説明

廃棄物の二段ガス化システム

【課題】廃棄物中に含まれる金属や灰分をリサイクル利用可能な状態で回収するとともに、COおよびHを多量に含有するガスを回収しNH(アンモニア)合成等の化学合成用の原料にすることができる廃棄物の二段ガス化システムを提供する。
【解決手段】廃棄物aからなる原料を流動層ガス化炉1にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉30に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、流動層ガス化炉1に原料を供給する原料供給系10に、複数の移動可能な平板状の移動板が並列した移動床式貯留ヤード11を設け、複数の移動板は原料を載置した状態で同時に前進し、複数の移動板は一部ずつ時間差(1/4τ)をおいて前進後退するように構成され、移動板が後退する毎に下流側の機器に原料を落下供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温ガス化炉と高温ガス化炉を組合わせて用いることにより、各種の廃棄物を低温および高温の二段階の工程を経てガス化し、CO(一酸化炭素)およびH(水素)を多量に含有する有用なガスを得る廃棄物の二段ガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
NH(アンモニア)は硝酸、各種肥料(硝安、硫安、尿素)、アクリロニトリル、カプロラクタム等の原料として、大量生産されている化学工業上の基礎原料である。このNHはN(窒素)とHから高圧下で触媒を用いて合成されるが、Hは天然ガス、ナフサなどのスチームリフォーミングか、石油、石炭、石油コークスなどの炭化水素の部分燃焼、いわゆるガス化により得られてきた。
一方、都市ゴミ、廃プラスチック、廃FRP、バイオマス廃棄物、自動車廃棄物に代表される廃棄物は、焼却により減容化されるか、あるいは未処理のまま埋立処分されてきた。直接、間接を問わず、これらがリサイクル利用される量は全体から見ればごく僅かであった。
【0003】
最近、廃棄物を再利用可能な資源とみなし、廃棄物を二段ガス化システムを用いてガス化することにより、廃棄物中に含まれる金属や灰分をリサイクル利用可能な状態で回収するとともに、COおよびHを多量に含有するガスを回収しNH(アンモニア)等の原料にしようとする提案がなされている。この試みは、ガス化溶融技術、すなわち廃棄物の二段燃焼システムを応用することにより、廃棄物をマテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクルにより有効利用するものである。
【0004】
図14は上述の提案された廃棄物二段ガス化システムの炉本体部の一例を示す概略図である。
図14においては、低温ガス化炉には、流動媒体eを流動層2の中央部と周辺部の間で旋回させるタイプの流動層ガス化炉1を、高温ガス化炉には、低温ガス化炉からの可燃ガスとガス化剤を旋回しながら高温でガス化するタイプの旋回溶融炉30を用いている。
ロックホッパ(図示せず)等を介してガス化炉1に供給された廃棄物aは、所定温度、好ましくは550〜850℃に保持された流動層2中で酸素b、スチームcと接触することにより熱分解ガス化される。不燃物dは流動媒体eと共にガス化炉1の炉底より抜き出され、スクリーン7で分級され、不燃物dのみがロックホッパ8を介して外部に排出され、流動媒体eは何らかの搬送手段を用いることによりガス化炉1に戻される。熱分解ガス化により生成したガス、タール、チャーは、後段の旋回溶融炉30の燃焼室31に供給され、1200〜1500℃の高温でガス化される。同時に、チャー中の灰分は溶融スラグ化される。生成したガスは溶融スラグとともに水槽34の水中に吹き込まれ急冷される。こうして、スラグ分離室32の水槽34からガラス状のスラグ粒fが回収される。符号36はロックホッパ、符号37はスラグスクリーンである。
【0005】
旋回溶融炉30を出た生成ガスgは、スクラバー38でスラグミストやHClを水洗浄により除去し、COシフト(CO+HO→CO+H)やCO(炭酸ガス)除去の工程(図示せず)を経た後に、合成ガス(CO+H)として回収される。このように、本システムでは廃棄物を合成ガスに転換利用するため、ガス化炉及び旋回溶融炉へはガス化剤として酸素bとスチームcの混合ガスが供給される。また、炉内の圧力は通常1.013〜4.053MPa(10〜40気圧)の加圧状態で操作されることが多い。なお、符号kは補給水、符号faは微細スラグである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図14に示す廃棄物の二段ガス化システムは、計画段階初期における提案であるために、実証レベルのプラントを設計し稼働させようとすると、以下に列挙する課題が存在している。
1)ガス化原料である廃棄物を貯留する際に、ピット&クレーン方式の代わりに貯留ホッパ等を用いようとすると、貯留ホッパからの切り出しを安定して行う必要がある。
2)流動層ガス化炉は加圧下で運転するため、廃棄物が大粒塊状である場合には圧力に抗してガス化炉に供給しようとすると、間欠的な供給となってしまう。
3)流動層ガス化炉に廃棄物を供給する場合、ガス化炉へ投入する際の原料供給量を一定とすることが重要であるが、従来の原料供給系に用いられていたロックホッパとスクリューコンベヤからなる方式では原料供給量を一定とすることは困難である。
4)原料供給系のロックホッパ内の可燃ガス等を空気でパージしようとすると、炉内圧が急上昇した時に炉内のガスが逆流して原料供給系で廃棄物が燃焼する恐れがある。一方、スチームでパージしようとすると、廃棄物中の廃プラスチックが原料供給系の内部で軟化し、流動層ガス化炉への供給に支障を来す。
