説明

廃棄製品のリサイクル処理方法

【課題】 一次処理の集約化(1系統・1工程)と破砕・選別技術の改善・開発がなされた効率的な廃棄製品のリサイクル処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 一次処理とマテリアル化処理からなる廃棄製品のリサイクル処理方法であって、
前記一次処理は少なくとも、
(1)収集された廃棄製品を分別・手分解するプロセスと、
(2)低速高トルク型破砕機により破砕サイズを20mm以下に破砕するプロセスと、
(3)電磁選別、磁気選別及び振動選別の組み合わせにより鉄、アルミニウム、非鉄金属及び廃プラに選別するプロセスと、
(4)粉砕機により粉砕サイズを3mm以下に粉砕するプロセスと、
(5)風力選別及び振動選別の組み合わせにより、金属鉱さいを選別するプロセスとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄製品のリサイクル処理方法、特に(イ)廃棄電子機器(コンピューター、携帯電話、通信機器等、OA機器等)の高品位基板(貴金属含有率が高いもの)、(ロ)廃棄家庭用電気製品(冷蔵庫、テレビ、エアコン、洗濯機等)の低品位基板(貴金属含有率が低いもの)、(ハ)上記(イ)及び(ロ)に含まれる電線、プラスチック類及び貴金属以外の金属のリサイクル処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄電気・電子機器等は近年、その排出量が著しく増加し平成15年度末には廃棄家電製品だけでも約70万トンが排出されている。廃棄電子機器の正確な排出量は公表されていないが、相当な量が排出されていると考えられる。
【0003】
従来のリサイクル処理の一般的なプロセスは図1に示すように、一次処理と、マテリアル化処理(精錬)に大別される。
一次処理は、産業廃棄物処理業者により行われる。収集された廃棄製品は、手解体により基板が分離され、非鉄金属ダスト化(粗破砕・選別)がなされる。粗破砕・選別時の破砕サイズは約50mm〜100mm以上であり、高品位基板は基板処理専門業者の送られ、低品位基板及び非鉄金属類の粗破砕品は鉱山会社に送られている。そして、処理工程から排出される廃プラ等は、ほとんどが焼却又は埋立処分されている。廃プラの一部は中国に原料として輸出されているが、低品質のため近々に輸入制限措置がとられる可能性が高い。
【0004】
産業廃棄物処理業者の処理プロセスの代表的な例を表1に示す。
【0005】
【表1】

