説明

延伸フィルムの製造方法

【課題】歩留まりにきわめて優れた延伸フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の延伸フィルムの製造方法は、フィルムを横延伸する工程を有し、該フィルムの幅方向中央部が第1の樹脂組成物で形成され、該フィルムの幅方向端部が第2の樹脂組成物で形成され、該第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が、該第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸フィルムの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、歩留まりに優れた延伸フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
延伸フィルムの製造において、経済性の向上が望まれている。そこで、幅方向中央部と幅方向端部(エッジ部)とをアッシュ含量が異なるプロピレンポリマーで形成されたフィルムを延伸する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、さらなる経済性の向上が望まれている。
【特許文献1】特開平8−336884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、フィルムの中央部を選択的に横延伸して、歩留まりにきわめて優れた延伸フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の延伸フィルムの製造方法は、フィルムを横延伸する工程を有する延伸フィルムの製造方法であり、該フィルムの幅方向中央部が第1の樹脂組成物で形成され、該フィルムの幅方向端部が第2の樹脂組成物で形成され、該第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が、該第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高い。
【0005】
好ましい実施形態においては、上記延伸工程における延伸温度が、上記第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高く、上記第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも低い。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)と上記第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)との差(Tg−Tg)が5℃以上である。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記第1の樹脂組成物のメルトフローレートと上記第2の樹脂組成物のメルトフローレートとの差の絶対値が10g/10分(240℃、10kgf)以下である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記第1の樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含む。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記第2の樹脂組成物がポリカーボネート系樹脂を含む。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記フィルムの端部の幅が100mm以下である。
【0011】
本発明の別の局面によれば、延伸フィルムが提供される。この延伸フィルムは、上記製造方法により得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガラス転移温度の高い樹脂組成物で形成された端部を設けることにより、フィルム(特に、端部)に割れが生じるのを防止し得る。また、ガラス転移温度の異なる樹脂組成物で形成された中央部と端部とを有するフィルムを横延伸することにより、中央部を選択的に延伸し得る。その結果、歩留まりにきわめて優れた延伸フィルムの製造方法を提供し得る。
本発明の製造方法により得られた延伸フィルムは、厚みにも物性的にも均一性に優れ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。本発明の延伸フィルムの製造方法は、フィルムを横延伸(代表的には、テンター延伸方法)する工程を有する。
【0014】
A.フィルム
図1は、本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられるフィルムの好ましい実施形態を示す平面図である。フィルム10は、その幅方向中央部10aが第1の樹脂組成物で形成され、幅方向端部10b,10bが第2の樹脂組成物で形成されている。第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高い。このような関係を有するフィルムを、例えば、端部10b,10bをテンター延伸機のクリップで把持して横延伸した場合、第1の樹脂組成物で形成された中央部10aを選択的に延伸し得る。具体的には、中央部10aの端部まで所望の厚みに延伸し得、有効幅が大きくなる(端部10bは延伸後に切断除去され得る)。さらに、延伸された中央部10aの厚みムラは小さく均一性に優れ得る。また、このような端部10b,10bを設けることで、物性的にも均一性に優れた延伸フィルムが得られ得る。具体的には、このような端部を有しないフィルムでは、横延伸により中心付近とクリップ把持部近傍との間で物性差が生じ得る(例えば、クリップ把持部近傍でタルミが生じ得る)が、ガラス転移温度の高い第2の樹脂組成物で形成された端部10b,10bを設けることで、中央部10aに物性差が生じるのを抑制し得、中央部10aを均一性に優れた延伸フィルムとし得る。
