説明

延伸ポリエステルフィルムの製造方法

【課題】温和な温度、圧力条件にて微細な凹凸形状をフィルム表面に付与できる延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエステルフィルムのポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度以下の温度に加熱した凹凸パターンを有する型を押し当てその後に型を剥離することで型の凹凸パターンをポリエステルフィルムに転写し、ポリエステルフィルムを延伸することを特徴とする、延伸ポリエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関する。詳しくは、表面に微細な凹凸形状を備えた延伸ポリエステルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムの表面に微細なプリズム状の凹凸を形成したフィルムは、透過する光路を制御する光学部材として、例えば液晶表示装置のプリズムシートとして用いられている。ポリエステルフィルムの表面に微細な凹凸形状を付与する代表的な方法として延伸ポリエステルフィルムの上に未硬化の樹脂を塗布して型押し、その後に樹脂を硬化させ、型を剥離する方法が知られている(特開2002−365405号公報)。
また、反射シートの分野では、延伸ポリエステルフィルムにエンボス加工を施し、表面に凹凸を付与する方法が知られている(特開2001−266629号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−365405号公報
【特許文献2】特開2001−266629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエステルフィルムの表面に微細な凹凸形状を付与したい。従来技術である、未硬化の樹脂を塗布し凹凸パターンを型押しし、その後に樹脂を硬化させ、型を剥離する方法を用いると、狙いとする凹凸形状に応じて型を用意する必要があり、凹凸形状の微調整に対応できない。
【0005】
延伸後のポリエステルフィルムをエンボス加工する方法を用いると、ポリエステルの一部が結晶化したフィルムに凹凸加工を施すことになるため、温度と圧力を過酷な条件にしないと加熱型押しできない。特にフィルムの厚さが薄い場合、フィルムに穴が開いてしまうため、あるいは型が裏写りしてしまうため、片面だけに凹凸形状を付与することは技術的に難しい。
【0006】
そこで本発明は、従来技術が有する上記技術課題を解決することを目的とする。本発明の課題は、凹凸形状の微調整が容易であり、凹凸形状を付与する対象が両面の場合であっても片面の場合であっても、高い生産性で微細な凹凸形状をフィルム表面に付与することができ、さらに、内部にボイドを含有するフィルムを対象とする場合にも、ボイドを破壊することなく高い生産性で微細な凹凸形状をフィルム表面に付与することのできる、温和な温度、圧力条件にて微細な凹凸形状を表面に付与できる延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、ポリエステルフィルムに加熱型押しした後にフィルムを延伸することにより、温和な温度、圧力条件にて微細な凹凸形状を表面に付与できることを見い出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエステルフィルムのポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度以下の温度に加熱した凹凸パターンを有する型を押し当てその後に型を剥離することで型の凹凸パターンをポリエステルフィルムに転写し、ポリエステルフィルムを延伸することを特徴とする、延伸ポリエステルフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凹凸形状の微調整が容易であり、凹凸形状を付与する対象が両面の場合であっても片面の場合であっても、高い生産性で微細な凹凸形状をフィルム表面に付与することができ、さらに、内部にボイドを含有するフィルムを対象とする場合にも、ボイドを破壊することなく高い生産性で微細な凹凸形状をフィルム表面に付与することのできる、温和な温度、圧力条件にて微細な凹凸形状を表面に付与できる延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、ポリマーのガラス転移温度をTg、結晶化温度をTc、融点をTmということがある。
【0011】
[ポリエステルフィルム]
本発明におけるポリエステルフィルムとしては、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステルを用いる。ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸を挙げることができる。ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールを挙げることができる。これらのポリエステルの中で、ポリエステルポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0012】
ポリエステルとしては、微粒子を添加しても安定してフィルム化できることから共重合ポリエステルを用いることが好ましい。
ポリエステルとして共重合ポリエステルを用いる場合、共重合ポリエステルとして、ガラス転移温度が60〜160℃でありかつ結晶化温度が120〜220℃のものが好ましく、ガラス転移温度が60〜140℃でありかつ結晶化温度が120〜200℃のものがさらに好ましい。この範囲のガラス転移温度および結晶化温度であることで、より高い生産性で、表面に凹凸を有する延伸ポリエステルフィルムを製造することができる。
【0013】
