説明

床材

【課題】、床面への設置や撤去を容易に行なうことができると共に、容易に製作することができ、また破損が生じることを防ぐことができる床材を提供する。
【解決手段】加硫ゴムシート2の片面に、接着層1で印刷シート4を貼り合わせて床材Aを形成する。床面に接する加硫ゴムシート2の下面には接着層を有しないので、床面に接着しないで使用することができ、接着剤で接着する場合のような手間が不要であって、床材を撤去したり交換したりすることが容易になり、また加硫ゴムシート2に印刷シート4を接着層1で貼り合わせることによって、床材の製作を容易に行なうことができる。また、少なくとも1層の補強層5を有することによって、床材の強度を高めることができ、床材に破れなどの破損が生じることを補強層5で防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に置き敷きして用いる床材に関するものであり、例えば商業施設やイベント会場等の床面において、広告宣伝や案内図、装飾等の目的で各種の情報を表示するために用いられる床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商業施設やイベント会場などにおいて、来場客に商品の宣伝や施設の案内などをするために、宣伝広告や案内図などのポスターを貼ったり、立て看板を設置したり、天井から看板を吊るすなどして、掲示が行なわれている。しかし、これらのポスターや看板を配置することができるスペースには限界があり、来場者に対する宣伝や案内の情報を十分にアピールできないことがある。しかも場合によっては陳列されている商品が看板などで隠れてしまうこともある。
【0003】
そこで、来場者に対して広告宣伝や案内といった情報を効果的に伝達してアピール効果を高く得る手段として、最近では、会場の床面に商品宣伝や案内図などの情報を表示することが多く行なわれている。
【0004】
そして床面に商品宣伝や案内図などの情報を表示する方法として、例えば特許文献1では、基材シートに宣伝や案内などの情報を表示した表示面を設けると共に基材シートの下面に接着層を設けて形成した床材を用い、この床材を接着層で床面に貼り付けることによって、床面に床材の表示面で情報を表示するようにしている。
【0005】
一方、特許文献2には、未加硫ゴムシートと任意の情報が印刷された樹脂フィルムとを重ね、これを加熱加圧することによって、未加硫ゴムシートを加硫すると共に加硫ゴムシートに樹脂フィルムを接着させて製造される床材が記載されている。
【特許文献1】特開2004−163621号公報
【特許文献2】特開平7−112509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記の特許文献1のように、床材を床面に接着剤で接着する場合、床材を接着する前に床面を清掃する必要があり、また床材を剥がした後に床面に残る接着剤を除去する必要があり、床材の設置や撤去に手間がかかるという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2の床材は、床面に接着しないで敷くことによって使用されるものであり、接着剤で接着する場合のような手間が不要であって、床材を撤去したり交換したりすることが容易になるものである。
【0008】
しかしながらこの引用文献2の床材にあって、床面に接する面はゴムシートで形成されているので、床面とのスリップは生じ難いものの、やはり接着されていないために床面との間で多少の動きがあり、このような動きのなかで床材に破れなどの破損が生じるおそれがあるという問題があった。
【0009】
また引用文献2にあって、ゴムシートに樹脂フィルムを接着して床材を作製するにあたっては、未加硫ゴムシートと樹脂フィルムを重ねて加熱加圧することによって加硫する必要があり、床材の作製に手間を要するという問題もあった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、床面への設置や撤去を容易に行なうことができると共に、容易に製作することができる床材を提供することを目的とするものであり、また破損が生じることを防ぐことができる床材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る床材は、加硫ゴムシート2の片面に、接着層1で印刷シート4を貼り合わせて成ることを特徴とするものである。
【0012】
このように形成される床材にあって、床面に接する加硫ゴムシート2の下面には接着層を有しないので、床面に接着しないで敷くことによって使用することができ、接着剤で接着する場合のような手間が不要であって、床材を撤去したり交換したりすることが容易になるものであり、また加硫ゴムシート2に印刷シート4を接着層1で貼り合わせることによって、床材の製作を容易に行なうことができるものである。
【0013】
また本発明は、加硫ゴムシート2と印刷シート4の他に、少なくとも1層の補強層5を有して成ることを特徴とするものである。
【0014】
このように補強層5を設けることによって、床材の強度を高めることができ、床面と接着されていない床材の上を歩行者が歩く際に床材に無理な力が作用しても、床材に破れなどの破損が生じることを補強層5で防ぐことができるものである。
【0015】
また本発明は、上記の補強層5を、加硫ゴムシート2の表面に積層される補強用基材6、加硫ゴムシート2内に埋設される補強用基材6の少なくとも一方で形成して成ることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、床材の基体となる加硫ゴムシート2を補強用基材6で補強することができ、より強度の高い床材を得ることができるものである。
