説明

広いコモノマー含量分布を有する押出ポリスチレンフォーム

20重量%又はそれ以下の共重合アクリロニトリルコモノマー含量、中央アクリロニトリルコモノマー含量を超える平均アクリロニトリルコモノマー含量及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい半高さでの幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー分布を有する、スチレン−アクリロニトリルコポリマーの熱可塑性ポリマー組成物を使用して、押出ポリマーフォームを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスリファレンス記述
本件特許出願は、2009年10月6日出願の米国仮特許出願第61/248,898号の利益を請求する。
本発明は押出ポリマーフォーム物品及び該押出ポリマーフォーム物品の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
望ましいスキン品質を有する押出ポリマーフォームを製造することは、発泡剤として水を使用するときの挑戦である。水は、フォーム表面を破裂させ得る、望ましくないピンホール(ブローホールとしても知られている)を生じる傾向がある。先行技術の文献は、押出フォームを製造する際に、水性発泡剤の望ましくない影響を減少するための幾つかの手段を提供している。
【0003】
特許文献1には、水及びフッ素化化合物を含む発泡剤と組合せて、2.5よりも小さい多分散度指数(polydispersity index)を有するスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの使用によって、ブローホールを有しない良好なスキン品質を有するポリマーフォームを製造できることが開示されている。この文献は、目に見える欠陥の項目のみで、平滑性に関して良好なスキン品質を特徴づけていない。目に見える欠陥を有しないフォーム表面でも、例えば、みかん肌表面組織の形態で触覚に検出可能な表面粗さを有することができる。
【0004】
特許文献2には、スチレン系ポリマー組成物の水溶解度を増加させること又はスチレン系ポリマー組成物の中に、スチレン系ポリマー組成物の水溶解度を増強する添加剤を含有させることによって、水性発泡剤によっても、スチレン系ポリマーから独立気泡単峰性(monomodal)フォームを製造できることが開示されている。この文献は、得られるフォーム表面の品質、特にフォーム表面の平滑性を検討していない。
【0005】
特許文献3には、水性発泡剤によっても、高品質の表面スキンを有する押出ポリマーフォームを製造することができる、共重合アクリロニトリル(AN)組成分布内でのゼロ又は正のスキュー(skew)を有するSANコポリマー使用が開示されている。この文献は、目に見える欠陥の項目のみで、平滑性に関して良好なスキン品質を特徴づけていない。欠陥を有しないフォーム表面でも、触覚に検出可能な表面粗さを有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】PCT公開第WO2008/140892号明細書
【特許文献2】米国特許第5,380,767号明細書
【特許文献3】国際特許出願第PCT/US09/038718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の公知の方法で水性発泡剤を使用しながら、高品質表面スキン、特に平滑スキンを有する押出熱可塑性ポリマーフォームを製造する技術を、更に進歩させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水性発泡剤によっても、高品質及び平滑表面スキンを有する押出(extruded)ポリスチレン(XPS)フォームを達成するための、新規で発明性のある方法を見出すことによって、XPSの技術を進歩させる。本発明は、欠陥を有しない表面を達成するのみならず、水性発泡剤を使用するときでさえも触覚に対して平滑である表面を達成する問題を解決する。
【0009】
驚くべきことに、平滑な欠陥を有しない表面スキンを有するSANコポリマーフォームは、スチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量パーセント(重量%)よりも大きい半高さ(half-height)での幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー(AN)分布によって特徴付けられるSANを使用することによって、水性発泡剤によって製造することができる。
