説明

床マット材/カーペット材

マット/カーペット(1)が、マットの上を通過する通行体と接触するための汚れ除去用の外部表面(7)を有する上層(3)と、その上層の下に配置された下層(5)とを備える。上層は、織物繊維(9、11)を含み、上層(3)から下層(5)の中に水を排出させることができる透水性を有する。下層(5)は、上層(3)から受けた水を、後の除去のために集めるように構成されており、マットの汚れ除去用の外部表面(7)に概ね平行な方向に水が通って流れることができる溝(50)を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2006年10月20日に出願された英国特許出願第GB0620907.6号、及び2007年2月2日に出願された英国特許出願第GB0702025.8号の利益を主張するものであり、これらの特許出願の開示内容のすべてが参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、床マット材/カーペット材に関し、より具体的には、建物又は他の場所の玄関における使用に好適なマット材/カーペット材に関する。
【背景技術】
【0003】
玄関マットは、歩行者が建物に入るときに歩行者の靴から埃及び水分(以下、概して「汚れ」と呼ぶ)を除去するために使用される。いくつかの場所、例えばスーパーマーケット及び空港ビルでは、玄関マットはまた、手押し車又は類似の物品の車輪から埃及び水を除去するために必要とされる。したがって、歩行者の靴から汚れを除去することについての本願における言及は、玄関マットの上を通り過ぎるすべての通行体(歩行者及び車輪)から汚れを除去することを包含すると見なされるべきである。効率的に機能する玄関マットは、必要とされる清掃の量を減じることで建物の維持管理に大いに役立ち得ることが理解される。加えて、建物の所有者/賃借者は、自身の構内の外観を向上させる玄関マットを、以前にも増して要求している。
【0004】
様々な形態の玄関マットが既知であり、それらの構成及び形成される材料に応じて、直接建物の外側又は内側に配置される。一部の玄関マットは、使い捨てとする(即ち、汚れるとはがされ、捨てられ、新たなマットが定位置に置かれる)ことが意図され、また、一部の玄関マットは半使い捨て(即ち、汚れると、多くの場合は洗浄による清掃のために除去され、次いで再利用される)である。他のマットは、より長期間にわたって定位置に置かれることが意図され、それらは、典型的には、靴から汚れを除去する上でより摩耗に強くかつより効果的であり、またマットの外観及び有効性に悪影響を受けることなく、除去した汚れを(後に建物の中に運ばれないように)閉じ込め格納する能力がより高い。このタイプのマットは、床のくぼみに設置されるか又は直接床に敷広げ式のマット(drop-down mat)として置くことができ、また埃がマットを通じて下の表面に落ち得るように構成されてもよい。このようにして、マットの表面は、最小の維持管理に基づいて清浄でかつ効果的な状態を維持するので、下の表面が清掃され得るように、定期的にマットを取り外し、丸めて片付けるだけでよく、その後にマットを交換することができる。マットによって除去され閉じ込められた水は、やがて蒸発すると予想される。
【0005】
マットは、一般に、マットの構成及びマットを形成している材料に応じて、泥落とし及び/又は拭き取り動作によって靴から汚れを除去する。泥落とし動作を提供するマットは、典型的には、例えば米国特許第4 497 858号(デュポン(Dupont)及びローラン(Laurent))、米国特許出願US 2004/0161988(ヨー(Yaw))、国際特許出願公開WO 01/60218(ミリケン・アンド・カンパニー社(Milliken & Company))、及び国際特許出願公開WO 02/15765(コンストラクション・スペシャルティーズ(英国)(Construction Specialties)社)に記載されているような、泥落とし用縁部又は突起を備える、靴と接触する上部表面を有する。靴からの泥の除去などにおいて耐久性がありかつ効果的であると判明している泥落としマットが、米国ミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム社(3M Company)から「Nomad(商標)Terra 8100」及び「Nomad(商標)Terra 9100」の商標名で入手可能である。拭き取り動作を提供するマットは、典型的には吸収性のある織物の上表面を有し、多くの場合、泥落としマットよりも見た目に美しいものであり、またマットを形成する織物繊維及び織物構造に応じた多様な特性と共に、広範囲にわたる色及びデザインで利用可能である。
【0006】