【0017】
また本発明は、クッション層7によって補強層5を形成して成ることを特徴とするものである。
【0018】
このようにクッション層7で補強層5を形成することによって、踏圧の圧縮方向の力をクッション層7で緩衝することができ、加硫ゴムシート2や印刷シート4を保護することができると共に、歩行する人に対して良好なクッション性を持たせることができるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、床面に接する加硫ゴムシート2の下面には接着層を有しないので、床面に接着しないで敷くことによって使用することができるものであり、接着剤で接着する場合のような手間が不要であって、床材を撤去したり交換したりすることが容易になるものである。また加硫ゴムシート2に印刷シート4を接着層1で貼り合わせることによって、床材の製作を容易に行なうことができるものである。
【0020】
また、補強層5を設けることによって、床材の強度を高めることができ、床面と接着されていない床材の上を歩行者が歩く際に床材に無理な力が作用しても、床材に破れなどの破損が生じることを補強層5で防ぐことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
本発明において加硫ゴムシート2としては、エチレン・プロピレン・ジエン・モノマーゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムなど任意のゴム素材で作製したものを用いることができるものであり、ゴム素材は単独の素材であってもよく、また複数種のゴム素材をブレンドしたものであってもよい。加硫ゴムシート2の厚みについても、特に制限されるものではないが、1.0〜5.0mm程度が好ましい。加硫ゴムシート2は床材の基体を構成するものであるので、厚みが1.0mm未満であると、床材としての強度が不足するおそれがあり、逆に厚みが5.0mmを超えると、床材の単位面積当たりの重量が大きくなり過ぎ、床材の敷設や撤去の作業の際の作業性が悪くなるおそれがある。加硫ゴムシート2の広さも、特に制限されるものではなく、例えば幅1〜2m、長さ10〜50m程度に形成することができる。また発泡ゴムからなる加硫ゴムシート2を用いてもよい。発泡ゴムからなる加硫ゴムシート2は強度的には低くなるが、床材Aにクッション性を付与することができるものである。
【0023】
本発明において印刷シート4としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂のシートやフィルム、合成紙など、任意のシート材で作製したものを用いることができるものである。この印刷シート4の表面には、宣伝広告や、案内図など、あるいは化粧模様など、各種の情報が印刷等して設けてある。印刷シート4の厚みは、特に制限されるものではないが、10〜300μm程度が好ましい。印刷シート4の厚みが10μm未満であると、厚みが不足して破損し易くなり、逆に厚みが300μmを超えると、加硫ゴムシート2との間の熱伸縮の差が影響して床材に反り変形が大きく発生するおそれがある。また印刷シート4の表面には、印刷シート4を汚れや損傷から保護するための透明な表面保護層8を設けるようにしてもよい。
【0024】
そして図1(a)に示すように、加硫ゴムシート2の片面に接着層1が、印刷シート4の表面保護層8と反対側の片面に接着層3がそれぞれ設けてある。この接着層1,3は任意の接着剤で形成することができるものであり、例えばブチルゴムやクロロプレンゴムなどを有機溶剤に溶かすと共にさらに粘着付与剤やカーボンブラック等を配合して調製した接着剤を、加硫ゴムシート2の表面や、印刷シート4の表面に塗布して乾燥することによって、形成することができるものである。
【0025】
次にこの加硫ゴムシート2と印刷シート4を接着剤1,3同士で重ねて接着することによって、加硫ゴムシート2の上面に印刷シート4を貼り付けた図1(b)のような床材Aを作製することができるものである。このように、加硫ゴムシート2に印刷シート4を接着剤1,3で接着するだけで、床材Aを作製することができるものであり、接着のために加熱加圧して加硫するような必要がなく、床材Aの製作を容易に行なうことができるものである。
【0026】
ここで、図1の実施の形態では、加硫ゴムシート2と印刷シート4の両方に接着層1,3を設けるようにしたが、加硫ゴムシート2と印刷シート4の一方、例えば加硫ゴムシート2にのみ接着剤1を設けるようにしてもよい。
【0027】
上記のように作製される床材Aは、例えば、商業施設やイベント会場などの床面に敷くことによって使用されるものであり、床材Aの床面に接する加硫ゴムシート2の下面には接着層は設けられていないので、床面に接着させることなく、床面に載置することによって敷設するものである。このとき、床材Aの加硫ゴムシート2が床面に接することになるが、加硫ゴムシート2は床面に対して摩擦係数が高く滑りが少ないので、床面に固定しない置き敷きであっても、その上を歩行者が歩行する床材として十分に使用することができるものである。そしてこのように床材Aは床面に載置しているだけであるので、床材Aを撤去したり交換したりすることが容易になるものである。特に床材Aを床面に接着剤で接着する場合のような、接着の前に床面を掃除する手間や、撤去後に床面から接着剤の残りを除去する手間などが不要になるものである。
【0028】
