシステムにDNA構造体を組み入れること。
実例として、前記ベクターまたはシステムは、例えば、アデノウィルス、レンチウィルス
などのウィルス性ベクターや、DNA−リポソーム、DNA−ポリマー、DNA−ポリマ
ーリポソーム複合体などの非ウィル性のものが挙げられる(ファング,ハングおよびワグ
ナー編集、アカデミック プレス(1999年)発行の「遺伝子治療用の非ウイルス性ベ
クター」「Nonviral Vectors for Gene Therapy」e
dited by Huang,Hung,Wagner,「Academic Pre
ss(1999)」を参照のこと)。
【0066】
本明細書中に使用される用語「遺伝子治療」は幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体
異常の治療および/または予防のために有効な遺伝子または遺伝子構造体を意味し、リボ
ソーム、遺伝子、融合体またはアンチセンス遺伝子構造体、および一般的には、慢性骨髄
性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病、c−k
itレセプターまたはそのリガンド(SCF)における変質などの染色体異常によって形
成および/または活性化される遺伝子に対して有効な全ての遺伝子、遺伝子融合または遺
伝子構造体を含むものである。
【0067】
さらに、本発明は治療および/または予防させる幹細胞由来のヒト病態に関連する染色
体異常の治療および/または予防のために適切な治療遺伝子と、Sca−1+ 細胞に遺
伝子の発現を導くプロモータとから成るDNA構造体から成る医薬品組成物に関連するも
のであり、前記遺伝子は任意に1つまたはそれ以上の医薬的に容認できる賦形剤と共に用
いて、Sca−1+ 細胞に発現を導く前記プロモータを制御するものである。治療遺伝
子とプロモータとから成るDNA構造体は遺伝子工学における従来の技術によって得るこ
とができる。本発明の医薬組成物に存在することが可能な賦形剤は、特に、医薬組成物の
投与経路に依存する。使用する賦形剤の活性物質の異なる投与経路およびこれらの製造方
法の概説については、シー ファウリ イ トリロ著、ルザン5 ソシエダット アノニ
マ編集(1993年)、「医薬学学説の解説」(Tradado de Farmaci
a Galenica c.Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A.
de Ediciones,(1993))を参照されたい。
【0068】
特別な実施例において、本発明の医薬組成物の活性成分(DNA構造体)の遺伝子の性
質のため、これは内部にDNA構造体を含む細胞に外因性遺伝子の導入プロセスに役立つ
ためのベクターまたはシステムから成るものであり、(それは例えば、アデノウィルス、
レンチウィルス、レトロウィルスなどに基づくウイルス性のものや、DNA−リポソーム
、DNA−ポリマー、DNA−ポリマーリポソーム複合体などの非ウイルス性のものがあ
る。(ファング,ハングおよびワグナー著、アカデミックプレス(1999年)編集、遺
伝子治療用の非ウイルス性ベクター「Nonviral Vectors for Ge
ne Therapy edited by Huang,Hung,Wagner.A
cademic Press(1999)」を参照)。
【0069】
また、本発明は例えば慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急
性リンパ母細胞性白血病、もしくは造血幹細胞または胚幹細胞の移動(例えば、c−ki
tレセプターまたはそのリガンドの変化)などの幹細胞由来のヒト病態に関連する異常染
色体の治療および/または予防のための医薬組成物の合成においてSca−1+ 細胞に
遺伝子の発現を導くプロモータの使用方法に関するものである。
【0070】
以下の例は本発明について説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない
。例1は遺伝子導入マウスの発生について説明し、例2は幹細胞由来のヒト病態の生体内
の研究モデルとして、前記遺伝子導入マウスの使用を示すものである。このためには、ヒ
トの白血病に関連するキメラタンパク質をコード化する遺伝子融合に導く特徴的な染色体
の転座が選択されている(例2参照)。前記遺伝子融合の変化する発現はヒトの白血病特
有のサブグループに関係している。導入遺伝子は、Sca−1+ 細胞において、マウス
のプロモータpLy−6E.1によって、前記導入遺伝子の発現が十分に導かれるマウス
のゲノムに遺伝子融合が含まれるように導入される。前記遺伝子生成物が引き起こす過剰
発現は各々の場合に研究されているヒトの白血病のほとんどの症状が現れ、分化プログラ
ムにおいて、芽細胞(適切な場合)の存在および調和性のブロックが含まれる。遺伝子導
入マウスには他の組織からの腫瘍は見つかっていない。これによって、前記導入遺伝子の
過剰発現は研究されるヒトの白血病において主要な因子であること、また、研究対象であ
る関連する遺伝子融合と関連しているヒト病態を生体内で模倣するマウスモデルを最初に
提供したことの結論を導く。これらの結果は本発明が提供する遺伝子導入マウスが生体内
で、研究される導入遺伝子の生態を研究するための新しいモデルを構成し、かつ腫瘍の発
育において特定の染色体異常の役割を研究するための手段の有用有効性を表わすことを示
している。
[実施例]
【0071】
本実施例で使用される材料および方法は以下の通りである。
【0072】
〔材料〕
プロモータ:C57BL76マウス(Jackson Laboratory)におい
て異なる導入遺伝子(cDNA)の組織特有の発現を導くためにプロモータpLy−6E
.1が使用された。このプロモータは優れた特徴があり、使用された16キロベース(K
B)の断片には、Sca−1+ 細胞における選択的な発現に必要な全ての要素が含まれ
ている(マイルス シ,サンチス エム ジェイ,シンクレアー エイおよびジェルサッ
ク著、(1997年)、成人造血幹細胞におけるLy−6E1(Sca−1)導入遺伝子
の発現およびマウス胎芽の発育、発育、第124巻、第537頁乃至第547頁「Mil
es C,Sanchez M−J,Sinclair A,and Dzierzak
,E (1997)「Expression of the Ly−6E1(Sca−1
)transgene in adult haematopoietic stem
cells and the developing mouse embryo」De
velopment 124,537,547」)。
遺伝子:使用された遺伝子は以下の通り。
【0073】
ヒトBCR−ABLP 2 1 0 −t(9:22)(q34:q11)の結果として生
成される遺伝子融合で、慢性骨髄性白血病に関連する。この染色体異常を示す患者は時間
が経過すると、前記疾病の過程の特徴的な症状である胚盤胞を発生する。
【0074】
ヒトBCR−ABLP 1 9 0 −t(9;22)染色体の転座によって発生するガン
遺伝子で、B細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する。
【0075】
マウスSlug−造血幹細胞の動態に関与する遺伝子。
【0076】
マウスSnail−胚幹細胞の移動に関与するSlugファミリーの遺伝子。
ヒトHOX11−T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する異常染色体によって活性化
される遺伝子。
【0077】
ヒトRHOM2/LMO−2−T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常
によって活性化される遺伝子。
【0078】
マウスTAL1−T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する異常染色体によって活性
化される遺伝子。
【0079】
BCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP l 9 0 、HOX11、RHOM2
/LMO−2およびTAL1として確認された活性化可能な遺伝子は遺伝学評論年鑑(1
997年)第31巻、第429頁乃至第453頁(Annu Rev.Genet.(1
997)31:429−453に、Slug遺伝子はサイエンス(1994年)、第26
4巻、第835頁乃至第849頁(Science(1994)264:835−849
)に、Snail遺伝子は発育生化学(1998年)、第198巻、第277頁乃至第2
85頁、発育(1998年)第125巻、第3111頁乃至第3121頁および遺伝子(
2000年)第257巻、第1頁乃至第12頁(Developmental Biol
ogy(1998)198:277−285,Development(1998)12
5:3111−3121,and Gene(2000)257:1−12)に記載され
ている。
【0080】
マウス:使用されたマウスはG57BL/6 x CBAであり、乳母はCD1である
。
これらの動物は市販されており、例えば、Jackson Laboratory(米国
)から入手できる。
【0081】
〔方法〕
遺伝子導入マウスの発生および選択(スクリーニング)
各種のcDNA(ヒトBCR−ABLP 1 9 0 、ヒトBCR−ABLP 2 1 0
、マウスSlug、マウスSnail、HOX11、ヒトLMO2/RHOM2およびマ
ウスTAL1)を、pLy−6E.1プロモータのClaIサイトにおいてクローン化し
た。適切な制限エンドヌクレアーゼでの消化により異なるcDNAが得られた。各cDN
Aは、従来技術によりClaIで消化されたpLy−6E.1プロモータを含むベクター
においてクローン化された(分子クローン化、第3版、サムブロークおよびルーセル著、
シーエスエッチエルプレス(2001年)発行「Molecular Cloning,
third edition,CSHL Press by Sambrook,and
Russell(2001年)」)。
【0082】
遺伝子導入マウスSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 、Sca−1+ BCR−
ABLP 1 9 0 、Sca−1+ Slug、Sca−1+ SnailおよびSca−
1+ RHOM2/LMO−2の発生のために、NotIでの消化により微量注入用の線
状DNA断片が取得された。また、遺伝子導入マウスSca−1+ HOX11およびS
ca−1+ TAL1の発生のために、微量注入用の線状DNAの断片をBamH1によ
る消化によって取得した。各種の線状DNA断片がC57BL/6J x CBAマウス
の受精卵母細胞に微量注入された。基礎となる遺伝子導入マウスはマウスの尾から抽出さ
れたDNAサンプルにおいて前記cDNAを認識する特別なプローブを用いるサザン ブ
ロット分析法を使用して識別された。
【0083】
受精卵母細胞の準備、プロモータと作用的に結合させた活性化可能な遺伝子とを含むD
NA構造体の微量注入、および前記DNA構造体が注入された受精卵母細胞の偽妊娠乳母
への再移植、および妊娠期間中乳母を維持することは、従来の技術を用いて行った(ホガ
ン,コンスタンチニ および ラシー(1986年)著、マウス胎芽の処理、研究所手引
き、コールド スプリング ハーバー研究所発行、コールド スプリング ハーバー(1
986)「Hogan,Constantini&Lacy(1986)「Manipu
lating the mouse Embryo.A Laboratory Man
ual」,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold
Spring Harbor(1986))。 (i)正しく形質転換した受精卵母細胞
と (ii)終結まで発達しそして遺伝子導入マウスを生み出した胚との割合は前記ホガ
ン,コンスタンチニ および ラシー(1986)の結果と同様であった。
【0084】
遺伝子導入マウスの子/子孫は基礎となるC57BL/6 x CBAを有するマウス
を交配させ、cDNAを認識する特別なプローブを用いてサザン ブロット分析法によっ
て陽性マウスを識別することによって得られる。
【0085】
〔胎児分析〕
血球計算(サイトメトリー)のための染色には、モノクローナル抗マウス抗体(CD4
5R/B220,Thy−1.1およびThy−1.2、骨髄性マーカ(Mac 1/C
D11bおよびGr−1)およびSig)をフィコエリトリン(PE)と結合させる(す
べてPharmingen製)。ルーチン技術によって得られた全血液サンプルからの細
胞の懸濁液はFcによるレセプターとの結合をブロックするために精製されたCD32/
CD16抗マウス(Pharmingen)を用いて、それぞれ室温において4℃に適切
に希釈された各種の抗体で培養された。赤血球は溶解液(Becton Dickins
on)を用いて溶解した。サンプルはリン酸緩衝食塩水(PBS)で2度洗浄し、そして
PBS中に再懸濁させた。サンプル中の死細胞はプロピジウムヨウ化物(propidi
um iodide)を用いた染色によって排除した。サンプルおよびデータはCell
Questプログラム(Becton Dickinson)を用いてFACScanで
分析した。
【0086】
〔PCR分析〕
mRNAはキメラマウスの異なる組織から得た。cDNAは、RNaseのDNAse
I(HT)で処理したRNAの各標本の逆転写によって得た。cDNAは各場合に特別
な表示器を用いてPCRにかけた(ダイレクトイニシエーター(5' )は、cDNAの最
初の20ベースに対応し、インバースイニシエーター(3' )は、cDNAの最後の20
