建具
【課題】 簡単な構造にできてコスト増加を招くことなく、かつ外観を良好にすることができる建具を提供すること。
【解決手段】扉体2の開口端縁と障子3の縦框33とを支持アーム43で直接連結し、この支持アーム43の回動軌跡に沿って障子3が突没移動されるように構成したので、複雑なリンク機構等を用いることなく障子3を支持することができ、障子支持部4の構造を簡単化して部品点数を削減し、製造コストを抑制することができる。さらに、障子支持部4が左右の開口端縁の上部および下部に設けられているので、障子3を開放した状態で障子支持部4が目立たないようにでき、ドア1の外観意匠性を良好にすることができる。
【解決手段】扉体2の開口端縁と障子3の縦框33とを支持アーム43で直接連結し、この支持アーム43の回動軌跡に沿って障子3が突没移動されるように構成したので、複雑なリンク機構等を用いることなく障子3を支持することができ、障子支持部4の構造を簡単化して部品点数を削減し、製造コストを抑制することができる。さらに、障子支持部4が左右の開口端縁の上部および下部に設けられているので、障子3を開放した状態で障子支持部4が目立たないようにでき、ドア1の外観意匠性を良好にすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関し、詳しくは、枠体の開口を塞ぐ閉鎖位置と枠体の見込み方向一方側に突出した開放位置との間を開閉移動可能な面材を有した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
面材が窓枠等の枠体から突出して開放される突出し窓(押出し窓)等の建具が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1および特許文献2に記載された突出し窓は、それぞれ面材(特許文献1ではガラス障子、特許文献2では窓本体)が枠体に対して略平行に突没することで開閉するように構成されている。
すなわち、特許文献1の突出し窓において、枠体には、左右一対のガイド部材と、これらのガイド部材に案内されて見込み方向に進退可能な一対のスライド部材とが設けられ、このスライド部材に取り付けられた面材がスライド部材の進退移動に伴って突没可能に支持されている。そして、特許文献1の突出し窓では、ガイド部材に軸支された回転レバーとスライド部材とがアーム部材(押し出しアーム)で連結されており、回転レバーを回動操作することでアーム部材を介してスライド部材が進退移動され、これにより面材が開閉操作可能に構成されている。
【0003】
一方、特許文献2の突出し窓において、面材は、その上下左右の各辺がパンタグラフ機構(支持機構)等の平行リンク機構を介して枠体に支持されており、これらの平行リンク機構の見込み方向への伸縮に伴って面材が突没可能に支持されている。そして、特許文献2の突出し窓では、枠体に軸支されるとともに見込み方向に進退自在に支持されたアーム部材(揺動アーム)に面材が連結されており、このアーム部材を回動操作してから見込み方向に突没操作することで、面材が開閉操作可能に構成されている。
【0004】
【特許文献1】実登第2532939号公報
【特許文献2】特開平10−2149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、2に記載された従来の突出し窓では、枠体に対して略平行に突没可能に面材を支持する支持構造(ガイド部材およびスライド部材で構成された特許文献1の機構や、特許文献2の平行リンク機構)が複雑になって部品点数が増加し、製造コストの増大を招いてしまうという問題がある。
