説明

床埋設構造物の目地形成材および床埋設構造体

【課題】側溝目地部における床仕上げ材の剥離を防ぐ。
【解決手段】周囲をコンクリートによって埋められ上面が床面と面一になるように床に埋設される側溝とコンクリート上面に配される床仕上げ材との境界部である目地部を形成する目地材であって、側溝の上面周縁部を覆うキャップ部と、キャップ部と分離可能に一体化され、コンクリート打設時に生コンを堰き止めて床仕上げ材を側溝とコンクリートとの間に流入させるための空間を側溝の上面周縁部の外側に形成する堰堤部とを備え、堰堤部は、前記空間内に流入する床仕上げ材と絡み合って床仕上げ材を引き剥がす力に抵抗可能とするアンカー部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房施設などの床面に埋設される側溝や排水枡周囲の目地構造に係り、特に、床表面の仕上げ材が剥離しにくい目地構造を形成するための型枠材に関する。
【背景技術】
【0002】
業務厨房や給食施設、食品工場等の業務施設では、清浄な室内環境を保つ衛生管理が求められ、多量の湯水を使用して頻繁に清掃が行われる。清掃に使用した排水は、施設の床に埋設された排水溝(側溝)に集められ、排水枡を経て下水道に排出される。
【0003】
図13から図15は、このような側溝の一例を示すものである。これら図に示すように一般に側溝は、上面が開放された溝状の排水路である側溝本体6を上面開口7が床面4aと面一となるように床に埋設し、床面4aに放出された排水が上面開口7から側溝本体6の内部に流れ込み、側溝本体6の端部において同様に床に埋設された排水枡10(図15参照)を通じて下水道に流れ落ちるようになされている。側溝本体6は、躯体コンクリート1内において、外面に設置された固定金具5を介して固定用の配筋3に支持されるとともに、周囲を床構成基材2(例えばシンダーコンクリート)により埋められる。また、側溝周囲の床表面4aは床仕上げ材4により防水仕上げされ、これにより床面4aに放出された排水は床の内部に染み込むことなく側溝本体6へ流れ込み、排水枡10に導かれて排出される。側溝本体6としては、衛生的な観点ならびに耐薬品性・耐蝕性の観点から近年、ステンレス製のものが用いられることが多い。
【0004】
また、このような側溝の施工においては、シンダーコンクリート2の打設前に例えば図11に示すような断面逆三角形状の面木(目地形成材)9を側溝本体6の上面周縁部の外側に設置しておき、コンクリート2を充填した後にこの面木9の下側斜面9aに鏝(図示せず)を突き当てるようにしてコンクリート2の表面2aを平らに均す作業を行う。そして、コンクリート2が固まったら面木9を取り外し(図11に符号90で示す)、図12に示すようにコンクリート表面2aに床の最終仕上げ面4aを形成する床仕上げ材4を塗布する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の側溝構造では、第一に、床仕上げ材4とステンレス製の側溝本体6あるいはコンクリート2との境界部である目地部8に隙間が生じたり、床仕上げ材4が剥離する問題が生じることが度々あった。このような目地部8の劣化は、見た目が悪いだけでなく当該構造物の耐久性ならびに衛生面からも好ましくない。目地の隙間から排水がしみ込んでコンクリートを酸化させ、また、排水に含まれる食品残渣等が目地間隙に入り込んで雑菌を繁殖させるおそれがあるからである。
【0006】
また、第二の問題として従来の施工法では、側溝本体6を運搬しあるいは設置するときに目地縁部が傷つけられたり汚れが付着することがあり、このため現場に設置した後に再仕上げが必要となることが少なからずあった。
【0007】
さらに第三の問題として従来の面木9は、釘打ち等によって側溝本体6に固定されていたため、コンクリート打設時の生コンの流入圧力によって面木9がずれたり外れるなどのトラブルが発生することがあった。また一方で、コンクリート打設後には面木9の取外しに手間を要した。
【0008】
さらに第四の問題として従来の施工は、作業性および仕上がり精度の点で十分なものとは言えない面がある。前記施工法(図11)においてコンクリート表面2aを均す作業は、面木9を使用するにしてもコンクリート表面2aを仕上げるのにその高さレベルを目測や勘に頼らざるを得ず、作業スタッフの経験や技能によって仕上がり精度にばらつきが生じやすいからである。
【0009】
さらに第五の問題として従来の目地構造、特に、図11〜15に示すような側溝本体6の上面周縁部が外方へ張り出すフランジ状に形成されその先端がさらに下方へ折り曲げられて立ち下がるような構造を有する側溝にあっては、当該立下り部11bによって邪魔されてフランジ内部(フランジ部の水平部11aの下面)にコンクリート2が廻り込みにくく、コンクリート2をフランジ内に満遍なく充填することが難しい。このため、フランジ内(目地裏部)に空隙が残って十分な強度が得られず、また空隙のために歩行時に異音が発生するなどの問題が生じることがあった。
【0010】
他方、このような不都合を解消するため、施工時にフランジ内にモルタルを予め充填したり、前記立下り部11bに複数の孔を開けておき、これらの孔を通じて打設コンクリート2をフランジ内に流入させる方法も考えられる。しかしながら、これらの方法では、施工が複雑化してコストが嵩む難があり、打設コンクリート2がフランジ内に確実に充填されているか確認することが出来ない不安も残る。
【0011】
したがって、本発明の第一の目的は、床仕上げ材の剥離が生じにくい床埋設構造物の目地部を形成することにある。また本発明の第二の目的は、床埋設構造物を運搬しあるいは設置するときに目地縁部(上面周縁部)を傷や汚れから保護する点にある。また本発明の第三の目的は、コンクリートの流入圧力によって外れることがなく同時に取外し容易な床埋設構造物目地部の養生保護手段を提供することにある。また本発明の第四の目的は、目地施工の作業性と仕上がりを良好にすることにある。さらに本発明の第五の目的は、床埋設構造物の上面周縁部をより確実に支持できる目地構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る第一の目地形成材は、周囲を床構成基材によって埋められ上面が床面と略面一になるように床に埋設される床埋設構造物と前記床構成基材の上面に配されて床面を形成する床仕上げ材との境界部である目地部を形成するための目地形成材であって、前記床埋設構造物の上面周縁部を覆う養生キャップ部と、この養生キャップ部と分離可能に一体化され、前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて当該床構成基材の上面に配される前記床仕上げ材を前記床埋設構造物と前記床構成基材との間に流入させるための空間を前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に形成する堰堤部とを備え、前記堰堤部は、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に流入する床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を有する。