ベースに対して補足的であった)。反応は、Taqポリメラーゼのサプライヤー(Per
kin−Elmer Cetus)の指示に従って、95℃で1分、55℃で1分、72
℃で1分のサイクルを25サイクル行い、そして最後に72℃で10分延長した。
【0087】
〔組織学的分析〕
組織サンプルは、PBSにおいて4%のホルムアルデヒドで固定し、そしてパラフィン
に浸した。処理した薄膜を切り出し、ルーチン技術によってヘマトキシリン−エオシンを
用いて染色した。薄膜を試験しかつ写真撮影した。
【0088】
〔ウェスタンブロット分析〕
脾臓から採取した細胞の懸濁液を従来の方法を使用する免疫ブロット法で分析した(抗
体、研究所手引き、ハーロウおよびレーン著、CSH、1988年発行「Antibod
ies:A Laboratory manualHarlow and Lane,C
SH,1988」)。
【0089】
〔免疫グロブリン再編成/TCR遺伝子〕
DNAは異なる細胞から従来の技術を用いて調製した。DNAはBamHIで分解し、
特定の免疫グロブリンのプローブでサザンブロット法によって分析した(血液(迅速出版
)第90巻、第2168頁乃至第2174頁、1997年「Blood(rapid p
ublication)90:2168−2174(1997)」)。
【0090】
〔細胞導入〕
ドナーマウスの器官から得た細胞は懸濁され、洗浄され、4〜6か月のレセプターマウ
スの尾に静脈注射された(NOD/SCDI)(The Jackson Labora
tory)。マウスの観察は1週間に1度行われ、死にかけた状態の時に、DNA分析用
の組織病理研究および組織収集のために犠牲にされた。
【実施例1】
【0091】
遺伝子導入マウスの発生
1.1 Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 遺伝子導入マウスの発生
遺伝子生成物、BCR−ABLP 2 1 0 (t(9:22)(q34;q11)の結
果として生じかつ慢性骨髄性白血病に関連する遺伝子融合)の発現の直接的な結果を生体
内で確認するため、キメラヒトタンパク質BCR−ABLP 2 1 0 のcDNAをマウ
スのプロモータpLy−6E.1のコントロール下でクローン化し、受精卵母細胞を前記
「方法」の項で述べた方法に従ってC57BL/6J x CBAマウスに注入した。2
匹の遺伝子導入始祖マウス(Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 )が、導入遺伝
子を生殖細胞系に伝達する能力を示した。導入遺伝子の発現が両方の系で観察され、F7
レベル(第7世代)まで子孫が繁殖された。導入遺伝子の発現は、PCRおよび/または
ウェスタンブロット分析法によって証明された。両方の細胞系はSca−1+ 細胞に優
先的な発現が認められた。導入遺伝子の発現はオスとメスの両方のマウスにおいて観察さ
れ、Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 遺伝子導入マウスの両方の系で結果は同
様であった。
【0092】
1.2 その他の遺伝子導入マウスの発生
生体内で遺伝子生成物、ヒトBCR−ABLP 1 9 0 、マウスSlug、マウスS
nail、ヒトHOX11、ヒトRHOM2/LMO−2およびマウスTAL1の発現の
直接的な結果を調べるために、対応するcDNAをマウスのプロモータpLy−6b.1
のコントロール下でクローン化し、生じた構造体を前もって直線化しそしてC57BL/
6J x CBAマウスの受精卵母細胞に前記「方法」の項で示される方法に従って注入
した。各構造体に対して、導入遺伝子を生殖細胞系に伝達する能力を有する2匹の遺伝子
導入始祖マウスが得られた。このようにして実験を行い、以下のように認識された遺伝子
導入マウスを得た。
Sca−1+ BCR−ABLP l 9 0 (B細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる
)(図3参照):
Sca−1+ Slug(造血幹細胞の移動を生じるが、白血病を有しない);
Sca−1+ Snail(造血幹細胞の移動を生じるが、白血病を有しない);
Sca−1+ HOX11(T細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる);
Sca−1+ RHOM2/LMO−2(T細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる);
Sca−1+ TAL1(T細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる);
全ての場合に、両方の系において導入遺伝子の発現が観察され、F7レベル(第7世代
)まで子孫が繁殖された。導入遺伝子の発現はPCRおよび/またはウェスタンブロット
分析法によって確認された。両方の細胞系はSca−1+ 細胞に優先的な発現が認めら
れた。導入遺伝子の発現はオスとメスの両方のマウスにおいて観察され、両方の系で結果
は同様であった。
【実施例2】
【0093】
遺伝子導入マウスにおける白血病の発現
ヒト病態では、遺伝子のキメラ生成物Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 、S
ca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 、Sca−1+ Slug、Sca−1+ Sn
ail、Sca−1+ HOX11、Sca−1+ RHOM2/LMO−2およびSca
−1+ TAL1は各種の白血病に、特に、慢性骨髄性白血病(BCR−ABLP 2 1
0 )、B細胞急性リンパ母細胞性白血病(BCR−ABLP 1 9 0 、)およびT細
胞急性リンパ母細胞性白血病(HOX11、RHOM2/LMO−2およびTAL1)に
関与しているが、適切な細胞タイプの発現を行うためのプロモータの選択が難しいことか
ら、前記白血病のための現在のマウスモデルは、前記病態を一貫して再現することに失敗
している(遺伝子学評論年鑑、(1997年)、第31巻、第429頁乃至第453頁お
よび現代遺伝子学(2000年)、第1頁、第70頁乃至第80頁「Annu.Rev.
Genetics(1997)31:429−453;Current genomic
s(2000)、1:71−80」)。
【0094】
対応する白血病の診断を確立させることができるように、各種の遺伝子導入マウスの白
血病細胞の詳細な分析が行われた(Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 (図1及
び2)、Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 、(図3)、Sca−1+ HOX1
1、Sca−1+ RHOM2/LMO−2およびSca−1+ TAL1)。ヘマトキシ
リン/エオシンによる染色は白血病細胞がリンパ系/骨髄系の形態を有していることを示
した。末梢血管の単核細胞のほとんどは対応する白血病に適合する表現型を有している。
【0095】
分析する遺伝子導入マウスの細胞の腫瘍形成能をテストするために、1×106 個の
細胞を静脈注射で正常な非照射のNOD/SCIDマウスに注入した。全てのマウスは移
植後6〜11週間の間に漸次発生した白血病を示した。反対に、10匹のコントロールマ
ウスから得た細胞を注入した20匹のマウスはドナーに起因する可能性のある白血病を示
さなかった。移植された細胞は同じクラスの白血病を発生させた。また、ドナーマウスの
白血病クローンの起源はPCR分析法を用いて確認し、対応する導入遺伝子の存在が明ら
かになった。
【0096】
詳述すると、各場合において、遺伝子導入マウスのオスとメスは一様に(対応する病態
の)同じ症状を示しており、8週間後に臨床的な兆候を示し始め、時間の経過と共にそれ
が増加し、12〜16か月に100%のマウスが死亡する。基礎となるマウスはオスとメ
スで、その他の遺伝子導入マウスのものと同じように、対応する疾病に関連する臨床病状
を生じた。全ての遺伝子導入マウスは腫瘍のため14〜18カ月で死亡した。2匹の基礎
となるマウスの系で生き残ったものの割合は各場合において同様であった。各非遺伝子導
入同腹の子において同数のマウスからなるコントロールグループには腫瘍は観察されなか
った。しばしばその動物が頻呼吸に陥ったため屠殺した。病理解剖を行うと、その動物に
は触診でわかる造血性組織と関連する塊(各病態に特有)が発育しており、解剖後に、正
常な器官の5〜100倍大きいことがわかった。非造血組織における腫瘍の湿潤が観察さ
れたため、顕微鏡を用いて確認した。この検査は造血組織の疾病と一致している。しかし
、これらの遺伝子導入マウスでは、他の組織からの腫瘍は見られなかった。これらの動物
の組織学的分析は造血組織(脾臓および骨髄)および非造血組織(肝臓、肺、精巣など)から
の白血病細胞の顕著な湿潤を示した。
【0097】
従って、研究されたマウスモデルは対象となるヒトの白血病(慢性骨髄性白血病、B細
胞急性リンパ母細胞性白血病およびT細胞急性リンパ母細胞性白血病)で起こる再編成に
似ているだけではなく、その含有する遺伝子融合がヒト病態に関連しているものと同じ表
現型をも再現する。これらの結果はこれらのマウスモデルが検査する導入遺伝子(BCR
−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP 1 9 0 、Sca−1+ HOX11、Sc
a−1+ RHOM2/LMO−2およびSca−1+ TAL1)の生態の生体内研究の
ための理想的なモデルであることを示している。
【0098】
全体として、得られた結果はマウスプロモータpLy−6E.1の発現のコントロール
要素を制限することおよび染色体異常の結果を反復することによって、対応するガン遺伝
子の発現が導かれる新しいマウスモデルの発生を証明している。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1A】BCR−ABLP 2 1 0 マウスの骨髄(BM)および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析結果の小区画写真図である。
【図1B】慢性骨髄性白血病を有するSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの脾臓、肝臓およびリンパ節の部分の代表的な組織学的検査の結果の小区画写真図である。
【図1C】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管に対するギムザ染色の代表的な例の写真図である。
【図2A】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの骨髄(BM)、脾臓および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析結果の小区画写真図である。
【図2B】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの肝臓の部分の代表的な組織学検査の結果を示す写真図である。
【図2C】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管のギムザ染色の代表的な例を示す写真図である。
【図3A】コントロールマウスおよびSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスに対するサザンブロット分析法によるDNA分析を示す写真図である。
【図3B】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスおよびコントロールマウスの脾臓、肝臓、肺に対する代表的な組織学検査の結果と末梢血管の染色結果を示す写真図である。
【図3C】コントロールマウスとSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスの骨髄および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析を示す小区画写真図である。
【技術分野】
【0001】
本発明はSca−1細胞において導入遺伝子の発現を導くプロモータの手段によってヒ
ト病態に伴う遺伝子の発現を使用する幹細胞由来のヒト病態を再現する遺伝子導入非ヒト
哺乳動物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子導入動物はそのゲノムに外因性遺伝子(導入遺伝子)を支持する動物であり、該
遺伝子は発生の初期段階でその動物の生殖細胞またはその前身に導入される。動物に対す
る導入遺伝子の導入は導入される遺伝子の行動、発現または機能を研究する目的を有して
いる。また、治療上の目的のために病気におかされている人間を遺伝的によくしたり、動
物を改良したりすることを目的とすることもある。
【0003】
遺伝子導入哺乳動物の産出は十分に確立された技術であり(例えば、ホーガン,コンス
タンチニ および ラシー(1986年)著、マウス胎生触診、研究所手引、コールド
スプリング ハーバー 所在、コールド スプリング バーバ研究所発行(1986年)
を参照「Hogan,Constantini and Lacy(1986),Man
ipulating The Mouse Embryo. A Laboratory
Manual,Cold Spring Harbor(1986)」)、遺伝子導入
哺乳動物について記述した多くの論文および特許文献があることによってもこのことがわ
