説明

床基材とそれを用いた床暖房用床材

【課題】裏面側に発熱源を収容する凹陥部22を有する床暖房用床材20において、施工時の叩き込みや釘打ちによって表面にふくれが生じ、斜光線が現れるのを防止する。
【解決手段】合板基材21として短手方向に表層の木目方向が走るクロス合板を使用し、かつ、合板基材21の裏面側に発熱源を収容する凹陥部22を加工するに際し、凹陥部22はクロス合板21の表層25から3層目(原中)27の層の全部または一部を残すようにして加工する。凹陥部22の上には3層構造の合板が残存するので剛性が強くなり、ふくれが生じて斜光線が現れるのを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床基材とそれを用いた床暖房用床材に関する。
【背景技術】
【0002】
1尺×6尺のような長尺状の床基材の裏面側に凹陥部を加工し、その中にヒーターユニットを嵌め込んだ構成の電気式一体型の床暖房用床材は知られている(例えば、特許文献1等参照)。床基材の周壁には雄実および雌実が形成され、表面側には、通常、突き板のような適宜の化粧材が積層される。ヒーターユニットに替えて、温水循環ユニットを嵌め込み、温水式の床暖房用床材とすることも知られている。
【0003】
そのような床暖房用床材の多数枚が、例えば根太間に断熱材を配置し、その上に合板を敷設して形成した床下地の上に、実接合しながら敷き詰められて、電気式あるいは温水式の床暖房フロアとされる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−256803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3に示すように、床下地1の上に床暖房用床材10を敷き詰めるときに、床基材11の長手方向の側辺12に形成した雄実13側から、所要本数の釘2を床下地1に向けて打ち付けて、床暖房用床材10を順次床下地1に固定していく。釘2は斜め下方内側に向けて打ち込まれるので、床基材11の雄実13側の側辺部12近傍には下向きのモーメントMが作用する。床基材11の裏面に形成した凹陥部14の、雄実13側のコーナー部15近傍の剛性が不十分の場合には、前記したモーメントMにより、図3に誇張して示すように、その領域に一種の変形(上にふくれた状態)16が生じる。この現象は、施工時に床暖房用床材10を叩き込むときにも発生する恐れがある。なお、図3において、17はPTCヒータのような加熱源、18は断熱材である。
【0006】
このふくれ現象は、例えば突き板である表面化粧材19にも影響を与え、床基材11の長手方向に沿って、表面化粧材19にいわゆる斜光線が発生する。この現象は、とりわけ、ある角度から見ると光の反射具合で、表面に違和感を持たせるような線条として映り、暖房用床材10の商品価値を低下させるので、極力回避しなければならない。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、床暖房用床材を床下地に敷設するときに、施工時の叩き込みや釘打ちによって生じるモーメントに起因して、表面にいわゆる斜光線が現れるのを、効果的に阻止することのできる床基材とそれを用いた床暖房用床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明による床基材は、合板基材の裏面側に発熱源を収容する凹陥部を加工した構成を少なくとも備える床基材であって、前記合板基材は床基材の短手方向に表層の木目方向が走るクロス合板であり、前記凹陥部は前記クロス合板の少なくとも表層から3層目の層の全部または少なくとも一部を残すようにして合板基材の裏面側に加工されていることを特徴とする。
【0009】
本発明による床基材は、凹陥部の上に、合板基材であるクロス合板を構成する表層の全部と、該表層と木目方向が交差する2層目の層の全部と、表層と同じ木目方向である3層目の層の全部または少なくとも一部からなる層とからなる、3層の合板構造が残存する。そのために、床下地への敷設時に、例えば床基材の雄実側の側辺部に釘打ち等により下向きのモーメントが作用しても、そのモーメントに耐えるだけの高い剛性が、床基材の裏面に形成した凹陥部の雄実側のコーナー部近傍に確保される。それにより、前記したふくれが生じるのを阻止することができ、表層あるいはその上に積層した化粧層に斜光線が発生するのを回避できる。
【0010】
本発明による床基材は、合板基材として、表層の木目方向が床基材の短手方向に走るクロス合板を用いており、表面化粧材として突き板を採用するときに、その木目方向を床基材の長手方向に沿わせることによって、意匠性が高くかつ突き板に割れ等が生じがたい床基材とすることができる。
【0011】
本発明において、クロス合板基材の積層数に制限はないが、5プライクロス合板または7プライクロス合板が適切である。7プライクロス合板の場合には、前記凹陥部の上に4層以上の合板構造が残存するようにして前記凹陥部の加工を行ってもよい。
【0012】