【0010】
第一の面において、本発明は、連続熱可塑性ポリマー相を有するポリマーマトリックスを含む押出ポリマーフォーム物品(このポリマーマトリックスは、その中の多数の気泡を規定し、この連続熱可塑性ポリマー相は、スチレン−アクリロニトリルポリマーの連続相を有する)であって、(a)合計スチレン−アクリロニトリルコポリマー重量基準の重量%で、20重量%又はそれ以下で5重量%又はそれ以上のアクリロニトリル含量、(b)中央アクリロニトリルコモノマー含量を超える平均アクリロニトリルコモノマー含量及び(c)スチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい半高さでの幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー分布を有することによって特徴付けられる押出ポリマーフォーム物品である。
【0011】
第二の面において、本発明は、第一の面の押出ポリマーフォーム物品の製造プロセスであって、このプロセスが、(a)発泡性熱可塑性ポリマー組成物を軟化状態にあるようにする初期温度及び圧力で、水性発泡剤及びスチレン−アクリロニトリルポリマーの連続相を含む発泡性熱可塑性ポリマー組成物を用意し、そして(b)この発泡性熱可塑性ポリマー組成物を発泡ダイに通して、初期温度及び圧力よりも低い圧力及び温度で大気の中に押し出して、前記発泡性ポリマー組成物を押出ポリマーフォーム物品に膨張させることを含んでなり、このプロセスが、更に、合計スチレン−アクリロニトリルコポリマー重量基準の重量%で、20重量%又はそれ以下で5重量%又はそれ以上の共重合アクリロニトリルコモノマー含量、その中央アクリロニトリルコモノマー含量を超える平均アクリロニトリルコモノマー含量及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい半高さでの幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー分布を有するスチレン−アクリロニトリルコポリマーによって特徴づけられるプロセスである。
【0012】
本発明のプロセスは本発明のXPSフォームの製造のために有用である。本発明のXPSフォームは、例えば断熱材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
試験方法は、試験方法番号と共に日付が示されていないとき、本件明細書の優先日以前の最新の試験方法を指す。試験方法に対する参照は、試験協会及び試験方法番号に対する参照の両方を含む。下記の試験方法略号及び同定を本明細書において適用する。ASTMは米国材料試験協会(American Society for testing and Materials)を指す。ENは、欧州標準を指す。DINは、Deutsches Institute fur Normungを指す。そして、ISOは、国際標準化機構を指す。
【0014】
「複数の」は、2種又はそれ以上(2個又はそれ以上)を意味する。「及び/又は」は、「及び又は代替として」を意味する。全ての範囲は、他の方法で示さない限り、端点(endpoint)を含む。
【0015】
ポリマーフォーム物品は、当該物品の全ての表面の最大平面表面積に等しい平面表面積を有する、物品の表面である主表面を有する。平面表面積は、物品内の表面組織のための考慮を回避するために、平面上に投影されたときの表面の面積である。
【0016】
本発明の物品は押出ポリマーフォーム物品である。押出ポリマーフォーム物品は、それらの製造方法及び物品特徴の両方において、他の種類のポリマーフォーム物品、例えば膨張ポリマーフォーム物品から特徴的に独特である。一般的に、押出フォームは、単一の押出フォーム構造に膨張する単一の発泡性組成物から得られる、相互連結された気泡の連続シームレス構造体である。しかしながら、押出フォームの一態様には、「ストランドフォーム」が含まれる。ストランドフォームは、互いに対して接着された隣接するフォームのスキンを有する連続ポリマースキンによって規定されるフォームの複数の押出ストランドを含む。ストランドの端部はスキンによって覆われていないので、ストランドフォーム中のポリマースキンは、ストランドの押出方向内でのみ伸び、気泡の群を包み込まない。