説明

廃棄物処理設備および廃棄物処理方法

【課題】廃棄物処理設備において省エネルギー化を図る。
【解決手段】流動床式焼却炉2から排出される排ガスX40によって、第1の予熱器3にて前記流動床式焼却炉2に供給するための燃焼用圧縮空気X3の予熱を行い、前記第1の予熱器3で加熱されて流動床式焼却炉2に向かう燃焼用圧縮空気X3’で、第1の過給機4のタービン4bを回転させるとともに、当該ターボ過給機4のコンプレッサ4aにて前記第1の予熱器3に供給する圧縮空気X3の生成および送風を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の焼却処理技術に属し、特には、焼却炉および過給機を備えた廃棄物処理設備および過給機および焼却炉を用いた廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2および図3に、従来の廃棄物焼却設備のブロック図を示す。
従来の廃棄物X10の焼却処理設備101では、廃棄物X10と適宜の燃料X20との焼却処理に伴って焼却炉20から排出される排ガスX40を予熱器30に導いて、焼却炉20に供給する燃焼用圧縮空気X30’の加温に用いることが行われる。
また、廃棄物X10の焼却処理設備101では、焼却炉20からの排ガスX40を排ガス湿式処理装置70で処理することがあり、この場合、排煙筒(煙突)90から排出される排ガスの白煙防止処理が行なわれることが一般的となっている。そして、白煙防止の方法としては、排ガス湿式処理70の前段に白煙防止用の空気予熱器50を設け、この予熱器50からの加熱圧縮空気X50’を湿式処理された排ガスに混合することにより行われる。
そして、従来設備101では、これらの燃焼用圧縮空気X30’用の予熱器30や白煙防止用の予熱器50に対しては、ブロアB1,B2を用いて熱交換用の空気X30,X50を供給している。
しかし、ブロアB1,B2の運転には、多大な電力が必要であるため削減が求められる。
そこで、焼却炉の排ガスを廃熱ボイラで蒸気として回収し、発電して得られる電力の一部をブロアの動力源として利用することが試みられている。
また、特に、図3に示す加圧流動床式焼却炉20を採用する従来の廃棄物焼却設備101では、焼却炉20からの高温高圧排ガスX40を過給機40に導入して、加圧空気を発生させて燃焼用空気等に利用することによりブロアB1を用いないようにすることも試みられている。
【特許文献1】特開2005−028251
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、焼却炉の排ガスを利用して発電する方法は、廃熱ボイラおよび蒸気タービン発電設備等の種々の設備が必要となり、設備面および維持管理面のコストが高いため、大規模設備ではエネルギー回収による経済的効果が得られるものの、その他の多くの中小規模設備ではかえって経済的負担が悪化するため適するものではない。
また、図3の方式は、高温高圧の排ガスX41を過給機40に導入する必要があるため、加圧式の燃焼炉20が必須要件となる。このため、常圧近傍の焼却炉には適さない。
そこで、本発明の主たる課題は、常圧式の焼却炉であると加圧式の焼却炉であるとにかかわらず適用することができ、しかも、燃焼用圧縮空気や白煙防止用圧縮空気を生成し予熱器に供給するためのブロアを必要とせず、エネルギー効率に優れる、廃棄物焼却設備および処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明および作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
流動床式焼却炉と、
流動床式焼却炉からの排ガスとの熱交換により、流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行う第1の予熱器と、
第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第1の過給機と、を備える、
ことを特徴とする廃棄物処理設備。
【0005】
(作用効果)
第1予熱器に供給する圧縮空気を生成するためのブロアが不要となる。また、当該圧縮空気得るために電力不要の過給機を用いることとしたため、電力削減が達成される。
【0006】
<請求項2記載の発明>
流動床式焼却炉からの排ガスの湿式処理を行う排ガス湿式処理装置と、
流動床式焼却炉からの排ガスとの熱交換により、前記湿式処理装置で処理された排ガスに混合する圧縮空気を加熱するための第2の予熱器と、
第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第2の過給機と、を備える、
請求項1記載の廃棄物処理設備。
【0007】
(作用効果)
白煙防止処理がなされるとともに、第2予熱器に供給する圧縮空気を生成するためのブロアが不要となる。また、当該圧縮空気得るために電力不要の過給機を用いることとしたため、電力削減が達成される。
【0008】
<請求項3記載の発明>
流動床式焼却炉から排出される排ガスによって、第1の予熱器にて前記流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行い、
前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気で、第1の過給機のタービンを回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、
ことを特徴とする廃棄物処理方法。
【0009】
(作用効果)
請求項1記載の発明と同様の作用効果が得られる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記排ガス湿式処理装置で処理された排ガスに対して加熱した圧縮空気を混合する白煙防止処理を行うにあたり、
この白煙防止処理に用いる圧縮空気の加熱に、流動床式焼却炉から排出される排ガスを熱源とする第2の予熱器を用い、かつ、