【0013】
本発明の目地形成材は、床埋設構造物と床仕上げ材との境界部である目地部を形成するものである。床埋設構造物は、典型的には床面上に流される流体(例えば水や湯)を流入させる水路や枡、槽などである。床埋設構造物のより具体的な例として、側溝、排水溝、マンホール、排水枡が挙げられる。かかる床埋設構造物は、周囲を床構成基材によって埋められ、さらに床構成基材の上に床仕上げ材が配されることにより、上面が床面(床仕上げ材の表面)と略面一になるように床に埋設される。
【0014】
床埋設構造物の周囲に配する上記床構成基材は、典型的にはコンクリート(例えばシンダーコンクリート)であり、当該床構成基材により床埋設構造物を埋設固定する。なお、以下の説明では、床構成基材をコンクリートとして適宜説明するが、本発明における床構成基材は必ずしもコンクリートに限られるものではなく、流動性を有しかつ床埋設構造物を埋設できるものであれば他の材料の使用を本発明は排除するものではない。
【0015】
床構成基材の上に配する床仕上げ材は、典型的には、防水機能を有する塗料である。しかしながら、施工時に流動性を有し施工後に固まって床表面を形成できる材料であれば特に限定されるものではなく、各種の仕上げ材料を使用することが出来る。
【0016】
一方、本発明に係る目地形成材は、養生キャップ部と堰堤部とを備える。養生キャップ部は、床埋設構造物の上面周縁部に被せてこれ(上面周縁部)と嵌合することにより、目地形成材を床埋設構造物に対して係止する機能を持たせることが出来る。またこの養生キャップ部は、床埋設構造物の上面周縁部を覆ってこれを保護する。したがって、床埋設構造物の搬送中や据付作業時、埋設施工時等に当該上面周縁部が傷つけられたり汚れが付着することを防ぐことが出来る(後述の第二および第三の目地形成材においても同様)。
【0017】
さらに、この養生キャップ部は、第一の目地形成材では後に述べる堰提部と分離可能に一体化してある。したがって、コンクリート打設後には、堰堤部から分離(例えば破断)することにより、床埋設構造物の上面周縁部に被せてあった養生キャップ部を容易に取り除くことが可能である。養生キャップ部と堰堤部とを分離可能に形成するには、例えば、両者を繋ぐ連結部として他の部分より肉厚が小さい狭窄部を設ければ良い(養生キャップ部と堰堤部の連結部を肉薄とする)。
【0018】
堰堤部は、床構成基材(コンクリート)の打設時に床埋設構造物の上面周縁部の外側において当該床構成基材(生コン)を堰き止め、打設されたコンクリートと床埋設構造物との間に空間を形成する。この空間は、後にコンクリート上に床仕上げ材を配するときにこれを流入させるためのものである。堰堤部はさらに、当該空間に流入する床仕上げ材と絡み合って床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を有する。
【0019】
従来の側溝では、前述のように目地部に隙間が生じたり床仕上げ材が剥離する問題が生じていたが、このような目地部の劣化の原因は、床仕上げ材とステンレス製の側溝本体あるいはコンクリートとの境界部は、異種材料の接合点であってこれらの材料同士はなじみが良好でないことによるものと考えられる。このため外部からの衝撃や振動により、あるいは床に熱湯や冷水が流されてこれら熱膨張率が異なる材料同士が伸縮膨張を繰り返すことにより容易に接合面が剥離してしまう。
【0020】
これに対して、本発明の目地形成材により目地部を形成すれば、上記アンカー部によって床仕上げ材が目地形成材の堰堤部に絡み合った状態でコンクリート上に配置され、床仕上げ材が当該堰堤部によって保持されるから、床仕上げ材が剥離しにくい目地構造を得ることが出来る。
【0021】
アンカー部は、例えば、凹凸(窪みや穴、溝などの凹部、又は突起や突条などの凸部、若しくはこれらの組み合わせ)により構成することが出来る。なお、本出願では、凹凸と言った場合には、凹部と凸部の両方を備えたもののみを言うものではなく、凹部のみ又は凸部のみを備えるものをも含む(後述の第二以降の目地形成材についても同様)。凹部のみ或いは凸部のみによっても床仕上げ材を保持して剥離を防ぐことは可能だからである。アンカー部は、要は、床構成基材に上に配されて硬化した床仕上げ材が引き剥がされるような力がかかったときに引っ掛かってこれを阻止する形状のものであれば良い。
【0022】
床仕上げ材は、施工時には流動性を有して前記コンクリートと床埋設構造物との間の空間に流入する。そして当該空間に流入した床仕上げ材は、上記アンカー部(例えば凹部)に浸入し、あるいは上記アンカー部(凸部)を覆い、その後硬化して堰堤部と絡み合った状態で床構成基材上に配されることとなる。これにより、床仕上げ材が剥離し難くなる。
【0023】
本発明に係る第二の目地形成材は、前記第一の目地形成材と同様に、周囲を床構成基材によって埋められ上面が床面と略面一になるように床に埋設される床埋設構造物と前記床構成基材の上面に配されて床面を形成する床仕上げ材との境界部である目地部を形成するための目地形成材であり、前記床埋設構造物の上面周縁部を覆う養生キャップ部と、前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて当該床構成基材の上面に配される前記床仕上げ材を前記床埋設構造物と前記床構成基材との間に流入させるための空間を前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に形成する堰堤部とを備える。
【0024】