反対に、膨張したビードフォームは、フォーム内でフォーム気泡の収集物をカプセルに包んでいるポリマービードスキンの特徴的な連続ネットワークを有する。ポリマービードスキンは、ビードスキン内の気泡壁よりも高い密度を有する。ポリマービードスキンは、複数の方向に伸び、何れかのフォーム表面を対峙するフォーム表面に連結し、一般的に全てのフォーム表面を相互連結する。ポリマービードスキンは、膨張してフォームを形成するそれぞれのフォームビードからの残留スキンである。ビードスキンは、一緒に融合して、複数の発泡したフォームビーズからなるフォーム構造体を形成する。ビードフォームは、ビードスキンネットワークに沿って破断し得るので、ビードフォームは、押出フォームよりも一層脆い傾向がある。更に、ビードスキンネットワークは、フォームの何れか1個の側から対峙する側への連続熱ショート(thermal short)をもたらし、これは、断熱材料において望ましくない。
【0017】
本発明の押出ポリマーフォーム物品は、その中に多数の気泡を規定するポリマーマトリックスからなる。ポリマーフォーム物品は、ポリマーマトリックス中に分布され、ポリマーマトリックスによって規定される気泡を有する連続ポリマーマトリックスを有する。本発明の物品は、連続熱可塑性ポリマー相を含む連続ポリマーマトリックスを有するポリマーフォーム物品である。従って、熱可塑性ポリマー相は、ポリマーマトリックスの一部として気泡を規定する。マトリックスが連続熱可塑性ポリマー相を有する限り、熱硬化性ポリマーがポリマーマトリックス中に存在していてよい。望ましくは、ポリマーマトリックス重量基準で、ポリマーマトリックスの、50重量パーセント(重量%)よりも多く、好ましくは75重量%又はそれ以上、更に好ましくは80重量%又はそれ以上、なお更に好ましくは85重量%又はそれ以上、90重量%又はそれ以上、95重量%又はそれ以上、そして100重量%SANであってよい。
【0018】
連続熱可塑性ポリマー相は、連続スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーからなる。連続熱可塑性ポリマー相は、SANコポリマーに加えて熱可塑性ポリマーを含んでいてよいが、好ましくは、連続熱可塑性ポリマー相及びポリマーマトリックス自体は、熱可塑性ポリマー相重量、ポリマーマトリックス重量又は熱可塑性ポリマー相重量及びポリマーマトリックス重量の両方基準で、50重量パーセント(重量%)よりも多い、好ましくは75重量%又はそれ以上、更に好ましくは80重量%又はそれ以上、90重量%又はそれ以上、95重量%又はそれ以上、100重量%のSANコポリマーである。
【0019】
SANコポリマーは、1種又はそれ以上のSANコポリマーからなる。SANコポリマー組成物中のSANコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、線状、分枝状又はこのような種類のSANコポリマーの任意の組合せであってよい。重合AN成分は、SANコポリマーの合計重量基準で、典型的に20重量%又はそれ以下、更に典型的に15重量%又はそれ以下を構成する。更に、重合AN成分は、望ましくはSANコポリマーの合計重量基準で、5重量%又はそれ以上、好ましくは10重量%又はそれ以上を構成する。重合ANの濃度が5重量%よりも低い場合、SANコポリマーは、望ましくなく低い水溶解度(これは、水性発泡剤の使用を阻害する)を有する危険がある。
【0020】
更に、前記SANコポリマーは、中央(mean)共重合アクリロニトリルコモノマー含量を超える平均共重合アクリロニトリルコモノマー含量を有する。同時に、このSANコポリマーは、スチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい半高さでの幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー分布を有する。この共重合アクリロニトリルコモノマー含量分布曲線は、x軸上の重量%での共重合コモノマー濃度及びy軸上の出現度数を有するプロットによって明らかである。アクリロニトリルコモノマーの最高出現に対応する、コモノマー含量分布曲線内のピークを同定することによって、共重合アクリロニトリルコモノマー分布の幅を決定する。このピークでのものの半分に等しいコモノマー出現を有するこのピーク(即ち半ピーク高さ)の両側でのコモノマーの%を同定する。これらの2個のパーセンテージの間の差の絶対値が、共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピークで決定したときの共重合アクリロニトリルコモノマー分布の幅である。