説明

廃熱回収装置

【課題】熱機関の暖機時間の短縮化を図りつつ廃熱回収の効率低下を回避する。
【解決手段】ランキンサイクル回路13は、膨張機31、熱交換器47、凝縮器49、ポンプ41及びボイラ42によって構成されている。ボイラ42で加熱された高温高圧の冷媒は、供給流路46を介して膨張機31に導入される。膨張機31の下流には熱交換器47が設けられている。熱交換器47の下流には凝縮器49が設けられている。膨張機31で膨張した低圧の冷媒は、熱交換器47を経由して凝縮器49へ送られる。熱交換器47は、放熱部471と吸熱部472とを備える。排出流路48と接続流路50とは、放熱部471を介して接続されている。吸熱部422は、エンジン12に接続された冷却水循環経路52の分岐流路521上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱機関の廃熱を回収する廃熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の廃熱回収装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の廃熱回収装置では、エンジンから排出された排気ガスの熱を作動流体に伝達する蒸気発生器と、作動流体の熱をエンジン冷却水に伝達する熱交換器とが備えられている。作動流体を膨張機へ送ると、発電機が発電し、発電された電気がバッテリに蓄えられる。
【0003】
このような構成によれば、排気ガスの熱を利用して発電することができ、しかも排気ガスの熱を冷却水に伝達してエンジンの暖機運転を短縮することができる、という効果の開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−42618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成であると、エンジン冷却水の温度が上昇した場合には
熱交換器(凝縮器)の凝縮圧が高くなってしまう。そうすると、膨張機から流出した作動流体(気体)を熱交換器(凝縮器)において液化することが困難になり、廃熱回収の効率低下をもたらす。
【0006】
本発明は、熱機関の暖機時間の短縮化を図りつつ廃熱回収の効率低下を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱機関の廃熱を熱源とするボイラと、前記ボイラで熱を与えられた冷媒を導入して廃熱を回収するための膨張機と、前記膨張機から流出した冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器から流出した冷媒を前記ボイラへ送るポンプと、前記ボイラ、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプを接続する冷媒流路とを備える廃熱回収装置を対象とし、請求項1の発明では、前記膨張機及び前記凝縮器間の前記冷媒流路と前記熱機関を冷却する冷却液が流れる冷却流路との間で熱交換を行なうための熱交換器が設けられている。
【0008】
熱交換器における冷却液の温度が膨張機から流出した冷媒の温度より低い場合には、膨張機から流出した冷媒の熱が熱交換器を介して冷却流路内の冷却液に伝達される。これは、熱機関の暖機時間の短縮化をもたらす。熱交換器における冷却液の温度が膨張機から流出した冷媒の温度より高い場合には、膨張機から流出した冷媒は、凝縮器にて放熱する。凝縮器での冷媒の放熱は、冷媒の液化をもたらし、凝縮圧が高くなり熱効率が悪化することはない。これは、廃熱回収の効率低下の回避をもたらす。
【0009】
好適な例では、前記熱交換器と並列なバイパス流路が前記膨張機と前記凝縮器との間で設けられており、前記膨張機から流出した冷媒を前記バイパス流路へ供給する割合を調整する調整手段と、前記冷却液の温度を検出する液温度検出手段とが設けられており、前記調整手段は、前記液温度検出手段によって検出された温度に基づいて、前記割合を調整する。
【0010】
冷却液の温度が低い場合には冷媒を熱交換器へ流し、冷却液の温度が高い場合には冷媒をバイパス流路へ流すことにより、熱機関の暖機時間の短縮化がもたらされると共に、廃熱回収の効率向上が得られる。
【0011】
好適な例では、前記ポンプより下流の前記冷媒流路と前記バイパス流路との間で熱交換を行なう内部熱交換器が設けられている。
冷却液の温度が低い場合には冷媒を熱交換器へ流すことにより、熱機関の暖機時間の短縮化が図られる。冷却液の温度が高い場合には冷媒をバイパス流路(つまり内部熱交換器)へ流すことにより、ポンプより下流の冷媒に熱エネルギーが付与され、熱効率が向上する。