ポリエステルとして共重合ポリエチレンテレフタレートを用いる場合、共重合成分としては、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、5―ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸成分を用いることができ、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分を用いることができるが、好ましくは、共重合成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジメタノールを用いる。
【0014】
ポリエステルには、微粒子など添加物が含まれていてもよい。ポリエステルに添加する微粒子として、例えばポリオレフィン、ポリスチレンといったポリエステルと非相溶の樹脂、あるいは硫酸バリウムや酸化チタンなどといった無機物が好ましい。
【0015】
[内部にボイドを有するフィルム]
本発明において、不活性微粒子をポリエステル中に配合すると、フィルムの延伸時にポリエステルと不活性微粒子との界面に剥離が生じ、フィルム内部にボイドを有しかつ表面に微細な凹凸形状を有する延伸ポリエステルフィルムを、高い生産性で製造することができる。
【0016】
このフィルム内部にボイドを有しかつ表面に微細な凹凸形状を有する延伸ポリエステルフィルムは、未硬化の樹脂を塗布し凹凸パターンを型押しし樹脂を硬化させた後型を剥離する方法や、延伸後のフィルムをエンボス加工する方法といった従来の方法を用いたのでは製造することができない。
【0017】
内部にボイドを有する延伸フィルムに、従来の方法を適用して表面に微細な凹凸形状を付けようとしても、樹脂を硬化させる時の熱や光によってポリエステルが熱収縮を起こしフィルム中のボイドが収縮してしまう、あるいはエンボス加工時の圧力でボイドが潰されてしまうため、内部のボイドを維持した状態で延伸フィルム表面に微細な凹凸形状を付与することはできない。
これに対して、本発明の製造方法を用いると、延伸フィルム内部にボイドを有しかつ微細な凹凸形状を表面に有する延伸ポリエステルフィルムを製造することができる。
【0018】
微粒子をポリエステルに含有させる方法としては各種の方法を用いることができる。その代表的な方法として、下記のような方法を挙げることができる。(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。(イ)ポリエステルに添加し、溶融混練する方法。(ウ)上記(ア)または(イ)の方法において不活性粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらと添加剤を含有しないポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法。(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
【0019】
本発明において型を押し当てるポリエステルフィルムは、単一の層からなる単層フィルムであってもよく、複数の層からなる積層フィルムであってもよい。複数の層からなる場合、例えば、A層/B層の2層構成であってもよく、A層/B層/A層あるいはA層/B層/C層の3層構成であってもよく、これらの構成を含む4層以上の構成であってもよい。
本発明において型を押し当てるポリエステルフィルムは、未延伸ポリエステルフィルムであってもよく、延伸配向が完了する前の低倍率で延伸されたポリエステルフィルムであってもよい。
【0020】
[加熱型押し]
本発明においてポリエステルフィルムに加熱型押しする時の型の温度は、Tg〜Tcの温度範囲内であるが、(Tg+5)℃〜(Tg+50)℃が好ましく、中でも(Tg+5)℃〜(Tg+30)℃が特に好ましい。温度がTgよりも低いと型押しに長時間の加熱および強い圧力を必要としてしまう。また、温度がTcよりも高いと、加熱型押ししている途中にポリエステルが結晶化し易くなり、延伸条件が過酷になり破断しやすく生産性が低下してしまう。
【0021】
加熱型押しする際に型をフィルムに押し付ける圧力は、5〜100kgf/cmであることが好ましい。圧力がこの範囲であると、型が十分に転写され、かつポリエステルフィルムを過度に圧迫することがない、特にフィルム内部にボイドを有するポリエステルフィルムに加熱型押しする場合、ボイドの損失を最小限に留めることができるため好ましい。
【0022】
[型の凹凸パターン]
型の凹凸パターンとしては、例えば、多角錐が密に並んだ形状を用いることができる。多角錐が密に並んだ形状として、例えば三角錐、四角錐または六角錐が密に並んだ形状、三角錐と六角錐が密に並んだ形状、四角推と八角錐が密に並んだ形状、プリズム列が密に並んだ形状を用いることができる。プリズム列とは、一方向に連続した凸部であり断面の形状が例えば三角形であることによって入射した光の光路を変換する機能を有する列である。
【0023】
凸部の断面形状は三角形のみならず、台形、半球状等でもよく、特に限定はしないが、型がポリエステルフィルムから容易に剥離しやすい形状であることが好ましい。
型の凹凸パターンのピッチは、好ましくは1〜1500μm、さらに好ましくは1〜1000μm、特に好ましくは1〜100μmである。凹凸パターンが1μmよりも小さいと型押しする型が高コストになるため好ましくなく、1500μmよりも大きいと延伸後のポリエステルフィルムの凹凸が粗い形状になってしまうため好ましくない。ここでいうピッチとは、凸部とこれに隣接する他の凸部との間隔であり、たとえば凸部が角錐である場合、凸部の頂点とこれに隣接する他の凸部の頂点との間隔である。
型の凹凸パターンの深さは、好ましくは1〜2000μmである。この範囲の深さであることで、延伸ポリエステルフィルムに入射する光が不必要に拡散することがなく、均一な光に指向性を確保することができ好ましい。
【0024】