SANコポリマーが、異なった共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線を有する2種又はそれ以上のSANコポリマーのブレンドを含む場合、ブレンド中のそれぞれのSANコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピークで決定されたように共重合アクリロニトリルコモノマー分布の幅を決定し、それぞれのコポリマーの重量%に基づく重量平均を使用し、これらを一緒に平均して、平均値を決定する。SANコポリマーが、単一の共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線を有するSANコポリマーのみを含有する場合、そのSANコポリマーについての幅値は、このSANコポリマーについての「平均」値として機能する。
【0021】
前記ポリマーマトリックスは、スチレン−ブタジエンコポリマーを含む或る種のポリマー、特に100,000〜140,000グラム/モルの重量平均分子量を有するものを含まないものとすることができる。
【0022】
驚くべきことに、すぐ前に記載したようなポリマーマトリックスの組成物を有する熱可塑性ポリマーを押し出すことによって、水性発泡剤を使用するが、2.5よりも大きい多分散度指数を有するSANコポリマー、水溶性添加剤の使用又はその共重合アクリロニトリルコモノマー組成分布内でのゼロ若しくは正のスキューを有するSANコポリマーの使用を必要としないで、触覚に対して平滑である表面スキンを有する熱可塑性ポリマーフォーム物品を形成することが可能である。本発明の押出ポリマーフォーム物品の熱可塑性ポリマー及び/又はポリマーマトリックスは、下記のもの、即ち、2.5よりも小さい多分散度指数を有するSANコポリマー、ポリマーマトリックス中の水溶解度を増加させるための添加剤及び共重合AN組成分布内でゼロ又は正のスキューを有するSANコポリマーの、何れか1種、1種より多い任意の組合せを含有しないか、そして全部を含有しないでもよい。
【0023】
前記押出熱可塑性ポリマーフォーム物品は、更に、添加剤の1種又はそれ以上の任意の組合せからなっていてよい。添加剤の種類の例には、赤外減衰剤(例えばカーボンブラック、グラファイト、金属フレーク、二酸化チタン);クレー、例えば天然吸収クレー(例えばカオリナイト及びモンモリロナイト)及び合成クレー;核生成剤(例えばタルク及びケイ酸マグネシウム);難燃剤(例えば臭素化難燃剤、例えばヘキサブロモシクロドデカン並びに臭素化ポリマー及びコポリマー、リン難燃剤、例えばリン酸トリフェニル並びに相剰剤、例えばジクミル及びポリクミルを含有していてよい難燃剤パッケージ);滑剤(例えばステアリン酸カルシウム及びステアリン酸バリウム)並びに酸スカベンジャー(例えば酸化マグネシウム及びピロリン酸四ナトリウム)が含まれる。押出熱可塑性ポリマーフォーム物品のために、物品を通過する熱伝導率を最小にするために、赤外減衰剤含むことが、特に望ましい。添加剤は、典型的にはポリマーマトリックス内に、一般的に連続熱可塑性ポリマー相内に分散され、ポリマーフォーム物品中の合計ポリマー重量基準で、15重量%以下の濃度で存在する。
【0024】
本発明の押出熱可塑性ポリマーフォーム物品は、望ましくは、64キログラム/立方メートル(kg/m3)以下、好ましくは55kg/m3以下、更に好ましくは50kg/m3以下、なお更に好ましくは48kg/m3以下、なお更に好ましくは36kg/m3以下の密度を有し、33kg/m3以下、更に30kg/m3以下の密度を有することができる。一般的に、この密度は、取り扱いの間の機械的原形を確保するために、18kg/m3又はそれ以上である。ASTM方法D−1622−03に従って、フォーム密度を決定する。
【0025】
前記ポリマーフォームは、連続気泡体又は独立気泡体であってよいが、好ましくは独立気泡体である。連続気泡フォームは、30%又はそれ以上の連続気泡含量を有する。独立気泡フォームは、30%よりも少ない連続気泡含量を有する。望ましくは、本発明のフォームは、20%又はそれ以下、好ましくは10%又はそれ以下、更に好ましくは5%又はそれ以下、なお更に好ましくは1%又はそれ以下の連続気泡含量を有し、0%の連続気泡含量を有することができる。連続気泡含量は、ASTM方法6226−05に従って測定する。
【0026】
