幽門係留デバイスおよび方法
【課題】患者の胃腸消化管中で一またはそれ以上の機能を実行するデバイス、方法、およびシステムを提供する。
【解決手段】デバイスは係留部材と、この係留デバイス46に連結した少なくとも一のアクチュエータ、センサ、またはこれらの組み合わせを具える。係留デバイス46は、デバイス46の少なくとも一部を患者の胃74の幽門部に維持し、胃組織に直接的に取り付けることなく、胃組織に間欠的に係合させるように構成されている。アクチュエータが、組織へのエネルギィの送出、栄養の吸収を遅らせるスリーブとしての稼動、胃74の中のスペースの占有、薬剤の溶出、及び/又はその他といった好適な機能を実行する。センサは、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及び/又はヘモグロビンなどの、患者の胃腸消化管中の患者の好適な特徴を検出するように構成されている。
【解決手段】デバイスは係留部材と、この係留デバイス46に連結した少なくとも一のアクチュエータ、センサ、またはこれらの組み合わせを具える。係留デバイス46は、デバイス46の少なくとも一部を患者の胃74の幽門部に維持し、胃組織に直接的に取り付けることなく、胃組織に間欠的に係合させるように構成されている。アクチュエータが、組織へのエネルギィの送出、栄養の吸収を遅らせるスリーブとしての稼動、胃74の中のスペースの占有、薬剤の溶出、及び/又はその他といった好適な機能を実行する。センサは、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及び/又はヘモグロビンなどの、患者の胃腸消化管中の患者の好適な特徴を検出するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、一般的に医療用デバイス及び方法に関する。特に、本発明は、胃腸消化管中で機能を実行するデバイスおよび方法に関する。
【0002】
肥満は、米国において伝染病規模の医療問題になっている。最近の政府研究は、アメリカ人の40%ほどが肥満(ボディマスインデックス(Body Mass Index)30以上で規定される)であり、これらのうち約20%が病的な肥満であると推定している。残念なことに、これらのパーセンテージが減る兆候はなく、毎回次の年には増える兆候にある。研究は、肥満が無数の健康リスクに結び付くとしており、その少数例には、心臓血管疾患、癌、糖尿病、整形外科的障害および不定愁訴、睡眠時無呼吸症、慢性疲労およびうつ病が含まれている。肥満の治療法の調査に何十億ドルも費やされ、栄養摂取と運動の研究を行い、公衆に肥満に関する教育を行っているにもかかわらず、現在までのところこれらの努力はほとんど効果がない。
【0003】
多くのアメリカ人がダイエットと、運動と、医薬で肥満と戦っているが、役に立たない。ダイエットと運動で体重を減らした人の多くが、短期間で元に戻ってしまう。入手可能な医薬は、フェン−フェン(Fen-Phen)ダイエット治療に見られる近年の騒ぎに証拠付けられるとおり、重い副作用があることがある。ダイエットと運動の難しさ、根本的かつ迅速に変化するように見える栄養物摂取情報、および通常効果がなく重い副作用を引き起こすこともあるダイエット薬品とサプリメントに対して多くの肥満の人が欲求不満となっており、肥満のままでいることを決心するか、あるいはより強烈な治療オプションを追及することを選択する。
【0004】
より強烈なオプションは、通常、胃ステープリングや、その他の胃を縮小する外科的技術、胃の外側周辺に狭窄バンドを当てる、胃のバイパスなどの外科的手順を含む。Al RokerやCarney Wilsonのような名声によってもっともよく知られている手順は、技術的にはルーワイ(Roux-En-Y)胃バイパス法として知られている胃のバイパス手術である。この手順では、実際に胃にバイパスを作り、ポーチのような非常に小さい胃を残して、患者が少量の食物を摂取した後、高い満腹感を覚えるようにする。胃のバイパスは非常に効果的であるが、死亡率が1−2%であり、消化不全などの多くの合併症の可能性があり、回復期間が最大6ヶ月であるなど、リスクの高い手術であると認識されている。その他の外科的な代替も、リスクが高いか、有効性が低いか、あるいはその両方である。
【0005】
多くの肥満した人に対する高リスクの胃の外科的処置と、ダイエットと運動の非有効性に起因して、体重を減らして肥満を解消する数多くの医療デバイスが開発されたが、これらのデバイスも様々な欠点がある。例えば、いくつかのデバイスは、食物あるいはカロリーをほとんど摂取することなく食物を通過させるチューブまたはシュートを本質的に作ることによって、胃または小腸の一部をバイパスしようとしている。これらのデバイスは、例えば、米国特許第5,820,584号、及び、米国特許出願公開第2003/0040804号および第2003/0109931号に記載されている。その他の技術には、スペース占有バルーンや、その他のデバイスを胃の中に配置して、少量の食物を食べた後に患者が満腹感を覚えるようにするものがある。このようなデバイスは、例えば、米国特許出願公開第2003/0109935号に記載されている。
【0006】
吸収低減胃腸スリーブや、スペース占有胃バルーンなどの現在入手可能なデバイスの有意な欠点の一つは、これらのデバイスが胃腸消化管の壁に直接的に取り付けられることである。このような直接的な取り付けは、しばしば、胃や小腸の内層に糜爛や潰瘍を起こすことがある。現在入手可能なデバイスのもう一つの有意なリスクは、胃腸管組織への直接的な取り付けがなんらかの理由で外れた場合、このデバイスが胃の幽門弁を通過して、小腸へ入ってしまうことである。そこから、デバイスが小腸又は大腸の詰まりを引き起こす。これは、通常外科手術を必要とし、発見が遅すぎた場合は死に至ることがある。
【0007】
例えば、米国特許出願公開第2003/0093117号に記載されているように、肥満治療に関する別のアプローチでは、通常、胃の容積を減らすために、胃に最小限の侵襲的外科的処置を行う。更に別のアプローチには、食物が胃から十二指腸へ通過する速度を遅くする目的で、迷走神経の切断または刺激が含まれている。別の者たちは、幽門弁のあるいは幽門弁のすぐ近くの組織内にインプラントを配置するあるいは増量剤を注入することによって胃が空になるのを遅らせようとした。この技術は、例えば、米国特許第6,540,789号、米国特許出願公開第2003/0153806号及び第2003/0158601号に記載されている。一般的に、これらのタイプの治療は、全て、侵襲的で、時に不可逆的な外科的手順を必要とし、胃腸消化管の機能に対して潜在的で重大な多数の副作用が生じるというリスクがある。
【0008】
もちろん、肥満は胃腸消化管に関連する唯一の健康上の問題点ではない。ここでは、治療または治癒の理想的な手段のない胃腸消化管に関連する重大な健康上の問題の一例として提供されているだけである。その他の多くの健康状態が、胃腸消化管の機能によって生じ、あるいは胃腸消化管の機能に直接関連しており、肥満などの多くの症状は、現在では、最適な医療又は外科的治療法がない。
【0009】
従って、肥満および胃腸消化管に関連するその他の症状についての、効果的で、侵襲性が最小であるか、あるいは非侵襲性のデバイスと、方法が必要である。理想的には、これらのデバイスと方法は、患者の中で比較的使用が容易であり、容易に展開し、副作用の高いリスクあるいは重大な合併症を生じることなく、肥満及び/又はその他の症状の治療を助けるであろう。理想的には、このようなデバイスと方法は、可逆的及び/又は外付デバイス又は最小の非侵襲手段を介して変形可能である。これらの問題の少なくともいくつかは本発明によって解決される。
【0010】
発明の概要
本発明は、患者の胃腸消化管中で一またはそれ以上の機能を実行するデバイス、方法、およびシステムに関する。一般的に、このデバイスは、係留部材と、一またはそれ以上のアクチュエータ、一又はそれ以上のセンサ、あるいは双方の組み合わせとを具える。係留部材は、患者の胃の幽門部内にデバイスを維持し、デバイスが幽門弁を通過することを防ぎ、間欠的に胃壁組織に接触するだけにして、胃壁の糜爛と潰瘍を防ぐ。さまざまな実施例では、胃腸消化管内でさまざまな機能を実行するために、アクチュエータ、センサ及び/又は追加の部品のいずれかが、係留部材と連結されていても良い。自身を胃の中に維持して、幽門弁の通過を防止し、間欠的にのみ胃壁と接触する係留デバイスは、さまざまな治療を管理し、さまざまな特徴を検出し、及び/又は、胃腸消化管内でその他の有益な機能を実行するための、侵襲性が最小のプラットフォームという利点を提供する。
【0011】
本発明の一の態様では、患者の胃腸消化管内で一又はそれ以上の機能を実行するデバイスは、係留部材と、当該係留部材に連結した少なくとも一のアクチュエータを具える。この係留部材は、患者の胃の幽門部内に前記デバイスの少なくとも一部を維持して、胃組織に直接取り付けることなく間欠的に係合するように構成されている。アクチュエータは、患者の胃腸消化管内で一またはそれ以上の機能を実行するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施例では、前記係留部材は、十分なサイズと剛性を有する胃滞留部を具え、この胃滞留部が幽門弁を通って胃の外へ出ないようになっている。一の実施例では、アクチュエータは、胃滞留部に連結されている。一の実施例では、胃滞留部が、患者の食道を通って送出するための第1の形状から、胃滞留部が幽門弁を通過することを防止する第2の形状へ拡大する。代替的に、このデバイスは、拡張不可であり、従って、胃壁を切開して胃の中に配置するように構成されている。いくつかの実施例では、前記係留部材が更に、幽門部の胃組織に、この組織に有意なダメージを与えることなく間欠的に係合するように構成された組織係合部を具える。いくつかの実施例では、いくつかの、あるいは全てのアクチュエータが、この組織係合部と連結している。このような組織係合部は、例えば、少なくとも一のコンプライアント材料を具えていても良い。
【0013】
いくつかの実施例では、係留部材は更に、胃滞留部から患者の幽門弁を通って少なくとも部分的に延在する幽門弁スパニング部材を具える。選択的に、いくつかのあるいは全てのアクチュエータが、この幽門弁スパニング部材に連結されていても良い。選択的に、係留部材が更に、幽門弁スパニング部材と連結された遠位係留部材であって、患者の十二指腸に位置するように構成された遠位係留部材を具えていても良い。一又はそれ以上のアクチュエータが、選択的に、幽門弁スパニング部材か、あるいは遠位係留部材のいずれかに連結されていても良い。いくつかの実施例では、例えば、アクチュエータが遠位係留部材に連結されており、患者の小腸内に延在するように構成されている。この遠位係留部材自体は、自然な蠕動によって幽門弁を通過するのに十分に小さいが、胃の中に戻らないように抵抗するのに十分大きい。代替的に、遠位係留部材が十分に大きく、幽門弁を越えて十二指腸への配置が必要であるようにしてもよい。
【0014】
いくつかの実施例では、胃滞留部、幽門弁スパニング部材、及び/又は、遠位係留部材が、形状は変わるが、胃腸消化管内に残るように構成することができる。例えば、いくつかの実施例では、幽門弁スパニング部材は、その長さ及び/又は直径が変わるように構成されている。このような形状の変化は、本デバイスの受信器とプロセッサによって一またはそれ以上の信号を受信して処理することによってトリガされる。例えば、高周波信号、電磁信号、マイクロ波信号、または超音波信号を送信するように構成された一またはそれ以上の外付の、または内部にインプラントされたデバイスによって信号が送信される。代替的に、pH、温度、胆汁含有量、栄養分含有量、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質及び/又はヘモグロビンを、前記デバイスの少なくとも一のセンサで検出したときに、形状の変化がトリガされる。
【0015】
このデバイスのいくつかの実施例は、また、胃の中に延在するカテーテルデバイスを取り付けて、デバイスを調整あるいは変更する取り付け手段を具えていても良い。例えば、取り付け手段は、磁石、フック、またはその他のいずれかの好適な取り付けデバイスを具えていても良い。このような取り付け手段によって、食道を通って配置されたカテーテルを介して、デバイスを変形し、調整し、再充電し、及び/又はその他を行うようにして、調整のためにデバイスを取り外す必要性をなくす。
【0016】
一の実施例では、係留部材が間欠的に胃の幽門弁を塞いで、胃が空になるのを遅らせるように構成されている。これらの実施例のいくつかは、アクチュエータが小腸の少なくとも一部内に延在して、小腸による栄養の吸収を低減するスリーブを具える。選択的に、このような実施例は、前記スリーブを前記係留部材に連結する少なくとも一の繋索を具えていても良い。一の実施例では、このスリーブは、消化された食物が部分的にこのスリーブ内に入るように少なくとも一の近位開口を具えている。いくつかの実施例では、このスリーブが不浸透性あるいは半浸透性の膜を具え、栄養の吸収を低減している。
【0017】
代替の実施例では、幽門弁を間欠的に塞ぐのではなく、係留部材がデバイスを介して、したがって、胃の幽門弁を介して物質を通過させる少なくとも一の経路を具える。このような実施例では、アクチュエータが、患者の十二指腸に延在する少なくとも一の経路と液通するスリーブを具え、物質がデバイスを通って、及びスリーブを通って、十二指腸による栄養の吸収を低減するようにしている。いくつかの実施例では、このスリーブは十二指腸を越えて延在し、従って、栄養の吸収を更に低減する。
【0018】
いくつかの実施例では、少なくとも一のアクチュエータが、胃腸消化管の組織へエネルギィを与える少なくとも一のエネルギィ送出部材を具える。例えば、このエネルギィ送出部材は、限定するものではないが、高周波、超音波、マイクロ波、低温、レーザ、光、電気、機械および熱エネルギィなどのエネルギィを送出する。いくつかの実施例では、このエネルギィ送出部材は、高周波エネルギィを、患者の胃、幽門弁及び/又は小腸へ与えるように構成された複数の高周波電極を具えている。
【0019】
別の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、係留デバイスに放出可能に連結した一又はそれ以上の物質を具える。例えば、このような物質は、限定するものではないが、脂質、薬剤、酵素、診断用薬剤、脂質、ビタミン、ミネラルなどを具えていて良い。いくつかの実施例では、少なくとも一の物質が、前記係留デバイスの外側表面に放出可能に連結されており、当該物質が時間の経過に伴って表面から自動的に放出されるようにする。選択的に、これらの実施例はさらに、デバイスに放出可能に物質を連結するために、外側表面に連結した物質を具える。代替の実施例では、係留部材の上の少なくとも一のリザーバ内にこの物質を収容するようにしても良い。いくつかの実施例では、この物質は、時間の経過に伴って、前記少なくとも一のリザーバから自動的に放出される。一方で、代替の実施例では、患者の外にあるトランスミッタからの信号をデバイスが受信したときにリザーバから放出される。いくつかの実施例では、デバイスが胃腸消化管内にある間にリザーバを補充するように構成されている。例えば、このようなリザーバは、患者の食道を介して胃へ通したカテーテルデバイスを介して補充することができる。
【0020】
ある実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、胃の中のスペースを占有する少なくとも一のスペース占有部材を具え、患者の満腹感を強めるようにしている。例えば、一の実施例では、このスペース占有部材は、前記係留部材の拡大した部分を具えていても良い。別の実施例では、このスペース占有部材は、繋索を介して前記係留部材に連結されている別の部材のピースであってもよい。
【0021】
一の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、生物学的反応を誘発するように構成した一またはそれ以上のトリガを具えていても良い。たとえば、このトリガは、満腹感反応を誘発するように構成された表面被覆を具えている。このような表面被覆は、例えば、生物学的脂質と相互作用するように構成されていてもよく、あるいは十二指腸内の脂肪センサであっても良い。いくつかの実施例では、この表面被覆は、時間の経過とともにデバイスから溶出されて、満腹感反応を誘発するように構成されている。このような溶出する表面被覆は、一の実施例では、脂肪、脂質、炭水化物、及び/又はたんぱく質誘導体を具えていても良い。代替の実施例では、トリガが、満腹感反応を誘発するように構成した機械的な刺激であってもよい。
【0022】
いくつかの実施例では、少なくとも一のアクチュエータが少なくとも一の撮像デバイスを具えている。この撮像デバイスは、限定するものではないが、例えば、光ファイバデバイス、超音波デバイス、レーザ撮像デバイス、内視鏡デバイス、カメラまたは、X線撮像デバイスを具えている。代替の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、グローバルポジショニングシステムに使用する位置信号を送信する信号送信器を具えている。更に別の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、患者の医学的記録を保存するためなどのデータ保存デバイスを具えている。
【0023】
選択的に、前記デバイスは更に、係留部材に連結した胃腸消化管内の一またはそれ以上の特徴を検出する少なくとも一のセンサを具えていても良い。このようなセンサ(または複数のセンサ)は、例えば、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質及び/又はヘモグロビンを検出するように構成されている。このような実施例は、更に、前記検出した信号に関係するデータを処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えていても良い。
【0024】
いくつかの実施例は、更に、患者の外に配置した、あるいは患者内にインプラントした一またはそれ以上の送信器からの信号を受信する少なくとも一の受信器を具えている。また、このような実施例は、選択的に、この受信した信号を処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えていても良い。いくつかの実施例は更に、患者の外に配置した外付のチャージ装置を介して再チャージするように構成した再チャージ可能な電源を具えている。その他の実施例では、その他の好適なデバイス又は組み合わせのいずれかを前記係留部材に連結して、胃腸消化管内の機能の実行を容易にする、または強化するようにしている。
【0025】
本発明のもう一つの態様では、患者の胃腸消化管において一またはそれ以上の機能を実行するデバイスが、係留部材と、当該係留部材に連結した少なくとも一のセンサを具える。上述したとおり、係留部材は、患者の胃の幽門部内に少なくとも部分的にデバイスを維持して、胃組織に直接取り付けることなく、間欠的に胃組織に係合させるように構成されている。このセンサは、患者の胃腸消化管内で一又はそれ以上の特徴を検出するように構成されている。上述したとおり、このようなセンサ(又は、複数のセンサ)は、限定するものではないが、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質及び/又はヘモグロビンなどの、いずれかの好適な特徴、または複数の特徴を検出する。
【0026】
いくつかの実施例では、前記デバイスは更に、胃腸消化管内で機能を実行する少なくとも一のアクチュエータを具える。アクチュエータの例には、限定するものではないが、エネルギィ送出部材、係留部材に放出可能に連結した物質、吸収低減腸管スリーブ、トリガデバイス、スペース占有デバイス、撮像デバイス、データ送信器、データ保存デバイスなど、上述のアクチュエータのいずれかが含まれる。さまざまな実施例では、デバイスが、プロセッサ、一又はそれ以上の受信器、及び/又は、上述したようなその他の好適な特徴を具える。
【0027】
本発明のもう一つの態様では、患者の胃腸消化管において機能を実行するシステムが、胃腸デバイスと、少なくとも一の送信器を具える。胃腸デバイスは、患者の胃の幽門部内にデバイスの少なくとも一部を維持して、胃組織に直接取り付けることなく、胃組織に間欠的に係合するように構成された係留部材と、当該係留部材に連結されて患者の胃腸消化管内で機能を実行する少なくとも一のアクチュエータとを具える。前記送信器は、前記アクチュエータの動きを始動する及び/又は調整するように構成されている。上述したようなセンサのいくつかの実施例では、前記胃腸デバイスが、係留部材に連結した、一またはそれ以上のセンサを具えている。上述したように、前記デバイスは、選択的に、プロセッサ、一またはそれ以上の受信器、及び/又は、再チャージ可能な電源も具える。
【0028】
