説明

床構造体と床構造体の施工方法

【課題】床暖房システム導入時における、施工性の向上が図れる床構造体を提供する。
【解決手段】床構造体8は、床柱6の直接の上に根太を介さずに、床2を敷設し、床2の上に真空断熱材を適用した床暖房システム3を設けている。真空断熱材は非常に断熱性能に優れるため、床上の厚さを大きく上げることがないので、床下ではなく、床上に配置させることができる。そのため床暖房システム3の導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略することが可能となる。また、断熱施工の省略により、根太を省略することも可能となる。マンション等の集合住宅の場合は、床下空間が限られているため、床上の厚みを大きく上げることのない真空断熱材を適用することは非常に有効である。また、真空断熱材を適用することにより、床下側へ伝わる熱量を大幅に減少させることができ、省エネルギー化が図ることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空断熱材を用いた床暖房システムを有する床構造体と、床構造体の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床暖房システムには、合板やコンクリートスラブ等の床構造体上に設置される床上設置型と、床下の根太間に設置される床下設置型がある。
【0003】
床上設置型の場合には、床暖房システムからの発熱が床構造体へ奪われるため、床暖房パネル表面の温度上昇に時間を要するとともに、床暖房時の運転費が高くなる。そのため、床暖房システムを導入する建物の既存の床下に断熱施工が実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は、特許文献1に記載された従来の床構造体1の断面図を示すものであり、建物の床2に対して床暖房システム3が敷設され、床下の根太4の間にポリスチレンフォームやポリエチレンフォームなどの断熱材5が配設されている。
【0005】
根太4は床柱6の上にほぼ平行に配置され、束7が床柱6を支えている。
【特許文献1】特開2002−206759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では床暖房システムの導入にあたり、建物の既存の床下に断熱施工を実施しなければならない。そのため、床暖房システム導入時には既存の床下を剥がし、断熱材を配設することになる。特にマンション等の集合住宅の場合は、床下空間が限られているため断熱材を適用することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、従来実施してきた床暖房システム導入時における建物の床下への断熱施工を省略させることで、施工性の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の床構造体は、平行状に配列されている床柱の上に直接床が敷設され、前記床の上に断熱材が配置され、前記断熱材の上面に位置する発熱手段と仕上げ材とで構成される床暖房システムを有し、前記断熱材が真空断熱材であることを特徴とするものであり、断熱性能に優れた真空断熱材を床上に適用し、熱効率を向上させ、床下方向への放熱を防止している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床構造体は、真空断熱材は非常に断熱性能に優れるため、床の厚さを大きく上げることがないので、従来のように床下ではなく、床上に配置させることができる。そのため床暖房システム導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略することが可能となる。
【0010】
さらに従来の床下の断熱施工においては、床柱の上に組まれた根太間に断熱材が配置されていたが断熱施工の省略により、根太を省略することも可能となる。
【0011】
マンション等の集合住宅の場合は、床下空間が限られているため、床上の厚みを大きく上げることのない真空断熱材を適用することは非常に有効である。
【0012】
また、断熱性能に優れた真空断熱材を適用することにより、床下側へ伝わる熱量を大幅に減少させることができ、熱効率が向上し、省エネルギー化が図られることは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
請求項1に記載の床構造体の発明は、建物の床構造体において、平行状に配列されている床柱の上に直接床が敷設され、前記床の上に断熱材が配置され、前記断熱材の上面に位置する発熱手段と仕上げ材とで構成される床暖房システムを有し、前記断熱材が真空断熱材であるものであり、真空断熱材は非常に断熱性能に優れるため、床上の厚さを大きく上げることがないので、従来のように床下ではなく、床上に配置させることができる。そのため床暖房システム導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の床構造体の発明は、建物の床構造体において、平行状に配列されている床柱の上に根太を介さずに床が敷設され、前記床の上に断熱材が配置され、前記断熱材の上面に位置する発熱手段と仕上げ材とで構成される床暖房システムを有し、前記断熱材が真空断熱材であるものであり、真空断熱材は非常に断熱性能に優れるため、床上の厚さを大きく上げることがないので、従来のように床下ではなく、床上に配置させることができる。そのため床暖房システム導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略することが可能となる。
【0015】
したがって、床柱の上に組まれた根太間に断熱材が配置されていたが断熱施工の省略により、根太を省略することも可能となる。
【0016】