一方、この第二の目地形成材は、床仕上げ材の剥離を防ぐアンカー部を堰堤部に設けた前記第一の目地形成材と異なり、堰堤部が、床埋設構造物の上面周縁部の外側に流入する床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抵抗可能とするアンカー部を床構成基材に形成するための凹凸(窪みや穴、溝などの凹部、又は突起や突条などの凸部、若しくはこれらの組み合わせ)を有する。
【0025】
したがって第二の目地形成材では、床構成基材を打設すると、堰堤部に備えた上記凹凸によって床構成基材にアンカー部が形成される。そして、このアンカー部に床仕上げ材が浸入し、あるいはアンカー部(凸部)を覆い、その後硬化して堰堤部と絡み合った状態で床構成基材上に床仕上げ材が配されることとなる。これにより、前記第一の目地形成材と同様に、床仕上げ材が剥離しにくい目地構造を得ることが出来る。
【0026】
養生キャップ部の機能は前記第一の目地形成材と同様であるが、この第二の目地形成材では養生キャップ部を堰堤部と分離可能に構成する必要はなく、床構成基材の打設後(床仕上げ材の施工時)には、養生キャップ部と堰堤部は一緒に床埋設構造物から除去される。
【0027】
なお、前記第一の目地形成材では、アンカー部を堰堤部の床埋設構造物側(床埋設構造物に面する側)に備えるが、第二の目地形成材では床構成基材にアンカー部を形成するため、上記凹凸を堰堤部の床構成基材側(床埋設構造物とは反対側の面)に設けておく。また、前記第一の目地形成材においても、第二の目地形成材と同様の凹凸を床構成基材側(床構成基材との接合面)にも備えておいても良い。堰堤部と床構成基材との結合力を高めるためであり、このような凹凸を設ければ、床仕上げ材と堰堤部間の剥離のみならず堰堤部が床構成基材から剥がれること(床仕上げ材が堰堤部ごとコンクリートから剥がれること)を防ぐことができ、床仕上げ材の剥離をより一層確実に防止することが出来る。
【0028】
本発明に係る第三の目地形成材は、周囲を床構成基材によって埋められ上面が床面と略面一になるように床に埋設される床埋設構造物と前記床構成基材の上面に配されて床面を形成する床仕上げ材との境界部である目地部を形成するための目地形成材であって、前記床埋設構造物の上面周縁部を覆う養生キャップ部と、前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて当該床構成基材の上面に配される前記床仕上げ材を前記床埋設構造物の上面周縁部の下面にまで流入させるための空間を前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に形成する堰堤部とを備える。
【0029】
本発明の第三の目地形成材は、外方へ張り出すフランジ状の上面周縁部(以下単に、フランジ部と言うことがある)を有する床埋設構造物に好ましく適用することが出来るもので、堰堤部が床埋設構造物の周囲に配される床構成基材を堰き止め、床埋設構造物の上面周縁部の外側に空間を形成する。この空間は、床仕上げ材をフランジ部(床埋設構造物の上面周縁部)の下面にまで流入させるためのもので、床構成基材の打設後この上に配する床仕上げ材は、当該空間に流入し、フランジ部の下面にまで潜り込むように配されることとなる。そしてこのような目地構造によれば、床仕上げ材の端部が床埋設構造物自体(フランジ部)によって押さえられるから、当該床仕上げ材の剥離を防ぐことが出来る。
【0030】
なお、本目地形成材において養生キャップ部は、前記第一及び第二の目地形成材における養生キャップ部と同様の機能を果たす。また堰堤部は、前記第二の目地形成材と同様に養生キャップ部と一体に構成しておけば良く、床構成基材の打設後(床仕上げ材の施工時)には養生キャップ部と一緒に床埋設構造物から取り除かれる。
【0031】
前記第一から第三の目地形成材ならびに後に述べる第四の目地形成材では、床構成基材の打設時に当該床構成基材の天面を平坦に均す鏝を載せ当て案内することを可能とするガイド面を堰堤部に備えても良い。
【0032】
このようなガイド面を目地形成材に備えれば、当該ガイド面を基準として(当該ガイド面に面一となるように合わせて)床構成基材の上面を例えば鏝を使用して仕上げることが出来るから、施工作業者の経験や技能に左右されず、床仕上げ材の下地となる床構成基材の上面を効率よく正確に仕上げることが出来る。
【0033】
なお、このようなガイド面を備える目地形成材のより具体的な構成例を述べれば、次のとおりである。例えば、堰堤部の上面を平坦な面としてこれを上記ガイド面とし、このガイド面(堰堤部の上面)の内側(以下、床埋設構造物の内部に近い側を「内側」、床埋設構造物から見て外方ないし周囲側を「外側」と称する)の端縁部に養生キャップ部が接続され当該内側端部から立ち上がって床埋設構造物の上面周縁部を覆うように養生キャップ部を設ける。このような目地形成材によれば、床埋設構造物の周囲に打設され鏝で均されるコンクリート(生コン)を、上記ガイド面より下側において堰堤部によって堰き止めて床埋設構造物内側への浸入を阻止することが出来る一方、ガイド面より上側では、堰堤部上面の内側端部から立ち上がる養生キャップ部が、コンクリート表面を均すため上記ガイド面の高さで水平に動かされる鏝を受け止め(ストッパとしての役割を果たしてコンクリート表面の平坦化作業をやり易くする)、生コンにより床埋設構造物の上面周縁部が汚されることを防ぐことが出来る。このように上記ガイド面に鏝を当て、これを基準(例えば開始位置)としてコンクリート表面の平坦化作業を行い、当該ガイド面(堰堤部の上面)に合わせてこの面と面一となるように床構成基材の天面を容易に仕上げることが可能となる。
【0034】
本発明に係る第四の目地形成材は、前記第一から第三の目地形成材において、前記床埋設構造物の上面周縁部の下面に当接して当該床埋設構造物の上面周縁部を支持する裏込め材をさらに備えたもので、前記養生キャップ部および前記堰堤部のうちの少なくとも養生キャップ部を、前記裏込め材に対して分離可能に接続し、当該養生キャップ部および堰堤部のうちの少なくとも養生キャップ部を分離することにより前記裏込め材を目地裏部に残して当該養生キャップ部および堰堤部のうちの少なくとも養生キャップ部を除去可能とする。
【0035】
このような目地形成材によれば、床構成基材を打設した後に、養生キャップ部、または養生キャップ部および堰堤部の双方を取り外せば、裏込め材が目地裏部に残ってこの裏込め材により床埋設構造物の上面周縁部が支持されるから、目地部下面に廻り込むコンクリートのみに頼っていた従来の施工に比べ、目地部の強度をより確実に確保することが出来る。また、目地部に別途モルタルを充填するような手間を省くことができ、生コンを導入しやすくするための特別な加工を床埋設構造物に施す必要もなくなる。
