説明

廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造

【課題】廃棄物ガス化溶融炉の酸素吹込みバーナー周辺の炉壁を保護するための耐火構造を提供すること。
【解決手段】 廃棄物を80%以上の高濃度の酸素含有ガスで直接に溶融ガス化する酸素バーナーを有する廃棄物ガス化溶融炉1の酸素バーナー周りの耐火構造において、少なくとも該酸素バーナー2の上側の下記の式で規定される高さ(H)以下の部分に水冷帯3を配設した構造とする。
H=a×Q
H=酸素バーナー上側の水冷ジャケットが必要な高さ(m)
Q=酸素バーナー1本あたりの酸素吹き込み量(Nm/hr・ごみton)
a=定数

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物を溶融ガス化処理する廃棄物ガス化溶融炉において、炉壁を溶損から保護するための溶融炉の耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物などは、廃棄物処理場において焼却処理されて減容化され、最終的に排出される焼却残渣等の固形物は埋め立て処分場で埋め立て処分されている。また、それらの固形物の中でも、焼却又は溶融処理した際に発生する飛灰には亜鉛、鉛などの重金属類が含まれていることから、飛灰は、セメント固化や薬剤処理等によって安定化処理された後に埋め立て処分されている。
【0003】
しかしながら、このような処分方法は埋め立て処分場を必要とし、近年ではこのような処分場の確保が非常に困難となってきている。また、安定化処理した場合でも、超長期的には、埋め立て処分された飛灰から溶出する重金属が環境汚染の原因となるというリスクを抱えており、環境汚染を防ぐための対策を施す必要がある。
【0004】
そこで、近年では、上記した焼却処理に代わる廃棄物処理方法として、廃棄物を還元性熱処理炉で熱処理することが行われている。このような処理方法の例としてガス化改質方式によるガス化溶融プロセスが注目されている。
【0005】
この方法は、廃棄物ガス化溶融炉内で、廃棄物を熱処理することによって、廃棄物を熱分解ガスを含むガスと溶融物とに転換するというものであり、得られたガス中にはダイオキシン等の有害なガス成分が少ないという利点がある。そして、廃棄物から発生する熱分解ガス中には可燃性のガスが含まれているため、これを発電用燃料、工業用燃料及び化学工業用原料等として有効に利用することができる。また廃棄物に含まれていた重金属類等の有害物質は、溶融スラグ中に固定されるので、重金属類が溶出しにくいという特徴がある。
【0006】
前記の廃棄物ガス化溶融炉では、炉本体内部の温度が高温になり、高温ガスや溶融スラグと接触するため、一般に炉本体は外側の鉄皮を耐火物によって内張するという構造をとっているが、溶損等による消耗が激しく、耐火物が消耗すれば操業を停止して、耐火物の張り替え等の補修を行う必要がある。
しかしながら、補修を頻繁に行う必要があると処理効率が低下し、コストの上昇につながるので、補修の頻度を低下させるべく、耐火物の消耗を防ぐための手段が講じる必要がある。
【0007】
高温炉に採用される耐火物又は耐火構造については、製鉄炉でかなりの技術が発達している。このことは、耐火物メーカーにおける国内耐火物生産量の約70%が鉄鋼業において使用されていることからもうかがえる。
【0008】
一方、廃棄物の処理炉においては循環型社会形成の観点から従来灰、ばいじんとして最終処分場に廃棄されていたもの灰溶融、ガス化溶融といった技術を利用してスラグ化する設備が増加してきており、灰・ばいじんをスラグ化するため、スラグの溶融工程での耐火物の重要度が増大している。
【0009】
このような廃棄物ガス化溶融炉の従来例について以下説明する。
特許文献1では、廃棄物ガス化溶融炉において、スラグ排出口周りの耐火物の冷却効率が悪くなるのを防ぐために、スラグ排出口の周りの耐火物を冷却するための水冷ジャケット部を設けることが提案されている。
【0010】
特許文献2では、低温ガス化炉と高温ガス化炉とを組み合わせたガス化処理装置において、酸素ガスを供給される高温ガス化炉を、外殻としての鉄皮と、この鉄皮の内側に設けられたSiC質の内層キャスタブルと更にその内側に設けられたAl質の最内層キャスタブルと、鉄皮の外側に設けられた冷却ジャケットとから構成して耐化炉壁の損耗を低減することが提案されている。
【0011】
特許文献3では、廃棄物ガス化溶融炉の炉本体の炉壁内部又は炉壁露出部に冷却水が循環する流路を形成して炉壁を冷却することにより炉壁を保護することが提案されている。
しかしながら、特に廃棄物を純酸素に近い高濃度の酸素で燃焼させ、不燃物を溶融する炉では、その環境特有の問題があり、未だ開発段階であると言える。