【0015】
上記第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)と上記第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)との差(Tg−Tg)は、任意の適切な値に設定し得る。(Tg−Tg)は、好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10〜40℃、特に好ましくは15〜35℃である。差がこのような範囲であることにより、第1の樹脂組成物で形成された中央部10aをより選択的に横延伸し得る。また、横延伸により中央部10aに物性差が生じるのを効果的に抑制し得、均一性により優れた延伸フィルムが得られ得る。
【0016】
上記第1の樹脂組成物のメルトフローレートと上記第2の樹脂組成物のメルトフローレートとの差の絶対値は、好ましくは10g/10分(240℃、10kgf)以下、さらに好ましくは5g/10分(240℃、10kgf)以下である。フィルム10の成形性に優れ得るからである。なお、フィルム10の成形方法については後述する。
【0017】
上記第1の樹脂組成物は、任意の適切な樹脂を含む。当該樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。なお、単に(メタ)アクリル系樹脂から形成されるフィルムを延伸する場合、クリップ把持部近傍でタルミが生じやすい傾向にある。したがって、第1の樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、本発明の効果が顕著に発現し得る。
【0018】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とする(メタ)アクリル酸C1−6アルキル系樹脂が挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0019】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。また、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂や、特開2005−314534号公報などに記載の、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いても良い。
【0020】
上記第1の樹脂組成物は、任意成分を含み得る。任意成分の具体例としては、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび等が挙げられる。
【0021】
上記(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、代表的には110℃以上であり、好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。耐久性に優れ得るからである。Tgの上限値は、代表的には200℃以下であり、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。成形性に優れ得るからである。
【0022】
上記(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、第1の樹脂組成物のメルトフローレートは、代表的には5〜20g/10分(240℃、10kgf)であり、好ましくは10〜16g/10分(240℃、10kgf)である。成形性および耐久性に優れ得るからである。
【0023】
上記第2の樹脂組成物は、そのガラス転移温度(Tg)が上記第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高い限り、任意の適切な樹脂を含む。上記第1の樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、第2の樹脂組成物に含まれる樹脂の具体例としては、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂である。ポリカーボネート系樹脂を含む場合、第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、代表的には120〜250℃であり、好ましくは125〜230℃、さらに好ましくは130〜210℃である。このように、ポリカーボネート系樹脂を用いることで、上記好ましいガラス転移温度の差(Tg−Tg)を満たし得る。また、ポリカーボネート系樹脂を含む場合、第2の樹脂組成物のメルトフローレートは、代表的には0.1〜30g/10分(240℃、10kgf)であり、好ましくは0.5〜20g/10分(240℃、10kgf)である。このように、ポリカーボネート系樹脂を用いることで、上記好ましいメルトフローレートの差を満たし得る。さらに、ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、(メタ)アクリル系樹脂を含む第1の樹脂組成物で形成された中央部10aとの密着性に優れた端部10bを形成し得る。その結果、良好にフィルム10を横延伸し得る。なお、ポリカーボネート系樹脂は(メタ)アクリル系樹脂よりも安価に入手し得、経済性にも優れ得る。
【0024】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネートが用いられる。芳香族ポリカーボネートは、代表的には、カーボネート前駆物質と芳香族2価フェノール化合物との反応によって得ることができる。カーボネート前駆物質の具体例としては、ホスゲン、2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが用いられる。特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとを共に使用することが好ましい。