請求項3に記載の床構造体の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明における前記真空断熱材が、複数の芯材を、前記芯材側から熱溶着層、ガスバリア層、保護層で構成されたラミネートフィルムからなる外被材で覆い、隣接する前記芯材と前記芯材との間における前記外被材の間に前記芯材を含まない非芯材部の前記外被材同士も熱溶着して、複数の前記芯材のそれぞれを独立した真空空間に位置させたものであり、それぞれが独立した空間に配置された複数の芯材で構成されるので、一部の破袋時においても真空断熱材全体の断熱性能の低下を防止できる。
【0017】
請求項4に記載の床構造体の施工方法の発明は、平行状に配列されている床柱の上に床を敷設し、前記床の直接の上に真空断熱材を配置し、前記断熱材の上面に発熱手段と仕上げ材とを配置させるものであり、真空断熱材は非常に断熱性能に優れるため、床の厚さを大きく上げることがないので、従来のように床下ではなく、床上に配置させることができ、床暖房システム導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略でき、施工性が向上する。
【0018】
請求項5に記載の床構造体の施工方法の発明は、平行状に配列されている床柱の上に根太を介さずに床を敷設し、前記床の上に真空断熱材を配置し、前記断熱材の上面に発熱手段と仕上げ材とを配置させるものであり、真空断熱材は非常に断熱性能に優れるため、床の厚さを大きく上げることがないので、従来のように床下ではなく、床上に配置させることができ、床暖房システム導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略でき、床柱の上に組まれた根太間に断熱材が配置されていたが断熱施工の省略により、根太を省略することができ、工数削減が図れる。
【0019】
請求項6に記載の床構造体の施工方法の発明は、請求項4または請求項5に記載の発明に加えて、真空断熱材の裏面に発泡樹脂を配置し、前記真空断熱材の隣接する芯材と芯材との間における外被材の間に前記芯材を含まない非芯材部を前記発泡樹脂で埋め込んでいるものであり、発泡樹脂が真空断熱材の保護材の役割を果たしているので、現場の微小な異物や、取り扱い不良による真空断熱材の破袋を抑制し施工性が向上する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1、図2は本発明の実施の形態1における床構造体のそれぞれ別の方向から見た断面図、図3は同実施の形態の床暖房システムの断面図、図4は同実施の形態で用いる真空断熱材の平面図、図5は図4のA−A線断面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施の形態における床構造体8は、複数の束7に支えられた床柱6が平行状に配列され、床柱6の直接の上に床2が敷設され、床2の上には床暖房システム3が配設されている。
【0023】
床暖房システム3は、図3に示すように、発熱手段9である温水パイプと温水パイプを引き回す配管溝の形成されたマット10と真空断熱材11と、発泡樹脂12が互いに接着剤で積層一体化され構成されている。この床構造体8は、既存の床2の上に敷設される。マット10の上には伝熱シート13となるアルミシートが貼られ、その上にフローリング材等の仕上げ材14が設置されている。
【0024】
マット10は、発泡ポリスチレンや発泡ポリプロピレン等の発泡断熱材で形成されている。マット10の上面側には溝が形成され、この溝に温水パイプが配設されている。
【0025】
この床暖房システム3の一例としては、マット10の厚さは12mmであり、温水パイプはポリプロピレン製の外径8mm、内径5mmのパイプからなる。また、発泡樹脂12は厚さ5mmの硬質ウレタンフォームであり、本実施の形態では真空断熱材11と一体発泡して形成されている。
【0026】
次に、床暖房システム3を構成する真空断熱材11について説明する。
【0027】
図4に示すように、真空断熱材11は複数の芯材15から構成されており、外被材16において芯材15の存在しない部分は全て熱溶着された熱溶着部17となっている。
【0028】
ここで、芯材15に使用する材料は、気相比率が90%前後の多孔体を板状に加工したものであればよく、工業的に利用できるものとして、粉体、発泡体および繊維体等があり、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を利用することができる。
【0029】
このうち、粉体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物があり、工業的には乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものが利用できる。
【0030】
発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の連続気泡体が利用できる。
【0031】
また、繊維体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物があるが、断熱性能の観点から無機繊維が有利である。無機繊維としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等の公知の材料を利用できる。
【0032】
本実施の形態における真空断熱材11の芯材15の形状は長方形であるが、特に長方形である必要はなく、その他の四角形、多角形、円形、L型、およびこれらの組み合わせからなる任意形状を選定できる。
【0033】
図5に示すように、真空断熱材11の外被材16はラミネート構造を有しており、芯材15側から順に熱溶着層18、ガスバリア層19、保護層20で構成されている。
【0034】
ここで、熱溶着層18は、加熱加圧されることで外被材16の内部を減圧封止するものであり、低密度ポリエチレンフィルム、鎖状低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等、およびこれらの混合物を使用できる。
【0035】
ガスバリア層19は、外被材16の表面を通じての芯材15への空気の侵入を防ぐものであり、本実施の形態では金属箔層としている。
【0036】