本発明は、上記した床基材における前記凹陥部内に発熱源を収容した床暖房用床材をも開示する。発熱源は、PTCヒータのような面ヒータまたはコードヒータでもよく、温水パイプであってもよい。好ましくは、前記凹陥部内には発熱源に加えて発泡樹脂のような適宜の断熱材も収容される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、床下地への施工時に、突き板等の表面化粧材にいわゆる斜光線が発生するのを確実に抑制することのできる床基材、およびそれを用いた床暖房用床材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明による床基材を用いた床暖房用床材を示しており、図1aは全体の斜視図、図1bは図1aのb−b線に沿う断面図である。図2は床基材の長手方向に形成した雄実側を拡大して示す断面図であって、図2aは本発明による場合であり、図2bは本発明によらない場合である。
【0015】
この例において、床暖房用床材20は、5プライのクロス合板である合板基材21と、該合板基材21の裏面に成形された凹陥部22内に収容された発熱源の一例であるPTCヒータ17と、断熱材としての例えば発泡樹脂板18とを備える。合板基材21の上には、突き板23が、合板基材21の長手方向Yに木目方向を一致させて貼り付けてある。図1aで24は疑似溝である。
【0016】
図2aに示すように、合板基材21は、表層(甲板)25,2層目(中板)26,3層目(原中)27,4層目28,および5層目29とからなる構成であり、表層25の木目方向は突き板23の木目方向(長手方向Y)とクロスする方向、すなわち合板基材21の短手方向Xと同じ方向である。以下、木目方向が交互に交差するように2層目〜5層目が積層されている。すなわち、2層目はロング(長手方向Y)、3層目はクロス(短手方向X)、4層目はロング(長手方向Y)、5層目はクロス(短手方向X)とされている。
【0017】
合板基材21の長手方向(Y方向)に沿う側辺の一方には、3層目(原中)27を中心とする雄実30が形成され、長手方向に沿う他方の側辺には対応する位置に雌実31が形成されている。合板基材21の短手方向(X方向)に沿う側辺の一方にも雄実30が形成され、短手方向に沿う他方の側辺の対応する位置には雌実31が形成されている。
【0018】
本発明による合板基材21において、前記した凹陥部22は、5層目29側から3層目(原中)27の途中までの深さに加工されている。すなわち、凹陥部22の上には、合板基材21であるクロス合板を構成する表層23の全部と、表層23と木目方向が交差する2層目26の全部と、表層23と同じ木目方向である3層目27の一部27aからなる、3層の合板構造が残存している。そのために、床基材21の裏面に形成した凹陥部22の雄実30側のコーナー部15の近傍には、高い剛性が確保される。
【0019】
図2bに示す合板基材21aは、合板基材そのものの構成は図2aに示したものと同じであるが、裏面に形成した凹陥部22aの深さにおいて、異なっている。すなわち、合板基材21aでは、凹陥部22aは、5層目29側から2層目(中板)26の底面に達する深さに加工されており、凹陥部22aの上には、クロス合板を構成する表層23(X方向)と、表層23と木目方向が交差する2層目(Y方向)26のみが残存するだけである。そのために、床基材21aの裏面に形成した凹陥部22aの雄実30側のコーナー部15aの近傍の剛性は、図2aに示した合板基材21と比較して、低いものとなる。
【0020】
本発明による合板基材21では、凹陥部22aの雄実30側のコーナー部15aの近傍には高い剛性が確保されており、図3に基づき説明したように、床下地1の上に合板基材21(床暖房用床材20)を敷き詰めるときに、床基材21の長手方向の側辺に形成した雄実30側から釘2を床下地1に向けて打ち付けても、前記した変形(上にふくれた状態)16が生じることはなく、突き板23の表面にいわゆる斜光線が現れるのを、効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による床基材を用いた床暖房用床材を示しており、図1aは全体の斜視図、図1bは図1aのb−b線に沿う断面図である。
【図2】床基材の長手方向に形成した雄実側を拡大して示す断面図であって、図2aは本発明による場合であり、図2bは本発明によらない場合である。
【図3】床暖房用床材を床下地に固定するときに生じる恐れのある不都合を説明するための概念図。
【符号の説明】
【0022】
20…床暖房用床材、21…クロス合板である合板基材、22…凹陥部、23…突き板、25…表層(甲板)、26…2層目(中板)、27…3層目(原中)、28…4層目、29…5層目、30…雄実、Y…合板基材の長手方向、X…合板基材の短手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板基材の裏面側に発熱源を収容する凹陥部を加工した構成を少なくとも備える床基材であって、前記合板基材は床基材の短手方向に表層の木目方向が走るクロス合板であり、前記凹陥部は前記クロス合板の少なくとも表層から3層目の層の全部または少なくとも一部を残すようにして合板基材の裏面側に加工されていることを特徴とする床基材。
【請求項2】
請求項1に記載の床基材における凹陥部に発熱源を収容した床暖房用床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−45377(P2008−45377A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224434(P2006−224434)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】