【0036】
本発明の第一の床埋設構造体は、上面が床面と略面一になるように床に埋設された床埋設構造物と、当該床埋設構造物の周囲を埋める床構成基材と、当該床構成基材の上面に配されて床の仕上げ面を形成する床仕上げ材と、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に配置され、前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて前記床仕上げ材を前記床埋設構造物と前記床構成基材との間に流入させるための空間を形成する堰堤部材とを備える床埋設構造体であり、前記堰堤部材は、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に流入する床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を有し、当該アンカー部に前記床仕上げ材が絡み合うように前記床仕上げ材が前記床構成基材の上に配されている。
【0037】
また本発明の第二の床埋設構造体は、上面が床面と略面一になるように床に埋設された床埋設構造物と、当該床埋設構造物の周囲を埋める床構成基材と、当該床構成基材の上面に配されて床の仕上げ面を形成する床仕上げ材とを備える床埋設構造体であって、前記床構成基材は、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側において前記床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を備え、当該アンカー部に前記床仕上げ材が絡み合うように前記床仕上げ材が前記床構成基材の上に配されている。
【0038】
さらに本発明の第三の床埋設構造体は、上面が床面と略面一になるように床に埋設されかつ上面周縁部が外方へ張り出すフランジ状に形成された床埋設構造物と、当該床埋設構造物の周囲を埋める床構成基材と、当該床構成基材の上面に配されて床の仕上げ面を形成する床仕上げ材とを備える床埋設構造体であって、前記床仕上げ材が、前記フランジ状の上面周縁部の下面に潜り込むように前記床構成基材の上に配されている。
【0039】
さらに本発明の第四の床埋設構造体は、前記第三の床埋設構造体において、前記フランジ状の上面周縁部の下面に当接して前記床埋設構造物の上面周縁部を支持する裏込め材をさらに備えるものである。
【0040】
これら本発明の第一、第二、第三ならびに第四の床埋設構造体はそれぞれ、例えば前記本発明の第一、第二、第三ならびに第四の目地形成材を使用することにより形成することが出来る。なお、これら第一から第四の床埋設構造体において、床埋設構造物、床構成基材および床仕上げ材の意義ならびに機能は、前記本発明の目地形成材において説明したのと同様であるから重複した説明を省略する。また、堰堤部材、およびアンカー部についても、前記本発明の目地形成材において堰堤部およびアンカー部として説明したものと同様である。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る目地形成材および床埋設構造体によれば、床仕上げ材の剥離が生じにくい床埋設構造物の目地部を形成することが出来ると共に、床埋設構造物の傷や汚れを防ぎ、施工性を向上させることが出来る。また、裏込め材を備えた本発明の第四の目地形成材および床埋設構造体によればさらに、床埋設構造物の上面周縁部をより確実に支持できる目地構造を得ることが出来る。
【0042】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第一の実施の形態に係る目地形成材(以下、目地材と言う)を側溝に装着した施工中(コンクリート打設時)の状態を示す断面図であり、図2は当該目地材を使用して完成した側溝の目地部を示す断面図である。なお、これら図1および図2(後述の図3から図10も同様)は、前記図11および図12と同様に側溝の目地部(図13,14に符号Aで示す部分に相当)を拡大して示している。また、以下の実施形態では、目地部の構造が異なる3種類の側溝を想定し、これらに適用可能な目地材を構成した。
【0044】
第一の実施形態が対象とする側溝は、図1および図2に示すように、溝状の側溝本体の左右両上縁部を外側に略90°折り曲げて水平部6aを形成し、この水平部6aに断面L字状の山形鋼(アングル材)12を固定して蓋受部を形成したもので、側溝の上面周縁部(以下、側溝縁部と言う)が、側溝本体6(水平部6a)の外側縁部から略鉛直に立ち上がったアングル材12の直立部12bによって形成されている(第二・第三の実施形態についても図3から図6に示すように同様)。なお、図1および図2は側溝の右側のみを示しており、左側はこれら図示したものと対称の形状となる(図3から図10も同様)。
【0045】
また、これら側溝左右のアングル材12(直立部12b)の間には、アングル材12の水平部12aに載せつつグレーチングや鋼製蓋(図示せず)が嵌め込まれ、側溝の上面開口が閉塞される。なお、この閉塞状態においても、水はグレーチングや鋼製蓋の孔を通じて側溝本体6の内部に流入可能である。
【0046】
図1に示すように第一実施形態に係る目地材21は、側溝縁部(アングル材12の直立部12b)の上端部に上から被せるように装着可能なもので、当該側溝縁部の上端部を覆うキャップ部(養生キャップ部)22と、キャップ部22の外側下端から下方へ延びて側溝縁部(アングル材12の直立部12b)の外側に仕上げ材(床仕上げ材)4(図2参照)を流し込むための空間Sを形成する堰堤部23とを備えている。
【0047】
キャップ部22は、略逆U字状の断面形状を有し、内面に滑り止めの突起を設けると共に可撓性を有する樹脂で形成することによりサックのように側溝縁部(直立部12b)の上端部に被せて当該側溝縁部(直立部12b)を挟んで保持する。また、キャップ部22の内側脚部(側溝内部側の脚部)22aは、後に詳しく述べる堰堤部23と対向して両者により側溝縁部(直立部12b)を挟持できるように外側脚部(側溝外部側の脚部)22bと比べて長く(下端が堰堤部23の下端と略同一高さとなるように)してある。
【0048】