【0006】
一部の産業廃棄物処理業者は破砕処理を行なわないで、鉱山会社に直接売却する例もある。また、上記表1において、非鉄金属ダストとは、破砕・選別された廃プラの混入した非鉄金属をいう。リサイクル率は平均値であり、業者により内容は異なることがあるが、最大約65%程度である。
【0007】
基板処理専門業者は、高品位基板部品の分離・破砕・選別処理を行い、処理品は鉱山会社等に送られ、破砕サイズは約30mm以下である。処理工程から発生する廃棄物は、廃プラ類である。
【0008】
マテリアル化処理は、鉱山会社により行われる(図1参照)。産業廃棄物処理業者から受け入れた非鉄金属ダスト等は、破砕・粉砕・選別処理が行なわれ、20mm〜30mm以下のサイズにされる。この間に自動分析が行なわれる。基板処理専門業者から受け入れたものも、自動分析の後に転炉に投入される。廃プラ含有量が多いものは自溶炉で処理後に転炉に投入される。転炉処理後に各金属類別の精錬にあわせた工程により、精錬作業が行われる。一例として、鉱石、原料を連続製銅炉にて処理している鉱山会社は、この工程の中で、前記非鉄金属ダスト等を含めたスクラップを投入精錬している。スクラップはプレス処理され炉の中に投入されるが、非鉄金属ダストについてはプレスが不可能であり、狭い投入口より鉱石と一緒に吹き付ける方法をとっているので、大きいままだと投入が困難であり、溶けにくく効率が悪いという問題が生じる。また、買鉱評価可能な成分をより正確な数値で出すべく、不定形なものが混入されているロットをサンプリングするには、前処理・破砕が不可欠であり、以上の点を考慮して、炉の中に投入するには20mm〜30mm以下のサイズにする必要がある。
【0009】
しかしながら、上記従来のリサイクル処理方法は、一次処理が産業廃棄物処理業者と基板処理業者との2系統の工程であるため、それぞれの工程で処理ロスと新たな廃棄物の発生、及び運搬経費等が余分に発生する。また、産業廃棄物処理業者による一次処理が単純な粗破砕・選別であるため破砕物サイズが大きく、マテリアル化処理工程で鉱山会社は、破砕サイズ20mm〜30mm以下にするための破砕・粉砕・選別を別に行なわざるを得ない。この場合、破砕・粉砕処理費用約40円/Kgが発生する。さらに、処理中に発生する廃プラ等のリサイクル方法が確立していないため、リサイクル率の改善が期待できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような一次処理の問題点を解決しようとするものであり、一次処理の集約化(1系統・1工程)と破砕・選別技術の改善・開発がなされた効率的な廃棄製品のリサイクル処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明の廃棄製品のリサイクル処理方法は、一次処理とマテリアル化処理からなる廃棄製品のリサイクル処理方法であって、
前記一次処理は少なくとも、
(1)収集された廃棄製品を分別・手分解するプロセスと、
(2)低速高トルク型破砕機により破砕サイズを20mm以下に破砕するプロセスと、
(3)電磁選別、磁気選別及び振動選別の組み合わせにより鉄、アルミニウム、非鉄金属及び廃プラに選別するプロセスと、
(4)粉砕機により粉砕サイズを3mm以下に粉砕するプロセスと、
(5)風力選別及び振動選別の組み合わせにより、金属鉱さいを選別するプロセスとからなる。
そして、前記廃棄製品が廃棄電子機器であって、前記プロセス(1)で分別・手分解されたものが低品位基板主体の場合に、前記プロセス(3)の処理後にリサイクル品を取り出すようにしたことを特徴とする。
また、前記廃棄製品が廃棄家庭用電気製品であって、前記プロセス(1)で分別・手分解されたものが高品位基板主体の場合に、前記プロセス(4)の処理を行い、前記プロセス(5)の処理後にリサイクル品を取り出すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリサイクル処理方法は、上記のような一連のプロセスであり、破砕・選別の精度の向上により、処理品の品質均等化が可能となったので、従来は廃棄物として排出していた金属類のほとんどが、再利用可能となった。
また、廃プラ類も、鉱山会社における再処理等が不要になったので、非鉄金属と混合し自溶炉投入が可能となった。
そして、従来のリサイクル率が平均約65%であったが、本リサイクルでは最大約95%を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態の一例を図面と表2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る廃棄製品のリサイクル処理方法のプロセスフロー図、図3はリサイクル処理ラインの配置図である。
【0014】
【表2】