いくつかの実施例では、前記少なくとも一の送信器が患者の外側に配置されるように構成されている。代替的に、一又はそれ以上の送信器を、患者内にインプラントするようにしても良い。いくつかの実施例は、更に、患者の食道を介して胃腸デバイスを送出する細長カテーテルデバイスを具えている。また、いくつかの実施例は、患者の食道を介して胃腸デバイスに連結して、アクチュエータを再チャージする細長カテーテルデバイスを具える。このような細長デバイスは、実施例によっては、送出用に用いられるものと同じデバイスであってもよく、異なるデバイスであっても良い。一の実施例では、細長カテーテルデバイスの磁気端部が、胃腸デバイスの逆にチャージされた磁石に連結するように構成されている。いくつかの実施例では、細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの上の一又はそれ以上の薬物リザーバを再チャージするように構成されている。代替的に、あるいは追加で、この細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの電源を再チャージするように構成することができる。
【0029】
本発明の更に別の態様では、患者の胃腸消化管内で機能を実行する方法が、係留デバイスを胃の中に送出するステップと、この係留デバイスに連結された少なくとも一のアクチュエータを用いて胃腸消化管内で機能を実行するステップとを具える。この係留デバイス自体は、上述した特徴のいずれかを有している。一の実施例では、係留デバイスを送出するステップが:前記係留デバイスを第1の制約された形状で患者の食道を通って前進させるステップと;前記係留デバイスを開放してデバイスの少なくとも一部を前記第1の形状から拡大させてより大きな第2の形状にするステップと;を具える。この拡大した第2の形状における前記係留デバイスの部分は、患者の幽門弁を通る係留デバイスの通路を防げるように構成されている。代替的に、係留デバイスの送出ステップが、患者の胃壁を切開してデバイスを通過させるステップを具えていてもよい。
【0030】
さまざまな実施例では、胃腸消化管内で前記機能を実行するステップが、限定されるものではないが、エネルギィの送出、物質の放出、小腸の吸収の低減、反応を誘発する胃腸組織の刺激、胃内のスペース占有、一又はそれ以上の画像撮像、データの送信、データの保存及び/又はその他を含む。いくつかの実施例では、この方法は更に、係留デバイスに連結した少なくとも一の検出デバイスを用いて少なくとも一の患者の特徴を検出するステップを具える。この検出した少なくとも一の特徴は、上述のリストにあるいずれか、あるいはpH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、ヘモグロビン及び/又はその他を含むその他いずれかの好適な特徴を具えていても良い。
【0031】
いくつかの実施例では、前記方法が、また、少なくとも一の送信器を介して前記係留デバイスへのデータを送信するステップと、前記係留デバイスに連結した受信器を介してこの送信したデータを受信するステップとを具えている。このような送信ステップは、患者の外側に配置された、患者の中にインプラントされた一またはそれ以上の送信器、あるいはこれらの組み合わせを介して実行することができる。いくつかの実施例は、前記係留部材と連結されたプロセッサを介して送信されたデータを処理するステップも具える。選択的に、この方法は、胃腸デバイスが患者内にある間に前記アクチュエータを再チャージするステップも具える。一の実施例では、アクチュエータを再チャージするステップは、患者の外に配置した外付チャージデバイスを介して実行される。代替的に、アクチュエータの再チャージは、患者の食道を介して患者の胃へ通過させたカテーテルデバイスを介して送るようにしても良い。一の実施例では、アクチュエータの再チャージステップには、胃腸デバイスの少なくとも一の薬剤リザーバを補充するステップが含まれている。この方法は、選択的に、前記係留部材に連結された電源を再チャージするステップも含まれる。
【0032】
いくつかの実施例では、前記係留部材は、患者の胃腸消化管の幽門弁を間欠的に塞いで、これによって、幽門弁を介しての食物の通過を遅延させるように構成されている。代替の実施例では、この係留部材は、患者の胃腸消化管の幽門弁にわたって延在しており、前記係留部材は、これを介して食物を通過させ、従って、患者の十二指腸の少なくとも一部において栄養の吸収を低減させるように構成されている。
【0033】
本発明の別の態様では、患者の胃腸消化管における一またはそれ以上の患者の特徴を検出する方法が、胃に係留デバイスを送出するステップと、この係留デバイスに連結した少なくとも一の検出デバイスを用いて胃腸消化管内の一またはそれ以上の患者の特徴を検出するステップと、を具える。このような方法は、更に、前記係留デバイスに連結した一またはそれ以上のアクチュエータを用いて、胃腸消化管内で機能を実行するステップを含む。この方法のさまざまな実施例は、上述した特徴のいずれを含んでいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1Aないし1Cは、胃の開口を部分的に及び/又は断続的に塞ぐように構成された幽門閉塞デバイスの一例の断面を、拡張しない形状で、部分的に拡張しない形状で、および全開した形状で示す図である。
【図2】図2Aないし2Dは、形状の異なる閉塞部材を用いたデバイスの変形例の側面を示す図である。
【図3】図3Aないし3Cは、幽門閉塞デバイスの別の変形例の断面を示す図である。
【図4A】図4Aは、テーパの付いたブリッジ部材を有するデバイスである更に別の変形例の側面を示す図である。
【図4B】図4Bは、互いに距離をおいて保持されている円錐形の閉塞部材を有するデバイスである更に別の変形例の側面を示す図である。
【図5】図5A及び5Bは、単一の閉塞部材と代替の係留部材を有するデバイスである更に別の変形例の側面を示す図である。
【図6】図6Aないし6Cは、胃と、デバイスの非摂取型の例の鼻腔胃(あるいは内視鏡)配置用の一例の断面を示す図である。
【図7】図7Aないし7Cは、胃と、デバイスの摂取型の例の鼻腔胃(あるいは内視鏡)配置用の別の例の断面を示す図である。
【図8】図8Aないし8Dは、胃と、デバイスの摂取型の例の配置用の更に別の例の断面を示す図である。
【図9】図9Aないし9Dは、胃と、デバイスの非摂取型の例の配置用の更に別の例の断面を示す図である。
【図10】図10Aないし10Dは、胃と、デバイス除去用の一例の断面を示す図である。
【図11】図11Aおよび11Bは、デバイスの代替例の平面図と斜視図であり、このデバイスは、幽門弁を断続的に塞ぐように構成された複数のプロングを具える。
【図12】図12Aおよび12Bは、デバイスの別の例の側面図と平面図であり、このデバイスは、幽門弁を断続的に塞ぐように構成された複数のプロングを具える。
【図13】図13Aないし13Dは、チューブを送出している間の十二指腸への逆流を防止するデバイスの代替使用を示す断面図である。
【図14】図14Aないし14Dは、一又はそれ以上の胃充填材と組み合わせたデバイスの代替使用を示す断面図である。
【図15】図15Aないし15Dは、本発明の一の実施例にかかる、胃内の容積を部分的に排除し、断続的に胃の開口を閉塞するように構成されたデバイスの断面を示す図である。
【図16】図16は、図15Aないし15Dに示すようなデバイスで、破断を伴うデバイスの断面を示す図である。
【図17】図17Aは、本発明の一実施例にかかる、位置決め部材と保持部材を有するデバイスの断面を示す図である。図17Bは、本発明の一実施例にかかる、膨張ポートを有する位置決め部材を有するデバイスの断面を示す図である。
【図18】図18Aおよび18Bは、2つの実施例にかかり、幽門弁を閉塞するデバイスの二つの異なる実施例の断面を示す図である。
【図19】図19Aおよび19Bは、別の実施例にかかる幽門弁を閉塞するデバイスの側面を示す図である。
【図20】図20Aないし20Cは、図19Aと19Bに示すデバイスを送出し、展開する方法を示す図である。
【図21】図21は、本発明の一実施例による非閉塞胃腸係留デバイスを示す図である。
【図22】図22は、本発明の別の実施例による非閉塞胃腸係留デバイスを示す図である。
【図23】図23は、本発明の別の実施例による腸管スリーブに連結した非閉塞胃腸係留デバイスを示す図である。
【図24】図24は、本発明の一実施例による係留デバイスに連結した細長カテーテルデバイスを示す図である。
【図25】図25は、図24に示す細長カテーテルデバイスと係留デバイスの更なる詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のこれらのおよびその他の態様及び実施例を、添付の図面を参照して以下により詳細に述べる。
【0036】
発明の詳細な説明
以下の説明のほとんどは、肥満の治療に役立つ幽門弁を間欠的に塞ぐ実施例に焦点を当てている。この説明はほとんど、また、食道を介して送出するためのより小さな形状から、胃の内部にデバイスを確実に滞留させるより大きな形状に拡大する実施例に焦点を当てている。しかしながら、代替の実施例では、デバイスは実際に幽門弁を塞がなくとも良いが、これに代えて、幽門弁を介して食物を通過させる導管として働き、いくつかのケースでは、小腸における栄養の吸収を低減するものである。また、いくつかの実施例は、胃壁の切開を含む外科的手順を介して配置するように構成されており、従って、本発明は、食道を介して送出される拡大するデバイスに限定されない。このように、以下の説明は、主に例示の目的で提供されており、どの実施例も本発明の範囲全体を制限するものと解すべきではない。
【0037】
さまざまな実施例によれば、複数の好適なアクチュエータ、センサ、送信器、受信器、プロセッサ、及び/又はその他のいずれかは、以下に記載するデバイスのいずれかに連結されていても良い。更に、このようなアクチュエータ、センサ、およびその他は、胃の中に存在するように構成されたデバイスの一部、幽門弁にわたるように構成された別の部分、幽門弁を越えてちょうど十二指腸にあるように構成された一部、あるいはこれらの組み合わせ、といったデバイスのいずれかの好適な部分に連結することができる。従って、幽門閉塞デバイスなどの、以下に述べるデバイスの多くが、アクチュエータ、センサ及び/又はその他用の係留デバイスとして動作する。このようなアクチュエータ及びセンサを以下により詳細に述べる。
【0038】
図1Aないし1Cは、胃の開口、特に幽門弁を部分的に及び/又は断続的に閉塞するように構成された幽門閉塞デバイス4の一例の拡張を示す断面図である。この特定の例において、図1Aは、未拡張あるいは未膨張状態にあり、幽門弁に送出及び/又は挿入の準備ができた状態のデバイス4を示す。図1Bは、拡張した状態にある遠位側閉塞部材14を示す図である。使用に当たっては、デバイス4が例えば幽門部にまたは幽門部を越えて配置されたら、遠位閉塞部材14(あるいは「保持部材」)が、自己シーリングであってもよい膨張ポート6につながっているチューブ8を通って、例えば塩水、水、エア、窒素、その他といった様々な生体適合性流体あるいはガスを流入させて膨張させることができる。チューブ8は、カテーテル、内視鏡、その他といった複数の送出チューブを具えていても良い。
【0039】
遠位側閉塞部材14の膨張可能な部材を、近位側閉塞材16の材料に対してより容易に膨張する材料で作ることによって、近位側閉塞部材16が膨張する前に、遠位側閉塞部材14が、膨張するように構成することができる。閉塞部材14、16を加工するに際して使用される材料は、シリコーン、シリコーンエラストマ、ラテックス、ポリウレタン、PTFE、FEPなどの様々な材料を含んでいても良い。代替的に、液体に接触したときに通常拡張するフォーム、ヒドロゲルなどの自己拡張材料を閉塞部材14、16に用いることができる。このような自己拡張材料を使用する場合は、これらを閉塞部材14、16内に配置し、塩水などの液体がしみこんで、この材料が拡張する。近位側閉塞部材16の材料とは別の自己拡張材料を遠位閉塞部材14に含めるようにして、拡張材料によって発揮する半径方向の圧力を変えるようにしても良い。
【0040】
別の代替例では、各閉塞部材14、16内に拡張する足場(scaffold)が用いられている。このような足場は、ニチノールなどの形状記憶合金または超弾性合金でできている。足場は、送出する形状に圧縮することができ、次いで、自己拡張によってあるいは、例えば電気、熱、RFエネルギィなど、始動エネルギィの供給によって、所望の閉塞形状に拡張しうる。いずれの場合でも、遠位側閉塞部材14は幽門弁の遠位側に位置し、次いで、より大きな形状に膨張あるいは拡張する。次いで、図1Cに示すように、近位側の閉塞部材16がポート6を通る注入によって膨張あるいは拡張するポイントである、幽門環に対して近位側へ引っ張られる。膨張あるいは拡張した両閉塞部材14、16を伴い、二つを連結しているブリッジ部材10が幽門にかかる。ブリッジ部材10は、幽門括約筋を有意に閉塞しない1mm以下から最大8−10mmといった様々な直径を有していても良く、また、他の好適な径であっても良い。
【0041】
ブリッジ部材10は十分にフレキシブルな長さを有して、閉塞部材14、16の幽門弁に対する位置を維持しているが、閉塞部材14、16を移動させることができるように構成されている。近位側閉塞部材16は、遠位側閉塞部材14が部材16を移動させる程度に、幽門弁を完全に閉塞している状態から幽門弁の近位側へ移動する状態に移動することができる。この移動は、幽門部を囲んでいる胃のルーメン(胃)と筋肉の自然な動きによって顕在化することができる。したがって、近位側閉塞部材16が近位側に移動すると、幽門弁が部分的にのみ閉塞され、ブリッジ部材10と弁の間を食物が断続的に通過できるようになる。胃の中のすべての食物がより長い時間残り、満腹感がすぐに始まって長く続くので、患者はより少ない食物を消費する。更に、閉塞部材14、16を相対的に移動させるためには、ブリッジ部材10の長さが、部材10を幽門弁の中に(あるいは別の胃の開口の中に)位置させられるよう十分であり、閉塞部材14、16が幽門弁に対して近位側および遠位側に移動するのに十分な余裕があるようにする。例えば、患者の幽門弁が長さ約2cm延在している場合に、ブリッジ部材10の長さは、例えば、2cm以上、最大8cmまでである。更に、閉塞部材14、16が膨張可能あるいは拡張可能である一方、ブリッジ部材10自体は、径が膨張あるいは拡張するように構成しても良い。
【0042】
可視染料あるいはマーカ、好ましくは、高可視である染料あるいはマーカを、選択的に、閉塞部材14、16の一方あるいは双方に注入して、安全性を測定する機能を持たせるようにしても良い。代替的に、閉塞部材14、16の一方あるいは双方を、選択的に、高可視であり、視覚的に組織から区別できる材料で作って、閉塞部材14、16が破壊してしまったような場合に、この染料あるいは閉塞部材14、16の破片が、身体を通過したときに見えるようになるようにしても良い。このことは、患者または外科医に、デバイスの破壊が生じたことを知らせるものである。
【0043】
別の変形例は、デバイスを被覆している材料、またはデバイス内に組み込まれている材料中に溶けた放出の遅い薬剤を含む。これらの薬剤は、数多くあるが、消化管内への薬剤の放出によって、または患者との接触を通じて、患者の中にゆっくりと溶け出す。代替として、デバイスが電気的刺激技術を具えていても良い。例えば、電気プローブを挿入用デバイスの表面から周囲の組織内に延在させても良く、あるいは、代わりに電極をデバイス表面に形成しても良い。
【0044】
更に別の代替においては、閉塞部材14、16の一方あるいは双方に腐食性あるいは生分解性の被覆がなされていても良い。このような被覆は、部材14、16の一方または双方を封じ閉じ込めるように構成されており、デバイスが取り込まれる、あるいは胃のルーメン内に配置されると、周囲の液体との接触によって自然にこの被覆が侵蝕され、覆われている閉塞部材を拡張または膨張させる。別の変形例では、以下に更に詳細に説明するとおり、近位側と遠位側の閉塞部材を、各々が異なるレートで、あるいは異なる環境で侵蝕される、異なる材料で被覆するようにしてもよい。
【0045】
図1Aないし1Cに示す例において、デバイス4は、デバイス4を通って規定される追加ルーメン18を具えていても良い。追加ルーメン18は、入り口ポート2を介してルーメン18に入り、出口ポート20を介して出てゆくデバイス4を通る液体と食物の通路を提供する。ルーメン18は、デバイス4を介して量を低減した食物が通過するように構成されており、この場合、デバイス4は、比較的短いブリッジ部材10で構成されていて、幽門に対してデバイス4が相対移動しないようにする。この例では、ルーメン18が、胃のルーメン74の内容物をデバイス4を介して腸76へ活発に送り込むまたは供給できるように構成されている。この様な場合、デバイス4が幽門バルブを閉塞しないように移動できる必要性はない。図に示すとおり、選択的に、追加ポンプまたはアクティブな供給バルブ12が、デバイス4内に組み込まれていても良い。ポンプ又はバルブ12は、単に開いて、食物などの胃の中の異物の存在が検知されたとき、あるいは胃の内容物からの所定の圧力が検知されたときに、ルーメン18とバルブ12を通って胃の内容物を通過させるように構成されている。その他の検知パラメータは温度およびpHレベルを含む。代替的に、ポンプまたはバルブ12によって自動的に始動される、または無線通信によって患者又は外科医によって外部から始動されるポンピング機構を介して、ポンプまたはバルブ12がルーメン18を通って胃の内容物を活発に送り込むように構成されていても良い。デバイス、バルブ12で構成されている場合、バルブは単方向性バルブとして作動し、液体又は食物の流れを胃から消化管へのみ流すようにする。
【0046】
デバイス4は、近位側閉塞部材16の形状及び/又は全体積が、幽門弁を通る腸への通過を防ぐのに十分であれば、どのような形状であってもよい。図2Aないし2Dは、閉塞部材として使用できる様々な形状の変形例の側面を示す図である。例えば、図2Aは、デバイスの変形22の側面であり、ここでは、近位側及び遠位側の閉塞部材24、26が、デバイス22によって規定される縦軸に沿って円形の横断形状を有しており、球形閉塞部材を形成する。近位側および遠位側閉塞部材24、26は同じサイズの径を有するように記載されているが、この直径は、所望の形状とデバイスの構成によって変えることができる。例えば、近位側閉塞部材24が遠位側閉塞部材26より大きな径を有するように構成してもよい。好ましくはないものの、代替的に、反対の構成を有するデバイスも使用できる。所望するデバイス構成によって、ルーメン28とポンプまたはバルブ12を選択的に含めるようにしても良い。
【0047】
図2Bは別のデバイスの例であり、近位側および遠位側閉塞部材30、32がデバイスによって規定される縦軸に沿った断面形状が楕円形であり、長円を形成するものである。長円形状の閉塞部材30、32の長軸は、この例ではデバイスの縦軸に対して垂直方向にあることが好ましいが、様々な角度に形成することもできる。図2Cは、近位側および遠位側の閉塞部材34、36が三角形に形成されており、円錐形状の閉塞部材を形成した例を示す。この例では、ブリッジ部材38の長さが最小になり、閉塞部材34、38の交点によって単に形成されて、くびれた領域を形成している。図2Dは、更に別の変形例を示し、ここでは近位および遠位閉塞部材40、42が菱形形状に形成されており、閉塞部材が円錐形状をした変形例を構成している。この変形例も、くびれた領域44を作ることができる。
【0048】
これらの変形例は特別な形状を示しているが、これらは単に使用することのできる様々なタイプを説明することを意図したものであり、限定を意図した物ではない。例えば、胃の開口を閉塞して、デバイスがその開口から落ちないように機能する、矩形、四角、などの様々な形状を用いることができ、これらは本発明の開示の範囲内にある。更に、遠位側閉塞部材を球形にして、近位側閉塞部材が円錐形というように、単一のデバイスの閉塞部材として、異なる形状の様々な組み合わせを用いることもできる。
【0049】
図3Aないし3Cは、幽門閉塞デバイスの別の変形例の断面図を示すものであり、この変形例も、胃の開口を断続的に閉塞するように構成されている。図1Aないし1Cに示すデバイスと同様に、この特別な例は、デバイス46全体を通じて規定されるルーメンの使用を省略するものである。このデバイス46は、閉塞部材を拡張するための上述したいずれの特徴を具えていても良い。例えば、拡張圧を変化させるフォームを用いて、液体、すなわち、塩水又は水をデバイス46に注入したときに、近位側の閉塞部材48が拡張する前に遠位側閉塞部材50が確実に拡張を開始するようにする。デバイス46は、入り口ポート6を通る注入チューブ8からの液体の流入が、近位側閉塞部材48から遠位側閉塞部材50へ中央部分のルーメン52を通って導かれるように構成されている。デバイス46は、以下に更に詳細に述べるように、図1AないしICに記載されたデバイスと同じ態様で配置することができる。この例は、金属などの膨張ポート6を具え、必要であれば、先端に磁気を帯びた吸引カテーテルを単純に配置することによってデバイス46の取り外しを行うことができる。このカテーテルは、適正に配置すれば、吸引力を加えることによってデバイスをしぼませて幽門弁からデバイス46を容易に除去できる。デバイス46は、あらゆる内視鏡的あるいは経皮的アプローチ、例えば、口腔−または鼻腔―胃アプローチを介して除去することができる。この例は、近位側閉塞部材48と遠位側閉塞部材50を連結するルーメン52を有しているが、このルーメンは胃のスペースに対して閉じており、代わりに、膨張液を送って閉塞部材48、50を膨張させるのに使用される。デバイス46の閉塞部材は、例えば図1Aないし2Dにあるような、上述したどの形状を有していても良い。
