説明

廃プラスチックの回収方法及び回収装置

【課題】廃プラスチックからオレフィン系プラスチックを高い回収率で効率よく回収することが可能な廃プラスチックの回収方法と回収装置とを提案する。
【解決手段】廃プラスチックの混合粉砕粒子が水性液に分散した水性分散液を作製し、水性分散液を液体サイクロンに供給して水性分散液の混合粉砕粒子からオレフィン系プラスチックを含む軽質粒子を分離し、軽質粒子をサイクロンの上部排出管から回収する廃プラスチックの回収方法において、水性液に接触させつつ表面の洗浄が施された粒径30mm以下の混合粉砕粒子が、固形物濃度2.0wt%以下で分散した水性分散液を作製し、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下の液体サイクロンにより、水性分散液を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックを粉砕して形成される混合粉砕粒子を、液体サイクロンにより比重差で分離してオレフィン系プラスチックを回収する廃プラスチックの回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭ごみ等に混じっている廃プラスチックをリサイクル使用することが行われている。廃プラスチックには、通常、複数種類のプラスチックが含まれており、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系プラスチックを他のプラスチック、特に、塩化ビニル等の塩素分を含むプラスチックから分離して回収することが知られている。
【0003】
容器リサイクル法では、回収されたオレフィン系プラスチックにより得られるペレットの品質として、全塩素分が0.3wt%以下であること、オレフィン系プラスチックの含有率が90wt%以上であることなどが求められている。そのため、廃プラスチックからオレフィン系プラスチックを高い回収率で回収することが望まれる。
【0004】
従来、廃プラスチックからオレフィン系プラスチックを、塩化ビニル等の塩素分を含むプラスチックと分離して回収する技術として、廃プラスチックを粉砕して粒子にし、水中で比重差により分離するものが知られている。
【0005】
例えば、下記特許文献1及び2では、廃プラスチックを粒径2〜30mmの粒子に粉砕し、粒子を被処理液として液体サイクロンを用いて重質分と軽質分とに分離し、軽質分としてオレフィン系プラスチックを回収する。ここでは、液体サイクロンを用いて分離する際、液体サイクロンの上方排出量に比べて下方排出量を大きくしたり、液体サイクロンの中央部の流れを障害部材で妨げたりすることにより、オレフィン系プラスチックをポリスチレンと共に高い回収率で回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−333320号公報
【特許文献2】特開平11−333843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような装置では、回収量を多くするには、多量の被処理液を液体サイクロンに通液しなければならならず、また、廃プラスチックの各粒子に気体や異物が付着しているような場合や、粒子同士が付着した状態で存在するような場合が生じることがあり、そのために各粒子が粒子の真比重と大きく異なる見かけの比重により分離されて、オレフィン系プラスチックの回収率が低下する可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、廃プラスチックからオレフィン系プラスチックを高い回収率で効率よく回収することが可能な廃プラスチックの回収方法と回収装置とを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、廃プラスチックの混合粉砕粒子が水性液に分散した水性分散液を作製し、水性分散液を液体サイクロンに供給して水性分散液の混合粉砕粒子からオレフィン系プラスチックを含む軽質粒子を分離し、軽質粒子をサイクロンの上部排出管から回収する廃プラスチックの回収方法において、水性液に接触させつつ表面の洗浄が施された粒径30mm以下の混合粉砕粒子が、固形物濃度2.0wt%以下で分散した水性分散液を作製し、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下の液体サイクロンにより、水性分散液を分離することを特徴とする廃プラスチックの回収方法が提供され、上述した課題を解決することができる。
【0010】
また、本発明の廃プラスチックの回収方法を実施するにあたり、混合粉砕粒子が固形物濃度1.5wt%以下で分散した水性分散液を作製することが好ましい。
【0011】
また、本発明の廃プラスチックの回収方法を実施するにあたり、粒径15mm以下の混合粉砕粒子が分散した水性分散液を作製することが好ましい。
【0012】
また、本発明の別の態様は、廃プラスチックを粉砕して混合粉砕粒子を形成する粉砕部と、混合粉砕粒子の水性分散液を調製する分散液調製部と、水性分散液中の混合粉砕粒子からオレフィン系プラスチックを含む軽質粒子を分離して上部排出管から回収する液体サイクロンとを備えた廃プラスチックの回収装置において、粉砕部は、水性液に接触させつつ廃プラスチックを洗浄しながら混合粉砕粒子を形成可能な湿式粉砕機を備え、分散液調製部は、水性分散液を攪拌し混合粉砕粒子を衝突させながら混合粉砕粒子の洗浄を行う攪拌槽を備え、分散液調製部は、粒径30mm以下の混合粉砕粒子が固形物濃度2.0wt%以下で分散した水性分散液を調製して液体サイクロンに供給可能に構成され、液体サイクロンは、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下となるように形成されていることを特徴とする廃プラスチックの回収装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の廃プラスチックの回収方法によれば、水性液に接触させつつ洗浄された粒径30mm以下の混合粉砕粒子により水性分散液が作製されるので、各粒子の表面に付着する異物と気泡とが除去され易く、混合粉砕粒子の形状に起因して残留する異物や気泡が少なく抑えられる。そのため、水性液中で比重差により分離する際、各粒子の真比重と大きく異なる見かけの比重により沈降又は浮上して分離されることが防止される。