一方、堰堤部23は、その内面および外面が互いに略平行に略90°の円弧を描いて側溝本体6から見て外方に膨らむようなアーチ状の断面形状を有するよう形成してあり、上端側の面23aを略水平な平面としてこれを前記ガイド面とする一方、下端側の面を前記キャップ部22の内側脚部22aと対向するように略鉛直な平面としてこれを側溝縁部(直立部12b)の外面に当接させてキャップ部22の内側脚部22aと共に側溝縁部(直立部12b)を挟持可能とした。したがって、かかるアーチ形状の堰堤部内面23bの内側(堰堤部23と側溝縁部(直立部12b)との間)には、仕上げ材4を流入させるための断面略四分円形状をなすポケット状の空間S(以下、流入ポケットと言う)を形成することが出来る。
【0049】
なお、かかるキャップ部22および堰堤部23からなる目地材21は、全体として側溝縁部(直立部12b)と平行に(図1の紙面に垂直な方向へ)側溝縁部に沿って延びる(図3以降に示す第二〜第五実施形態についても同様)。目地材21の長さは特に限定されない。例えば、図15に二点鎖線で示すように、適当な長さを有するものとしてこれらを複数繋いで側溝目地部の全体をカバーできるように装着すれば良い。また、排水枡10についても同様に目地材21を装着して施工を行えば良い。
【0050】
堰堤部23の内面23bには、前記アンカー部となる筋状の凹凸(凸条と凹溝)を形成しておく。前記流入ポケットSの中に流れ込む仕上げ材4を堰堤部23と絡み合わせて剥離に対する抵抗力を高めるためである。また、堰堤部23の外面23cにも同様の凹凸を設ける。側溝周囲に打設するコンクリート2との間の結合力を高めるためである。
【0051】
堰堤部23は、その上面(ガイド面23a)の内側縁部(言い換えれば堰堤部内面23bの上端部)において、キャップ部22の外側脚部22bの外面側下端と連結させる。この連結部24は他の部分と比べて肉薄となっており、したがってコンクリート2の打設後、この連結部24を破断する(引き千切る)ことにより図1に破線(符号220)で示すようにキャップ部22のみを側溝から容易に取り外すことが出来る。
【0052】
目地材21(キャップ部22および堰堤部23)を形成する材料は、特に問わないが、側溝縁部に被せて嵌め込む(側溝縁部を圧入する)ことが可能な軟質の(柔軟性または可撓性を有する)樹脂(例えば塩化ビニールやゴム)を好ましく使用することができ、当該材料によりキャップ部22と堰堤部23とを一体成形する。なお、樹脂を使用することは、原料が比較的廉価で一体成形が容易なことから、製造コストを抑える点でも好ましい。
【0053】
側溝の埋設施工は、例えば次のように行うことが出来る。目地材21を側溝縁部(直立部12b)に装着した状態で運搬し現場に搬入する。側溝本体6(アングル材12を含む)を所定位置に設置した後、その周囲にコンクリート2を打設する。コンクリート2の表面2aは鏝により均して平坦にするが、このとき、堰堤部23の上面(ガイド面23a)を基準としてこれに鏝を当て、このガイド面23aと同じ高さとなるようにコンクリート表面2aを平坦化する。この平坦化作業のとき、ならびに前記側溝本体の運搬搬入時には、装着された目地材21のキャップ部22によって側溝縁部が覆われ、特に傷や汚れが付きやすい当該側溝の縁部分が保護される。
【0054】
コンクリート表面2aを仕上げた後には、図1に破線(符号220)で示すように堰堤部23からキャップ部22を分離し、キャップ部22のみを除去する。そして、コンクリート2の表面2aに仕上げ材4を塗布する。この仕上げ材4は、図2に示すように前記流入ポケットSに浸入し硬化することによって堰堤部(堰堤部材)23(内面23bの凹凸)と絡み合った状態でコンクリート表面2aに配される。
【0055】
〔第2実施形態〕
図3から図4は、本発明の第二の実施の形態に係る目地材および側溝の目地構造を示すものである。これらの図に示すようにこの目地材31は、前記第一実施形態と同様の目地部形状を有する側溝に適用できるもので、側溝縁部(直立部12b)に被せてこれを覆うキャップ部32と、仕上げ材4を導入する流入ポケットSを形成する堰堤部33とを有し、堰堤部33の上面には、前記第一実施形態と同様に平坦なガイド面33aを備える。
【0056】
一方、この実施形態では、堰堤部33の外面33cに設けた凹凸によって側溝周囲に打設するコンクリート2自体に仕上げ材4と絡み合うアンカー部を形成する。堰堤部33は、コンクリート2の打設後、図3に破線(符号310)で示すようにキャップ部32と一緒に除去する。したがって、キャップ部32と堰堤部33とは分離可能に構成しておく必要はない。このような目地材31によっても、図4に示すようにコンクリート2と絡み合った状態で仕上げ材4を配することができ、仕上げ材4の剥離を防止することが出来る。またこの実施形態によれば、目地材を繰り返して使用することが出来るから、環境にも配慮することが出来る。
【0057】
〔第3実施形態〕
図5から図6は、本発明の第三の実施の形態に係る目地材および側溝の目地構造を示すものである。これらの図に示すようにこの目地材41は、前記第一および第二実施形態と同様の目地部を有する側溝に適用できるもので、側溝縁部(直立部12b)に被せてこれを覆うキャップ部42と、仕上げ材4を導入する流入ポケットSを形成する堰堤部43とを有し、堰堤部43の上面には、前記第一実施形態と同様に平坦なガイド面43aを備える。
【0058】
一方、この実施形態では、図5に示すように堰堤部43が、略水平に延びる平板状の底板部46と、底板部46の中間位置(略2分の1の幅位置)から略鉛直上方に直立する壁板部45とからなって断面略逆T字状の全体形状を呈する。底板部46について、壁板部45との接続位置より内側の部分はその内側端縁が側溝縁部(直立部12b)の外面に当接して上記流入ポケットSの底を形成する。また同じく底板部46について壁板部45との接続位置より外側の部分は、壁板部45より外方へ突出して側溝周囲に打設されるコンクリート2に差し込まれるように配置されることによりアンカーとしての機能を果たす。さらに前記第一実施形態と同様に、壁板部45の内面43bには、流入ポケットSの内部に流れ込む仕上げ材4と絡み合う前記アンカー部とする筋状の凹凸(凸条)を形成する一方、壁板部45の外面43cには、側溝周囲のコンクリート2との間の結合力を高める同様の凹凸(凸条)を設けておく。
【0059】