【0050】
デバイスの更に別の例が図4Aに示されている。この例では、デバイス54はテーパのついたブリッジ部材60を具えていても良い。ブリッジ部材60は、遠位側の閉塞部材58から近位側閉塞部材56へ向けて長さ方向に幅広になるようにテーパをつけることができる。テーパ付ブリッジ部材60は、デバイス54の幽門弁を閉塞しない位置への移動を容易にする。幽門弁はブリッジ部材60の周りで収縮するので、テーパはデバイスを近位側に移動させ易くする。テーパの角度は、閉塞部材56、58のサイズや形状と同様に、所望する結果によって変えることができる。
【0051】
図4Bは、上記と同様の別の例を示す。この変形例では、デバイス55が、ブリッジ部材61で連結されている円錐形状の部材を有する閉塞部材57、59を具えている。ブリッジ部材61は、デバイス55が幽門バルブに対して移動するのに十分なように互いから離れて保持する長さを有する。デバイス55は、ここに開示した方法のいずれかを用いて閉塞部材57、59を膨張または拡張させ、デバイス55は、選択的に中央ルーメンを有し、所望であれば受動あるいは能動バルブあるいはポンプ機構を有していても良い。
【0052】
別の実施例では、遠位側閉塞部材が完全に省略されている。例えば、図5Aは、代替の例62の側面を示しており、ここでは、ブリッジ部材66(あるいは(「位置決め部材」)が近位側の塞栓部材64から、例えば5cmあるいはそれ以上といった、ある長さ延在している。ブリッジ部材66は、例えば十二指腸などの消化管内に配置することができ、近位側閉塞部材64によって幽門部に隣接した正しい位置に保持される。近位側閉塞部材64の幽門弁に対する位置決めは、ブリッジ部材66が消化管の壁にこすりつけられることによって生じる摩擦力で維持するようにしても良い。閉塞部材64は、上述したのと同じ方法で、胃が収縮し移動する間に幽門部を断続的に閉塞しないよう機能するが、ブリッジ部材66の長さによって正しい位置に保持することができる。ブリッジ部材68の遠位端は消化管内で自在に浮遊することができるが、選択的に、図5Bのデバイス70に示すように、錘68によって、あるいは消化管に取り付けるための複数のフックまたはバー72によって、重くするようにしても良い。
【0053】
ここに述べた様々なデバイス例の間の所定の特徴を様々な組み合わせに組み込むことは、この開示の範囲内である。例えば、球形状を有する近位側閉塞部材と、円錐形状を有する遠位側閉塞部材を有するデバイスを使用することができる。更に別の例として、このデバイスが、近位側閉塞部材と同様に様々な方法で遠位側閉塞部材を膨張させるまたは拡張させる様々な方法を具えていても良い。更に、このデバイスは、一方の閉塞部材にのみ生分解性のカバーを有するようにしても良いし、デバイス内に一体化されたバルブ及び/又はポンプを有していても良く、また、選択的に、デバイスの長さを通って規定されるルーメンを具えていても良い。これらの例は、ここに述べた様々な例から様々な態様を組み合わせることによって使用することができる様々な組み合わせを単に説明するためのものであり、本発明の範囲内にあることを意図している。
【0054】
図6Aないし6Cは、胃と、非摂取型、能動型デバイス4の例の鼻腔胃(または内視鏡)配置の一例の断面を示す。デバイス4は、食道78を通って送出され、図6Aに示すように、圧縮され、膨張していない、あるいは拡張していない形状にあり、追加チューブ8を介して配置されている。デバイス4が胃74と十二指腸76内で、閉塞部材が幽門にかかったら、図6Bに示すように、デバイス4は上述した方法のいずれかを用いて膨張するか、あるいは、拡張する。チューブ8は取り外され、デバイス4が図6Cに示すように、正しい位置に残る。
【0055】
図7Aないし7Cは、胃と、非摂取型、能動型デバイス46の例の鼻腔胃(または内視鏡)配置の一例の断面を示す図である。上述したとおり、デバイス46は図7Aに示すように圧縮され、非膨張、あるいは非拡張形状で、食道78を通って進む。図7Bに示すように、デバイス46が配置されて、胃74と十二指腸76内で、閉塞部材が幽門にかかると、デバイスが膨張あるいは拡張して、図7Cに示すようにチューブ8が取り外され、デバイス46が正しい位置に残る。
【0056】
図8Aないし8Dは、胃と、更なる受動型(あるいは「自己拡張型」)デバイス80の配置の別の例を示す断面図である。図8Aに示すように、デバイス80は、単に飲み込まれる。デバイスが胃74に入ると、胃液が、閉塞部材82の膨張ポートを被覆している酸に弱い被覆を溶かす。図8Bに示すように、被覆が分解されると、近位側閉塞部材82が拡張あるいは膨張するように構成されている。拡張または膨張が生じると、デバイス80は胃74の中に残り、胃の自然な収縮によって、図8Cに示すように、最終的に未拡張あるいは未膨張状態を保って遠位側閉塞部材84が十二指腸76に入る。遠位側閉塞部材84が十二指腸76に入ると、遠位側閉塞部材84のアルカリに弱い被覆が溶け、デバイスに遠位側部材84の拡張あるいは膨張が生じて、図8Dに示すように幽門弁にかかる。遠位側閉塞部材84の被覆は、pHレベルが約6である十二指腸76に特有の酸性環境に接触したときにのみ溶けるように構成されている。除去を容易にするために、上述したとおり、二つの閉塞部材82、84は、所定のレベルの圧力がかかったときに破断するように設計されたバリア88を有する中央の中空ルーメン86で連結されている。したがって、所定の圧力レベルを有する真空をかけることで、バリア88は破断してデバイス80全体がしぼむように構成されている。
【0057】
図9Aないし9Dは、胃と、摂取によるデバイス90の受動型の更なる配置例の断面を示す図である。この代替例では、デバイス90を経口的に摂取することができる。図9Aに示すように、デバイス90は胃74に入り、近位側及び遠位側の閉塞部材82、92は、それぞれ、図9Bおよび9Cに示すように、デバイス90の膨張ポートの上の酸に弱い被覆が溶けると、膨張するように構成されている。膨張又は拡張がなされると、遠位側閉塞部材92は、サイズが小さいので(ほぼ、拡張した幽門弁の径5−15mm)そのうちに通過するが、近位側閉塞部材82は、例えば直径15mm以上で、最大60mmまでとサイズが大きいので、胃の幽門部の生理学的制限によって、図9Dに示すように胃74の中に残る。したがって、双方の閉塞部材82、94が胃74内で膨張した状態で一方の閉塞部材92は、幽門弁を通過するのに十分に小さく構成されており、近位側閉塞部材82は胃74内に残るように構成されている。
【0058】
様々な代替と変形を、自己拡張、または「受動」幽門弁閉塞デバイスおよび上述した方法に用いることができる。いくつかの実施例では、生分解性コーティングを使用することなく、デバイスを折りたたみ、圧縮し、あるいは患者が飲み込めるようにより小さい形状に形成することができる。食道を通って胃の中を通過するときに、一又はそれ以上の形状記憶ニチノールでできた支持リングあるいはその他の自己拡張支持部材があるため、折りたたまれたデバイスが開く。飲み込むようにした実施例では、デバイスは、デバイスから延在する繋索を具えており、食道を通って患者の口へ戻すようにしても良い。このような繋索は、閉塞デバイスが拡張するまで胃の中に保持するのに使用することができ、患者の胃の中で所望するようにデバイスが開かない場合及び/又はその他の場合、閉塞デバイスを取り出すことができる。いくつかの実施例では、この繋索も飲み込んで、胃の中で溶けるようになっている。別の実施例では、飲み込んだデバイスは幽門弁に接触するが、弁にわたるブリッジ部材を有していない。その他の例は、様々な実施例によって、本発明の範囲内にあることを意図している。
【0059】
図10Aないし10Dは、デバイス80(受動型の例が図に示されている)の除去の一例を示す胃74の断面図である。デバイス80は、図10Aにおいて胃74と十二指腸76の間にある。図10Bに示すように、先端に磁石の付いた吸引カテーテルまたは内視鏡94が導入され、図10Cおよび10Dに示すように、デバイス80がしぼんで取り出される。拡張ポート6がカテーテル94に接触させるにあたり、カテーテル94が拡張ポート6に正しく接触したかどうかを決定する補助として、先端が電気的接触部で構成されていてもよい。代替的に、デバイス80を内視鏡を介して除去してもよく、また時間がたつと分解するようにして、そのうちに腸を通過させるようにしても良い。
【0060】
別の実施例では、しぼませる、あるいは折りたたむことによって、カテーテルデバイスのルーメンを介して閉塞デバイスを取り出すようにすることができる。一の実施例では、デバイスを小さいピースに切断して、カテーテルルーメンを介して取り出すようにしている。更に別の実施例では、時間がたつとデバイスが溶けて、傷つけることなく幽門弁と消化システムを通過させるようにしても良い。デバイスの除去あるいは通過の様々な好適な代替が、様々な実施例で可能である。
【0061】
図11Aおよび11Bは、胃の中で単独で存在するデバイスの代替例を示す平面図および斜視図である。この特定の例は、幽門を断続的に閉塞する複数のプロング100、102、104、106、108、110を具える。この例では、拡張性材料96が、幽門の閉塞を促進するための好適な形状をしている。このデバイスは収縮によって幽門からはじかれるが、様々なプロングの一つによって再度挿入が行われる。更なる手段として、デバイスは、各プロングセットを通る複数の開口98を規定しており、幽門バルブを完全に閉塞しないようにしている。
【0062】
図12Aおよび12Bは、図11Aおよび11Bのデバイスの別の例の側面図と平面図である。この変形例では、より少ない数の複数プロング112、114、116、118が用いられており、各プロングがそれを通る開口120を規定している。しかしながら、この変形例では、周辺組織にダメージを与えないように、各プロングがフレキシブルであり、テーパが付いているかあるいは丸くなっている。
【0063】
図13Aないし13Dは、ここに記載されているデバイスの代替の使用を示す断面図である。この変形例において、チューブを送り込んでいる間、胃と十二指腸の逆流防止にデバイスを使用することができる。図に示すように、デバイス124は上述した例と同じであるが、この変形例では、デバイス124を通って規定されているチューブ送出用のルーメン132が、十二指腸76内に配置されるアウトレット134を規定している。デバイス124の近位部分も、送出チューブ126と膨張チューブ130に取り付けることができる。送出チューブ126は、ルーメン132を通って十二指腸140へチューブを直接送り込むのに使用され、膨張チューブ130は、チューブを送出する間に膨張可能な幽門スパナあるいはブリッジ部材136を膨張させて、送出した材料140の逆流を防止するのに使用されている。デバイス124は、第3のチューブ128を具えていても良い。これは、胃の内容物138の吸引用に設けられており、送出した材料が肺に逆流したり、胃74の減圧を防止する。閉塞部材の近位部分は、膨張したあるいは拡張した状態を保つことができ、また、時には幽門弁の圧力を和らげるために減圧されることもある。この例では、経皮的アプローチが示されているが、口腔胃アプローチや、その他のアプローチも可能である。
【0064】
図14Aないし14Dは、本発明のデバイスの更に別の代替使用を示す断面図である。図14Aないし14Cに示すように、デバイス90は、幽門弁を閉塞するように配置される。この場合、デバイス90の配置が上述の方法のいずれかによって影響されはするが、デバイス90は摂取されるものとして示されている。図14Dに示すように、一又はいくつかの胃の充填材142、すなわち、胃のバルーン、拡張可能な足場、または公知の様々なスペース占有デバイスなどを追加しても良い。この変形例では、デバイス90が配置され、次いで胃の充填材142が導入される。デバイス90は、胃の充填材142が十分に小さくなるまで確実に幽門弁を通過しないようにするのに使用されており、これによって分解していない物質を、小さいボウル状閉塞物に伴うリスクが生じることなく使用できるようにする。
【0065】
図15Aないし15Dは、幽門弁156を断続的に閉塞するための別の実施例のデバイス150の使用を示す断面図である。この実施例は胃のスペースを部分的に満たすものである。図15Aは、未拡張状態あるいは未膨張状態にあり、例えば、内視鏡、チューブなどのカテーテルデバイス152を介して胃の中へ送出及び/又は挿入するようにしたデバイス150を示す。本実施例では、図15Bに示すように、デバイス150が胃の中にあるときに拡張する各開可能なフォーム154をデバイスが具える。デバイス150及び/又はフォーム154を拡張させるために、あらゆる好ましい無毒な液体または気体を膨張ポート158を介して導入することができる。
【0066】
あらゆる好適な材料を使用してデバイス150を形成することができる。一の実施例では、例えば、デバイス150が、シリコーン、シリコーンエラストマ、ラテックス、ポリウレタン、PTFE、FEP、及び/又はその他でできた拡張可能なバルーンを具えていても良い。代替的に、液体に接触すると拡張するフォームまたはヒドロゲルといった自己拡張材料をデバイス150内に用いてもよい。このような自己拡張材料を使用する場合は、この材料をデバイス150内に配置して、塩水などの液体が染み込んで材料を拡張させるようにしても良い。
【0067】
図15Bに示すように、一の実施例のデバイス150は近位部153と遠位部155を具える。いくつかの実施例では、近位部153が支持機能または構造機能を有しており、デバイス150が幽門弁を通過するのを防止するためにデバイス150が確実に十分に大きな横断径を有するようにしている。通常、遠位部155は、幽門弁156及び/又は幽門弁156近傍の組織に接触するよう機能し、弁156を断続的に及び/又は部分的にブロックする。いくつかの実施例では、遠位部155が適合性材料でできており、遠位部155が幽門弁156の中、周囲、あるいは近傍の胃の組織に接触したときに、組織を傷つけないようにしている。いくつかの実施例では、近位部153と遠位部155が同じ材料でできており、近位部153が遠位部155に比較して、より大量の材料で、より厚い壁厚を有している。
【0068】
一般的に、デバイス150は、図に示すような不規則な長方形状、細長い球形、円錐形、菱形、など様々な好適な形状のいずれかを有している。いくつかの実施例では、この形状はデバイス150が幽門弁156の方向へ自然に移動し、遠位部155が弁156に接触して整列するように選択されている。これらの及びその他の実施例では、デバイス150の移動が、デバイスの特定の比重あるいは浮力を選択することによって更に強化され、デバイスが胃の内容物を通って弁156の方向に移動できるようにしている。
【0069】
図15Cおよび15Dは、幽門弁156に相互作用しているデバイス150の遠位部155を示す。図に示すとおり、遠位部155の形状は、弁156から離れたり(図15C)、接触したり(図15D)するように構成されている。これは通常、胃の自然な収縮時に生じ、したがって、幽門弁156の断続的な閉塞を提供する。幽門弁156の断続的な閉塞は、胃の中に食物をより長くとどまらせ、したがってすぐに満腹感が得られ、長く続き、患者の食物消費を少なくする。図15Cおよび15Dに示す実施例では、遠位部155は弁156に接触しているときに、弁156を完全に塞いでいる。代替の実施例では、遠位部155が弁156を完全に塞がずに、幽門弁156と完全に接触している場合でも部分的に流れるようにした様々な構成のいずれかを有するようにしても良い。例えば、遠位部155は、円錐形、楕円形、球形、ピラミッド型、筒状、突出部材(幽門内にフィットするように設計された)を伴うディスク形状、その他、などの形状を有していても良い。一の実施例では、遠位部155と近位部153は同じかほとんど同じ形状をしており、デバイス150の方向に無関係に、いずれかの端部が幽門弁156を閉塞することができる。
【0070】
デバイス150は、胃への送出、幽門弁156を断続的に閉塞する能力、胃からの除去、及び/又はその他、を強化する多数の追加の特徴のいずれかを具えている。一の実施例では、例えば、デバイス150の視覚化を容易にする一又はそれ以上の放射線不透過性マーカ、染料及び/又は材料をデバイス150が具えている。デバイス150は、デバイス150が溶けて身体内を通過する実施例において、又は、デバイス150が壊れたり破壊したりする好ましくない場合の安全特性として利点のある、裸眼での可視性を強化するその他のマーカ、染料あるいは材料を具えていても良い。
【0071】
いくつかの実施例では、デバイス150は一又はそれ以上の薬剤を胃、または幽門弁を越えて小腸への中に放出する一又はそれ以上のメカニズムを具えていても良い。例えば、徐々に放出する薬物をデバイス150を被覆する材料あるいはデバイス150を構成するのに使用する材料に連結するか、又は注入することができる。これらの薬物は、様々な治療または診断用薬剤のうちのいずれかであっても良く、消化管内に放出する薬剤によって、あるいは患者との接触を介して患者の中にゆっくり溶け込む。別の実施例では、デバイス150は、電気的刺激技術を含んでいても良い。例えば、電気プローブをデバイス150の表面に延在させて、周辺組織又はデバイス150の表面上に形成された電極内に挿入することができる。
【0072】
一の実施例では、デバイス150は、胃に送出用に、溶解するあるいは生分解性の被覆がなされていても良い。このような被覆は、デバイス150を封入するように構成されており、被覆が胃のルーメン内の内容物に接触すると、自然に壊れ、分解し、デバイス150を放出して拡張できるようにする。一の実施例では、デバイス150は、異なるレートで溶けるように構成された、あるいは胃の中の様々な化学的環境で溶けるように構成されている様々な材料で被覆するようにしても良い。
【0073】
図16は、崩壊157が生じた図15Aないし15Dのデバイス150を示す。この図に示すように、デバイス150の全形状が拡張されたフォーム154(または、別の実施例におけるデバイス150内あるいはデバイス150上のそのほかのフレームワーク材料またはその他)によって維持されている。一般的に、フォームまたはフレームワーク材料は、胃の中でそれが分解しないようにして、崩壊が生じた後の延長された期間デバイス150を支持できるようにするため、耐酸性である。代替の実施例では、フォーム154またはそのほかのフレームワーク材料は、崩壊した後ゆっくり分解し、弁の検査のときに、患者に崩壊を警告する信号材料を放出する。患者は、デバイス150が除去されたことを知り、医師に相談するであろう。
【0074】
図17Aと17Bを参照すると、幽門弁閉塞デバイス160の別の実施例は、膨張ポート168と、近位部163と、遠位部165と、位置決め部材161と、保持部材162とを具える。膨張ポート168は、いくつかの実施例は膨張が必要であるが、そのほかの実施例は必要でないので、もちろん選択的なものである。位置決め部材161は、一般的に幽門弁156を断続的に閉塞するためのある位置にデバイス160を配置する助けとなる。保持部材162は、デバイス160の位置または配置を保持する助けとなる。
【0075】
一の実施例では、位置決め部材161が中空状であり、したがって、デバイスを通って液体及び/又はガスの通路ができて、近位部163、遠位部165と保持部162を膨張させる。一の実施例では、位置決め部材161が、比較的短く、幽門156に対する遠位部165の動きを禁止する。別の実施例では、位置決め部材161がより長く、デバイス160がより多く動ける。
【0076】
図17Bを参照すると、近位部173と遠位部175を有するデバイス170は別の実施例では、遠位端に膨張部172を有する位置決め部材171に接続されている。この実施例では、デバイス170は未膨張状態で胃の中へ送られて、位置決め部材171とポート172をデバイス170を膨張させるのに使用して、位置決め部材が飲み込まれて幽門弁156を通って、傷つけることなく小腸の最初の部分に残る。別の実施例では、デバイスが、食道から口まで伸びている取り外し可能な繋索に取り付けられて、胃の中に配置される。繋索はデバイスが正常に展開しなかった場合にデバイスを取り除くのに使用することができ、あるいは代替として、デバイスが胃の中に位置したらデバイスから取り外すことができる。
【0077】
