説明

床パネル用タイルユニットおよびこれを用いた床パネル

【課題】タイルユニット製造後の取り扱いや梱包を容易に達成し、タイルユニット相互間の接合連結強度と寸法安定性が極めて高く、タイルユニット製造負担を大幅に軽減し、特段の目地形成作業を必要とすることなく均等な目地幅を有する目地を確実に形成して迅速かつ簡便な施工を達成する床パネルを提供すること。
【解決手段】表装タイル110とベースタイル120とで構成される床パネル用タイルユニット130を縦横に複数連結してなり、ベースタイル120が表装タイル110の対角線寸法より長い長辺121とこの長辺121の半分の寸法で設定された短辺122とで形成され、ベースタイルの長辺121が表装タイル110の対角線と平行に貼着され、目地部材140が表装タイル110同士の間隙に埋設される床パネル100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工床面との接合に依存することなくユニット相互間の接合連結により施工床面の状況に応じて自由自在に敷設可能な床パネル用タイルユニットに関し、さらに、この床パネル用タイルユニットを用いて構成される床パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、船舶、車両など広さ、形状が各種各様である場所の敷物として施工床面の下地と接着剤で接合することなく用いるタイルユニットとして、隣接するタイルユニット相互間で嵌合連結する凹凸嵌合構造を備えたもの、あるいは、タイルユニットを構成する表面材とパッド材との積層状態をずらして隣接するタイルユニット相互間で接合連結する重ね合わせ構造を備えたものなどが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−288062号公報(第1頁、図2、6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者のような隣接するタイルユニット相互間で嵌合連結する凹凸嵌合構造を備えたタイルユニットは、表面材とパッド材とを嵌合連結するための凹凸嵌合構造をユニット外周部位に造形しなければならず、タイルユニット製造時の工数が大幅に増加するという製造上の厄介な問題があった。
【0005】
また、後者のようなタイルユニットを構成する表面材とパッド材との積層状態をずらして隣接するタイルユニット相互間で接合連結する重ね合わせ構造を備えたタイルユニットは、表面材とパッド材との重ね合わせた接合面積が少なく、敷設施工時に単純に接合連結して敷設する工法、所謂、「流し貼り工法」を採用した場合、施工仕上がり時の寸法安定性が悪くなるため、「市松貼り工法」に依存しなければならず、床パネル施工後における見栄えなどの敷設デザインに大幅な制約を及ぼすとともに、タイルユニット相互間に形成される縦横の接合線に沿ってずれ易くなって摩耗損傷を生じやすくタイルユニットの耐久性を著しく損なうという問題があり、また、施工床面に敷設されて隣接するタイルユニット相互間に形成される縦横の接合線に対して斜向きの力が負荷された場合にタイルユニット相互間の固定力が弱いため、縦横の接合線が直交する領域、所謂、「矩(かね)」と称するコーナー部分から剥がれ易いという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、タイルユニット製造後の取り扱いや梱包を容易に達成するとともに、タイルユニット相互間の接合連結強度と寸法安定性が極めて高く、タイルユニット製造負担を大幅に軽減し、しかも、特段の目地形成作業を必要とすることなく均等な目地幅を有する目地を確実に形成して迅速かつ簡便な施工を達成する床パネル用タイルユニットおよびこれを用いた床パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、正方形状の表装タイルと該表装タイルの裏面に貼着する矩形状のベースタイルとからなる床パネル用タイルユニットにおいて、前記ベースタイルが、前記表装タイルの対角線寸法より長い長辺と該長辺の半分の寸法で設定された短辺とで形成され、前記ベースタイルの長辺が、前記表装タイルの対角線と平行に貼着されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ベースタイルが、前記ベースタイルの長辺の中央を表装タイルの中心に一致させた状態で表装タイルの裏面に貼着していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2に記載の構成に加えて、前記表装タイルが磁器からなることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1または請求項2に記載の構成に加えて、前記表装タイルがコルク材からなることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