前記ポリマーフォームの気泡は、望ましくは、0.05ミリメートル、好ましくは0.10ミリメートル又はそれ以上、更に好ましくは0.15ミリメートル又はそれ以上の平均気泡サイズ又は平均垂直気泡サイズを有する。同時に、このポリマーフォーム物品の気泡は、望ましくは1ミリメートル又はそれ以下、好ましくは0.5ミリメートル又はそれ以下、更に好ましくは0.35ミリメートル又はそれ以下の平均気泡サイズ(垂直気泡サイズ)を有する。平均気泡サイズは、ASTM方法D−3576−04に従って決定する。このポリマーフォームは、多峰性(双峰性を含む)又は単峰性気泡サイズ分布を有してよい。垂直気泡サイズは、垂直方向内の気泡の寸法を指す。この垂直方向は、フォームの主表面に対して鉛直である、フォームの厚さ次元に相当する。
【0027】
本発明のプロセスは、本発明の熱可塑性ポリマーフォーム物品を製造するために適している押出フォームプロセスである。この押出プロセスは、連続式又は半連続式(例えば蓄積押出(accumulative extrusion))であってよい。一般的な押出プロセスにおいて、熱可塑性ポリマー組成物を、それを軟化させるまで加熱し、発泡剤組成物を、この軟化した熱可塑性ポリマー組成物と一緒に、膨張剤の膨張を任意の意味のある程度まで排除する(好ましくは、任意の発泡剤膨張を排除する)初期(混合)温度及び初期圧力で混合することによって、熱可塑性ポリマー組成物と発泡剤との発泡性熱可塑性ポリマー組成物を、押出機内で製造し、次いで、この発泡性組成物を、ダイに通して、この初期温度及び初期圧力よりも低い温度及び圧力を有する環境の中に押し出す。発泡性組成物を、より低い圧力の中に押し出す際に、発泡剤は、熱可塑性ポリマーを熱可塑性ポリマーフォームに膨張させる。望ましくは、発泡性組成物を、混合した後で、それをダイに通して押し出す前に冷却する。連続式プロセスにおいて、本質的に連続的発泡を可能にするために、発泡性組成物を、本質的に一定の速度で、より低い圧力の中に押し出すことが望ましい。
【0028】
蓄積押出は、1)熱可塑性材料と発泡剤組成物とを混合して、発泡性ポリマー組成物を形成し、2)この発泡性ポリマー組成物を、発泡性ポリマー組成物を発泡できるようにしない温度及び圧力に維持された保持ゾーンの中に押し出し、この保持ゾーンは、より低い圧力のゾーン(そこで、発泡性ポリマー組成物が発泡し、開放可能なゲートがダイオリフィスを閉じる)の中に開いているオリフィスを規定するダイを有し、3)可動性ラムの手段によって機械的圧力を、発泡性ポリマー組成物に実質的に同時に適用しながら、このゲートを周期的に開いて、それを、保持ゾーンから、ダイオリフィスに通して、より低い圧力のゾーン中に押し出し、そして4)押し出された発泡性ポリマー組成物を膨張させて、フォームを形成する工程を含んでなる、半連続式プロセスである。参照して本明細書中に含められる米国特許第4,323,528号明細書には、ポリオレフィンフォームを製造することに関連してこのようなプロセスが開示されており、このプロセスは芳香族ポリマーフォームに容易に適合させることもできる。
【0029】
凝集フォームプロセスも、本発明の押出プロセスの適切な態様である。米国特許第3,573,152号明細書及び米国特許第4,824,720号明細書(この両方の教示を、参照して本明細書に含める)には、凝集フォームプロセスの説明が含まれている。一般的に、凝集フォームプロセスの間に、発泡性ポリマー組成物が、発泡性ポリマー組成物が押出の際に膨張するとき、得られる発泡しているポリマーのストランドが互いに接触して、部分的に一緒に凝集するように配向された、複数のオリフィスを含有するダイを通って押し出される。得られるフォーム(「ストランドフォーム」)は、フォームの押出方向に伸びているフォームストランドの組成物である。スキンは、典型的には、それぞれのストランドを、凝集フォームに規定する。凝集フォームプロセスは適しているが、このプロセスは、独立のフォームストランドを形成することができず、続いてストランドを一緒に融合してスタンドフォームを発泡させる。
【0030】
本発明のプロセスにおいて、水性発泡剤及びSANコポリマーの連続相を含む発泡性熱可塑性ポリマー組成物を、この発泡性熱可塑性ポリマー組成物を軟化状態にする(ポリマーを破壊することなく押出を受けるために十分に軟化させる)初期温度及び圧力で用意する。この発泡性熱可塑性ポリマー組成物は、本発明のフォーム物品のポリマーマトリックスについて記載したような熱可塑性ポリマー組成物を含む(発泡性熱可塑性ポリマー組成物は、本質的に、得られるフォームの熱可塑性ポリマーマトリックスになる)。前記のように、このSANポリマーは、合計SANコポリマー重量基準で、20重量%又はそれ以下の共重合アクリロニトリルコモノマー含量、その中央共重合アクリロニトリルコモノマー含量を超える平均共重合アクリロニトリルコモノマー含量及びアクリロニトリル含量分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい共重合アクリロニトリルコモノマー分布の幅を有する。