かる。実例としては、米国特許第4,736,866号、同第4,873,191号、同
第5,175,383号および同第5,175,384号明細書などを挙げることができ
る。
【0004】
導入遺伝子の発現は哺乳動物に新しい表現型を与えることができる。挿入される導入遺
伝子および哺乳動物におけるその発現レベルに依存して、動物は特定の疾病に関して感受
性が強くなったり弱くなったりする。このような遺伝子導入哺乳動物は疾病の診断に対す
る有益な方法の開発および/または疾病の予防及び治療において潜在的に有効となる化合
物の生体内研究における貴重なモデルである。
【0005】
ヒト疾病のグループ「幹細胞由来のヒト病態」という部類において、造血幹細胞および
非造血幹細胞に由来の腫瘍性のものおよび非腫瘍性のもの、例えば、骨髄性白血病、B細
胞リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、リンパ腫、肉腫および幹細胞発生の病態、例
えば、先天性免疫不全症およびファンコーニ貧血等を挙げることができる。ヒトの悪性腫
瘍病態(ほとんど全てが幹細胞由来である)は現在のところ化学療法、照射療法および/
または外科手術を組み合わせて治療されているが、これらの方法では、正常な細胞と腫瘍
細胞を区別することができない。非腫瘍性病態の治療では、これらに代わって、免疫グロ
ブリン、ワクチン、輸血などの治療が行われている。
【0006】
近年、造血性腫瘍および固体腫瘍の両方に関連する染色体異常によって発生する遺伝子
および/または活性化遺伝子が確認された(遺伝学評論年鑑(1997年)第31巻、第
429頁乃至第453頁「Annu. Rev. Genetics(1997)31:
429−453」)。しかし、生体内で前記遺伝子が腫瘍形成することは証明されてはい
るが(現代遺伝学(2000年)第1巻、第71頁乃至第80頁「Current Ge
nomics(2000),1:71−80」)、これらの確認にもかかわらず、前記病
態を再現するための動物モデルは今のところ存在しない(ガン遺伝子(1999年)第1
8巻、第5248頁及びガン遺伝子(1999年)第18巻、第5249頁乃至第525
2頁「Oncogene(1999)18:5248,Oncogene(1999)1
8:5249−5252」)。同様に、近年、ガンが始まるターゲットは幹細胞であるこ
とが示されている(血液(2000年)第95巻、第1007頁乃至第1113頁、ガン
遺伝子(2000年)第19(20)巻、第2143頁乃至第2422頁およびネイチャ
ー(2001年)第414巻、第105頁乃至第111頁「Blood(2000)95
:1007−1113,Oncogene(2000)19(20):2413−242
2,Nature(2001)414:105−111」)。
【0007】
現代遺伝子(2000年)第1巻、第71頁乃至第80頁(Cursent geno
mics(2000)1:71−80)には、例えば慢性骨髄性白血病(BCR−ABL
P 2 1 0 )、B細胞急性リンパ母細胞性白血病(BCR−ABLP 1 9 0 )、B
細胞急性リンパ母細胞性白血病(HOX11、RHOM2/LMO−2およびTAL1)
等の異なる病態に関連する染色体異常によって活性化される遺伝子融合または遺伝子を発
現する周知のマウスモデルが示されている。しかし、該モデルは前記遺伝子または遺伝子
融合によって発現されたタンパク質が腫瘍形成することのみが示され、前記モデルと関連
するヒト病態が特別に再現されるものではない。
【0008】
幹細胞由来のヒト病態の破滅的な作用の観点から、該病態の治療および/または予防の
潜在的に有効な化合物を研究することはもちろん、前記ヒト病態を研究するために生体内
モデルを備える適切な動物を生成する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は幹細胞由来のヒト病態を再現する動物モデルを生成する問題に取り組んでいる
。
【0010】
本発明による幹細胞由来のヒト病態を再現する動物モデルは a)このような病態がど
のようにして発現され、維持されるのかを研究するための特別な工具を用いること、 b
)ヒトに対して潜在的に有効な治療の有効性を予想すること、 c)新しい治療方法の発
見、 d)各病態の経過を抑制または増加させる対立遺伝子のゲノム識別が可能になる。
【0011】
従って、本発明の目的は幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成およ
び/または活性化される遺伝子から成るDNA構造体を構成し、前記遺伝子はSca−1
+ 細胞において前記遺伝子の発現を導くプロモータによって制御される。
【0012】
本発明の他の目的は非遺伝子導入哺乳動物と比較した場合に、幹細胞由来のヒト病態を
発生させるために非常に強い性向を与える遺伝子型を持つ遺伝子導入非ヒト哺乳動物を生
成することにある。前記遺伝子導入非ヒト哺乳動物はとりわけ前記病態の研究にとってそ
して前記病態に対して潜在的に有効な治療および/または予防のための化合物の評価にと
って有効である。従って、本発明の目的は導入遺伝子を含有する遺伝子導入非ヒト哺乳動
物およびその子孫を生成することにある。
【0013】
本発明のその他の目的は導入遺伝子を含有する遺伝子導入マウスおよびその子孫を生成
することにある。特別な実施例において、前記遺伝子導入マウスはSca−1+ BCR
−ABLP 2 1 0 、Sca−1+ BCR−ABLP l 9 0 、Sca−1+ Sl
ug、Sca−1+ Snail、Sca−1+ HOX11、Sca−1+ RHOM2
/LMO−2、Sca−1+ TAL1によって構成されるグループから選択される。
【0014】
本発明のその他の別の目的は幹細胞由来のヒト病態を生体内で研究するための動物モデ
ルとして有効な遺伝子導入非ヒト哺乳動物を生成する方法からなっている。
【0015】
本発明のその他の別の目的はそのゲノムに前記DNA構造体を含む有する遺伝子導入非
ヒト哺乳動物の細胞系を構成することにある。
【0016】
本発明のその他の別の目的はその幹細胞由来のヒト病態を再現する動物モデルの発生の
ためSca−1+ 細胞における遺伝子の発現を導くプロモータを使用することからなっ
ている。
【0017】
本発明のその他の別の目的は幹細胞由来のヒト病態を治療および/または予防するため
に潜在的に有効な化合物の評価を行うための遺伝子導入非ヒト哺乳動物を使用することか
らなっている。
【0018】
本発明のその他の別の目的は治療方法の媒体としてSca−1+ 細胞における遺伝子
の発現を導くプロモータを使用することからなっている。また、Sca−1+ 細胞にお
ける遺伝子の発現を導く前記プロモータの使用はもちろん、前記プロモータと治療遺伝子
とから成るDNA構造体を含む医薬組成物も本発明の目的を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明により提供する解決策は各種の白血病と関係する染色体異常または造血幹細胞ま
たは胚幹細胞の移動によって形成および/または活性化される遺伝子からなるDNA構造
体を含有する遺伝子導入マウスが造血幹細胞または非造血幹細胞由来の腫瘍性および非腫
瘍性のヒト病態を種々のレベルで発生させるという発見に基づいており、前記遺伝子は幹
細胞のようなSca−1+ 細胞において前記遺伝子の発現を導くプロモータによって制
御される。Sca−1+ 細胞においてこのような遺伝子の発現を導くプロモータの使用
によって幹細胞の行動に対して各種の遺伝子の発現を導くことにより、ヒト病態を再現す
る動物モデルを発生させることが可能となった。この事実は、非遺伝子導入マウスと比較
した際に幹細胞由来のヒト病態を発生させるために非常に強い性向を与える遺伝子型を有
する一連の遺伝子導入マウスの発生によって証明されている。従って、本発明によって提
供される遺伝子導入哺乳動物は前記疾病についての研究および前記疾病の治療および/ま
たは予防に有効な化合物の評価に関して新規で有用なモデルである。
【0020】
本発明のその他の目的は以下の説明および特許請求の範囲を参照することによって当業
者にとっては明白である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は慢性骨髄性白血病を有するSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの
表現型および組織学的実施を構成する小区画写真図である。図1Aは、BCR−ABLP
2 1 0 マウスの骨髄(BM)および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な
分析結果を示している。Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスから分離され
た細胞は指定された単クローン抗体を用いて染色され(顆粒球系列はGr−1、骨髄単球
系列はMac1、幹系列はSca1である)、流動血球計算(フローサイトメトリー)に
よって分析された。陽性細胞の割合が示されている。Gr1+Mac1およびGr−1+
Sca1の陽性細胞の分布は寸法(サイズ、SSC)と粒度(foward、FSC)に
よって示されている。図1Bは慢性骨髄性白血病を有するSca−1+ BCR−ABL
P 2 1 0 マウスの脾臓、肝臓およびリンパ節の部分の代表的な組織学的検査の結果を
示す。全ての部分は、ヘマトキシリンおよびエオシンによって染色された。矢印は慢性骨
髄性白血病のプロセスの一般的な線維症および巨核球の存在を示している。図1Cは、S
ca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管に対するギムザ染色の代表的
な事例を示している。
【0022】
図2はSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスにおける骨髄性およびリンパ
性未分化危機の表現型および組織学的実例を構成する小区画写真図である。図2Aは未分
化危機に於けるSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの骨髄(BM)、脾臓
および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析結果を示している。未分化危
機のSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスから分離された細胞は指定された
モノクローナル抗体で染色され(顆粒球系列の場合はGr−1、骨髄性単球系列の場合は
Mac1、Bリンパ系列の場合はB220、幹系列の場合はSca1である)、そしてフ
ローサイトメトリー(flow cytometry)により分析された。Bリンパ性未
分化危機の例(PB#1)と骨髄性未分化危機の例(PB#2)が示されている。Gr−
1+Mac1についての陽性細胞の分布がサイズ(サイズ、SSC)に従って示されてい
る。図2Bは未分化危機を有するSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの肝
臓の部分の代表的な組織学的検査の結果を示す。全ての部分はヘマトキシリンおよびエオ
シンで染色された。白血病細胞による肝臓浸潤が観察された。図2Cはギムザで染色され
た未分化危機のSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管のギムザ染
色の代表的な事例を示し、未分化細胞が観察することができる。
【0023】
図3は、B細胞急性リンパ母細胞性白血病を有するSca−1+ BCR−ABLP 1
9 0 マウスの骨髄系およびリンパ系未分化危機の表現型および組織学的実例を構成す
る小区画写真図である。図3Aは、ABL特別プローブによるハイブリッド コントロー
ルおよびSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスに対するサザン ブロット法
を用いたDNA分析を示している。Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスに
は、導入遺伝子(pl90)の存在が観察される。図3Bは、Sca−1+ BCR−A
BLP 1 9 0 マウスおよびコントロール マウスの脾臓、肝臓、肺に対する代表的な
組織学的検査の結果と末梢血管の染色結果を示している。全ての組織学的な部位に対して
ヘマトキシリンおよびエオシンで染色を行い、末梢血管に対してはギムザ染色を行った。
Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスにおいて白血病細胞の存在が観察され
た。図3Cは、コントロール マウスとSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウ
スの骨髄(BM)および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析を示してい
る。コントロール マウスおよびSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスから
分離された細胞は指定されたモノクローナル抗体を用いて染色し(骨髄単球系列の場合は
Mac1、リンパ系列の場合はB220、CD19およびCD43、幹系列の場合はSc
a1である)、そしてフローサイトメトリーを用いて分析を行った。Sca−1+ BC
R−ABLP 1 9 0 マウスの腫瘍性細胞の割合を示す。B220/CD19に対する
腫瘍性細胞の分布がサイズ(サイズ、SSC)と粒度(foward/FSC)に従って
示されている。
【0024】