請求項5に係る本発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構成に加えて、前記ベースタイルがポリ塩化ビニルからなることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
請求項6に係る本発明は、正方形状の表装タイルと該表装タイルの裏面に貼着する矩形状のベースタイルとで構成された床パネル用タイルユニットを縦横に複数連結してなる床パネルにおいて、前記ベースタイルが、前記表装タイルの対角線寸法より長い長辺と該長辺の半分の寸法で設定された短辺とで形成され、前記ベースタイルの長辺が、前記表装タイルの対角線と平行に貼着されているとともに、前記表装タイル同士を相互に接合する目地部材が表装タイル同士の間隙に埋設されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0013】
請求項7に係る本発明は、請求項6に記載の構成に加えて、前記ベースタイルが、前記ベースタイルの長辺の中央を表装タイルの中心に一致させた状態で表装タイルの裏面に貼着していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0014】
請求項8に係る本発明は、請求項6または請求項7に記載の構成に加えて、前記表装タイルが磁器からなることにより、前述した課題を解決したものである。
【0015】
請求項9に係る本発明は、請求項6または請求項7に記載の構成に加えて、前記表装タイルがコルク材からなることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0016】
請求項10に係る本発明は、請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の構成に加えて、前記ベースタイルがポリ塩化ビニルからなることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明の床パネル用タイルユニットによれば、正方形状の表装タイルとこの表装タイルの裏面に貼着する矩形状のベースタイルとからなる床パネル用タイルユニットにおいて、ベースタイルが表装タイルの対角線寸法より長い長辺とこの長辺の半分の寸法で設定された短辺とで形成され、ベースタイルの長辺が表装タイルの対角線と平行に貼着されていることにより、ベースタイルを施工床面上に隙間なくベース材長辺方向およびベース材短辺方向にそれぞれ複数敷設するだけで、隣接する表装タイルの相互間に所定間隔の目地を形成するため、特段の目地形成作業を必要とすることなく均等な目地幅を有する目地を縦横に確実に形成して迅速かつ簡便な床パネルの施工作業を達成できる。
【0018】
また、隣接する表装タイルの相互間に所定間隔の目地を確保することにより、外部の温度変化に起因して表装タイルに熱膨張が生じた場合においても、隣接する相互間に隙間を設けることなく表面材を設置する従来のタイルユニットとは異なり、本発明の床パネル用タイルユニットでは表装タイルの熱膨張を目地で許容するため、熱膨張した表装タイルが隣接する相互間で押し合って表装タイルの剥離が発生する事態を回避でき、また、外部の温度変化に起因して表装タイルに熱収縮が生じた場合においても、本発明の床パネル用タイルユニットにおけるタイルユニット相互間の接合連結は隣接する表装タイル同士の接合にそもそも依存していないため、タイルユニット相互間の安定した接合連結を確保できる。
【0019】
また、表装タイルの相互間に形成された目地に目地部材を充填して床パネルを施工した後、表装タイルの相互間の目地に対して斜向きの力が負荷された場合、この斜向きに負荷された力を表装タイルの対角線と同一方向となる45度の組み付け角度で貼着されたベースタイルの相互間に形成される斜めの接合線に沿った接合面で受け止めるため、トラス構造を呈してタイルユニット相互間の接合連結強度が高く、タイルユニット相互間に生じがちなずれや「矩(かね)」と称するコーナー部分からの剥がれが抑制され、床パネル用タイルユニットの摩耗損傷を大幅に防止できるとともに優れた耐久性を発揮できる。
【0020】