なお、キャップ部42は、前記第一実施形態と同様に堰堤部43(壁板部45)の上面内側縁部に連結されるように設けてあり、コンクリート2の打設後には図5に破線(符号410)で示すように当該連結部44を破断して除去することが可能である。そして、図6に示すようにコンクリート2の表面2aに仕上げ材4が配される。また、キャップ部42の内側脚部42aの下端縁と堰堤部43(底板部46)の内側端縁とにより側溝縁部(直立部12b)が挟持され、これにより目地材41が側溝縁部に係止される。
【0060】
本実施形態では、堰堤部43の壁板部45を略垂直に起立するようにキャップ部42の外側脚部42bの下端に接続し、流入ポケットSが側溝縁部(直立部12b)に平行に略鉛直下方へ(コンクリート表面2aに略直交する方向へ)延びるから、図6に示すように仕上げ材4が目地部8の上端で略直角に曲がって流入ポケットSに浸入し、堰堤部43(壁板部45)内面43bのアンカー部(凹凸)と絡み合うように配されることとなる。したがって本実施形態によれば、従来の側溝との比較では勿論、前記第一および第二実施形態と比べても剥離に対する抵抗力をより一層高めることが出来る。また、前記底板部46の外側部分がコンクリートに差し込まれた状態となるように配されるから、壁板部外面43cに設けた凹凸と相まって仕上げ材4が堰堤部43ごとコンクリート2から剥離されることを効果的に防ぐことが出来る。
【0061】
〔第4実施形態〕
図7から図8は、本発明の第四の実施の形態に係る目地材および側溝の目地構造を示すものである。これらの図に示すようにこの目地材51は、前記第一から第三実施形態とは異なる目地構造を有する側溝に適用するものである。すなわち、本実施形態における側溝は、図7および図8に示すように、前記各実施形態における側溝と同様に側溝本体6の左右両上縁部を外側に略90°折り曲げた水平部6aを備えるが、側溝本体6がさらに、当該水平部6aの外縁から連続して略鉛直上方に立ち上がる起立部6bと、この起立部6bの上端から略90°外側へ折り曲がって外方へ水平に延びるフランジ部6cとを備え、これらフランジ部6cと起立部6bとによって側溝縁部が形成される。なお、上記水平部6aおよび起立部6bは前記各実施形態におけるアングル材12と同様に、側溝の上面開口を閉塞するグレーチングや鋼製蓋を受け入れる蓋受部を構成する。
【0062】
本実施形態の目地材は、このような側溝縁部に被せるように装着できるもので、起立部6bの上端部とフランジ部6cとを覆うキャップ部52と、側溝周囲に配されるコンクリート2を堰き止めて側溝縁部の外側、より具体的には、フランジ部6cの下方かつ起立部6bの上部外側に仕上げ材4の流入ポケットSを形成する堰堤部53とを有する。キャップ部52と堰堤部53とは、前記第二実施形態と同様に分離可能に構成する必要はない。また、堰堤部53の上端(キャップ部52との境界部)には、鏝を案内するため、前記各実施形態と同様のガイド面53aを設ける。このガイド面53aの形成は、堰堤部53の外面がキャップ部52(外側脚部52b)の外面より外方へ突出するようにキャップ部52(外側脚部52b)の外面と堰堤部53の外面との間に段差を設け、この段差を利用して堰堤部53の上端に水平な平面を形成し、これをガイド面53aとすれば良い。
【0063】
本実施形態の目地材51では、キャップ部52の内側脚部52aの下端と堰堤部53の下端とにより側溝縁部(起立部6b)を挟持し、これにより目地材51を側溝縁部に係止可能とする。一方、コンクリート2の打設後には、図7に破線(符号510)で示すようにキャップ部52と堰堤部53とを一緒に側溝から除去する。そして、コンクリート2の上面2aに仕上げ材4を塗布すれば、フランジ部6cの下面の流入ポケットSに仕上げ材4が流れ込み、側溝縁部(フランジ部6c)の下面に仕上げ材4が潜り込んだ目地構造を得ることが出来る。
【0064】
このような目地構造によれば、仕上げ材4の端部が側溝(フランジ部6c)によって押さえられ、仕上げ材4の剥離を防ぐことが出来る。なお、本実施形態においても、コンクリート2にアンカー部(凹凸)を形成して仕上げ材4をコンクリート2に絡み合わせるようにするため、前記第二実施形態と同様の凹凸(図示せず)を堰堤部53の外面53cにさらに設けておいても良い。
【0065】
〔第5実施形態〕
図9から図10は、本発明の第五の実施の形態に係る目地材および側溝の目地構造を示すものである。これらの図に示すようにこの目地材を適用する側溝は、前記第四実施形態の側溝と同様に側溝上縁部に、水平部6a、起立部6bおよびフランジ部6cを備えるものであるが、フランジ部6cの外縁が略鉛直下方へ立ち下がった形状を有する。このような鉤状のフランジ部6cを備えた側溝の場合、前に述べたように、側溝周囲を埋めるコンクリート2が立ち下がったフランジ先端部(立下り部6d)によって邪魔されてフランジ部6cの下面に廻り込み難く、フランジ部6cの下面にコンクリートを満遍なく充填することが難しい。したがって本実施形態では、このような側溝に好適な目地材の一例として、裏込め材65を備える目地材61を構成した。
【0066】
具体的には、本実施形態の目地材61は、前記第四実施形態の目地材51と略同様の形状と機能を有するキャップ部62と堰堤部63とを備えるが、これに加えて裏込め材65を有する。この裏込め材65は、方形の断面形状を有してその上面がフランジ部6cの下面に当接してこれを支持できるようにキャップ部62の内部(キャップ部62の内側脚部62aと堰堤部63との間)に設けてある。またこの裏込め材65は、目地材61(キャップ部62および堰堤部63)の全長に亘って目地材61の長さ方向(図9の紙面に垂直な方向)にキャップ部62および堰堤部63と平行に延びると共に、堰堤部63の下端部において当該堰堤部63と肉厚の薄い連結部64を介して連結してあり、この連結部64を破断することにより堰堤部63と分離することが可能である。
【0067】
また、裏込め材65の外面には、目地材61の長さ方向に延びる突条66を設けてあり、側溝縁部への装着状態においてこの突条66がフランジ先端部(立下り部6d)の内面に当接し、さらにフランジ部(水平部分6c)がキャップ部62と裏込め材65によって挟持されると共に、キャップ部62の内側脚部62aの下端が側溝縁部(起立部6b)の内面に当接することにより目地材61が側溝縁部に係止される。目地材61は可撓性を有する樹脂材料により構成してあり、側溝への装着にあたっては、キャップ部62と裏込め材65との間を広げてこれらの間にフランジ部6c,6dを挿入するようにすれば良い。なお、前記各実施形態の目地材21,31,41,51も同様に、可撓性を有する樹脂材料により構成してあり、キャップ部と堰堤部との間を広げてその間に側溝縁部を挿入することにより容易に装着可能である。
