床支持具及び床支持構造
【課題】十分な支持剛性及び耐久性を確保でき、かつ、断熱材を容易に貫通でき作業性を向上できる床支持具を提供する。
【解決手段】床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材を貫通し、前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置される床支持具1を樹脂材料から形成し、筒状の床支持具本体2の少なくとも一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片3を形成して、隣接する先鋭小突片3間に所定間隔ごとに先鋭小突片3の高さよりも深い深溝5を形成する。
【解決手段】床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材を貫通し、前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置される床支持具1を樹脂材料から形成し、筒状の床支持具本体2の少なくとも一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片3を形成して、隣接する先鋭小突片3間に所定間隔ごとに先鋭小突片3の高さよりも深い深溝5を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下地材上に敷設された断熱材の上に床仕上げ材を支持する床構造において、断熱材を貫通した状態で床下地材と床仕上げ材との間に配置される床支持具及び床支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に住宅等の床部分は、梁及び根太を有してなる床下地材である床下構造部に床仕上げ材を敷設することで構成されている。この種の床では、床下構造部と床仕上げ材との間に断熱材を介在させることがあり、このような場合には、断熱材を貫通するスペーサを床下構造部と床仕上げ材との間に配置し、床下構造部上に床仕上げ材を支持することが知られている。
【0003】
一方、特許文献1には、断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定するために該断熱材に断熱材用スペーサを取り付けることが開示されており、この断熱材用スペーサに断熱材を切削し得る複数の切削刃を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−308920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、住宅等で用いられる上記のような断熱材は樹脂から形成され、比較的脆く柔らかい部材であるが、スペーサを断熱材に挿入し、貫通させる作業は手間のかかるものである。特に、断熱材を熱源から保護するためのアルミシートが断熱材に貼着される場合には、スペーサでアルミシートをうまく切り裂く必要もあるため、その作業負荷は更に大きくなってしまう。このような点に鑑みて、特許文献1では、胴縁に用いる点で床支持具としてのスペーサと用途は異なるものの、断熱材の挿入作業を軽減するためにスペーサに切削刃を形成している。
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたスペーサの切削刃は肉厚が一定に形成されているため、スペーサを断熱材にスムーズに挿入させるためには、切削刃の高さをある程度確保し先細りの部分を高くする必要があり、大きな支持剛性を要求される床支持具としては支持剛性及び耐久性が懸念される。
【0007】
つまり、特許文献1に係るスペーサにおいて切削刃を高くした場合には、その高さの占める割合がスペーサ全体で大きくなり、また隣接する切削刃間の溝が深くなってしまい、スペーサにおいては一端から他端にかけての断面変化が大きくなるため、荷重負荷のための断面積の十分な確保がし難い。また、スペーサの切削刃の先端は平坦に形成されているが、上記のように切削刃の高さを確保した場合には、切削刃を形成できる数が限られ、切削刃の先端面積が小さくなってしまうため、切削刃の先端に大きな応力集中が生じてしまう。
【0008】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、十分な支持剛性及び耐久性を確保でき、かつ、断熱材を容易に貫通でき作業性を向上できる床支持具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決手段として請求項1に記載の発明は、床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入され、前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置される床支持具であって、樹脂材料からなり、筒状の床支持具本体の少なくとも一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片が形成され、隣接する前記先鋭小突片間の溝が所定間隔ごとに各先鋭小突片の高さよりも深い深溝として形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記深溝の両側の前記先鋭小突片の先端が、他の前記先鋭小突片の先端よりも鋭く形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記先鋭小突片が、径方向から見て台形形状に形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記床支持具本体が、円筒状に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記床支持具本体の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブが形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記床支持具本体の外周面にねじ溝が形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、上記のいずれかに記載の床支持具を、床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入し、前記床支持具を前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、床支持具を断熱材に挿入する際、深溝の両側の各先鋭小突片の先端部を起点として断熱材に床支持具本体の外形に沿う複数の分断された穴を形成でき、荷重を受けるに従い前記分断された穴を広げて、床支持具を断熱材に貫通させることができるため、安定した穴あけと挿入が可能となり、床支持具の挿入作業の作業性を向上できる。また、先鋭小突片は厚み方向で先細りになっているため、その高さを高くしなくともスムーズに前記分断された穴を形成できるため、筒状の床支持具本体の一端縁と他端縁とで断面変化のない領域を確保でき、均等に荷重を支持して応力集中を少なくし、支持剛性及び耐久性の向上を図ることができる。