【0015】
排出元から収集された廃棄製品は分別され、木くず・紙くずはリサイクル業者へ売却される。そして手分解された廃棄製品は一部の部品を除いて、全て破砕処理される。
【0016】
破砕処理は、フライホイールを有する回転数が450rpm程度の低速高トルク型破砕機1により、破砕サイズを20mm以下に破砕するプロセスである。一般的に産業廃棄物処理業者に使用されている破砕機(回転数:約1200rpm)では破砕サイズを20mm以下にするために、スクリーンサイズを細かくすると極端に処理能力が下がり実用的ではなかったが、低速高トルク型破砕機1(低速回転:約450rpm)〔フランス国のMTB RECYCLING社製:型番 BDR1600〕を使用したところ、20mm以下のスクリーンサイズでも処理能力は1日に8時間稼働させた場合に5t程度であり、充分であった。
【0017】
破砕後の選別は、従来のリサイクル処理方法では主として磁気選別2によりFe(鉄)の除去を行なっていたが、マテリアル化処理を行う鉱山会社の精錬時にAl(アルミニウム)混入品は精錬処理に支障があることから、Alの除去も電磁選別3で併せて行なう方式とした。また、選別ラインに振動選別3を加えると、選別効率を高めることができる。
【0018】
例えば、高精度振動磁気選別機を使用した場合は、コンベアでの搬送途中で搬送物に振動をあたえる事により磁選機に対して吸着しにくかった吸磁対象物を効率よく回収することが出来、鉄粉など小さな弱吸磁対象物も第2磁石により吸着・回収することが可能であり、アルミはコンベア先端の位相選別ローラーにより分離選別される。また、銅・その他非鉄金属等はコンベア先端で自然落下分離される。搬送コンベアによる搬送量は周波数変換装置により搬送速度を変更することが出来、常に磁選機に対して搬送物を一定密度に保つことが出来る。これにより、極少量から過大な量の搬送物に対して鉄分の回収効率を低下させることなく対応することが出来る。さらに、搬送密度を保つことが出来るため、鉄分の回収効率を高く維持することが出来、処理能力の小さな破砕機(1ton/8h)から処理能力の大きな破砕機(10ton/8h)まで幅広く組み合わせる事が出来る。以上のとおり、高い回収効率と処理能力により種々の金属等が混存した産業廃棄物を効率良く分離・回収し、産業廃棄物中に含まれる有価物の回収を効率良く行うことが出来る。
【0019】
このように、電磁選別・磁気選別及び振動選別の組み合わせにより鉄、アルミニウム、非鉄金属及び廃プラに選別しコンベア4に流す。低品位基板主体の場合は、この段階でリサイクル品を取り出し、マテリアル化処理を担う鉱山会社へ売却する。なお、廃プラは、鉱山会社における自溶炉の燃料化可能である。
【0020】
高品位基板主体の場合に、破砕・選別後に粉砕機5により粉砕サイズを3mm以下に粉砕しコンベア6に流す。
破砕後に更に、風力・振動選別(7,8)を組み合わせて行い、処理品(金属鉱さい)を3mm以下のサイズに選別すると、鉱山会社における精錬工程を1工程(自溶炉処理)省くことが可能で、商品価値を高めることができる。
【0021】
以上のプロセス処理方法により、次のコスト改善効果が可能となった。(a)鉱山会社における、破砕等費用の削減効果として40,000円/t、(b)一次処理における、運賃の削減効果として2,500円/t、(c)リサイクル率が65%から95%に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の廃棄製品のリサイクル処理方法のプロセスフロー図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るリサイクル処理方法のプロセスフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るリサイクル処理ラインの配置図である。
【符号の説明】
【0023】
1 破砕機 2 磁気選別
3 電磁・振動選別 4 コンベア
5 粉砕機 6 コンベア
7 風力選別 8 振動選別

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次処理とマテリアル化処理からなる廃棄製品のリサイクル処理方法であって、
前記一次処理は少なくとも、
(1)収集された廃棄製品を分別・手分解するプロセスと、
(2)低速高トルク型破砕機により破砕サイズを20mm以下に破砕するプロセスと、
(3)電磁選別、磁気選別及び振動選別の組み合わせにより鉄、アルミニウム、非鉄金属及び廃プラに選別するプロセスと、
(4)粉砕機により粉砕サイズを3mm以下に粉砕するプロセスと、
(5)風力選別及び振動選別の組み合わせにより、金属鉱さいを選別するプロセスと、
からなる廃棄製品のリサイクル処理方法。
【請求項2】
前記廃棄製品が廃棄電子機器であって、前記プロセス(1)で分別・手分解されたものが低品位基板主体の場合に、前記プロセス(3)の処理後にリサイクル品を取り出すようにしたことを特徴とする請求項1記載の廃棄製品のリサイクル処理方法。
【請求項3】
前記廃棄製品が廃棄家庭用電気製品であって、前記プロセス(1)で分別・手分解されたものが高品位基板主体の場合に、前記プロセス(4)の処理を行い、前記プロセス(5)の処理後にリサイクル品を取り出すようにしたことを特徴とする請求項1記載の廃棄製品のリサイクル処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−142129(P2006−142129A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331693(P2004−331693)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(504424373)
【Fターム(参考)】