本発明において、型の凹凸パターンが型のポリエステルとの接触面の80%以上の面積にわたり設けられていることが好ましい。80%であることで、フィルムがボイドを含有するフィルムである場合には、反射光の指向性を十分に高くすることができ、フィルムがボイドを含有しないフィルムである場合には、プリズムシートとして十分な光路変換機能を有することができる。
凹凸パターンを備える型として、例えば金属製の型を用いることができるが、ポリエステルフィルムから剥離し易くするために、型の表面材質をテフロン(登録商標)に変更してもよく、あるいは、ポリエステルフィルムと型との間にシリコーンを塗布するなどの工夫がなされていてもよい。
【0025】
[ポリエステルフィルムの厚さ]
本発明に用いるポリエステルフィルムの厚さは好ましくは100〜5000μmである。この範囲の厚みであることで、表面の微細な凹凸を除くフィルム自体が平坦な延伸ポリエステルフィルムを、延伸が困難になることなく得ることができ好ましい。
本発明に用いるポリエステルフィルムの厚さは、型の凹凸パターンの深さの150%以上であることが好ましい。150%以上であることで、延伸時の破断が少なく高い生産性を得ることができる。
【0026】
[延伸]
型押しした後のフィルムの延伸は、一軸延伸、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法のいずれを用いてもよい。延伸温度は(Tg+5)〜(Tg+70)℃であり、二軸延伸の場合、例えば縦1.5〜4倍、横1.5〜4倍の延伸倍率、一軸延伸の場合、例えば1.5〜4倍の延伸倍率である。延伸後の延伸フィルムに熱固定をしてもよい。熱固定温度は、好ましくは(Tm−100)〜(Tm−20)℃である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。
【0028】
(1)ガラス転移温度(Tg)
パーキンエルマー社製のDSC(示差走査熱量計)を用いて測定した。測定方法は次の通りである。試料10mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中で急冷する。この急冷試料を10℃/分で昇温し、ベースラインに不連続が現れる領域の中点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0029】
(2)結晶化温度(Tc)
パーキンエルマー社製のDSC(示差走査熱量計)を用いて測定した。測定方法は次の通りである。試料10mgをDSC装置にセットし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中で急冷する。この急冷試料を10℃/分で昇温し、ベースラインに吸熱ピークが現れる領域の極大点の温度を結晶化温度(Tc)とした。
【0030】
(3)フィルムの厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定して平均値を求め、フィルムの厚みとした。
【0031】
(4)フィルムの各層の厚み
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを10点測定して平均を求め、各層の厚みとした。
【0032】
(5)平均粒径
HORIBA製LA−750パーティクルサイズアナライザー(Particle Size Analyzer)を用いて測定した。この測定器によって得られる遠心沈降曲線をもとに算出した各粒径の粒子とその存在量とのcumulative曲線から、50mass percentに相当する粒径を読み取った。
【0033】
[実施例1]
・ポリエステルの合成
テレフタル酸ジメチル132重量部、イソフタル酸ジメチル18重量部、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を撹拌機、精留塔及び留出コンデンサーを備えた反応器に仕込み、撹拌しながら150〜235℃に徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、リン酸トリメチル0.03重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後反応生成物に二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、ついで撹拌しながら290℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行った。固有粘度0.70dl/g、ガラス転移温度(Tg)が78℃、結晶化温度(Tc)が145℃のポリエステルを得た。
【0034】
・ポリエステルフィルムの作製
A/B/Aとなるような3層フィードブロック装置を使用して、A層には上記ポリエステル96重量%と平均粒径1.2μmの硫酸バリウム粒子4重量%との組成物を、B層には上記ポリエステル53重量%と平均粒径1.2μmの硫酸バリウム粒子47重量%との組成物を、それぞれ285℃に加熱された2台の押出機に供給し、両層の組成物を合流させ、その積層状態を保持したままダイよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化し、厚さが800μmの未延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0035】
・ポリエステルフィルムへの加熱型押し
上記未延伸ポリエステルフィルムに、ピッチ1000μm、傾斜角25°のプリズムが彫られており表面がニッケルメッキ層されている金属型(アルマイト製)を被せ、プレス面の温度が90℃のプレス機にて30kgf/cmの圧力を1分間加えた後、プレスを開放し、金属型を除去し、自然冷却させ、ピッチ1000μm、傾斜角25°のプリズム層を、表面に微細な凹凸形状として有する未延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0036】
・ポリエステルフィルムの延伸