また、樹脂材料から形成されるため、熱橋の発生を防止できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、深溝の両側の各先鋭小突片の先端部による断熱材の破断荷重を低くするが可能となり、断熱材に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、先鋭小突片の先端部分の面積を増やすことができ、支持剛性及び耐久性の一層の向上を図ることができる。また、先鋭小突変が幅方向でも先細りとなるため、断熱材に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、周方向に対して方向性なく均等に荷重を支持することが可能となり、応力集中を無くすことができ、支持剛性及び耐久性の一層の向上を図ることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、床支持具を断熱材に挿入する際に、リブが床支持具の挿入を軸方向に沿って案内するため、床支持具本体の断熱材に対する挿入を安定して行うことが可能となり、穴あけと挿入が一層容易となって、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、床支持具本体を回転させながら圧入する際、ねじ溝が圧入方向を案内するため、圧入が容易になり、穴あけと挿入が一層容易となって、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。また、床支持具を回転させて断熱材へ挿入する際の断熱材の屑片の発生を抑制できるため、断熱材の断熱性能の向上を図ることもできる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、床仕上げ材と床下地材とから作用する圧縮方向の荷重を、床支持具で均等に支持し、断熱容量を減らすことなく、断熱材の圧縮変形を回避することのできる床支持構造部を、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る床支持具を有する床構造部を示した図である。
【図2】床支持具を有する床構造部の断面を模式的に示した図である。
【図3】第1の実施の形態に係る床支持具の斜視図である。
【図4】第1の実施の形態に係る床支持具の正面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る床支持具の平面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る床支持具の底面図である。
【図7】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図8】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図9】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図10】第2の実施の形態に係る床支持具の平面図及び正面図である。
【図11】第3の実施の形態に係る床支持具の平面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る床支持具1を有する床構造部10を示した図である。図1に示す床構造部10は、鋼製の梁11及び根太12を有してなる床下構造部13と、床下構造部13の上に敷設される断熱材14と、断熱材14の上に敷設されるパーチクルボード15とを有している。このような床構造部10は、ここでは図示していない床仕上げ材をパーチクルボード15上に敷設することで、典型的には工場生産型住宅、小規模オフィス、賃貸住宅等の床部分を構成するものである。
【0025】
床下構造部13は、三つの梁11を平行に配設し、これら梁11を結合するように各梁11間で長手方向の位置を合わせて根太12を複数架設することで構成されている。断熱材14は、所謂、発泡系断熱材であり、ウレタン発泡体(ウレタンフォーム)から形成される断熱材本体14Aと、その表面及び裏面の全面に貼着されたアルミシート14Bとから構成され、アルミシート14Bは、断熱材本体14Aを熱源から保護するために貼着されている。また、パーチクルボード15は、木片を集成して形成されるものであり、断熱材14上に敷設され、床仕上げ材の載置面を形成している。なお、床下構造部13は、床下地材に相当するものである。
【0026】
このような床構造部10において、床支持具1は、断熱材14を貫通した状態で床下構造部13とパーチクルボード15との間であって、梁11上において梁11と根太12とが交差する位置に配置される。床支持具1を梁11上に配置する際は、図2に示すように、床下構造部13に敷設された断熱材14の上方から床支持具1を断熱材14に挿入し、断熱材14を貫通させる。このようにして配置された床支持具1は、パーチクルボード15の上に床仕上げ材が敷設された際に、床仕上げ材とパーチクルボード15を介して当接するとともに、床下構造部13と当接し、床仕上げ材を床下構造部13上に支持するスペーサとして機能する。なお、本実施の形態では床構造部10を所謂ユニット工法における1ユニットにおいて床部分を構成するものとして想定しており、床構造部10が比較的小型なものとなっているが、床支持具1はこのような床構造部10に限らず種々の床部分において適用可能なものであることは言うまでもない。
【0027】
以下、床支持具1について詳細に説明する。図3は床支持具1を下方から見た斜視図であり、図4、図5、図6はそれぞれ床支持具1の正面図、平面図、底面図である。
【0028】
床支持具1は、耐クリープ性能、防蟻性能、耐火性能に優れ、かつ熱伝導率の低い、ナイロンとガラス繊維からなるナイロン樹脂から型成形により形成されており、円筒形状の床支持具本体2と、床支持具本体2の一端縁に形成された先細り形状の複数の先鋭小突片3と、床支持具本体2の他端側に形成された平坦面4とを有している。床支持具1の全体としての軸方向の長さは33mm程度に設定され、断熱材14の厚さと略同一に設定され、また、床支持具1の熱伝導率については熱橋の防止の観点から0.3W/m・k程度に設定されることが好ましい。なお、本実施の形態では、平坦面4が床仕上げ材と当接し、先鋭小突片3が床下構造部13と当接するものとする。
【0029】
床支持具本体2は、その軸方向の長さが30mm程度、外径が40mm程度、肉厚が2mm程度に形成される円筒形状のものであり、その外周面及び内周面が一端側から他端側にかけて外径方向及び内径方向に突出したり、窪んだりすることなく形成されている。一方、先鋭小突片3は、その軸方向の長さ(以下、高さ)が3mm程度に形成され、床支持具1の全体の長さに対する先鋭小突片3の軸方向の高さの割合が1/11程度に設定されている。
【0030】