5)廃棄物の熱分解ガス化によって生成されたチャーが、未反応のまま炉内の流動層上に堆積したりすると、廃棄物のガス化を阻害する恐れがある。
6)ガス化炉のフリーボードでブドワール反応(C+CO→2CO)等の吸熱反応が進むと、フリーボード部で温度低下を招き、タール成分が凝縮することによるトラブルが懸念される。
7)ガス化炉の外壁には金属性の圧力容器を用いているが、圧力容器の腐食を防止するためには、圧力容器をジャケット形式かボイラ形式にすることにより温度管理する必要がある。
8)ガス化炉は、流動媒体を流動化させるための流動化ガス分散装置を具備しており、通常この分散装置は風箱と称するガスチャンバとノズルから構成されるが、流動化ガスがこの風箱から各ノズルに供給される段階で各ノズルへの風量にバラツキを生ずる。
9)ガス化炉から不燃物とともに抜き出した流動媒体は、不燃物を分離後ガス化炉に再投入されるが、ガス化炉への投入口付近は流動媒体により温度が下がるので、凝縮したタールによって閉塞する恐れがある。
【0007】
本発明は、従来の廃棄物の二段ガス化システムにおける低温ガス化炉までの部分が有する上述の1)〜9)の問題点を解決し、廃棄物中に含まれる金属や灰分をリサイクル利用可能な状態で回収するとともに、COおよびHを多量に含有するガスを回収しNH(アンモニア)等の合成用原料にすることができる廃棄物の二段ガス化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明の1態様によれば、廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉を用いて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを後段の旋回溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、前記流動層ガス化炉に原料を供給する原料供給系に、水平方向に移動可能な複数の平板状の移動板から構成された移動床式貯留ヤードを設け、前記複数の平板は原料を積載した状態で同時に前進し、前記複数の移動板は時間差をおいて一部ずつ複数回に亘って後退するように操作され、移動板が後退する毎に積載した原料を下流側の搬送機器に落下供給することを特徴とするものである。
上述の構成によれば、流動層ガス化炉に原料を供給するための原料供給系に、移動床式貯留ヤードを使用することにより、土建費のかかるピット&クレーン方式の採用を不要とし、かつ、また下流のコンベヤ等の搬送機器に切り出し機能がなくても下流側機器への原料供給が平滑化されるので、下流機器設備容量を過剰にする必要がないばかりか、切り出し機能を不要とすることができる。以上により、原料供給系において大幅なコストダウンが可能となる。
【0009】
なお、廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、前記流動層ガス化炉に原料を供給する原料供給系に、ロックホッパと、該ロックホッパの下流に配置されたスクリューコンベヤからなる原料切出機と、該原料切出機の下流に配置されるとともに前記流動層ガス化炉に接続されたスクリューコンベヤからなる原料供給機とを設けてもよい。さらに、前記原料切出機と前記原料供給機との間に原料の落下量を計測する流量計を設けてもよい。
上述の構成によれば、原料供給系に2段方式の原料切出機と原料供給機を採用し、原料切出機と原料供給機との間に原料の落下量を直接計測できるインパクトライン流量計を設置しているため、原料をRDF状に押し固めた大粒径塊の原料をスクリュー方式の原料切出機で砕きながら定量的に切出し、インパクトライン流量計により落下量を計測しながら原料供給機によってガス化炉内に供給することができる。
【0010】
また、前記原料供給機の先端部にパージ用スチームを供給するようにしてもよい。
上述の構成によれば、原料供給機の先端部にはパージ用スチームが供給されるようになっているので、炉内圧が多少変化しても炉内の可燃ガスとロックホッパで使用する昇圧用の空気が原料供給機にて直接接触することがない。また、原料供給機内部の温度を低く維持できるため、廃棄物が熱可塑性の廃プラスチックであっても溶融することはなく、廃棄物の流動層ガス化炉への供給に支障を来すことがない。
【0011】
また、廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを旋回溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、前記流動層ガス化炉の流動層の表面の上方にチャーを炉外に抜き出すためのオーバーフロー管を設けてもよい。
上述の構成によれば、流動層の表面より上方に、チャーのオーバーフロー管を設けたため、チャーのみを選択的に炉外に排出できるので、チャー生成率の高い原料でも安定してガス化できる。
【0012】
また、廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、前記流動層ガス化炉のフリーボードに酸素を供給する二次酸素供給ノズルを設けてもよい。
上述の構成によれば、流動層ガス化炉のフリーボード部に二次酸素供給ノズルを設置し、二次酸素供給ノズルから必要に応じ酸素を供給することにより、流動層で生成されたガスをフリーボードで燃焼させることができる。そのため、フリーボードを300℃以上、好ましくは400℃以上に保持できるので、ガス温度低下によるタールの凝縮を回避できる。
【0013】
本発明の1態様によれば、廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、前記流動層ガス化炉の外壁を構成する金属性の圧力容器の内外面に断熱層を設けたことを特徴とするものである。