前記第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気で、第2の過給機のタービンを回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、
請求項3記載の廃棄物処理方法。
【0011】
(作用効果)
請求項2記載の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流動床式焼却炉で発生する排ガスと熱交換を行った圧縮空気で過給機のタービンを回転させるとともにコンプレッサで圧縮空気を得る。そして、この圧縮空気を予熱器に供給する。従って、従来、当該圧縮空気の生成するためにブロアを要し、またこの運転のための電力を要していたところ、このブロア(電力)が不要となり、経済的に優れるシステムである。
また、既存の設備に過給機を設置するだけでよいため簡易に施工できる。さらには、従来の電力回収方法による省エネルギー化と異なり、発電設備などが不要で、小中規模設備においても、省エネルギーの効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る汚泥処理設備および方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備1のブロック図である。この図において、符号2は気泡流動床炉(燃焼炉)、3は第1予熱器(熱交換器)、4は第1過給機(ターボチャージャー)、5は第2予熱器(熱交換器)、6は第2過給機(ターボチャージャー)、7は排ガス湿式処理装置、8は誘引ファン、9は排煙筒、10,11は始動用空気供給装置である。
【0014】
本廃棄物処理設備1は、例えば下水処理場において水分を多量に含有する汚泥等の廃棄物X1を燃料として燃焼させることによって処理するものである。なお、本実施形態における廃棄物処理設備1の気泡流動床炉2は、一日当り20〜300t程度の廃棄物X1を処理する能力を有しており、本実施形態における廃棄物処理設備1は、このような廃棄物X1の処理能力が35t/日程度の小形流動床炉2に対してエネルギー効率が高いシステム構成を有している。
【0015】
気泡流動床炉2は、外部から供給された廃棄物X1及び必要に応じて供給される助燃燃料X2を燃料として燃焼を行うものである。この気泡流動床炉2は、下部から供給される圧縮空気X3’によって炉内の流動状態を維持することによって、連続的な廃棄物X1の燃焼処理を可能としたものである。
【0016】
なお、助燃燃料X2としては重油、灯油あるいは都市ガスや石炭等の可燃物質が挙げられるが、上記圧縮空気X3’の圧力及び温度が充分に高い場合や汚泥X1の保有エネルギーが高い場合には、助燃燃料X2を気泡流動床炉2に供給しなくとも廃棄物X1を連続的に燃焼させることが可能である。
【0017】
第1予熱器3は、気泡流動床炉2の後段に設けられており、気泡流動床炉2によって生成された排ガスX4と圧縮空気X3とを間接的に熱交換することによって、圧縮空気X3を所定の温度まで加温するものである。
【0018】
第1過給機4は第1予熱器3に連結されている。第1過給機4は、第1予熱器3を流通する排ガスX4との間接的な熱交換により加熱された圧縮空気X3’によって回転駆動されるタービン4b及び当該タービン4bの回転動力を伝達されることによって外気より圧縮空気X3を生成して第1予熱器3内に送気するコンプレッサ4aから構成されている。すなわち、第1過給機4の動力源となった圧縮空気X3’が燃焼用圧縮空気として気泡流動床炉2に供給される。ここで、本発明者らは、第1過給機4で圧縮した圧縮空気X3を第1予熱器3で予熱して得られる圧縮空気X3’によりタービン4bを回転させ、さらにこの動力源となった圧縮空気X3’を燃焼用空気として気泡流動床炉2に供給するサイクルが十分に成り立つことを知見している。なお、始動方法の一例としては、ブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置10から燃焼用空気を供給し、バーナーの着火、炉の昇温を行う。その過程で、過給機のコンプレッサ空気と燃焼空気との流路をバルブ等で切り換える。
【0019】
この第1過給機4としては、舶用のものを用いることが好ましい。これは、舶用の過給機が既に世の中に広く普及しており豊富な種類が用意されているためである。
【0020】
第2予熱器5は、第1予熱器の後段に設置され、第1予熱器を流通した排ガスX4が流通される。この排ガスX4と第2過給機6から送気される圧縮空気X5とが間接的に熱交換されて、当該圧縮空気X5の加熱が行なわれる。
【0021】
第2過給機6は第2予熱器5に連結されている。第2過給機6は、第2予熱器5を流通する排ガスX4との熱交換により加熱された圧縮空気X5’によって回転駆動されるタービン6b及び当該タービン6bの回転動力を伝達されることによって外気より圧縮空気X5を生成して第2予熱器5内に送気するコンプレッサ6aから構成されている。加熱された圧縮空気X5’は、後述の白煙防止用圧縮空気として利用される。ここで、本発明者らは、第2過給機6で圧縮した圧縮空気X5を第2予熱器5で予熱して得られる圧縮空気X5’によりタービン6bを回転させ、さらにこの動力源となった圧縮空気X5’を白煙防止用の圧縮空気として利用するサイクルが十分に成り立つことを知見している。
なお、始動方法の一例として、最初にブロワや圧縮機などの始動用空気供給装置11から空気を第二予熱器5に供給する。第2過給機6からの圧縮空気X5は大気へ放風する。排ガスX4の温度が高くなった後、始動用空気供給装置11からの空気と第2過給機6からの圧縮空気X5とをバルブ等を使い切り換える。
【0022】
排ガス湿式処理装置7は、前記第2予熱器5の後段に設けられている。排ガス湿式処理装置は、燃焼ガスX4に、例えば水、アルカリ液などを噴射して排ガス中の硫黄成分等の有害成分等を洗浄処理するものである。散布液は、排ガス性状により適宜選択される。
【0023】
排ガス湿式処理装置7の後段には、排煙筒9が設けられている。排煙筒9から処理排ガスは最終的に大気開放される。
【0024】
排ガス湿式処理装置7から排煙筒9に続く管路の途中には、誘引ファン8が設けられている。この誘引ファン8により、排ガス湿式処理装置7から排煙筒9に処理排ガスX6を誘導される。なお、この誘引ファンは、必要ない場合もある。