また、床パネル用タイルユニットが表装タイルとベースタイルとを貼着するだけの極めて簡便なユニット形態を呈しているため、タイルユニット製造にかかる製造負担を大幅に軽減できるばかりでなく、床パネル施工時の接合連結作業において隣接する表装タイルとベースタイルとの接合面積が相互の露呈し合う接合面間で充分に確保されているため、床パネル施工後のタイルユニット相互間の接合連結強度を十分に確保でき、優れた形態安定性を発揮でき、また、床パネル用タイルユニットを構成するベースタイルが複数の隣接する表装タイルにより床パネルの表面側から覆われて表装タイルの裏面に貼着されているため、ベースタイルの浮き上がりを回避して床パネル用タイルユニットの剥がれを確実に回避できる。
【0021】
そして、タイルユニット施工後の状態で、隣接するベースタイル同士の接合線をベースタイルの表面に貼着された表装タイルで被覆するため、本発明の床パネル用タイルユニットで構成される床パネルを水回り環境において用いた場合にも、隣接するベースタイル同士の接合線から施工床面とベースタイルの裏面との間に水が入り込むことを防止して、施工床面とベースタイルとの間で剥離が生じることを回避できる。
【0022】
請求項2に係る本発明の床パネル用タイルユニットによれば、請求項1に記載の床パネル用タイルユニットが奏する効果に加えて、ベースタイルがベースタイルの長辺の中央を表装タイルの中心に一致させた状態で表装タイルの裏面に貼着していることにより、施工現場における表装タイルとベースタイルとの接合面積を施工面積の約半分程度まで許容することができるため、施工時の状況に応じた確実な接合連結を達成でき、また、床パネル用タイルユニットの梱包時に、長辺同士を相互に当接させた2つのベースタイルを2つの表装タイルで挟み込むように一対の床パネル用タイルユニットを組み合わせることで、このように相互に組み合わされた一対の床パネル用タイルユニットがタイルユニット表面側から見て突出部のない正方形の全体形状を呈するため、タイルユニット製造後の取り扱いや梱包を容易に達成でき、特に、柔軟性を有する素材でベースタイルを成形した場合、2つの表装タイルの間に挟み込まれたベースタイルが緩衝機能を発揮するため、梱包時における表装タイルの破損を抑制できる。
【0023】
請求項3に係る本発明の床パネル用タイルユニットによれば、請求項1または請求項2に記載の床パネル用タイルユニットが奏する効果に加えて、表装タイルが磁器からなることにより、この表装タイルが耐汚性、耐水性、防塵性を発揮するため、床パネル用タイルユニットにより構成される床パネルを耐汚性、耐水性、防塵性を要求される環境、例えば、浴室、洗面所、台所などの水回り用床パネルとして用いることができる。
【0024】
請求項4に係る本発明の床パネル用タイルユニットによれば、請求項1または請求項2に記載の床パネル用タイルユニットが奏する効果に加えて、表装タイルがコルク材からなることにより、この表装タイルが保温性、振動吸収性、防音性を発揮するため、床パネル用タイルユニットにより構成される床パネルを保温性、振動吸収性、防音性を要求される環境、例えば、リビング用床パネルや玄関用床パネルとして用いることができる。
【0025】
請求項5に係る本発明の床パネル用タイルユニットによれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の床パネル用タイルユニットが奏する効果に加えて、ベースタイルがポリ塩化ビニルからなることにより、外部の温度変化に起因してベースタイルの温度が上昇した際にもベースタイルが優れた耐熱性を発揮して熱膨張を回避するため、隣接する相互間に隙間を設けることなく設置されたベースタイルに熱膨張が生じた場合に発生しがちなベースタイル相互間における押し合いを回避して、ベースタイルの剥離が生じることを防止できる。
【0026】
請求項6に係る本発明の床パネルによれば、正方形状の表装タイルとこの表装タイルの裏面に貼着する矩形状のベースタイルとで構成された床パネル用タイルユニットを縦横に複数連結してなる床パネルにおいて、ベースタイルが、表装タイルの対角線寸法より長い長辺とこの長辺の半分の寸法で設定された短辺とで形成され、ベースタイルの長辺が表装タイルの対角線と平行に貼着されているとともに、目地部材が表装タイル同士の間隙に埋設されていることにより、ベースタイルを施工床面上に隙間なくベース材長辺方向およびベース材短辺方向にそれぞれ複数敷設した後、相互に隣接する表装タイルの相互間に形成される所定間隔の目地に目地部材を埋設して表装タイル同士を相互に接合するだけで床パネルの施工作業を達成するため、特段の目地形成作業を必要とすることなく迅速かつ簡便な床パネルの施工作業を達成できる。
【0027】
