床用目地カバー装置
【課題】底面に面歪みが生じ難く、かつ仮に面歪みが生じている場合には該面歪みを修正し得るカバー体Cを備えた床用目地カバー装置を提供する。
【解決手段】目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とによってカバー体Cを構成した。これにより、各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じ難く、仮に各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体C上に車両等の荷重がかかると、カバー板5が隣接する補強支持杆6,6の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、ガタ付くことがない。
【解決手段】目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とによってカバー体Cを構成した。これにより、各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じ難く、仮に各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体C上に車両等の荷重がかかると、カバー板5が隣接する補強支持杆6,6の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、ガタ付くことがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地を覆う床用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝機能を備えた免震装置によって下部が支持された建物にあっては、地震時における水平方向の揺れが大きくなる傾向がある。このような免震構造の建物の周囲には、隣接する人工地盤との間に、前記揺れを吸収し得る比較的広幅の目地が形成されており、かかる免震構造の建物の目地に好適に使用し得る床用目地カバー装置が、本願出願人によって既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる床用目地カバー装置は、図11(A)に示すように、建物としての建造物Aの床fと、該床fに目地sを介して隣接する人工地盤としての建造物Bとの間に差し渡されて前記目地sを覆うカバー体Cの一端を、前記床fの側縁に連結手段aを介して揺動可能に連結し、該カバー体Cの他端を自由端として、該自由端にその下面から外端上面に向けて傾斜する傾斜端縁bを設けるとともに、該傾斜端縁bの上部からカバー体Cの上面dと略面一となるようにして端部カバー板cを建造物B側に向けて突設する一方、前記建造物Bの側縁に、水平受縁eと、該水平受縁eの外端に前記傾斜端縁bと同方向に傾斜する傾斜受縁gとを備えた摺動受枠hを配設し、該摺動受枠hの水平受縁e上に、前記カバー体Cの自由端を乗載するとともに、前記端部カバー板cの外端を建造物Bの床面i上に乗載し、該端部カバー板cによってカバー体Cの傾斜端縁bと摺動受枠hの傾斜受縁g間に生じる作動空隙jの上方を遮蔽するように構成されている。
【0004】
そして、地震時において、建造物Aと、隣接する建造物Bとが近接する方向に比較的小さく相対変位した場合には、カバー体Cの自由端が摺動受枠hの水平受縁e上を作動空隙jの範囲内で水平に摺動してその相対変位に追従し、さらに大きく相対変位すると、図11(B)に示すように、カバー体Cは、一端の連結手段aを支点として、自由端に形成された傾斜端縁bが摺動受枠hの傾斜受縁gに沿ってずれ上がることにより、その相対変位から逃げることができるようになっている。
【0005】
また、カバー体Cは、図12に示すように、目地sの幅方向に沿って狭幅間隔で並列する複数のメインバーkと該メインバーkに直交する複数のクロスバーmとを格子状に組み付けてなる金属製の剛性基枠nの上部に矩形状の金属製カバー板p(図13参照)を配設して構成されている。ここで、剛性基枠nは、グレーチングとして一般に用いられるものと同一の構造であり、この剛性基枠nによって、カバー体C上にかかる車両等の荷重に耐え得る高い強度を得るようにしている。
【0006】
また、カバー体Cの一端を揺動可能に連結する連結手段aは、図12,図13に示すように、カバー体Cの端部下面に、該カバー体Cの横幅間に亘る長さの連結板rを固着する一方、建造物Aの床fの側縁に目地sの長手方向に沿って配設された保持受枠uの水平受縁vにボルトからなる複数の連結杆wを立設し、各連結杆wを前記連結板rの両端近傍部に形成された上下方向の挿通孔tに夫々遊嵌した状態でコイル状の圧縮ばねxを外嵌して、その上端にナットからなるばね受け部材yを螺着することにより、該圧縮ばねxの弾発力によってカバー体Cの一端を下方に付勢して揺動可能に連結するように構成されている。ここで、前記連結杆wの立設位置に対応するカバー体Cの両側縁近傍部には、所定のメインバーk1(図12参照)の端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板zを配設して、四方を該仕切り板zとエンドバーq及び二本のメインバーk2,k3とで区画した取付け凹部oを形成することにより、連結杆wに対する上方からの圧縮ばねxの外嵌操作及びばね受け部材yの螺着操作を可能とする空間を確保するようにしている。
【特許文献1】特開平10−317516号公報(段落[0025]、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の床用目地カバー装置のカバー体Cは、剛性基枠nを構成する複数のメインバーkと複数のクロスバーmの交差部を溶接によって接合することにより一体化しているため、溶接時に発生する寸法誤差により、全てのメインバーkの底面が同一高さとならず、剛性基枠nの全体としての底面に面歪みが生じ易いものとなっている。このため、該剛性基枠nの上部に金属製カバー板pを溶接により接合して構成されたカバー体Cにあっては、その施工後において、前記底面の面歪みに起因するガタ付きが発生したり、底面が部分的に摺動受枠hの水平受縁eに引っ掛かると円滑な摺動に支障を来すといった問題点があった。
【0008】
また、剛性基枠nを構成する複数のメインバーkが、目地sの幅方向に沿って狭幅間隔で並列されていることにより、連結手段aを構成する連結板r(図13参照)がカバー体Cの端部下面に、該カバー体Cの横幅間に亘って配設されている。このため、該連結板rが乗載される保持受枠uの水平受縁vと該連結板rとの間に、施工時に付着したモルタルや施工後に入り込んだ小石等があると、連結板rが水平受縁vから部分的に浮き上がり、これによってもカバー体Cにガタ付きが発生するという問題点があった。
【0009】
さらに、剛性基枠nを構成する複数のメインバーkが、目地sの幅方向に沿って狭幅間隔で並列されているため、連結手段aを構成する連結杆wに対する上方からの圧縮ばねxの外嵌操作及びばね受け部材yの螺着操作が可能となるように、所定のメインバーk1(図12参照)の端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板zを配設して、四方を該仕切り板zとエンドバーq及び二本のメインバーk2,k3とで区画した取付け凹部oを形成するようにしている。このため、該取付け凹部oの形成が面倒で生産性が悪いという問題点があった。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解消し得るカバー体を備えた床用目地カバー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結手段を介して揺動可能に連結されるとともに、該カバー体の他端を自由端とし、該自由端が他方の床の側縁に摺動可能に乗載されてなる床用目地カバー装置において、前記カバー体が、目地を覆う平板状のカバー板と、該カバー板の下部に目地幅方向に沿い、かつ該カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆とを備えてなることを特徴とする床用目地カバー装置である。
【0012】
ここで、カバー板と補強支持杆の材質としては、圧延鋼(SS400)やステンレス鋼(SUS304)が好適であり、カバー板には、かかる材質からなる金属板が使用され得る一方、補強支持杆には、かかる材質からなるパイプ材が使用され得る。また、カバー板の可撓とは、面方向から外力が作用すると塑性変形を生じない範囲内で面方向にそり曲がった状態となり、外力がなくなると元に戻る弾性変形を意味する。
【0013】
また、前記連結手段が、上下方向の挿通孔が形成され、カバー体の一端に配設された複数の連結板と、建築物の床の側縁に目地の長手方向に沿って配設された保持受枠の、カバー体の一端が乗載される水平受縁に立設され、前記連結板の挿通孔に夫々遊嵌されて、カバー板の下方位置でその上部に受圧部材が装着された複数の連結杆と、該連結杆に外嵌されて、受圧部材とカバー体の連結板との間に介装され、カバー体を下方に付勢する弾発部材とを備えてなるものであって、前記連結板が、受圧部材との間に弾発部材が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆の側面に接合されている構成が提案される。
【0014】