【0031】
前記発泡性熱可塑性ポリマー組成物は、前記のポリマーマトリックスのように、前記のような添加剤を含んでいてよい。
【0032】
前記発泡性熱可塑性ポリマー組成物は、更に、水性発泡剤(これは、発泡剤が水を含むことを意味する)を含む。望ましくは、水は、経済的に好都合な発泡剤の使用を最大にするために、0.5重量%又はそれ以上、好ましくは0.9重量%又はそれ以上の濃度で存在する。同時に、水は、典型的に1.7重量%又はそれ以下、更に典型的に1.2重量%又はそれ以下の濃度で存在する。水濃度は、発泡性熱可塑性ポリマー組成物中の全ポリマーに対して相対的である。
【0033】
水に加えて、前記発泡剤は、追加の発泡剤の何れか1種又はそれ以上の何れかの組合せを含んでいてよい。適切な追加の発泡剤には、下記のもの、即ち無機ガス、例えば二酸化炭素、アルゴン、窒素及び空気;有機発泡剤、例えばメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロブタン及びシクロペンタンを含む、炭素数1〜9の脂肪族及び環式炭化水素;好ましくは塩素を含有していない、炭素数1〜5の完全に及び部分的にハロゲン化されたアルカン及びアルケン(例えばジフルオロメタン(HFC−32)、ペルフルオロメタン、フッ化エチル(HFC−161)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ペルフルオロエタン、2,2−ジフルオロプロパン(HFC−272fb)、1,1,1−トリフルオロプロパン(HFC−263fb)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc));完全に及び部分的にハロゲン化されたポリマー及びコポリマー、望ましくはフッ素化されたポリマー及びコポリマー、なお更に好ましくは塩素を含有していないフッ素化されたポリマー及びコポリマー;炭素数1〜5の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノール;カルボニル含有化合物、例えばアセトン、2−ブタノン及びアセトアルデヒド;エーテル含有化合物、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル;カルボン酸エステル化合物、例えばギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル;カルボン酸並びに化学発泡剤、例えばアゾジカーボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、ベンゼンスルホヒドラジド、4,4−オキシベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド、トリヒドラジノトリアジン及び重炭酸ナトリウムが含まれる。
【0034】
一つの望ましい態様は、水及び二酸化炭素を含むか、そして水及び二酸化炭素からなっていてよい発泡剤を使用する。
【0035】
軟化した発泡性熱可塑性ポリマー組成物を発泡ダイに通して、初期温度及び圧力よりも低い圧力及び温度で大気中に押し出す。この押出ダイは、望ましくは60セルシウス度(℃)又はそれ以上、好ましくは65℃又はそれ以上、なお更に好ましくは70℃又はそれ以上であるダイリップ温度を有する。同時に、ダイリップ温度は、望ましくは90℃又はそれ以下である。この押し出された発泡性熱可塑性ポリマー組成物を、平滑な表面スキンを有し、本発明の物品について記載したような特性を有するポリマーフォーム物品に膨張させることが可能である。
【0036】
積極的な(affirmative)冷却を、発泡しているか若しくは発泡した熱可塑性ポリマー組成物に適用することができ又は押出機内よりも低い温度の環境の中に単に押し出すことによって冷却を起こさせることができる。
【0037】
得られる押出熱可塑性ポリマーフォーム物品は、本発明の物品である。
【実施例】
【0038】
下記の実施例は本発明の態様を例示する。