【0025】
上記第2の樹脂組成物は、任意成分を含み得る。任意成分の具体例としては、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび等が挙げられる。
【0026】
上記フィルム10は、代表的には、ロール状とされている。フィルム10の厚みは、任意の適切な値に設定し得る。好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは50〜300μmである。第1の樹脂組成物で形成される中央部10aの幅は、所望の値に設定し得る。代表的には500〜3000mmである。第2の樹脂組成物で形成される端部10bの幅は、テンター延伸機のクリップで端部を把持し得る限り、任意の適切な値に設定し得る。好ましくは100mm以下、さらに好ましくは5〜100mm、特に好ましくは30〜80mmである。このような範囲であっても、第1の樹脂組成物で形成された中央部10aを選択的に横延伸し得、均一性に優れた延伸フィルムが得られ得る。また、このような値に設定することにより、経済性にも優れ得る。
【0027】
上記フィルム10の成形方法としては、代表的には、押出成形法が用いられる。図2は、上記フィルムの製造に用いられる押出機の押出部の好ましい実施形態を示す斜視図である。押出部100は、主押出部101と副押出部102,102とを備える。主押出部101から上記第1の樹脂組成物の溶融物を押し出し、副押出部102,102から上記第2の樹脂組成物の溶融物を押し出す。第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物は、同時にダイリップ110から押し出され薄膜化される。このとき、第1の樹脂組成物がダイリップの中央部110aから押し出され、第2の樹脂組成物はダイリップの端部110b,110bから押し出される。なお、押出部100は、同時押し出しで3層積層フィルムを得るための押出部を90°回転させた形態であり得る。
【0028】
B.延伸方法
上記フィルムは、横延伸される。横延伸は、代表的にはテンター延伸方法が用いられる。具体的には、フィルム10の端部10b,10bを、テンター延伸機のクリップで把持して幅方向に延伸する。延伸工程における延伸温度は、好ましくは、上記第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高く、上記第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも低い。延伸温度をこのように設定することにより、第1の樹脂組成物で形成された中央部10aをより選択的に延伸し得、均一性により優れた延伸フィルムが得られ得る。具体的には、第1の樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含み、第2の樹脂組成物がポリカーボネート系樹脂を含む場合、好ましくは130〜150℃、さらに好ましくは135〜145℃である。延伸倍率は、任意の適切な値に設定し得る。延伸倍率は、好ましくは1.1〜5.0倍であり、さらに好ましくは1.2〜3.0倍、特に好ましくは1.4〜2.5倍である。なお、上記フィルム10は、さらに、縦延伸され得る。この場合、逐次延伸でもよいし同時二軸延伸でもよい。縦延伸の延伸倍率は好ましくは1.1〜5.0倍である。
【0029】
上記フィルム10は、第1の樹脂組成物で形成された中央部10aが選択的に横延伸され得る。延伸後、第2の樹脂組成物で形成された端部10b,10bをスリットすることにより、厚みにも物性的にも均一性に優れた延伸フィルムが歩留まりよく得られ得る。延伸フィルムの厚みは、代表的には10〜150μmであり、好ましくは15〜100μmある。
【0030】
C.用途
本発明の延伸フィルムの製造方法により得られた延伸フィルムは、液晶表示装置に用いられる偏光子の保護フィルムとして好適に用いられる。偏光子の保護フィルム以外にも、例えば、窓やカーポート屋根材等の建築用採光部材、窓等の車輌用採光部材、温室等の農業用採光部材、照明部材、前面フィルター等のディスプレイ部材、家電の筐体、車輌内装部材、内装用建築材料、壁紙、化粧板、玄関ドア、窓枠、巾木等に積層して用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、ガラス転移温度(Tg)およびメルトフローレートは下記の方法で測定した。
1.ガラス転移温度(Tg)
DSC装置(Seiko Instruments社製、EXSTAR6000)を用いて測定した。
2.メルトフローレート
JIS−K6874に基づき、試験温度240℃、荷重10kgで測定した。
【0032】
[実施例1]
(フィルムの成形)
ガラス転移温度120℃のアクリル系樹脂(三菱レイヨン製、商品名:アクリペットVH)を100℃で真空乾燥し、これを単軸押出機(東芝機械(株)製、製品名:SE−65)の原料ホッパーから主押出部に供給して、シリンダセット温度230〜270℃で溶融させた。なお、原料ホッパーから主押出部までは窒素置換されている。
同時に、ガラス転移温度150℃のポリカーボネート系樹脂(帝人化成社製、商品名パンライトL−1250Y)を100℃で真空乾燥し、これを単軸押出機(東芝機械(株)製、製品名:SE−50)の原料ホッパーから副押出部に供給して、シリンダセット温度230〜270℃で溶融させた。なお、原料ホッパーから副押出部までは窒素置換されている。
図2に示すように、これらをコートハンガータイプのTダイ(リップ長:500mm、リップ開度:0.6mm、温度260℃)を通過させ、120℃の冷却クロムメッキ製キャスティングロールで冷却した。このようにして、アクリル系樹脂で形成された中央部とポリカーボネート系樹脂で形成された端部を有するフィルムを成形した。このようにして得られたフィルムの厚みは130μm、中央部の幅は1300mm、各端部の幅は50mmであった。