図2及び図3は本発明の実施の形態の他の例を示すものであり、補強層5を積層するようにしてある。この補強層5は、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタンなどの合成樹脂からなるフィルム、これらの樹脂からなる糸、これらの樹脂からなる扁平テープ状体、あるいはこのような糸や扁平テープなどを織ったり編んだりして形成される編・織布状体、糸や扁平テープなどをクロスさせて交差部を熱溶着したネット状体、粗めの不織布でネット状に形成したもの、ガラス繊維等の無機繊維あるいは金属繊維からなる織物など、加硫ゴムシート2や印刷シート4より引張強度が高い任意の補強用基材6を用いて形成することができる。
【0029】
そして図2の実施の形態では、加硫ゴムシート2の表面の全面に補強用基材6を積層することによって、補強層5を形成するようにしてある。加硫ゴムシート2の表裏両面のうちいずれか一方、あるいは両方に補強用基材6を積層することができるものであり、図2の実施の形態では加硫ゴムシート2の上面に補強用基材6を積層するようにしてある。補強用基材6の積層は、例えば、未加硫のゴムシートに補強用基材6を重ね、これを加熱加圧して未加硫ゴムシートを加硫することによって、加硫と同時に加硫ゴムシート2に補強用基材6を貼り付けるようにして行なうことができる。
【0030】
また図3の実施の形態では、加硫ゴムシート2のシート内の全面に補強用基材6を埋入させるようにしてある。加硫ゴムシート2内に補強用基材6を埋入するにあたっては、例えば、2枚の未加硫のゴムシートの間に補強用基材6を挟み、これを加熱加圧して加硫を行なうことによって、2枚の未加硫ゴムシートの接合で加硫ゴムシート2を作製すると同時に補強用基材6を挟み込むようにして行なうことができるものである。
【0031】
上記のように床材Aに補強用基材6からなる補強層5を積層することによって、床材Aを補強層5で補強して強度を高めることができるものであり、特に加硫ゴムシート2の表面に補強用基材6を積層したり、加硫ゴムシート2内に補強用基材6を埋入したりすることによって、床材Aの基体となる加硫ゴムシート2を補強することができ、補強効果を高く得ることができるものである。
【0032】
従って、上記のように床材Aの床面に接する面は加硫ゴムシート2で形成されていて床面との間でスリップは生じ難いものの、接着されていないためにその上を歩行者が歩く際に床面との間で多少の動きがあり、このような動きのなかで床材Aに引き裂く方向の力が作用することがあるが、補強層5がこの引き裂き力に対抗することによって、床材Aに破損が生じることを防ぐことができるものである。また仮に床材Aの一部に裂けが発生してもそこから更に裂けが伝播して広がることを補強層5で防いで、破損に至ることを防止することができるものである。
【0033】
図4は本発明の更に他の実施の形態を示すものであり、補強層5としてクッション層7を形成するようにしてある。クッション層7は、例えば樹脂発泡シートで形成することができるものであり、特に限定されるものではないが、ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレンなどの発泡シートを用いることができる。このような樹脂発泡シートの場合、発泡倍率は10〜40倍程度の範囲が、厚みは0.5〜50mm程度の範囲が好ましい。クッション層7は加硫ゴムシート2の表裏両面のうちいずれか一方、あるいは両方に積層することができるものであり、図4の実施の形態では加硫ゴムシート2の床面に接する下面にクッション層7を積層するようにしてある。加硫ゴムシート2へのクッション層7の積層は、接着剤を用いた接着によって行なうことができる。尚、補強層5をこのようなクッション層7で形成する場合、上記の図2や図3のような補強用基材6からなる補強層5を併用するようにしてもよい。
【0034】
このように床材Aにクッション層7を設けることによって、床材Aの上を歩く歩行者からの荷重をクッション層7で緩衝することができ、特に床材Aを圧縮させる方向の力を緩衝することができるものであり、加硫ゴムシート2や印刷シート4が圧縮されることによって生じる破損を防ぐことができるものである。また床材Aの上を歩行する人に対して良好なクッション性を付与することができるものであり、床材Aに高級感を持たせることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は分解断面図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の他の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 接着層
2 加硫ゴムシート
3 接着層
4 印刷シート
5 補強層
6 補強用基材
7 クッション層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴムシートの片面に、接着層で印刷シートを貼り合わせて成ることを特徴とする床材。
【請求項2】
少なくとも1層の補強層を有して成ることを特徴とする請求項1に記載の床材。
【請求項3】
加硫ゴムシートの表面に積層される補強用基材、加硫ゴムシート内に埋設される補強用基材の少なくとも一方で、補強層を形成して成ることを特徴とする請求項2に記載の床材。
【請求項4】
クッション層によって補強層を形成して成ることを特徴とする請求項2に記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−121292(P2010−121292A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293628(P2008−293628)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【出願人】(508342013)株式会社シード (2)
【Fターム(参考)】