図18Aおよび18Bに示しており、上述したとおり、幽門弁を閉塞するデバイスの様々な実施例は、さまざまな拡張可能な支持メカニズムのうちのいずれを具えていても良い。上述した実施例は、フォームが含まれているが、自己拡張ケージ、コイル、ラティス、フレームワーク、その他など、その他の支持構造と材料を使用することができる。図18Aにおいては、膨張ポート188を伴う近位部183と遠位部185を有するデバイス180が、拡張する足場184を具えている。この足場は、内側表面または外側表面でデバイス180の壁に連結されていても良く、あるいは、壁に埋め込まれていても良い。このような拡張する足場184は、ニチノールなどの形状記憶材料あるいは超弾性材料でできていても良い。この足場184は、送出形状に圧縮されていて、自己拡張あるいは、電気的エネルギィ、熱、RFエネルギィその他などの始動エネルギィを供給することによって拡張した所望の閉塞形状に拡張するように構成されていても良い。別の実施例では、この足場を、引っ張りデバイスで足場を拡張した状態に引っ張ることによって展開させてもよく、この実施例では、足場が折りたたんだ状態から元の形状になることを防止するキャッチメカニズムを有していてもよい。
【0078】
図18Bに示す実施例では、デバイス190は、近位部193と、遠位部195と、膨張ポート198を具える。この実施例では、デバイス190の壁194が、閉じ込められた状態から解放されたときに、より小さい形状からより大きい形状へ拡張する、形状記憶材料、超弾性材料、あるいは自己拡張材料でできている。壁194の材料は、その拡張した形状を保持し、したがって、デバイス190の形状を維持して、デバイスが折りたたまれないようにする。
【0079】
図19A及び19Bを参照すると、幽門弁閉塞デバイス200の別の実施例が、可動、あるいは「反転」外側シェル204と、内側コア202と、位置決め部材208と、ホール212あるいはその他の表面的な特徴を有する遠位保持部材210を有している。図19Aでは、デバイス200が幽門弁を断続的に閉塞するための拡張した形状で示されており、図19Bでは、胃の中に送出するための折りたたんだ形状で示されている。シェル204は、組織接触部/組織係合部205と、支持部206を具える。一般的に、支持部206は、組織接触部205より硬く/剛性があり、前者はデバイス200の横断径を幽門を通り抜けられないように維持し、後者は、有意なダメージを生じることなく胃の組織に接触できるようにより適合性がある。
【0080】
デバイス200の様々な構成部品は、上述したような好適な材料のいずれかで、あるいは公知のまたはこれから発見されるその他の好適な材料のいずれかで構成することができる。一の実施例では、内側コア202はシリコーンなどの中実材料であるが、他の実施例では、コア202は中空状である。コア202は、あらゆる好適なサイズ、形状、横断径、あるいはその他を有していても良い。一の実施例では、コア202は、約5mmから約30mm、好ましくは10mmの横断径を有する。シェル204は、コア202と同じ材料で作っても良いし、異なる材料で作っても良く、やはり、どのような好適なサイズ、形状、横断径、その他を有していても良い。一の実施例では、シェル204の支持部206が、組織接触部205の支持部より厚い。別の実施例では、支持部206が、組織接触部205と異なる材料で作られている。
【0081】
位置決め部材208は、内側コア202、シェル204、あるいは双方の延長であっても良く、あるいは内側コア202及び/又は外側シェル204に連結された別ピースであっても良い。位置決め部材208は、好適な長さと直径を有し、幽門弁を通過できるようになっている。一の実施例では、横断径が約1.0cm以下であり、長さが約3.0cm以上である。保持部材210も、好適なサイズ、形状を有しており、いくつかの実施例は、拡張可能であり、いくつかの実施例は自己拡張であり、その他は、拡張しないように構成されている。一の実施例では、保持部材210の横断径がもっとも大きくて約30mm以下、好ましくは約25mm以下、好ましくは約21mm以下である。保持部材210内のホール212あるいは表面的な特徴は、デバイス200を送出し、調整し、及び/又は回収するためのアクチュエータ、あるいはその他のデバイスを保持部材に連結させるためのあらゆる形状を有していてもよい。位置決め部材208と保持部材210の双方共、あらゆる好適な材料で作ることができる。
【0082】
定率で縮尺して書かれていないが、図19Bは、デバイス200の折りたたまれたあるいは反転した状態を示す。この形状において、シェル204は、送出チューブあるいはカテーテルを通る送出用に、より小さな横断面に圧縮されている。デバイス200が胃に送出された後、シェル204が拡張した状態に反転し、デバイス200が断続的に幽門弁を閉塞するように動作する。
【0083】
図20Aないし20Cは、図19Aおよび19Bに示すデバイス200を送出して胃の中で拡張させる方法を示す図である。図20Aにおいて、デバイス200は、送出チューブ214のルーメンまたはカテーテル内に、折りたたまれた状態で収納されている。図20Bでは、デバイスが送出チューブの外に部分的に進められ、シェル204を少なくとも部分的に拡張させることができる。保持部材210の上のホール212を通って引っ掛けられているアクチュエータ216を用いてデバイス200を引き戻し、シェル204が送出チューブ214の遠位端に重なるようにする。送出チューブ204の遠位端を用いて、シェル204に力をかけて、図20Cに示すようにシェルを拡張した状態に反転させる。図20Cに示すように、アクチュエータ216は、保持部材210のホール212と連結するためのホック218を具えている。シェル204は拡張した形状に移動すると、その形状にとどまるように構成されており、したがって、幽門弁に接触し、上述したデバイス保持機能を提供する。一の実施例では、送出チューブ214が拡張可能なバルーン(図示せず)を遠位端あるいはその近傍に具えていても良い。バルーンは周方向に膨張するドーナッツ形状であってもよく、あるいはエキセントリック形状又はその他の好適な形状を有していても良い。バルーンが膨張して、それに対してデバイス200が引っ張られるストップとして働く。代替として、バルーンがデバイス200の下であるいはデバイス200内で膨張して、バルーンが膨張するときにデバイスを反転させるようにしても良い。
【0084】
その他の実施例では、デバイスがその他のあらゆる好適な方法を用いて送出され、及び/又は展開する。例えば、一の実施例では、シェル204が封じ込められた/折りたたまれた状態から拡張した状態へ、アクチュエータ216や、送出デバイス204の遠位端を使用することなく「自己反転」することができる。自己反転は、形状記憶材料あるいはばね荷重材料などによって、あるいは、デバイスの剛性にバイアスを作るシェルのジオメトリによって達成される。別の実施例では、折りたたんだあるいはしぼんだ状態で、または溶解するカプレット内に収納した状態でデバイス200を飲み込むようにしても良い。様々な代替の実施例が可能である。
【0085】
図21は、胃腸係留デバイス220の実施例を示す図であり、このデバイスは、上述したデバイスと違って、幽門弁を塞ぐように構成されていない。代わりに、デバイス220は、食物を通過させる開口223を有する胃滞留部材222と、幽門弁を閉塞しない組織接触部224と、弁スパニング部材226と、遠位係留部材228を具える。胃滞留部材22は、部材が幽門弁を通過するサイズであり、この通過と部材の折り畳みを防ぐのに十分な剛性と強度を有するであろう。組織接触部材224と、弁スパニング部材226は、これらが幽門弁を通る食物の通過を塞がないようなサイズと形状を有する。遠位係留部材228は、幽門弁を通って胃の中へ戻らないようなサイズである。いくつかの実施例では、遠位係留部材228は、胃から幽門弁へ自然に通過するのには十分に小さいが、弁を通って戻らないようなサイズである。その他の実施例では、遠位係留部材228は、幽門弁を越えて配置されなければならない(弁を介して押し出し部材228に圧力を与えることによって、または外科手術によって)。従って、係留デバイス220は、胃の一部内に維持し、幽門弁を越えて十二指腸内へ、胃の組織に直接取り付けることなく、代わりに胃の組織に間欠的に接触させることによって自体を維持している。
【0086】
一の実施例では、胃滞留部222、幽門弁スパニング部材226及び/又は遠位係留部材228は、デバイスが胃腸消化管に存在する間に形状を変えるように構成することができる。例えば、いくつかの実施例では、幽門弁スパニング部材226は、その長さ及び/又は直径が変化する。このような形状の変化は、デバイスの受信器とプロセッサによって一又はそれ以上の信号の受信と処理によってトリガされる。例えば、高周波信号、電磁信号、マイクロ波信号、または超音波信号を送信するように構成された一またはそれ以上の外部デバイスあるいは内部にインプラントされたデバイスによって信号を送信することができる。代替的に、形状の変化は、前記デバイスの少なくとも一のセンサによる、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及び/又はヘモグロビンの検出に基づいてトリガされる。
【0087】
図22は、係留デバイス230の別の実施例を示す図である。このケースでは、組み合わせた胃滞留/組織接触部232と、幽門弁スパニング部234と、遠位係留部236を具える。このデバイス230は中空状であり、胃滞留部232の中に遠位係留部235中の遠位開口235に液通する近位開口233を有する。弁スパニング部234は、この部分が幽門弁を開かせないようなサイズであり、いくつかの実施例では、折りたたみ可能であり、これによって、デバイス230をその他のスリーブ状の幽門弁スパニングデバイスと区別している。いくつかの実施例では、遠位係留部が、ニチノールなどのステント材料で形成されている。しかしながら、デバイス230は、それを胃腸壁の組織に直接取り付けるものではなく、代わりに、幽門弁を介しての前後の移動が自在であり、これによって、胃壁組織に直接取り付けることなく間欠的に接触している。いくつかの実施例では、デバイス230は、また、遠位係留部236から延在し、遠位開口235と液通するスリーブ(図示せず)を具える。このようなスリーブは、小腸の一部に沿って延在することができ、その長さに沿って栄養の吸収を防止または低減して、肥満の治療を助ける。
【0088】
図23は、係留デバイス240の別の実施例を示しており、このデバイスは、開口243を有する胃滞留部材242と、複数のアーム245を有する組織接触部244と、幽門弁スパニング部246と、複数の繋索249を有する遠位係留部248と、繋索249を介してデバイス240に連結された遠位スリーブ252を有する。再び、この実施例では、デバイス240は、幽門弁を塞ぐものではなく、最大でも、最小限に塞ぐだけである。食物は弁を通過し、少なくともいくらかの食物が近位側スリーブ開口253を介してスリーブ252内へ入る。次いで、食物はスリーブを通過し、このスリーブがスリーブ252の長さに沿って腸管による栄養の吸収を防ぐか、あるいは少なくとも低減する。
【0089】
図1−23を参照して上述したいずれの実施例も、一又はそれ以上のアクチュエータ、一又はそれ以上のセンサ、あるいはこれらの組み合わせを具えていても良い。このようなアクチュエータとセンサは、係留デバイス、幽門閉塞デバイス、あるいは胃の中にあり、幽門弁にかかっている、あるいは十二指腸内に配置されたいずれかの部分など、どの部分に連結されていても良い。いくつかの実施例では、一又はそれ以上のアクチュエータまたはセンサが、係留デバイスまたは閉塞デバイスに、一又はそれ以上の繋索を介して連結されており、一方、他の実施例では、全てのアクチュエータ及び/又はセンサが係留デバイスに直接取り付けられている。
【0090】
係留デバイスに連結することができる一のタイプのアクチュエータは、胃腸組織に、限定するものではないが、高周波、超音波、マイクロ波、低温、レーザ、光、電気、機械又は熱エネルギィなどのエネルギィを与えるエネルギィ送出部材である。もう一つのタイプのアクチュエータは、限定するものではないが、脂質、薬物、酵素、診断用薬剤、脂質、ビタミン、ミネラル、その他の物質(または複数の物質)を放出可能にするように係留デバイスに連結されている。この物質は、係留デバイスの外側表面に放出可能に連結することができ、あるいは一またはそれ以上の補充可能なリザーバ内に収納するようにしても良い。胃の中のスペースを占有して、患者の満腹感を強化するスペース占有部材は、別のタイプのアクチュエータである。アクチュエータの更に別の例は、満腹感反応を誘発するように構成された表面被覆などの、生物学的反応を誘発するように構成したトリガである。すべての好適な撮像デバイスは、別のタイプのアクチュエータでありうる。一般的に、胃腸システム内から機能を実行する何らかの好適なデバイスは、さまざまな実施例によれば、本発明の係留デバイスと、幽門閉塞デバイスに連結することができる。
【0091】
いくつかの実施例では、係留デバイスは、更に、胃腸消化管内の一又はそれ以上の特徴を検出するために係留部材に連結された少なくとも一つのセンサを具えていても良い。このようなセンサ(または複数のセンサ)は、例えば、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及び/又はヘモグロビンを検出するように構成されている。このような実施例は、更に、この検出信号に関連するデータを処理して、この処理したデータを少なくとも一のアクチュエータに提供するように構成されたプロセッサを具える。これらのまたはその他の実施例も、遠隔源から送信されたデータを受信する受信器、データを送信する送信器、データ保存モジュール、再チャージ可能な電源、またはこれらの好適な組み合わせを具えていても良い。
【0092】
上述したとおり、いくつかの実施例において、係留デバイス及び/又は幽門閉塞デバイスは、患者の食道から胃へ通した細長カテーテルデバイスを介して経口胃管、経鼻腔胃管などを送出することができる。同じ送出カテーテルデバイスまたは別のデバイスを、デバイスが胃の中の正しい位置にあれば、係留デバイスまたは閉塞デバイスを変形、調整及び/又は再チャージ用に構成することもできる。このことによって、デバイスを取り出すことなく、あるいはデバイスの再配置を要することなく、デバイスを変更することができる。
【0093】
図24および25は、上述したような細長カテーテルデバイス262と取り付け可能な係留デバイス264を示す図である。係留デバイス266は、カテーテルデバイス262を係留デバイス264に取り付ける取り付け部材266を具える。いくつかの実施例では、例えば、図25により明確に見られるように、カテーテルデバイス262は、磁気遠位先端部材276を有し、係留デバイス264の上の取り付け部材266は、デバイス264の胃滞留部270に連結された逆にチャージされた磁石を具える。(係留デバイス264も、幽門弁スパニング部272と遠位係留部274を具える。)細長カテーテルデバイス262は、さまざまな実施例によると、限定するものではないが、電源の再チャージ、一又はそれ以上の薬剤リザーバの補充、係留デバイス264の位置または方向の変更、係留デバイス264の一またはそれ以上の部分の形状の変更、係留デバイス264の一又はそれ以上の部分の膨張または収縮、及び/又はその他、といったあらゆる好適な機能を実行するのに使用することができる。いくつかの実施例では、カテーテルデバイス262は、患者の外に配置した、あるいは患者の中にインプラントした遠隔送信器と協働して動作して、追加の指示、調整、電力、あるいはその他を係留デバイス264へ提供する。
【0094】
上記は、本発明の完全で正確な説明であるが、様々な変形例、追加などのいずれも本発明の範囲から外れることなく述べた実施例にすることができる。例えば、上述したデバイスと方法は、あらゆる好適な症状の治療、または胃腸消化管におけるあらゆる好適な機能の実行に使用することができる。更に、撮像デバイス、化学物質検出デバイス、スペース占領デバイス及び/又はその他などの、その他のデバイスを、本発明の範囲から外れることなく上述した多くの実施例に含めることができる。したがって、上述の説明は、主として例示的目的を提供するものであり、特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、一般的に医療用デバイス及び方法に関する。特に、本発明は、胃腸消化管中で機能を実行するデバイスおよび方法に関する。
【0002】
肥満は、米国において伝染病規模の医療問題になっている。最近の政府研究は、アメリカ人の40%ほどが肥満(ボディマスインデックス(Body Mass Index)30以上で規定される)であり、これらのうち約20%が病的な肥満であると推定している。残念なことに、これらのパーセンテージが減る兆候はなく、毎回次の年には増える兆候にある。研究は、肥満が無数の健康リスクに結び付くとしており、その少数例には、心臓血管疾患、癌、糖尿病、整形外科的障害および不定愁訴、睡眠時無呼吸症、慢性疲労およびうつ病が含まれている。肥満の治療法の調査に何十億ドルも費やされ、栄養摂取と運動の研究を行い、公衆に肥満に関する教育を行っているにもかかわらず、現在までのところこれらの努力はほとんど効果がない。
【0003】
多くのアメリカ人がダイエットと、運動と、医薬で肥満と戦っているが、役に立たない。ダイエットと運動で体重を減らした人の多くが、短期間で元に戻ってしまう。入手可能な医薬は、フェン−フェン(Fen-Phen)ダイエット治療に見られる近年の騒ぎに証拠付けられるとおり、重い副作用があることがある。ダイエットと運動の難しさ、根本的かつ迅速に変化するように見える栄養物摂取情報、および通常効果がなく重い副作用を引き起こすこともあるダイエット薬品とサプリメントに対して多くの肥満の人が欲求不満となっており、肥満のままでいることを決心するか、あるいはより強烈な治療オプションを追及することを選択する。
【0004】
より強烈なオプションは、通常、胃ステープリングや、その他の胃を縮小する外科的技術、胃の外側周辺に狭窄バンドを当てる、胃のバイパスなどの外科的手順を含む。Al RokerやCarney Wilsonのような名声によってもっともよく知られている手順は、技術的にはルーワイ(Roux-En-Y)胃バイパス法として知られている胃のバイパス手術である。この手順では、実際に胃にバイパスを作り、ポーチのような非常に小さい胃を残して、患者が少量の食物を摂取した後、高い満腹感を覚えるようにする。胃のバイパスは非常に効果的であるが、死亡率が1−2%であり、消化不全などの多くの合併症の可能性があり、回復期間が最大6ヶ月であるなど、リスクの高い手術であると認識されている。その他の外科的な代替も、リスクが高いか、有効性が低いか、あるいはその両方である。
【0005】
多くの肥満した人に対する高リスクの胃の外科的処置と、ダイエットと運動の非有効性に起因して、体重を減らして肥満を解消する数多くの医療デバイスが開発されたが、これらのデバイスも様々な欠点がある。例えば、いくつかのデバイスは、食物あるいはカロリーをほとんど摂取することなく食物を通過させるチューブまたはシュートを本質的に作ることによって、胃または小腸の一部をバイパスしようとしている。これらのデバイスは、例えば、米国特許第5,820,584号、及び、米国特許出願公開第2003/0040804号および第2003/0109931号に記載されている。その他の技術には、スペース占有バルーンや、その他のデバイスを胃の中に配置して、少量の食物を食べた後に患者が満腹感を覚えるようにするものがある。このようなデバイスは、例えば、米国特許出願公開第2003/0109935号に記載されている。
【0006】
吸収低減胃腸スリーブや、スペース占有胃バルーンなどの現在入手可能なデバイスの有意な欠点の一つは、これらのデバイスが胃腸消化管の壁に直接的に取り付けられることである。このような直接的な取り付けは、しばしば、胃や小腸の内層に糜爛や潰瘍を起こすことがある。現在入手可能なデバイスのもう一つの有意なリスクは、胃腸管組織への直接的な取り付けがなんらかの理由で外れた場合、このデバイスが胃の幽門弁を通過して、小腸へ入ってしまうことである。そこから、デバイスが小腸又は大腸の詰まりを引き起こす。これは、通常外科手術を必要とし、発見が遅すぎた場合は死に至ることがある。
【0007】
例えば、米国特許出願公開第2003/0093117号に記載されているように、肥満治療に関する別のアプローチでは、通常、胃の容積を減らすために、胃に最小限の侵襲的外科的処置を行う。更に別のアプローチには、食物が胃から十二指腸へ通過する速度を遅くする目的で、迷走神経の切断または刺激が含まれている。別の者たちは、幽門弁のあるいは幽門弁のすぐ近くの組織内にインプラントを配置するあるいは増量剤を注入することによって胃が空になるのを遅らせようとした。この技術は、例えば、米国特許第6,540,789号、米国特許出願公開第2003/0153806号及び第2003/0158601号に記載されている。一般的に、これらのタイプの治療は、全て、侵襲的で、時に不可逆的な外科的手順を必要とし、胃腸消化管の機能に対して潜在的で重大な多数の副作用が生じるというリスクがある。
【0008】
もちろん、肥満は胃腸消化管に関連する唯一の健康上の問題点ではない。ここでは、治療または治癒の理想的な手段のない胃腸消化管に関連する重大な健康上の問題の一例として提供されているだけである。その他の多くの健康状態が、胃腸消化管の機能によって生じ、あるいは胃腸消化管の機能に直接関連しており、肥満などの多くの症状は、現在では、最適な医療又は外科的治療法がない。
【0009】