いくつかの玄関マットは、拭き取り動作と泥落とし動作との双方をもたらす作動表面を有する。例えば、米国特許第4 820 566号(ハイネ(Heine)及びサープ(Tharpe))には、拭き取り動作を提供する細繊度繊維と、泥落とし動作を提供し、更に埃の受容及び隠蔽が可能な開口構造をマット内に形成する、硬い捲縮した太繊度繊維とを備えるタフテッド織物マットについて記載されている。細かい繊維と粗い繊維とを備えるマットの例は、米国ミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム社(3M Company)から「Nomad(商標)Aqua」の商標名で入手可能なマットである。これらのマットにおいて、細かい繊維及び粗い繊維は、一次裏材にタフト化され、次いでこの一次裏材は、例えばビニール又は不織布フリースから形成された二次裏材を提供される。
【0007】
マットの表面が、異なる清掃機能を有する別個の構成要素に分割される、他の玄関マットが利用可能である。このタイプのマットの例は、米国ミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム社(3M Company)から「Nomad(商標)Optima」の商標名で入手可能な形材マットである。これらのマットは、互いに連結された複数の平行なアルミニウム形材を備え、各形材は、上述の「Nomad(商標)Aqua」マット材料の充填材を含んでいる。充填材料は、拭き取り動作及び泥落とし動作を提供し、後者は、形材の泥落とし動作によって補足される。加えて、靴のソールから除去された汚れは、充填材料によって、又はマットが設置されているくぼみの中へと形材の間に落ちることによって、マットに効率的に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,497,858号
【特許文献2】米国特許出願US 2004/0161988
【特許文献3】国際公開番号WO 01/60218
【特許文献4】国際公開番号WO 02/15765
【特許文献5】米国特許第4,820,566号
【特許文献6】米国公開特許第2006/0068157号
【特許文献7】欧州公開第0,452,529号
【特許文献8】米国特許第4,820,566号
【特許文献9】米国特許第5,055,333号
【特許文献10】米国特許第4,045,605号
【特許文献11】国際公開番号WO 95/30040
【特許文献12】国際公開番号WO 01/90471
【特許文献13】国際公開番号WO 96/35836
【特許文献14】米国特許第5,662,980
【特許文献15】米国特許第4,177,312号
【特許文献16】米国特許第4,212,692号
【特許文献17】米国特許第4,252,590号
【特許文献18】米国特許第4,342,807号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
玄関マットの性能を絶えず改善することが消費者から求められている。消費者は概して、一部の既存の玄関マットが、靴から泥を除去し得ること、使用時に外観を維持し得ること、及び清掃が容易となり得ることを理解しており、これらの特性が維持されることを望んでいる。消費者はまた、玄関マットが見た目に美しいものであること、並びに玄関マットが使用されている建物又は施設を引き立たせる広範囲のデザイン及び色で利用可能であることを絶えず期待している。しかしながら、水を保持し、「再持ち込み」として知られるもの(即ち、マット上にある通行の間に靴から除去された水が、引き続くマット上の通行の間に拾い上げられ、マットが保護することを意図された建物又は施設の中に運ばれる可能性)を排除する能力の向上を伴った、歩行者の靴から水を特に悪天候条件下で除去することに関する性能の改善を提供するマットを、消費者は現在、更に探し求めている。再持ち込みは、建物又は施設の外観を損なうだけでなく、結果として、安全上の問題を提示するほどまでに床を滑り易くすることもある。現在、この問題に直面する消費者は通常、補充するための又は飽和したマットと交換するための更なるマットの配送を手配するのに時間と金銭を費やすことを余儀なくされている。極限条件においては、玄関マットの下に永久的な排水路を設置することが検討されることさえある。本発明は、これらの問題を念頭になされたものである。
【0010】
公共交通車両(例えば電車の客車)内並びに建物内の小さな出入口広間などのいくつかの空間において、玄関マットと同じ機能を果たすカーペット材が必要とされる。したがって、マット及び/又はマット材について本願で言及することは、該当する場合、カーペット及び/又はカーペット材を包含すると見なされるべきであり、逆もまた同様である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
玄関マット材の分野以外では、過剰な水を除去する問題に対処するために、人工芝又は人工スキースロープなど、地表の下に集水/排水層を使用することが知られている。そのような集水/排水層の例を、米国公開特許第2006/0068157号及び欧州公開第0 452 529号に見出すことができる。