また、隣接する表装タイルの相互間に所定間隔の目地を確保することにより、外部の温度変化に起因して表装タイルに熱膨張が生じた場合においても、隣接する相互間に隙間を設けることなく表面材を設置する従来のタイルユニットとは異なり、本発明の床パネルでは表装タイルの熱膨張を目地に配置された弾性を有する目地部材で吸収して許容するため、熱膨張した表装タイルが隣接する相互間で押し合って表装タイルの剥離が発生する事態を回避でき、また、外部の温度変化に起因して表装タイルに熱収縮が生じた場合においても、本発明の床パネルにおけるタイルユニット相互間の接合連結は隣接する表装タイル同士の接合にそもそも依存していないため、タイルユニット相互間の安定した接合連結を確保できる。
【0028】
また、表装タイルの相互間の目地に対して斜向きの力が負荷された場合、この斜向きに負荷された力を表装タイルの対角線と同一方向となる45度の組み付け角度で貼着されたベースタイルの相互間に形成される斜めの接合線に沿った接合面で受け止めるため、トラス構造を呈してタイルユニット相互間の接合連結強度が高く、タイルユニット相互間に生じがちなずれや「矩(かね)」と称するコーナー部分からの剥がれが抑制され、床パネル用タイルユニットの摩耗損傷を大幅に防止できるとともに優れた耐久性を発揮できる。
【0029】
そして、床パネル用タイルユニットが表装タイルとベースタイルとを貼着するだけの極めて簡便なユニット形態を呈しているため、タイルユニット製造にかかる製造負担を大幅に軽減できるばかりでなく、施工時の接合連結作業において隣接する表装タイルとベースタイルとの接合面積が相互の露呈し合う接合面間で充分に確保されているため、床パネル施工後のタイルユニット相互間の接合連結強度を十分に確保でき、優れた形態安定性を発揮でき、また、床パネル用タイルユニットを構成するベースタイルが複数の隣接する表装タイルにより床パネルの表面側から覆われて表装タイルの裏面に貼着されているため、ベースタイルの浮き上がりを回避して床パネル用タイルユニットの剥がれを確実に回避できる。
【0030】
そして、床パネル施工後の状態で、隣接するベースタイル同士の接合線をベースタイルの表面に貼着された表装タイルと目地に埋設された目地部材とで被覆するため、本発明の床パネルを水回り環境において用いた場合にも、隣接するベースタイル同士の接合線から施工床面とベースタイルの裏面との間に水が入り込むことを防止して、施工床面とベースタイルとの間で剥離が生じることを回避できる。
【0031】
請求項7に係る本発明の床パネルによれば、請求項6に記載の床パネルが奏する効果に加えて、ベースタイルが、ベースタイルの長辺の中央を表装タイルの中心に一致させた状態で表装タイルの裏面に貼着していることにより、施工現場における表装タイルとベースタイルとの接合面積を施工面積の約半分程度まで許容することができるため、施工時の状況に応じた確実な接合連結を達成でき、また、床パネル用タイルユニットの梱包時に、長辺同士を相互に当接させた2つのベースタイルを2つの表装タイルで挟み込むように一対の床パネル用タイルユニットを組み合わせることで、このように相互に組み合わされた一対の床パネル用タイルユニットがタイルユニット表面側から見て突出部のない正方形の全体形状を呈するため、タイルユニット製造後の取り扱いや梱包を容易に達成でき、特に、柔軟性を有する素材でベースタイルを成形した場合、2つの表装タイルの間に挟み込まれたベースタイルが緩衝機能を発揮するため、梱包時における表装タイルの破損を抑制できる。
【0032】
請求項8に係る本発明の床パネルによれば、請求項6または請求項7に記載の床パネルが奏する効果に加えて、表装タイルが磁器からなることにより、この表装タイルが耐汚性、耐水性、防塵性を発揮するため、床パネルを耐汚性、耐水性、防塵性を要求される環境、例えば、浴室、洗面所、台所などの水回り用床パネルとして用いることができる。
【0033】
請求項9に係る本発明の床パネルによれば、請求項6または請求項7に記載の床パネルが奏する効果に加えて、表装タイルがコルク材からなることにより、この表装タイルが保温性、振動吸収性、防音性を発揮するため、床パネルを保温性、振動吸収性、防音性を要求される環境、例えば、リビング用床パネルや玄関用床パネルとして用いることができる。
【0034】
請求項10に係る本発明の床パネルによれば、請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の床パネルが奏する効果に加えて、ベースタイルがポリ塩化ビニルからなることにより、外部の温度変化に起因してベースタイルの温度が上昇した際にもベースタイルが優れた耐熱性を発揮して熱膨張を回避するため、隣接する相互間に隙間を設けることなく設置されたベースタイルに熱膨張が生じた場合に発生しがちなベースタイル相互間における押し合いを回避して、ベースタイルの剥離が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例である床パネルを上方からみた平面図。
【図2】床パネル用タイルユニットを示す斜視図。