また、前記床用目地カバー装置にあって、複数の補強支持杆のうち、所定の補強支持杆の自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁が形成されるとともに、カバー板の前縁を前記傾斜端縁の上部から他方の床側に向けて突出させて突出端縁とする一方、他方の床の側縁に、水平受縁と、該水平受縁の外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁または前記傾斜端縁と同方向に傾斜した傾斜受縁とを備えた摺動受枠が配設され、該摺動受枠の水平受縁上に前記補強支持杆の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆の傾斜端縁と、摺動受枠の立ち上がり縁または傾斜受縁との間に生じる作動空隙の上方がカバー板の突出端縁によって遮蔽されている構成が提案される。
【0015】
ここで、傾斜端縁が形成される所定の補強支持杆としては、複数の補強支持杆のうち、カバー体の横幅方向の両端に位置する二本の補強支持杆としたり、或いは全ての補強支持杆とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述したように、カバー体が、目地を覆う平板状のカバー板と、該カバー板の下部に目地幅方向に沿い、かつ該カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆とを備えてなるから、複数のメインバーとクロスバーとを溶接によって一体化した剛性基枠を備える従来のカバー体に比して、各補強支持杆の全体としての底面に面歪みが生じ難いため、その施工後において、底面の面歪みに起因するガタ付きの発生が解消されるとともに、底面が部分的に摺動受枠の水平受縁に引っ掛かることがないため、円滑な摺動を行わせることができる。また、複数の補強支持杆が、カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設されているので、仮に各補強支持杆の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体上に車両等の荷重がかかると、カバー板が隣接する補強支持杆の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、各補強支持杆の全体としての底面を摺動受枠の水平受縁に当接させることができ、これによってガタ付きの発生を防止することができる。
【0017】
また、カバー体の一端を一方の床の側縁に揺動可能に連結する連結手段が、上下方向の挿通孔が形成され、カバー体の一端に配設された複数の連結板と、建築物の床の側縁に目地の長手方向に沿って配設された保持受枠の、カバー体の一端が乗載される水平受縁に立設され、前記連結板の挿通孔に夫々遊嵌されて、カバー板の下方位置でその上部に受圧部材が装着された複数の連結杆と、該連結杆に外嵌されて、受圧部材とカバー体の連結板との間に介装され、カバー体を下方に付勢する弾発部材とを備えてなるものにあって、前記連結板が、受圧部材との間に弾発部材が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆の側面に接合されている構成にあっては、保持受枠の水平受縁上に、施工時に付着したモルタルや施工後に入り込んだ小石等があっても、連結板が補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置に配設されていることにより、該連結板が前記モルタルや小石等の上に乗り上げることに起因するカバー体Cのガタ付き発生を防止することができる。また、連結板を補強支持杆の側面に接合することにより、従来構成のように、メインバーの端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板を配設して取付け凹部を形成する面倒な作業を行う必要がないため、生産性を向上させることができる。
【0018】
さらに、前記床用目地カバー装置にあって、複数の補強支持杆のうち、所定の補強支持杆の自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁が形成されるとともに、カバー板の前縁を前記傾斜端縁の上部から他方の床側に向けて突出させて突出端縁とする一方、他方の床の側縁に、水平受縁と、該水平受縁の外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁または前記傾斜端縁と同方向に傾斜した傾斜受縁とを備えた摺動受枠が配設され、該摺動受枠の水平受縁上に前記補強支持杆の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆の傾斜端縁と、摺動受枠の立ち上がり縁または傾斜受縁との間に生じる作動空隙の上方がカバー板の突出端縁によって遮蔽されている構成にあっては、カバー板によって目地が覆われているとともに、該カバー板の前縁の突出端縁によって作動空隙の上方が遮蔽されていることにより、常時は、該カバー板と他方の床の側縁の間に段差及び凹部が生じることがない。また、地震時において、隣接する両建造物が近接する方向に比較的小さく相対変位すると、カバー体の自由端が摺動受枠の水平受縁上を作動空隙の範囲内で水平に摺動してその相対変位に追従し、さらに大きく相対変位すると、カバー体は、一端の連結手段を支点として、自由端に形成された傾斜端縁が、摺動受枠の立ち上がり縁の上端または傾斜受縁に当接してずれ上がり、その相対変位から逃げることができる。ここで、端部に傾斜端縁が形成された所定の補強支持杆を含む複数の補強支持杆が目地幅方向に沿って配設されていることにより、ずれ上がった傾斜端縁の通過後に、摺動受枠の立ち上がり縁の上端または傾斜受縁に当接する各補強支持杆の底面の摺動を円滑に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明にかかる床用目地カバー装置の第一実施例を、図1〜図9に基づいて説明する。
図1において、Aは緩衝機能を備えた免震装置(図示省略)によって下部が支持された免震構造の建物からなる建造物、Bは該建造物Aの周囲に形成された人工地盤からなる建造物であって、目地sを介して隣接している。目地sは、建造物Aの周囲に沿って所定幅で形成され、地震時における建造物Aと周囲の建造物Bとの水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0020】
前記建造物Bの床f2 の側縁には、図1に示すように、後述するカバー体Cの厚みに相当する深さで窪ませた支持段縁1が、目地sの幅方向(図1において左右方向)に所定幅で形成されており、該支持段縁1の前端稜部には水平受縁2aを備えた前部摺動受枠2が配設されている。また、該支持段縁1の後端側には、第一水平受縁3aの後端に傾斜受縁3bを介して第二水平受縁3cが連成され、さらに該第二水平受縁3cの後端に床f2 の上面に向けて上方傾斜する傾斜受縁3dが連成された後部摺動受枠3が配設されている。ここで、前記第二水平受縁3cの深さは、カバー体Cを構成するカバー板5の前端部分に斜め下方に曲成された屈曲端の上下幅に相当する深さに設定されている。これにより、カバー体Cの上面が床f2 の上面と略面一となるようにしている。この前部摺動受枠2と後部摺動受枠3は、目地sに沿う方向(図1において前後方向)に延在するように配設されており、その長さは、図9に示すように、複数個のカバー体Cを配置した状態において、その両端に位置するカバー体C,Cの側方に、該カバー体C,Cが目地sに沿う方向に摺動し得る作動空隙4,4が夫々生じる長さに設定されている。尚、前記前部摺動受枠2と後部摺動受枠3は、図示したように分割形成することなく、一体に形成することも可能である。また、後部摺動受枠3は、図2に示す変形実施例のように、前記傾斜受縁3bに代えて第一水平受縁3aの後端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁3eを備えたものであってもよい。
【0021】
建造物Aの床f1 と建造物Bの床f2 の間には、カバー体Cが差し渡され、目地sを覆っている。該カバー体Cは、目地sに沿う方向に複数個が連続状に配設されるものであって(図9参照)、各カバー体Cは、図1に示すように、その一端が建造物Aの床f1 の側縁に、後述する連結手段13を介して揺動可能に連結されている。各カバー体Cは、他端を自由端としており、該自由端が上述した前部摺動受枠2と後部摺動受枠3が配設された支持段縁1上に摺動可能に乗載されている。
【0022】
各カバー体Cは、図3〜図6に示すように、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向(図1において左右方向)に沿って配設された複数の補強支持杆6とを備えており、各補強支持杆6はカバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して目地sに沿う方向に並列されている。カバー板5は、厚さ4.5mm程度の圧延鋼(SS400)からなる金属板が素材に用いられており、補強支持杆6には、高さ75mm程度、横幅45mm程度、肉厚2.3mm程度の圧延鋼(SS400)からなる角パイプ材が素材に用いられている。また、カバー板5は長さ1353mm程度、幅998mm程度の矩形状に形成されており、その後端にはカバー板5の端縁を下方に屈曲させた後壁縁7が連成されている。補強支持杆6は、図5に示すように、カバー板5の裏面の幅方向両側縁とその中間位置に略等間隔で配置され、複数の所要箇所に施された溶接によってカバー板5に接合されている。尚、カバー板5及び補強支持杆6の材質としては、ステンレス鋼(SUS304)を用いることも可能である。