さらに、従来の突出し窓では、面材の開放時において複雑な支持構造が枠体の開口部に露出するために、窓の外観意匠性が損なわれてしまうという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構造にできてコスト増加を招くことなく、かつ外観を良好にすることができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、開口部を有した枠体と、この枠体に支持された面材とを備え、この面材が前記枠体の開口部を塞ぐ閉鎖位置と、前記枠体の見込み方向一方側に突出した開放位置との間を開閉移動可能に設けられた突出し形式の建具であって、前記枠体の前記開口部を形成する開口端縁には、当該開口部を挟んで互いに対向する少なくとも一対の支持アームが設けられ、これら一対の支持アームは、それぞれ一端側が前記開口端縁に回動自在に連結され、かつ他端側が前記面材に回動自在に連結され、前記一対の支持アームは、前記開口端縁の長手方向に沿って互いに離隔した位置に複数組が設けられるとともに、これら複数組のうちの少なくとも一組における一対の支持アーム同士が互いの回動を同期させる同期手段で接続されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、枠体としては、建物等の躯体に固定されたものでもよく、また枠体自身が躯体等に開閉移動可能に支持されたものでもよい。
また、面材としては、ガラスパネルや樹脂製パネル等の板材から形成されたものでもよく、上下左右の框材を四周框組みした内部に板材を嵌め込んで形成された障子でもよい。
さらに、支持アームの一端部が回動自在に連結される少なくとも一対の開口端縁としては、例えば、枠体の開口部が矩形状に形成された場合であれば、その開口部を形成する左右の二端縁(縦辺)であってもよく、また上下の二端縁(横辺)であってもよい。さらに、上下左右の四端縁の全てに支持アームの一端部が連結されていてもよく、この場合には、上下の開口端縁に連結された支持アーム同士が一対とされ、左右の開口端縁に連結された支持アーム同士が一対とされればよい。
また、一対の支持アーム同士を同期させる同期手段としては、支持アーム同士を直接連結する連結部材等で構成されていてもよく、またギアやベルト、ロープ(ワイヤ)、プーリ、滑車等を用いた連動手段を介して接続されていてもよい。
【0009】
以上の本発明によれば、枠体と面材とを支持アームで直接連結し、この支持アームの回動により面材を突没移動自在に構成したので、従来のような複雑な支持構造を用いなくてもよく、支持構造を簡単化して部品点数を削減し、建具の製造コストを抑制することができる。すなわち、従来の支持構造では、ガイド部材およびスライド部材で構成した機構や平行リンク機構によって、枠体に対して見込み方向に直線的に面材が突没されるのに対し、本発明では、支持アームの回動軌跡(円弧)に沿って面材が突没されるようになっている。そして、支持アームの長さ(一端側連結部と他端側連結部との距離)や、枠体と面材とのクリアランス等を適宜設定することで、面材の開閉移動に支障をきたさないようにしつつ支持構造を簡単にすることができる。また、複数組の支持アームごとに長さを同一にすれば、枠体に対して平行を維持させたまま面材を突没させることができ、複数組の支持アームごとに長さを適宜変更すれば、枠体に対して角度を持たせて面材を突没させることもできる。
また、枠体の開口端縁の長手方向に沿って互いに離隔した位置に複数組の支持アームを設けたことで、開口端縁の中央付近の目立つ位置を避けて支持構造を設置するなど配置の自由度を高めることができ、面材を開放した状態で支持構造が目立たないようにして建具の外観意匠性を良好にすることができる。
さらに、少なくとも一対の支持アーム同士を同期手段で接続したことで、開閉操作の際に、一対の支持アームのうちのいずれか一方だけが回動し他方が回動せずに面材が枠体に対して捻れて突没される異常な開閉が防止でき、開閉操作の操作性を良好にすることができる。
【0010】
この際、本発明の建具では、前記面材が閉鎖位置にある場合の前記支持アームの他端側連結部と、前記面材が開放位置にある場合の当該支持アームの他端側連結部とは、前記開口端縁の長手方向に沿った軸線であり、かつ当該支持アームの一端側連結部を通る軸線に対し、見込み方向の略対称位置に位置することが好ましい。
このような構成によれば、面材の閉鎖位置と開放位置とで支持アームの他端側連結部が見込み方向に略線対称位置になるように構成したことで、閉鎖位置にある面材を見込み方向に直線的に突出させたのと略同一の開放位置に面材が突出され、開放状態における建具の意匠性や開閉操作の操作性を良好にすることができる。
【0011】