従来、圧力容器の腐食防止のための温度管理には、ジャケット形式かボイラ形式にする必要があったが、本発明におけるように、圧力容器の両側に断熱層を設けることにより、炉内温度、外気温度の影響を受けにくくなるので、炉内外で多少の温度変化があっても圧力容器の温度を管理値内に納めることができる。
【0014】
なお、廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、前記流動層ガス化炉内の流動媒体を流動化させるための流動化ガス分散装置を吹き出しノズルを有した円環状の風箱で構成し、該円環状の風箱内に流動化ガスの循環流を形成するようにしてもよい。前記流動化ガスの循環流は、前記風箱内に、風箱内に供給された流動化ガスを一方向に導くガイドを設置することにより形成することが好ましい。
上述の構成によれば、流動化ガス分散装置を環状の風箱とし、風箱内に積極的に循環流を形成することにより、環状であるがゆえに内部に圧力分布が生じにくいので、各ノズルの風量のバラツキを防止できる。
【0015】
本発明の1態様によれば、廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、前記流動層ガス化炉に流動媒体を循環させる流動媒体循環系に、前記流動層ガス化炉に接続されるスクリューコンベヤからなる流動媒体投入コンベヤを設け、該流動媒体投入コンベヤを流動層ガス化炉に向かって上向きに傾斜して設けたことを特徴とするものである。そして、前記流動媒体投入コンベヤの出口付近にパージ用空気を供給するようにした。
本発明によれば、流動媒体循環系の流動媒体投入コンベヤにスクリューコンベヤを用い、かつ流動媒体投入コンベヤをガス化炉に向かって上向きに傾斜して取り付け、コンベヤ内部を空気でパージする構成を採用している。ガス化炉への流動媒体投入口は空気パージを行わないと凝縮したタールによって閉塞する恐れが大きいが、コンベヤ内が流動媒体によりシールされているので、パージガス量が少なくて済み、空気を用いてもガス化効率への影響が少ない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下に列挙する効果を奏する。
1)流動層ガス化炉に原料を供給するための原料供給系に、移動床式貯留ヤードを使用することにより建設コストを大幅に低下でき、また下流のコンベヤに切り出し機能がなくても下流側機器への原料の供給量が平準化されるので、下流機器設備容量を過大にする必要がない。
2)原料供給系に2段スクリュー方式の原料切出機と原料供給機を採用し、原料切出機と原料供給機との間にインパクトライン流量計を設置しているため、大粒径塊の原料をスクリュー方式の原料切出機で砕きながら連続かつ定量供給し、インパクトライン流量計により計測監視しながら原料供給機によって炉内に供給することができる。
【0017】
3)原料炉内投入用の原料供給機の先端部にはパージ用スチームが供給されるようになっているので、炉内圧が多少変化しても可燃ガスと空気が原料供給機の内部で直接接触することがない。また、原料供給機内の温度を低く維持でき、廃棄物がプラスチックであっても溶融付着することはなく、廃棄物の流動層ガス化炉への供給に支障を来すことがない。
【0018】
4)流動層の表面より上方に、チャーのオーバーフロー管を設けたため、チャーを選択的に炉外に排出できるので、チャー発生率の高い原料でも安定してガス化できる。
5)流動層ガス化炉のフリーボードに二次酸素供給ノズルを設置し、二次酸素供給ノズルから必要に応じ酸素を供給することにより、流動層で生成されたガスの一部をフリーボードで燃焼させることができる。そのため、フリーボードを300℃以上、好ましくは400℃以上に昇温できるので、ガス温度が低下することによるタールの凝縮を回避できる。
【0019】
6)従来、圧力容器の腐食防止のための温度管理には、ジャケット形式かボイラ形式にする必要があったが、本発明におけるように、鋼板製の圧力容器の両側に断熱層を設けることにより、炉内温度、外気温度の影響を受けにくくなるので、炉内外で多少の温度変化があっても圧力容器の温度を管理値内に納めることができる。
7)流動化ガス分散装置を環状の風箱とし、風箱内に積極的に循環流を形成することにより、環状であるがゆえに端部がなく圧力分布が生じにくいので、偏流による流動化状態のバラツキを防止できる。
【0020】
8)流動媒体の循環系の流動媒体投入コンベヤにスクリューコンベヤを用い、かつ流動媒体投入コンベヤをガス化炉に向かって上向きに傾斜して取り付け、コンベヤ内部を空気でパージする構成を採用している。ガス化炉への流動媒体の投入口が凝縮したタールによって閉塞することはない。また、コンベヤ内に流動媒体を充満させることができるので、パージ空気量が少なくて済むため、ガス化効率への影響が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る廃棄物の二段ガス化システムの実施の形態を図1乃至図13を参照して説明する。
図1は本発明の廃棄物の二段ガス化システムの構成を示す概略図である。図1に示すように本発明の廃棄物の二段ガス化システムにおいては、低温ガス化炉として流動層ガス化炉1を用い、高温ガス化炉として旋回溶融炉30を用いている。流動層ガス化炉1に廃棄物を供給する原料供給系10は、移動床式貯留ヤード11、原料搬送コンベヤ12、原料ホッパ13、原料ロックホッパ14、原料切出機ホッパ15、原料切出機16、インパクトライン流量計17、原料供給機18とから構成されている。
【0022】
流動層ガス化炉1の内部には、流動化ガスを上方に噴出して炉内に流動層2を形成するための流動化ガス分散装置3が配置されている。流動層2の流動媒体には硅砂等の砂が用いられる。流動層ガス化炉1の上部にはフリーボード4が形成されており、底部には不燃物排出口5が形成されている。