【0023】
カバー板5の裏面の幅方向両側縁に配置された一対の補強支持杆6a,6aの自由端側の端部には、該補強支持杆6a,6aを斜めに切断することにより、図3に示すように、その下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁8が夫々形成されており、中間位置に配置されたその他の補強支持杆6bの端部は、前記傾斜端縁8の長さ分だけ短くなっている。また、カバー板5の裏面には、前記補強支持杆6a,6aの傾斜端縁8,8間に亘って配設された断面L形のアングル材からなる補強杆22が溶接によって接合されている。
【0024】
また、後述する連結手段13を介して建造物Aの床f1 の側縁に揺動可能に連結されるカバー体Cの一端には、図3,図5に示すように、その幅方向両側縁の近傍位置に、連結手段13を構成する連結板9,9が一対で配設されている。該連結板9,9は、上下方向の挿通孔10,10が形成された矩形状の金属製平板からなり、補強支持杆6の下面より上方となる所定高さ位置で、その二辺縁が補強支持杆6aの側面とカバー板5の後壁縁7の側面に溶接によって接合されている。尚、該連結板9,9の配設態様としては、図6に示すように、該連結板9,9を帯板状に形成して、その長手方向両端部を、隣接する補強支持杆6aと補強支持杆6bの夫々の側面に溶接によって接合することも可能である。
【0025】
カバー体Cの自由端は、前記傾斜端縁8と上述した後部摺動受枠3の傾斜受縁3b(図1参照)または立ち上がり縁3e(図2参照)との間に適宜幅の空隙が生じるようにして前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠3の第一水平受縁3aを備えた支持段縁1上に乗載されており、前記空隙を作動空隙11としている。また、カバー板5の前縁は、前記傾斜端縁8の上部から建造物Bの床f2 側に向けて突出されて突出端縁12となっており、この突出端縁12によって前記作動空隙11の上方が遮蔽されている。
【0026】
前記連結手段13を図7に基づいて説明する。
建造物Aの床f1 の側縁上には、目地sに沿う方向に延在するようにして保持受枠14が配設されている。該保持受枠14は、水平受縁14aと垂直縁14bとを備えた断面L形に形成されており、水平受縁14aの上面に、上述したカバー体Cを構成する各補強支持杆6の一端が乗載されている。また、水平受縁14aには、その下面側から挿通して該水平受縁14aに固着したボルトからなる複数の連結杆15が、前記連結板9,9の挿通孔10,10に対応する位置に夫々立設されている。各連結杆15は、水平受縁14a上にカバー体Cを構成する各補強支持杆6の一端を乗載した状態において、前記連結板9,9の挿通孔10,10に下方から遊嵌され、その上端にはカバー板5の下方位置で、ナットからなる受圧部材16が螺着されている。また、各連結杆15には、前記受圧部材16と連結板9との間に介装するようにしてコイルバネからなる弾発部材17が圧縮状態で外嵌されており、該弾発部材17の弾発力によってカバー体Cを常時下方に付勢するようにしている。尚、このカバー体Cの下方付勢手段としては、コイルバネに代えてゴムリング(図示省略)を用いることも可能である。これにより、建造物Aの床f1 の側縁に、カバー体Cの一端を揺動可能に連結する連結手段13が構成されている。また、この連結状態において、カバー板5の上面が建造物Aの床f1 の上面と同一高さとなるようにしている。さらに、カバー板5には、連結板9,9の挿通孔10,10の上方位置に、前記弾発部材17及び受圧部材16の取付け操作を可能とする操作孔18,18が開口されており、該操作孔18,18には、遮蔽キャップ19,19が着脱可能に嵌着されている。
【0027】
また、カバー板5の上面には、所定形状の無数の凸部からなる滑り止め部23(図4参照)が一体形成されている。
【0028】
次に、かかる構成からなる床用目地カバー装置の作動態様について説明する。
カバー体Cは、カバー板5の上面が、建造物Aの床f1 の上面及び建造物Bの床f2 の上面と略面一になるように配設されていることにより、常時は、図1に示すように、該カバー体Cと、建造物Aの床f1 または建造物Bの床f2 との間に段差が生じることがない。また、地震時において、建造物Aと、隣接する建造物Bとが近接する方向に比較的小さく相対変位すると、カバー体Cの自由端が作動空隙11の範囲内で水平に摺動してその相対変位に追従し、さらに大きく相対変位すると、カバー体Cは、自由端に形成された傾斜端縁8が、傾斜受縁3b(図1参照)または立ち上がり縁3e(図2参照)の上端に当接してずれ上がり、図8に示すように、連結手段13により連結された一端を支点として傾動することにより、その相対変位から逃げることができる。ここで、端部に傾斜端縁8が形成された所定の補強支持杆6a,6aを含む複数の補強支持杆6が目地sの幅方向に沿って配設されていることにより、ずれ上がった傾斜端縁8の通過後に、立ち上がり縁3eの上端または傾斜受縁3bに当接する各補強支持杆6の底面の摺動を円滑に行わせることができる。
【0029】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが離れる方向に相対変位すると、カバー体Cは、その自由端が支持段縁1上を、傾斜受縁3b(または立ち上がり縁3e)と逆方向に向けて水平に摺動してその相対変位に追従する。
【0030】
そして、地震が終って建造物Aと建造物Bとが定常位置に戻ると、これに伴なってカバー体Cの自由端も、図1に示した定常位置に戻り、カバー体Cが定常状態に復帰する。
【0031】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが前後方向(目地sに沿う方向)に相対変位すると、カバー体Cの自由端は、支持段縁1上を前後方向に摺動してその相対変位に追従する。この場合、図9に示すように、目地sに沿って連続状に配置された複数個のカバー体Cの、その両端に位置するカバー体C,Cの側方に位置させて、前部摺動受枠2と後部摺動受枠3の側端部に作動空隙4,4が設けられていることにより、該作動空隙4,4によって各カバー体Cの自由端の前後方向の摺動が可能となっている。
【0032】
さらに、建造物Aと、隣接する建造物Bとが上下方向に相対変位すると、カバー体Cは、連結手段13により建造物Aの床f1 の側縁に連結された一端を支点として、建造物Aもしくは隣接する建造物Bの上下動に伴なって傾動して、その相対変位に追従する。
【0033】
かかる構成にあって、上述したように、カバー体Cが、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とを備えてなるから、剛性基枠n(図12参照)を備えた従来のカバー体Cに比して、各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じ難いため、その施工後において、底面の面歪みに起因するガタ付きの発生が解消されるとともに、底面が部分的に前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠3の第一水平受縁3aに引っ掛かることがないため、円滑な摺動を行わせることができる。また、複数の補強支持杆6が、カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設されているので、仮に各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体C上に車両等の荷重がかかると、カバー板5が隣接する補強支持杆6の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、各補強支持杆6の全体としての底面を前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠3の第一水平受縁3aに当接させることができ、これによってガタ付きの発生を防止することができる。
【0034】
また、連結手段13を構成する複数の連結板9が、受圧部材16との間に弾発部材17が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆6の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆6の側面に接合されているので、保持受枠14の水平受縁14a上に、施工時に付着したモルタルや施工後に入り込んだ小石等があっても、連結板9が補強支持杆6の下面より上方となる所定高さ位置に配設されていることにより、該連結板9が前記モルタルや小石等の上に乗り上げることに起因するカバー体Cのガタ付き発生を防止することができる。また、連結板9を補強支持杆6の側面に接合することにより、従来構成のように、メインバーの端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板を配設して取付け凹部o(図12参照)を形成する面倒な作業を行う必要がないため、生産性を向上させることができる。