【図3】目地に対する目地部材の組み付け状態を示す斜視図。
【図4】一対の床パネル用タイルユニットを組み合わせる前の状態を示す説明図。
【図5】一対の床パネル用タイルユニットを組み合わせた後の状態を示す説明図。
【図6】本発明の第1変形例である床パネルを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の床パネルは、正方形状の表装タイルと表装タイルの裏面に貼着する矩形状のベースタイルとで構成された床パネル用タイルユニットを縦横に複数連結してなる床パネルにおいて、ベースタイルが、表装タイルの対角線寸法より長い長辺とこの長辺の半分の寸法で設定された短辺とで形成され、ベースタイルの長辺が表装タイルの対角線と平行に貼着されているとともに、表装タイル同士を相互に接合する目地部材が表装タイル同士の間隙にされて、タイルユニット製造後の取り扱いや梱包を容易に達成するとともに、タイルユニット相互間の接合連結強度と寸法安定性が極めて高く、タイルユニット製造負担を大幅に軽減し、しかも、特段の目地形成作業を必要とすることなく均等な目地幅を有する目地を確実に形成して迅速かつ簡便な施工を達成するものであれば、その具体的な実施の形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【0037】
すなわち、本発明の床パネルにおける床パネル用タイルユニットのユニット寸法は、建築物、船舶、車両などの施工床面に対して接着剤を用いた施工床面との貼着接合に依存することなくタイルユニット相互間の接合連結により施工床面の状況に応じて自由自在に敷設できる寸法であれば如何なる寸法であっても良い。
【0038】
そして、本発明の床パネルで用いる表装タイルの具体的なタイル素材については、敷物として使用する扁平状のものであれば如何なる材質形状でもよく、例えば、磁器、コルク材、木材などであっても良く、また、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、カーボン繊維、ガラス繊維などを編成、織成してなるループパイル地やカットパイル地、スパンボンド加工、静電不織加工などしてなる不織布、フェルト、あるいは、これらをさらに立毛してなる起毛布などであっても良い。
特に、表装タイルとして磁器を採用した場合、表装タイルが耐汚染性、耐水性、防塵性を発揮するため、床パネルを耐汚染性、耐水性、防塵性を要求される環境、例えば、浴室、洗面所、台所などの水回り用床パネルとして用いることができ、また、表装タイルとしてコルク材を採用した場合、表装タイルが保温性、振動吸収性、防音性を発揮するため、床パネルを保温性、振動吸収性、防音性を要求される環境、例えば、リビング用床パネルや玄関用床パネルとして用いることができ、さらに、異なる素材から成形された2種以上の表装タイルを組み合わせて市松模様を呈する床パネルを構成しても何ら構わない。
【0039】
また、本発明の床パネルで用いるベースタイルの具体的な材質形状については、上述した表装タイルと同様に、敷物として使用するものであれば如何なる材質形状でもよいが、例えば、施工床面との関係において形態安定性、静音性、防水性などを確保するために、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの樹脂や天然ゴム、合成ゴム等からなるマット、各種の合成樹脂繊維からなる不織布を用いても良い。
【0040】
また、本発明の床パネルで用いる目地部材の具体的な素材については、隣接する表装タイルの相互間に形成された目地に配置されて表装タイル同士を相互に確実に接合するものであれば、例えば、合成樹脂、合成ゴム、シリコン、セメントなど如何なる材料を採用しても良く、また、目地部材の具体的な態様については、液体状、ゲル状、固体状を呈するものなど如何なるものであっても良く、例えば、目地部材として紐状またはロープ状を呈する固体状のものを採用した場合、このような目地部材を隣接する表装タイルの相互間に形成された目地に配置した後に目地部材に対して熱処理を行うことで簡便に目地充填作業を達成できる。
【0041】
さらに、本発明の床パネルは、タイルユニット製造時に表装タイルとベースタイルとを貼着して一体化した状態で床パネル施工時に施工床面との接着剤などを用いた貼着接合に依存することなくタイルユニット相互間の接合連結により施工床面の状況に応じて自由自在に敷設できるものであれば如何なるものであっても良く、例えば、その貼着形態については、ベースタイルの長辺が表装タイルの対角線と合致するように積層されているもの、ベースタイルの中心点が表装タイルの頂点と合致するように積層されているもの、ベースタイルの中心点が表装タイルの中心点と合致するように積層されているもの等、如何なるものであっても構わない。