【0068】
施工にあたっては、目地材61を装着した状態で側溝の周囲にコンクリート2を打設し、その表面2aをガイド面63aと面一となるように平坦に均す。そして、上記連結部64を破断することにより裏込め材65と堰堤部63を分離し、裏込め材65をフランジ部6cの下面に残してキャップ部62および堰堤部63を一緒に除去する。その後、図10に示すようにコンクリート2の表面2aに仕上げ材4を塗布するが、仕上げ材4は裏込め材65の外面位置まで流入し、立ち下がったフランジ先端部(立下り部6d)に引っ掛かるように配される。これにより、仕上げ材4が剥離し難い目地構造を得ることが出来る。また、フランジ部6cの下面が裏込め材65によって支持されるから、フランジ部6cの下面に空隙が残ることによる前記問題(目地部の強度低下や歩行時の異音発生)を解消することが出来る。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態の利点を纏めて述べれば次のとおりである。(1)床仕上げ材を堰堤部またはコンクリートと絡み合わせるように、あるいは床仕上げ材を側溝縁部に引っ掛けるように配置可能とすることにより、床仕上げ材の剥離を防止することが出来る。(2)側溝縁部(目地部)は運搬時や取付け施工時に傷が付きあるいは汚れ等が入る恐れが多分にあったが、これを防ぐことができ、現場取付けの後の再仕上げを不要にすることが出来る。(3)側溝縁部を挟むように目地材が側溝に係止されるから、生コン打設時の流入圧に十分に耐えることが出来る一方で、目地材の取り外しの手間も少なくて済む。(4)従来はコンクリートの天面を正確なレベルに仕上げるための目印がなく、仕上げ位置(スタート位置)が明確ではなかったが、本実施形態の目地材によれば、ガイド面(段差部)によって仕上げ位置が明確になり、この段差部に例えば鰻先を当て平坦化作業を開始することによりコンクリート表面を短時間に効率よく正確に仕上げることが出来る。(5)裏込め材を備えているから(第5実施形態)、目地裏部に空隙が残らず、十分な強度を得ることができ、歩行時に異音が発生するなどの問題が生じることを防ぐことが出来る。
【0070】
本発明は、図面に基づいて説明した前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことが出来ることは当業者に明らかである。
【0071】
例えば、側溝および排水枡を含む床埋設構造物の構造、特に、上面周縁部(目地部)の構造は、図示の例のほか様々なものであって良く、これら様々な目地部に適用できる目地形成材を本発明に基づいて構成することが可能である。また、床埋設構造物には、側溝および排水枡のほか、例えば、貯水槽や貯蔵庫、融雪槽など床面に埋設する構造物が広く含まれ、これらに対して本発明は適用可能である。
【0072】
さらに、当該床埋設構造物の長さや形状等は様々であって良く、例えば側溝に分岐路を備えていても構わない。そして本発明の目地形成材は、これら床埋設構造物に形状等に合わせて、様々な形状・パターン・長さ寸法等を採ることがある。床仕上げ材は、典型的には防水性を有するがこれは必ずしも必須の要件ではない。また、目地材を構成する材料としては、各種の樹脂(熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂)のほか樹脂以外の材料を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る目地形成材を側溝の目地部に装着した状態で示す断面図である。
【図2】前記第一実施形態の目地形成材により形成した側溝の目地部を示す断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る目地形成材を側溝の目地部に装着した状態で示す断面図である。
【図4】前記第二実施形態の目地形成材により形成した側溝の目地部を示す断面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態に係る目地形成材を側溝の目地部に装着した状態で示す断面図である。
【図6】前記第三実施形態の目地形成材により形成した側溝の目地部を示す断面図である。
【図7】本発明の第四の実施形態に係る目地形成材を側溝の目地部に装着した状態で示す断面図である。
【図8】前記第四実施形態の目地形成材により形成した側溝の目地部を示す断面図である。
【図9】本発明の第五の実施形態に係る目地形成材を側溝の目地部に装着した状態で示す断面図である。
【図10】前記第五実施形態の目地形成材により形成した側溝の目地部を示す断面図である。
【図11】従来の目地形成材の一例を側溝に装着した状態で示す断面図である。
【図12】前記図11に示した目地形成材により形成した側溝の目地部を示す断面図である。
【図13】側溝の一例を切り欠いて示す斜視図である。
【図14】側溝の一例を示す断面図(図15のX‐X断面)である。
【図15】側溝の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 躯体コンクリート
2 コンクリート(床構成基材)
2a コンクリート(床構成基材)の上面
3 固定用配筋
4 床仕上げ材
4a 床仕上げ材の上面(床表面)
5 固定金具
6 側溝本体
6a 側溝本体の水平部
6b 側溝本体の起立部
6c,11 側溝本体のフランジ部
6d 側溝本体の立下り部
7 上面開口
8 目地部(側溝と床仕上げ材との境界部)
9 面木(目地形成材)
10 排水枡
12 山形鋼(アングル材)
12a アングル材の水平部
12b アングル材の直立部
21,31,41,51,61 目地形成材
22,32,42,52,62 キャップ部
22a,32a,42a,52a,62a キャップ部の内側脚部
22b,32b,42b,52b,62b キャップ部の外側脚部
23,33,43,53,63 堰堤部(堰堤部材)
23a,33a,43a,53a,63a ガイド面
23b,33b,53b,63b 堰堤部の内面
23c,33c,53c 堰堤部の外面
24,44,64 連結部
43b 壁板部の内面
43c 壁板部の外面
45 壁板部
46 底板部