本発明は、幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/または活
性化される遺伝子から成るDNA構造体(以下において本発明のDNAと記載する)を提
供するものであり、前記遺伝子はSca−1+ 細胞における前記遺伝子の発現を導くプ
ロモータによって制御される。特別な実施例において、幹細胞由来のヒト病態に関連する
染色体異常は慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母
細胞性白血病に関連する染色体異常か、造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する染色
体異常の中から選択される。c−kitレセプタまたはそのリガンドの変化(幹細胞因子
(SCF))は造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連したヒト病態の一例である。
【0025】
本明細書中、「幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/また
は活性化される遺伝子」という表現(以下において活性化可能な遺伝子と記載する)は遺
伝子および遺伝子融合を意味し、該遺伝子及び遺伝子融合は哺乳動物のゲノムに組み込ま
れた場合に、該哺乳動物が前記遺伝子または遺伝子融合に関連する病態を発生させる可能
性を増大させる。特別な実施例において、活性化可能な遺伝子は慢性骨髄性白血病、B細
胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常か
、造血幹細胞または胚幹細胞に関連する染色体異常から選択された幹細胞由来のヒト病態
に関連する染色体異常によって形成および/または活性化される遺伝子である。実際には
、該活性化可能な遺伝子は、BCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP 1 9 0
、Slug、Snail、HOX11、RHOM2/LMO−2およびTALIとして確
認された遺伝子の中から選択されている。特に詳述すると、前記活性化可能な遺伝子は以
下の遺伝子の中から選択されている。
【0026】
ヒト遺伝子融合BCR− ABLP 2 1 0 − t(9;22)(q34;q11)
の結果として生成され、慢性骨髄性白血病に関連する。この染色体異常を示す患者は時間
の経過において前記疾病の進化現象特色を有する未分化危機を発生する。
【0027】
ヒトBCR−ABLP 1 9 0 − t(9:22)染色体転座によって発生するガン
遺伝子で、B細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する。
【0028】
マウスSlug− 造血幹細胞の動態に関与する遺伝子。
【0029】
マウスSnail− 胚幹細胞の移動に関与するSlugファミリーの遺伝子。
【0030】
ヒトHOX11− T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常によって活
性化される遺伝子。
【0031】
ヒトRHOM2/LMO−2− T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異
常によって活性化される遺伝子。
【0032】
マウスTAL1− T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常によって活
性化される遺伝子。
【0033】
BCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP l 9 0 、HOX11、RHOM2
/LMO−2およびTAL1として確認された活性化可能な遺伝子は、遺伝学評論年鑑(
1997年)第31巻、第429頁乃至第453頁(Annu.Rev.Genet(1
997)31:429−453)に記載されている。Slug遺伝子は ニエト エム
エー,サーゲント エム ジェー,ウィルキンソン デー ジェーおよびコーク ジェイ
著(1994年)、「Slug.ジンク−フィンガー遺伝子による脊椎発育中の細胞行動
の制御」、サイエンス、第264巻、第835頁乃至第849頁(Nieto MA,S
argent MG,Wilkinson DG and Cooke J(1994)
,「Control of Cell behaviour during verte
brate development−by Slug, A Zinc−finger
gene」Science 264:835−849)に記載され、Snail遺伝子
は ジアング アール,ラン ワイ,ノートン シー アール,サンドバーグ アイ ピ
ーおよびクライドレイ テー著(1998年)、「Slug遺伝子はマウスにおける中胚
葉または神経冠発育のために不可欠ではない」発育生物学、第198巻、第277頁乃至
第285頁(Jiang R,Lan Y,Norton CR,Sundberg I
P and Gridley T(1998),「The Slug gene is
not essential for mesoderm or neural cre
st development in mice」Developmental Bio
logy 198:277−285)に、セフトン エム,サンチス エス,およびニエ
ト エム エー著(1998年)、「ヒヨコおよびマウス胎児における転写因子のSna
ilファミリーの構成員についての保存および分岐役割」、発育、第125巻、第311
1頁乃至第3121頁(Sefton M,Sanchez S and Nieto
MA(1998))「Conserved and divergent roles
for members of The Snail FAMILY of TRANS
CRIPTION Factors in The chick and mouse
embryo」Development 125−3111−3121)に、およびヘマ
ベス ケ,アスザラフ エス アイおよびルプ ワイ ティー著(2000年)、「発育
およびガンの速いレーンにゆっくり移行する抑制体の Snail/Slug ファミリ
ー」遺伝子、第257巻、第1頁乃至第12頁(Hemavathy k,Asthra
f SI and Lp YT(2000)、「Snail/Slug family
of repressors:slowly going into the fast
lane of development and cancer」(Gene 25
7:1−12)に記載されている。これらの活性可能な遺伝子は前述の刊行物により提供
された情報から得られる。これらの遺伝子はいくつかの実施例に対して特殊化されている
が、本発明の教示はガンに存在する染色体異常によって形成および/または活性化される
どのような遺伝子または遺伝子融合に対しても適用することができる。このような遺伝子
または遺伝子融合についての情報は例えば遺伝子学評論年鑑(1997年)第31巻、第
429頁乃至第453頁(Annu.Rev.Genet.(1997)31;429−
453)に見出すことができる。
【0034】
Sca−1+ 細胞において活性化可能な遺伝子の発現を導くプロモータは、Sca−
1+ 細胞において活性化可能な遺伝子の発現を導く転写の開始に関連しかつ必要な核酸
の配列であり、そしてRNAポリメラーゼの結合サイトを含んでいる。本明細書において
は、「プロモータ」という用語は転写調整タンパク質が結合できる他のサイトを含む。特
別な実施例において、Sca−1+ 細胞の活性化可能な遺伝子の発現を導くプロモータ
は、マウスのpLy−6E1プロモータまたはその機能的断片であり、換言すれば、マウ
スにおける各種の導入遺伝子の組織の特別な発現を導くことが可能である。pLy−6E
1プロモータは良好に特徴付けられており、Sca−1+ 細胞における選択的な発現に
必要な全ての要素を含んでいる(ミレス シー,サチス エム ジェイ,シンクライヤ
エーおよびドジエルザク イー著(1997年)、「成人造血幹細胞及び発育マウス退治
におけるLy−6E1(Scal−1)導入遺伝子の発現」、発育、第124巻、第53
7頁乃至第547頁(Miles c.,Sanchez M−J,Sinclair
A,and Dzierzak,E.(1997)「Expression of th
e Ly−6E1(Sca−1)transgene in adult haemat
opoietic stem cells and the developing m
ouse embryo」Development 124:537,547))。
【0035】
「作用的に結合する」という表現は、活性化可能な遺伝子の配列に関するプロモータの
配置に関するものである。プロモータは、活性化可能な遺伝子の発現を制御または調製す
ることができるように配置されている。
【0036】
本発明のDNA構造体は、サムブロック,フィッチおよびマニアチス著(1989年)
、ニューヨーク州,コールド スプリング ハーバー研究所新聞社発行、「分子クローン
化、研究所手引き」(「Molecular Cloning:A Laborator
y Manual」(1989)Sambrook,Fitsch and Mania
tis,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory P
ress,Cold Spring Harbor NY)に示されるように、制限およ
び結合酵素、および同様の酵素を用いる従来の分解法によって容易に得ることができる。
【0037】
本発明のDNA構造体は、必要に応じて、上記に引用したサムブロック等著による刊行
物に記載の従来の方法を使用して哺乳動物胚を形質転換するためおよび遺伝子導入動物を
発生させるために有用なベクターの生成に使用することができる。
【0038】
変形例において、本発明のDNA構造体は遺伝子導入動物を発生させるため、DNAを
受精卵母細胞に微量注入するために有益であるDNAの線状断片を得るために使用できる
。微量注入に有用なDNAの線状断片は活性化可能な遺伝子からなる線状DNA断片を得
るために制限酵素で切断することによって得ることができる。
【0039】
その他の態様において、本発明はそのゲノムに本発明のDNA構造体換言すれば、幹細
胞由来のヒト病態に関与する異常な染色体例えば慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病、または、造血幹細胞または胚幹細胞の
移動に関連する染色体異常により形成および/または活性化される遺伝子から成る構造体
を含む遺伝子導入非ヒト哺乳動物を提供するものであり、該遺伝子はSca−1+ 細胞
における該遺伝子の発現を導くプロモータによって制御される。本発明が提供する遺伝子
導入非ヒト哺乳動物は、結果として、非遺伝子導入哺乳動物と比較した場合に、幹細胞由
来のヒト病態を発生する強い傾向を与える遺伝子型を所有する。前記非ヒト哺乳動物は、
中でも、前記病態を研究するためおよび前記病態を治療および/または予防するための潜
在的に有効な化合物を評価するために有効である。
【0040】
本明細書中で使用される「非ヒト哺乳動物」という表現は例えばマウスなど哺乳動物の
種に属するヒト以外のすべての動物が含まれる。
【0041】
特別な実施例において、本発明により提供される遺伝子導入非ヒト動物は以下のように
確認された遺伝子導入マウスである。
【0042】
Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 :これらのマウスは慢性骨髄性白血病を
発生する。
【0043】
Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 :これらのマウスはB細胞急性リンパ母
細胞性白血病を発生する。
【0044】
Sca−1+ Slug:これらのマウスは造血幹細胞を動態化する。
【0045】
Sca−1+ Snail:これらのマウスは胚幹細胞を動態化する。
【0046】
Sca−1+ HOX11:これらのマウスはT細胞急性リンパ母細胞性白血病を発
生する。
【0047】
Sca−1+ RHOM2/LMO−2:これらのマウスはT細胞急性リンパ母細胞
性白血病を発生する。
【0048】
Sca−1+ TAL1:これらのマウスはB細胞急性リンパ母細胞性白血病を発生
する。
【0049】
本発明が提供する遺伝子導入非ヒト哺乳動物の発生のために、本発明のDNA構造体は
胚芽状態において、例えば一細胞の状態、または受精卵母細胞の状態で、そして一般的に
はg細胞の段階よりは前に、前記哺乳動物またはその先祖に導入される。
【0050】
従って、本発明は以下のことから成る幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常を有
する遺伝子導入非ヒト哺乳動物を調製する方法を提供する。
(i)本発明のDNA構造体を遺伝子導入非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞に導入すること
。
(ii)子孫を生成するため前記受精卵母細胞を偽妊娠の乳母に移植すること。
(iii)幹細胞由来のヒト病態に関与する染色体異常によって形成された遺伝子および
/または活性化遺伝子の存在を評価するために前記子孫を分析すること。
【0051】
特別な実施例において、幹細胞由来のヒト病体に関与する染色体異常は慢性骨髄性白血
病、急性B細胞リンパ性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常
、または造血幹細胞または胚幹細胞の移動(例えば、レセプターc−kitまたはそのリ