【0042】
なお、本発明の床パネルを施工した際に接合連結された敷設領域の外延に生じる表装タイルもしくはベースタイルのみが張り出した部分については、張り出した部分をそのまま縁飾り部分として残存させるか、あるいは、張り出した部分を切除するか、張り出している部分に見合う表装タイルもしくはベースタイルの小片を重合積層して敷設領域を全体に亙って均一なユニット厚みになるように補修しても良い。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の一実施例である床パネル100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である床パネルを上方からみた施工途中の状態を示す平面図であり、図2は、床パネルを構成する床パネル用タイルユニットを示す斜視図であり、図3は、目地に対する目地部材の組み付け状態を示す斜視図であり、図4は、一対の床パネル用タイルユニットを組み合わせる前の状態を示す説明図であり、図5は、一対の床パネル用タイルユニットを組み合わせた後の状態を示す説明図であり、図6は、本発明の第1変形例である床パネルを示す斜視図である。
【0044】
まず、本発明の一実施例である床パネル100は、図1に示すように、磁器製で正方形状の表装タイル110とこの表装タイル110の裏面に貼着するポリ塩化ビニル製で矩形状のベースタイル120とで構成される床パネル用タイルユニット130を縦横に複数連結することで構成されている。
【0045】
ベースタイル120は、図1および図2に示すように、表装タイル110の対角線寸法より長い長辺121と、この長辺121の半分の寸法で設定された短辺122とで形成されている。
【0046】
そして、表装タイル110とベースタイル120とは、図1に示すように、ベースタイル120の長辺121と表装タイル110の一辺との間の組み付け角度を45度に設定した状態およびベースタイル120の長辺121の中央を表装タイル110の中心に一致させた状態で相互に貼着されて床パネル用タイルユニット130を構成している。
【0047】
この床パネル用タイルユニット130は、図1に示すように、ベースタイル120を隣接するベースタイル120との間で長辺121同士および短辺122同士を当接させた状態で縦横に複数敷設されて相互に連結されている。
【0048】
そして、このように床パネル用タイルユニット130を敷設することで、図1に示すように、整列配置された複数の表装タイル110の相互間には、均等な目地幅を有する目地Sが所定間隔で縦横に形成されている。
【0049】
この目地Sには、図3に示すように、合成樹脂からなり紐状を呈する目地部材140が埋設され、この目地部材140は、目地Sに配置された後に熱処理を施されることで表装タイル110同士を相互に接合するようになっている。
なお、この目地部材140の具体的な態様は、表装タイル110同士を相互に確実に接合するものであれば如何なるものであっても良く、例えば、ベースタイル120の表面上に予め固着されて目地Sを充填する短片状のものであっても何ら構わない。
【0050】
次に、床パネル用タイルユニット130の梱包方法の一例について、図4および図5に基づいて以下に説明する。
床パネル用タイルユニット130を梱包する際には、図4に示すように、長辺121同士を相互に当接させた2つのベースタイル120を2つの表装タイル110で挟み込むように一対の床パネル用タイルユニット130を組み合わせる。
【0051】
その結果、図5に示すように、相互に組み合わせられた一対の床パネル用タイルユニット130は、タイルユニット表面側から見て突出部のない正方形の全体形状を呈するため、タイルユニット製造後の取り扱いや梱包を容易に達成し、特に、本実施例のように、柔軟性を有するポリ塩化ビニルからベースタイル120を成形した場合、この2つの表装タイル110の間に挟み込まれたベースタイル120が緩衝機能を発揮して、梱包時における表装タイル110の破損を抑制するようになっている。
【0052】
また、本発明の床パネル100は、隣接する表装タイル110の相互間に所定間隔の目地Sを確保することで、外部の温度変化に起因して表装タイル110に熱膨張が生じた場合においても、表装タイル110の熱膨張を目地Sに配置された弾性を有する目地部材140で吸収して許容するとともに、外部の温度変化に起因して表装タイル110に熱収縮が生じた場合においても、本発明の床パネル100におけるタイルユニット相互間の接合連結は隣接する表装タイル110同士の接合にそもそも依存していないため、タイルユニット相互間の安定した接合連結を確保するように設計されている。
【0053】