流動層ガス化炉1に流動媒体を循環させる流動媒体循環系20は、不燃物排出口5の下方に配置された不燃物抜出コンベヤ21、流動媒体抜出ロックホッパ22、流動媒体エレベータ23、流動媒体供給ロックホッパ24、流動媒体投入コンベヤ用ホッパ25、流動媒体投入コンベヤ26とから構成されている。
【0023】
一方、流動層ガス化炉1で生成されたガス、タール、チャー等からなるガス状物を高温でガス化する旋回溶融炉30は、燃焼室31と、スラグ分離室32とを備えている。スラグ分離室32内には、下降管33と、冷却水を貯留した水槽34とが配置されている。
【0024】
図1に示した二段ガス化システムに適用可能な可燃性廃棄物には、都市ごみ、固形化燃料(RDF)、スラリー化燃料、廃プラスチック、廃FRP、バイオマス廃棄物、自動車廃棄物、低品位石炭等がある。ここで、固形化燃料とは都市ごみを破砕選別後、生石灰等を添加して圧縮成形したもの、スラリー化燃料とは都市ごみを破砕後水スラリー化し、高圧下で水熱分解により油化したものである。FRPは繊維強化プラスチックのことであり、廃バイオマスには上下水廃棄物(夾雑物、下水汚泥)、農産廃棄物(もみがら、稲わら)、林産廃棄物(のこくず、バーク、間伐材)、産業廃棄物(パルプチップダスト)、建築廃材等がある。低品位石炭には、石炭化度の低い泥炭、もしくは選炭時に出るボタ等がある。
【0025】
図1に示す構成において、不燃物除去、圧縮固形化等の前処理後に移動床式貯留ヤード11に貯留された廃棄物aは、該貯留ヤード11から所定量ずつ切り出され、原料搬送コンベヤ12および原料ホッパ13を介して原料ロックホッパ14に供給される。廃棄物aは、原料ロックホッパ14にて、所定圧力、例えば1.013〜4.053MPa(10〜40気圧)程度に昇圧された後に、原料切出機ホッパ15、原料切出機16、インパクトライン流量計17、原料供給機18を介して流動層ガス化炉1に定量供給される。
【0026】
ガス化炉1内の流動化ガス分散装置3からは酸素(又は空気)bとスチームcの混合ガスがガス化剤兼流動化ガスとして流動層2に送入され、流動媒体eが流動化される。廃棄物aはガス化炉内の流動層2に投入され、500〜850℃に保持された流動層2内で高温の流動媒体やガス化剤である酸素、スチームと接触することにより、速やかに熱分解ガス化される。ガス化炉1の炉底にある不燃物排出口5からは不燃物抜出コンベヤ21により流動媒体eが不燃物dとともに間欠的又は連続的に排出され、流動媒体抜出ロックホッパ22で減圧された後に、分級機(図示せず)により流動媒体eと不燃物dとが分離され、不燃物は外部に排出され、流動媒体eは流動媒体エレベータ23で上方に搬送される。流動媒体エレベータ23で上方へ搬送された流動媒体は、流動媒体供給ロックホッパ24、流動媒体投入コンベヤ用ホッパ25、流動媒体投入コンベヤ26を介して昇圧され、ガス化炉1に戻される。不燃物中に含まれる金属は、ガス化炉内が還元雰囲気であるため、酸化されない状態で回収される。
【0027】
投入された廃棄物aの熱分解ガス化によりガス、タール、チャーが生成するが、チャーは流動層2におけるガス化剤のアタックと撹乱運動により微粉砕される。固形物であるチャーは多孔質で軽く微粉状であるため、ガス状物であるガス、タールの上方向への流れに同伴されて運ばれる。ガス化炉1を出たガス状物gは旋回溶融炉30に供給され、燃焼室31に導入される。そこで吹き込まれた酸素bとスチームcの混合ガスと旋回流中で混合しながら、1200℃以上の高温で酸化分解される。生成した水素(H)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、スチーム(HO)主体のガスはスラグfと共に、スラグ分離室32内に設置された下降管33内を下降した後に、水槽34の水中に吹き込まれることにより洗浄急冷される。スラグ分離室32を出たガスgは、次のガススクラバー(図示せず)にてガス中に残存するダストや塩化水素等を除去された後、合成ガスとして水素、メタノール、メタン等の製造に利用される。スラグ分離室32の下部からは水槽34に堆積したスラグ粒fが排出される。回収されたスラグ粒は主としてセメントの原料や土木建築用の資材として有効利用される。
【0028】
次に、本発明の廃棄物の二段ガス化システムを構成する各部の詳細構造について説明する。
図2乃至図6は、原料供給系10の移動床式貯留ヤード11の詳細構造を示す図である。図2は移動床式貯留ヤードの詳細構造を示す平面図である。
図1および図2に示すように、移動床式貯留ヤード11は、フレーム51上に支持された移動床52と、移動床52の前端部および両側部から立設された側壁54とを備えている。移動床52は、図2に示すように、細長い平板状の移動板P〜Pが多数並列した構成を有し、全長で幅Lの寸法を有している。移動床52の下方に設置された原料搬送コンベヤ12は、速度v(m/s)で図2の右方向に搬送するように運転されている。並列した移動板は3つの移動板P,P,Pを1つのユニットとして構成され、移動床式貯留ヤード11の下方に配設された原料コンベヤ12の搬送方向に、その配列が繰り返されている。そして、各ユニットの移動板P、各ユニットの移動板P、各ユニットの移動板Pは、それぞれ異なった駆動装置に連結されるため、3枚おきに配列された移動板は、時間差(1/4τ)をもって同じ動きをするようになっている。なお、移動板の幅は150mm程度のものが用いられる。
【0029】
図3(a)および図3(b)は、図2に示す移動床式貯留ヤード11の一部を示している。図3(a)に示す状態では、全ての移動板P〜Pが前進した状態にある。図3(b)に示す状態では、移動板Pが距離2lだけ後退した状態にある。移動床52を構成する各移動板P〜Pの前進端から距離lだけ後方の位置は、原料搬送コンベヤ12の中心線と大略一致している。
【0030】