先鋭小突片3は、床支持具本体2の一端縁において複数周設され、隣接する先鋭小突片3の間には、図4,図6に示すように90度間隔で、先鋭小突片3の先端から床支持具本体2の一端縁を超える深溝5が形成されるとともに、深溝5の間の隣接する先鋭小突片3間には、先鋭小突片3の先端から床支持具本体2の一端縁近傍に至る溝6が形成されている。
【0031】
深溝5は、図4に示すように隣接する先鋭小突片3の各先端から側面に沿って先細りに形成され、図7に示すように、先鋭小突片3の内面側では先鋭小突片3の高さH1よりもやや深い深さD1に至り、外面側では先鋭小突片3の高さH1よりも深く、かつ、内側の深さD1よりも深い深さD2に至るように形成されている。このような深溝5の底部は、内側から外側にかけて直線的に、かつ、厚み方向において床支持具本体2の内周面から30度の角度αで外周面に向かうように形成されている。
【0032】
一方、溝6は、深溝5と同様に図4に示すように隣接する先鋭小突片3の各先端から側面に沿って先細りに形成され、図8に示すように、先鋭小突片3の内側では先鋭小突片3の高さH1の約半分の深さD3に至り、外側では先鋭小突片3の高さH1よりもやや深い深さD4まで至るように形成されている。このような溝6の底部は、内側から外側にかけて直線的に、かつ、厚み方向において床支持具本体2の内周面から45度の角度βで外周面に向かうように形成されている。
【0033】
上記のような深溝5及び溝6それぞれの両側には先鋭小突片3が位置するが、床支持具1では深溝5の両側に位置する先鋭小突片3が溝6の間に位置する先鋭小突片3よりも先端が鋭くなっており、先鋭小突片3には、図3や図4に示すように、深溝5の両側に位置し、径方向から見て下底から上底へかけての稜線の角度が極めて急勾配な台形形状あるいは粗三角形状の先鋭小突片3Aと、径方向から見て比較的緩やかな台形形状の先鋭小突片3Bとが含まれている。
【0034】
これら先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bはともに、その内側面が床支持具本体2の内周面に沿って真直ぐ延びるように形成されるとともに、外側面が床支持具本体2の外周面から突出して内径方向に向けて延び、厚み方向から見て先細りとなるように形成されている。具体的には先鋭小突片3Aの外側面は、図9に示すように床支持具本体2の外周面から30度の角度γで内径方向に向かうように形成され、先鋭小突片3Bの外側面は、図8に示すように床支持具本体2の外周面から30度の角度ηで内周面に向かうように形成されている。
【0035】
そして、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの内側面と外側面とが交わる先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bそれぞれの先端は、図7,図8に示すように平坦な先端面3A’及び先端面3B’が形成されている。このように先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bそれぞれの先端に平坦な面を確保した場合には、荷重を受けた際に先端の応力集中を緩和でき支持剛性及び耐久性を向上できるため、先端面3A’及び先端面3B’の幅はある程度確保することが好ましい。なお、先では、先鋭小突片3Aが先鋭小突片3Bよりも先端が鋭いと説明したが、具体的には、図4に示すように先鋭小突片3Aの台形形状の稜線が先鋭小突片3Bの台形形状の稜線よりも急勾配に形成され、かつ、その先端面3A’が先鋭小突片3Bの先端面3B’よりも面積が小さく形成されることで、この実施の形態では先鋭小突片3Aが先鋭小突片3Bよりも先端が鋭くされている。
【0036】
また、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bはともに、図4に示すように径方向から見て台形形状に形成され、幅方向においても先細り形状に形成されている。先では、深溝5及び溝6の深さが内側よりも外側よりも深いことを説明したが、溝がこのように形成される場合、深溝5及び溝6が内側から外側に向けて広がる。これにより、図3に示すように先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの内側の台形形状は、外側の台形形状よりも幅広に形成され、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの両側面は、内側から外側にかけて幅方向中央に向けて傾く、すなわち、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの両側面は外径方向に向いている。このような場合、床支持具1の挿入作業の際に、アルミシート14Bや断熱材14の屑片を外側に押し出しやすくなるため、床支持具の挿入作業の作業性の一層の向上を図ることができる。
【0037】
このように第1実施の形態では、筒状の床支持具本体2の一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片3を形成し、隣接する先鋭小突片3間に所定間隔(90度)ごとに各先鋭小突片3の高さよりも深い深溝5を形成している。これにより、床支持具1を断熱材14に挿入する際に、深溝5の両側の先鋭小突片3Aの先端部を起点として断熱材14に床支持具本体2の外形に沿う複数の分断された穴を形成でき、荷重を受けるに従い前記分断された穴を広げて、床支持具1を断熱材に貫通させることができるため、安定した穴あけと挿入が可能となり、床支持具の挿入作業の作業性を向上できる。
【0038】
また、先鋭小突片3は厚み方向で先細りになっているため、その高さを高くしなくともスムーズに前記分断された穴を形成でき、筒状の床支持具本体2の一端縁と他端縁とで断面変化のない領域を確保できる。そのため、均等に荷重を支持して応力集中を少なくし、支持剛性及び耐久性の向上を図ることができる。なお、本実施の形態では具体的には、先鋭小突片3の高さと床支持具1の軸方向の長さの割合を1/11程度とし、円筒状の床支持具本体2が全体で占める割合を高く確保し、床支持具本体2が断面変化なく荷重を負担できるようにしている。また、床支持具1は樹脂材料から形成されるため、熱橋の発生も防止できる。
【0039】
また、深溝5の両側の先鋭小突片3Aの先端を他の先鋭小突片3Bの先端よりも鋭く形成しているため、深溝5の両側の先鋭小突片3Aの先端部による断熱材14の破断荷重を低くすることが可能となり、断熱材14に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具1の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0040】
また、先鋭小突片3は、径方向から見て台形形状に形成されるため、先鋭小突片3の先端部分の面積を増やすことができ、支持剛性及び耐久性の一層の向上を図ることができる。更に、先鋭小突片3が幅方向でも先細りとなるため、断熱材14に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具1の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0041】