ガンドの変化(SFC))に関連する染色体異常から選択されるヒト病態であり、その場
合に、幹細胞由来のヒト病態に関与する染色体異常によって形成される遺伝子および/ま
たは活性化遺伝子の存在を検査するために子孫の分析が行われる。
【0052】
活性化状態で染色体に組み入れられるように、核酸の配列が動物の胚に導入され得る技
術的な各種の方法が考えらており、これらは全て本発明の遺伝子導入非ヒト哺乳動物の発
生に適用することができる。1つの方法は核酸の配列を胚に自然に発生するように取り込
ませて増殖させ、結果として配列の活性化を与える座に配列が染色体上に組み込まれてい
る遺伝子導入動物を選択することから成っている。他の方法は胚に核酸の配列を導入する
前に、核酸の配列またはその制御配列を変更する方法がある。別の方法としては、導入す
る核酸の配列を含むベクターを使用して胚に取り込ませて増殖させる手段がある。
【0053】
特別な実施例において、本発明のDNA構造体を非ヒト哺乳動物の発芽系列に導入する
ことは非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞にSca−1+ 細胞の発現を導くプロモータに作
用的に結合する活性化可能な遺伝子を含む線状DNA断片の微量注入によって行われる。
【0054】
受精卵母細胞は、従来の方法、例えば、メスの排卵を誘発する方法、オスとの交尾に応
じて、または黄体ホルモンを処理するこによって分離することができる。一般的には、ホ
ルモンの作用およびオスとの交尾によって、メスに過剰排卵が生じる。適切な時間の経過
後、メスを屠殺し、受精卵母細胞を卵管から取り出し、これを適切な培養媒体中に保管す
る。受精卵母細胞は顕微鏡下で前核の存在によって確認することができる。線状DNA断
片の微量注入はオスの前核に対して行なわれる。
【0055】
本発明のDNA構造体を含む線状DNA断片を受精卵母細胞に導入した後、これらは適
切な期間中生体内において培養されるか、偽妊娠の乳母(生殖不能なオスとメスを交尾さ
せることよって得る)に再移植される。移植は従来の方法、例えば、メスに麻酔を施して
、十分な数の胚、例えば、10〜20の胚を偽妊娠の乳母の卵管に外科手術で挿入するこ
とによって行う。妊娠期間が終了したとき、いくつかの胚は妊娠が終了し、遺伝子導入非
ヒト哺乳動物が生み出される。これらの遺伝子導入非ヒト哺乳動物は理論的にそのゲノム
に組み込まれた本発明のDNA構造体を支持しており、生物の全ての細胞に存在している
。この子孫はG0世代であり、その各々は「遺伝子導入始祖」である。各々が注入された
核酸を組み込んでおり、そして遺伝子導入されていることの確認は子孫の各々を分析する
ことによって行われる。このためには、それぞれの動物の構成体のサンプル、例えば、動
物の尾から採取した小さなサンプル(マウスの場合など)または血液サンプルなどからD
NAを抽出し、従来の方法、例えば、特定のイニシエーター(initiator)を使
用するポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)や、少なくとも導入遺伝子の一部分に対して補
足するプローブなどを用いるサザンブロット分析法またはノーザンブロット分析法や、導
入遺伝子によってコード化されたタンパク質に対して抗体を使用するウェスタンブロット
分析法よって分析を行う。導入遺伝子の存在を確認するためのこれ以外の方法には、酵素
および/または免疫学的な検査、特定マーカーの組織学的な染色、酵素作用など、数多く
の適切な生化学検査がある。
【0056】
一般的には、遺伝子導入動物においては、挿入された導入遺伝子はメンデルの遺伝法則
の特性として伝達されるので、個々の安定可能な系列を設立することは困難ではない。G
0世代の各々が親の子孫群と交配すると(レトロクロス)され、そして導入遺伝子がメン
デルの特性に従って行動を行う場合に、子孫の50%が挿入された導入遺伝子に対してヘ
テロ接合体(へミ接合体)である。これらの各々は、G1世代の子孫を構成すると共に不
確定に維持され得る遺伝子導入系列を構成し、正常な各々とG1世代のヘミ接合体を交配
させる。変形例において、導入遺伝子は子孫の生存度に影響しないと仮定した場合に、G
1世代の個人が同世代の個人と交配すると、挿入された導入遺伝子に対して25%のホモ
接合体、50%のへミ接合体、および25%の導入遺伝子なしを備える。
【0057】
本発明によって提供される遺伝子導入非ヒト哺乳動物の子孫、例えば本発明により提供
される遺伝子導入マウスの子孫などは、遺伝子導入動物を適切な個人と交尾させることに
より、または生体内で遺伝子導入動物の卵子および/または精子を受精させることによっ
て得ることができる。
【0058】
本明細書中で使用される「子孫」または「遺伝子導入非ヒト動物の子孫」という表現は
最初に形質転換を受けた遺伝子導入非ヒト哺乳動物の前の世代の全ての祖先に関係する。
子孫は、前記方法のいずれかを用いて導入遺伝子の存在を確認するために分析され得る。
【0059】
本発明は、本発明によるDNA構造体、つまり、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ
母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常、もしくは造血
幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する染色体異常によって形成および/または活性化さ
れる遺伝子からなる構造体をゲノムに含む遺伝子導入非ヒト哺乳動物の細胞系にも関する
ものであり、前記遺伝子は、Sca−1+ 細胞において前記遺伝子の発現を導くプロモ
ータによって制御される。特別な実施例において、前記細胞系はマウス細胞系である。
【0060】
他の実施態様において、本発明は、幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常、例え
ば、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白
血病、または造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する染色体異常造血幹細胞または非
造血幹細胞に由来するヒトの腫瘍または非腫瘍性の病態を再現する非ヒト動物モデルの発
生のために、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータの使用に関するもので
ある。特別な実施例において、前記プロモータは、Sca−1+ 細胞において遺伝子の
発現を導くマウスのpLy−6E.1プロモータである。
【0061】
本発明によって提供される遺伝子導入非ヒト哺乳動物、その子孫または本発明による細
胞系は、例えば、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リン
パ母細胞性白血病に関連する染色体異常や、造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関連する
染色体異常などの造血幹細胞または非造血幹細胞由来のいずれの腫瘍性または非腫瘍性の
ヒト病態に関連する染色体異常を治療および/または予防するための潜在的に有効な化合
物を評価するために有用なものである。従って、本発明は幹細胞由来のヒト病態に関連す
る染色体異常の治療および/または予防のための潜在的に有効な化合物の評価において本
発明によって提供される遺伝子導入非ヒト哺乳動物、その子孫または細胞系の使用にも関
するものである。実施例において、前記染色体異常は、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リ
ンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病、もしくは造血幹細胞または胚幹
細胞の移動に関与する染色体異常から選択されるものである。
【0062】
遺伝子導入動物の場合において、幹細胞由来のヒト病態に対する治療および/または予
防に関して潜在的に有効な化合物を評価することは、遺伝子導入動物に対して検査する化
合物を種々の投与量で投与しそしてその動物の生理学的反応を時間の経過について評価す
ることによって行われる。検査する化合物の投与は評価する化合物の化学的性質に依存し
て経口または非経口で投与することが可能である。場合によっては、その化合物を、化合
物の効果を向上させる共同因子と共に投与することもできる。
【0063】
本発明における細胞系の場合において、幹細胞由来のヒト病態治療および/または予防
のための潜在的に有効な化合物の評価は検査する化合物を適切な時間に異なる濃度で細胞
培養媒体に加えそして適切な生化学検査および/または組織学的検査を用いて時間経過に
おけるその化合物に対する細胞の反応を評価することによって行うことができる。同時に
、化合物の効果を増長させる共同因子と共に、その化合物を細胞培養媒体に加えることが
必要である。
【0064】
他の実施態様において、本発明は幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常、例えば
、慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血
病、もしくは造血幹細胞または胚幹細胞の移動に関する染色体異常から選択される幹細胞
由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防のための治療手段の媒体
として、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータの使用方法に関するもので
ある。プロモータが、幹細胞などのSca−1+ 細胞に導入遺伝子の発現を導くという
事実は、幹細胞に種々の治療手段の特別で独占的な発現が可能である。特別な具体例にお
いて、前記プロモータは、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くマウスのpLy−6
E.1プロモータである。
【0065】
治療手段用の媒体としてSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータの使用に
よって発生する幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防の
ための治療手段には、腫瘍形成における悪性遺伝子または融合遺伝子の非活性化、もしく
は免疫不全症における機能遺伝子による欠陥遺伝子の置換または欠陥遺伝子を欠損させた
機能遺伝子の導入がある。これらの治療手段は、以下の(i)及び(ii)の方法によっ
て具現化できる。
(i)Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータと治療および/または予防を
行う幹細胞由来のヒト病体に関連する染色体異常の治療および/または予防のための適切
な治療遺伝子とから成るDNA構造体を調製すること(この場合に、前記治療遺伝子はS
ca−1+ 細胞に発現を導く遺伝子の制御下にある)、および(ii)細胞に外因性遺
伝子を導入するプロセスにおいて遺伝子が正常に機能するように細胞内の伝達およびのそ
の生物学的利用能を促進するベクターまたはシステムにDNA構造体を組み入れること。
実例として、前記ベクターまたはシステムは、例えば、アデノウィルス、レンチウィルス
などのウィルス性ベクターや、DNA−リポソーム、DNA−ポリマー、DNA−ポリマ
ーリポソーム複合体などの非ウィル性のものが挙げられる(ファング,ハングおよびワグ
ナー編集、アカデミック プレス(1999年)発行の「遺伝子治療用の非ウイルス性ベ
クター」「Nonviral Vectors for Gene Therapy」e
dited by Huang,Hung,Wagner,「Academic Pre
ss(1999)」を参照のこと)。
【0066】
本明細書中に使用される用語「遺伝子治療」は幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体
異常の治療および/または予防のために有効な遺伝子または遺伝子構造体を意味し、リボ
ソーム、遺伝子、融合体またはアンチセンス遺伝子構造体、および一般的には、慢性骨髄
性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病、c−k
itレセプターまたはそのリガンド(SCF)における変質などの染色体異常によって形
成および/または活性化される遺伝子に対して有効な全ての遺伝子、遺伝子融合または遺
伝子構造体を含むものである。
【0067】
さらに、本発明は治療および/または予防させる幹細胞由来のヒト病態に関連する染色
体異常の治療および/または予防のために適切な治療遺伝子と、Sca−1+ 細胞に遺
伝子の発現を導くプロモータとから成るDNA構造体から成る医薬品組成物に関連するも
のであり、前記遺伝子は任意に1つまたはそれ以上の医薬的に容認できる賦形剤と共に用
いて、Sca−1+ 細胞に発現を導く前記プロモータを制御するものである。治療遺伝
子とプロモータとから成るDNA構造体は遺伝子工学における従来の技術によって得るこ
とができる。本発明の医薬組成物に存在することが可能な賦形剤は、特に、医薬組成物の
投与経路に依存する。使用する賦形剤の活性物質の異なる投与経路およびこれらの製造方
法の概説については、シー ファウリ イ トリロ著、ルザン5 ソシエダット アノニ
マ編集(1993年)、「医薬学学説の解説」(Tradado de Farmaci
a Galenica c.Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A.