【0012】
本発明は、マット/カーペットの上を通過する通行体と接触するための汚れ除去用の外部表面を有する上層と、上層の下に配置された下層とを備えるマット/カーペットであって、上層が織物繊維を備え、上層が、上層から下層の中に水を排出させることができる透水性を有し、下層が、上層から受けた水を、後の除去のために集めるように構成されているマット/カーペットを提供する。
【0013】
このマット/カーペットは、マット/カーペット内に水を封じ込めるために、不透水性の基層を備えてもよい。例えば、下層は、下層内に集まった水を封じ込めるための不透水性の下部表面を有してもよい。
【0014】
本発明によるマット/カーペットの上層は、例えば、汚れ除去用の外部表面を提供する織物のパイル層を備える。下層は、マットの汚れ除去用の外部表面に概ね平行な方向に水が通って流れることができる溝を備えていてもよい。それらの溝は、例えば押出された高分子材料によって又は不織布材若しくはコイル状ウェブ材料の層によって提供されてもよい。不透水性の基層は、存在する場合、下層の下部表面上のゴム若しくはプラスチックシート又はゴム若しくはプラスチックコーティングであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
一例として、本発明に従って構成されたマット/カーペットについて、添付の図面を参照して説明する。
【図1】本発明による玄関マットの概略横断面図。
【図2】図1のマットの一構成要素の概略平面図。
【図3】図1のマットの別の構成要素の概略斜視図。
【図4】図2に示される構成要素の修正形態の概略横断面図。
【図5】本発明による別の玄関マットの概略横断面図。
【図6】図5のマットの一構成要素の概略斜視図。
【図7】図6に示される構成要素の修正形態の概略横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に概略横断面図で示される玄関マット1は、上層3及び下層5を備える。以下でより詳細に説明するように、上層3は織物の床敷物を備え、下層5は受水層である。以下でより詳細に説明するように、下層5の上部表面は、上層3の下部表面に永久的に接合されている。
【0017】
マット1の上層3の外部表面7は、マットが建物若しくは他の施設の玄関に配置されている場合に、そのマットの上を歩く歩行者の靴と接触する表面、又はマットの上を通り過ぎる手押し車若しくは類似の物体の車輪と接触する表面である。上層3は、汚れ(泥及び水)を歩行者又は車輪付きの通行体から除去すること、及びその汚れが建物の中に更に運び込まれるのを防ぐことを目的としている。
【0018】
図3に別途示される上層3は、タフテッドループパイルカーペットの形態を有し、ループタフトの一部(概略的に示し、参照符号9で表す)は、細繊度繊維(個々には図示せず)から形成され、その他(同様に、概略的に示し、参照符号11で表す)は、織地状にされた(即ち捲縮された)太繊度繊維から形成されている。ループタフト9、11は、既知の方式で一次裏材に形成され、この一次裏材に、二次裏材が続いて貼られてタフトが定位置に固定される。図1において、一次裏材及び二次裏材は、便宜上、単一の裏材層13として示される。粗い繊維及び細かい繊維のタフト9、11は、互いの間に不規則に点在されてもよく、また規則的な個別の領域に配列されて、例えばチェス盤のパターン又は交互に並ぶ縞のパターンを形成してもよい。ループタフト9、11は、典型的には9〜15mmの範囲の高さを有し、タフト9の細繊度繊維は、フィラメントごとに約15〜50の範囲の単糸デニールを有し、タフト11の太繊度繊維は、織地状にされる(texturization)前にフィラメントごとに約150〜500の範囲の単糸デニールを有する。繊維に好ましい材料はポリアミドであり、一次裏材に好ましい材料はポリエステル/ポリアミドの不織布材であり、二次裏材に好ましい材料はポリ塩化ビニル(PVC)であるが、他の好適な材料(繊維及びゴム若しくはラテックスに対するポリプロピレン、又は二次裏材に対する不織布材を含む)も使用され得る。
【0019】
図3に示されるタイプのカーペット材料及びそれらの変型が、米国登録特許第4 820 566号及び同第5 055 333号に記載されている。裏材13が不透過性である場合、裏材の全厚を通じて延びる複数の開口部15を提供するため、その裏材13は穿孔される。開口部15の目的について、以下で説明することにする。
【0020】