そのため、全ての表装タイル110を同一素材の磁器で成形した本実施例以外にも、図6に示すように、表装タイル210を熱膨張率の異なる2種以上の素材、例えば、コルク材と磁器とから成形して、床パネル200全体で市松模様を呈するようにコルク材からなる表装タイル210aと磁器からなる表装タイル210bとを交互に配置した場合であっても、外部の温度変化によりタイルユニット相互間の接合連結が影響を受けることを回避でき、そして、このように表装タイル210を2種以上の素材で成形することで、床パネル200施工後のデザイン性を向上できる。
【0054】
このようにして得られた本実施例の床パネル100は、ベースタイル120が表装タイル110の対角線寸法より長い長辺121とこの長辺121の半分の寸法で設定された短辺122とで形成され、ベースタイル120の長辺121が表装タイル110の対角線と平行に貼着されているとともに、目地部材140が表装タイル110同士の間隙に埋設されている。
したがって、ベースタイル120を施工床面上に隙間なくベース材長辺方向およびベース材短辺方向にそれぞれ複数敷設した後、相互に隣接する表装タイル110の相互間に形成される所定間隔の目地Sに目地部材140を埋設して表装タイル110同士を相互に接合するだけで床パネル100の施工作業を達成するため、特段の目地形成作業を必要とすることなく迅速かつ簡便な床パネル100の施工作業を達成できる。
【0055】
また、隣接する表装タイル110の相互間に所定間隔の目地Sを確保することにより、外部の温度変化に起因して表装タイル110に熱膨張が生じた場合においても、隣接する相互間に隙間を設けることなく表面材を設置する従来のタイルユニットとは異なり、本発明の床パネル100では表装タイル110の熱膨張を目地Sに配置された弾性を有する目地部材140で吸収して許容するため、熱膨張した表装タイル110が隣接する相互間で押し合って表装タイル110の剥離が発生する事態を回避でき、また、外部の温度変化に起因して表装タイル110に熱収縮が生じた場合においても、本発明の床パネル100におけるタイルユニット相互間の接合連結は隣接する表装タイル110同士の接合にそもそも依存していないため、タイルユニット相互間の安定した接合連結を確保できる。
【0056】
また、表装タイル110の相互間の目地Sに対して斜向きの力が負荷された場合、この斜向きに負荷された力を表装タイル110の対角線と同一方向となる45度の組み付け角度で貼着されたベースタイル120の相互間に形成される斜めの接合線に沿った接合面で受け止めるため、トラス構造を呈して床パネル用タイルユニット130の相互間の接合連結強度が高く、床パネル用タイルユニット130の相互間に生じがちなずれや「矩(かね)」と称するコーナー部分からの剥がれが抑制され、床パネル用タイルユニット130の摩耗損傷を大幅に防止できるとともに優れた耐久性を発揮できる。
【0057】
そして、床パネル用タイルユニット130が表装タイル110とベースタイル120とを貼着するだけの極めて簡便なユニット形態を呈しているため、タイルユニット製造にかかる製造負担を大幅に軽減できるばかりでなく、床パネル100の施工時の接合連結作業において隣接する表装タイル110とベースタイル120との接合面積が相互の露呈し合う接合面間で充分に確保されているため、床パネル100施工後のタイルユニット相互間の接合連結強度を十分に確保でき、優れた形態安定性を発揮でき、また、床パネル用タイルユニット130を構成するベースタイル120が2枚の隣接する表装タイル110により床パネル100の表面側から覆われて表装タイル110の裏面に貼着されているため、ベースタイル120の浮き上がりを回避して床パネル用タイルユニット130の剥がれを確実に回避できる。
【0058】
そして、床パネル100の施工後の状態で、隣接するベースタイル120同士の接合線をベースタイル120の表面に貼着された表装タイル110と目地Sに埋設された目地部材140とで被覆するため、本発明の床パネル100を水回り環境において用いた場合にも、隣接するベースタイル120同士の接合線から施工床面とベースタイル120の裏面との間に水が入り込むことを防止して、施工床面とベースタイル120との間で剥離が生じることを回避できる。
【0059】
また、ベースタイル120は、ベースタイル120の長辺121の中央を表装タイル110の中心に一致させた状態で表装タイル110の裏面に貼着されている。