de Ediciones,(1993))を参照されたい。
【0068】
特別な実施例において、本発明の医薬組成物の活性成分(DNA構造体)の遺伝子の性
質のため、これは内部にDNA構造体を含む細胞に外因性遺伝子の導入プロセスに役立つ
ためのベクターまたはシステムから成るものであり、(それは例えば、アデノウィルス、
レンチウィルス、レトロウィルスなどに基づくウイルス性のものや、DNA−リポソーム
、DNA−ポリマー、DNA−ポリマーリポソーム複合体などの非ウイルス性のものがあ
る。(ファング,ハングおよびワグナー著、アカデミックプレス(1999年)編集、遺
伝子治療用の非ウイルス性ベクター「Nonviral Vectors for Ge
ne Therapy edited by Huang,Hung,Wagner.A
cademic Press(1999)」を参照)。
【0069】
また、本発明は例えば慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母細胞性白血病、T細胞急
性リンパ母細胞性白血病、もしくは造血幹細胞または胚幹細胞の移動(例えば、c−ki
tレセプターまたはそのリガンドの変化)などの幹細胞由来のヒト病態に関連する異常染
色体の治療および/または予防のための医薬組成物の合成においてSca−1+ 細胞に
遺伝子の発現を導くプロモータの使用方法に関するものである。
【0070】
以下の例は本発明について説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない
。例1は遺伝子導入マウスの発生について説明し、例2は幹細胞由来のヒト病態の生体内
の研究モデルとして、前記遺伝子導入マウスの使用を示すものである。このためには、ヒ
トの白血病に関連するキメラタンパク質をコード化する遺伝子融合に導く特徴的な染色体
の転座が選択されている(例2参照)。前記遺伝子融合の変化する発現はヒトの白血病特
有のサブグループに関係している。導入遺伝子は、Sca−1+ 細胞において、マウス
のプロモータpLy−6E.1によって、前記導入遺伝子の発現が十分に導かれるマウス
のゲノムに遺伝子融合が含まれるように導入される。前記遺伝子生成物が引き起こす過剰
発現は各々の場合に研究されているヒトの白血病のほとんどの症状が現れ、分化プログラ
ムにおいて、芽細胞(適切な場合)の存在および調和性のブロックが含まれる。遺伝子導
入マウスには他の組織からの腫瘍は見つかっていない。これによって、前記導入遺伝子の
過剰発現は研究されるヒトの白血病において主要な因子であること、また、研究対象であ
る関連する遺伝子融合と関連しているヒト病態を生体内で模倣するマウスモデルを最初に
提供したことの結論を導く。これらの結果は本発明が提供する遺伝子導入マウスが生体内
で、研究される導入遺伝子の生態を研究するための新しいモデルを構成し、かつ腫瘍の発
育において特定の染色体異常の役割を研究するための手段の有用有効性を表わすことを示
している。
[実施例]
【0071】
本実施例で使用される材料および方法は以下の通りである。
【0072】
〔材料〕
プロモータ:C57BL76マウス(Jackson Laboratory)におい
て異なる導入遺伝子(cDNA)の組織特有の発現を導くためにプロモータpLy−6E
.1が使用された。このプロモータは優れた特徴があり、使用された16キロベース(K
B)の断片には、Sca−1+ 細胞における選択的な発現に必要な全ての要素が含まれ
ている(マイルス シ,サンチス エム ジェイ,シンクレアー エイおよびジェルサッ
ク著、(1997年)、成人造血幹細胞におけるLy−6E1(Sca−1)導入遺伝子
の発現およびマウス胎芽の発育、発育、第124巻、第537頁乃至第547頁「Mil
es C,Sanchez M−J,Sinclair A,and Dzierzak
,E (1997)「Expression of the Ly−6E1(Sca−1
)transgene in adult haematopoietic stem
cells and the developing mouse embryo」De
velopment 124,537,547」)。
遺伝子:使用された遺伝子は以下の通り。
【0073】
ヒトBCR−ABLP 2 1 0 −t(9:22)(q34:q11)の結果として生
成される遺伝子融合で、慢性骨髄性白血病に関連する。この染色体異常を示す患者は時間
が経過すると、前記疾病の過程の特徴的な症状である胚盤胞を発生する。
【0074】
ヒトBCR−ABLP 1 9 0 −t(9;22)染色体の転座によって発生するガン
遺伝子で、B細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する。
【0075】
マウスSlug−造血幹細胞の動態に関与する遺伝子。
【0076】
マウスSnail−胚幹細胞の移動に関与するSlugファミリーの遺伝子。
ヒトHOX11−T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する異常染色体によって活性化
される遺伝子。
【0077】
ヒトRHOM2/LMO−2−T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常
によって活性化される遺伝子。
【0078】
マウスTAL1−T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する異常染色体によって活性
化される遺伝子。
【0079】
BCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP l 9 0 、HOX11、RHOM2
/LMO−2およびTAL1として確認された活性化可能な遺伝子は遺伝学評論年鑑(1
997年)第31巻、第429頁乃至第453頁(Annu Rev.Genet.(1
997)31:429−453に、Slug遺伝子はサイエンス(1994年)、第26
4巻、第835頁乃至第849頁(Science(1994)264:835−849
)に、Snail遺伝子は発育生化学(1998年)、第198巻、第277頁乃至第2
85頁、発育(1998年)第125巻、第3111頁乃至第3121頁および遺伝子(
2000年)第257巻、第1頁乃至第12頁(Developmental Biol
ogy(1998)198:277−285,Development(1998)12
5:3111−3121,and Gene(2000)257:1−12)に記載され
ている。
【0080】
マウス:使用されたマウスはG57BL/6 x CBAであり、乳母はCD1である
。
これらの動物は市販されており、例えば、Jackson Laboratory(米国
)から入手できる。
【0081】
〔方法〕
遺伝子導入マウスの発生および選択(スクリーニング)
各種のcDNA(ヒトBCR−ABLP 1 9 0 、ヒトBCR−ABLP 2 1 0
、マウスSlug、マウスSnail、HOX11、ヒトLMO2/RHOM2およびマ
ウスTAL1)を、pLy−6E.1プロモータのClaIサイトにおいてクローン化し
た。適切な制限エンドヌクレアーゼでの消化により異なるcDNAが得られた。各cDN
Aは、従来技術によりClaIで消化されたpLy−6E.1プロモータを含むベクター
においてクローン化された(分子クローン化、第3版、サムブロークおよびルーセル著、
シーエスエッチエルプレス(2001年)発行「Molecular Cloning,
third edition,CSHL Press by Sambrook,and
Russell(2001年)」)。
【0082】
遺伝子導入マウスSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 、Sca−1+ BCR−
ABLP 1 9 0 、Sca−1+ Slug、Sca−1+ SnailおよびSca−
1+ RHOM2/LMO−2の発生のために、NotIでの消化により微量注入用の線
状DNA断片が取得された。また、遺伝子導入マウスSca−1+ HOX11およびS
ca−1+ TAL1の発生のために、微量注入用の線状DNAの断片をBamH1によ
る消化によって取得した。各種の線状DNA断片がC57BL/6J x CBAマウス
の受精卵母細胞に微量注入された。基礎となる遺伝子導入マウスはマウスの尾から抽出さ
れたDNAサンプルにおいて前記cDNAを認識する特別なプローブを用いるサザン ブ
ロット分析法を使用して識別された。
【0083】
受精卵母細胞の準備、プロモータと作用的に結合させた活性化可能な遺伝子とを含むD
NA構造体の微量注入、および前記DNA構造体が注入された受精卵母細胞の偽妊娠乳母
への再移植、および妊娠期間中乳母を維持することは、従来の技術を用いて行った(ホガ
ン,コンスタンチニ および ラシー(1986年)著、マウス胎芽の処理、研究所手引
き、コールド スプリング ハーバー研究所発行、コールド スプリング ハーバー(1
986)「Hogan,Constantini&Lacy(1986)「Manipu
lating the mouse Embryo.A Laboratory Man
ual」,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold
Spring Harbor(1986))。 (i)正しく形質転換した受精卵母細胞
と (ii)終結まで発達しそして遺伝子導入マウスを生み出した胚との割合は前記ホガ
ン,コンスタンチニ および ラシー(1986)の結果と同様であった。
【0084】
遺伝子導入マウスの子/子孫は基礎となるC57BL/6 x CBAを有するマウス
を交配させ、cDNAを認識する特別なプローブを用いてサザン ブロット分析法によっ
て陽性マウスを識別することによって得られる。
【0085】
〔胎児分析〕
血球計算(サイトメトリー)のための染色には、モノクローナル抗マウス抗体(CD4
5R/B220,Thy−1.1およびThy−1.2、骨髄性マーカ(Mac 1/C
D11bおよびGr−1)およびSig)をフィコエリトリン(PE)と結合させる(す
べてPharmingen製)。ルーチン技術によって得られた全血液サンプルからの細
胞の懸濁液はFcによるレセプターとの結合をブロックするために精製されたCD32/
CD16抗マウス(Pharmingen)を用いて、それぞれ室温において4℃に適切
に希釈された各種の抗体で培養された。赤血球は溶解液(Becton Dickins
on)を用いて溶解した。サンプルはリン酸緩衝食塩水(PBS)で2度洗浄し、そして
PBS中に再懸濁させた。サンプル中の死細胞はプロピジウムヨウ化物(propidi
um iodide)を用いた染色によって排除した。サンプルおよびデータはCell
Questプログラム(Becton Dickinson)を用いてFACScanで
分析した。
【0086】
〔PCR分析〕
mRNAはキメラマウスの異なる組織から得た。cDNAは、RNaseのDNAse
I(HT)で処理したRNAの各標本の逆転写によって得た。cDNAは各場合に特別
な表示器を用いてPCRにかけた(ダイレクトイニシエーター(5' )は、cDNAの最
初の20ベースに対応し、インバースイニシエーター(3' )は、cDNAの最後の20
ベースに対して補足的であった)。反応は、Taqポリメラーゼのサプライヤー(Per
kin−Elmer Cetus)の指示に従って、95℃で1分、55℃で1分、72
℃で1分のサイクルを25サイクル行い、そして最後に72℃で10分延長した。
【0087】
〔組織学的分析〕
組織サンプルは、PBSにおいて4%のホルムアルデヒドで固定し、そしてパラフィン
に浸した。処理した薄膜を切り出し、ルーチン技術によってヘマトキシリン−エオシンを
用いて染色した。薄膜を試験しかつ写真撮影した。
【0088】
〔ウェスタンブロット分析〕
脾臓から採取した細胞の懸濁液を従来の方法を使用する免疫ブロット法で分析した(抗
体、研究所手引き、ハーロウおよびレーン著、CSH、1988年発行「Antibod
ies:A Laboratory manualHarlow and Lane,C
SH,1988」)。
【0089】
〔免疫グロブリン再編成/TCR遺伝子〕
DNAは異なる細胞から従来の技術を用いて調製した。DNAはBamHIで分解し、
特定の免疫グロブリンのプローブでサザンブロット法によって分析した(血液(迅速出版
)第90巻、第2168頁乃至第2174頁、1997年「Blood(rapid p
ublication)90:2168−2174(1997)」)。
【0090】
〔細胞導入〕
ドナーマウスの器官から得た細胞は懸濁され、洗浄され、4〜6か月のレセプターマウ
スの尾に静脈注射された(NOD/SCDI)(The Jackson Labora
tory)。マウスの観察は1週間に1度行われ、死にかけた状態の時に、DNA分析用
の組織病理研究および組織収集のために犠牲にされた。
【実施例1】
【0091】
遺伝子導入マウスの発生
1.1 Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 遺伝子導入マウスの発生
遺伝子生成物、BCR−ABLP 2 1 0 (t(9:22)(q34;q11)の結
果として生じかつ慢性骨髄性白血病に関連する遺伝子融合)の発現の直接的な結果を生体
内で確認するため、キメラヒトタンパク質BCR−ABLP 2 1 0 のcDNAをマウ
スのプロモータpLy−6E.1のコントロール下でクローン化し、受精卵母細胞を前記
「方法」の項で述べた方法に従ってC57BL/6J x CBAマウスに注入した。2
匹の遺伝子導入始祖マウス(Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 )が、導入遺伝