図2に別途示されている玄関マット1の下層5は、一連の直線状で平行で垂直な壁部17を備える、開口した三次元構造であり、この垂直な壁部17は、起伏する垂直な壁部19によって分離されている。起伏する壁部19の上縁部は、直線状の壁部17の上縁部と高さが同じであるのに対し、起伏する壁部の下縁部は、直線状の壁部の下縁部よりもわずかに上方に位置している。壁部17、19は、押出によって形成されてもよく、また好ましくは、上層3の下部表面と同じ材料(この場合はPVC)から形成されるが、他の好適な材料を使用することもできる。層5は、図1の21で表すように、非透水性の底部表面が備わっている。この場合、底部表面21は、壁部17、19と同じ材料から形成される。壁部17、19及び底部表面21に好適な別の材料には、ブチルゴム、ネオプレン[ポリクロロプレン]ゴム、ニトリル[アクリロニトリル−ブタジエン]ゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリウレタン、ポリアミド、及びポリオレフィンが挙げられる。
【0021】
下層5の直線状の壁部17の下縁部は底部表面21上に位置するが、起伏する壁部19の下縁部は、底部表面21のわずかに上方に位置しており、それによって、直線状の壁部17が、底部表面21の上で延びる一連の平行な溝50を形成することが理解されよう。
【0022】
図2に示されるタイプの構造、それらの変型形態、及びそれらの製造方法が、米国登録特許第4 631 215号に記載されている。
【0023】
玄関マット1は、上層3の下部表面を下層5の上部表面に(即ち、垂直な壁部17、19の頂部に)接合することによって組み立てられる。接合は、任意の好適な方式で、例えば接着剤を使用して達成される。好ましい接着剤はホットメルト接着剤であり、不透過性の層が2つの層3、5の間に形成されるのを回避するために下層5の不連続な場所に塗布される。
【0024】
1つの具体例において、玄関マット1の上層3は、米国ミネソタ州セントポール(St. Paul, Minnesota, USA)のスリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Nomad(商標)Aqua 8500」の商標標記で入手可能なマット材料(この裏材は、開口部15を提供するために穿孔されている)であり、下層5は、「3M(商標)Nomad(商標)Terra 6250」の商標標記でスリーエム社から入手可能なマット材料である。各層は、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Scotch−Weld(商標)Polyurethane Reactive Adhesive TE100」の商標標記で入手可能なポリウレタンホットメルト接着剤を使用して互いに接合される。接着剤は、層5の頂部上の不連続な場所に、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Jet−Weld(商標)Adhesive Applicator」の商標で入手可能なアプリケータガンを使用して塗布される。
【0025】
マット1は、敷広げ式のマット(drop-down mat)として使用されることを目的としたものである。上層3は、マットの上を通過する歩行者の靴などから泥と水との双方を除去するように機能する。より具体的には、層3のタフト11の粗い繊維は泥落とし動作によって泥を除去し、タフト9の細かい繊維は拭き取り動作によって水を除去する。除去された泥はタフトの中に落ち、ここで隠されて保持され、それによって、玄関マット1の上部表面が概ね清浄な外観を示すこと、及び泥がその後に拾い上げられ、建物の中に持ち込まれないことが確実となる。通常の天候条件下では、除去された水は、タフト9の細かい繊維によって閉じ込められ、後に蒸発する。極端に多湿な天候条件下では、上層3が飽和すると、過剰な水は、裏材13の開口部15を通じて排出され、下層5の中へ移り、底部表面21上に集められる。底部表面21上に下層5の垂直な壁部17によって定められる溝50により、水は1つの領域に集積せず、表面21の全体に流れ広がり、それによって、周囲条件で可能となる場合には、後に水を蒸発で除去することが促進される。あるいは、以下で説明するように、溝50は、望ましい場合には水を積極的に除去するのを容易にすることができる。
【0026】
玄関マット31の別の形態が、図5に概略断面図で示される。このマットはまた、受水する下層35に接合された織物マット材の上層33を備える。
【0027】
マット31の上層33は、タフト37の繊維がすべて1つのタイプでできているタフテッドカットパイルカーペットである。タフト37は、既知の方式で一次裏材内に形成され、この一次裏材に二次裏材が続いて貼られて、タフトが定位置に固定される。図5において、一次裏材及び二次裏材は、便宜上、単一の裏材層39として示される。タフト37は、典型的には、約5mmの高さを有し、パイルの重量は、典型的には、550〜600g/mの範囲にある。タフト37の繊維に好ましい材料はポリプロピレンであり、一次裏材に好ましい材料はポリエステルであり、二次裏材に好ましい材料はポリ塩化ビニル(PVC)であるが、他の好適な材料(天然材料、又は繊維用の他の高分子材料、及び二次裏材用のゴムを含む)も使用され得る。タフト37に使用される繊維は、すべてが同じタイプである必要はないが、例えば、粗い繊維と細かい繊維との混合物を含むことができる。このタイプのカットパイルカーペット材料は周知であり、広く利用可能である。カーペットの裏材39が不透過性である場合、裏材39は穿孔され、材料の全厚を通じて延びる複数の開口部41が形成される。