図4(a)および図4(b)は、図2に示す移動床式貯留ヤード11の側面図であり、図4(a)は移動床式貯留ヤード11における原料の落下部直下に原料搬送コンベヤ12が配設されている場合を示し、図4(b)は移動床式貯留ヤード11と原料搬送コンベヤ12が上述の位置関係になく、両者の間に傾斜板35が配設されている場合を示す。図4(a)および図4(b)に示す例においては、移動床52における各ユニットの移動板が作動して後退し、移動床式貯留ヤード11上の搬送物である廃棄物aの一部が原料搬送コンベヤ12上に供給される状態を示している。
【0031】
図5(a)乃至図5(e)は、移動床式貯留ヤード11の動作説明図である。図5(a)乃至図5(e)においては、1枚の移動板P,P,Pからなる1つのユニットのみを示している。図5(a)に示すように、移動床52における全ての移動板P〜Pは、時刻T=0において廃棄物(図示せず)を載置した状態で前進位置にある。そして、時刻T=(1/4)τにおいて、図5(b)に示すように、移動板Pは距離2l後退する。このとき、移動板Pに載置されていた廃棄物の一部が原料搬送コンベヤ12(図4参照)上に落下する。
【0032】
次に、時刻T=(2/4)τにおいて、図5(c)に示すように、移動板Pは距離2l後退する。このとき、移動板Pに載置されていた廃棄物の一部が原料搬送コンベヤ12上に落下する。そして、時刻T=(3/4)τにおいて、図5(d)に示すように、移動板Pは距離2l後退する。このとき、移動板Pに載置されていた廃棄物の一部が原料搬送コンベヤ12上に落下する。最後に、時刻T=τにおいて、図5(e)に示すように、全ての移動板P〜Pは廃棄物を載置した状態で後退位置から距離2l前進する。図5(a)〜図5(e)に示すサイクルが繰り返されることにより、廃棄物である原料が移動床式貯留ヤード11から原料搬送コンベヤ12に切り出される。
【0033】
原料搬送コンベヤ12の搬送速度v(m/sec)と移動床52の全長L(m)(図2参照)と上記サイクル時間τ(sec)との関係は、L/v≧τに設定されている。したがって、原料搬送コンベヤ12には移動床式貯留ヤード11から廃棄物aが途切れることなく供給される。そして、3枚おきに配列された移動板(P〜P)毎に、時間差(1/4τ)をもって移動することにより、移動毎に廃棄物が移動床52から原料搬送コンベヤ12上に落下するため、原料搬送コンベヤ12の下流側の機器に搬送される廃棄物の供給量はほぼ平準化される。したがって、原料搬送コンベヤ12の下流側の機器設備容量を過大にする必要がない。
【0034】
図6は移動床式貯留ヤードの変形例を示す斜視図である。移動床式貯留ヤード11の出口の原料搬送コンベヤ12を下流の機器配置等の関係から傾斜させなければならない場合(θ:傾斜角度)、図示するように移動床52をいくつかのユニット(図6に示す例では3つのユニット)に分割し、階段状に配置することによって対応する。なお、図6に示す例では、各ユニット1,2,3は4枚の移動板P,P,P,Pから構成されている。作用および効果は、図2乃至図5に示す例と同様である。移動床式貯留ヤードの搬送能力は、移動板の前進する長さで決まってくるが、通常は0.07〜0.6m/minとしている。
【0035】
図7は、原料供給系10における原料ホッパ13から低温ガス化炉である流動層ガス化炉1に至る経路の詳細構造を示す側面図である。図7に示すように、原料搬送コンベヤ12より原料ホッパ13に供給された廃棄物は、原料ロックホッパ14、原料切出機ホッパ15、原料切出機16、インパクトライン流量計17、原料供給機18を介して流動層ガス化炉1に供給される。
流動層ガス化炉1には、原料である廃棄物を間欠的ではなく、連続に近い形で供給することが必要とされる。図7に示す例においては、原料切出機16にスクリューコンベヤを採用し、原料供給機18にスクリューコンベヤを採用し、即ち、原料供給系に2段スクリュー方式を採用している。そして、原料切出機16と原料供給機18との間にインパクトライン流量計17を設置している。したがって、大粒径塊の廃棄物を、スクリュー方式の原料切出機16で砕きながらインパクトライン流量計17に定量供給し、インパクトライン流量計17によりオンラインで計測しながら原料供給機18によって炉内に供給することができる。即ち、原料切出機16、インパクトライン流量計17、原料供給機18の組合せにより、廃棄物をインパクトライン流量計17へ連続かつ平準化供給が可能なので、インパクトライン流量計17の測定精度を高めることができる。また、廃棄物を大粒径塊状にするときも、スクリューコンベアで容易に破砕できるような堅さにすればよい。必要以上に溶解して固めることは不要である。
【0036】
また原料供給機18の先端部にはパージ用スチーム55が供給されるようになっている。そして、原料切出機ホッパ15にはパージ用空気56が供給されるようになっている。したがって、原料供給機18の先端部は常にスチームでパージされているので、多少炉内圧が変化しても炉内の可燃ガスと原料ロックホッパ14で使用する空気が原料供給機18の内部で直接接触しない。また、原料供給機18内の温度を低く維持できるため、廃棄物がプラスチックであっても溶融付着することはなく、廃棄物の流動層ガス化炉1への供給に支障を来すことがない。また、原料供給機18を介して上流側に向かって炉内のガス状物質が逆流しても原料切出機ホッパ15に供給されるパージ用空気56により、この逆流を阻止することができる。なお、原料ロックホッパ14の昇圧時には昇圧用空気57が供給され、同じく降圧時には原料ロックホッパ14内の空気が排気されるようになっている。また緊急時にはパージ用窒素58が原料ロックホッパ14、原料切出機ホッパ15に供給されるようになっている。
【0037】