したがって、施工現場における表装タイル110とベースタイル120との接合面積を施工面積の約半分程度まで許容することができるため、施工時の状況に応じた確実な接合連結を達成でき、また、床パネル用タイルユニット130の梱包時に、図4および図5に示すように、長辺121同士を相互に当接させた2つのベースタイル120を2つの表装タイル110で挟み込むように一対の床パネル用タイルユニット130を組み合わせることで、このように相互に組み合わされた一対の床パネル用タイルユニット130がタイルユニット表面側から見て突出部のない正方形の全体形状を呈するため、タイルユニット製造後の取り扱いや梱包を容易に達成できる。
【0060】
また、表装タイル110が磁器からなることにより、この表装タイル110が耐汚染性、耐水性、防塵性を発揮するため、床パネル用タイルユニット130により構成される床パネル100を耐汚染性、耐水性、防塵性を要求される環境、例えば、浴室、洗面所、台所などの水回り用床パネルとして用いることができる。
【0061】
そして、ベースタイル120がポリ塩化ビニルからなることにより、外部の温度変化に起因してベースタイル120の温度が上昇した際にもベースタイル120が優れた耐熱性を発揮して熱膨張を回避するため、隣接する相互間に隙間を設けることなく設置されたベースタイル120に熱膨張が生じた場合に発生しがちなベースタイル120相互間における押し合いを回避して、ベースタイル120の剥離が生じることを防止できるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0062】
100 ・・・ 床パネル
110 ・・・ 表装タイル
120 ・・・ ベースタイル
121 ・・・ ベースタイルの長辺
122 ・・・ ベースタイルの短辺
130 ・・・ 床パネル用タイルユニット
140 ・・・ 目地部材
S ・・・ 目地


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方形状の表装タイルと該表装タイルの裏面に貼着する矩形状のベースタイルとからなる床パネル用タイルユニットにおいて、
前記ベースタイルが、前記表装タイルの対角線の寸法より長い長辺と該長辺の半分の寸法で設定された短辺とで形成され、
前記ベースタイルの長辺が、前記表装タイルの対角線と平行に貼着されていることを特徴とする床パネル用タイルユニット。
【請求項2】
前記ベースタイルが、前記ベースタイルの長辺の中央を表装タイルの中心に一致させた状態で表装タイルの裏面に貼着していることを特徴とする請求項1に記載の床パネル用タイルユニット。
【請求項3】
前記表装タイルが、磁器からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床パネル用タイルユニット。
【請求項4】
前記表装タイルが、コルク材からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床パネル用タイルユニット。
【請求項5】
前記ベースタイルが、ポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の床パネル用タイルユニット。
【請求項6】
正方形状の表装タイルと該表装タイルの裏面に貼着する矩形状のベースタイルとで構成された床パネル用タイルユニットを縦横に複数連結してなる床パネルにおいて、
前記ベースタイルが、前記表装タイルの対角線寸法より長い長辺と該長辺の半分の寸法で設定された短辺とで形成され、
前記ベースタイルの長辺が、前記表装タイルの対角線と平行に貼着されているとともに、
前記表装タイル同士を相互に接合する目地部材が、前記表装タイル同士の間隙に埋設されていることを特徴とする床パネル。
【請求項7】
前記ベースタイルが、前記ベースタイルの長辺の中央を表装タイルの中心に一致させた状態で表装タイルの裏面に貼着していることを特徴とする請求項6に記載の床パネル。
【請求項8】
前記表装タイルが、磁器からなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の床パネル。
【請求項9】
前記表装タイルが、コルク材からなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の床パネル。
【請求項10】
前記ベースタイルが、ポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の床パネル。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−270542(P2010−270542A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124905(P2009−124905)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(507292209)
【Fターム(参考)】