【0014】
また、本発明の廃プラスチックの回収方法では、粒径30mm以下の混合粉砕粒子が固形物濃度2.0wt%以下で分散した水性分散液が用いられるため、水性分散液中で複数の混合粉砕粒子が互いに付着した状態になり難く、液体サイクロン内の旋回流中で、各混合粉砕粒子を独立した状態で沈降又は浮上させ易い。
【0015】
また、本発明の廃プラスチックの回収方法では、混合粉砕粒子の水性分散液が、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下となるように形成された液体サイクロンに供給されて分離されるので、オレフィン系プラスチックを高い割合で含む軽質粒子が混合粉砕粒子から分離され易く、オレフィン系プラスチックが効率よく回収される。
【0016】
また、本発明の廃プラスチックの回収方法において、混合粉砕粒子が固形物濃度1.5wt%以下で分散した水性分散液が用いられることにより、水性分散液中で複数の混合粉砕粒子が互いに付着した状態になることがより確実に防止され、オレフィン系プラスチックの回収率の向上が図られる。
【0017】
また、本発明の廃プラスチックの回収方法において、粒径15mm以下の混合粉砕粒子が分散した水性分散液が用いられることにより、混合粉砕粒子の形状に起因して残留する異物や気泡がより少なく抑えられ、オレフィン系プラスチックの回収率の向上が図られる。
【0018】
また、本発明の廃プラスチックの回収装置によれば、粉砕部の湿式粉砕機で、水性液に接触させつつ混合粉砕粒子を洗浄しながら混合粉砕粒子を形成するので、粉砕時に混合粉砕粒子の表面の洗浄を行うことができ、表面に付着している異物、特に、混合粉砕粒子の形状に起因して残留し易い異物を除去し易い。また、分散液調製部の攪拌槽で、混合粉砕粒子同士を衝突させて混合粉砕粒子の洗浄を行うため、混合粉砕粒子の表面に水性液を付着することができ、特に、混合粉砕粒子の形状に起因して水性液に分散した際に気泡が溜まり易い部位に水性液を付着させることができ、水性分散液中で混合粉砕粒子の表面に形成される気泡を少なく抑え易い。
【0019】
そのため、本発明の廃プラスチックの回収装置では、水性分散液中の混合粉砕粒子に付着する異物や気泡が少なく抑えられ、水性液中で比重差により分離する際、各粒子の真比重と大きく異なる見かけの比重により沈降又は浮上して分離されることが防止される。
【0020】
また、本発明の廃プラスチックの回収装置では、分散液調製部により、粒径30mm以下の混合粉砕粒子が固形物濃度2.0wt%以下で水性液に分散した水性分散液が用いられるので、水性分散液中で複数の混合粉砕粒子が互いに付着した状態になり難く、液体サイクロン内の旋回流中で、各混合粉砕粒子を独立した状態で沈降又は浮上させ易い。
【0021】
そして、本発明の廃プラスチックの回収装置では、分散液調製部からこのような水性分散液が、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下となるように形成された液体サイクロンに供給され、混合粉砕粒子が分離されるので、オレフィン系プラスチックを高い割合で含む軽質粒子が混合粉砕粒子から分離され易く、オレフィン系プラスチックを効率よく回収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の廃プラスチックの回収方法に用いる回収装置の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態の廃プラスチックの回収方法に用いる液体サイクロンの例を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の廃プラスチックの回収方法に用いる回収装置の一部の構成例を示す概略図である。
【図4】実施例に用いた試験装置の構成例を示す概略図である。
【図5】実施例1〜3の結果を示し、固形物濃度に対するオレフィン系プラスチックの含有率の変化を、粒径をパラメータとして示すグラフである。
【図6】実施例1〜3の結果を示し、粒径に対するオレフィン系プラスチックの含有率の変化を、固形物濃度をパラメータとして示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の廃プラスチックの回収方法及び廃プラスチックの回収装置に係る実施の形態について具体的に説明する。ただし、この実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0024】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態にかかる廃プラスチックの回収装置及び廃プラスチックの回収方法について説明する。
本実施形態における処理対象の廃プラスチックは、例えば、食品や物品の使用済包装材料等の一般家庭から廃棄されたプラスチック製品の廃棄物などである。廃プラスチックには、フィルム、板、塊状物、中空物、凹凸形状物など、各種の形状のものが含まれ、また、複数の種類のプラスチックが含まれる。