また、本発明の建具では、前記枠体の開口部は、上下および左右の開口端縁から略矩形状に形成されており、前記一対の支持アームは、前記左右の開口端縁における上部および下部に二組が設けられ、これら二組のうちの下部に設けられた一対の支持アーム同士を連結する連結部材で前記同期手段が構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、開口部の左右の開口端縁に支持アームを設けたことで、支持アームと開口端縁および面材とが略水平な回動軸回りに回動自在に連結され、支持アームが鉛直面に沿って縦に回動されることとなる。そして、左右の開口端縁における下部の支持アーム同士を連結部材で連結して、これらの支持アームの回動を同期させるようにしたことで、この連結部材を面材の下端縁に近い位置や面材の下端縁で覆われる位置に設ければ、連結部材を目立たなくすることができ、開放時における建具の意匠性をより一層向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の建具では、前記左右の開口端縁における高さ方向略中間位置には、前記枠体の見込み方向に沿ってスライド自在に支持されたスライド部材と、このスライド部材をスライド移動させる操作部材とが設けられ、前記スライド部材に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されていることが好ましい。
このような構成によれば、操作部材を操作してスライド部材を見込み方向にスライドさせることで、スライド部材に対して見込み方向に移動不能に係止された面材を突没させて、建具を容易に開閉操作することができる。そして、開閉途中における面材が前述のように支持アームの回動軌跡に沿って円弧状に移動しても、面材がスライド部材に対して上下方向に移動可能に係止されているので、面材の移動を拘束することがなく、スムーズな開閉操作を実現することができる。
【0013】
さらに、本発明の建具では、前記スライド部材の前記面材側端部には、上下に延びる鉛直片部が設けられ、この鉛直片部の上端部および下端部の二箇所に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されていることが好ましい。
このような構成によれば、スライド部材に設けた鉛直片部の上下二箇所を面材に係止し、これら二箇所で面材を押し引きして突没移動させることで、面材の上部および下部の一方が回動し他方が回動せずに枠体に対して傾いて突没される異常な開閉が防止でき、開閉操作の操作性をさらに良好にすることができる。
【0014】
また、本発明の建具は、建物の出入口に開閉可能に設けられた扉体から前記枠体が構成されるとともに、この扉体に対して室外側に突出して前記面材が開閉可能に設けられたドアであることが好ましい。
このような構成によれば、扉体に面材を突没開閉可能に支持させたことで、前述の各作用効果を有したドアを構成することができるとともに、扉体を閉じた施錠状態で面材を開放すれば、防犯性を有したままで通気や換気を実施することができ、快適な室内環境を得ることができる。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1および図2は、それぞれ本発明の第1実施形態に係る建具であるドア1を示す姿図であって、図1は、ドア1を室内側から見た内観姿図であり、図2は、ドア1を室外側から見た外観姿図である。図3および図4は、それぞれドア1を示す縦断面図および横断面図であり、障子3を閉じた状態を示している。図5および図6は、それぞれドア1を示す縦断面図および横断面図であり、障子3を開いた状態を示している。ここで、図3および図5は、図1に矢視III −III 線(矢視V−V線)で示す断面図であり、図4および図6は、図1に矢視IV−IV線(矢視VI−VI線)で示す断面図である。
図1〜図6において、ドア1は、戸建て住宅や集合住宅等の建物の出入り口(玄関や勝手口)に設けられて建物の室内空間と室外空間とを仕切るとともに、開閉することで居住者等が出入り可能、かつ施錠することで防犯性を有して構成されたものである。なお、各図において、ドア1が取り付けられる建物の外壁や、外壁に固定されたドア枠等の図示を省略した。
【0017】