【0012】
好適な例では、前記熱交換器と前記凝縮器との間の前記冷媒流路には内部熱交換器が設けられている。
冷却液の温度が低い場合には冷媒を熱交換器へ流すことにより、熱機関の暖機時間の短縮化が図られる。冷却液の温度が高い場合には冷媒をバイパス流路へ流す(つまり熱交換器を迂回させる)ことにより、膨張機から流出した冷媒の熱エネルギーの多くがポンプより下流の冷媒に付与され、熱効率が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、熱機関の暖機時間の短縮化を図りつつ廃熱回収の効率低下を回避することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態の廃熱回収装置を示す模式図。
【図2】第2の実施形態の廃熱回収装置を示す模式図。
【図3】第3の実施形態の廃熱回収装置を示す模式図。
【図4】第4の実施形態の廃熱回収装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、廃熱回収装置11は、廃熱源としてのエンジン12(熱機関)と、ランキンサイクル回路13とを備えている。
【0016】
ランキンサイクル回路13では、エンジン12からの廃熱によって加熱される冷媒が循環する。廃熱回収装置11を構成する回転電機14は、ランキンサイクル回路13の一部を構成している。
【0017】
次に、廃熱回収装置11におけるランキンサイクル回路13について説明する。
図1に示すように、ランキンサイクル回路13は、回転電機14を構成する膨張機31、熱交換器47、凝縮器49、回転電機14を構成するポンプ41、及びボイラ42によって構成されている。
【0018】
ボイラ42は、放熱部421と吸熱部422とを備える。ポンプ41の吐出側にはボイラ42の吸熱部422が第1流路43を介して接続されている。
放熱部421は、エンジン12に接続された排気通路44上に設けられている。エンジン12からの排気は、放熱部421で放熱した後、マフラ45から排気される。ポンプ41から吐出された冷媒は、ボイラ42の吸熱部422と放熱部421との間での熱交換によりエンジン12からの廃熱によって加熱される。
【0019】
ボイラ42の吸熱部422の吐出側には膨張機31が供給流路46を介して接続されている。ボイラ42で加熱された高温高圧の冷媒は、供給流路46を介して膨張機31に導入されるようになっている。膨張機31には熱交換器47が排出流路48を介して接続されている。熱交換器47には凝縮器49が接続流路50を介して接続されている。膨張機31で膨張した低圧の冷媒は、熱交換器47を経由して凝縮器49へ送られる。凝縮器49の下流側にはポンプ41が第2流路51を介して接続されている。ポンプ41の吸入側には第2流路51が接続されており、ポンプ41の吐出側には第1流路43が接続されている。
【0020】
第2流路51、第1流路43、供給流路46、排出流路48及び接続流路50は、ランキンサイクル回路の冷媒流路を構成する。
熱交換器47は、放熱部471と吸熱部472とを備える。排出流路48と接続流路50とは、放熱部471を介して接続されている。吸熱部472は、エンジン12に接続された冷却流路である冷却水循環経路52の分岐流路521上に設けられている。冷却水循環経路52の分岐流路522にはラジエータ53が設けられている。車両のエンジン12を冷却した冷却水は、温度切換弁54の作用により、水温が高い場合には冷却水循環経路52の分岐流路522を循環してラジエータ53で放熱する。一方、水温が低い場合には冷却水循環経路52の分岐流路521に冷却水が流される。
【0021】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
ポンプ41のポンプ作用により、第2流路51内の冷媒は、第1流路43、ボイラ42の吸熱部422を通過して供給流路46へ送られる。
【0022】
ボイラ42で加熱された高圧の冷媒は、膨張機31に導入されて膨張する。この冷媒の膨張により膨張機31が機械的エネルギー(回転付与力)を出力する。つまり、膨張機31は、冷媒を利用して膨張機31の回転軸〔図示略〕及びオルタネータ24の駆動軸〔図示略〕に回転力を付与する。膨張して圧力が低下した冷媒は、排出流路48へ排出される。
【0023】
冷却水循環経路52内の水温が排出流路48へ排出された冷媒の温度よりも低い場合、排出流路48へ排出された冷媒の熱が熱交換器47にて冷却水循環経路52の分岐流路521内の冷却水に伝達される。この熱伝達により、冷却水循環経路52内の水温が高められる。従って、エンジン12始動直後の冷却水の温度が熱交換器47における熱伝達によっても高められ、エンジン12の暖機運転の時間が短縮される。