図8は、流動層ガス化炉1の詳細構造を示す図である。図8(a)は部分断面を有した正面図、図8(b)は図8(a)におけるA部拡大図である。図8(a)に示すように、流動層ガス化炉1にはチャーオーバーフロー管61が設けられている。チャーオーバーフロー管61はオーバーフロー内管62とオーバーフロー外管63と内外管62,63にサンドイッチされた保温材64とから構成されている。即ち、チャーオーバーフロー管61は二重管構造とし、高温のチャーや流動媒体に接する内管62には耐圧機能を持たせず、外管63にて耐圧機能を持たせ、最外部は管内部にパージされたスチームの凝縮防止、および外管温度管理のためのスチームトレース66を施している。チャーオーバーフロー管61の一端は流動層の表面よりやや上方に開口し、他端は不燃物抜出コンベヤ21に接続されている。チャーオーバーフロー管61の下端部にはバルブ65が設置されている。またチャーオーバーフロー管61の分岐部61aよりチャーをサンプリングできるようになっている。
【0038】
不燃物排出口5に連なる不燃物シュート6および不燃物抜出コンベヤ21の外面もスチームトレース66により覆われている。また流動層ガス化炉1の側壁にはのぞき窓67が設置され、こののぞき窓67の外には炉内モニタリング用の工業用テレビ68が設置されている。
【0039】
従来の流動層ガス化炉においては、チャーが流動層上に堆積し廃棄物のガス化を阻害することがあった。そのため酸素吹き込み等によるチャー燃焼が必要となった。こうした現象はチャー生成率の高い原料(例えば、ウレタンゴム、木、石炭)では顕著である。本発明においては、工業用テレビ68や流動層の差圧により流動層2の表面上にチャーが堆積したことを監視し、所定量以上のチャーの堆積が確認されたら、バルブ65を開き、チャーオーバーフロー管61によってチャーを抜き出すようにしている。これにより、チャーのみを選択的に炉外に排出し、必要に応じて粉砕後ガス化炉に戻すようにしているので、チャー発生率の高い原料でも安定した運転が可能となる。
【0040】
また、図8(a)に示すように、流動層ガス化炉1のフリーボード4に二次酸素供給ノズル69を設置している。二次酸素供給ノズル69から必要に応じフリーボード4に酸素を供給することにより、流動層2で生成されたガスをフリーボード4で一部燃焼させることができる。フリーボード4ではブドワール反応、水性ガス化反応(C+HO→CO+H)等の吸熱反応が進みガス温度が下がるので、タールが凝縮する恐れがあるが、必要に応じて、二次酸素供給ノズル69から酸素好ましくは酸素とスチームの混合ガスを供給することにより、フリーボード4を300℃以上、好ましくは400℃以上に高温化できるので、ガス温度が低下することによるタール凝縮を回避できる。
【0041】
また本発明の流動層ガス化炉1においては、図8(a)および図8(b)に示すように、鋼板製の圧力容器71の両側(内外)に断熱層72,73を設けている。断熱層72は断熱材からなり、断熱層73は保温材からなっている。そして、断熱層72の内側には耐火層74を設けている。
【0042】
生成ガス中に含まれる塩化水素が圧力容器内面に結露すると腐食の原因となるため、結露が起こらない温度以上(但し、容器の設計温度範囲内)に容器内面の温度コントロールを行う必要がある。従来、これを行うために、圧力容器にジャケットを設けるか、あるいはボイラ構造とし温度管理する必要があり、コスト的に問題があった。本発明においては、圧力容器71の内外面に断熱層72,73を設けている。これにより、炉内温度、外気温度の変動に対し影響を受けにくくすることができ、所定の外気温、炉内運転温度にて、適切な温度範囲内に圧力容器71を置くことが可能となる。また、比較的炉内運転温度の低い炉下部の不燃物シュート6やオーバーフロー管61はスチームトレース66を施すことで、塩化水素の結露温度以上に保持している。この塩化水素を含んだ水分結露温度は、炉内圧1.621MPa(16気圧)で160℃程度と考えられる。
【0043】
図9乃至図12は、流動層ガス化炉1内に設置された流動化ガス分散装置3およびその周辺機器の詳細構造を示す図である。図9は流動層ガス化炉の要部断面図、図10は流動層ガス化炉および流動化ガス分散装置を模式的に示す斜視図である。
流動層とは、0.4〜1.0mm程度の珪砂や酸化鉄等の流動媒体粒子を充填した粒子充填層の下からガスを供給して流動媒体を流動化させ、流動層を形成したもので、流動層反応装置とはその流動層の持つ流動性・均一性・熱容量の大きさ・表面積の大きさ等を利用して化学反応を早く、安定かつ均質に行わせようとするもので、石油精製の接触分解や、石炭等固体燃料の燃焼や焼却に応用され、多くの実績がある。
【0044】
流動層を利用した反応装置においては、設計通りの流動化状態を得ることが重要であるが、実際の流動層反応装置では流動状態に水平方向の分布があるのが普通である。この流動化状態に分布を生じる主な原因は、流動層下部の流動化ガス分散装置から吹き出すガス流量が場所によって異なることである。この流動化ガス吹き出し量の違いは、流動化ガス分散装置に流動化ガスを供給する風箱内の静圧分布によるものと考えられ、設計通りの流動化ガスの吹き出し速度を得るためには、風箱内の静圧分布を極力なくすことが重要となる。
【0045】
しかしながら、通常の流動層反応装置の設計においては風箱に流入する流動化ガスに動圧が存在するため、風箱内の静圧分布を無くすことは容易でなく、流動化の均一性を保持するためには、流動化ガス吹き出しノズルの通風抵抗を静圧分布幅と比べて大きくなるよう設計することによって、静圧分布の影響を相対的に小さくするようにしている。しかしながら、流動化ガス分散ノズルの通風抵抗が大きいことはエネルギーロスを生じるため、省エネルギーのためにはできるだけ静圧分布を生じない風箱形状とすることが望まれる。
【0046】