【0012】
図4(a)は廃棄物ガス化溶融炉を示す図であるが、バーナ2から酸素ガスを炉内に吹込むと、図4(b)に示すように、バーナー2の上側部分の炉壁耐火物が符号5で示すように激しく損傷するという問題がある。バーナー2の下側部分の炉壁耐火物も損傷は受けるが上側部分ほどではない。
このような問題に対する対策は未だなされていないのが現状である。
【0013】
【特許文献1】特開平1−234709号公報
【特許文献2】特開2000−329323号公報
【特許文献3】特開2002−310417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、廃棄物ガス化溶融炉の酸素吹込みバーナー周辺の炉壁を保護するための耐火構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の構成を有する本願発明によって上記課題が解決できることを見出した。
(1)廃棄物を80容量%以上の高濃度の酸素含有ガスで直接に溶融ガス化する酸素バーナーを複数本有する廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造であって、少なくとも該酸素バーナー上側の下記の式で規定される高さ(H)以下の部分に金属製の水冷帯を配設した構造とすることを特徴とする廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。
H=a×Q
H=酸素バーナー上側の水冷ジャケットが必要な高さ(m)
Q=酸素バーナー1本あたりの酸素純分吹き込み量(Nm/(hr・本・ごみton))
a=定数
但し、灰分重量比率10%未満の場合:a=27
灰分重量比率10%以上50%以下の場合:a=67
【0016】
(2)酸素バーナーの横側部分にも水冷帯を配設した構造とすることを特徴とする上記(1)の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造
(3)酸素バーナーの下側部分にも水冷帯を配設した構造とすることを特徴とする上記(1)、(2)の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。
(4)前記廃棄物ガス化溶融炉が助燃材として炭素質材を用いないタイプの廃棄物ガス化溶融炉であることを特徴とする上記(1)〜(3)の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。
(5)前記水冷帯の炉内側にアルミナ質耐火物を付加的に配設したことを特徴とする上記(1)〜(4)の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの炉壁の損傷を防ぐことができるので、廃棄物ガス化溶融炉を長期に安定して操業することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造として好適に用いることができる。まず、廃棄物ガス化溶融炉の全体構造を前記したガス化改質方式を例にとって図3に基づいて説明する。
【0019】
図3に示されたガス化改質方式は次のプロセスから構成されている。
1.プレス・脱ガスチャンネル
(1)廃棄物の圧縮、(2)乾燥・熱分解
2.高温反応炉・均質化炉
(3)ガス化溶融、(4)スラグ均質化、(5)ガス改質
3.ガス精製
(6)急冷(急冷・酸洗浄、酸洗浄)、(7)ガス精製(アルカリ洗浄、脱硫、除湿)
4.水処理
(8)水処理(沈殿、脱塩等)
【0020】
この方式の基本的な構成をフローに沿って説明すると次の通りである。
ピットに集積された都市ごみ、産業廃棄物等の廃棄物はプレス機で圧縮された後、乾燥熱分解工程で間接加熱により加熱乾留されて高温反応炉に送られる。高温反応炉の下部には、ランスが配置され、このランスによって炉内に高濃度酸素が導入され、この酸素ガスが乾留物中の炭素をガス化し、一酸化炭素と二酸化炭素が生成する。また、高温水蒸気が存在するため、炭素と水蒸気とによる水性ガス反応が生じて、水素と一酸化炭素が生成される。更に、有機化合物(炭化水素など)も水蒸気と反応して、水素と一酸化炭素が生成する。上記反応の結果、高温反応炉の塔頂部より粗合成ガスが回収される。
【0021】
一方、高温反応炉下部で生成した溶融物は高温反応炉から均質化炉へ流れ出る。この溶融物には炭素や微量の重金属等が含まれており、均質化炉においては炭素は十分な酸素あるいは水蒸気によってガス化されて水素、一酸化炭素、二酸化炭素を生成する。均質化炉において金属溶融物は比重が大きいため、スラグの下部に溜まる。溶融物は水砕システムに流れ落ちて、冷却固化され、メタル・スラグの混合物は、磁選によりメタルとスラグに分離される。