子を生殖細胞系に伝達する能力を示した。導入遺伝子の発現が両方の系で観察され、F7
レベル(第7世代)まで子孫が繁殖された。導入遺伝子の発現は、PCRおよび/または
ウェスタンブロット分析法によって証明された。両方の細胞系はSca−1+ 細胞に優
先的な発現が認められた。導入遺伝子の発現はオスとメスの両方のマウスにおいて観察さ
れ、Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 遺伝子導入マウスの両方の系で結果は同
様であった。
【0092】
1.2 その他の遺伝子導入マウスの発生
生体内で遺伝子生成物、ヒトBCR−ABLP 1 9 0 、マウスSlug、マウスS
nail、ヒトHOX11、ヒトRHOM2/LMO−2およびマウスTAL1の発現の
直接的な結果を調べるために、対応するcDNAをマウスのプロモータpLy−6b.1
のコントロール下でクローン化し、生じた構造体を前もって直線化しそしてC57BL/
6J x CBAマウスの受精卵母細胞に前記「方法」の項で示される方法に従って注入
した。各構造体に対して、導入遺伝子を生殖細胞系に伝達する能力を有する2匹の遺伝子
導入始祖マウスが得られた。このようにして実験を行い、以下のように認識された遺伝子
導入マウスを得た。
Sca−1+ BCR−ABLP l 9 0 (B細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる
)(図3参照):
Sca−1+ Slug(造血幹細胞の移動を生じるが、白血病を有しない);
Sca−1+ Snail(造血幹細胞の移動を生じるが、白血病を有しない);
Sca−1+ HOX11(T細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる);
Sca−1+ RHOM2/LMO−2(T細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる);
Sca−1+ TAL1(T細胞急性リンパ母細胞性白血病を生じる);
全ての場合に、両方の系において導入遺伝子の発現が観察され、F7レベル(第7世代
)まで子孫が繁殖された。導入遺伝子の発現はPCRおよび/またはウェスタンブロット
分析法によって確認された。両方の細胞系はSca−1+ 細胞に優先的な発現が認めら
れた。導入遺伝子の発現はオスとメスの両方のマウスにおいて観察され、両方の系で結果
は同様であった。
【実施例2】
【0093】
遺伝子導入マウスにおける白血病の発現
ヒト病態では、遺伝子のキメラ生成物Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 、S
ca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 、Sca−1+ Slug、Sca−1+ Sn
ail、Sca−1+ HOX11、Sca−1+ RHOM2/LMO−2およびSca
−1+ TAL1は各種の白血病に、特に、慢性骨髄性白血病(BCR−ABLP 2 1
0 )、B細胞急性リンパ母細胞性白血病(BCR−ABLP 1 9 0 、)およびT細
胞急性リンパ母細胞性白血病(HOX11、RHOM2/LMO−2およびTAL1)に
関与しているが、適切な細胞タイプの発現を行うためのプロモータの選択が難しいことか
ら、前記白血病のための現在のマウスモデルは、前記病態を一貫して再現することに失敗
している(遺伝子学評論年鑑、(1997年)、第31巻、第429頁乃至第453頁お
よび現代遺伝子学(2000年)、第1頁、第70頁乃至第80頁「Annu.Rev.
Genetics(1997)31:429−453;Current genomic
s(2000)、1:71−80」)。
【0094】
対応する白血病の診断を確立させることができるように、各種の遺伝子導入マウスの白
血病細胞の詳細な分析が行われた(Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 (図1及
び2)、Sca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 、(図3)、Sca−1+ HOX1
1、Sca−1+ RHOM2/LMO−2およびSca−1+ TAL1)。ヘマトキシ
リン/エオシンによる染色は白血病細胞がリンパ系/骨髄系の形態を有していることを示
した。末梢血管の単核細胞のほとんどは対応する白血病に適合する表現型を有している。
【0095】
分析する遺伝子導入マウスの細胞の腫瘍形成能をテストするために、1×106 個の
細胞を静脈注射で正常な非照射のNOD/SCIDマウスに注入した。全てのマウスは移
植後6〜11週間の間に漸次発生した白血病を示した。反対に、10匹のコントロールマ
ウスから得た細胞を注入した20匹のマウスはドナーに起因する可能性のある白血病を示
さなかった。移植された細胞は同じクラスの白血病を発生させた。また、ドナーマウスの
白血病クローンの起源はPCR分析法を用いて確認し、対応する導入遺伝子の存在が明ら
かになった。
【0096】
詳述すると、各場合において、遺伝子導入マウスのオスとメスは一様に(対応する病態
の)同じ症状を示しており、8週間後に臨床的な兆候を示し始め、時間の経過と共にそれ
が増加し、12〜16か月に100%のマウスが死亡する。基礎となるマウスはオスとメ
スで、その他の遺伝子導入マウスのものと同じように、対応する疾病に関連する臨床病状
を生じた。全ての遺伝子導入マウスは腫瘍のため14〜18カ月で死亡した。2匹の基礎
となるマウスの系で生き残ったものの割合は各場合において同様であった。各非遺伝子導
入同腹の子において同数のマウスからなるコントロールグループには腫瘍は観察されなか
った。しばしばその動物が頻呼吸に陥ったため屠殺した。病理解剖を行うと、その動物に
は触診でわかる造血性組織と関連する塊(各病態に特有)が発育しており、解剖後に、正
常な器官の5〜100倍大きいことがわかった。非造血組織における腫瘍の湿潤が観察さ
れたため、顕微鏡を用いて確認した。この検査は造血組織の疾病と一致している。しかし
、これらの遺伝子導入マウスでは、他の組織からの腫瘍は見られなかった。これらの動物
の組織学的分析は造血組織(脾臓および骨髄)および非造血組織(肝臓、肺、精巣など)から
の白血病細胞の顕著な湿潤を示した。
【0097】
従って、研究されたマウスモデルは対象となるヒトの白血病(慢性骨髄性白血病、B細
胞急性リンパ母細胞性白血病およびT細胞急性リンパ母細胞性白血病)で起こる再編成に
似ているだけではなく、その含有する遺伝子融合がヒト病態に関連しているものと同じ表
現型をも再現する。これらの結果はこれらのマウスモデルが検査する導入遺伝子(BCR
−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP 1 9 0 、Sca−1+ HOX11、Sc
a−1+ RHOM2/LMO−2およびSca−1+ TAL1)の生態の生体内研究の
ための理想的なモデルであることを示している。
【0098】
全体として、得られた結果はマウスプロモータpLy−6E.1の発現のコントロール
要素を制限することおよび染色体異常の結果を反復することによって、対応するガン遺伝
子の発現が導かれる新しいマウスモデルの発生を証明している。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1A】BCR−ABLP 2 1 0 マウスの骨髄(BM)および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析結果の小区画写真図である。
【図1B】慢性骨髄性白血病を有するSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの脾臓、肝臓およびリンパ節の部分の代表的な組織学的検査の結果の小区画写真図である。
【図1C】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管に対するギムザ染色の代表的な例の写真図である。
【図2A】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの骨髄(BM)、脾臓および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析結果の小区画写真図である。
【図2B】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの肝臓の部分の代表的な組織学検査の結果を示す写真図である。
【図2C】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスの末梢血管のギムザ染色の代表的な例を示す写真図である。
【図3A】コントロールマウスおよびSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスに対するサザンブロット分析法によるDNA分析を示す写真図である。
【図3B】Sca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 マウスおよびコントロールマウスの脾臓、肝臓、肺に対する代表的な組織学検査の結果と末梢血管の染色結果を示す写真図である。
【図3C】コントロールマウスとSca−1+ BCR−ABLP 1 9 0 マウスの骨髄および末梢血管(PB)に存在する細胞組織の代表的な分析を示す小区画写真図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子からなり、該遺伝子がSca−1+ 細胞中において前記遺伝子の発現を導くプロ
モータにより制御されるDNA構造体。
【請求項2】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の構
造体。
【請求項3】
幹細胞由来のヒト病態に関連した染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子がBCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP 1 9 0 、Slug、Sna
il、HOX11、RHOM2/LMO−2およびTAL1として確認されている遺伝子
の中から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
幹細胞由来のヒト病態に関連した染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子が、ヒトBCR−ABLP 2 1 0 、ヒトBCR−ABLP 1 9 0 、マウス
Slug、マウスSnail、ヒトHOX11、ヒトRHOM2/LMO−2およびヒト
TAL1細胞の中から選択されることを特徴とする請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子のSca−1+ 細胞に発現を導くプロモータがマウスプロモータpLy6E.1
またはその機能的な断片であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
構造体。
【請求項6】
そのゲノムに請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDNA構造体を含む遺伝子導入非
ヒト哺乳動物。
【請求項7】
前記哺乳動物がマウスであることを特徴とする請求項6に記載の遺伝子導入非ヒト哺乳
動物。
【請求項8】
前記遺伝子導入マウスがSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 、Sca−1+ B
CR−ABLP l 9 0 、Sca−1+ Slug、Sca−1+ Snail、Sca
−1+ HOX11、Sca−1+ RHOM2/LMO−2およびSca−1+ TAL
1として確認されているマウスの中から選択されることを特徴とする請求項7に記載の遺
伝子導入非ヒト哺乳動物。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載の遺伝子導入非ヒト哺乳動物の子孫。
【請求項10】
ゲノムに請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDNA構造体を含む遺伝子導入非ヒト
哺乳動物の細胞系。
【請求項11】
前記細胞系がマウスの細胞系であることを特徴とする請求項10記載の細胞系。
【請求項12】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常を有する遺伝子導入非ヒト哺乳動物を調製
する方法であって、該方法を、
(i)請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDNA構造体を遺伝子導入非ヒト哺乳動物
の受精卵母細胞に導入すること、
(ii)前記受精卵母細胞を子孫を生成するために偽妊娠の乳母に移植すること、
(iii)幹細胞由来のヒト病態に関与する染色体異常によって形成および/または活性
化された遺伝子の存在を評価するために前記子孫を分析すること、
からなる遺伝子導入非ヒト哺乳動物を調整する方法。
【請求項13】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項12に記載の
方法。
【請求項14】
前記非ヒト哺乳動物がマウスであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常を示す非ヒト動物モデルを発生させるため
に、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータを使用するプロモータの使用方
法。