また、床支持具本体2は、円筒状に形成されるため、周方向に対して方向性なく均等に荷重を支持することが可能となり、応力集中を無くすことができ、耐荷重性能を向上できる。
【0042】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10は、本実施の形態に係る床支持具20を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。なお、以下の説明において、床支持具20と第1の実施の形態に係る床支持具1とで共通する部位については同一の符号を付し説明を省略する。
【0043】
床支持具20は、第1の実施の形態に係る床支持具1と基本的に同様の構成を有し、相違点は、床支持具本体2の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブ21が形成される点にある。リブ21は、図10(a)に示すように、床支持具本体2の外周面から突出形成され、外周面において90度の間隔を隔てて4つ形成されている。リブ21は、図10(b)に示すように軸方向に沿って延び、床支持具本体2の中央よりも先鋭小突片3側で湾曲し、緩やかに延びて先鋭小突片3の基端に結合している。
【0044】
このように第2の実施の形態では、床支持具本体2の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブ21を形成している。これにより、第1の実施の形態で説明した効果に加え、床支持具20を断熱材14に挿入する際、リブ21が床支持具20の挿入を軸方向に沿って案内するため、床支持具20の断熱材に対する挿入を安定して行うことが可能となり、穴あけと挿入が一層容易となって、挿入作業の作業性を一層向上できるという効果が得られる。
【0045】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図11は、本実施の形態に係る床支持具30を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。なお、以下の説明において、床支持具30と第1の実施の形態に係る床支持具1とで共通する部位については同一の符号を付し説明を省略する。
【0046】
床支持具30は、第1の実施の形態に係る床支持具1と基本的に同様の構成を有し、相違点は、床支持具本体2の外周面にねじ溝31が形成されること点にある。ねじ溝31は、図11(b)に示すように、床支持具本体2の外周面においてらせん状に形成されている。
【0047】
このように第3の実施の形態では、床支持具本体2の外周面にらせん状のねじ溝31を形成している。これにより、第1の実施の形態で説明した効果に加え、床支持具1を回転させながら断熱材14に圧入する際に、ねじ溝31が圧入方向を案内するため、穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具30の挿入作業の作業性を一層向上できるという効果が得られる。また、ねじ溝31を形成することで、床支持具30を回転させて断熱材14へ挿入する際の断熱材14の屑片の発生を抑制できるため、断熱材14の断熱性能の向上を図ることもできる。
【0048】
以上、本発明を第1〜第3の実施の形態により説明したが、本発明は、上記実施の形態に限られるものでなく適宜変更が可能なものである。例えば、第1の実施の形態で説明した床支持具1の材質や各部の寸法、更には深溝5、溝6の角度は一例であり、用途や大きさに応じて適宜変更されるものであって構わないが、床支持具1の軸方向の長さに対する先鋭小突片3の高さの割合は、床支持具1の支持剛性を十分に確保するためには、床支持具本体2において断面変化のない領域が確保されることが好ましいため、床支持具1の軸方向長さに対する先鋭小突片3の高さの割合は比較的小さくすることが好ましい。また、深溝5に関しては、90度間隔に形成されること説明したが、これに限らず、60度間隔や120度間隔等で形成しても構わない。
【0049】
また、第1の実施の形態に係る床支持具1は、先鋭小突片3、深溝5及び溝6を含めて型成形により製造する場合について説明したが、円筒部材の一端側を切削加工して先鋭小突片3、深溝5及び溝6を形成してもよい。また、上記の実施の形態では、先鋭小突片3が外周側から内周側に先細りになることを説明したが、内周側から外周側に先細りになるような態様であっても構わない。また、上記の実施の形態では、床支持具本体2が円筒形状であることを説明したが、三角形、矩形、多角形等の断面を有する角管状であっても構わない。
【0050】
また、本実施の形態では、先鋭小突片3が床下構造部13との当接側となり、平坦面4が床仕上げ材との当接側として説明したが、これは逆であっても構わない。また、本実施の形態では、床支持具本体2の一端側に先鋭小突片3を形成したことを説明したが、両端に先鋭小突片3を形成するようにしても構わない。
【0051】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で説明した床支持具1及び床支持具20はともに、断熱材14に対して鉛直方向から挿入されるものであるが、この場合に、断熱材14の所定の位置にこれら床支持具1又は床支持具20を複数配置し、断熱材14と平行に配置された板状の加圧板でまとめてプレスするようにすれば挿入作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 床支持具
2 床支持具本体
3,3A,3B 先鋭小突片
5 深溝
6 溝
10 床構造部(床支持構造)
13 床下構造部(床下地材)
14 断熱材
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下地材上に敷設された断熱材の上に床仕上げ材を支持する床構造において、断熱材を貫通した状態で床下地材と床仕上げ材との間に配置される床支持具及び床支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に住宅等の床部分は、梁及び根太を有してなる床下地材である床下構造部に床仕上げ材を敷設することで構成されている。この種の床では、床下構造部と床仕上げ材との間に断熱材を介在させることがあり、このような場合には、断熱材を貫通するスペーサを床下構造部と床仕上げ材との間に配置し、床下構造部上に床仕上げ材を支持することが知られている。
【0003】