【0024】
熱交換器47にて熱を奪われた冷媒は、凝縮器49を通過してポンプ41へ還流する。凝縮器49を通過して第2流路51を流れる冷媒は、冷却されて液化している。
熱交換器47における冷却水の温度が膨張機31から流出した冷媒の温度より高い場合にも、膨張機31から流出した冷媒は、凝縮器49にて冷却されて液化する。
【0025】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)熱交換器47における冷却水の温度(冷却水循環経路52の分岐流路521内の水温)が膨張機31から流出した冷媒の温度より低い場合には、膨張機31から流出した冷媒の熱が熱交換器47を介して冷却水循環経路52に伝達される。これは、エンジン12の暖機時間の短縮化をもたらす。
【0026】
熱交換器47における冷却水の温度が膨張機31から流出した冷媒の温度より高い場合には、膨張機31から流出した冷媒は、凝縮器49にて放熱する。つまり、膨張機31から流出した冷媒は、熱交換器47における冷却水の温度の高低に関わりなく凝縮器49にて液化される。従って、凝縮器49での凝縮圧が高くなって熱効率が悪化することはなく、廃熱回収の効率低下が回避される。
【0027】
次に、図2の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
熱交換器47と並列なバイパス流路55が膨張機31と凝縮器49との間で設けられている。バイパス流路55は、排出流路48から分岐して接続流路50に合流する。バイパス流路55と排出流路48との分岐部には電磁三方弁56が設けられている。電磁三方弁56は、制御部57の励消磁制御を受ける。
【0028】
制御部57には水温検出器58が信号接続されている。水温検出器58は、温度切換弁54より下流、且つ熱交換器47の吸熱部472より上流の分岐流路521内の冷却水の温度を検出する。水温検出器58によって得られた水温検出情報は、制御部57へ送られる。制御部57は、水温検出器58から得られる水温検出情報に基づいて、電磁三方弁56の励消磁を制御する。
【0029】
水温検出器58によって検出された水温が予め設定された基準温度以上の場合、制御部57は、電磁三方弁56を励磁する。これにより、膨張機31から流出した冷媒がバイパス流路55へ送られる。水温検出器58によって検出された水温が前記基準温度に満たない場合、制御部57は、電磁三方弁56を消磁する。これにより、膨張機31から流出した冷媒が熱交換器47へ送られ、排出流路48を流れる冷媒の熱が熱交換器47を介して冷却水循環経路52内の冷却水へ伝達される。
【0030】
水温検出器58は、冷却水の温度を検出する液温度検出手段である。電磁三方弁56及び制御部57は、液温度検出手段によって検出された温度に基づいて、膨張機31から流出した冷媒をバイパス流路55へ供給する割合を調整する調整手段を構成する。
【0031】
第2の実施形態では、水温が高い場合(冷媒の熱によって水温を上げる必要がない暖機完了の状態)には、冷媒がバイパス流路55へ送られるため、エンジン12の暖機が完了した後の熱効率が向上する。
【0032】
次に、図3の第3の実施形態を説明する。第2の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
バイパス流路55には内部熱交換器59が設けられている。内部熱交換器59は、放熱部591と吸熱部592とを備える。放熱部591は、バイパス流路55上に設けられており、吸熱部592は、第1流路43上に設けられている。
【0033】
水温検出器58によって検出された水温が予め設定された基準温度以上の場合、制御部57は、電磁三方弁56を励磁する。これにより、膨張機31から流出した冷媒は、バイパス流路55へ送られ、バイパス流路55を流れる冷媒の熱が内部熱交換器59を介して第1流路43内の冷媒へ伝達される。
【0034】
水温検出器58によって検出された水温が前記基準温度に満たない場合、制御部57は、電磁三方弁56を消磁する。これにより、膨張機31から流出した冷媒は、熱交換器47へ送られ、排出流路48を流れる冷媒の熱が熱交換器47を介して冷却水循環経路52内の冷却水へ伝達される。
【0035】
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。又、冷却水の水温が高い場合には冷媒を内部熱交換器59へ流すことにより、ポンプ41より下流の冷媒に熱エネルギーが付与され、熱効率が向上する。