従って、肥満および胃腸消化管に関連するその他の症状についての、効果的で、侵襲性が最小であるか、あるいは非侵襲性のデバイスと、方法が必要である。理想的には、これらのデバイスと方法は、患者の中で比較的使用が容易であり、容易に展開し、副作用の高いリスクあるいは重大な合併症を生じることなく、肥満及び/又はその他の症状の治療を助けるであろう。理想的には、このようなデバイスと方法は、可逆的及び/又は外付デバイス又は最小の非侵襲手段を介して変形可能である。これらの問題の少なくともいくつかは本発明によって解決される。
【0010】
発明の概要
本発明は、患者の胃腸消化管中で一またはそれ以上の機能を実行するデバイス、方法、およびシステムに関する。一般的に、このデバイスは、係留部材と、一またはそれ以上のアクチュエータ、一又はそれ以上のセンサ、あるいは双方の組み合わせとを具える。係留部材は、患者の胃の幽門部内にデバイスを維持し、デバイスが幽門弁を通過することを防ぎ、間欠的に胃壁組織に接触するだけにして、胃壁の糜爛と潰瘍を防ぐ。さまざまな実施例では、胃腸消化管内でさまざまな機能を実行するために、アクチュエータ、センサ及び/又は追加の部品のいずれかが、係留部材と連結されていても良い。自身を胃の中に維持して、幽門弁の通過を防止し、間欠的にのみ胃壁と接触する係留デバイスは、さまざまな治療を管理し、さまざまな特徴を検出し、及び/又は、胃腸消化管内でその他の有益な機能を実行するための、侵襲性が最小のプラットフォームという利点を提供する。
【0011】
本発明の一の態様では、患者の胃腸消化管内で一又はそれ以上の機能を実行するデバイスは、係留部材と、当該係留部材に連結した少なくとも一のアクチュエータを具える。この係留部材は、患者の胃の幽門部内に前記デバイスの少なくとも一部を維持して、胃組織に直接取り付けることなく間欠的に係合するように構成されている。アクチュエータは、患者の胃腸消化管内で一またはそれ以上の機能を実行するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施例では、前記係留部材は、十分なサイズと剛性を有する胃滞留部を具え、この胃滞留部が幽門弁を通って胃の外へ出ないようになっている。一の実施例では、アクチュエータは、胃滞留部に連結されている。一の実施例では、胃滞留部が、患者の食道を通って送出するための第1の形状から、胃滞留部が幽門弁を通過することを防止する第2の形状へ拡大する。代替的に、このデバイスは、拡張不可であり、従って、胃壁を切開して胃の中に配置するように構成されている。いくつかの実施例では、前記係留部材が更に、幽門部の胃組織に、この組織に有意なダメージを与えることなく間欠的に係合するように構成された組織係合部を具える。いくつかの実施例では、いくつかの、あるいは全てのアクチュエータが、この組織係合部と連結している。このような組織係合部は、例えば、少なくとも一のコンプライアント材料を具えていても良い。
【0013】
いくつかの実施例では、係留部材は更に、胃滞留部から患者の幽門弁を通って少なくとも部分的に延在する幽門弁スパニング部材を具える。選択的に、いくつかのあるいは全てのアクチュエータが、この幽門弁スパニング部材に連結されていても良い。選択的に、係留部材が更に、幽門弁スパニング部材と連結された遠位係留部材であって、患者の十二指腸に位置するように構成された遠位係留部材を具えていても良い。一又はそれ以上のアクチュエータが、選択的に、幽門弁スパニング部材か、あるいは遠位係留部材のいずれかに連結されていても良い。いくつかの実施例では、例えば、アクチュエータが遠位係留部材に連結されており、患者の小腸内に延在するように構成されている。この遠位係留部材自体は、自然な蠕動によって幽門弁を通過するのに十分に小さいが、胃の中に戻らないように抵抗するのに十分大きい。代替的に、遠位係留部材が十分に大きく、幽門弁を越えて十二指腸への配置が必要であるようにしてもよい。
【0014】
いくつかの実施例では、胃滞留部、幽門弁スパニング部材、及び/又は、遠位係留部材が、形状は変わるが、胃腸消化管内に残るように構成することができる。例えば、いくつかの実施例では、幽門弁スパニング部材は、その長さ及び/又は直径が変わるように構成されている。このような形状の変化は、本デバイスの受信器とプロセッサによって一またはそれ以上の信号を受信して処理することによってトリガされる。例えば、高周波信号、電磁信号、マイクロ波信号、または超音波信号を送信するように構成された一またはそれ以上の外付の、または内部にインプラントされたデバイスによって信号が送信される。代替的に、pH、温度、胆汁含有量、栄養分含有量、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質及び/又はヘモグロビンを、前記デバイスの少なくとも一のセンサで検出したときに、形状の変化がトリガされる。
【0015】
このデバイスのいくつかの実施例は、また、胃の中に延在するカテーテルデバイスを取り付けて、デバイスを調整あるいは変更する取り付け手段を具えていても良い。例えば、取り付け手段は、磁石、フック、またはその他のいずれかの好適な取り付けデバイスを具えていても良い。このような取り付け手段によって、食道を通って配置されたカテーテルを介して、デバイスを変形し、調整し、再充電し、及び/又はその他を行うようにして、調整のためにデバイスを取り外す必要性をなくす。
【0016】
一の実施例では、係留部材が間欠的に胃の幽門弁を塞いで、胃が空になるのを遅らせるように構成されている。これらの実施例のいくつかは、アクチュエータが小腸の少なくとも一部内に延在して、小腸による栄養の吸収を低減するスリーブを具える。選択的に、このような実施例は、前記スリーブを前記係留部材に連結する少なくとも一の繋索を具えていても良い。一の実施例では、このスリーブは、消化された食物が部分的にこのスリーブ内に入るように少なくとも一の近位開口を具えている。いくつかの実施例では、このスリーブが不浸透性あるいは半浸透性の膜を具え、栄養の吸収を低減している。
【0017】
代替の実施例では、幽門弁を間欠的に塞ぐのではなく、係留部材がデバイスを介して、したがって、胃の幽門弁を介して物質を通過させる少なくとも一の経路を具える。このような実施例では、アクチュエータが、患者の十二指腸に延在する少なくとも一の経路と液通するスリーブを具え、物質がデバイスを通って、及びスリーブを通って、十二指腸による栄養の吸収を低減するようにしている。いくつかの実施例では、このスリーブは十二指腸を越えて延在し、従って、栄養の吸収を更に低減する。
【0018】
いくつかの実施例では、少なくとも一のアクチュエータが、胃腸消化管の組織へエネルギィを与える少なくとも一のエネルギィ送出部材を具える。例えば、このエネルギィ送出部材は、限定するものではないが、高周波、超音波、マイクロ波、低温、レーザ、光、電気、機械および熱エネルギィなどのエネルギィを送出する。いくつかの実施例では、このエネルギィ送出部材は、高周波エネルギィを、患者の胃、幽門弁及び/又は小腸へ与えるように構成された複数の高周波電極を具えている。
【0019】
別の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、係留デバイスに放出可能に連結した一又はそれ以上の物質を具える。例えば、このような物質は、限定するものではないが、脂質、薬剤、酵素、診断用薬剤、脂質、ビタミン、ミネラルなどを具えていて良い。いくつかの実施例では、少なくとも一の物質が、前記係留デバイスの外側表面に放出可能に連結されており、当該物質が時間の経過に伴って表面から自動的に放出されるようにする。選択的に、これらの実施例はさらに、デバイスに放出可能に物質を連結するために、外側表面に連結した物質を具える。代替の実施例では、係留部材の上の少なくとも一のリザーバ内にこの物質を収容するようにしても良い。いくつかの実施例では、この物質は、時間の経過に伴って、前記少なくとも一のリザーバから自動的に放出される。一方で、代替の実施例では、患者の外にあるトランスミッタからの信号をデバイスが受信したときにリザーバから放出される。いくつかの実施例では、デバイスが胃腸消化管内にある間にリザーバを補充するように構成されている。例えば、このようなリザーバは、患者の食道を介して胃へ通したカテーテルデバイスを介して補充することができる。
【0020】
ある実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、胃の中のスペースを占有する少なくとも一のスペース占有部材を具え、患者の満腹感を強めるようにしている。例えば、一の実施例では、このスペース占有部材は、前記係留部材の拡大した部分を具えていても良い。別の実施例では、このスペース占有部材は、繋索を介して前記係留部材に連結されている別の部材のピースであってもよい。
【0021】
一の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、生物学的反応を誘発するように構成した一またはそれ以上のトリガを具えていても良い。たとえば、このトリガは、満腹感反応を誘発するように構成された表面被覆を具えている。このような表面被覆は、例えば、生物学的脂質と相互作用するように構成されていてもよく、あるいは十二指腸内の脂肪センサであっても良い。いくつかの実施例では、この表面被覆は、時間の経過とともにデバイスから溶出されて、満腹感反応を誘発するように構成されている。このような溶出する表面被覆は、一の実施例では、脂肪、脂質、炭水化物、及び/又はたんぱく質誘導体を具えていても良い。代替の実施例では、トリガが、満腹感反応を誘発するように構成した機械的な刺激であってもよい。
【0022】
いくつかの実施例では、少なくとも一のアクチュエータが少なくとも一の撮像デバイスを具えている。この撮像デバイスは、限定するものではないが、例えば、光ファイバデバイス、超音波デバイス、レーザ撮像デバイス、内視鏡デバイス、カメラまたは、X線撮像デバイスを具えている。代替の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、グローバルポジショニングシステムに使用する位置信号を送信する信号送信器を具えている。更に別の実施例では、前記少なくとも一のアクチュエータが、患者の医学的記録を保存するためなどのデータ保存デバイスを具えている。
【0023】
選択的に、前記デバイスは更に、係留部材に連結した胃腸消化管内の一またはそれ以上の特徴を検出する少なくとも一のセンサを具えていても良い。このようなセンサ(または複数のセンサ)は、例えば、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質及び/又はヘモグロビンを検出するように構成されている。このような実施例は、更に、前記検出した信号に関係するデータを処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えていても良い。
【0024】
いくつかの実施例は、更に、患者の外に配置した、あるいは患者内にインプラントした一またはそれ以上の送信器からの信号を受信する少なくとも一の受信器を具えている。また、このような実施例は、選択的に、この受信した信号を処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えていても良い。いくつかの実施例は更に、患者の外に配置した外付のチャージ装置を介して再チャージするように構成した再チャージ可能な電源を具えている。その他の実施例では、その他の好適なデバイス又は組み合わせのいずれかを前記係留部材に連結して、胃腸消化管内の機能の実行を容易にする、または強化するようにしている。
【0025】
本発明のもう一つの態様では、患者の胃腸消化管において一またはそれ以上の機能を実行するデバイスが、係留部材と、当該係留部材に連結した少なくとも一のセンサを具える。上述したとおり、係留部材は、患者の胃の幽門部内に少なくとも部分的にデバイスを維持して、胃組織に直接取り付けることなく、間欠的に胃組織に係合させるように構成されている。このセンサは、患者の胃腸消化管内で一又はそれ以上の特徴を検出するように構成されている。上述したとおり、このようなセンサ(又は、複数のセンサ)は、限定するものではないが、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質及び/又はヘモグロビンなどの、いずれかの好適な特徴、または複数の特徴を検出する。
【0026】
いくつかの実施例では、前記デバイスは更に、胃腸消化管内で機能を実行する少なくとも一のアクチュエータを具える。アクチュエータの例には、限定するものではないが、エネルギィ送出部材、係留部材に放出可能に連結した物質、吸収低減腸管スリーブ、トリガデバイス、スペース占有デバイス、撮像デバイス、データ送信器、データ保存デバイスなど、上述のアクチュエータのいずれかが含まれる。さまざまな実施例では、デバイスが、プロセッサ、一又はそれ以上の受信器、及び/又は、上述したようなその他の好適な特徴を具える。
【0027】
本発明のもう一つの態様では、患者の胃腸消化管において機能を実行するシステムが、胃腸デバイスと、少なくとも一の送信器を具える。胃腸デバイスは、患者の胃の幽門部内にデバイスの少なくとも一部を維持して、胃組織に直接取り付けることなく、胃組織に間欠的に係合するように構成された係留部材と、当該係留部材に連結されて患者の胃腸消化管内で機能を実行する少なくとも一のアクチュエータとを具える。前記送信器は、前記アクチュエータの動きを始動する及び/又は調整するように構成されている。上述したようなセンサのいくつかの実施例では、前記胃腸デバイスが、係留部材に連結した、一またはそれ以上のセンサを具えている。上述したように、前記デバイスは、選択的に、プロセッサ、一またはそれ以上の受信器、及び/又は、再チャージ可能な電源も具える。
【0028】
いくつかの実施例では、前記少なくとも一の送信器が患者の外側に配置されるように構成されている。代替的に、一又はそれ以上の送信器を、患者内にインプラントするようにしても良い。いくつかの実施例は、更に、患者の食道を介して胃腸デバイスを送出する細長カテーテルデバイスを具えている。また、いくつかの実施例は、患者の食道を介して胃腸デバイスに連結して、アクチュエータを再チャージする細長カテーテルデバイスを具える。このような細長デバイスは、実施例によっては、送出用に用いられるものと同じデバイスであってもよく、異なるデバイスであっても良い。一の実施例では、細長カテーテルデバイスの磁気端部が、胃腸デバイスの逆にチャージされた磁石に連結するように構成されている。いくつかの実施例では、細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの上の一又はそれ以上の薬物リザーバを再チャージするように構成されている。代替的に、あるいは追加で、この細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの電源を再チャージするように構成することができる。
【0029】
本発明の更に別の態様では、患者の胃腸消化管内で機能を実行する方法が、係留デバイスを胃の中に送出するステップと、この係留デバイスに連結された少なくとも一のアクチュエータを用いて胃腸消化管内で機能を実行するステップとを具える。この係留デバイス自体は、上述した特徴のいずれかを有している。一の実施例では、係留デバイスを送出するステップが:前記係留デバイスを第1の制約された形状で患者の食道を通って前進させるステップと;前記係留デバイスを開放してデバイスの少なくとも一部を前記第1の形状から拡大させてより大きな第2の形状にするステップと;を具える。この拡大した第2の形状における前記係留デバイスの部分は、患者の幽門弁を通る係留デバイスの通路を防げるように構成されている。代替的に、係留デバイスの送出ステップが、患者の胃壁を切開してデバイスを通過させるステップを具えていてもよい。
【0030】
さまざまな実施例では、胃腸消化管内で前記機能を実行するステップが、限定されるものではないが、エネルギィの送出、物質の放出、小腸の吸収の低減、反応を誘発する胃腸組織の刺激、胃内のスペース占有、一又はそれ以上の画像撮像、データの送信、データの保存及び/又はその他を含む。いくつかの実施例では、この方法は更に、係留デバイスに連結した少なくとも一の検出デバイスを用いて少なくとも一の患者の特徴を検出するステップを具える。この検出した少なくとも一の特徴は、上述のリストにあるいずれか、あるいはpH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、ヘモグロビン及び/又はその他を含むその他いずれかの好適な特徴を具えていても良い。
【0031】
いくつかの実施例では、前記方法が、また、少なくとも一の送信器を介して前記係留デバイスへのデータを送信するステップと、前記係留デバイスに連結した受信器を介してこの送信したデータを受信するステップとを具えている。このような送信ステップは、患者の外側に配置された、患者の中にインプラントされた一またはそれ以上の送信器、あるいはこれらの組み合わせを介して実行することができる。いくつかの実施例は、前記係留部材と連結されたプロセッサを介して送信されたデータを処理するステップも具える。選択的に、この方法は、胃腸デバイスが患者内にある間に前記アクチュエータを再チャージするステップも具える。一の実施例では、アクチュエータを再チャージするステップは、患者の外に配置した外付チャージデバイスを介して実行される。代替的に、アクチュエータの再チャージは、患者の食道を介して患者の胃へ通過させたカテーテルデバイスを介して送るようにしても良い。一の実施例では、アクチュエータの再チャージステップには、胃腸デバイスの少なくとも一の薬剤リザーバを補充するステップが含まれている。この方法は、選択的に、前記係留部材に連結された電源を再チャージするステップも含まれる。
【0032】
いくつかの実施例では、前記係留部材は、患者の胃腸消化管の幽門弁を間欠的に塞いで、これによって、幽門弁を介しての食物の通過を遅延させるように構成されている。代替の実施例では、この係留部材は、患者の胃腸消化管の幽門弁にわたって延在しており、前記係留部材は、これを介して食物を通過させ、従って、患者の十二指腸の少なくとも一部において栄養の吸収を低減させるように構成されている。
【0033】
本発明の別の態様では、患者の胃腸消化管における一またはそれ以上の患者の特徴を検出する方法が、胃に係留デバイスを送出するステップと、この係留デバイスに連結した少なくとも一の検出デバイスを用いて胃腸消化管内の一またはそれ以上の患者の特徴を検出するステップと、を具える。このような方法は、更に、前記係留デバイスに連結した一またはそれ以上のアクチュエータを用いて、胃腸消化管内で機能を実行するステップを含む。この方法のさまざまな実施例は、上述した特徴のいずれを含んでいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1Aないし1Cは、胃の開口を部分的に及び/又は断続的に塞ぐように構成された幽門閉塞デバイスの一例の断面を、拡張しない形状で、部分的に拡張しない形状で、および全開した形状で示す図である。
【図2】図2Aないし2Dは、形状の異なる閉塞部材を用いたデバイスの変形例の側面を示す図である。
【図3】図3Aないし3Cは、幽門閉塞デバイスの別の変形例の断面を示す図である。
【図4A】図4Aは、テーパの付いたブリッジ部材を有するデバイスである更に別の変形例の側面を示す図である。
【図4B】図4Bは、互いに距離をおいて保持されている円錐形の閉塞部材を有するデバイスである更に別の変形例の側面を示す図である。
【図5】図5A及び5Bは、単一の閉塞部材と代替の係留部材を有するデバイスである更に別の変形例の側面を示す図である。
【図6】図6Aないし6Cは、胃と、デバイスの非摂取型の例の鼻腔胃(あるいは内視鏡)配置用の一例の断面を示す図である。
【図7】図7Aないし7Cは、胃と、デバイスの摂取型の例の鼻腔胃(あるいは内視鏡)配置用の別の例の断面を示す図である。
【図8】図8Aないし8Dは、胃と、デバイスの摂取型の例の配置用の更に別の例の断面を示す図である。
【図9】図9Aないし9Dは、胃と、デバイスの非摂取型の例の配置用の更に別の例の断面を示す図である。
【図10】図10Aないし10Dは、胃と、デバイス除去用の一例の断面を示す図である。
【図11】図11Aおよび11Bは、デバイスの代替例の平面図と斜視図であり、このデバイスは、幽門弁を断続的に塞ぐように構成された複数のプロングを具える。
【図12】図12Aおよび12Bは、デバイスの別の例の側面図と平面図であり、このデバイスは、幽門弁を断続的に塞ぐように構成された複数のプロングを具える。
【図13】図13Aないし13Dは、チューブを送出している間の十二指腸への逆流を防止するデバイスの代替使用を示す断面図である。
【図14】図14Aないし14Dは、一又はそれ以上の胃充填材と組み合わせたデバイスの代替使用を示す断面図である。
【図15】図15Aないし15Dは、本発明の一の実施例にかかる、胃内の容積を部分的に排除し、断続的に胃の開口を閉塞するように構成されたデバイスの断面を示す図である。
【図16】図16は、図15Aないし15Dに示すようなデバイスで、破断を伴うデバイスの断面を示す図である。