ドア1は、金属製の板材を組み合わせて全体略矩形状に形成された枠体としての扉体2と、この扉体2の開口部2A部分に支持された面材としての障子3と、扉体2をヒンジを介して開閉可能に支持するドア枠(不図示)とを備えて構成されている。扉体2の略中央部には、上下左右の開口端縁21,22,23(図5、6参照)から縦長矩形状に形成された開口部2Aが設けられている。
障子3は、上框31、下框32、および左右の縦框33を四周框組みした内部に、ガラスパネル34を嵌め込んで構成されている。この障子3は、扉体2の開口部2Aを塞ぐ閉鎖位置(図3および図4の位置)と、扉体2の見込み方向室外側に突出した開放位置(図5および図6の位置)との間を突没移動可能に支持されている。そして、障子3の上框31には、室内側に向かって突出した止水片部31Aが形成され、下框32および左右の縦框33には、室内側に向かって突出して網で覆われた通気部32A,33Aが形成されている。これらの止水片部31Aおよび通気部32A,33Aは、開放位置における障子3の上框31、下框32、および左右の縦框33と扉体2の上下左右の開口端縁21,22,23との隙間を覆うようになっており、これによって上方からの雨の浸入を防止するとともに虫や埃等の侵入を防止しつつ、通気部32A,33Aを通して通気や換気が実施できるようになっている。
【0018】
そして、ドア1には、障子3を見込み方向に突没移動可能に支持する障子支持部4と、障子3を開閉操作するための障子操作部5とが設けられている。以下、障子支持部4および障子操作部5の構造について、図7〜図9も参照して詳しく説明する。
図7は、障子支持部4を示す横断面図であり、図8(A),(B)は、障子支持部4の動作を示す側面図である。図9は、障子操作部5を示す横断面図である。なお、図7および図9は、それぞれ障子3を後述するメンテナンス位置まで開放した状態における障子支持部4および障子操作部5を示している。
【0019】
障子支持部4は、扉体2の左右の開口端縁(縦開口端縁)23における上下に離隔した位置である上部および下部に、それぞれ開口部2Aを挟んで互いに対向して一対ずつが2組(4箇所に)設けられている。これらの障子支持部4は、図7に示すように、開口端縁23に固定された枠側ブラケット41と、障子3の縦框33に固定された障子側ブラケット42と、これらの枠側ブラケット41および障子側ブラケット42に両端部がそれぞれ軸支された支持アーム43とを有して構成されている。支持アーム43は、その一端側がピン(一端側連結部)44によって略水平な回動軸回りに回動自在に枠側ブラケット41に連結されるとともに、他端側がピン(他端側連結部)45によって略水平な回動軸回りに回動自在に障子側ブラケット42に連結され、略鉛直な面内で回動可能に構成されている。
【0020】
枠側ブラケット41は、折り曲げた板材から断面略コ字形に形成され、対向する一方の側面部41Aが扉体2の開口端縁23にビス止め固定され、他方の側面部41Bに支持アーム43の一端側が連結されている。そして、枠側ブラケット41の他方の側面部上面は、円弧状に形成されており、この上面により支持アーム43の側面から突出して設けられた突出ピン43Aを案内することができるようになっている。
また、左右の開口端縁23における上部に設けられた障子支持部4(上部障子支持部4A)の支持アーム43のピン44を挟んで他端側のピン45と反対側端部には、後述するメンテナンス位置まで障子3が開放された際に、枠側ブラケット41の背面部41Cに当接する当接面部43Bが形成されている。
一方、左右の開口端縁23における下部に設けられた障子支持部4(下部障子支持部4B)の支持アーム43同士は、枠側ブラケット41の他方の側面部41Bを貫通するとともに障子3の下框32の下側に沿って延びる回転軸(連結部材)46で互いに連結されており、この回転軸46により一対の支持アーム43同士の回動を同期させる同期手段が構成されている。
【0021】