【0035】
さらに、前記床用目地カバー装置にあって、複数の補強支持杆6のうち、所定の補強支持杆6a,6aの自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁8が形成されるとともに、カバー板5の前縁を前記傾斜端縁8の上部から他方の床f2 側に向けて突出させて突出端縁12とする一方、他方の床f2の側縁に、第一水平受縁3aと、該第一水平受縁3aの外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁3eまたは前記傾斜端縁8と同方向に傾斜した傾斜受縁3bとを備えた後部摺動受枠3が配設され、該後部摺動受枠3の第一水平受縁3a上に前記補強支持杆6の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆6の傾斜端縁8と、後部摺動受枠3の立ち上がり縁3eまたは傾斜受縁3bとの間に生じる作動空隙11の上方がカバー板5の突出端縁12によって遮蔽されている構成にあっては、カバー板5によって目地sが覆われているとともに、該カバー板5の前縁の突出端縁12によって作動空隙11の上方が遮蔽されていることにより、常時は、該カバー板5と他方の床f2の側縁の間に段差及び凹部が生じることがない。また、地震時において、隣接する両建造物A,Bが近接する方向に比較的大きく相対変位すると、カバー体Cは、一端の連結手段13を支点として、自由端に形成された傾斜端縁8が、後部摺動受枠3の立ち上がり縁3eの上端または傾斜受縁3bに当接してずれ上がり、その相対変位から逃げることができる。そして、端部に傾斜端縁8が形成された所定の補強支持杆6a,6aを含む複数の補強支持杆6が目地sの幅方向に沿って配設されていることにより、ずれ上がった傾斜端縁8の通過後に、後部摺動受枠3の立ち上がり縁3eの上端または傾斜受縁3bに当接する各補強支持杆6の底面の摺動を円滑に行わせることができる。
【0036】
図10は、第二実施例を示し、この第二実施例は、建造物Aに目地sを介して隣接する建造物Bの床f2 が、建造物Aの床f1 の高さに比して、カバー体Cの厚み分だけ低く設定されており、該床f2 の側縁に水平受縁2aを備えた前部摺動受枠2と比較的長い水平受縁20aを備えた後部摺動受枠20が配設されている。尚、該後部摺動受枠20は前後に分割して形成することも可能である。また、建造物Aの床f1 と建造物Bの床f2 間の目地sに差し渡されて該目地sを覆うカバー体Cは、その一端が建造物Aの床f1 の側縁に、上述した連結手段13を介して揺動可能に連結され、他端の自由端が建造物Bの床f2 の側縁上に摺動可能に乗載されている。
【0037】
カバー体Cは、第一実施例と同様に、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とを備えている。また、カバー体Cには、カバー板5の前縁を各補強支持杆6の前端より前方に突出させて下方傾斜させたスロープ部21が設けられており、該スロープ部21は、その下面が各補強支持杆6から夫々突設された支持板24によって支持されている。そして、このスロープ部21により、カバー体Cの自由端側の端部上面と建造物Bの床f2 の上面との間に急激な段差が生じないようにしている。
【0038】
その他、第一実施例と共通する構成部分については第一実施例と同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0039】
かかる構成からなる床用目地カバー装置は、カバー体Cが、常時は図10に示す定常位置で目地sを覆っている。そして、地震時において、建造物Aと、隣接する建造物Bとが離近する方向に相対変位すると、カバー体Cの自由端が建造物Bの床f2 の側縁上を水平に摺動してその相対変位に追従する。
【0040】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが前後方向(目地sに沿う方向)に相対変位すると、カバー体Cの自由端が、建造物Bの床f2 の側縁上を前後方向に摺動してその相対変位に追従する。
【0041】
さらに、建造物Aと、隣接する建造物Bとが上下方向に相対変位すると、カバー体Cは、連結手段13により建造物Aの床f1 の側縁に連結された一端を支点として、建造物Aもしくは隣接する建造物Bの上下動に伴なって傾動して、その相対変位に追従する。
【0042】
そして、この第二実施例にあっても、カバー体Cが、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とを備えてなるから、剛性基枠n(図12参照)を備えた従来のカバー体Cに比して、各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じ難いため、その施工後において、底面の面歪みに起因するガタ付きの発生が解消されるとともに、底面が部分的に前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠20の水平受縁20aに引っ掛かることがないため、円滑な摺動を行わせることができる。また、複数の補強支持杆6が、カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設されているので、仮に各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体C上に車両等の荷重がかかると、カバー板5が隣接する補強支持杆6の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、各補強支持杆6の全体としての底面を前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠20の水平受縁20aに当接させることができ、これによってガタ付きの発生を防止することができる。
【0043】
尚、上記各実施例において、建造物Aを免震構造の建造物、建造物Bを人工地盤からなる建造物としたが、これに代えて、建造物Aを人工地盤からなる建造物、建造物Bを免震構造の建造物としてもよい。また、本発明にかかる床用目地カバー装置は、免震装置によって下部が支持された免震構造の建造物以外の一般的な建造物にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第一実施例にかかる床用目地カバー装置の施工状態を示す縦断正面図である。
【図2】第一実施例の変形実施例にかかる床用目地カバー装置の施工状態を示す縦断正面図である。
【図3】同上の床用目地カバー装置を構成するカバー体Cの縦断正面図である。
【図4】同上のカバー体Cの平面図である。
【図5】同上のカバー体Cの底面図である。
【図6】連結板9の他の配設態様を示すカバー体Cの底面図である。
【図7】連結手段13部分の拡大図である。
【図8】カバー体Cの作用説明図である。
【図9】複数個のカバー体Cを目地sに沿う方向に連続状に配設した状態を示す平面図である。
【図10】第二実施例にかかる床用目地カバー装置の施工状態を示す縦断正面図である。
【図11】(A)は従来構成の床用目地カバー装置の概略縦断正面図、(B)はその作用説明図である。
【図12】従来のカバー体Cを備えた床用目地カバー装置の平面図である。
【図13】従来の連結手段a部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
A 建造物
B 建造物
C カバー体
f1 床
f2 床
s 目地
3 後部摺動受枠(摺動受枠)
3a 水平受縁
3b 傾斜受縁
3e 立ち上がり縁
5 カバー板
6,6a,6b 補強支持杆
8 傾斜端縁
9 連結板
10 挿通孔
11 作動空隙
12 突出端縁
13 連結手段
14 保持受枠
14a 水平受縁
15 連結杆
16 受圧部材
17 弾発部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地を覆う床用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝機能を備えた免震装置によって下部が支持された建物にあっては、地震時における水平方向の揺れが大きくなる傾向がある。このような免震構造の建物の周囲には、隣接する人工地盤との間に、前記揺れを吸収し得る比較的広幅の目地が形成されており、かかる免震構造の建物の目地に好適に使用し得る床用目地カバー装置が、本願出願人によって既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる床用目地カバー装置は、図11(A)に示すように、建物としての建造物Aの床fと、該床fに目地sを介して隣接する人工地盤としての建造物Bとの間に差し渡されて前記目地sを覆うカバー体Cの一端を、前記床fの側縁に連結手段aを介して揺動可能に連結し、該カバー体Cの他端を自由端として、該自由端にその下面から外端上面に向けて傾斜する傾斜端縁bを設けるとともに、該傾斜端縁bの上部からカバー体Cの上面dと略面一となるようにして端部カバー板cを建造物B側に向けて突設する一方、前記建造物Bの側縁に、水平受縁eと、該水平受縁eの外端に前記傾斜端縁bと同方向に傾斜する傾斜受縁gとを備えた摺動受枠hを配設し、該摺動受枠hの水平受縁e上に、前記カバー体Cの自由端を乗載するとともに、前記端部カバー板cの外端を建造物Bの床面i上に乗載し、該端部カバー板cによってカバー体Cの傾斜端縁bと摺動受枠hの傾斜受縁g間に生じる作動空隙jの上方を遮蔽するように構成されている。