一方、特許文献1には、断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定するために該断熱材に断熱材用スペーサを取り付けることが開示されており、この断熱材用スペーサに断熱材を切削し得る複数の切削刃を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−308920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、住宅等で用いられる上記のような断熱材は樹脂から形成され、比較的脆く柔らかい部材であるが、スペーサを断熱材に挿入し、貫通させる作業は手間のかかるものである。特に、断熱材を熱源から保護するためのアルミシートが断熱材に貼着される場合には、スペーサでアルミシートをうまく切り裂く必要もあるため、その作業負荷は更に大きくなってしまう。このような点に鑑みて、特許文献1では、胴縁に用いる点で床支持具としてのスペーサと用途は異なるものの、断熱材の挿入作業を軽減するためにスペーサに切削刃を形成している。
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたスペーサの切削刃は肉厚が一定に形成されているため、スペーサを断熱材にスムーズに挿入させるためには、切削刃の高さをある程度確保し先細りの部分を高くする必要があり、大きな支持剛性を要求される床支持具としては支持剛性及び耐久性が懸念される。
【0007】
つまり、特許文献1に係るスペーサにおいて切削刃を高くした場合には、その高さの占める割合がスペーサ全体で大きくなり、また隣接する切削刃間の溝が深くなってしまい、スペーサにおいては一端から他端にかけての断面変化が大きくなるため、荷重負荷のための断面積の十分な確保がし難い。また、スペーサの切削刃の先端は平坦に形成されているが、上記のように切削刃の高さを確保した場合には、切削刃を形成できる数が限られ、切削刃の先端面積が小さくなってしまうため、切削刃の先端に大きな応力集中が生じてしまう。
【0008】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、十分な支持剛性及び耐久性を確保でき、かつ、断熱材を容易に貫通でき作業性を向上できる床支持具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決手段として請求項1に記載の発明は、床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入され、前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置される床支持具であって、樹脂材料からなり、筒状の床支持具本体の少なくとも一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片が形成され、隣接する前記先鋭小突片間の溝が所定間隔ごとに各先鋭小突片の高さよりも深い深溝として形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記深溝の両側の前記先鋭小突片の先端が、他の前記先鋭小突片の先端よりも鋭く形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記先鋭小突片が、径方向から見て台形形状に形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記床支持具本体が、円筒状に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記床支持具本体の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブが形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記床支持具本体の外周面にねじ溝が形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、上記のいずれかに記載の床支持具を、床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入し、前記床支持具を前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、床支持具を断熱材に挿入する際、深溝の両側の各先鋭小突片の先端部を起点として断熱材に床支持具本体の外形に沿う複数の分断された穴を形成でき、荷重を受けるに従い前記分断された穴を広げて、床支持具を断熱材に貫通させることができるため、安定した穴あけと挿入が可能となり、床支持具の挿入作業の作業性を向上できる。また、先鋭小突片は厚み方向で先細りになっているため、その高さを高くしなくともスムーズに前記分断された穴を形成できるため、筒状の床支持具本体の一端縁と他端縁とで断面変化のない領域を確保でき、均等に荷重を支持して応力集中を少なくし、支持剛性及び耐久性の向上を図ることができる。また、樹脂材料から形成されるため、熱橋の発生を防止できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、深溝の両側の各先鋭小突片の先端部による断熱材の破断荷重を低くするが可能となり、断熱材に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、先鋭小突片の先端部分の面積を増やすことができ、支持剛性及び耐久性の一層の向上を図ることができる。また、先鋭小突変が幅方向でも先細りとなるため、断熱材に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、周方向に対して方向性なく均等に荷重を支持することが可能となり、応力集中を無くすことができ、支持剛性及び耐久性の一層の向上を図ることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、床支持具を断熱材に挿入する際に、リブが床支持具の挿入を軸方向に沿って案内するため、床支持具本体の断熱材に対する挿入を安定して行うことが可能となり、穴あけと挿入が一層容易となって、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、床支持具本体を回転させながら圧入する際、ねじ溝が圧入方向を案内するため、圧入が容易になり、穴あけと挿入が一層容易となって、床支持具の挿入作業の作業性を一層向上できる。また、床支持具を回転させて断熱材へ挿入する際の断熱材の屑片の発生を抑制できるため、断熱材の断熱性能の向上を図ることもできる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、床仕上げ材と床下地材とから作用する圧縮方向の荷重を、床支持具で均等に支持し、断熱容量を減らすことなく、断熱材の圧縮変形を回避することのできる床支持構造部を、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る床支持具を有する床構造部を示した図である。
【図2】床支持具を有する床構造部の断面を模式的に示した図である。
【図3】第1の実施の形態に係る床支持具の斜視図である。
【図4】第1の実施の形態に係る床支持具の正面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る床支持具の平面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る床支持具の底面図である。