【0025】
廃プラスチックに含まれるプラスチックは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系プラスチックなどの比重が1より小さい軽質プラスチック、発泡ポリスチレン等の見かけの比重が1より格段に小さい極軽量プラスチック、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの比重が1より大きい重質プラスチックなどである。
更に、廃プラスチックには、通常、金属、土砂、油等の各種の異物も付着或いは混入している。
【0026】
図1は、このようなプラスチックが前処理されることなくそのままの状態で、又は、予め粗粉砕、洗浄等の前処理が施された状態で供給され、オレフィン系プラスチックが回収されるように構成された、この実施形態の廃プラスチックの回収装置を示す。
【0027】
この廃プラスチックの回収装置は、処理対象の廃プラスチックを粉砕して混合粉砕粒子を形成する粉砕部10と、粉砕部10で形成された混合粉砕粒子を水性液に分散して水性分散液を調製する分散液調製部20と、粉砕部10及び分散液調製部20により作製された水性分散液中の混合粉砕粒子から、オレフィン系プラスチックを含む軽質粒子を、比重差を利用して回収する回収部30とを備える。
【0028】
回収装置の粉砕部10は、廃プラスチックを粉砕して混合粉砕粒子を形成可能に構成されており、廃プラスチックを粗粉砕して破砕物を形成するための破砕機11と、破砕物を粉砕して混合粉砕粒子を形成する湿式粉砕機13とを備える。
【0029】
破砕機11は、廃プラスチックを湿式粉砕機13で粉砕可能な程度の粒径に粗粉砕を行うものであり、例えば、一軸式粉砕機が挙げられる。
湿式粉砕機13は、水等の水性液に接触させつつ廃プラスチックを互いに衝突させることで洗浄しながら混合粉砕粒子を形成するものであり、例えば、剪断式粉砕機が挙げられる。
このような粉砕部10では、水性分散液を作製するために必要な所定粒径以下の混合粉砕粒子が形成される。この混合粉砕粒子には、オレフィン系プラスチックなどの軽質プラスチックからなる軽質粒子、極軽量プラスチックからなる極軽量粒子、重質プラスチックからなる重質粒子が含まれる。
【0030】
混合粉砕粒子は、種々の形状を有する廃プラスチックを、種類や形状を区別することなく粉砕して得られる粒子であるため、塊状、扁平形状、湾曲或いは屈曲形状、凹凸形状等、種々の形状を呈する粒子が混在している。このような粒子形状は、水性分散液中での挙動、特に、後述する回収部30で比重差を利用して回収する際、沈降、浮上、流動等の挙動に与える影響が大きい。
【0031】
例えば、過剰な湾曲或いは屈曲形状や立体形状の場合、粒子形状内に気泡や異物が付着して残留し易い。また、過剰に大きなフィルム状の場合、自在に変形することで、気泡や異物が包含されたり、他の粒子が包含されたりし易い。このようなことが生じると、粒子の見かけの比重が変化し、粒子を構成するプラスチック本来の真比重による挙動とは顕著に相違する挙動を示すことになる。
【0032】
そのため、この回収装置では、混合粉砕粒子の粒径の範囲を30mm以下とすることで、水性分散液中で粒子本来の比重による挙動と顕著に相違する挙動を示す粒子を少なく抑え、これにより水性分散液中での混合粉砕粒子の挙動を安定化させて、後述する回収部30の液体サイクロン31における分離効率を向上させる。
この粒径は、例えば、粒子を液体に分散して多数の同一直径の孔を備えたパンチングメタルを透過させたとき、透過可能な孔径で測定することができ、例えば、30mm以下の直径の孔を備えたパンチングメタルを透過可能な粒子の粒径を30mm以下とすることができる。なお、フィルム、板等のシート状廃プラスチックでは、30mm以下の直径の孔を備えたパンチングメタルを透過可能な粒子であっても、混合粉砕シート状粒子の一辺が30mm以上となることもあり得る。
【0033】
このような混合粉砕粒子の粒径は、回収部30においてオレフィン系プラスチックの含有率を向上するためには、15mm以下とするのが好ましく、特に、10mmとすれば顕著に回収率を向上できて好適である。
【0034】
また、この粒径は、回収率を向上するには小さい程よいが、好ましくは3mm以上、特に、5mm以上とするのが好適である。廃プラスチックに含まれるフィルムなどを過剰に小さく粉砕することは容易でなく、装置構成などが複雑になり易く、また、処理効率が低下し易いからである。
【0035】
なお、粉砕部10で形成される混合粉砕粒子の全量がこのような大きさとなることが好ましいが、粉砕部10で形成された混合粉砕粒子の一部として、このような粒径の混合粉砕粒子が含まれていれば、分級等を施して使用可能である。
【0036】
次に、回収装置の分散液調製部20は、混合粉砕粒子から異物を除去して水性分散液を調製し、回収部30に供給するように構成されており、粉砕部10から排出された混合粉砕粒子中の重質の異物等を分離除去するための沈降分離槽21と、沈降分離槽21から排出された混合粉砕粒子を所定の固形物濃度の水性分散液に調製して回収部30に供給するための攪拌槽25とを備える。
【0037】
沈降分離槽21は、粉砕部10により形成されて排出された混合粉砕粒子を、十分な水性液中に分散させることで、混合粉砕粒子中に含まれる土砂や金属等の重質の異物を沈降させて分離する装置である。沈降物は残渣として残渣排出部23から取り出して除去されるようになっている。
【0038】