【0004】
そして、地震時において、建造物Aと、隣接する建造物Bとが近接する方向に比較的小さく相対変位した場合には、カバー体Cの自由端が摺動受枠hの水平受縁e上を作動空隙jの範囲内で水平に摺動してその相対変位に追従し、さらに大きく相対変位すると、図11(B)に示すように、カバー体Cは、一端の連結手段aを支点として、自由端に形成された傾斜端縁bが摺動受枠hの傾斜受縁gに沿ってずれ上がることにより、その相対変位から逃げることができるようになっている。
【0005】
また、カバー体Cは、図12に示すように、目地sの幅方向に沿って狭幅間隔で並列する複数のメインバーkと該メインバーkに直交する複数のクロスバーmとを格子状に組み付けてなる金属製の剛性基枠nの上部に矩形状の金属製カバー板p(図13参照)を配設して構成されている。ここで、剛性基枠nは、グレーチングとして一般に用いられるものと同一の構造であり、この剛性基枠nによって、カバー体C上にかかる車両等の荷重に耐え得る高い強度を得るようにしている。
【0006】
また、カバー体Cの一端を揺動可能に連結する連結手段aは、図12,図13に示すように、カバー体Cの端部下面に、該カバー体Cの横幅間に亘る長さの連結板rを固着する一方、建造物Aの床fの側縁に目地sの長手方向に沿って配設された保持受枠uの水平受縁vにボルトからなる複数の連結杆wを立設し、各連結杆wを前記連結板rの両端近傍部に形成された上下方向の挿通孔tに夫々遊嵌した状態でコイル状の圧縮ばねxを外嵌して、その上端にナットからなるばね受け部材yを螺着することにより、該圧縮ばねxの弾発力によってカバー体Cの一端を下方に付勢して揺動可能に連結するように構成されている。ここで、前記連結杆wの立設位置に対応するカバー体Cの両側縁近傍部には、所定のメインバーk1(図12参照)の端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板zを配設して、四方を該仕切り板zとエンドバーq及び二本のメインバーk2,k3とで区画した取付け凹部oを形成することにより、連結杆wに対する上方からの圧縮ばねxの外嵌操作及びばね受け部材yの螺着操作を可能とする空間を確保するようにしている。
【特許文献1】特開平10−317516号公報(段落[0025]、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の床用目地カバー装置のカバー体Cは、剛性基枠nを構成する複数のメインバーkと複数のクロスバーmの交差部を溶接によって接合することにより一体化しているため、溶接時に発生する寸法誤差により、全てのメインバーkの底面が同一高さとならず、剛性基枠nの全体としての底面に面歪みが生じ易いものとなっている。このため、該剛性基枠nの上部に金属製カバー板pを溶接により接合して構成されたカバー体Cにあっては、その施工後において、前記底面の面歪みに起因するガタ付きが発生したり、底面が部分的に摺動受枠hの水平受縁eに引っ掛かると円滑な摺動に支障を来すといった問題点があった。
【0008】
また、剛性基枠nを構成する複数のメインバーkが、目地sの幅方向に沿って狭幅間隔で並列されていることにより、連結手段aを構成する連結板r(図13参照)がカバー体Cの端部下面に、該カバー体Cの横幅間に亘って配設されている。このため、該連結板rが乗載される保持受枠uの水平受縁vと該連結板rとの間に、施工時に付着したモルタルや施工後に入り込んだ小石等があると、連結板rが水平受縁vから部分的に浮き上がり、これによってもカバー体Cにガタ付きが発生するという問題点があった。
【0009】
さらに、剛性基枠nを構成する複数のメインバーkが、目地sの幅方向に沿って狭幅間隔で並列されているため、連結手段aを構成する連結杆wに対する上方からの圧縮ばねxの外嵌操作及びばね受け部材yの螺着操作が可能となるように、所定のメインバーk1(図12参照)の端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板zを配設して、四方を該仕切り板zとエンドバーq及び二本のメインバーk2,k3とで区画した取付け凹部oを形成するようにしている。このため、該取付け凹部oの形成が面倒で生産性が悪いという問題点があった。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解消し得るカバー体を備えた床用目地カバー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結手段を介して揺動可能に連結されるとともに、該カバー体の他端を自由端とし、該自由端が他方の床の側縁に摺動可能に乗載されてなる床用目地カバー装置において、前記カバー体が、目地を覆う平板状のカバー板と、該カバー板の下部に目地幅方向に沿い、かつ該カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆とを備えてなることを特徴とする床用目地カバー装置である。
【0012】
ここで、カバー板と補強支持杆の材質としては、圧延鋼(SS400)やステンレス鋼(SUS304)が好適であり、カバー板には、かかる材質からなる金属板が使用され得る一方、補強支持杆には、かかる材質からなるパイプ材が使用され得る。また、カバー板の可撓とは、面方向から外力が作用すると塑性変形を生じない範囲内で面方向にそり曲がった状態となり、外力がなくなると元に戻る弾性変形を意味する。
【0013】
また、前記連結手段が、上下方向の挿通孔が形成され、カバー体の一端に配設された複数の連結板と、建築物の床の側縁に目地の長手方向に沿って配設された保持受枠の、カバー体の一端が乗載される水平受縁に立設され、前記連結板の挿通孔に夫々遊嵌されて、カバー板の下方位置でその上部に受圧部材が装着された複数の連結杆と、該連結杆に外嵌されて、受圧部材とカバー体の連結板との間に介装され、カバー体を下方に付勢する弾発部材とを備えてなるものであって、前記連結板が、受圧部材との間に弾発部材が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆の側面に接合されている構成が提案される。
【0014】
また、前記床用目地カバー装置にあって、複数の補強支持杆のうち、所定の補強支持杆の自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁が形成されるとともに、カバー板の前縁を前記傾斜端縁の上部から他方の床側に向けて突出させて突出端縁とする一方、他方の床の側縁に、水平受縁と、該水平受縁の外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁または前記傾斜端縁と同方向に傾斜した傾斜受縁とを備えた摺動受枠が配設され、該摺動受枠の水平受縁上に前記補強支持杆の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆の傾斜端縁と、摺動受枠の立ち上がり縁または傾斜受縁との間に生じる作動空隙の上方がカバー板の突出端縁によって遮蔽されている構成が提案される。
【0015】
ここで、傾斜端縁が形成される所定の補強支持杆としては、複数の補強支持杆のうち、カバー体の横幅方向の両端に位置する二本の補強支持杆としたり、或いは全ての補強支持杆とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述したように、カバー体が、目地を覆う平板状のカバー板と、該カバー板の下部に目地幅方向に沿い、かつ該カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆とを備えてなるから、複数のメインバーとクロスバーとを溶接によって一体化した剛性基枠を備える従来のカバー体に比して、各補強支持杆の全体としての底面に面歪みが生じ難いため、その施工後において、底面の面歪みに起因するガタ付きの発生が解消されるとともに、底面が部分的に摺動受枠の水平受縁に引っ掛かることがないため、円滑な摺動を行わせることができる。また、複数の補強支持杆が、カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設されているので、仮に各補強支持杆の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体上に車両等の荷重がかかると、カバー板が隣接する補強支持杆の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、各補強支持杆の全体としての底面を摺動受枠の水平受縁に当接させることができ、これによってガタ付きの発生を防止することができる。
【0017】