【図7】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図8】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図9】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図10】第2の実施の形態に係る床支持具の平面図及び正面図である。
【図11】第3の実施の形態に係る床支持具の平面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る床支持具1を有する床構造部10を示した図である。図1に示す床構造部10は、鋼製の梁11及び根太12を有してなる床下構造部13と、床下構造部13の上に敷設される断熱材14と、断熱材14の上に敷設されるパーチクルボード15とを有している。このような床構造部10は、ここでは図示していない床仕上げ材をパーチクルボード15上に敷設することで、典型的には工場生産型住宅、小規模オフィス、賃貸住宅等の床部分を構成するものである。
【0025】
床下構造部13は、三つの梁11を平行に配設し、これら梁11を結合するように各梁11間で長手方向の位置を合わせて根太12を複数架設することで構成されている。断熱材14は、所謂、発泡系断熱材であり、ウレタン発泡体(ウレタンフォーム)から形成される断熱材本体14Aと、その表面及び裏面の全面に貼着されたアルミシート14Bとから構成され、アルミシート14Bは、断熱材本体14Aを熱源から保護するために貼着されている。また、パーチクルボード15は、木片を集成して形成されるものであり、断熱材14上に敷設され、床仕上げ材の載置面を形成している。なお、床下構造部13は、床下地材に相当するものである。
【0026】
このような床構造部10において、床支持具1は、断熱材14を貫通した状態で床下構造部13とパーチクルボード15との間であって、梁11上において梁11と根太12とが交差する位置に配置される。床支持具1を梁11上に配置する際は、図2に示すように、床下構造部13に敷設された断熱材14の上方から床支持具1を断熱材14に挿入し、断熱材14を貫通させる。このようにして配置された床支持具1は、パーチクルボード15の上に床仕上げ材が敷設された際に、床仕上げ材とパーチクルボード15を介して当接するとともに、床下構造部13と当接し、床仕上げ材を床下構造部13上に支持するスペーサとして機能する。なお、本実施の形態では床構造部10を所謂ユニット工法における1ユニットにおいて床部分を構成するものとして想定しており、床構造部10が比較的小型なものとなっているが、床支持具1はこのような床構造部10に限らず種々の床部分において適用可能なものであることは言うまでもない。
【0027】
以下、床支持具1について詳細に説明する。図3は床支持具1を下方から見た斜視図であり、図4、図5、図6はそれぞれ床支持具1の正面図、平面図、底面図である。
【0028】
床支持具1は、耐クリープ性能、防蟻性能、耐火性能に優れ、かつ熱伝導率の低い、ナイロンとガラス繊維からなるナイロン樹脂から型成形により形成されており、円筒形状の床支持具本体2と、床支持具本体2の一端縁に形成された先細り形状の複数の先鋭小突片3と、床支持具本体2の他端側に形成された平坦面4とを有している。床支持具1の全体としての軸方向の長さは33mm程度に設定され、断熱材14の厚さと略同一に設定され、また、床支持具1の熱伝導率については熱橋の防止の観点から0.3W/m・k程度に設定されることが好ましい。なお、本実施の形態では、平坦面4が床仕上げ材と当接し、先鋭小突片3が床下構造部13と当接するものとする。
【0029】
床支持具本体2は、その軸方向の長さが30mm程度、外径が40mm程度、肉厚が2mm程度に形成される円筒形状のものであり、その外周面及び内周面が一端側から他端側にかけて外径方向及び内径方向に突出したり、窪んだりすることなく形成されている。一方、先鋭小突片3は、その軸方向の長さ(以下、高さ)が3mm程度に形成され、床支持具1の全体の長さに対する先鋭小突片3の軸方向の高さの割合が1/11程度に設定されている。
【0030】
先鋭小突片3は、床支持具本体2の一端縁において複数周設され、隣接する先鋭小突片3の間には、図4,図6に示すように90度間隔で、先鋭小突片3の先端から床支持具本体2の一端縁を超える深溝5が形成されるとともに、深溝5の間の隣接する先鋭小突片3間には、先鋭小突片3の先端から床支持具本体2の一端縁近傍に至る溝6が形成されている。
【0031】
深溝5は、図4に示すように隣接する先鋭小突片3の各先端から側面に沿って先細りに形成され、図7に示すように、先鋭小突片3の内面側では先鋭小突片3の高さH1よりもやや深い深さD1に至り、外面側では先鋭小突片3の高さH1よりも深く、かつ、内側の深さD1よりも深い深さD2に至るように形成されている。このような深溝5の底部は、内側から外側にかけて直線的に、かつ、厚み方向において床支持具本体2の内周面から30度の角度αで外周面に向かうように形成されている。
【0032】
一方、溝6は、深溝5と同様に図4に示すように隣接する先鋭小突片3の各先端から側面に沿って先細りに形成され、図8に示すように、先鋭小突片3の内側では先鋭小突片3の高さH1の約半分の深さD3に至り、外側では先鋭小突片3の高さH1よりもやや深い深さD4まで至るように形成されている。このような溝6の底部は、内側から外側にかけて直線的に、かつ、厚み方向において床支持具本体2の内周面から45度の角度βで外周面に向かうように形成されている。
【0033】
上記のような深溝5及び溝6それぞれの両側には先鋭小突片3が位置するが、床支持具1では深溝5の両側に位置する先鋭小突片3が溝6の間に位置する先鋭小突片3よりも先端が鋭くなっており、先鋭小突片3には、図3や図4に示すように、深溝5の両側に位置し、径方向から見て下底から上底へかけての稜線の角度が極めて急勾配な台形形状あるいは粗三角形状の先鋭小突片3Aと、径方向から見て比較的緩やかな台形形状の先鋭小突片3Bとが含まれている。
【0034】
これら先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bはともに、その内側面が床支持具本体2の内周面に沿って真直ぐ延びるように形成されるとともに、外側面が床支持具本体2の外周面から突出して内径方向に向けて延び、厚み方向から見て先細りとなるように形成されている。具体的には先鋭小突片3Aの外側面は、図9に示すように床支持具本体2の外周面から30度の角度γで内径方向に向かうように形成され、先鋭小突片3Bの外側面は、図8に示すように床支持具本体2の外周面から30度の角度ηで内周面に向かうように形成されている。
【0035】