【0028】
図6に別途示されている玄関マット31の下層35は、コイル状の連続した高分子フィラメント43を備える、開口した三次元構造であり、この高分子フィラメント43は、無秩序な方式で互いにループをなし重なり合い、接触点で互いに接合される。壁部35は、押出された構成要素であってもよく、また好ましくは、上層33の裏材39の下部表面と同じ材料(この場合はPVC)から形成されるが、他の好適な材料も使用され得る。
【0029】
図6に示されるタイプの構造、及びそれらの製造方法が、米国登録特許第3 837 988号に記載されている。
【0030】
図5の玄関マット31は、上層33の裏材39を下層35の上部表面に(即ち、フィラメントループの一部の頂部に)接合することによって組み立てられる。接合は、任意の好適な方式で、例えば接着剤を使用して達成される。好ましい接着剤はホットメルト接着剤であり、不透過性の層が2つの層33、35の間に形成されるのを回避するために下層35上の不連続な場所に塗布される。
【0031】
1つの具体例において、玄関マット31の上層33は、オランダ国ジェネムイデン(Genemuiden)のリノス社(Rinos)から「Duet」の商標標記で入手可能なマット材料であり、下層5は、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Nomad(商標)Terra 8100」の商標標記で入手可能なマット材料である。各層は、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Scotch−Weld(商標)Polyurethane Reactive Adhesive TE100」の商標標記で入手可能なポリウレタンホットメルト接着剤を使用して互いに接合される。接着剤は、層5の頂部上の不連続な場所に、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Jet−Weld(商標)Adhesive Applicator」の商標で入手可能なアプリケータガンを使用して塗布される。
【0032】
玄関マット31は、くぼみに置いて使用することを目的とされる。上層33は、マットの上を通過する歩行者の靴などから泥と水の双方を除去するように機能する。除去された泥及び水は、タフト37によって保持され、通常の天候条件下では、その除去された水は、後に蒸発する。極端に多湿な天候条件下では、上層33が飽和すると、過剰な水は、裏材39内の開口部41を通じて排出され、下層35の中へ移り、くぼみの底部に集められ、封じ込められる。下層35の開口した構造は、排出された水を1つの領域に集積するのではなく、くぼみ全体に広げる溝を提供し、それによって、周囲条件で可能となる場合には、後に水を蒸発で除去することが促進される。あるいは、以下で説明するように、下層35によって提供される溝は、望ましい場合に水を積極的に除去するのを容易にすることができる。
【0033】
マット1、31の上層3、33は、別の玄関マットを提供するために交換することができ、図1の上層3は図5の下層35と組み合わされ、図5の上層33は図1の下層5と組み合わされる。また、図1の下層5の閉鎖した底部表面21は、玄関マットがくぼみ内で使用するためのものである場合、(図4に示されるように)省略され得ること、及び閉鎖した底部表面45が、敷広げ式のマットを提供するために、(図7に示されるように)図5の下層35に加えられ得ることが理解されよう。
【0034】
更なる別法として、不透水性の基層を二次裏材の下部表面上に提供することによって、敷広げ式のマットを形成するために、透水性の一次裏材とフリースの二次裏材とを備えるタイプのタフテッドパイルカーペット材料が使用され得る。この状況において、「フリース」という用語は、カーペットの二次裏材としての使用に好適であることが知られているタイプの不織布材を意味し、フェルト材料を包含する。そのような構造において、タフテッドパイル及び一次裏材はマットの上層を構成し、フリースの二次裏材は下層を構成する。
【0035】
この構造のマットの1つの具体例は、スリーエム社(3M Company)から「3M Nomad(商標)Aqua(商標)9500」の商標標記で入手可能なマット材料を備え、そのマット材料の下部表面に、3kg/mの重量を有するPVCシートが接合される。各層は、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Scotch−Weld(商標)Polyurethane Reactive Adhesive TE100」の商標標記で入手可能なポリウレタンホットメルト接着剤を使用して互いに接合される。接着剤は、PVCシートの層の頂部上の不連続な場所に、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Jet−Weld(商標)Adhesive Applicator」の商標で入手可能なアプリケータガンを使用して塗布される。また、PVCが依然として高温でかつ粘着性のある間に、PVCの押出された層にマット材料を積層することも可能であり、それによって接着剤の必要性が排除される。