また、カバー体の一端を一方の床の側縁に揺動可能に連結する連結手段が、上下方向の挿通孔が形成され、カバー体の一端に配設された複数の連結板と、建築物の床の側縁に目地の長手方向に沿って配設された保持受枠の、カバー体の一端が乗載される水平受縁に立設され、前記連結板の挿通孔に夫々遊嵌されて、カバー板の下方位置でその上部に受圧部材が装着された複数の連結杆と、該連結杆に外嵌されて、受圧部材とカバー体の連結板との間に介装され、カバー体を下方に付勢する弾発部材とを備えてなるものにあって、前記連結板が、受圧部材との間に弾発部材が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆の側面に接合されている構成にあっては、保持受枠の水平受縁上に、施工時に付着したモルタルや施工後に入り込んだ小石等があっても、連結板が補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置に配設されていることにより、該連結板が前記モルタルや小石等の上に乗り上げることに起因するカバー体Cのガタ付き発生を防止することができる。また、連結板を補強支持杆の側面に接合することにより、従来構成のように、メインバーの端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板を配設して取付け凹部を形成する面倒な作業を行う必要がないため、生産性を向上させることができる。
【0018】
さらに、前記床用目地カバー装置にあって、複数の補強支持杆のうち、所定の補強支持杆の自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁が形成されるとともに、カバー板の前縁を前記傾斜端縁の上部から他方の床側に向けて突出させて突出端縁とする一方、他方の床の側縁に、水平受縁と、該水平受縁の外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁または前記傾斜端縁と同方向に傾斜した傾斜受縁とを備えた摺動受枠が配設され、該摺動受枠の水平受縁上に前記補強支持杆の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆の傾斜端縁と、摺動受枠の立ち上がり縁または傾斜受縁との間に生じる作動空隙の上方がカバー板の突出端縁によって遮蔽されている構成にあっては、カバー板によって目地が覆われているとともに、該カバー板の前縁の突出端縁によって作動空隙の上方が遮蔽されていることにより、常時は、該カバー板と他方の床の側縁の間に段差及び凹部が生じることがない。また、地震時において、隣接する両建造物が近接する方向に比較的小さく相対変位すると、カバー体の自由端が摺動受枠の水平受縁上を作動空隙の範囲内で水平に摺動してその相対変位に追従し、さらに大きく相対変位すると、カバー体は、一端の連結手段を支点として、自由端に形成された傾斜端縁が、摺動受枠の立ち上がり縁の上端または傾斜受縁に当接してずれ上がり、その相対変位から逃げることができる。ここで、端部に傾斜端縁が形成された所定の補強支持杆を含む複数の補強支持杆が目地幅方向に沿って配設されていることにより、ずれ上がった傾斜端縁の通過後に、摺動受枠の立ち上がり縁の上端または傾斜受縁に当接する各補強支持杆の底面の摺動を円滑に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明にかかる床用目地カバー装置の第一実施例を、図1〜図9に基づいて説明する。
図1において、Aは緩衝機能を備えた免震装置(図示省略)によって下部が支持された免震構造の建物からなる建造物、Bは該建造物Aの周囲に形成された人工地盤からなる建造物であって、目地sを介して隣接している。目地sは、建造物Aの周囲に沿って所定幅で形成され、地震時における建造物Aと周囲の建造物Bとの水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0020】
前記建造物Bの床f2 の側縁には、図1に示すように、後述するカバー体Cの厚みに相当する深さで窪ませた支持段縁1が、目地sの幅方向(図1において左右方向)に所定幅で形成されており、該支持段縁1の前端稜部には水平受縁2aを備えた前部摺動受枠2が配設されている。また、該支持段縁1の後端側には、第一水平受縁3aの後端に傾斜受縁3bを介して第二水平受縁3cが連成され、さらに該第二水平受縁3cの後端に床f2 の上面に向けて上方傾斜する傾斜受縁3dが連成された後部摺動受枠3が配設されている。ここで、前記第二水平受縁3cの深さは、カバー体Cを構成するカバー板5の前端部分に斜め下方に曲成された屈曲端の上下幅に相当する深さに設定されている。これにより、カバー体Cの上面が床f2 の上面と略面一となるようにしている。この前部摺動受枠2と後部摺動受枠3は、目地sに沿う方向(図1において前後方向)に延在するように配設されており、その長さは、図9に示すように、複数個のカバー体Cを配置した状態において、その両端に位置するカバー体C,Cの側方に、該カバー体C,Cが目地sに沿う方向に摺動し得る作動空隙4,4が夫々生じる長さに設定されている。尚、前記前部摺動受枠2と後部摺動受枠3は、図示したように分割形成することなく、一体に形成することも可能である。また、後部摺動受枠3は、図2に示す変形実施例のように、前記傾斜受縁3bに代えて第一水平受縁3aの後端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁3eを備えたものであってもよい。
【0021】
建造物Aの床f1 と建造物Bの床f2 の間には、カバー体Cが差し渡され、目地sを覆っている。該カバー体Cは、目地sに沿う方向に複数個が連続状に配設されるものであって(図9参照)、各カバー体Cは、図1に示すように、その一端が建造物Aの床f1 の側縁に、後述する連結手段13を介して揺動可能に連結されている。各カバー体Cは、他端を自由端としており、該自由端が上述した前部摺動受枠2と後部摺動受枠3が配設された支持段縁1上に摺動可能に乗載されている。
【0022】
各カバー体Cは、図3〜図6に示すように、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向(図1において左右方向)に沿って配設された複数の補強支持杆6とを備えており、各補強支持杆6はカバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して目地sに沿う方向に並列されている。カバー板5は、厚さ4.5mm程度の圧延鋼(SS400)からなる金属板が素材に用いられており、補強支持杆6には、高さ75mm程度、横幅45mm程度、肉厚2.3mm程度の圧延鋼(SS400)からなる角パイプ材が素材に用いられている。また、カバー板5は長さ1353mm程度、幅998mm程度の矩形状に形成されており、その後端にはカバー板5の端縁を下方に屈曲させた後壁縁7が連成されている。補強支持杆6は、図5に示すように、カバー板5の裏面の幅方向両側縁とその中間位置に略等間隔で配置され、複数の所要箇所に施された溶接によってカバー板5に接合されている。尚、カバー板5及び補強支持杆6の材質としては、ステンレス鋼(SUS304)を用いることも可能である。
【0023】
カバー板5の裏面の幅方向両側縁に配置された一対の補強支持杆6a,6aの自由端側の端部には、該補強支持杆6a,6aを斜めに切断することにより、図3に示すように、その下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁8が夫々形成されており、中間位置に配置されたその他の補強支持杆6bの端部は、前記傾斜端縁8の長さ分だけ短くなっている。また、カバー板5の裏面には、前記補強支持杆6a,6aの傾斜端縁8,8間に亘って配設された断面L形のアングル材からなる補強杆22が溶接によって接合されている。
【0024】
また、後述する連結手段13を介して建造物Aの床f1 の側縁に揺動可能に連結されるカバー体Cの一端には、図3,図5に示すように、その幅方向両側縁の近傍位置に、連結手段13を構成する連結板9,9が一対で配設されている。該連結板9,9は、上下方向の挿通孔10,10が形成された矩形状の金属製平板からなり、補強支持杆6の下面より上方となる所定高さ位置で、その二辺縁が補強支持杆6aの側面とカバー板5の後壁縁7の側面に溶接によって接合されている。尚、該連結板9,9の配設態様としては、図6に示すように、該連結板9,9を帯板状に形成して、その長手方向両端部を、隣接する補強支持杆6aと補強支持杆6bの夫々の側面に溶接によって接合することも可能である。
【0025】
カバー体Cの自由端は、前記傾斜端縁8と上述した後部摺動受枠3の傾斜受縁3b(図1参照)または立ち上がり縁3e(図2参照)との間に適宜幅の空隙が生じるようにして前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠3の第一水平受縁3aを備えた支持段縁1上に乗載されており、前記空隙を作動空隙11としている。また、カバー板5の前縁は、前記傾斜端縁8の上部から建造物Bの床f2 側に向けて突出されて突出端縁12となっており、この突出端縁12によって前記作動空隙11の上方が遮蔽されている。
【0026】
前記連結手段13を図7に基づいて説明する。