【0033】
上記で得られたフィルムをロール延伸して縦延伸した後、テンター延伸機で横延伸して延伸フィルムを得た。このとき、ポリカーボネート系樹脂で形成された両端部をクリップで把持して横延伸した(延伸温度140℃、延伸倍率1.8倍)。得られた延伸フィルムにおいて、アクリル系樹脂で形成された中央部は、厚み40μm±2.5μmの有効幅が1300mmであった。
【0034】
(比較例1)
上記ポリカーボネート系樹脂で形成される端部を設けずに、すなわち、実施例1のアクリル系樹脂を通常のTダイ押出によりフィルム成形した。得られたフィルムの厚みは130μm、幅は1400mmであった。
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸した。得られた延伸フィルムの厚み40μm±2.5μmの有効幅が1000mmであった。
【0035】
実施例1および比較例1で得られた延伸フィルムの膜厚を、アンリツ社製、フィルムシックネステスタ KG601Bで測定した。測定結果を図3に示す。
【0036】
図3に示すとおり、実施例1で得られた延伸フィルムはポリカーボネート系樹脂で形成された端部を境にほぼ均一な厚みを有していた。均一なフィルムを得るために延伸フィルムの両端をスリットしても、その廃棄片のほとんどはポリカーボネート系樹脂を含んでいた。一方、比較例1で得られた延伸フィルムは、クリップの把持部だけでなく、当該把持部周辺においても中心に比べて厚みは厚かった。したがって、均一な厚みの延伸フィルムを得るためには、前記把持部周辺までスリットしなければならなかった。以上より、ポリカーボネート系樹脂で形成された端部を設けることで有効幅が大きくなり、歩留まりが格段に向上したといえる。
【0037】
上記のように両端の厚肉部をスリットした実施例1の延伸フィルムは、そのスリット端部においてタルミは確認されなかった。一方、両端の厚肉部をスリットした比較例1の延伸フィルムは、そのスリット端部でタルミが確認された。ポリカーボネート系樹脂で形成された端部を設けることで、タルミの発生が抑制され、物性的にも均一性に優れた延伸フィルムが歩留まりよく得られ得るといえる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の延伸フィルムは、偏光子の保護フィルム等の光学フィルムとして好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の延伸フィルムの製造方法で用いられるフィルムの好ましい実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示すフィルムの製造に用いられる押出機の押出部の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例1および比較例1で得られた延伸フィルムの膜厚測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
10 フィルム
10a 中央部
10b 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを横延伸する工程を有する延伸フィルムの製造方法であって、
該フィルムの幅方向中央部が第1の樹脂組成物で形成され、
該フィルムの幅方向端部が第2の樹脂組成物で形成され、
該第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が、該第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高い、延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記延伸工程における延伸温度が、前記第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも高く、前記第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも低い、請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第2の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)と前記第1の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)との差(Tg−Tg)が5℃以上である、請求項1または2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1の樹脂組成物のメルトフローレートと前記第2の樹脂組成物のメルトフローレートとの差の絶対値が10g/10分(240℃、10kgf)以下である、請求項1から3のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含む、請求項1から4のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第2の樹脂組成物がポリカーボネート系樹脂を含む、請求項5に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムの端部の幅が100mm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の製造方法により得られた、延伸フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−160900(P2009−160900A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3020(P2008−3020)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】