【請求項16】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚性幹
細胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項15に記載
の使用方法。
【請求項17】
Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータがマウスのpLy−6E.1プロ
モータであることを特徴とする請求項15乃至16のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項18】
造血幹細胞または非造血幹細胞のいずれかに由来する腫瘍性または非腫瘍性のヒト病態
と関連する染色体異常を治療および/または予防するための潜在的に有効な化合物を評価
するために請求項6乃至9のいずれか1項に記載の遺伝子導入非ヒト哺乳動物またはその
子孫、または請求項10乃至11のいずれか1項に記載の細胞系の使用方法。
【請求項19】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項18に記載の
使用方法。
【請求項20】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防のための治療手
段において媒体としてSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータを使用する方
法。
【請求項21】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項20記載の方
法。
【請求項22】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防に対する前記治
療手段が遺伝子または悪性の遺伝子融合の非活性化、欠損している機能遺伝子の含有、ま
たは機能遺伝子による欠陥遺伝子の置換からなる請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防に適切な治療遺
伝子から成るDNA構造体と、およびSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモー
タとから構成し、前記治療遺伝子をSca−1+ 細胞に発現を導く前記プロモータによ
って制御し、任意に1つまたは複数の薬学的に容認できる賦形剤を有する医薬組成物。
【請求項24】
前記治療遺伝子が幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予
防に有効な遺伝子または遺伝子構造体であることを特徴とする請求項23に記載の医薬組
成物。
【請求項25】
前記治療遺伝子がリボザイム遺伝子、融合またはアンチセンス遺伝子構造体、および幹
細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって活性化および/または形成される遺伝
子に対して有効な遺伝子、遺伝子融合、または遺伝子構造体の中から選択されることを特
徴とする請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常であることを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記治療遺伝子がウィルス性ベクターまたは非ウィルス性ベクターに基づいていること
を特徴とする請求項23乃至26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体の変化の治療および/または予防のための医薬
組成物の合成にSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータを使用するプロモー
タの使用方法。
【請求項29】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常か、造血幹細胞ま
たは胚幹細胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項2
8に記載の使用方法。
【請求項1】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子からなり、該遺伝子がSca−1+ 細胞中において前記遺伝子の発現を導くプロ
モータにより制御されるDNA構造体。
【請求項2】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の構
造体。
【請求項3】
幹細胞由来のヒト病態に関連した染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子がBCR−ABLP 2 1 0 、BCR−ABLP 1 9 0 、Slug、Sna
il、HOX11、RHOM2/LMO−2およびTAL1として確認されている遺伝子
の中から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
幹細胞由来のヒト病態に関連した染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子が、ヒトBCR−ABLP 2 1 0 、ヒトBCR−ABLP 1 9 0 、マウス
Slug、マウスSnail、ヒトHOX11、ヒトRHOM2/LMO−2およびヒト
TAL1細胞の中から選択されることを特徴とする請求項3に記載の構造体。
【請求項5】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって形成および/または活性化される
遺伝子のSca−1+ 細胞に発現を導くプロモータがマウスプロモータpLy6E.1
またはその機能的な断片であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
構造体。
【請求項6】
そのゲノムに請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDNA構造体を含む遺伝子導入非
ヒト哺乳動物。
【請求項7】
前記哺乳動物がマウスであることを特徴とする請求項6に記載の遺伝子導入非ヒト哺乳
動物。
【請求項8】
前記遺伝子導入マウスがSca−1+ BCR−ABLP 2 1 0 、Sca−1+ B
CR−ABLP l 9 0 、Sca−1+ Slug、Sca−1+ Snail、Sca
−1+ HOX11、Sca−1+ RHOM2/LMO−2およびSca−1+ TAL
1として確認されているマウスの中から選択されることを特徴とする請求項7に記載の遺
伝子導入非ヒト哺乳動物。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載の遺伝子導入非ヒト哺乳動物の子孫。
【請求項10】
ゲノムに請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDNA構造体を含む遺伝子導入非ヒト
哺乳動物の細胞系。
【請求項11】
前記細胞系がマウスの細胞系であることを特徴とする請求項10記載の細胞系。
【請求項12】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常を有する遺伝子導入非ヒト哺乳動物を調製
する方法であって、該方法を、
(i)請求項1乃至5のいずれか1項に記載のDNA構造体を遺伝子導入非ヒト哺乳動物
の受精卵母細胞に導入すること、
(ii)前記受精卵母細胞を子孫を生成するために偽妊娠の乳母に移植すること、
(iii)幹細胞由来のヒト病態に関与する染色体異常によって形成および/または活性
化された遺伝子の存在を評価するために前記子孫を分析すること、
からなる遺伝子導入非ヒト哺乳動物を調整する方法。
【請求項13】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項12に記載の
方法。
【請求項14】
前記非ヒト哺乳動物がマウスであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常を示す非ヒト動物モデルを発生させるため
に、Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータを使用するプロモータの使用方
法。
【請求項16】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚性幹
細胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項15に記載
の使用方法。
【請求項17】
Sca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータがマウスのpLy−6E.1プロ
モータであることを特徴とする請求項15乃至16のいずれか1項に記載の使用方法。
【請求項18】
造血幹細胞または非造血幹細胞のいずれかに由来する腫瘍性または非腫瘍性のヒト病態
と関連する染色体異常を治療および/または予防するための潜在的に有効な化合物を評価
するために請求項6乃至9のいずれか1項に記載の遺伝子導入非ヒト哺乳動物またはその
子孫、または請求項10乃至11のいずれか1項に記載の細胞系の使用方法。
【請求項19】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項18に記載の
使用方法。
【請求項20】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防のための治療手
段において媒体としてSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータを使用する方
法。
【請求項21】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項20記載の方
法。
【請求項22】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防に対する前記治
療手段が遺伝子または悪性の遺伝子融合の非活性化、欠損している機能遺伝子の含有、ま
たは機能遺伝子による欠陥遺伝子の置換からなる請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予防に適切な治療遺
伝子から成るDNA構造体と、およびSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモー
タとから構成し、前記治療遺伝子をSca−1+ 細胞に発現を導く前記プロモータによ
って制御し、任意に1つまたは複数の薬学的に容認できる賦形剤を有する医薬組成物。
【請求項24】
前記治療遺伝子が幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常の治療および/または予
防に有効な遺伝子または遺伝子構造体であることを特徴とする請求項23に記載の医薬組
成物。
【請求項25】
前記治療遺伝子がリボザイム遺伝子、融合またはアンチセンス遺伝子構造体、および幹
細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常によって活性化および/または形成される遺伝
子に対して有効な遺伝子、遺伝子融合、または遺伝子構造体の中から選択されることを特
徴とする請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連するか、造血幹細胞または胚幹細
胞の移動に関連する染色体異常であることを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記治療遺伝子がウィルス性ベクターまたは非ウィルス性ベクターに基づいていること
を特徴とする請求項23乃至26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体の変化の治療および/または予防のための医薬
組成物の合成にSca−1+ 細胞に遺伝子の発現を導くプロモータを使用するプロモー
タの使用方法。
【請求項29】
幹細胞由来のヒト病態に関連する染色体異常が慢性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ母
細胞性白血病、T細胞急性リンパ母細胞性白血病に関連する染色体異常か、造血幹細胞ま
たは胚幹細胞の移動に関連する染色体異常の中から選択されることを特徴とする請求項2
8に記載の使用方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【公開番号】特開2009−55910(P2009−55910A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212804(P2008−212804)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願2003−547613(P2003−547613)の分割
【原出願日】平成14年11月11日(2002.11.11)
【出願人】(503260974)ユニバーシダド デ サラマンカ (オー テー アール アイ) (1)
【出願人】(503260985)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願2003−547613(P2003−547613)の分割
【原出願日】平成14年11月11日(2002.11.11)
【出願人】(503260974)ユニバーシダド デ サラマンカ (オー テー アール アイ) (1)
【出願人】(503260985)
【Fターム(参考)】
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