【0036】
別法として、この構造のマットの場合、上層を形成するタフテッドパイル及び一次裏材は、いわゆる「集束剤(greige good)」の形態で別々に提供され、選択されたフリースの層に接合され得る。不透水性の基層は、フリースの層が上層に接合される前又は接合された後に、フリースの層の下部表面に貼り付けられてもよい。フリースの層に使用される不織布ウェブは、様々な材料、例えばポリエステル若しくはポリアミド又はそれら双方の混合物から構成されることができ、これらの材料は、再利用されたタイプのものであってもよい。不織布ウェブは、取り扱い及び製造が容易な形態、例えば、ニードルパンチ法、水流交絡法、縫製法、又は熱溶着法によって安定化される形態にあるべきである。典型的なウェブの厚さは、1〜10mmの範囲にあり、典型的な坪量は、100〜1000g/mの範囲にある。1つの好適なウェブは、スパンボンドされ、ニードルパンチされたウェブであって、ポリエステル繊維で形成され、3.2mmの厚さ及び300g/mの坪量を有し、イタリア国カルミニャーノ(Carmignano)(PD)のORVマニュファクチャリング社(ORV Manufacturing)(ペルッツォ・グループ(Peruzzo group))からVALBOND GEO GAT VRE/5172の商標名で市販されているものである。
【0037】
本発明による玄関マットの上層と下層との双方に関して、他の構造が可能であることが理解されよう。
【0038】
上層に関しては、要求される汚れ除去特性を提供する任意の織物の床敷物(又は類似)の材料が、マットの選択された下層に固着されることが可能な形態にある場合には、検討され得る。その材料は、タフト化された構造をなす必要はないが、例えば、ニードルパンチされた、フロック加工された、又は織られた構造をなすことができる。材料がパイル層を備えている場合、パイル繊維は、天然と合成との双方の任意の好適な材料のもので、かつ任意の好適なデニール及び長さのものであることができ、必要に応じて織地状にされていても別の方法で処理されていてもよい。天然又は合成材料から形成された織布及び不織布の裏材を含めて、織物の床敷物の材料に好適であることが知られている任意の裏材料が、本質的に透水性であるか又は水を通すように何らかの方式で穿孔されている場合には、使用され得る。上述のように、タフテッドパイル材料用の裏材は、典型的には、一次裏材と二次裏材との双方を備えるが、二次裏材は、織物が二次裏材なしで取り扱われるのに十分に安定している場合には、(既に示したように)省くことができる。
【0039】
一般的に、織物の床敷物の材料を本発明によるマットの上層に使用することで、マットの外観及びマットの特性を広範に選択することができる。例えば、パイル繊維及びカーペット構造の選択、並びに印刷及びエンボス加工などの仕上げ作業の利用により、広範囲におよぶ色及び表面パターンの利用を可能にすることができる。同様に、パイル繊維及びカーペット構造の選択、並びに性能を向上させるための表面仕上げの利用により、広範囲におよぶ機能特性の利用を可能にすることができる。受水する下層が存在することは、靴のソールから除去された水を保持する上層の能力が、マットの性能に対してさほど重要でなくなることを意味し、これによって更に、上層の外観、及びマットを構成する材料の選択範囲が増すことになる。
【0040】
本発明によるマットの上層に選択され得る織物の床敷物の例が、米国登録特許4 045 605(ブリーンズ(Breens)ら)、国際特許出願WO 95/30040(クリーンテックス・インダストリ社(Kleentex Industries, Inc.)、国際特許出願WO 01/90471(ウォーク・オフ・マッツ社(Walk Off Mats Limited)、国際特許出願WO 96/35836(ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング社(Minnesota Mining and Manufacturing Company))、及び米国登録特許5 662 980(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー社(E.I Du Pont de Nemours and Company))に記載されている。
【0041】