【0022】
高温反応炉から発生する粗合成ガスに対して、急冷装置で酸性水を噴射することによってガスの温度を約1200℃から約70℃にまで急速冷却し、ダイオキシン類の再合成を阻止する。この時、酸性水によってガスが洗浄され、粗合成ガス中に含まれるPbなどの重金属成分と塩素分は洗浄中に溶け込む。
【0023】
酸洗浄された合成ガスは、必要に応じて更に酸洗浄を施されたのちアルカリ洗浄され、残存する塩化水素ガス等の酸性ガスが中和除去される。次いで、脱硫洗浄装置でガス中の硫化水素が硫黄に転換されて硫黄ケーキとして回収される。次いで合成ガスは低温除湿工程で水分を除去された後、精製された燃料ガスとして利用される。
【0024】
製鉄炉と廃棄物ガス化溶融炉とを対比すると、廃棄物ガス化溶融炉固有の特徴・問題点としては次の点を挙げることができる。
(1)廃棄物処理炉では廃棄物を純酸素に近い高濃度の酸素で燃焼させる点。
純酸素に近い高濃度の酸素で燃焼させるのは、燃焼発生ガスを高カロリー副生ガスとして利用したり、燃焼発生ガス量を削減するためである。
(2)廃棄物ガス化溶融炉は、リサイクルという観点からするとサーマルリサイクル設備である点。
従って、ごみ1トン当たりの熱または、副生ガスをより効率良く回収するためには炉体の熱損失を低減することも重要課題のひとつとなっている。
【0025】
(3)廃棄物処理炉では製錬炉に比べて炉に装入されるアルカリ分(ナトリウム、カリウムなど)が多く、それゆえ、アルカリ成分により周辺スラグと低融点スラグを形成したり、または、アルカリ成分が耐火物に浸潤して耐火物成分と低融点スラグを形成することによる耐火物の損傷を回避する必要がある。
(4)コークスなどの炭材を助燃材として用いない廃棄物の溶融処理においては、炉に装入される鉄分がFeO酸化鉄となり、これが溶融スラグ中に多量に存在することになるため、酸化鉄成分により周辺スラグと低融点スラグを形成したり、または、酸化鉄成分が耐火物に浸潤して耐火物成分と低融点スラグを形成することによる耐火物の損傷を回避する必要がある。
【0026】
そして、本件発明者等は、上記の特徴・問題点を考慮に入れて、純酸素に近い高濃度の酸素で燃焼させるための酸素バーナー近辺の耐火物の損傷の広範な調査・研究を行った結果、以下の知見を得た。
【0027】
[1]酸素バーナー近辺の耐火物は何を用いても溶損すること。
[2]その原因としては、酸素バーナー前では温度が2000℃以上にもなり、耐火物成分そのものの溶融点に近いこと、また高温であるがゆえに上記アルカリ成分および酸化鉄成分による耐火物損傷反応が活発であることが考えられること。
【0028】
[3]酸素バーナー周りの耐火物の損傷の範囲は、酸素バーナーから炉上部および側面への溶損が大きく、その溶損高さ(H)(バーナーからの溶損距離)は、操業条件によっても異なるが大略図2に示すように酸素バーナー1本あたりの酸素吹き込み量に従って規定されること。
[4]酸素バーナー下部の耐火物も、少し溶損するが、上部のように大きく溶損することはなく、またその溶損はある範囲でそれ以上進まなくなること。
【0029】
以上の知見を踏まえると、酸素バーナー周辺の耐火構造は耐火物を基本とした耐火構造よりも、水冷帯構造を基本とした耐火構造とすることが必要であることが判明した。
そして、その場合、廃棄物ガス化溶融炉で必須要件となる「熱損失を極力抑えること」を達成するためには、酸素バーナー1本あたりの吹き込み酸素量に従って決定される溶損高さ(H)の部分は水冷帯構造とする必要があるが、それ以外の部分は、通常の高温炉におけるように定形耐火物構造または不定形耐火物構造としてよい。
【0030】
本願発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その特徴とするところは、図1に示すように、廃棄物ガス化溶融炉1の炉壁に設けられたバーナ2の周辺にバーナー2を囲むようにして水冷帯4を設ける点にあり、この水冷帯を配設する高さを次式で規定する高さ(H)以下とした点にある。
H=a×Q
H=酸素バーナー上側の水冷ジャケットが必要な高さ(m)
Q=酸素バーナー1本あたりの酸素純分吹き込み量(Nm/(hr・本・ごみton))
a=定数
但し、灰分重量比率10%未満の場合:a=27
灰分重量比率10%以上50%以下の場合:a=67
【0031】
定数aはバーナ前にある廃棄物の性状で決まる定数で、具体的には、廃棄物中の灰分重量比率で決まり、灰分重量比率10%未満と10%以上とで差異が認められるので、上記のように設定した。