【0025】
誘引ファン8から排煙筒9に続く管路の途中には、前記第2過給機6のタービン6bから続く管路5Pが接続されている。排ガス湿式処理装置7では、高温の排ガスに対して液体を散布等するため、多量の蒸気が発生する。従って、処理したのちに処理済みガスをそのまま後段の排煙筒9に供給されると、排煙筒から白煙があがるが、本設備では第2過給機6の動作により得られる加熱された圧縮空気X5’が適宜、排煙筒9の前段で処理排ガスX6に対して混合されるので、処理排ガスX6が再加温されて白煙防止がなされる。なお、図示はしないが、圧縮空気X5’の混合比率等は管路5Pに設けたバルブおよびこの開閉を制御する適宜の制御装置を用いる。
【0026】
以上の本発明にかかる設備では、従来設備同様、燃焼用圧縮空気の生成および排ガスの白煙防止処理を行うが、いずれも電力を必要としない過給機を用いて生成する。従って、従来設備と比較して、経済的な廃棄物処理設備および廃棄物処理方法である。
【0027】
ここで、本設備の運転実施例を、1日あたり35t程度の下水汚泥を処理する廃棄物処理設備を例に示す。この規模の設備で第1予熱器に供給される排ガスの一般的な流量および温度から、第1過給機は0.12MPaG、流量2600m3N/hの圧縮空気を第1予熱器に供給することができ、それとともに0.032MPaG、600℃の圧縮空気X3’を得ることができる。十分に過給機の運転ができるうえに、気泡焼却炉内に燃焼用圧縮空気を供給することが可能である。
【0028】
さらに、第2過給機は、0.036MPaG、4000m3N/hの圧縮空気を第2予熱器に供給することが可能であり、0.003MPaG、温度300℃の圧縮空気を得ることが可能である。十分に過給機の運転が可能であるうえに、十分な温度および量の白煙防止用圧縮空気を得ることができる。
【0029】
同規模の処理能力の図2に示す従来設備では、燃焼用圧縮空気を得るためのブロアで概ね90kw、白煙防止用の圧縮空気を得るブロアで18.5kwを要している。
【0030】
してみると、本発明にかかる設備は、加圧式ではない気泡流動床炉でも過給機の運転が可能で適用可能であり、しかも、ブロアを用いる従来設備と比較して電力を要しない分、省エネルギー化が図られている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、流動床式焼却炉を用いた各種廃棄物処理に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備のブロック図である。
【図2】従来の廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備のブロック図である。
【図3】従来の他の廃棄物処理方法を用いる廃棄物処理設備のブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1…汚泥処理設備、2…気泡流動床炉、3…第1予熱器、4…第1過給機、4a…コンプレッサ、4b…タービン、5…第2予熱器、6…第2過給機、6a…コンプレッサ、6b…タービン、7…湿式排ガス処理装置、8,80…誘引ファン、9…排煙筒、20…焼却炉、30…予熱器、40…過給機、50…予熱器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床式焼却炉と、流動床式焼却炉からの排ガスとの熱交換により、流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行う第1の予熱器と、
第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第1の過給機と、を備える、
ことを特徴とする廃棄物処理設備。
【請求項2】
流動床式焼却炉からの排ガスの湿式処理を行う排ガス湿式処理装置と、
流動床式焼却炉からの排ガスとの熱交換により、前記湿式処理装置で処理された排ガスに混合する圧縮空気を加熱するための第2の予熱器と、
第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気によってタービンが回転させられ、この回転によってコンプレッサで前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、第2の過給機と、を備える、
請求項1記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
流動床式焼却炉から排出される排ガスによって、第1の予熱器にて前記流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行い、
前記第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気で、第1のターボ過給機のタービンを回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、
ことを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項4】
前記排ガス湿式処理装置で処理された排ガスに対して加熱した圧縮空気を混合する白煙防止処理を行うにあたり、
この白煙防止処理に用いる圧縮空気の加熱に、流動床式焼却炉から排出される排ガスを熱源とする第2の予熱器を用い、かつ、
前記第2の予熱器で加熱された加熱圧縮空気で、第2の過給機のタービンを回転させるとともに、当該過給機のコンプレッサにて前記第2の予熱器に供給する圧縮空気の生成および送風を行う、
請求項3記載の廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−170703(P2007−170703A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365776(P2005−365776)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】