攪拌槽25は、沈降分離槽21から排出された混合液中の混合粉砕粒子量に応じた量の水性液中で攪拌することで、混合粉砕粒子同士を衝突させて混合粉砕粒子の洗浄を行うと共に、混合粉砕粒子を水性液中に分散させた水性分散液を調製して排出する装置である。この攪拌槽25では、混合粉砕粒子中に含まれる発泡ポリスチレン等の極軽量プラスチックや他の軽質の異物を浮上させて回収することもできる。浮上物は上部の浮上物排出部27から取り出して除去されるようになっている。
【0039】
混合粉砕粒子が分散される水性液は、水や水溶液、或いは水懸濁液などであり、比重調整剤や界面活性剤など、各種の成分が溶解又は分散されていてもよい。
【0040】
分散液として水性液を用いるのは、回収するオレフィン系プラスチックの比重が1未満であり、オレフィン系プラスチックと分離する他のプラスチック、特に、塩素分を含むプラスチック等の比重が1以上であるため、オレフィン系プラスチックを分離し易くするなどの理由である。
【0041】
攪拌槽25に供給される水性液は、湿式粉砕機13や沈降分離槽21で使用されて混合された状態の水性液をそのまま用いてもよいが、通常、水性液の汚染が激しいため、一部又は全部として新たに攪拌槽25等に供給される水性液を使用する。
【0042】
この攪拌槽25では、固形物濃度2.0%以下となるように混合粉砕粒子が水性液に分散された水性分散液が調製される。
固形物濃度が2.0wt%より高いと、水性液中に混合粉砕粒子を均一に混合することが容易でなく、回収部30における分離時に混合粉砕粒子同士が接触したり付着したりする状態となり易く、オレフィン系プラスチックの回収率を向上させ難くなる。
【0043】
この固形物濃度は、均一に分散させ易いという理由で、1.5wt%以下とするのがよく、特に、粒径が大きくても回収率を向上させ易いという理由で、1.0wt%以下とするのが好適である。
なお、この固形物濃度は、低い方がオレフィン系プラスチックの回収率が高くなるが、過度に固形物濃度を低くすると、大量の水性液を使用することになるため消費電力が大きくなり経済的でなくなる。したがって、このような経済性も考慮に入れて固形物濃度を決定することが好ましい。
【0044】
次に、回収装置の回収部30は、水性分散液中の混合粉砕粒子から軽質粒子を比重差により分離することで、オレフィン系プラスチックを回収するように構成されており、分散液調整部20からの水性分散液を圧送するポンプ29と、ポンプ29により圧送された水性分散液中の混合粉砕粒子を軽質粒子と重質粒子とに分離する液体サイクロン31と、液体サイクロン31の上部排出管33から排出される軽質粒子を捕集する上部スクリーン37と、液体サイクロン31の下部排出管35から排出される重質粒子を回収する下部スクリーン39と、上部スクリーン37で捕集された軽質粒子からペレットを作製するペレット作製部50とを備える。
【0045】
液体サイクロン31は、図2に示すように、攪拌槽25から排出される水性分散液が、図示しない圧送ポンプにより縮径部41を介して導入される入口管32と、入口管32から水性分散液が接線方向に導入され、旋回流が形成される円筒部45及び円錐部47と、円筒部45内から水性分散液を排出する上部排出管33と、円錐部47の下端側から水性分散液を排出する下部排出管35とを備える。
【0046】
この液体サイクロン31では、形状等、大きさなどは適宜設計可能であるが、所望の軽質粒子を上部排出管33からより多く排出するために、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下、特に好ましくは60%以上96%以下となるように形成されている。
【0047】
この圧力損失が0.05MPaより過剰に小さいと分離効率が低下し、一方、圧力損失が0.3MPaより過剰に多いと、ポンプ動力が大きくなり経済的でなく、好ましくない。
また、流量比が50%より過剰に小さいと、下部排出管35から排出される分散液中の軽質粒子が増加し、上部排出管33から回収されるオレフィン系プラスチック量が低下する。一方、流量比が99%よりも過剰に多いと、上部排出管33から排出される分散液中の重質粒子が増加し、上部排出管33から回収される粒子中のオレフィン含有率が低下する。
【0048】
圧力損失は、例えば、入口管32における流量、入口管32の管径や断面積、円筒部45の管径や長さ、上部排出管33の管径や長さ等が設定されることで調整されている。ここでは、特に、入口流量を一定に保つことにより圧力損失を一定に保つことで、安定した分離を実現している。
また、流量比は、例えば、上部排出管33の管径や断面積、下部排出管35の管径等が設定されることで調整されている。
【0049】
なお、この液体サイクロン31に供給される水性分散液は、攪拌槽20で調製された水性分散液であり、分散されている混合粉砕粒子のオレフィン系プラスチックと他のプラスチックとの混合割合は、特に限定されるものではないが、オレフィン系プラスチックの割合が高いと、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比を大きくし易い。そのため、供給される水性分散液の混合粉砕粒子中のオレフィン系プラスチックの割合は、例えば70%以上、より好ましくは80%以上であるのが好適である。
【0050】
回収部30の上部スクリーン37及び下部スクリーン39は、上部排出管33又は下部排出管35から排出される液から、より多くの軽質粒子又は重質粒子を捕集して分離できるものであればよく、例えば、ロータリースクリーン等を使用することができる。
【0051】
また、ペレット作製部50は、例えば、上部スクリーン37で捕集された軽質粒子を脱水及び乾燥する脱水乾燥機51と、脱水及び乾燥した軽質粒子を溶融してペレット化する造粒機53とを備える。
【0052】