保護層20は、外被材16の表面における埃や塵等による傷つきや、摩擦、折り曲げ、さらには芯材15の突き刺し等によるピンホールの発生を防ぐものであり、ナイロンフィルムやポリエチレンテレフタラートフィルム等が使用できる
このようにして作製した真空断熱材11の熱伝導率は、平均温度24℃において、0.005W/m・Kであり、汎用的な断熱材である硬質ウレタンフォームの5倍程度の断熱性能を有する。
【0037】
以上のように、本実施の形態における床構造体8は、平行状に配列されている床柱6の上に床2が敷設され、床2の上に断熱材として真空断熱材11が配置されている。真空断熱材11は非常に断熱性能に優れるため、床上の厚さを大きく上げることがないので、従来のように床下ではなく、床上に配置させることができる。そのため床暖房システム導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略することが可能となる。
【0038】
さらに従来の床下の断熱施工においては、床柱の上に組まれた根太間に断熱材が配置されていたが断熱施工の省略により、根太を省略することも可能となる。
【0039】
また、断熱性能に優れた真空断熱材を適用することにより、床下側への放熱量を大幅に減少させることができるので、省エネルギー化が図られる。
【0040】
また本実施の形態では、真空断熱材11はそれぞれが独立した空間に配置された複数の芯材15で構成されるので、一部の破袋時においても、真空断熱材11全体の断熱性能の低下を防止できる。
【0041】
また本実施の形態では、平行状に配列されている床柱6の上に床2を敷設し、床2の上に真空断熱材11を配置し、真空断熱材11の上面に発熱手段9と仕上げ材14とを配置させる床構造体8の施工方法であり、真空断熱材11は非常に断熱性能に優れるため、床の厚さを大きく上げることがないので、従来のように断熱材を床下ではなく、床上に配置させることができ、床暖房システム導入時において必要とされていた床下の断熱施工を省略でき、施工性が向上する。
【0042】
さらに従来の床下の断熱施工においては、床柱の上に組まれた根太間に断熱材が配置されていたが断熱施工の省略により、根太を省略することができ、工数削減が図れる。
【0043】
また本実施の形態では、真空断熱材11の裏面に発泡樹脂12を配置し、熱溶着部17を発泡樹脂12で埋め込んでいるので、発泡樹脂12が真空断熱材11の保護材の役割を果たしているので、現場の微小な異物や、取り扱い不良による真空断熱材11の破袋を抑制され、施工性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明にかかる床構造体は床上に真空断熱材を配置することで、床下の断熱施工や根太を省略することができ、施工性を向上させることができる。
【0045】
さらに、真空断熱材の優れた断熱性能によって、発熱手段からの床下方向への放熱量を減少させることができ、省エネルギー化が図れると共に、仕上げ材の表面を短時間で設定温度に到達させることが可能となる。
【0046】
したがって、本発明の構成要素は床暖房パネルやホットカーペットの他、所定方向への放熱を促進させることが必要である、調理機器および設備機器等への応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1における床構造体の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における床構造体の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における床暖房システムの断面図
【図4】本発明の実施の形態1における真空断熱材の平面図
【図5】図4のA−A線断面図
【図6】従来の床構造体の断面図
【符号の説明】
【0048】
2 床
3 床暖房システム
6 床柱
7 束
8 床構造体
11 真空断熱材
12 発泡樹脂
14 仕上げ材
15 芯材
16 外被材
18 熱溶着層
19 ガスバリア層
20 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床構造体において、平行状に配列されている床柱の上に直接床が敷設され、前記床の上に断熱材が配置され、前記断熱材の上面に位置する発熱手段と仕上げ材とで構成される床暖房システムを有し、前記断熱材が真空断熱材である床構造体。
【請求項2】
建物の床構造体において、平行状に配列されている床柱の上に根太を介さずに床が敷設され、前記床の上に断熱材が配置され、前記断熱材の上面に位置する発熱手段と仕上げ材とで構成される床暖房システムを有し、前記断熱材が真空断熱材である床構造体。
【請求項3】
前記真空断熱材は、複数の芯材を、前記芯材側から熱溶着層、ガスバリア層、保護層で構成されたラミネートフィルムからなる外被材で覆い、隣接する前記芯材と前記芯材との間における前記外被材の間に前記芯材を含まない非芯材部の前記外被材同士も熱溶着して、複数の前記芯材のそれぞれを独立した真空空間に位置させたものである請求項1または請求項2に記載の床構造体。
【請求項4】
平行状に配列されている床柱の上に床を敷設し、前記床の直接の上に真空断熱材を配置し、前記断熱材の上面に発熱手段と仕上げ材とを配置させる床構造体の施工方法。
【請求項5】
平行状に配列されている床柱の上に根太を介さずに床を敷設し、前記床の上に真空断熱材を配置し、前記断熱材の上面に発熱手段と仕上げ材とを配置させる床構造体の施工方法。
【請求項6】
真空断熱材の裏面に発泡樹脂を配置し、前記真空断熱材の隣接する芯材と芯材との間における外被材の間に前記芯材を含まない非芯材部を前記発泡樹脂で埋め込んでいる請求項4または請求項5に記載の床構造体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−56614(P2007−56614A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245639(P2005−245639)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】