本発明による玄関マットの下層に関しては、要求される受水特性を提供する任意のウェブ材料が、マットの選択された上層に固着されることが可能な形態にある場合には、検討され得る。いくつかの状況においては、下層は単純に、上層から下層に排出された水を集めることが可能であればそれで十分となり得るが、他の状況においては、下層は、集められた水をマットの1つ以上の側部に導いて、その水が除去され得るように構成されることが望ましい場合がある。また、下層の他の特性、例えば弾力性が、玄関マットの全体的な特性に影響を及ぼす場合がある。必要に応じて、集水容量を増加させるために、複数のそのような下層が設けられてもよい。下層は押出された構造であってもよいが、例えば、織られた、成型された、エンボス加工された、又は波形化された構造を含めた別の形態も可能である。
【0042】
本発明によるマットの下層に選択され得る別のウェブ材料の例が、米国登録特許第4 177 312号、同第4 212 692号、同第4 252 590号、及び同第4 342 807号(アクゾナ(Akzona))に記載されている。別の材料の具体例が、フランス国セントデニスラプレーヌ(St. Denis la Plaine)93128のコルボンド・ジオシンセティクス社(Colbond Geosynthetics Company)から「ENAMAT」及び「ENKADRAIN」の商標名で入手可能な材料である。
【0043】
本発明による敷広げ式マットの不透水性の底部表面に好適な別の材料には、不透水性フォーム(例えば、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)フォーム、及び耐久性のある合成カーペット下敷き材料(例えば、スリーエム社(3M Company)から「3M(商標)Nomad(商標)Recessed Well Underlay」の商標標記で5mm及び10mmの厚さで市販されている、ポリウレタンと凝集接合された再利用ゴム粒体でできた下敷き材料)が挙げられる。底部表面は、その性質に応じて、接着剤によって若しくは再閉鎖可能な締結具によって上方の層に取り付けられてもよく、又はコーティング若しくは吹付け技法によって塗布されてもよい。敷広げ式マットの場合、底部表面の床と接触する表面は、有利には、滑り防止特性を有する。
【0044】
また、本発明による上層と下層とを互いに固着する方法が、その方法によって水が上層から下層の中へ排出されることが可能になる場合には、使用され得る。例えば、透過性接着ウェブが、フィルム又は不織布材の形態で、上層と下層との間に、それらを互いに接合するために配置され得る。別法として、層内に存在する材料によっては、単純に熱を加えて軟化させることで各層を互いに接合できることがある。更なる別法として(例えば、上層と下層とがいずれも織物の構造体である場合)、2つの層を一緒に形成できることがある。
【0045】
更なる別法として、例えば、フックループ式締結システムなど、ある形態の再閉鎖可能な締結システムを使用して、又はフック若しくは類似の締結具を下層にのみ設けることによって、上層が下層に剥離可能に固着されてもよい。その場合、上層は、清掃の目的で(例えば洗浄のために)、又は単にマットの外観を変更するために、別の上層と交換され得る。更なる別法として、各層が互いに対して移動するのを防止するのに十分な摩擦が各層の間に存在する場合には、上層を単純に下層の頂部に置くこともできる。
【0046】
本発明による敷広げ式マットは、必要に応じて、マットの下層の受水機能を考慮した任意の好適なタイプの縁取り材を設けることができる。縁取り材は、下層に集まる水を封じ込める働きをしてもよい。好適なマット縁取り材には、3M(商標)Nomad(商標)Terraマット材及び3M(商標)Nomad(商標)Aquaマット材と共に使用するための、スリーエム社(3M Company)から入手可能な縁取り材が挙げられる。場合によっては、縁取り材は単独で、マットの上層を下層に固着させる働きをすることができる。
【0047】
上で示したように、本発明によるマットの下層に受けられた水は、後の除去のために封じ込められるが、これはマットが床のくぼみに設置されるため、又はマットが不透過性の下部表面及び該当する場合には好適な縁取り材が備わっているためのいずれかである。水の量が多くない場合、水は天候条件がよくなると単純に蒸発し得るが、このことは、水がマットの全範囲にわたって広がるのを可能にする溝を下層に設けることで助長される。敷広げ式マットの場合、蒸発は、ある形態の換気機構を縁取り材に設けることで助長されてもよい。
【0048】
しかしながら、必要に応じて、水は下層から計画的に除去され得る。これは、マットの構造に応じて、複数の方式で達成され得る。例えば、縁取り材を有するマットの場合、吸引の適用によって水を除去することが可能となるように縁取り材を設計することができる。上層が取り外し可能なマットの場合、下層へ容易にアクセスでき、吸引によって又は他の任意の好適な方式で水を除去することが可能となる。あるいは、水の除去に好適なタイプの広く利用可能な真空掃除機を使用して、水をマットの頂部表面から除去してもよい。所望により、吸収性粒子材料を下層に設け、飽和したときに好適な方式で除去することもできる。上述のように下層が不織布材である場合、水の除去は、上層の裏材が本質的に透水性である場合でも、上層の裏材と不織布の下層との双方を貫く開口部をパンチすることによって、促進され得る。