そして、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの内側面と外側面とが交わる先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bそれぞれの先端は、図7,図8に示すように平坦な先端面3A’及び先端面3B’が形成されている。このように先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bそれぞれの先端に平坦な面を確保した場合には、荷重を受けた際に先端の応力集中を緩和でき支持剛性及び耐久性を向上できるため、先端面3A’及び先端面3B’の幅はある程度確保することが好ましい。なお、先では、先鋭小突片3Aが先鋭小突片3Bよりも先端が鋭いと説明したが、具体的には、図4に示すように先鋭小突片3Aの台形形状の稜線が先鋭小突片3Bの台形形状の稜線よりも急勾配に形成され、かつ、その先端面3A’が先鋭小突片3Bの先端面3B’よりも面積が小さく形成されることで、この実施の形態では先鋭小突片3Aが先鋭小突片3Bよりも先端が鋭くされている。
【0036】
また、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bはともに、図4に示すように径方向から見て台形形状に形成され、幅方向においても先細り形状に形成されている。先では、深溝5及び溝6の深さが内側よりも外側よりも深いことを説明したが、溝がこのように形成される場合、深溝5及び溝6が内側から外側に向けて広がる。これにより、図3に示すように先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの内側の台形形状は、外側の台形形状よりも幅広に形成され、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの両側面は、内側から外側にかけて幅方向中央に向けて傾く、すなわち、先鋭小突片3A及び先鋭小突片3Bの両側面は外径方向に向いている。このような場合、床支持具1の挿入作業の際に、アルミシート14Bや断熱材14の屑片を外側に押し出しやすくなるため、床支持具の挿入作業の作業性の一層の向上を図ることができる。
【0037】
このように第1実施の形態では、筒状の床支持具本体2の一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片3を形成し、隣接する先鋭小突片3間に所定間隔(90度)ごとに各先鋭小突片3の高さよりも深い深溝5を形成している。これにより、床支持具1を断熱材14に挿入する際に、深溝5の両側の先鋭小突片3Aの先端部を起点として断熱材14に床支持具本体2の外形に沿う複数の分断された穴を形成でき、荷重を受けるに従い前記分断された穴を広げて、床支持具1を断熱材に貫通させることができるため、安定した穴あけと挿入が可能となり、床支持具の挿入作業の作業性を向上できる。
【0038】
また、先鋭小突片3は厚み方向で先細りになっているため、その高さを高くしなくともスムーズに前記分断された穴を形成でき、筒状の床支持具本体2の一端縁と他端縁とで断面変化のない領域を確保できる。そのため、均等に荷重を支持して応力集中を少なくし、支持剛性及び耐久性の向上を図ることができる。なお、本実施の形態では具体的には、先鋭小突片3の高さと床支持具1の軸方向の長さの割合を1/11程度とし、円筒状の床支持具本体2が全体で占める割合を高く確保し、床支持具本体2が断面変化なく荷重を負担できるようにしている。また、床支持具1は樹脂材料から形成されるため、熱橋の発生も防止できる。
【0039】
また、深溝5の両側の先鋭小突片3Aの先端を他の先鋭小突片3Bの先端よりも鋭く形成しているため、深溝5の両側の先鋭小突片3Aの先端部による断熱材14の破断荷重を低くすることが可能となり、断熱材14に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具1の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0040】
また、先鋭小突片3は、径方向から見て台形形状に形成されるため、先鋭小突片3の先端部分の面積を増やすことができ、支持剛性及び耐久性の一層の向上を図ることができる。更に、先鋭小突片3が幅方向でも先細りとなるため、断熱材14に対する穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具1の挿入作業の作業性を一層向上できる。
【0041】
また、床支持具本体2は、円筒状に形成されるため、周方向に対して方向性なく均等に荷重を支持することが可能となり、応力集中を無くすことができ、耐荷重性能を向上できる。
【0042】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10は、本実施の形態に係る床支持具20を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。なお、以下の説明において、床支持具20と第1の実施の形態に係る床支持具1とで共通する部位については同一の符号を付し説明を省略する。
【0043】
床支持具20は、第1の実施の形態に係る床支持具1と基本的に同様の構成を有し、相違点は、床支持具本体2の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブ21が形成される点にある。リブ21は、図10(a)に示すように、床支持具本体2の外周面から突出形成され、外周面において90度の間隔を隔てて4つ形成されている。リブ21は、図10(b)に示すように軸方向に沿って延び、床支持具本体2の中央よりも先鋭小突片3側で湾曲し、緩やかに延びて先鋭小突片3の基端に結合している。
【0044】
このように第2の実施の形態では、床支持具本体2の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブ21を形成している。これにより、第1の実施の形態で説明した効果に加え、床支持具20を断熱材14に挿入する際、リブ21が床支持具20の挿入を軸方向に沿って案内するため、床支持具20の断熱材に対する挿入を安定して行うことが可能となり、穴あけと挿入が一層容易となって、挿入作業の作業性を一層向上できるという効果が得られる。
【0045】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図11は、本実施の形態に係る床支持具30を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。なお、以下の説明において、床支持具30と第1の実施の形態に係る床支持具1とで共通する部位については同一の符号を付し説明を省略する。
【0046】
床支持具30は、第1の実施の形態に係る床支持具1と基本的に同様の構成を有し、相違点は、床支持具本体2の外周面にねじ溝31が形成されること点にある。ねじ溝31は、図11(b)に示すように、床支持具本体2の外周面においてらせん状に形成されている。
【0047】