本発明は上記のことに鑑みてなされたものであり、流動化ガスのエネルギーロスが小さく、かつ均一な流動化状態を得ることのできる流動化ガス分散装置を提供するものである。
下式はベルヌーイの定理を式化したものであるが、左辺は全圧で、右辺第1項が静圧、第2項が動圧、第3項が位置圧(ヘッド)である。
P=p+1/2ρv+ρgh
動圧を持った流動化ガスが風箱に流入した後、流速を減じせしめられると、流動化ガスの持っていた運動エネルギー(動圧)が静圧に変換される。したがって、単純なパイプを利用した風箱で片側から流動化ガスを供給する場合や、箱形の風箱の1箇所から流動化ガスを供給する場合は、どうしても風箱内端部で流速が減じせしめられるので、端部の静圧が上昇する傾向があり、静圧が上昇した部分から流動化ガスが供給される分散ノズルでは、分散ノズルからの流動化ガス吹き出し量が他のノズルと比べて相対的に多くなってしまうのである。したがって、流動化ガスの風箱を設計するにあたっては、端部を作らないようにすることが重要である。閉じた空間で端部のない代表的なものは円環である。
【0047】
したがって、本発明の流動化ガス分散装置においては、図9および図10に示すように、円環状の風箱を用いている。すなわち、流動層ガス化炉1内部の流動化ガス分散装置3内に円環状の風箱81a,81bが設けられている。ガス化炉が円筒形状であるため、円環形状の風箱は形状的適合性に優れているが、単に球や円環を風箱として用いるだけでは内部の静圧分布はなくならない。
【0048】
図11は円環状風箱の1例を示す詳細図であり、図11(a)は円環状風箱の平面図、図11(b)は円環状風箱の正面図である。図11(a)および図11(b)に示すように、風箱81aには、流動化ガス供給管82と、流動化ガス吹き出しノズル83を先端に有する複数の流動化ガス吹き出し管84とが接続されている。図11に示す例のように、単純に1箇所から流動化ガス60を供給すると、図内矢印に示すように流動化ガスが流れ、供給管接続部の反対側“A”部で流れが衝突し、動圧が静圧に変換されるので“A”部の静圧が上昇し、“A”部近傍に接続されている分散ノズル供給管からの流動化ガス量が他と比べて多くなってしまう。流動化ガス供給箇所を1箇所でなく、2箇所以上に増やしても、流れが衝突し動圧が静圧に変換される部分が形成されてしまうと、その部分の静圧が上昇し、流動化ガス吹き出し量が不均一になってしまうことになる。したがって、動圧を静圧に変換せしめないようにすることが流動化ガスの吹き出し量の不均一を防止する上では重要となる。
【0049】
図12は円環状風箱の他の例を示す詳細図であり、図12(a)は円環状風箱の平面図、図12(b)は円環状風箱の正面図、図12(c)は図12(b)のB矢視図である。風箱81a内の流動化ガス供給管82の出口部にガイド85a,85bを設け、風箱81a内の流動化ガスが一方向に流れるようにしたものである。ガイド85a,85bの形状は流動化ガスの流れを一方向に導くことができる形状であれば、どのような形状でも構わないが、万が一、風箱内に流動媒体が落下してきてもそれを流動化ガス供給管82から排出できるように、風箱の底部近傍が開口しているのが望ましい。図11(c)に示す例においては、符号86が流動媒体排出口である。本発明の風箱においては、ガス流れが一定方向であるので、風箱内に落下した流動媒体は流動化ガス供給管82へ向けて吹き寄せられるため、風箱内に堆積しにくい。図中、符号87は流動媒体が流動媒体排出口86を介して排出される際の流れを示している。この円環状風箱内は、流動化ガスの滞留時間が0.1〜0.2secとなるよう設計されることが好ましい。
【0050】
また、円環状風箱内を一周して戻ってきた流動化ガスの動圧が静圧に変換されないようにするため、ガイド85aの上部は開口していなければならない。ガイド85aはガス流れの大部分の流れを制御するため、流動化ガス供給管82の管径全体を覆うように配置されるのがよい。図12に示す例においては、ガイドは85a,85bの2枚で構成されているが、必ずしも2枚である必要はなく、1枚であっても良いし必要に応じて増やしてもよい。ガイドの形状は単純な平板でも構わないが、好ましくは、図12に示すように、ガスの流れに応じた曲面で構成されるのがよい。流動層ガス化炉において円環状風箱にこのようなガイドを設けることによって、少ない空気供給口でも、風箱内の静圧を均一に保つことができ、流動状態を均一にできる。また、万が一、流動媒体が風箱内に落下しても排出が容易になる。なお、本廃棄物二段ガス化システムは1.013MPa(10気圧)以上で運転されることが多いので、用いる流動媒体の粒径は0.1〜0.5mm程度としている。
【0051】
図13は、流動媒体循環系20の要部詳細構造を示す正面図である。図13においては、流動媒体供給ロックホッパ24、流動媒体投入コンベヤ用ホッパ25および流動媒体投入コンベヤ26が示されている。流動媒体投入コンベヤ26にはスクリューコンベヤを用い、かつ流動媒体投入コンベヤ26は水平面に対して流動層ガス化炉1に向かって上向きに所定角度(θ)だけ傾斜している。この角度(θ)は10〜20゜に設定されている。そして、流動媒体投入コンベヤ用ホッパ25にパージ用空気90を供給する。すなわち、本発明においては、流動媒体投入コンベヤ26にスクリューコンベヤを用い、かつ流動媒体投入コンベヤ26を炉に向かって上向きに傾斜して取り付け、コンベヤ内部を空気でパージする構成を採用している。したがって、ガス化炉への流動媒体の投入口は、パージを行わないと凝縮したタールによって閉塞してしまうが、流動媒体投入コンベヤ26が傾斜したスクリューコンベヤでコンベヤ内に流動媒体を充満させることができるので、流動媒体の投入口に供給するパージガス量は少なくて済む。このため、空気を用いてもガス化効率への影響は少ない。流動媒体供給ロックホッパ24には昇圧用空気93が供給されるようになっている。また流動媒体供給ロックホッパ24内の空気は排気可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の廃棄物の二段ガス化システムの要部を示す概略図である。