以上の各障子支持部4における支持アーム43のピン(他端側連結部)45は、図8に示すように、円弧状の回動軌跡Cを描いて回動するようになっており、障子3が閉鎖位置にある状態(図中、一点鎖線で示す)と、障子3が開放位置にある状態(図中、実線で示す)とで、開口端縁23の長手方向に沿いかつ支持アーム43のピン(一端側連結部)44を通る軸線Aに対して見込み方向の略対称位置に位置するようになっている。すなわち、閉鎖位置にある障子3と開放位置にある障子3とが略同一の高さ位置に位置するようになっており、開放または閉鎖途中の障子3は、閉鎖位置および開放位置よりも若干上側にずれた位置を通過するようになっている。ただし、障子3の突没距離に比べて支持アーム43の回動半径(ピン44,45間の距離)を比較的大きく(例えば、2倍以上などに)設定しておくことで、障子3の上側へのずれ量を極めて小さくすることができる。具体的には、例えば、障子3の突没距離を25mm、支持アーム43の回動半径を65mm程度に設定したとすると、開閉中間位置における障子3の上側へのずれ量が1mm程度となる。このように障子3の突没移動の軌跡が、見込み方向に沿った直線移動の軌跡に近似しているので、設計上、障子3の上側へのずれ量をほぼ無視しても大きな問題を生じないようにできる。
【0022】
次に、障子操作部5は、図3〜図6および図9に示すように、扉体2の左右の開口端縁23における高さ方向略中間位置の室内側側面に固定されたベース部51と、このベース部51に回動自在かつ見込み方向にスライド自在に支持された操作アーム52と、この操作アーム52に回動自在に連結されかつベース部51に対して見込み方向にスライド自在に支持されたスライド部材53と、このスライド部材53を室外側に向かって付勢する図示しない付勢手段とを有して構成されている。
ベース部51の略下半分は、分割されて下方にスライド自在に設けられたスライドベース部51Aとされており、後述するように障子3をメンテナンス位置に移動させる際にスライド操作可能になっている。
【0023】
左右一対の操作アーム52同士は、操作ハンドル54で連結されており、これらの操作アーム52および操作ハンドル54によって本発明の操作部材が構成されている。そして、操作ハンドル54を操作して操作アーム52を、図3、4の状態から図5、6の状態に回動させることで付勢手段に付勢されたスライド部材53が室外側に向かってスライドされ、逆方向に操作アーム52を回動することで付勢手段の付勢力に抗してスライド部材53が室内側に向かってスライドされるようになっている。また、スライド部材53が室内側または室外側にスライドされた二位置において、それぞれ操作アーム52の室外側側面がスライドベース部51Aの室内側側面に当接することで、操作アーム52およびスライド部材53が位置決めされるようになっている。
【0024】
スライド部材53の室外側先端部には、上方に開口して上下に長く形成された係止溝53Aが形成されており、この係止溝53Aには、障子3の縦框33の高さ方向略中間位置に固定された被係止ピン55が挿入されている。そして、被係止ピン55は、スライド部材53の係止溝53Aによって、見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている。従って、操作アーム52の回動によるスライド部材53のスライドに伴って、係止溝53Aおよび被係止ピン55を介してスライド部材53に連結された障子3が見込み方向に突没移動されるようになっている。そして、前述したように、突没移動に際して障子3が上側にずれることとなるが、被係止ピン55が係止溝53A内で上下に摺動することで、上側へのずれが吸収されて障子3の突没移動が規制されないようになっている。
【0025】
以上のような障子支持部4および障子操作部5によって開閉可能に支持された障子3は、図10および図11に示すように、開放位置よりもさらに室外側に突出したメンテナンス位置まで開放できるようになっている。
図10および図11は、それぞれドア1を示す縦断面図および横断面図であり、障子3をメンテナンス位置まで開いた状態を示している。
このメンテナンス位置まで障子3を開放した状態において、扉体2と障子3との間に形成される隙間から手や工具を挿入することで、障子支持部4の連結を解除して障子3を扉体2から取り外したり、通気部32A,33Aの網を交換または掃除したりすることができるようになっている。
【0026】