このような構成の廃プラスチックの回収装置では、廃プラスチックが粉砕部10に供給されると、破砕機11で祖粉砕した後、湿式粉砕機13により水等の水性液に接触させつつ互いに衝突させることで、廃プラスチック表面に付着している塩分を含む食材や泥砂などの異物を洗い流しながら粉砕され、所定粒径の粒子を有する混合粉砕粒子が形成される。
【0053】
湿式粉砕機13では、水性液に接触させつつ、廃プラスチック同士を粉砕可能な程度の運動量で衝突させるため、その衝撃力で各廃プラスチックに付着している異物を剥離して除去され、廃プラスチックの十分な洗浄が行われる。
【0054】
また、形成される混合粉砕粒子の表面に水性液を付着させることで、分散液調製部20で水性分散液を調製した際、表面に生じる気泡を抑え易くする。特に、水性液に接触させつつ廃プラスチック同士を衝突させることで、湾曲或いは屈曲形状、凹凸形状等、混合粉砕粒子の形状が気泡を滞留し易い形状であっても、凹部や間隙等に水性液を供給することができ、水性分散液を調製した際、各粒子に付着したり滞留したりする気泡を少なく抑えることができる。
【0055】
更に、この湿式粉砕機13では、粉砕時に混合粉砕粒子同士を互いに密着或いは圧接させる力が作用し難いため、複数の混合粉砕粒子が互いに強固に付着することも防止されている。
【0056】
このような粉砕部10で形成された混合粉砕粒子は、分散液調製部20に供給される。分散液調製部20に供給されると、沈降分離槽21で重質の異物が沈降分離され、軽質粒子、極軽量粒子、重質粒子、及び他の軽質の異物が浮上分離されて攪拌槽25に供給される。
【0057】
攪拌槽25では、これらが攪拌され、浮上した極軽量粒子及び他の軽質の異物が必要に応じて分離されつつ、気泡が混入しない程度で強攪拌されることで、水性液中に所定の固形物濃度で混合粉砕粒子が均一に分散して水性分散液が調製される。
この攪拌槽25では、混合粉砕粒子の各粒子表面に付着する異物や気泡を出来るだけ除去され、また、各混合粉砕粒子同士が互いに付着した状態で存在するものが出来るだけ少なくされて、より多くの粒子が独立に浮遊した状態となる。
【0058】
分散液調製部20で調製された水性分散液は、回収部30に供給され、入口管32から導入されて液体サイクロン31内で所定条件で水性分散液の混合粉砕粒子が重質粒子と軽質粒子とに比重差により分離され、軽質粒子が上部排出管33から水性液と共に排出されると共に、重質粒子が下部排出管35から水性液と共に排出される。
【0059】
この液体サイクロン31では、所定粒径及び固形物濃度で混合粉砕粒子が分散された水性分散液を、所定の条件で分離することで、オレフィン系プラスチックが高い割合で含まれる軽質粒子が、他の重質粒子から分離されて上部排出管33から排出される。
【0060】
そして、上部排出管33から排出された軽質粒子は、上部スクリーン37で固液分離されて回収され、その後、脱水乾燥機51で脱水及び乾燥されて、造粒機53で溶融されてペレット化される。
なお、下部排出管35から排出された重質粒子は、下部スクリーン39で固液分離されて重質粒子が残渣として回収される。各濾液は、再び、水性液として使用することができる。
【0061】
このようにして軽質粒子が回収されてペレット化されたペレットは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系プラスチックが多量に含有されたものとなり、更に、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのなどの重質プラスチックの含有量が少なく、特に、塩素分の濃度が十分に低減されたものとなる。
そのため、全塩素分が0.3wt%以下で、オレフィン系プラスチックの含有率が90wt%以上であるペレットを製造することが可能である。
【0062】
以上のような廃プラスチックの回収装置によれば、粉砕部10及び分散液調製部20で、水性液に接触させつつ洗浄された粒径30mm以下の混合粉砕粒子により水性分散液を作製するので、各粒子の表面に付着する異物と気泡とを除去し易く、混合粉砕粒子の形状に起因して残留する異物や気泡を少なく抑えることができる。そのため、回収部30において水性液中で比重差により分離する際、各粒子の真比重と大きく異なる見かけの比重により沈降又は浮上して分離されることを防止し易い。
【0063】
また、粒径30mm以下の混合粉砕粒子が固形物濃度2.0wt%以下で分散した水性分散液とするため、水性分散液中で複数の混合粉砕粒子が互いに付着した状態になり難く、液体サイクロン31内の旋回流中で、各混合粉砕粒子を独立した状態で沈降又は浮上させ易い。
【0064】
そして、このような混合粉砕粒子の水性分散液を、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管33の排出流量の流量比が50%以上99%以下となるように形成された液体サイクロン31に供給して分離させるので、オレフィン系プラスチックを高い割合で含む軽質粒子を混合粉砕粒子から分離し易く、オレフィン系プラスチックを効率よく回収することが可能である。
【0065】
また、分散液調製部20において、混合粉砕粒子が固形物濃度1.5wt%以下で分散した水性分散液を作製する場合には、水性分散液中で複数の混合粉砕粒子が互いに付着した状態になることをより確実に防止することができ、オレフィン系プラスチックの回収率を向上させ易い。
【0066】
更に、分散液調製部20において、粒径15mm以下の混合粉砕粒子が分散した水性分散液を作製する場合には、混合粉砕粒子の形状に起因して残留する異物や気泡をより少なく抑えることができ、オレフィン系プラスチックの回収率を向上させ易い。
【0067】