【図17】図17Aは、本発明の一実施例にかかる、位置決め部材と保持部材を有するデバイスの断面を示す図である。図17Bは、本発明の一実施例にかかる、膨張ポートを有する位置決め部材を有するデバイスの断面を示す図である。
【図18】図18Aおよび18Bは、2つの実施例にかかり、幽門弁を閉塞するデバイスの二つの異なる実施例の断面を示す図である。
【図19】図19Aおよび19Bは、別の実施例にかかる幽門弁を閉塞するデバイスの側面を示す図である。
【図20】図20Aないし20Cは、図19Aと19Bに示すデバイスを送出し、展開する方法を示す図である。
【図21】図21は、本発明の一実施例による非閉塞胃腸係留デバイスを示す図である。
【図22】図22は、本発明の別の実施例による非閉塞胃腸係留デバイスを示す図である。
【図23】図23は、本発明の別の実施例による腸管スリーブに連結した非閉塞胃腸係留デバイスを示す図である。
【図24】図24は、本発明の一実施例による係留デバイスに連結した細長カテーテルデバイスを示す図である。
【図25】図25は、図24に示す細長カテーテルデバイスと係留デバイスの更なる詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のこれらのおよびその他の態様及び実施例を、添付の図面を参照して以下により詳細に述べる。
【0036】
発明の詳細な説明
以下の説明のほとんどは、肥満の治療に役立つ幽門弁を間欠的に塞ぐ実施例に焦点を当てている。この説明はほとんど、また、食道を介して送出するためのより小さな形状から、胃の内部にデバイスを確実に滞留させるより大きな形状に拡大する実施例に焦点を当てている。しかしながら、代替の実施例では、デバイスは実際に幽門弁を塞がなくとも良いが、これに代えて、幽門弁を介して食物を通過させる導管として働き、いくつかのケースでは、小腸における栄養の吸収を低減するものである。また、いくつかの実施例は、胃壁の切開を含む外科的手順を介して配置するように構成されており、従って、本発明は、食道を介して送出される拡大するデバイスに限定されない。このように、以下の説明は、主に例示の目的で提供されており、どの実施例も本発明の範囲全体を制限するものと解すべきではない。
【0037】
さまざまな実施例によれば、複数の好適なアクチュエータ、センサ、送信器、受信器、プロセッサ、及び/又はその他のいずれかは、以下に記載するデバイスのいずれかに連結されていても良い。更に、このようなアクチュエータ、センサ、およびその他は、胃の中に存在するように構成されたデバイスの一部、幽門弁にわたるように構成された別の部分、幽門弁を越えてちょうど十二指腸にあるように構成された一部、あるいはこれらの組み合わせ、といったデバイスのいずれかの好適な部分に連結することができる。従って、幽門閉塞デバイスなどの、以下に述べるデバイスの多くが、アクチュエータ、センサ及び/又はその他用の係留デバイスとして動作する。このようなアクチュエータ及びセンサを以下により詳細に述べる。
【0038】
図1Aないし1Cは、胃の開口、特に幽門弁を部分的に及び/又は断続的に閉塞するように構成された幽門閉塞デバイス4の一例の拡張を示す断面図である。この特定の例において、図1Aは、未拡張あるいは未膨張状態にあり、幽門弁に送出及び/又は挿入の準備ができた状態のデバイス4を示す。図1Bは、拡張した状態にある遠位側閉塞部材14を示す図である。使用に当たっては、デバイス4が例えば幽門部にまたは幽門部を越えて配置されたら、遠位閉塞部材14(あるいは「保持部材」)が、自己シーリングであってもよい膨張ポート6につながっているチューブ8を通って、例えば塩水、水、エア、窒素、その他といった様々な生体適合性流体あるいはガスを流入させて膨張させることができる。チューブ8は、カテーテル、内視鏡、その他といった複数の送出チューブを具えていても良い。
【0039】
遠位側閉塞部材14の膨張可能な部材を、近位側閉塞材16の材料に対してより容易に膨張する材料で作ることによって、近位側閉塞部材16が膨張する前に、遠位側閉塞部材14が、膨張するように構成することができる。閉塞部材14、16を加工するに際して使用される材料は、シリコーン、シリコーンエラストマ、ラテックス、ポリウレタン、PTFE、FEPなどの様々な材料を含んでいても良い。代替的に、液体に接触したときに通常拡張するフォーム、ヒドロゲルなどの自己拡張材料を閉塞部材14、16に用いることができる。このような自己拡張材料を使用する場合は、これらを閉塞部材14、16内に配置し、塩水などの液体がしみこんで、この材料が拡張する。近位側閉塞部材16の材料とは別の自己拡張材料を遠位閉塞部材14に含めるようにして、拡張材料によって発揮する半径方向の圧力を変えるようにしても良い。
【0040】
別の代替例では、各閉塞部材14、16内に拡張する足場(scaffold)が用いられている。このような足場は、ニチノールなどの形状記憶合金または超弾性合金でできている。足場は、送出する形状に圧縮することができ、次いで、自己拡張によってあるいは、例えば電気、熱、RFエネルギィなど、始動エネルギィの供給によって、所望の閉塞形状に拡張しうる。いずれの場合でも、遠位側閉塞部材14は幽門弁の遠位側に位置し、次いで、より大きな形状に膨張あるいは拡張する。次いで、図1Cに示すように、近位側の閉塞部材16がポート6を通る注入によって膨張あるいは拡張するポイントである、幽門環に対して近位側へ引っ張られる。膨張あるいは拡張した両閉塞部材14、16を伴い、二つを連結しているブリッジ部材10が幽門にかかる。ブリッジ部材10は、幽門括約筋を有意に閉塞しない1mm以下から最大8−10mmといった様々な直径を有していても良く、また、他の好適な径であっても良い。
【0041】
ブリッジ部材10は十分にフレキシブルな長さを有して、閉塞部材14、16の幽門弁に対する位置を維持しているが、閉塞部材14、16を移動させることができるように構成されている。近位側閉塞部材16は、遠位側閉塞部材14が部材16を移動させる程度に、幽門弁を完全に閉塞している状態から幽門弁の近位側へ移動する状態に移動することができる。この移動は、幽門部を囲んでいる胃のルーメン(胃)と筋肉の自然な動きによって顕在化することができる。したがって、近位側閉塞部材16が近位側に移動すると、幽門弁が部分的にのみ閉塞され、ブリッジ部材10と弁の間を食物が断続的に通過できるようになる。胃の中のすべての食物がより長い時間残り、満腹感がすぐに始まって長く続くので、患者はより少ない食物を消費する。更に、閉塞部材14、16を相対的に移動させるためには、ブリッジ部材10の長さが、部材10を幽門弁の中に(あるいは別の胃の開口の中に)位置させられるよう十分であり、閉塞部材14、16が幽門弁に対して近位側および遠位側に移動するのに十分な余裕があるようにする。例えば、患者の幽門弁が長さ約2cm延在している場合に、ブリッジ部材10の長さは、例えば、2cm以上、最大8cmまでである。更に、閉塞部材14、16が膨張可能あるいは拡張可能である一方、ブリッジ部材10自体は、径が膨張あるいは拡張するように構成しても良い。
【0042】
可視染料あるいはマーカ、好ましくは、高可視である染料あるいはマーカを、選択的に、閉塞部材14、16の一方あるいは双方に注入して、安全性を測定する機能を持たせるようにしても良い。代替的に、閉塞部材14、16の一方あるいは双方を、選択的に、高可視であり、視覚的に組織から区別できる材料で作って、閉塞部材14、16が破壊してしまったような場合に、この染料あるいは閉塞部材14、16の破片が、身体を通過したときに見えるようになるようにしても良い。このことは、患者または外科医に、デバイスの破壊が生じたことを知らせるものである。
【0043】
別の変形例は、デバイスを被覆している材料、またはデバイス内に組み込まれている材料中に溶けた放出の遅い薬剤を含む。これらの薬剤は、数多くあるが、消化管内への薬剤の放出によって、または患者との接触を通じて、患者の中にゆっくりと溶け出す。代替として、デバイスが電気的刺激技術を具えていても良い。例えば、電気プローブを挿入用デバイスの表面から周囲の組織内に延在させても良く、あるいは、代わりに電極をデバイス表面に形成しても良い。
【0044】
更に別の代替においては、閉塞部材14、16の一方あるいは双方に腐食性あるいは生分解性の被覆がなされていても良い。このような被覆は、部材14、16の一方または双方を封じ閉じ込めるように構成されており、デバイスが取り込まれる、あるいは胃のルーメン内に配置されると、周囲の液体との接触によって自然にこの被覆が侵蝕され、覆われている閉塞部材を拡張または膨張させる。別の変形例では、以下に更に詳細に説明するとおり、近位側と遠位側の閉塞部材を、各々が異なるレートで、あるいは異なる環境で侵蝕される、異なる材料で被覆するようにしてもよい。
【0045】
図1Aないし1Cに示す例において、デバイス4は、デバイス4を通って規定される追加ルーメン18を具えていても良い。追加ルーメン18は、入り口ポート2を介してルーメン18に入り、出口ポート20を介して出てゆくデバイス4を通る液体と食物の通路を提供する。ルーメン18は、デバイス4を介して量を低減した食物が通過するように構成されており、この場合、デバイス4は、比較的短いブリッジ部材10で構成されていて、幽門に対してデバイス4が相対移動しないようにする。この例では、ルーメン18が、胃のルーメン74の内容物をデバイス4を介して腸76へ活発に送り込むまたは供給できるように構成されている。この様な場合、デバイス4が幽門バルブを閉塞しないように移動できる必要性はない。図に示すとおり、選択的に、追加ポンプまたはアクティブな供給バルブ12が、デバイス4内に組み込まれていても良い。ポンプ又はバルブ12は、単に開いて、食物などの胃の中の異物の存在が検知されたとき、あるいは胃の内容物からの所定の圧力が検知されたときに、ルーメン18とバルブ12を通って胃の内容物を通過させるように構成されている。その他の検知パラメータは温度およびpHレベルを含む。代替的に、ポンプまたはバルブ12によって自動的に始動される、または無線通信によって患者又は外科医によって外部から始動されるポンピング機構を介して、ポンプまたはバルブ12がルーメン18を通って胃の内容物を活発に送り込むように構成されていても良い。デバイス、バルブ12で構成されている場合、バルブは単方向性バルブとして作動し、液体又は食物の流れを胃から消化管へのみ流すようにする。
【0046】
デバイス4は、近位側閉塞部材16の形状及び/又は全体積が、幽門弁を通る腸への通過を防ぐのに十分であれば、どのような形状であってもよい。図2Aないし2Dは、閉塞部材として使用できる様々な形状の変形例の側面を示す図である。例えば、図2Aは、デバイスの変形22の側面であり、ここでは、近位側及び遠位側の閉塞部材24、26が、デバイス22によって規定される縦軸に沿って円形の横断形状を有しており、球形閉塞部材を形成する。近位側および遠位側閉塞部材24、26は同じサイズの径を有するように記載されているが、この直径は、所望の形状とデバイスの構成によって変えることができる。例えば、近位側閉塞部材24が遠位側閉塞部材26より大きな径を有するように構成してもよい。好ましくはないものの、代替的に、反対の構成を有するデバイスも使用できる。所望するデバイス構成によって、ルーメン28とポンプまたはバルブ12を選択的に含めるようにしても良い。
【0047】
図2Bは別のデバイスの例であり、近位側および遠位側閉塞部材30、32がデバイスによって規定される縦軸に沿った断面形状が楕円形であり、長円を形成するものである。長円形状の閉塞部材30、32の長軸は、この例ではデバイスの縦軸に対して垂直方向にあることが好ましいが、様々な角度に形成することもできる。図2Cは、近位側および遠位側の閉塞部材34、36が三角形に形成されており、円錐形状の閉塞部材を形成した例を示す。この例では、ブリッジ部材38の長さが最小になり、閉塞部材34、38の交点によって単に形成されて、くびれた領域を形成している。図2Dは、更に別の変形例を示し、ここでは近位および遠位閉塞部材40、42が菱形形状に形成されており、閉塞部材が円錐形状をした変形例を構成している。この変形例も、くびれた領域44を作ることができる。
【0048】
これらの変形例は特別な形状を示しているが、これらは単に使用することのできる様々なタイプを説明することを意図したものであり、限定を意図した物ではない。例えば、胃の開口を閉塞して、デバイスがその開口から落ちないように機能する、矩形、四角、などの様々な形状を用いることができ、これらは本発明の開示の範囲内にある。更に、遠位側閉塞部材を球形にして、近位側閉塞部材が円錐形というように、単一のデバイスの閉塞部材として、異なる形状の様々な組み合わせを用いることもできる。
【0049】
図3Aないし3Cは、幽門閉塞デバイスの別の変形例の断面図を示すものであり、この変形例も、胃の開口を断続的に閉塞するように構成されている。図1Aないし1Cに示すデバイスと同様に、この特別な例は、デバイス46全体を通じて規定されるルーメンの使用を省略するものである。このデバイス46は、閉塞部材を拡張するための上述したいずれの特徴を具えていても良い。例えば、拡張圧を変化させるフォームを用いて、液体、すなわち、塩水又は水をデバイス46に注入したときに、近位側の閉塞部材48が拡張する前に遠位側閉塞部材50が確実に拡張を開始するようにする。デバイス46は、入り口ポート6を通る注入チューブ8からの液体の流入が、近位側閉塞部材48から遠位側閉塞部材50へ中央部分のルーメン52を通って導かれるように構成されている。デバイス46は、以下に更に詳細に述べるように、図1AないしICに記載されたデバイスと同じ態様で配置することができる。この例は、金属などの膨張ポート6を具え、必要であれば、先端に磁気を帯びた吸引カテーテルを単純に配置することによってデバイス46の取り外しを行うことができる。このカテーテルは、適正に配置すれば、吸引力を加えることによってデバイスをしぼませて幽門弁からデバイス46を容易に除去できる。デバイス46は、あらゆる内視鏡的あるいは経皮的アプローチ、例えば、口腔−または鼻腔―胃アプローチを介して除去することができる。この例は、近位側閉塞部材48と遠位側閉塞部材50を連結するルーメン52を有しているが、このルーメンは胃のスペースに対して閉じており、代わりに、膨張液を送って閉塞部材48、50を膨張させるのに使用される。デバイス46の閉塞部材は、例えば図1Aないし2Dにあるような、上述したどの形状を有していても良い。
【0050】
デバイスの更に別の例が図4Aに示されている。この例では、デバイス54はテーパのついたブリッジ部材60を具えていても良い。ブリッジ部材60は、遠位側の閉塞部材58から近位側閉塞部材56へ向けて長さ方向に幅広になるようにテーパをつけることができる。テーパ付ブリッジ部材60は、デバイス54の幽門弁を閉塞しない位置への移動を容易にする。幽門弁はブリッジ部材60の周りで収縮するので、テーパはデバイスを近位側に移動させ易くする。テーパの角度は、閉塞部材56、58のサイズや形状と同様に、所望する結果によって変えることができる。
【0051】
図4Bは、上記と同様の別の例を示す。この変形例では、デバイス55が、ブリッジ部材61で連結されている円錐形状の部材を有する閉塞部材57、59を具えている。ブリッジ部材61は、デバイス55が幽門バルブに対して移動するのに十分なように互いから離れて保持する長さを有する。デバイス55は、ここに開示した方法のいずれかを用いて閉塞部材57、59を膨張または拡張させ、デバイス55は、選択的に中央ルーメンを有し、所望であれば受動あるいは能動バルブあるいはポンプ機構を有していても良い。
【0052】
別の実施例では、遠位側閉塞部材が完全に省略されている。例えば、図5Aは、代替の例62の側面を示しており、ここでは、ブリッジ部材66(あるいは(「位置決め部材」)が近位側の塞栓部材64から、例えば5cmあるいはそれ以上といった、ある長さ延在している。ブリッジ部材66は、例えば十二指腸などの消化管内に配置することができ、近位側閉塞部材64によって幽門部に隣接した正しい位置に保持される。近位側閉塞部材64の幽門弁に対する位置決めは、ブリッジ部材66が消化管の壁にこすりつけられることによって生じる摩擦力で維持するようにしても良い。閉塞部材64は、上述したのと同じ方法で、胃が収縮し移動する間に幽門部を断続的に閉塞しないよう機能するが、ブリッジ部材66の長さによって正しい位置に保持することができる。ブリッジ部材68の遠位端は消化管内で自在に浮遊することができるが、選択的に、図5Bのデバイス70に示すように、錘68によって、あるいは消化管に取り付けるための複数のフックまたはバー72によって、重くするようにしても良い。
【0053】
ここに述べた様々なデバイス例の間の所定の特徴を様々な組み合わせに組み込むことは、この開示の範囲内である。例えば、球形状を有する近位側閉塞部材と、円錐形状を有する遠位側閉塞部材を有するデバイスを使用することができる。更に別の例として、このデバイスが、近位側閉塞部材と同様に様々な方法で遠位側閉塞部材を膨張させるまたは拡張させる様々な方法を具えていても良い。更に、このデバイスは、一方の閉塞部材にのみ生分解性のカバーを有するようにしても良いし、デバイス内に一体化されたバルブ及び/又はポンプを有していても良く、また、選択的に、デバイスの長さを通って規定されるルーメンを具えていても良い。これらの例は、ここに述べた様々な例から様々な態様を組み合わせることによって使用することができる様々な組み合わせを単に説明するためのものであり、本発明の範囲内にあることを意図している。
【0054】
図6Aないし6Cは、胃と、非摂取型、能動型デバイス4の例の鼻腔胃(または内視鏡)配置の一例の断面を示す。デバイス4は、食道78を通って送出され、図6Aに示すように、圧縮され、膨張していない、あるいは拡張していない形状にあり、追加チューブ8を介して配置されている。デバイス4が胃74と十二指腸76内で、閉塞部材が幽門にかかったら、図6Bに示すように、デバイス4は上述した方法のいずれかを用いて膨張するか、あるいは、拡張する。チューブ8は取り外され、デバイス4が図6Cに示すように、正しい位置に残る。
【0055】
図7Aないし7Cは、胃と、非摂取型、能動型デバイス46の例の鼻腔胃(または内視鏡)配置の一例の断面を示す図である。上述したとおり、デバイス46は図7Aに示すように圧縮され、非膨張、あるいは非拡張形状で、食道78を通って進む。図7Bに示すように、デバイス46が配置されて、胃74と十二指腸76内で、閉塞部材が幽門にかかると、デバイスが膨張あるいは拡張して、図7Cに示すようにチューブ8が取り外され、デバイス46が正しい位置に残る。
【0056】
図8Aないし8Dは、胃と、更なる受動型(あるいは「自己拡張型」)デバイス80の配置の別の例を示す断面図である。図8Aに示すように、デバイス80は、単に飲み込まれる。デバイスが胃74に入ると、胃液が、閉塞部材82の膨張ポートを被覆している酸に弱い被覆を溶かす。図8Bに示すように、被覆が分解されると、近位側閉塞部材82が拡張あるいは膨張するように構成されている。拡張または膨張が生じると、デバイス80は胃74の中に残り、胃の自然な収縮によって、図8Cに示すように、最終的に未拡張あるいは未膨張状態を保って遠位側閉塞部材84が十二指腸76に入る。遠位側閉塞部材84が十二指腸76に入ると、遠位側閉塞部材84のアルカリに弱い被覆が溶け、デバイスに遠位側部材84の拡張あるいは膨張が生じて、図8Dに示すように幽門弁にかかる。遠位側閉塞部材84の被覆は、pHレベルが約6である十二指腸76に特有の酸性環境に接触したときにのみ溶けるように構成されている。除去を容易にするために、上述したとおり、二つの閉塞部材82、84は、所定のレベルの圧力がかかったときに破断するように設計されたバリア88を有する中央の中空ルーメン86で連結されている。したがって、所定の圧力レベルを有する真空をかけることで、バリア88は破断してデバイス80全体がしぼむように構成されている。
【0057】
図9Aないし9Dは、胃と、摂取によるデバイス90の受動型の更なる配置例の断面を示す図である。この代替例では、デバイス90を経口的に摂取することができる。図9Aに示すように、デバイス90は胃74に入り、近位側及び遠位側の閉塞部材82、92は、それぞれ、図9Bおよび9Cに示すように、デバイス90の膨張ポートの上の酸に弱い被覆が溶けると、膨張するように構成されている。膨張又は拡張がなされると、遠位側閉塞部材92は、サイズが小さいので(ほぼ、拡張した幽門弁の径5−15mm)そのうちに通過するが、近位側閉塞部材82は、例えば直径15mm以上で、最大60mmまでとサイズが大きいので、胃の幽門部の生理学的制限によって、図9Dに示すように胃74の中に残る。したがって、双方の閉塞部材82、94が胃74内で膨張した状態で一方の閉塞部材92は、幽門弁を通過するのに十分に小さく構成されており、近位側閉塞部材82は胃74内に残るように構成されている。
【0058】