【0036】
次に、図4の第4の実施形態を説明する。第3の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
第4の実施形態では、内部熱交換器59の放熱部591が第2流路51上に設けられており、内部熱交換器59の吸熱部592が第1流路43上に設けられている。
【0037】
水温検出器58によって検出された水温が予め設定された基準温度以上の場合、制御部57は、電磁三方弁56を励磁する。これにより、膨張機31から流出した冷媒は、バイパス流路55を経由して内部熱交換器59へ送られ、バイパス流路55を流れてきた冷媒の熱が内部熱交換器59を介して第1流路43内の冷媒へ伝達される。
【0038】
水温検出器58によって検出された水温が前記基準温度に満たない場合、制御部57は、電磁三方弁56を消磁する。これにより、膨張機31から流出した冷媒は、熱交換器47へ送られ、排出流路48を流れる冷媒の熱が熱交換器47を介して冷却水循環経路52内の冷却水へ伝達される。熱交換器47を通過した冷媒は、内部熱交換器59へ送られ、熱交換器47を流れてきた冷媒の熱が内部熱交換器59を介して第1流路43内の冷媒へ伝達される。
【0039】
熱交換器47を通ってきた冷媒の熱が内部熱交換器59を介して第1流路43内の冷媒へ伝達されるため、ポンプ41より下流の冷媒に熱エネルギーが付与され、熱効率が向上する。
【0040】
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○バイパス流路55と排出流路48との分岐部より下流の排出流路48に開閉弁を、設けると共に、バイパス流路55に別の開閉弁を設け、両開閉弁の開閉を制御して電磁三方弁56と同じ役割を行なわせるようにしてもよい。
【0041】
○バイパス流路55と熱交換器47とへの冷媒配分流量を任意に調整できる流量分配器を用いてもよい。
○冷却液は、水以外の液体でもよい。
【符号の説明】
【0042】
11…廃熱回収装置。12…熱機関であるエンジン。31…膨張機。41…ポンプ。42…ボイラ。47…熱交換器。48…冷媒流路を構成する排出流路。49…凝縮器。50…冷媒流路を構成する接続流路。52…冷却流路である冷却水循環経路。53…ラジエータ。55…バイパス流路。56…調整手段を構成する電磁三方弁。57…調整手段を構成する制御部。58…液温度検出手段としての水温検出器。59…内部熱交換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱機関の廃熱を熱源とするボイラと、前記ボイラで熱を与えられた冷媒を導入して廃熱を回収するための膨張機と、前記膨張機から流出した冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器から流出した冷媒を前記ボイラへ送るポンプと、前記ボイラ、前記膨張機、前記凝縮器及び前記ポンプを接続する冷媒流路とを備える廃熱回収装置において、
前記膨張機及び前記凝縮器間の前記冷媒流路と前記熱機関を冷却する冷却液が流れる冷却流路との間で熱交換を行なうための熱交換器が設けられている廃熱回収装置。
【請求項2】
前記熱交換器と並列なバイパス流路が前記膨張機と前記凝縮器との間で設けられており、前記膨張機から流出した冷媒を前記バイパス流路へ供給する割合を調整する調整手段と、前記冷却液の温度を検出する液温度検出手段とが設けられており、前記調整手段は、前記液温度検出手段によって検出された温度に基づいて、前記割合を調整する請求項1に記載の廃熱回収装置。
【請求項3】
前記ポンプより下流の前記冷媒流路と前記バイパス流路との間で熱交換を行なう内部熱交換器が設けられている請求項2に記載の廃熱回収装置。
【請求項4】
前記ポンプより下流の前記冷媒流路と、前記熱交換器と前記凝縮器との間の前記冷媒流路との間で熱交換を行なう内部熱交換器が設けられている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の廃熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251516(P2012−251516A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126331(P2011−126331)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】