なお、上記実施の形態は、本発明の範囲内において、適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、廃プラスチックとして、一般家庭から廃棄されたプラスチック製品の廃棄物の例について説明したが、産業廃棄物などであってもよい。
また、上記では、粉砕部10で形成された混合粉砕粒子の全てを分散液調製部20に供給する例について説明したが、粉砕部10で形成された混合粉砕粒子を分級し、所定粒径の粒子だけを分散液調製部20に供給するようにしてもよい。
更に、上記の粉砕部10では、湿式粉砕機13で廃プラスチックに水性液を接触させつつ粉砕することで混合粉砕粒子を作製したが、廃プラスチックを粉砕後に水性液に混合して作製することも可能である。
また、上記の分散液調製部20では、沈降分離槽21において重質の異物を除去したが、分離位置は特に限定されず、分離することなく回収部に供給することも可能である。
【0068】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる廃プラスチックの回収装置及び廃プラスチックの回収方法について説明する。
本実施形態の回収装置では、攪拌槽25が間欠的に攪拌速度を低下したり停止することが可能に構成されていると共に、図3に示すように、攪拌槽25内で浮上した浮上物を回収するための浮上物回収部60が設けられ、攪拌速度の低下時又は停止時に浮上物を回収することが可能に構成されている。その他は、図1に示す回収装置と同様である。
【0069】
浮上物回収部60は、攪拌槽25の頂部側から連通して設けられた浮上物サイクロン61と、攪拌槽25中の浮上物を浮上物サイクロン61に吸引するための吸引ファン63と、吸引された浮上物から発泡ポリスチレン等の極軽量粒子とオレフィン系プラスチック等の軽質粒子とを分離するための浮上物分離装置65とを備えている。
【0070】
浮上物サイクロン61は、気体及び液体中の固形物を分離可能なサイクロンであればよく、流体サイクロン31と同一のものを使用することも可能である。また、詳細な図示は省略しているが、浮上物サイクロン61への浮上物の吸引口は、攪拌槽25内の液面近傍に、攪拌羽根付近の中央側に設けられており、液面付近の浮上物を水性液と共に吸引可能な構成となっている。
【0071】
また、浮上物分離装置65は、オレフィン系プラスチック等の軽質粒子を極軽量プラスチック等の極軽量粒子から分離可能なものであればよく、例えば、比重分離装置などを使用することができる。
【0072】
浮上物分離装置65は、軽質粒子排出部67から排出される軽質粒子を図1に示す脱水乾燥機51へ供給可能であると共に、極軽量粒子排出部69から排出された極軽量粒子を回収可能となっている。
【0073】
次に、このような構成を有する本実施形態の回収装置の動作について説明する。
この回収装置では、第1の実施の形態と同様に、沈降分離槽21から混合粉砕粒子が攪拌槽25へ連続的に供給されて通常の所定攪拌速度で攪拌されると共に、攪拌槽25内の水性分散液が回収部30のポンプ29へ連続的に排出されている。
【0074】
本実施形態では、このような連続操作中に所定時間毎、或いは、任意の時点で、攪拌槽25内の極軽量粒子を浮上させて除去する以下のような処理を行う。この処理は間欠的に繰り返して行うことができる。
【0075】
ここでは、攪拌槽25の攪拌速度を通常の所定攪拌速度より低下させ、又は攪拌を停止させる。この攪拌速度は例えば攪拌羽根の回転数等である。すると、攪拌槽25内で、混合粉砕粒子中の比重が格段に小さい極軽量粒子が液面側に浮上する。これは、通常の所定攪拌速度では、気泡を巻き込まない範囲で、出来るだけ混合粉砕粒子が均一に水性液中に分散されるように強い攪拌力で攪拌されているため、この攪拌速度を低下したり、攪拌を停止することで、極軽量粒子の本来の浮力により水中に分散されていた粒子が浮上するためである。
【0076】
攪拌槽25の通常の所定攪拌速度は、攪拌槽25の容積や形状、攪拌羽根等の攪拌手段の種類、形状、大きさ、水性分散液の濃度、混合粉砕粒子の粒径などに応じて適宜選択されるが、通常、混合粉砕粒子を均一に攪拌可能な範囲で、出来るだけ低く設定されている。
【0077】
攪拌槽25内の極軽量粒子を浮上させる攪拌速度も、通常の所定攪拌速度と同様に、各種の条件に応じて適宜選択されるが、例えば、通常の所定攪拌速度の90%以下、好ましくは85%以下としてもよい。ここでは、攪拌を停止することも可能であるが、過剰に攪拌速度を低下させると、攪拌槽25内の水性分散液から浮上する極軽量粒子が短時間で急増するなどのため、攪拌槽25内の水性分散液の水面に滞留する浮上物中に軽質粒子が混入され易くなる。そのため、極軽量粒子中に混入する軽質粒子の量を少なく抑え易くできるなどの理由で、例えば、攪拌速度低下後の攪拌速度を、通常の所定攪拌速度の40%以上、特に好ましくは50%以上としてもよい。
【0078】
このようにして攪拌槽25の攪拌速度を低下して浮上物を浮上させた後、浮上物サイクロン61の吸引口から浮上物を吸引ファン63によりに吸引することで、攪拌槽25内の極軽量粒子を浮上させて除去する処理を行うことができる。なお、攪拌槽25から除去された極軽量粒子は浮上物回収部60に導入される。
【0079】
浮上物回収部60では、吸引した浮上物をそのまま浮上物サイクロン61で気体や液体から分離して浮上物分離装置65に供給し、浮上物分離装置65において、浮上物中に混入された軽質粒子を極軽量粒子等から分離する。そして、軽質粒子排出部67から排出される軽質粒子を回収部30の脱水乾燥機51へ供給し、回収部30により回収された他の軽質粒子と共に処理する。
【0080】