【0039】
サンプルを製造するために下記の4種の樹脂を使用し、連続攪拌式槽型反応器(CSTR)又は直列で3個の攪拌式管型反応器(STR)を使用して製造することができる。
【0040】
【表1】

【0041】
比較例A(i)〜(iii)は、樹脂1及び樹脂2の重量基準の50/50ブレンドである熱可塑性ポリマー組成物を使用する。比較例についての1/2ピーク高さでの平均AN%は2.0である。また、中央AN重量%は、このポリマー組成物中の平均AN重量%を超えている。
【0042】
実施例1(i)〜(iii)は、樹脂3及び樹脂4の重量基準の50/50ブレンドである熱可塑性ポリマー組成物を使用する。実施例1(a)〜(e)についての1/2ピーク高さでの平均AN重量%は3.74である。平均AN重量%は、このポリマー組成物についての中央AN重量%を超えている。
【0043】
適切な熱可塑性ポリマー組成物を、91キログラム(200ポンド)/時の速度で、約200セルシウス度(℃)の初期(混合)温度で押出機の中に供給する。下記の添加剤、即ち、ステアリン酸バリウム0.2重量%、線状低密度ポリエチレン(DOWLEX(登録商標)2247gブランド ポリエチレン、DOWLEXは、ザ・ダウ・ケミカル社(The Dow Chemcal Company)の商標である)0.3重量%、タルク0.15重量%、Saytex(登録商標)HP−900ヘキサブロモシクロドデカン(Saytexは、Albemarle Corp.の商標である)0.74重量%、ECN1280オルト−クレゾールノボラックエポキシ樹脂0.11重量%及びIrganox(登録商標)B215熱安定剤(Irganoxは、CIBA Specialty Chemicals Corp.の商標である)0.11重量%(ここで、重量%は、全熱可塑性ポリマー組成物重量基準である)を添加する。
【0044】
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)7.5重量%、二酸化炭素1.2重量%及び水0.9重量%からなる発泡剤組成物を添加することによって、発泡性ポリマー組成物を形成する。前記のように、重量%は、相対的全熱可塑性ポリマー組成物重量である。
【0045】
この発泡性組成物を132℃の温度にまで冷却する。この発泡性ポリマー組成物を、13.3センチメートル(5.25インチ)のスリット幅を有するスリットダイに通して大気圧(約760ミリメートル水銀)の中に押し出し、表1(下記)中に記載したような断面寸法を有する熱可塑性ポリマーフォーム物品にまで膨張させる。サンプル(1)〜(111)について、以下のような、即ち、(i)は70℃のダイリップ温度を有する、(ii)は80℃のダイリップ温度を有する及び(iii)は90℃のダイリップ温度を有するような、異なったダイリップ温度を使用する。
【0046】
それぞれのサンプルについて、主表面及び主表面の反対側の表面について表面スキン品質をキャラクタリゼーションし、次いで、これらの表面のそれぞれについて品質値を平均して、平均表面スキン品質値を得る。
【0047】
得られる熱可塑性ポリマーフォーム物品の特徴及び特性を、表1に記載する。
【0048】
【表2】

【0049】
表1中のデータから、他の全てが等しい場合、70℃〜90℃の範囲内のダイリップ温度を使用して製造したとき、スチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい半高さでの幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー分布及び中央AN重量%を超える平均AN重量%を有するSANを使用して製造された熱可塑性ポリマーフォーム物品が、半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも小さい平均共重合アクリロニトリルコモノマー含量幅及び平均AN重量%を超える中央AN重量%を有するSANを使用して製造された熱可塑性ポリマーフォーム物品よりも高い品質スキン表面をもたらすという驚くべき結果が明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続熱可塑性ポリマー相を有するポリマーマトリックス(このポリマーマトリックスは、その中の多数の気泡を規定し、連続熱可塑性ポリマー相は、スチレン−アクリロニトリルポリマーの連続相を有する)を含んでなる押出ポリマーフォーム物品であって、