【図2】図2は移動床式貯留ヤードの詳細構造を示す平面図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、図2に示す移動床式貯留ヤードの一部を示す図であり、図3(a)に示す状態では、全てのグループの移動板が前進した状態を示し、図3(b)に示す状態では、1つのグループの移動板が2lだけ後退した状態を示している。
【図4】図4(a)および図4(b)は、図2に示す移動床式貯留ヤードの側面図であり、図4(a)は移動床式貯留ヤードの直下に原料搬送コンベヤが配設されている場合を示し、図4(b)は移動床式貯留ヤードと原料搬送コンベヤとの間に傾斜板が配設されている場合を示す。
【図5】図5(a)乃至図5(e)は、移動床式貯留ヤードの動作説明図である。
【図6】移動床式貯留ヤードの変形例を示す斜視図である。
【図7】原料供給系における原料ホッパから流動層ガス化炉に至る経路の詳細構造を示す側面図である。
【図8】流動層ガス化炉の詳細構造を示す図であり、図8(a)は部分断面を有した正面図、図8(b)は図8(a)におけるA部拡大図である。
【図9】流動層ガス化炉の要部断面図である。
【図10】流動層ガス化炉および流動化ガス分散装置を模式的に示す斜視図である。
【図11】円環状風箱の1例を示す詳細図であり、図11(a)は円環状風箱の平面図、図11(b)は円環状風箱の正面図である。
【図12】円環状風箱の他の例を示す詳細図であり、図12(a)は円環状風箱の平面図、図12(b)は円環状風箱の正面図、図12(c)は図12(b)のB矢視図である。
【図13】流動媒体循環系の要部詳細構造を示す正面図である。
【図14】従来の廃棄物の二段ガス化システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1 流動層ガス化炉
2 流動層
3 流動化ガス分散装置
4 フリーボード
5 不燃物排出口
6 不燃物シュート
7 スクリーン
8,36 ロックホッパ
10 原料供給系
11 移動床式貯留ヤード
12 原料搬送コンベヤ
13 原料ホッパ
14 原料ロックホッパ
15 原料切出機ホッパ
16 原料切出機
17 インパクトライン流量計
18 原料供給機
20 流動媒体循環系
21 不燃物抜出コンベヤ
22 流動媒体抜出ロックホッパ
23 流動媒体エレベータ
24 流動媒体供給ロックホッパ
25 流動媒体投入コンベヤ用ホッパ
26 流動媒体投入コンベヤ
30 旋回溶融炉
31 燃焼室
32 スラグ分離室
33 下降管
34 水槽
35 傾斜板
37 スラグスクリーン
38 スクラバー
51 フレーム
52 移動床
54 側壁
55 パージ用スチーム
56 パージ用空気
57,93 昇圧用空気
58 パージ用窒素
60 流動化ガス
61 チャーオーバーフロー管
61a 分岐部
62 オーバーフロー内管
63 オーバーフロー外管
64 保温材
65 バルブ
66 スチームトレース
67 のぞき窓
68 工業用テレビ
69 二次酸素供給ノズル
71 圧力容器
72,73 断熱層
74 耐火層
81a,81b 風箱
82 流動化ガス供給管
83 流動化ガス吹き出しノズル
84 流動化ガス吹き出し管
85,85a,85b ガイド
86 流動媒体排出口
87 流動媒体の流れ
,P,P,P 移動板
a 廃棄物
b 酸素
c スチーム
d 不燃物
e 流動媒体
f スラグ粒
fa 微細スラグ
g 生成ガス
k 補給水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、
前記流動層ガス化炉に原料を供給する原料供給系に、複数の移動可能な平板状の移動板が並列した移動床式貯留ヤードを設け、前記複数の移動板は原料を載置した状態で同時に前進し、前記複数の移動板は一部ずつ時間差をおいて前進後退するように構成され、該移動板が後退する毎に下流側の機器に原料を落下供給することを特徴とする廃棄物の二段ガス化システム。
【請求項2】
廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、
前記流動層ガス化炉の外壁を構成する圧力容器の内外面に断熱層を設けたことを特徴とする廃棄物の二段ガス化システム。
【請求項3】
廃棄物からなる原料を流動層ガス化炉にて低温で熱分解ガス化し、得られるガス状物質とチャーを溶融炉に導入して高温でガス化する廃棄物の二段ガス化システムにおいて、
前記流動層ガス化炉に流動媒体を循環させる流動媒体循環系に、前記流動層ガス化炉に接続されるスクリューコンベヤからなる流動媒体投入コンベヤを設け、該流動媒体投入コンベヤを流動層ガス化炉に向かって上向きに傾斜して設けたことを特徴とする廃棄物の二段ガス化システム。
【請求項4】
前記流動媒体投入コンベヤにパージ用空気を供給するようにしたことを特徴とする請求項3記載の廃棄物の二段ガス化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−322004(P2006−322004A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145584(P2006−145584)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【分割の表示】特願2000−66631(P2000−66631)の分割
【原出願日】平成12年3月10日(2000.3.10)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】