一方、攪拌槽25では、浮上物を排出した後、攪拌槽25の攪拌速度を元の所定攪拌速度まで上昇させ、攪拌槽25内に残留した混合粉砕粒子と共に、沈降分離槽21からの新たに導入されている混合粉砕粒子を均一に攪拌し、作製された水性分散液のポンプ29への供給を継続する。
【0081】
なお、攪拌槽25中で浮上物を浮上させて浮上物回収部60へ吸引する間には、沈降分離槽21から連続的に攪拌槽25へ混合粉砕粒子を供給していてもよく、また、攪拌槽25から回収部30のポンプ29へ水性分散液を供給していてもよい。その場合、攪拌槽25内で、沈降分離槽21からの混合粉砕粒子の供給部位や水性分散液の排出部位を、浮上物サイクロンの吸引口と異なるように設ければよい。
【0082】
以上のような本実施形態の回収装置によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる上、攪拌槽25の攪拌速度を所定の攪拌速度より低下させることで水性分散液の液面側に浮上物を浮上させ、この浮上物を排出して攪拌槽25から除去した後、水性分散液を回収部30の液体サイクロン31に供給して、水性分散液中の混合粉砕粒子からオレフィン系プラスチックを含む軽質粒子を分離するので、軽質粒子より比重の小さい粒子や異物等の存在量を少なく抑えて軽質粒子を液体サイクロン31で分離することができ、軽質粒子にそれらが混入されることを抑えて回収部30によりオレフィン系プラスチックをより高い回収率で回収することができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
回収ゴミの廃プラスチックを粉砕部10により粉砕すると共に洗浄し、孔径5mmのパンチングメタルを透過する混合粉砕粒子を作製した。
【0084】
得られた混合粉砕粒子を水に均一に分散させて、表1に示す固形物濃度の水性分散液を作製した。この水性分散液は、図1に示す回収装置の攪拌槽25から排出される水性分散液に相当するものであり、水性分散液中の全プラスチックに対するオレフィン系プラスチックの存在割合は82.2%であった。このオレフィン系プラスチックの存在割合は、水性分散液の固形分を乾燥後、粉末にし、アセトン及びTHFを用いて抽出することで測定した。
【0085】
この水性分散液を目視により確認したところ、各混合粉砕粒子の表面に付着する金属や土砂等の異物は確認されないと共に、気泡が十分に除去されていた。更に、複数の混合粉砕粒子が互いに付着した状態のものが確認されなかった。
【0086】
次に、得られた水性分散液を用いて、図4に示すような試験装置により、オレフィン系プラスチックを回収した。
【0087】
この試験装置は、図2に示すような液体サイクロン31を備えており、水性分散液を貯留する貯留槽71と、貯留槽71内の水性分散液を攪拌する攪拌機72と、貯留槽71内の水性分散液を所定流量で圧送する圧送ポンプ73と、圧送ポンプ73から液体サイクロンの入口管32に水性分散液を送液する供給路74と、供給路74に設けられて、送液量を調製する弁75と、液体サイクロンの上部排出管33から排出される液を貯留槽71へ返送する上部返送路76と、上部返送路76に設けられて、上部返送路76で送液される送液量を調整する弁37と、液体サイクロンの下部排出管35から排出される液を貯留槽71へ返送する下部返送路78と、下部返送路77に設けられて、下部返送路78で送液される送液量を調整する弁39とを備える。
【0088】
液体サイクロン31の各条件は次の通りであった。
円筒部管径が152mm、入口管径が38mm、上部排出管径が38mm、円筒部高さが85mm、円錐部高さが540mmであり、入口流速が4.2m/sec、圧力損失が0.11MPaであった。
【0089】
上述のように作製した水性分散液を、攪拌機72で均一な分散状態となるように攪拌しつつ、圧送ポンプ73により、液体サイクロン31へ供給し、液体サイクロンの上部排出管33からの排出液及び下部排出管35からの排出液を何れも貯留槽71内へ戻して運転した。
【0090】
上部返送路76の出口にてスクリーンにより採取することでサンプリングし、得られた軽質粒子中のオレフィン系プラスチックの含有率を表1並びに図5及び図6のグラフに示すと共に、サンプル中の塩素含有率を表2に示す。なお、各表中%はwt%を示す。
【0091】
[実施例2、3]
混合粉砕粒子の粒径を異ならせる他は、全て実施例1と同様にして得られた軽質粒子中のオレフィン系プラスチックの含有率を表1並びに図5及び図6のグラフに示すと共に、サンプル中の塩素含有率を表2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1及び図5、6から明らかなように、実施例1〜3のように、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下となる液体サイクロン31を用いた試験装置では、粒径30mm以下の混合粉砕粒子が固形物濃度2.0wt%以下で分散した水性分散液から軽質粒子を分離することで、オレフィン系プラスチックの含有率を高くし易いことが確認できた。
【0095】
特に、混合粉砕粒子の粒径が25mm以下、より好ましくは15mm以下の場合や固形物濃度が1.5wt%以下の場合の場合には、オレフィン系プラスチックの含有率をより高くし易いことが確認できた。
【0096】
また、表1から明らかなように、 液体サイクロン31の上部排出管33から得られる軽質粒子のオレフィン系プラスチックの含有率は固形物濃度が低い程高くなっていた。ここでは、同一の液体サイクロン31の条件において、混合粉砕粒子の粒径及び固形物濃度を選択することで、各粒子の比重差による分離精度が顕著に向上でたことが明らかであった。
【0097】