灰分の量は、実際に廃棄物を燃焼して、灰分値を求めそこから推定する。具体的な方法としては、縮分法により代表性を持たせたごみを分析し、灰分値を求める。また、受け入れたごみの種類毎に、上記方法で灰分データをとり、それぞれのごみの配合比率から重量比率按分した値を推定灰分値とする。
【0032】
廃棄物溶融処理炉は、リサイクルという観点からするとサーマルリサイクル設備である。従って、ごみ1トンあたりの熱または、副生ガスをより効率良く回収するためには炉体の熱損失を低減することも重要課題の一つとなっている。
この観点からすると、熱損失が大きくならないように、水冷帯を設ける高さは必要最小限にとどめる必要がある。このため、本願発明では、水冷帯構造は上記式で規定される高さ(H)以下の部分に設けることとした。
【0033】
本願発明において酸素バーナーに供給する酸素ガスを含有するガスの酸素濃度は80%以上とする。これは、廃棄物をガス化溶融する際に発生する燃焼発生ガスを高カロリー副生ガスとして利用すると共に、燃焼発生ガス量を削減するためである。
【0034】
水冷帯を設けると、酸素バーナーで高温溶融されたスラグや飛散または揮発したスラグ等がこの水冷帯により冷却されて固体スラグ層を形成する。この固体スラグ層は、高温溶融スラグからの加熱と水冷帯からの冷却との熱バランスした厚さで形成され、この固体スラグ層により炉壁が保護される。また、形成された固体スラグ層には一定の断熱効果もあり、炉内から炉外への熱損失が抑制される。
【0035】
この水冷帯の材質は銅のような熱伝導性の良い金属材料であることが好ましい。水冷帯の材料が耐火物であると、高温溶融スラグにより耐火物が溶損し、その結果耐火物の補修が必要となるので、水冷帯の材料は熱伝導性に優れて溶融スラグにより溶融しにくい金属材料であることが好ましく、特に銅製であることがより好ましい。水冷帯を銅のような材料とすることにより固体スラグ層が効率よく形成される。
水冷帯表面に固体スラグ層を固定するために水冷帯表面には突起物を複数形成することが好ましい。
【0036】
また、水冷帯の炉内側表面にはコーティング層としてアルミナ質不定形耐火物を配置しても良い。これは、特に乾燥時及びごみ投入初期において水冷帯の材料が露出していると、熱損失が大きくなるという問題があるが、水冷帯の表面をアルミナ質不定形耐火物で覆っておくことにより、ごみ投入初期等における熱損失が防げるからである。また、操業時には水冷体表面に溶融スラグが固着して固体スラグ層を形成し、これが熱損失抑制効果を生み出す。
【0037】
水冷帯は酸素バーナー上側に加えて、酸素バーナー側面にも配設することが好ましい。
これは、実証炉での耐火物損傷状況を調査した結果、バーナー上部、側面および下側に損傷が見られたからである。但し、損傷の度合いは図4(b)に模式的に示したようにバーナーの上側の方が大きかった。
該水冷帯構造体は、1体ものとしても分割構造のものとしてもよい。
水冷帯は酸素バーナー上側部分のバーナ間に対応する部分も水冷されるように配置される。例えば、1本のバーナーに対して一つの水冷帯を設ける場合には、隣接するバーナー間の距離をLとしたとき、水冷帯の水平方向の幅をL/2とすることによりバーナ間も水冷することができる。
また、水冷帯は酸素バーナーの横側すなわち酸素バーナーと酸素バーナーの間にも設けて良い。
【0038】
廃棄物ガス化溶融炉には、助燃材として炭素質材を用いるタイプと用いないタイプとがあるが、本発明の耐火構造は助燃材として炭素質材を用いないタイプに適用されることによって特に効果を発揮する。これは、炭素質剤を用いるタイプのガス化溶融炉では、炭素質材を用いることにより溶融炉内にインプットした酸素が炭素質の酸化に利用されごみ中の金属類の酸化物生成には至らないからである。
【0039】
一方、助燃材として炭素質材を用いない廃棄物ガス化溶融炉においては、ごみ中の炭素成分の酸化反応後、不燃物として含有されている金属類の酸化物を生成し、該酸化物のうち特に酸化鉄は、溶融スラグの溶融点を降下させる作用があるため、周辺の耐火物の損傷速度を増大させるが、水冷帯を設けることによって、酸化鉄が生成されても耐火物が損傷することがなく、操業が継続可能となる。
【0040】
水冷帯の炉内側表面にはコーティング層としてアルミナ質耐火物を配置することが好ましい。これは、特に乾燥時およびごみ投入初期において水冷帯の素材が露出していると、熱損失が大きいため、コーティング層としてアルミナ質耐火物を配置すると、当該ごみ投入初期の熱損失が抑制される。また、操業時は水冷帯表面に溶融スラグが固着するため当該アルミナ質耐火物と同様な熱損失抑止効果を生み出す。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