建造物Aの床f1 の側縁上には、目地sに沿う方向に延在するようにして保持受枠14が配設されている。該保持受枠14は、水平受縁14aと垂直縁14bとを備えた断面L形に形成されており、水平受縁14aの上面に、上述したカバー体Cを構成する各補強支持杆6の一端が乗載されている。また、水平受縁14aには、その下面側から挿通して該水平受縁14aに固着したボルトからなる複数の連結杆15が、前記連結板9,9の挿通孔10,10に対応する位置に夫々立設されている。各連結杆15は、水平受縁14a上にカバー体Cを構成する各補強支持杆6の一端を乗載した状態において、前記連結板9,9の挿通孔10,10に下方から遊嵌され、その上端にはカバー板5の下方位置で、ナットからなる受圧部材16が螺着されている。また、各連結杆15には、前記受圧部材16と連結板9との間に介装するようにしてコイルバネからなる弾発部材17が圧縮状態で外嵌されており、該弾発部材17の弾発力によってカバー体Cを常時下方に付勢するようにしている。尚、このカバー体Cの下方付勢手段としては、コイルバネに代えてゴムリング(図示省略)を用いることも可能である。これにより、建造物Aの床f1 の側縁に、カバー体Cの一端を揺動可能に連結する連結手段13が構成されている。また、この連結状態において、カバー板5の上面が建造物Aの床f1 の上面と同一高さとなるようにしている。さらに、カバー板5には、連結板9,9の挿通孔10,10の上方位置に、前記弾発部材17及び受圧部材16の取付け操作を可能とする操作孔18,18が開口されており、該操作孔18,18には、遮蔽キャップ19,19が着脱可能に嵌着されている。
【0027】
また、カバー板5の上面には、所定形状の無数の凸部からなる滑り止め部23(図4参照)が一体形成されている。
【0028】
次に、かかる構成からなる床用目地カバー装置の作動態様について説明する。
カバー体Cは、カバー板5の上面が、建造物Aの床f1 の上面及び建造物Bの床f2 の上面と略面一になるように配設されていることにより、常時は、図1に示すように、該カバー体Cと、建造物Aの床f1 または建造物Bの床f2 との間に段差が生じることがない。また、地震時において、建造物Aと、隣接する建造物Bとが近接する方向に比較的小さく相対変位すると、カバー体Cの自由端が作動空隙11の範囲内で水平に摺動してその相対変位に追従し、さらに大きく相対変位すると、カバー体Cは、自由端に形成された傾斜端縁8が、傾斜受縁3b(図1参照)または立ち上がり縁3e(図2参照)の上端に当接してずれ上がり、図8に示すように、連結手段13により連結された一端を支点として傾動することにより、その相対変位から逃げることができる。ここで、端部に傾斜端縁8が形成された所定の補強支持杆6a,6aを含む複数の補強支持杆6が目地sの幅方向に沿って配設されていることにより、ずれ上がった傾斜端縁8の通過後に、立ち上がり縁3eの上端または傾斜受縁3bに当接する各補強支持杆6の底面の摺動を円滑に行わせることができる。
【0029】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが離れる方向に相対変位すると、カバー体Cは、その自由端が支持段縁1上を、傾斜受縁3b(または立ち上がり縁3e)と逆方向に向けて水平に摺動してその相対変位に追従する。
【0030】
そして、地震が終って建造物Aと建造物Bとが定常位置に戻ると、これに伴なってカバー体Cの自由端も、図1に示した定常位置に戻り、カバー体Cが定常状態に復帰する。
【0031】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが前後方向(目地sに沿う方向)に相対変位すると、カバー体Cの自由端は、支持段縁1上を前後方向に摺動してその相対変位に追従する。この場合、図9に示すように、目地sに沿って連続状に配置された複数個のカバー体Cの、その両端に位置するカバー体C,Cの側方に位置させて、前部摺動受枠2と後部摺動受枠3の側端部に作動空隙4,4が設けられていることにより、該作動空隙4,4によって各カバー体Cの自由端の前後方向の摺動が可能となっている。
【0032】
さらに、建造物Aと、隣接する建造物Bとが上下方向に相対変位すると、カバー体Cは、連結手段13により建造物Aの床f1 の側縁に連結された一端を支点として、建造物Aもしくは隣接する建造物Bの上下動に伴なって傾動して、その相対変位に追従する。
【0033】
かかる構成にあって、上述したように、カバー体Cが、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とを備えてなるから、剛性基枠n(図12参照)を備えた従来のカバー体Cに比して、各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じ難いため、その施工後において、底面の面歪みに起因するガタ付きの発生が解消されるとともに、底面が部分的に前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠3の第一水平受縁3aに引っ掛かることがないため、円滑な摺動を行わせることができる。また、複数の補強支持杆6が、カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設されているので、仮に各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体C上に車両等の荷重がかかると、カバー板5が隣接する補強支持杆6の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、各補強支持杆6の全体としての底面を前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠3の第一水平受縁3aに当接させることができ、これによってガタ付きの発生を防止することができる。
【0034】
また、連結手段13を構成する複数の連結板9が、受圧部材16との間に弾発部材17が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆6の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆6の側面に接合されているので、保持受枠14の水平受縁14a上に、施工時に付着したモルタルや施工後に入り込んだ小石等があっても、連結板9が補強支持杆6の下面より上方となる所定高さ位置に配設されていることにより、該連結板9が前記モルタルや小石等の上に乗り上げることに起因するカバー体Cのガタ付き発生を防止することができる。また、連結板9を補強支持杆6の側面に接合することにより、従来構成のように、メインバーの端部を切除し、かつその切除端に直交する仕切り板を配設して取付け凹部o(図12参照)を形成する面倒な作業を行う必要がないため、生産性を向上させることができる。
【0035】
さらに、前記床用目地カバー装置にあって、複数の補強支持杆6のうち、所定の補強支持杆6a,6aの自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁8が形成されるとともに、カバー板5の前縁を前記傾斜端縁8の上部から他方の床f2 側に向けて突出させて突出端縁12とする一方、他方の床f2の側縁に、第一水平受縁3aと、該第一水平受縁3aの外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁3eまたは前記傾斜端縁8と同方向に傾斜した傾斜受縁3bとを備えた後部摺動受枠3が配設され、該後部摺動受枠3の第一水平受縁3a上に前記補強支持杆6の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆6の傾斜端縁8と、後部摺動受枠3の立ち上がり縁3eまたは傾斜受縁3bとの間に生じる作動空隙11の上方がカバー板5の突出端縁12によって遮蔽されている構成にあっては、カバー板5によって目地sが覆われているとともに、該カバー板5の前縁の突出端縁12によって作動空隙11の上方が遮蔽されていることにより、常時は、該カバー板5と他方の床f2の側縁の間に段差及び凹部が生じることがない。また、地震時において、隣接する両建造物A,Bが近接する方向に比較的大きく相対変位すると、カバー体Cは、一端の連結手段13を支点として、自由端に形成された傾斜端縁8が、後部摺動受枠3の立ち上がり縁3eの上端または傾斜受縁3bに当接してずれ上がり、その相対変位から逃げることができる。そして、端部に傾斜端縁8が形成された所定の補強支持杆6a,6aを含む複数の補強支持杆6が目地sの幅方向に沿って配設されていることにより、ずれ上がった傾斜端縁8の通過後に、後部摺動受枠3の立ち上がり縁3eの上端または傾斜受縁3bに当接する各補強支持杆6の底面の摺動を円滑に行わせることができる。
【0036】
図10は、第二実施例を示し、この第二実施例は、建造物Aに目地sを介して隣接する建造物Bの床f2 が、建造物Aの床f1 の高さに比して、カバー体Cの厚み分だけ低く設定されており、該床f2 の側縁に水平受縁2aを備えた前部摺動受枠2と比較的長い水平受縁20aを備えた後部摺動受枠20が配設されている。尚、該後部摺動受枠20は前後に分割して形成することも可能である。また、建造物Aの床f1 と建造物Bの床f2 間の目地sに差し渡されて該目地sを覆うカバー体Cは、その一端が建造物Aの床f1 の側縁に、上述した連結手段13を介して揺動可能に連結され、他端の自由端が建造物Bの床f2 の側縁上に摺動可能に乗載されている。
【0037】
カバー体Cは、第一実施例と同様に、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とを備えている。また、カバー体Cには、カバー板5の前縁を各補強支持杆6の前端より前方に突出させて下方傾斜させたスロープ部21が設けられており、該スロープ部21は、その下面が各補強支持杆6から夫々突設された支持板24によって支持されている。そして、このスロープ部21により、カバー体Cの自由端側の端部上面と建造物Bの床f2 の上面との間に急激な段差が生じないようにしている。