なお、表1中、濃度が高い範囲、特に、粒径が大きな範囲では軽質粒子中のオレフィン系プラスチックの含有率が低い結果を示しているが、圧力損失や流量比の調整で向上可能であることが実際の回収装置により確認できた。
【0098】
更に、表2から明らかな通り、実施例1〜3において回収された軽質粒子では、塩素濃度を十分に低くすることができた。
【0099】
[実施例4〜9]
攪拌槽25において、攪拌途中で攪拌速度を低下することで、極軽質粒子等を浮上させて分離する効果を確認した。
まず、攪拌槽25に供給される軽質粒子及び極軽量粒子の混合粒子として、回収ゴミの廃プラスチックを粉砕及び洗浄し、粒径20mmの混合粉砕粒子を作製した。
【0100】
混合粒子中の発泡ポリスチレンからなる極軽量粒子と軽質粒子と存在割合は、発泡ポリスチレンが14wt%、軽質粒子が86wt%であった。
次に、この混合粒子を水に濃度が0.5wt%となるように分散して水性分散液を作製した。
【0101】
この攪拌槽25は、容積4.0mで、水性分散液を3.0m収容して攪拌したとき、攪拌羽根の最高回転数の80%(130rpm)では極軽量粒子と軽質粒子とが均一に攪拌でき、60%では均一に攪拌することが困難であることが確認されたため、通常の所定攪拌速度を最高回転数の80%に設定した。
【0102】
そして、通常攪拌から攪拌羽根の回転数を低下させたとき、液面に滞留する粒子を採取し、極軽量粒子と他の軽質粒子との割合を確認した。
結果を表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
表3の結果から明らかな通り、攪拌槽25の攪拌速度である回転数を変化させることで、浮上物が得られると共に、浮上物中の発泡ポリスチレンからなる極軽量粒子の割合が変化することが確認できた。特に、攪拌速度が変更前の所定攪拌速度の50%〜69%の実施例6〜8では極軽量粒子の存在割合をより多くすることが可能であった。
なお、実施例4〜9では、何れも浮上物が攪拌槽25の液面の中央付近に集まっていた。そのため、浮上物を吸引する位置が攪拌槽25の中央付近が好ましいことが明らかになった。
【符号の説明】
【0105】
10:粉砕部、11:破砕機、13:湿式粉砕機、20:分散液調製部、21:沈降分離槽、23:残渣排出部、25:攪拌槽、27:浮上物排出部、29:ポンプ、30:回収部、31:液体サイクロン、32:入口管、33:上部排出管、35:下部排出管、37:上部スクリーン、39:下部スクリーン、41:縮径部、45:円筒部、47:円錐部、51:脱水乾燥機、53:造粒機、60:浮上物回収部、61:浮上物サイクロン、63:吸引ファン、65:浮上物分離装置、67:軽質粒子排出部、69:極軽量粒子排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックの混合粉砕粒子が水性液に分散した水性分散液を作製し、前記水性分散液を液体サイクロンに供給して前記水性分散液の前記混合粉砕粒子からオレフィン系プラスチックを含む軽質粒子を分離し、前記軽質粒子を前記サイクロンの上部排出管から回収する廃プラスチックの回収方法において、
水性液に接触させつつ表面の洗浄が施された粒径30mm以下の前記混合粉砕粒子が、固形物濃度2.0wt%以下で分散した前記水性分散液を作製し、
圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する前記上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下の前記液体サイクロンにより、前記水性分散液を分離することを特徴とする廃プラスチックの回収方法。
【請求項2】
前記混合粉砕粒子が固形物濃度1.5wt%以下で分散した前記水性分散液を作製することを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックの回収方法。
【請求項3】
粒径15mm以下の前記混合粉砕粒子が分散した前記水性分散液を作製することを特徴とする請求項1又は2に記載の廃プラスチックの回収方法。
【請求項4】
廃プラスチックを粉砕して混合粉砕粒子を形成する粉砕部と、前記混合粉砕粒子の水性分散液を調製する分散液調製部と、前記水性分散液中の前記混合粉砕粒子からオレフィン系プラスチックを含む軽質粒子を分離して上部排出管から回収する液体サイクロンとを備えた廃プラスチックの回収装置において、
前記粉砕部は、水性液に接触させつつ廃プラスチックを洗浄しながら前記混合粉砕粒子を形成可能な湿式粉砕機を備え、
前記分散液調製部は、前記水性分散液を攪拌し前記混合粉砕粒子を衝突させながら前記混合粉砕粒子の洗浄を行う攪拌槽を備え、
前記分散液調製部は、粒径30mm以下の前記混合粉砕粒子が固形物濃度2.0wt%以下で分散した前記水性分散液を調製して前記液体サイクロンに供給可能に構成され、
前記液体サイクロンは、圧力損失が0.05MPa以上0.3MPa以下で、供給流量に対する前記上部排出管の排出流量の流量比が50%以上99%以下となるように形成されていることを特徴とする廃プラスチックの回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−162842(P2010−162842A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9100(P2009−9100)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(505209511)秋田エコプラッシュ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】