様々な代替と変形を、自己拡張、または「受動」幽門弁閉塞デバイスおよび上述した方法に用いることができる。いくつかの実施例では、生分解性コーティングを使用することなく、デバイスを折りたたみ、圧縮し、あるいは患者が飲み込めるようにより小さい形状に形成することができる。食道を通って胃の中を通過するときに、一又はそれ以上の形状記憶ニチノールでできた支持リングあるいはその他の自己拡張支持部材があるため、折りたたまれたデバイスが開く。飲み込むようにした実施例では、デバイスは、デバイスから延在する繋索を具えており、食道を通って患者の口へ戻すようにしても良い。このような繋索は、閉塞デバイスが拡張するまで胃の中に保持するのに使用することができ、患者の胃の中で所望するようにデバイスが開かない場合及び/又はその他の場合、閉塞デバイスを取り出すことができる。いくつかの実施例では、この繋索も飲み込んで、胃の中で溶けるようになっている。別の実施例では、飲み込んだデバイスは幽門弁に接触するが、弁にわたるブリッジ部材を有していない。その他の例は、様々な実施例によって、本発明の範囲内にあることを意図している。
【0059】
図10Aないし10Dは、デバイス80(受動型の例が図に示されている)の除去の一例を示す胃74の断面図である。デバイス80は、図10Aにおいて胃74と十二指腸76の間にある。図10Bに示すように、先端に磁石の付いた吸引カテーテルまたは内視鏡94が導入され、図10Cおよび10Dに示すように、デバイス80がしぼんで取り出される。拡張ポート6がカテーテル94に接触させるにあたり、カテーテル94が拡張ポート6に正しく接触したかどうかを決定する補助として、先端が電気的接触部で構成されていてもよい。代替的に、デバイス80を内視鏡を介して除去してもよく、また時間がたつと分解するようにして、そのうちに腸を通過させるようにしても良い。
【0060】
別の実施例では、しぼませる、あるいは折りたたむことによって、カテーテルデバイスのルーメンを介して閉塞デバイスを取り出すようにすることができる。一の実施例では、デバイスを小さいピースに切断して、カテーテルルーメンを介して取り出すようにしている。更に別の実施例では、時間がたつとデバイスが溶けて、傷つけることなく幽門弁と消化システムを通過させるようにしても良い。デバイスの除去あるいは通過の様々な好適な代替が、様々な実施例で可能である。
【0061】
図11Aおよび11Bは、胃の中で単独で存在するデバイスの代替例を示す平面図および斜視図である。この特定の例は、幽門を断続的に閉塞する複数のプロング100、102、104、106、108、110を具える。この例では、拡張性材料96が、幽門の閉塞を促進するための好適な形状をしている。このデバイスは収縮によって幽門からはじかれるが、様々なプロングの一つによって再度挿入が行われる。更なる手段として、デバイスは、各プロングセットを通る複数の開口98を規定しており、幽門バルブを完全に閉塞しないようにしている。
【0062】
図12Aおよび12Bは、図11Aおよび11Bのデバイスの別の例の側面図と平面図である。この変形例では、より少ない数の複数プロング112、114、116、118が用いられており、各プロングがそれを通る開口120を規定している。しかしながら、この変形例では、周辺組織にダメージを与えないように、各プロングがフレキシブルであり、テーパが付いているかあるいは丸くなっている。
【0063】
図13Aないし13Dは、ここに記載されているデバイスの代替の使用を示す断面図である。この変形例において、チューブを送り込んでいる間、胃と十二指腸の逆流防止にデバイスを使用することができる。図に示すように、デバイス124は上述した例と同じであるが、この変形例では、デバイス124を通って規定されているチューブ送出用のルーメン132が、十二指腸76内に配置されるアウトレット134を規定している。デバイス124の近位部分も、送出チューブ126と膨張チューブ130に取り付けることができる。送出チューブ126は、ルーメン132を通って十二指腸140へチューブを直接送り込むのに使用され、膨張チューブ130は、チューブを送出する間に膨張可能な幽門スパナあるいはブリッジ部材136を膨張させて、送出した材料140の逆流を防止するのに使用されている。デバイス124は、第3のチューブ128を具えていても良い。これは、胃の内容物138の吸引用に設けられており、送出した材料が肺に逆流したり、胃74の減圧を防止する。閉塞部材の近位部分は、膨張したあるいは拡張した状態を保つことができ、また、時には幽門弁の圧力を和らげるために減圧されることもある。この例では、経皮的アプローチが示されているが、口腔胃アプローチや、その他のアプローチも可能である。
【0064】
図14Aないし14Dは、本発明のデバイスの更に別の代替使用を示す断面図である。図14Aないし14Cに示すように、デバイス90は、幽門弁を閉塞するように配置される。この場合、デバイス90の配置が上述の方法のいずれかによって影響されはするが、デバイス90は摂取されるものとして示されている。図14Dに示すように、一又はいくつかの胃の充填材142、すなわち、胃のバルーン、拡張可能な足場、または公知の様々なスペース占有デバイスなどを追加しても良い。この変形例では、デバイス90が配置され、次いで胃の充填材142が導入される。デバイス90は、胃の充填材142が十分に小さくなるまで確実に幽門弁を通過しないようにするのに使用されており、これによって分解していない物質を、小さいボウル状閉塞物に伴うリスクが生じることなく使用できるようにする。
【0065】
図15Aないし15Dは、幽門弁156を断続的に閉塞するための別の実施例のデバイス150の使用を示す断面図である。この実施例は胃のスペースを部分的に満たすものである。図15Aは、未拡張状態あるいは未膨張状態にあり、例えば、内視鏡、チューブなどのカテーテルデバイス152を介して胃の中へ送出及び/又は挿入するようにしたデバイス150を示す。本実施例では、図15Bに示すように、デバイス150が胃の中にあるときに拡張する各開可能なフォーム154をデバイスが具える。デバイス150及び/又はフォーム154を拡張させるために、あらゆる好ましい無毒な液体または気体を膨張ポート158を介して導入することができる。
【0066】
あらゆる好適な材料を使用してデバイス150を形成することができる。一の実施例では、例えば、デバイス150が、シリコーン、シリコーンエラストマ、ラテックス、ポリウレタン、PTFE、FEP、及び/又はその他でできた拡張可能なバルーンを具えていても良い。代替的に、液体に接触すると拡張するフォームまたはヒドロゲルといった自己拡張材料をデバイス150内に用いてもよい。このような自己拡張材料を使用する場合は、この材料をデバイス150内に配置して、塩水などの液体が染み込んで材料を拡張させるようにしても良い。
【0067】
図15Bに示すように、一の実施例のデバイス150は近位部153と遠位部155を具える。いくつかの実施例では、近位部153が支持機能または構造機能を有しており、デバイス150が幽門弁を通過するのを防止するためにデバイス150が確実に十分に大きな横断径を有するようにしている。通常、遠位部155は、幽門弁156及び/又は幽門弁156近傍の組織に接触するよう機能し、弁156を断続的に及び/又は部分的にブロックする。いくつかの実施例では、遠位部155が適合性材料でできており、遠位部155が幽門弁156の中、周囲、あるいは近傍の胃の組織に接触したときに、組織を傷つけないようにしている。いくつかの実施例では、近位部153と遠位部155が同じ材料でできており、近位部153が遠位部155に比較して、より大量の材料で、より厚い壁厚を有している。
【0068】
一般的に、デバイス150は、図に示すような不規則な長方形状、細長い球形、円錐形、菱形、など様々な好適な形状のいずれかを有している。いくつかの実施例では、この形状はデバイス150が幽門弁156の方向へ自然に移動し、遠位部155が弁156に接触して整列するように選択されている。これらの及びその他の実施例では、デバイス150の移動が、デバイスの特定の比重あるいは浮力を選択することによって更に強化され、デバイスが胃の内容物を通って弁156の方向に移動できるようにしている。
【0069】
図15Cおよび15Dは、幽門弁156に相互作用しているデバイス150の遠位部155を示す。図に示すとおり、遠位部155の形状は、弁156から離れたり(図15C)、接触したり(図15D)するように構成されている。これは通常、胃の自然な収縮時に生じ、したがって、幽門弁156の断続的な閉塞を提供する。幽門弁156の断続的な閉塞は、胃の中に食物をより長くとどまらせ、したがってすぐに満腹感が得られ、長く続き、患者の食物消費を少なくする。図15Cおよび15Dに示す実施例では、遠位部155は弁156に接触しているときに、弁156を完全に塞いでいる。代替の実施例では、遠位部155が弁156を完全に塞がずに、幽門弁156と完全に接触している場合でも部分的に流れるようにした様々な構成のいずれかを有するようにしても良い。例えば、遠位部155は、円錐形、楕円形、球形、ピラミッド型、筒状、突出部材(幽門内にフィットするように設計された)を伴うディスク形状、その他、などの形状を有していても良い。一の実施例では、遠位部155と近位部153は同じかほとんど同じ形状をしており、デバイス150の方向に無関係に、いずれかの端部が幽門弁156を閉塞することができる。
【0070】
デバイス150は、胃への送出、幽門弁156を断続的に閉塞する能力、胃からの除去、及び/又はその他、を強化する多数の追加の特徴のいずれかを具えている。一の実施例では、例えば、デバイス150の視覚化を容易にする一又はそれ以上の放射線不透過性マーカ、染料及び/又は材料をデバイス150が具えている。デバイス150は、デバイス150が溶けて身体内を通過する実施例において、又は、デバイス150が壊れたり破壊したりする好ましくない場合の安全特性として利点のある、裸眼での可視性を強化するその他のマーカ、染料あるいは材料を具えていても良い。
【0071】
いくつかの実施例では、デバイス150は一又はそれ以上の薬剤を胃、または幽門弁を越えて小腸への中に放出する一又はそれ以上のメカニズムを具えていても良い。例えば、徐々に放出する薬物をデバイス150を被覆する材料あるいはデバイス150を構成するのに使用する材料に連結するか、又は注入することができる。これらの薬物は、様々な治療または診断用薬剤のうちのいずれかであっても良く、消化管内に放出する薬剤によって、あるいは患者との接触を介して患者の中にゆっくり溶け込む。別の実施例では、デバイス150は、電気的刺激技術を含んでいても良い。例えば、電気プローブをデバイス150の表面に延在させて、周辺組織又はデバイス150の表面上に形成された電極内に挿入することができる。
【0072】
一の実施例では、デバイス150は、胃に送出用に、溶解するあるいは生分解性の被覆がなされていても良い。このような被覆は、デバイス150を封入するように構成されており、被覆が胃のルーメン内の内容物に接触すると、自然に壊れ、分解し、デバイス150を放出して拡張できるようにする。一の実施例では、デバイス150は、異なるレートで溶けるように構成された、あるいは胃の中の様々な化学的環境で溶けるように構成されている様々な材料で被覆するようにしても良い。
【0073】
図16は、崩壊157が生じた図15Aないし15Dのデバイス150を示す。この図に示すように、デバイス150の全形状が拡張されたフォーム154(または、別の実施例におけるデバイス150内あるいはデバイス150上のそのほかのフレームワーク材料またはその他)によって維持されている。一般的に、フォームまたはフレームワーク材料は、胃の中でそれが分解しないようにして、崩壊が生じた後の延長された期間デバイス150を支持できるようにするため、耐酸性である。代替の実施例では、フォーム154またはそのほかのフレームワーク材料は、崩壊した後ゆっくり分解し、弁の検査のときに、患者に崩壊を警告する信号材料を放出する。患者は、デバイス150が除去されたことを知り、医師に相談するであろう。
【0074】
図17Aと17Bを参照すると、幽門弁閉塞デバイス160の別の実施例は、膨張ポート168と、近位部163と、遠位部165と、位置決め部材161と、保持部材162とを具える。膨張ポート168は、いくつかの実施例は膨張が必要であるが、そのほかの実施例は必要でないので、もちろん選択的なものである。位置決め部材161は、一般的に幽門弁156を断続的に閉塞するためのある位置にデバイス160を配置する助けとなる。保持部材162は、デバイス160の位置または配置を保持する助けとなる。
【0075】
一の実施例では、位置決め部材161が中空状であり、したがって、デバイスを通って液体及び/又はガスの通路ができて、近位部163、遠位部165と保持部162を膨張させる。一の実施例では、位置決め部材161が、比較的短く、幽門156に対する遠位部165の動きを禁止する。別の実施例では、位置決め部材161がより長く、デバイス160がより多く動ける。
【0076】
図17Bを参照すると、近位部173と遠位部175を有するデバイス170は別の実施例では、遠位端に膨張部172を有する位置決め部材171に接続されている。この実施例では、デバイス170は未膨張状態で胃の中へ送られて、位置決め部材171とポート172をデバイス170を膨張させるのに使用して、位置決め部材が飲み込まれて幽門弁156を通って、傷つけることなく小腸の最初の部分に残る。別の実施例では、デバイスが、食道から口まで伸びている取り外し可能な繋索に取り付けられて、胃の中に配置される。繋索はデバイスが正常に展開しなかった場合にデバイスを取り除くのに使用することができ、あるいは代替として、デバイスが胃の中に位置したらデバイスから取り外すことができる。
【0077】
図18Aおよび18Bに示しており、上述したとおり、幽門弁を閉塞するデバイスの様々な実施例は、さまざまな拡張可能な支持メカニズムのうちのいずれを具えていても良い。上述した実施例は、フォームが含まれているが、自己拡張ケージ、コイル、ラティス、フレームワーク、その他など、その他の支持構造と材料を使用することができる。図18Aにおいては、膨張ポート188を伴う近位部183と遠位部185を有するデバイス180が、拡張する足場184を具えている。この足場は、内側表面または外側表面でデバイス180の壁に連結されていても良く、あるいは、壁に埋め込まれていても良い。このような拡張する足場184は、ニチノールなどの形状記憶材料あるいは超弾性材料でできていても良い。この足場184は、送出形状に圧縮されていて、自己拡張あるいは、電気的エネルギィ、熱、RFエネルギィその他などの始動エネルギィを供給することによって拡張した所望の閉塞形状に拡張するように構成されていても良い。別の実施例では、この足場を、引っ張りデバイスで足場を拡張した状態に引っ張ることによって展開させてもよく、この実施例では、足場が折りたたんだ状態から元の形状になることを防止するキャッチメカニズムを有していてもよい。
【0078】
図18Bに示す実施例では、デバイス190は、近位部193と、遠位部195と、膨張ポート198を具える。この実施例では、デバイス190の壁194が、閉じ込められた状態から解放されたときに、より小さい形状からより大きい形状へ拡張する、形状記憶材料、超弾性材料、あるいは自己拡張材料でできている。壁194の材料は、その拡張した形状を保持し、したがって、デバイス190の形状を維持して、デバイスが折りたたまれないようにする。
【0079】
図19A及び19Bを参照すると、幽門弁閉塞デバイス200の別の実施例が、可動、あるいは「反転」外側シェル204と、内側コア202と、位置決め部材208と、ホール212あるいはその他の表面的な特徴を有する遠位保持部材210を有している。図19Aでは、デバイス200が幽門弁を断続的に閉塞するための拡張した形状で示されており、図19Bでは、胃の中に送出するための折りたたんだ形状で示されている。シェル204は、組織接触部/組織係合部205と、支持部206を具える。一般的に、支持部206は、組織接触部205より硬く/剛性があり、前者はデバイス200の横断径を幽門を通り抜けられないように維持し、後者は、有意なダメージを生じることなく胃の組織に接触できるようにより適合性がある。
【0080】
デバイス200の様々な構成部品は、上述したような好適な材料のいずれかで、あるいは公知のまたはこれから発見されるその他の好適な材料のいずれかで構成することができる。一の実施例では、内側コア202はシリコーンなどの中実材料であるが、他の実施例では、コア202は中空状である。コア202は、あらゆる好適なサイズ、形状、横断径、あるいはその他を有していても良い。一の実施例では、コア202は、約5mmから約30mm、好ましくは10mmの横断径を有する。シェル204は、コア202と同じ材料で作っても良いし、異なる材料で作っても良く、やはり、どのような好適なサイズ、形状、横断径、その他を有していても良い。一の実施例では、シェル204の支持部206が、組織接触部205の支持部より厚い。別の実施例では、支持部206が、組織接触部205と異なる材料で作られている。
【0081】
位置決め部材208は、内側コア202、シェル204、あるいは双方の延長であっても良く、あるいは内側コア202及び/又は外側シェル204に連結された別ピースであっても良い。位置決め部材208は、好適な長さと直径を有し、幽門弁を通過できるようになっている。一の実施例では、横断径が約1.0cm以下であり、長さが約3.0cm以上である。保持部材210も、好適なサイズ、形状を有しており、いくつかの実施例は、拡張可能であり、いくつかの実施例は自己拡張であり、その他は、拡張しないように構成されている。一の実施例では、保持部材210の横断径がもっとも大きくて約30mm以下、好ましくは約25mm以下、好ましくは約21mm以下である。保持部材210内のホール212あるいは表面的な特徴は、デバイス200を送出し、調整し、及び/又は回収するためのアクチュエータ、あるいはその他のデバイスを保持部材に連結させるためのあらゆる形状を有していてもよい。位置決め部材208と保持部材210の双方共、あらゆる好適な材料で作ることができる。
【0082】
定率で縮尺して書かれていないが、図19Bは、デバイス200の折りたたまれたあるいは反転した状態を示す。この形状において、シェル204は、送出チューブあるいはカテーテルを通る送出用に、より小さな横断面に圧縮されている。デバイス200が胃に送出された後、シェル204が拡張した状態に反転し、デバイス200が断続的に幽門弁を閉塞するように動作する。
【0083】
図20Aないし20Cは、図19Aおよび19Bに示すデバイス200を送出して胃の中で拡張させる方法を示す図である。図20Aにおいて、デバイス200は、送出チューブ214のルーメンまたはカテーテル内に、折りたたまれた状態で収納されている。図20Bでは、デバイスが送出チューブの外に部分的に進められ、シェル204を少なくとも部分的に拡張させることができる。保持部材210の上のホール212を通って引っ掛けられているアクチュエータ216を用いてデバイス200を引き戻し、シェル204が送出チューブ214の遠位端に重なるようにする。送出チューブ204の遠位端を用いて、シェル204に力をかけて、図20Cに示すようにシェルを拡張した状態に反転させる。図20Cに示すように、アクチュエータ216は、保持部材210のホール212と連結するためのホック218を具えている。シェル204は拡張した形状に移動すると、その形状にとどまるように構成されており、したがって、幽門弁に接触し、上述したデバイス保持機能を提供する。一の実施例では、送出チューブ214が拡張可能なバルーン(図示せず)を遠位端あるいはその近傍に具えていても良い。バルーンは周方向に膨張するドーナッツ形状であってもよく、あるいはエキセントリック形状又はその他の好適な形状を有していても良い。バルーンが膨張して、それに対してデバイス200が引っ張られるストップとして働く。代替として、バルーンがデバイス200の下であるいはデバイス200内で膨張して、バルーンが膨張するときにデバイスを反転させるようにしても良い。
【0084】
その他の実施例では、デバイスがその他のあらゆる好適な方法を用いて送出され、及び/又は展開する。例えば、一の実施例では、シェル204が封じ込められた/折りたたまれた状態から拡張した状態へ、アクチュエータ216や、送出デバイス204の遠位端を使用することなく「自己反転」することができる。自己反転は、形状記憶材料あるいはばね荷重材料などによって、あるいは、デバイスの剛性にバイアスを作るシェルのジオメトリによって達成される。別の実施例では、折りたたんだあるいはしぼんだ状態で、または溶解するカプレット内に収納した状態でデバイス200を飲み込むようにしても良い。様々な代替の実施例が可能である。
【0085】
図21は、胃腸係留デバイス220の実施例を示す図であり、このデバイスは、上述したデバイスと違って、幽門弁を塞ぐように構成されていない。代わりに、デバイス220は、食物を通過させる開口223を有する胃滞留部材222と、幽門弁を閉塞しない組織接触部224と、弁スパニング部材226と、遠位係留部材228を具える。胃滞留部材22は、部材が幽門弁を通過するサイズであり、この通過と部材の折り畳みを防ぐのに十分な剛性と強度を有するであろう。組織接触部材224と、弁スパニング部材226は、これらが幽門弁を通る食物の通過を塞がないようなサイズと形状を有する。遠位係留部材228は、幽門弁を通って胃の中へ戻らないようなサイズである。いくつかの実施例では、遠位係留部材228は、胃から幽門弁へ自然に通過するのには十分に小さいが、弁を通って戻らないようなサイズである。その他の実施例では、遠位係留部材228は、幽門弁を越えて配置されなければならない(弁を介して押し出し部材228に圧力を与えることによって、または外科手術によって)。従って、係留デバイス220は、胃の一部内に維持し、幽門弁を越えて十二指腸内へ、胃の組織に直接取り付けることなく、代わりに胃の組織に間欠的に接触させることによって自体を維持している。