このように第3の実施の形態では、床支持具本体2の外周面にらせん状のねじ溝31を形成している。これにより、第1の実施の形態で説明した効果に加え、床支持具1を回転させながら断熱材14に圧入する際に、ねじ溝31が圧入方向を案内するため、穴あけと挿入が一層容易になり、床支持具30の挿入作業の作業性を一層向上できるという効果が得られる。また、ねじ溝31を形成することで、床支持具30を回転させて断熱材14へ挿入する際の断熱材14の屑片の発生を抑制できるため、断熱材14の断熱性能の向上を図ることもできる。
【0048】
以上、本発明を第1〜第3の実施の形態により説明したが、本発明は、上記実施の形態に限られるものでなく適宜変更が可能なものである。例えば、第1の実施の形態で説明した床支持具1の材質や各部の寸法、更には深溝5、溝6の角度は一例であり、用途や大きさに応じて適宜変更されるものであって構わないが、床支持具1の軸方向の長さに対する先鋭小突片3の高さの割合は、床支持具1の支持剛性を十分に確保するためには、床支持具本体2において断面変化のない領域が確保されることが好ましいため、床支持具1の軸方向長さに対する先鋭小突片3の高さの割合は比較的小さくすることが好ましい。また、深溝5に関しては、90度間隔に形成されること説明したが、これに限らず、60度間隔や120度間隔等で形成しても構わない。
【0049】
また、第1の実施の形態に係る床支持具1は、先鋭小突片3、深溝5及び溝6を含めて型成形により製造する場合について説明したが、円筒部材の一端側を切削加工して先鋭小突片3、深溝5及び溝6を形成してもよい。また、上記の実施の形態では、先鋭小突片3が外周側から内周側に先細りになることを説明したが、内周側から外周側に先細りになるような態様であっても構わない。また、上記の実施の形態では、床支持具本体2が円筒形状であることを説明したが、三角形、矩形、多角形等の断面を有する角管状であっても構わない。
【0050】
また、本実施の形態では、先鋭小突片3が床下構造部13との当接側となり、平坦面4が床仕上げ材との当接側として説明したが、これは逆であっても構わない。また、本実施の形態では、床支持具本体2の一端側に先鋭小突片3を形成したことを説明したが、両端に先鋭小突片3を形成するようにしても構わない。
【0051】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で説明した床支持具1及び床支持具20はともに、断熱材14に対して鉛直方向から挿入されるものであるが、この場合に、断熱材14の所定の位置にこれら床支持具1又は床支持具20を複数配置し、断熱材14と平行に配置された板状の加圧板でまとめてプレスするようにすれば挿入作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 床支持具
2 床支持具本体
3,3A,3B 先鋭小突片
5 深溝
6 溝
10 床構造部(床支持構造)
13 床下構造部(床下地材)
14 断熱材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入され、前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置される床支持具であって、
樹脂材料からなり、筒状の床支持具本体の少なくとも一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片が形成され、隣接する前記先鋭小突片間の溝が所定間隔ごとに各先鋭小突片の高さよりも深い深溝として形成されることを特徴とする床支持具。
【請求項2】
前記深溝の両側の前記先鋭小突片の先端は、他の前記先鋭小突片の先端よりも鋭く形成されることを特徴とする請求項1に記載の床支持具。
【請求項3】
前記先鋭小突片は、径方向から見て台形形状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の床支持具。
【請求項4】
前記床支持具本体は、円筒状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床支持具。
【請求項5】
前記床支持具本体の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブが形成されることを特徴とする請求項4に記載の床支持具。
【請求項6】
前記床支持具本体の外周面にねじ溝が形成されることを特徴とする請求項4に記載の床支持具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の床支持具を、床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入し、前記床支持具を前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置したことを特徴とする床支持構造。
【請求項1】
床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入され、前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置される床支持具であって、
樹脂材料からなり、筒状の床支持具本体の少なくとも一端縁に、厚み方向で先細り形状の複数の先鋭小突片が形成され、隣接する前記先鋭小突片間の溝が所定間隔ごとに各先鋭小突片の高さよりも深い深溝として形成されることを特徴とする床支持具。
【請求項2】
前記深溝の両側の前記先鋭小突片の先端は、他の前記先鋭小突片の先端よりも鋭く形成されることを特徴とする請求項1に記載の床支持具。
【請求項3】
前記先鋭小突片は、径方向から見て台形形状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の床支持具。
【請求項4】
前記床支持具本体は、円筒状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床支持具。
【請求項5】
前記床支持具本体の外周面に所定間隔を隔てて軸方向に沿う複数のリブが形成されることを特徴とする請求項4に記載の床支持具。
【請求項6】
前記床支持具本体の外周面にねじ溝が形成されることを特徴とする請求項4に記載の床支持具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の床支持具を、床下地材と床仕上げ材との間に介在する断熱材に挿入し、前記床支持具を前記床仕上げ材と前記床下地材との間に配置したことを特徴とする床支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−64040(P2011−64040A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217656(P2009−217656)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
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