a.合計スチレン−アクリロニトリルコポリマー重量基準の重量%で、20重量%又はそれ以下で5重量%又はそれ以上のアクリロニトリル含量、
b.中央アクリロニトリルコモノマー含量を超える平均アクリロニトリルコモノマー含量及び
c.スチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい半高さでの幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー分布
を有することによって特徴づけられる押出ポリマーフォーム物品。
【請求項2】
触覚に対して平滑である表面スキン品質を有することによって更に特徴づけられる請求項1に記載の押出ポリマーフォーム物品。
【請求項3】
共重合アクリロニトリル濃度分布内での正のスキューを有するSANコポリマーを含有しないこと及び2.5よりも大きい多分散度指数を有するスチレン−アクリロニトリルコポリマーによって更に特徴づけられる請求項1に記載の押出ポリマーフォーム物品。
【請求項4】
連続熱可塑性ポリマー相内に分散された赤外減衰剤を更に含む請求項1に記載の押出ポリマーフォーム物品。
【請求項5】
32kg/m3又はそれ以下の密度及び30%又はそれ以下の連続気泡含量を有することによって更に特徴づけられる請求項1に記載の押出ポリマーフォーム物品。
【請求項6】
請求項1に記載の押出ポリマーフォーム物品の製造プロセスであって、
a.発泡性熱可塑性ポリマー組成物を軟化状態にあるようにする初期温度及び圧力で、水性発泡剤及びスチレン−アクリロニトリルポリマーの連続相を含む発泡性熱可塑性ポリマー組成物を用意し、そして
b.発泡性熱可塑性ポリマー組成物を発泡ダイに通して、初期温度及び圧力よりも低い圧力及び温度で大気中に押し出して、発泡性ポリマー組成物を押出ポリマーフォーム物品に膨張させることを含んでなり、
前記プロセスが、更に、合計スチレン−アクリロニトリルコポリマー重量基準の重量%で、20重量%又はそれ以下で5重量%又はそれ以上の共重合アクリロニトリルコモノマー含量、中央アクリロニトリルコモノマー含量を超える平均アクリロニトリルコモノマー含量及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーについての共重合アクリロニトリルコモノマー分布曲線の半ピーク高さで測定したとき、2.5重量%よりも大きい半高さでの幅を有する平均共重合アクリロニトリルコモノマー分布を有するスチレン−アクリロニトリルコポリマーによって特徴づけられるプロセス。
【請求項7】
前記発泡性ポリマー組成物を、触覚に対して平滑であるポリマーフォーム物品に膨張させることによって更に特徴づけられる請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
60℃〜90℃の範囲内のダイリップ温度を有する発泡ダイによって更に特徴づけられる請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
共重合アクリロニトリル濃度分布内でのゼロ又は正のスキューを有するスチレン−アクリロニトリルコポリマーを含有しないこと及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーが2.5よりも小さい多分散度指数を有することによって更に特徴づけられる請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
赤外減衰剤を分散させた発泡性熱可塑性ポリマー組成物によって特徴づけられる請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
全発泡剤重量基準で少なくとも5重量%の水を含む水性発泡剤によって更に特徴づけられる請求項6に記載のプロセス。
【請求項12】
水及び二酸化炭素を含む水性発泡剤によって更に特徴づけられる請求項11に記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−506748(P2013−506748A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533186(P2012−533186)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/048041
【国際公開番号】WO2011/043885
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】