【0049】
敷広げ式マットとしての使用に好適である(即ち、不透水性の下層を有する)と上述されたいずれの構造の材料も、例えば建物又は公共交通車両(例えば電車の客車)内の出入口広間などの空間において、カーペット材として使用され得ることは理解されよう。カーペット材は、必要であれば、床一面に設けられ、機械締結具又は接着締結具で定位置に取り外し可能に固着され得る。
【0050】
図面を参照して上述した構造のいずれの材料も、好適である場合には、マット/カーペット内の充填材料として使用することもでき、マット/カーペットの表面積のうちの一部のみをなす。例えば、その材料は、形材マットの形材において又は泥落としマットの特別に適合された範囲において使用され得る。形材マットの一例が、スリーエム社(3M Company)から「Nomad(商標)Optima」の商標名で入手可能な上述の製品である。織物の充填剤用の特別に適合された範囲を有する泥落としマットの例が、同様にスリーエム社(3M Company)から入手可能な、Nomad 8900の「泥落とし織物(scraping and textile)」タイルを使用して形成されるマットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーペットの上を通過する通行体と接触するための汚れ除去用の外部表面を有する上層と、前記上層の下に配置され、前記上層に固着される、同一の広がりを持つ下層とを備えるカーペットであって、前記上層が、織物繊維を含み、
前記上層が透水性であり、それによって、前記上層から前記下層の中に水を排出させることができ、前記下層が、前記上層から受けた水を、後の除去のために集めるように構成されているカーペット。
【請求項2】
前記上層が、汚れ除去用の外部表面を提供する織物のパイル層を備える、請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記パイルが、カットパイル繊維及び/又はループパイル繊維を備える、請求項2に記載のカーペット。
【請求項4】
前記パイル層がタフト化された層である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項5】
前記パイル層が、不透過性材料を含む裏材を有し、前記裏材が、前記裏材を貫いて水が通ることができるように穿孔されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項6】
前記下層が、前記カーペットの前記汚れ除去用の外部表面に概ね平行な方向に水が通って流れることができる溝を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項7】
前記溝が、押出された高分子材料によって定められている、請求項6に記載のカーペット。
【請求項8】
前記溝が、不織布材又はコイル状ウェブ材料の層によって提供されている、請求項6に記載のカーペット。
【請求項9】
前記下層によって集められた水を封じ込めるための、前記下層の下に配置された基層を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項10】
前記基層が不透水性である、請求項9に記載のカーペット。
【請求項11】
前記下層が、前記下層によって集められた水を封じ込めるための不透水性の下部表面を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項12】
前記下層によって集められた水を封じ込めるための、前記カーペットの外周に縁取り材を備える、請求項11に記載のカーペット。
【請求項13】
前記カーペットが、前記下層によって集められた水を封じ込めるための、床内のくぼみに配置される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項14】
前記上層が、前記下層に取り外し可能に固着される、請求項1〜13のいずれか一項に記載のカーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−507406(P2010−507406A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533565(P2009−533565)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/081926
【国際公開番号】WO2008/051839
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】