廃棄物ガス化溶融炉実証炉において、図4(a)のように炉体内部を耐火物で構築し、廃棄物処理操業を実施した。その結果図4(b)のようにバーナー周辺および上部耐火物が損傷し、耐火物修理を余儀なくされた。今までの炉体内部の損傷状態から、酸素バーナ1本あたりの酸素純分吹き込み量と損傷高さの関係を廃棄物中の灰分重量比率で整理すると強い相関が認められた。
そこで、99%酸素濃度の酸素を使用して灰分重量比率が20%の廃棄物を150トン/日処理(溶融炉炉体バーナ本数10本)を実施した。水冷帯は、図2のグラフから溶融炉バーナ先端から700mmの高さとして操業を実施した。別の炉では同条件の処理条件で水冷帯の高さを1500mmの高さで実施した。その結果、どちらも炉においてもバーナ周辺および水冷帯範囲外の耐火物の損傷がなく良好な結果が得られた。しかし、水冷帯の高さ1500mmの炉においては、熱損失量が大きく結果になり、図2の直線以下で水冷帯を設計すれば良好な結果が得られることが確認出来た。
[実施例2]
次に、操業前の熱損失を抑制するために、水冷帯の炉内面に高アルミナ質不定形と断熱キャスタブルを平均30mmコーティングした炉を施工した。操業条件は、99%酸素濃度の酸素を使用して炉体バーナ10本を使い24時間で外気温から850℃まで昇温した。その結果、昇温時の熱損失は水冷帯部分で高アルミナ質を100とすると軽量キャスタブルでは90程度とほぼ同等の結果となった。また、灰分重量比率が20%の廃棄物を150トン/日処理(溶融炉炉体バーナ本数10本)を99%酸素濃度の酸素を使用して溶融処理を実施した結果、コーチング層の違いによる熱損失の差異は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の耐火構造を廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りに採用することによって、炉壁耐火物の損傷を防ぐことができるので、廃棄物ガス化溶融炉を効率良く操業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造を示す図である。
【図2】バーナー1本当たりの酸素吹込み量と溶損高さ(H)との関係を示す図である。
【図3】ガス化改質方式による廃棄物処理の概要を示す図である。
【図4】従来のガ廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 廃棄物ガス化溶融炉
2 バーナー
3 耐火物
4 水冷帯
5 耐火物損傷部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を80容量%以上の高濃度の酸素含有ガスで直接に溶融ガス化する酸素バーナーを複数本有する廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造であって、少なくとも該酸素バーナー上側の下記の式で規定される高さ(H)以下の部分に金属製の水冷帯を配設した構造とすることを特徴とする廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。
H=a×Q
H=酸素バーナー上側の水冷ジャケットが必要な高さ(m)
Q=酸素バーナー1本あたりの酸素純分吹き込み量(Nm/(hr・本・ごみton))
a=定数
但し、灰分重量比率10%未満の場合:a=27
灰分重量比率10%以上50%以下の場合:a=67
【請求項2】
酸素バーナーの横側部分にも水冷帯を配設した構造とすることを特徴とする請求項1記載の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造
【請求項3】
酸素バーナーの下側部分にも水冷帯を配設した構造とすることを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。
【請求項4】
前記廃棄物ガス化溶融炉が助燃材として炭素質材を用いないタイプの廃棄物ガス化溶融炉であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。
【請求項5】
前記水冷帯の炉内側にアルミナ質耐火物を付加的に配設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の廃棄物ガス化溶融炉の酸素バーナー周りの耐火構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−112713(P2006−112713A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300951(P2004−300951)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】