【0038】
その他、第一実施例と共通する構成部分については第一実施例と同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0039】
かかる構成からなる床用目地カバー装置は、カバー体Cが、常時は図10に示す定常位置で目地sを覆っている。そして、地震時において、建造物Aと、隣接する建造物Bとが離近する方向に相対変位すると、カバー体Cの自由端が建造物Bの床f2 の側縁上を水平に摺動してその相対変位に追従する。
【0040】
また、建造物Aと、隣接する建造物Bとが前後方向(目地sに沿う方向)に相対変位すると、カバー体Cの自由端が、建造物Bの床f2 の側縁上を前後方向に摺動してその相対変位に追従する。
【0041】
さらに、建造物Aと、隣接する建造物Bとが上下方向に相対変位すると、カバー体Cは、連結手段13により建造物Aの床f1 の側縁に連結された一端を支点として、建造物Aもしくは隣接する建造物Bの上下動に伴なって傾動して、その相対変位に追従する。
【0042】
そして、この第二実施例にあっても、カバー体Cが、目地sを覆う平板状のカバー板5と、該カバー板5の下部に目地sの幅方向に沿い、かつ該カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆6とを備えてなるから、剛性基枠n(図12参照)を備えた従来のカバー体Cに比して、各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じ難いため、その施工後において、底面の面歪みに起因するガタ付きの発生が解消されるとともに、底面が部分的に前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠20の水平受縁20aに引っ掛かることがないため、円滑な摺動を行わせることができる。また、複数の補強支持杆6が、カバー板5の可撓を許容する相互間隔を存して配設されているので、仮に各補強支持杆6の全体としての底面に面歪みが生じていても、カバー体C上に車両等の荷重がかかると、カバー板5が隣接する補強支持杆6の間の部分で撓むことにより、面歪みが修正され、各補強支持杆6の全体としての底面を前部摺動受枠2の水平受縁2a及び後部摺動受枠20の水平受縁20aに当接させることができ、これによってガタ付きの発生を防止することができる。
【0043】
尚、上記各実施例において、建造物Aを免震構造の建造物、建造物Bを人工地盤からなる建造物としたが、これに代えて、建造物Aを人工地盤からなる建造物、建造物Bを免震構造の建造物としてもよい。また、本発明にかかる床用目地カバー装置は、免震装置によって下部が支持された免震構造の建造物以外の一般的な建造物にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第一実施例にかかる床用目地カバー装置の施工状態を示す縦断正面図である。
【図2】第一実施例の変形実施例にかかる床用目地カバー装置の施工状態を示す縦断正面図である。
【図3】同上の床用目地カバー装置を構成するカバー体Cの縦断正面図である。
【図4】同上のカバー体Cの平面図である。
【図5】同上のカバー体Cの底面図である。
【図6】連結板9の他の配設態様を示すカバー体Cの底面図である。
【図7】連結手段13部分の拡大図である。
【図8】カバー体Cの作用説明図である。
【図9】複数個のカバー体Cを目地sに沿う方向に連続状に配設した状態を示す平面図である。
【図10】第二実施例にかかる床用目地カバー装置の施工状態を示す縦断正面図である。
【図11】(A)は従来構成の床用目地カバー装置の概略縦断正面図、(B)はその作用説明図である。
【図12】従来のカバー体Cを備えた床用目地カバー装置の平面図である。
【図13】従来の連結手段a部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
A 建造物
B 建造物
C カバー体
f1 床
f2 床
s 目地
3 後部摺動受枠(摺動受枠)
3a 水平受縁
3b 傾斜受縁
3e 立ち上がり縁
5 カバー板
6,6a,6b 補強支持杆
8 傾斜端縁
9 連結板
10 挿通孔
11 作動空隙
12 突出端縁
13 連結手段
14 保持受枠
14a 水平受縁
15 連結杆
16 受圧部材
17 弾発部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結手段を介して揺動可能に連結されるとともに、該カバー体の他端を自由端とし、該自由端が他方の床の側縁に摺動可能に乗載されてなる床用目地カバー装置において、
前記カバー体が、目地を覆う平板状のカバー板と、該カバー板の下部に目地幅方向に沿い、かつ該カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆とを備えてなることを特徴とする床用目地カバー装置。
【請求項2】
連結手段が、
上下方向の挿通孔が形成され、カバー体の一端に配設された複数の連結板と、
建築物の床の側縁に目地の長手方向に沿って配設された保持受枠の、カバー体の一端が乗載される水平受縁に立設され、前記連結板の挿通孔に夫々遊嵌されて、カバー板の下方位置でその上部に受圧部材が装着された複数の連結杆と、
該連結杆に外嵌されて、受圧部材とカバー体の連結板との間に介装され、カバー体を下方に付勢する弾発部材と
を備えてなるものであって、
前記連結板が、受圧部材との間に弾発部材が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆の側面に接合されていることを特徴とする請求項1記載の床用目地カバー装置。
【請求項3】
複数の補強支持杆のうち、所定の補強支持杆の自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁が形成されるとともに、カバー板の前縁を前記傾斜端縁の上部から他方の床側に向けて突出させて突出端縁とする一方、
他方の床の側縁に、水平受縁と、該水平受縁の外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁または前記傾斜端縁と同方向に傾斜した傾斜受縁とを備えた摺動受枠が配設され、
該摺動受枠の水平受縁上に前記補強支持杆の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆の傾斜端縁と、摺動受枠の立ち上がり縁または傾斜受縁との間に生じる作動空隙の上方がカバー板の突出端縁によって遮蔽されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の床用目地カバー装置。
【請求項1】
隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結手段を介して揺動可能に連結されるとともに、該カバー体の他端を自由端とし、該自由端が他方の床の側縁に摺動可能に乗載されてなる床用目地カバー装置において、
前記カバー体が、目地を覆う平板状のカバー板と、該カバー板の下部に目地幅方向に沿い、かつ該カバー板の可撓を許容する相互間隔を存して配設された複数の補強支持杆とを備えてなることを特徴とする床用目地カバー装置。
【請求項2】
連結手段が、
上下方向の挿通孔が形成され、カバー体の一端に配設された複数の連結板と、
建築物の床の側縁に目地の長手方向に沿って配設された保持受枠の、カバー体の一端が乗載される水平受縁に立設され、前記連結板の挿通孔に夫々遊嵌されて、カバー板の下方位置でその上部に受圧部材が装着された複数の連結杆と、
該連結杆に外嵌されて、受圧部材とカバー体の連結板との間に介装され、カバー体を下方に付勢する弾発部材と
を備えてなるものであって、
前記連結板が、受圧部材との間に弾発部材が介装可能な間隔を生じ、かつ補強支持杆の下面より上方となる所定高さ位置で、補強支持杆の側面に接合されていることを特徴とする請求項1記載の床用目地カバー装置。
【請求項3】
複数の補強支持杆のうち、所定の補強支持杆の自由端側の端部にその下面から外端上面に向けて傾斜した傾斜端縁が形成されるとともに、カバー板の前縁を前記傾斜端縁の上部から他方の床側に向けて突出させて突出端縁とする一方、
他方の床の側縁に、水平受縁と、該水平受縁の外端に略直角に立ち上がる立ち上がり縁または前記傾斜端縁と同方向に傾斜した傾斜受縁とを備えた摺動受枠が配設され、
該摺動受枠の水平受縁上に前記補強支持杆の自由端側の端部が乗載されるとともに、該補強支持杆の傾斜端縁と、摺動受枠の立ち上がり縁または傾斜受縁との間に生じる作動空隙の上方がカバー板の突出端縁によって遮蔽されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の床用目地カバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−228348(P2009−228348A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76994(P2008−76994)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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