S 流入ポケット(床仕上げ材の流入空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲を床構成基材によって埋められ上面が床面と略面一になるように床に埋設される床埋設構造物と前記床構成基材の上面に配されて床面を形成する床仕上げ材との境界部である目地部を形成するための目地形成材であって、
前記床埋設構造物の上面周縁部を覆う養生キャップ部と、
この養生キャップ部と分離可能に一体化され、前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて当該床構成基材の上面に配される前記床仕上げ材を前記床埋設構造物と前記床構成基材との間に流入させるための空間を前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に形成する堰堤部と、
を備え、
前記堰堤部は、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に流入する床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を有する
ことを特徴とする目地形成材。
【請求項2】
周囲を床構成基材によって埋められ上面が床面と略面一になるように床に埋設される床埋設構造物と前記床構成基材の上面に配されて床面を形成する床仕上げ材との境界部である目地部を形成するための目地形成材であって、
前記床埋設構造物の上面周縁部を覆う養生キャップ部と、
前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて当該床構成基材の上面に配される前記床仕上げ材を前記床埋設構造物と前記床構成基材との間に流入させるための空間を前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に形成する堰堤部と、
を備え、
前記堰堤部は、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に流入する床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を前記床構成基材に形成するための凹凸を有する
ことを特徴とする目地形成材。
【請求項3】
周囲を床構成基材によって埋められ上面が床面と略面一になるように床に埋設される床埋設構造物と前記床構成基材の上面に配されて床面を形成する床仕上げ材との境界部である目地部を形成するための目地形成材であって、
前記床埋設構造物の上面周縁部を覆う養生キャップ部と、
前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて当該床構成基材の上面に配される前記床仕上げ材を前記床埋設構造物の上面周縁部の下面にまで流入させるための空間を前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に形成する堰堤部と、
を備えることを特徴とする目地形成材。
【請求項4】
前記床構成基材の打設時に当該床構成基材の天面を平坦に均す鏝を載せ当て案内することを可能とするガイド面を前記堰堤部に備えた
請求項1から3のいずれか一項に記載の目地形成材。
【請求項5】
前記床埋設構造物の上面周縁部の下面に当接して当該床埋設構造物の上面周縁部を支持する裏込め材をさらに備え、
前記養生キャップ部および前記堰堤部のうちの少なくとも養生キャップ部が、前記裏込め材に対して分離可能に接続されており、
当該養生キャップ部および堰堤部のうちの少なくとも養生キャップ部を分離することにより前記裏込め材を目地裏部に残して当該養生キャップ部および堰堤部のうちの少なくとも養生キャップ部を除去可能とした
請求項1から4のいずれか一項に記載の目地形成材。
【請求項6】
上面が床面と略面一になるように床に埋設された床埋設構造物と、
当該床埋設構造物の周囲を埋める床構成基材と、
当該床構成基材の上面に配されて床の仕上げ面を形成する床仕上げ材と、
前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に配置され、前記床構成基材の打設時に当該床構成基材を堰き止めて前記床仕上げ材を前記床埋設構造物と前記床構成基材との間に流入させるための空間を形成する堰堤部材と、
を備える床埋設構造体であって、
前記堰堤部材は、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側に流入する床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を有し、
当該アンカー部に前記床仕上げ材が絡み合うように前記床仕上げ材が前記床構成基材の上に配されている
ことを特徴とする床埋設構造体。
【請求項7】
上面が床面と略面一になるように床に埋設された床埋設構造物と、
当該床埋設構造物の周囲を埋める床構成基材と、
当該床構成基材の上面に配されて床の仕上げ面を形成する床仕上げ材と、
を備える床埋設構造体であって、
前記床構成基材は、前記床埋設構造物の上面周縁部の外側において前記床仕上げ材と絡み合って当該床仕上げ材を引き剥がす力に抗することを可能とするアンカー部を備え、
当該アンカー部に前記床仕上げ材が絡み合うように前記床仕上げ材が前記床構成基材の上に配されている
ことを特徴とする床埋設構造体。
【請求項8】
上面が床面と略面一になるように床に埋設されかつ上面周縁部が外方へ張り出すフランジ状に形成された床埋設構造物と、
当該床埋設構造物の周囲を埋める床構成基材と、
当該床構成基材の上面に配されて床の仕上げ面を形成する床仕上げ材と、
を備える床埋設構造体であって、
前記床仕上げ材が、前記フランジ状の上面周縁部の下面に潜り込むように前記床構成基材の上に配されている
ことを特徴とする床埋設構造体。
【請求項9】
前記フランジ状の上面周縁部の下面に当接して前記床埋設構造物の上面周縁部を支持する裏込め材をさらに備える
請求項8に記載の床埋設構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−150744(P2010−150744A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326830(P2008−326830)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(501482732)下田エコテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】