【0086】
一の実施例では、胃滞留部222、幽門弁スパニング部材226及び/又は遠位係留部材228は、デバイスが胃腸消化管に存在する間に形状を変えるように構成することができる。例えば、いくつかの実施例では、幽門弁スパニング部材226は、その長さ及び/又は直径が変化する。このような形状の変化は、デバイスの受信器とプロセッサによって一又はそれ以上の信号の受信と処理によってトリガされる。例えば、高周波信号、電磁信号、マイクロ波信号、または超音波信号を送信するように構成された一またはそれ以上の外部デバイスあるいは内部にインプラントされたデバイスによって信号を送信することができる。代替的に、形状の変化は、前記デバイスの少なくとも一のセンサによる、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及び/又はヘモグロビンの検出に基づいてトリガされる。
【0087】
図22は、係留デバイス230の別の実施例を示す図である。このケースでは、組み合わせた胃滞留/組織接触部232と、幽門弁スパニング部234と、遠位係留部236を具える。このデバイス230は中空状であり、胃滞留部232の中に遠位係留部235中の遠位開口235に液通する近位開口233を有する。弁スパニング部234は、この部分が幽門弁を開かせないようなサイズであり、いくつかの実施例では、折りたたみ可能であり、これによって、デバイス230をその他のスリーブ状の幽門弁スパニングデバイスと区別している。いくつかの実施例では、遠位係留部が、ニチノールなどのステント材料で形成されている。しかしながら、デバイス230は、それを胃腸壁の組織に直接取り付けるものではなく、代わりに、幽門弁を介しての前後の移動が自在であり、これによって、胃壁組織に直接取り付けることなく間欠的に接触している。いくつかの実施例では、デバイス230は、また、遠位係留部236から延在し、遠位開口235と液通するスリーブ(図示せず)を具える。このようなスリーブは、小腸の一部に沿って延在することができ、その長さに沿って栄養の吸収を防止または低減して、肥満の治療を助ける。
【0088】
図23は、係留デバイス240の別の実施例を示しており、このデバイスは、開口243を有する胃滞留部材242と、複数のアーム245を有する組織接触部244と、幽門弁スパニング部246と、複数の繋索249を有する遠位係留部248と、繋索249を介してデバイス240に連結された遠位スリーブ252を有する。再び、この実施例では、デバイス240は、幽門弁を塞ぐものではなく、最大でも、最小限に塞ぐだけである。食物は弁を通過し、少なくともいくらかの食物が近位側スリーブ開口253を介してスリーブ252内へ入る。次いで、食物はスリーブを通過し、このスリーブがスリーブ252の長さに沿って腸管による栄養の吸収を防ぐか、あるいは少なくとも低減する。
【0089】
図1−23を参照して上述したいずれの実施例も、一又はそれ以上のアクチュエータ、一又はそれ以上のセンサ、あるいはこれらの組み合わせを具えていても良い。このようなアクチュエータとセンサは、係留デバイス、幽門閉塞デバイス、あるいは胃の中にあり、幽門弁にかかっている、あるいは十二指腸内に配置されたいずれかの部分など、どの部分に連結されていても良い。いくつかの実施例では、一又はそれ以上のアクチュエータまたはセンサが、係留デバイスまたは閉塞デバイスに、一又はそれ以上の繋索を介して連結されており、一方、他の実施例では、全てのアクチュエータ及び/又はセンサが係留デバイスに直接取り付けられている。
【0090】
係留デバイスに連結することができる一のタイプのアクチュエータは、胃腸組織に、限定するものではないが、高周波、超音波、マイクロ波、低温、レーザ、光、電気、機械又は熱エネルギィなどのエネルギィを与えるエネルギィ送出部材である。もう一つのタイプのアクチュエータは、限定するものではないが、脂質、薬物、酵素、診断用薬剤、脂質、ビタミン、ミネラル、その他の物質(または複数の物質)を放出可能にするように係留デバイスに連結されている。この物質は、係留デバイスの外側表面に放出可能に連結することができ、あるいは一またはそれ以上の補充可能なリザーバ内に収納するようにしても良い。胃の中のスペースを占有して、患者の満腹感を強化するスペース占有部材は、別のタイプのアクチュエータである。アクチュエータの更に別の例は、満腹感反応を誘発するように構成された表面被覆などの、生物学的反応を誘発するように構成したトリガである。すべての好適な撮像デバイスは、別のタイプのアクチュエータでありうる。一般的に、胃腸システム内から機能を実行する何らかの好適なデバイスは、さまざまな実施例によれば、本発明の係留デバイスと、幽門閉塞デバイスに連結することができる。
【0091】
いくつかの実施例では、係留デバイスは、更に、胃腸消化管内の一又はそれ以上の特徴を検出するために係留部材に連結された少なくとも一つのセンサを具えていても良い。このようなセンサ(または複数のセンサ)は、例えば、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及び/又はヘモグロビンを検出するように構成されている。このような実施例は、更に、この検出信号に関連するデータを処理して、この処理したデータを少なくとも一のアクチュエータに提供するように構成されたプロセッサを具える。これらのまたはその他の実施例も、遠隔源から送信されたデータを受信する受信器、データを送信する送信器、データ保存モジュール、再チャージ可能な電源、またはこれらの好適な組み合わせを具えていても良い。
【0092】
上述したとおり、いくつかの実施例において、係留デバイス及び/又は幽門閉塞デバイスは、患者の食道から胃へ通した細長カテーテルデバイスを介して経口胃管、経鼻腔胃管などを送出することができる。同じ送出カテーテルデバイスまたは別のデバイスを、デバイスが胃の中の正しい位置にあれば、係留デバイスまたは閉塞デバイスを変形、調整及び/又は再チャージ用に構成することもできる。このことによって、デバイスを取り出すことなく、あるいはデバイスの再配置を要することなく、デバイスを変更することができる。
【0093】
図24および25は、上述したような細長カテーテルデバイス262と取り付け可能な係留デバイス264を示す図である。係留デバイス266は、カテーテルデバイス262を係留デバイス264に取り付ける取り付け部材266を具える。いくつかの実施例では、例えば、図25により明確に見られるように、カテーテルデバイス262は、磁気遠位先端部材276を有し、係留デバイス264の上の取り付け部材266は、デバイス264の胃滞留部270に連結された逆にチャージされた磁石を具える。(係留デバイス264も、幽門弁スパニング部272と遠位係留部274を具える。)細長カテーテルデバイス262は、さまざまな実施例によると、限定するものではないが、電源の再チャージ、一又はそれ以上の薬剤リザーバの補充、係留デバイス264の位置または方向の変更、係留デバイス264の一またはそれ以上の部分の形状の変更、係留デバイス264の一又はそれ以上の部分の膨張または収縮、及び/又はその他、といったあらゆる好適な機能を実行するのに使用することができる。いくつかの実施例では、カテーテルデバイス262は、患者の外に配置した、あるいは患者の中にインプラントした遠隔送信器と協働して動作して、追加の指示、調整、電力、あるいはその他を係留デバイス264へ提供する。
【0094】
上記は、本発明の完全で正確な説明であるが、様々な変形例、追加などのいずれも本発明の範囲から外れることなく述べた実施例にすることができる。例えば、上述したデバイスと方法は、あらゆる好適な症状の治療、または胃腸消化管におけるあらゆる好適な機能の実行に使用することができる。更に、撮像デバイス、化学物質検出デバイス、スペース占領デバイス及び/又はその他などの、その他のデバイスを、本発明の範囲から外れることなく上述した多くの実施例に含めることができる。したがって、上述の説明は、主として例示的目的を提供するものであり、特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胃腸消化管内で一またはそれ以上の機能を実行するデバイスにおいて、当該デバイスが:
前記デバイスの少なくとも一部を患者の胃の幽門部内に維持し、胃組織に直接取り付けることなく間欠的に係合するように構成された係留部材と;
胃腸消化管内の一又はそれ以上の特徴を検出する係留部材に連結した少なくとも一のセンサと;
を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一のセンサが、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及びヘモグロビンのうちの少なくとも一つを検出するよう構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、更に、患者の胃腸消化管内で一の機能を実行する少なくとも一のアクチュエータを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一のアクチュエータが、エネルギィ送出部材、前記係留部材に放出可能に連結した物質、吸収低減腸管スリーブ、トリガデバイス、スペース占有デバイス、撮像デバイス、データ送信器、データ保存デバイスから成る群から選択されることを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項3に記載のデバイスにおいて、更に、検出した信号に関係するデータを処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項3に記載のデバイスにおいて、更に、患者の外に配置した、あるいは患者内にインプラントした一またはそれ以上の送信器からの信号を受信する少なくとも一の受信器を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイスにおいて、更に、受信した信号を処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
患者の胃腸消化管内で一の機能を実行するシステムにおいて、当該システムが、胃腸デバイスを具えており、当該胃腸デバイスが:
前記デバイスの少なくとも一部を患者の胃の幽門部内に維持し、胃組織に直接取り付けることなく間欠的に係合するように構成された係留部材と;
患者の胃腸消化管内で一の機能を実行する、前記係留部材に連結された少なくとも一のアクチュエータと;
前記アクチュエータの動きを始動する及び/又は調整するための少なくとも1の送信器と;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、胃腸消化管内の一又はそれ以上の特徴を検出する係留部材に連結した少なくとも一のセンサを具えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一のセンサが、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及びヘモグロビンのうちの少なくとも一つを検出するよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、更に、検出した信号に関係するデータを処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、前記送信器からの信号を受信するための少なくとも一の受信器を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、更に、受信した信号を処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、患者の外に配置した外付のチャージ装置を介して再チャージするように構成した再チャージ可能な電源を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一のアクチュエータが、エネルギィ送出部材、前記係留部材に放出可能に連結した物質、吸収低減腸管スリーブ、トリガデバイス、スペース占有デバイス、撮像デバイス、データ送信器、データ保存デバイスから成る群から選択されることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一の送信器が、患者の外に配置されるよう構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一の送信器が、患者内にインプラントされるよう構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、患者の食道を介して胃腸デバイスを送出する細長カテーテルデバイスを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、患者の食道を介して胃腸デバイスに連結して、アクチュエータを再チャージする細長カテーテルデバイスを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、細長カテーテルデバイスの磁気端部が、胃腸デバイスの逆にチャージされた磁石に連結するように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの上の一又はそれ以上の薬物リザーバを再チャージするように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの電源を再チャージするように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項1】
患者の胃腸消化管内で一またはそれ以上の機能を実行するデバイスにおいて、当該デバイスが:
前記デバイスの少なくとも一部を患者の胃の幽門部内に維持し、胃組織に直接取り付けることなく間欠的に係合するように構成された係留部材と;
胃腸消化管内の一又はそれ以上の特徴を検出する係留部材に連結した少なくとも一のセンサと;
を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一のセンサが、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及びヘモグロビンのうちの少なくとも一つを検出するよう構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスにおいて、更に、患者の胃腸消化管内で一の機能を実行する少なくとも一のアクチュエータを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスにおいて、前記少なくとも一のアクチュエータが、エネルギィ送出部材、前記係留部材に放出可能に連結した物質、吸収低減腸管スリーブ、トリガデバイス、スペース占有デバイス、撮像デバイス、データ送信器、データ保存デバイスから成る群から選択されることを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項3に記載のデバイスにおいて、更に、検出した信号に関係するデータを処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項3に記載のデバイスにおいて、更に、患者の外に配置した、あるいは患者内にインプラントした一またはそれ以上の送信器からの信号を受信する少なくとも一の受信器を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイスにおいて、更に、受信した信号を処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
患者の胃腸消化管内で一の機能を実行するシステムにおいて、当該システムが、胃腸デバイスを具えており、当該胃腸デバイスが:
前記デバイスの少なくとも一部を患者の胃の幽門部内に維持し、胃組織に直接取り付けることなく間欠的に係合するように構成された係留部材と;
患者の胃腸消化管内で一の機能を実行する、前記係留部材に連結された少なくとも一のアクチュエータと;
前記アクチュエータの動きを始動する及び/又は調整するための少なくとも1の送信器と;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、胃腸消化管内の一又はそれ以上の特徴を検出する係留部材に連結した少なくとも一のセンサを具えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一のセンサが、pH、温度、胆汁含有率、栄養分含有率、脂肪、糖、アルコール、オピエート、薬物、分析物、電解質、及びヘモグロビンのうちの少なくとも一つを検出するよう構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、更に、検出した信号に関係するデータを処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、前記送信器からの信号を受信するための少なくとも一の受信器を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、更に、受信した信号を処理して、前記少なくとも一のアクチュエータへこの処理したデータを提供するように構成したプロセッサを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、患者の外に配置した外付のチャージ装置を介して再チャージするように構成した再チャージ可能な電源を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一のアクチュエータが、エネルギィ送出部材、前記係留部材に放出可能に連結した物質、吸収低減腸管スリーブ、トリガデバイス、スペース占有デバイス、撮像デバイス、データ送信器、データ保存デバイスから成る群から選択されることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一の送信器が、患者の外に配置されるよう構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記少なくとも一の送信器が、患者内にインプラントされるよう構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、患者の食道を介して胃腸デバイスを送出する細長カテーテルデバイスを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項8に記載のシステムにおいて、更に、患者の食道を介して胃腸デバイスに連結して、アクチュエータを再チャージする細長カテーテルデバイスを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、細長カテーテルデバイスの磁気端部が、胃腸デバイスの逆にチャージされた磁石に連結するように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの上の一又はそれ以上の薬物リザーバを再チャージするように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
請求項19に記載のシステムにおいて、前記細長カテーテルデバイスは、胃腸デバイスの電源を再チャージするように構成されることを特徴とするデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−196457(P2012−196457A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91956(P2012−91956)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2007−525638(P2007−525638)の分割
【原出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(507134954)バロノヴァ,インク. (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2007−525638(P2007−525638)の分割
【原出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(507134954)バロノヴァ,インク. (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]