上記方法によって得られた、表面に微細な凹凸形状を有する未延伸ポリエステルフィルムを、130℃にて、プリズム列と平行方向に3倍延伸し、次いでプリズム列と垂直方向に3倍延伸し、表面に微細な凹凸形状を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。延伸条件の詳細を表1に示す。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、A層およびB層のボイドが維持されているのが確認された。
【0037】
[実施例2〜6]
表2に示す延伸条件に変更した以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、A層およびB層のボイドが維持されているのが確認された。
【0038】
[実施例7〜8]
加熱型押しを両面に変更するとともに表2に示す延伸条件に変更した以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、A層およびB層のボイドが維持されているのが確認された。
【0039】
[実施例9〜10]
金型として、ピッチ1000μm、傾斜角25°のプリズムが彫られており表面がニッケルメッキ層である金属シート(アルマイト製)を用い、加熱型押しを片面に変更するとともに表2に示す延伸条件に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、A層およびB層のボイドが維持されているのが確認された。
【0040】
[実施例11]
・ポリエステルの合成
テレフタル酸ジメチル150重量部、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を撹拌機、精留塔及び留出コンデンサーを備えた反応器に仕込み、撹拌しながら150〜235℃に徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、リン酸トリメチル0.03重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後反応生成物に二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、ついで撹拌しながら290℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行った。固有粘度0.70dl/g、ガラス転移温度(Tg)が79℃、結晶化温度(Tc)が150℃のポリエステルを得た。
【0041】
・ポリエステルフィルムの作製
上記ポリエステルを、285℃に加熱された押出機に供給し、ダイよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化し、厚さが790μmの未延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0042】
・ポリエステルフィルムへの加熱型押し
実施例5に記載の金型形状、加熱型押し条件および延伸条件にて、微細な凹凸形状を表面に有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、フィルムのボイドが維持されているのが確認された。
【0043】
[実施例12]
上記実施例11において、実施例6に記載の金型形状、加熱型押し条件および延伸条件に変更し、微細な凹凸形状を表面に有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、フィルムのボイドが維持されているのが確認された。
【0044】
[実施例13]
上記実施例11において、実施例9に記載の金型形状、加熱型押し条件および延伸条件に変更し、微細な凹凸形状を表面に有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、フィルムのボイドが維持されているのが確認された。
【0045】
[実施例14]
上記実施例13において、実施例10に記載の金型形状、加熱型押し条件および延伸条件に変更し、微細な凹凸形状を表面に有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを観察したところ、片面にプリズム層が形成され、フィルムのボイドが維持されているのが確認された。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の製造方法により得られる延伸ポリエステルフィルムは、表面に微細な凹凸形状を有する延伸ポリエステルフィルムであり、液晶ディスプレイに用いられる光学部材、例えばプリズムシートとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエステルフィルムのポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度以下の温度に加熱した凹凸パターンを有する型を押し当てその後に型を剥離することで型の凹凸パターンをポリエステルフィルムに転写し、ポリエステルフィルムを延伸することを特徴とする、延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
型の凹凸パターンのピッチが1〜1500μm、深さが1〜2000μmである、請求項1記載の延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
ポリエステルフィルムの厚さが100〜5000μmであり、型の凹凸パターンの深さの150%以上である、請求項2記載の延伸ポリエステルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−161636(P2011−161636A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23175(P2010−23175)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】