このようなメンテナンス位置へ障子3を開放するためには、先ず、図5に示すように操作アーム52を下方に回動させた状態で、スライドベース部51Aを図10に示すように操作アーム52よりも下方までスライドさせる。これによりスライドベース部51Aと操作アーム52との当接が解除され、操作アーム52が室外側にスライド可能になる。次に、操作アーム52を室外側に押し出すことで、スライド部材53が室外側にスライドされ、このスライドに伴ってスライド部材53に連結された障子3がメンテナンス位置まで突出される。この際、障子支持部4の支持アーム43は、図8に二点鎖線で示す位置まで回動し、そのピン(他端側連結部)45が回動軌跡Cに沿って下方に移動する。つまり、障子3全体が下方に下がることとなるが、障子3の被係止ピン55がスライド部材53の係止溝53A内を下側に摺動するため、障子3の移動が規制されないようになっている。
【0027】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、扉体2の開口端縁23と障子3の縦框33とが支持アーム43で直接連結され、この支持アーム43の回動軌跡に沿って障子3が突没移動されるので、複雑なリンク機構等を用いることなく障子3を支持することができ、障子支持部4の構造を簡単化して部品点数を削減し、製造コストを抑制することができる。さらに、障子支持部4が左右の開口端縁23の上部および下部に設けられているので、障子3を開放した状態で障子支持部4が目立たないようにでき、ドア1の外観意匠性を良好にすることができる。
【0028】
(2)さらに、障子3の閉鎖位置と開放位置とで支持アーム43のピン(他端側連結部)45の位置が軸線Aに対して見込み方向に略線対称になるように構成されているので、閉鎖位置と開放位置とで障子3が略同一の高さ位置となり、開放状態におけるドア1の意匠性や障子3の開閉操作の操作性を良好にすることができる。さらに、開閉移動中の障子3が閉鎖位置および開放位置から上側にずれるずれ量を小さくすることができ、扉体2の開口端縁23と障子3とのクリアランスを小さくすることができる。
【0029】
(3)また、支持アーム43が左右の開口端縁23に支持され略鉛直面内で回動し、図8に実線で示す状態で開放位置にある障子3を支持するように構成されているので、障子3の重量の大半が支持アーム43の軸力として扉体2に伝達されるため、支持アーム43に大きな曲げ応力が作用せず、支持アーム43の部材断面を小さくすることができ、この点でも製造コストの増加を抑制することができる。さらに、メンテナンス位置に障子3が開放された状態においては、上部障子支持部4Aの支持アーム43に形成された当接面部43Bが、枠側ブラケット41の背面部41Cに当接するようになっているため、メンテナンス位置に開放された障子3を確実に支持することができる。
【0030】
(4)また、開口端縁23における下側の支持アーム43同士が回転軸46で連結されているので、障子3の開閉操作の際に、左右いずれか一方の支持アーム43だけが回動し他方が回動せずに障子3が左右に捻れるようなことがなく、開閉操作の操作性を良好にすることができる。さらに、回転軸46が障子3の下框32の下側に沿って設けられているので、回転軸46を目立たなくすることができ、障子3開放時におけるドア1の意匠性をより一層向上させることができる。
【0031】
(5)また、障子支持部4とは別に開口端縁23の略中間位置に設けられた障子操作部5で障子3が開閉操作されるので、障子操作部5には障子3の重量がほとんど作用せず、小さな操作力でスムーズに開閉操作を実施することができる。そして、障子操作部5のスライド部材53に形成した係止溝53Aで障子3の被係止ピン55が上下に摺動自在に係止されているので、開閉途中における障子3が支持アーム43の回動軌跡Cに沿って円弧状に移動して上側にずれても、このずれを係止溝53Aで吸収することができ、障子3の移動を拘束することなくスムーズな開閉操作を実現することができる。
【0032】
(6)また、障子3を開放位置まで開放した状態において、障子3の上框31、下框32、および左右の縦框33と扉体2の上下左右の開口端縁21,22,23との隙間が、障子3の止水片部31Aおよび通気部32A,33Aで覆われるので、雨の浸入や虫等の侵入を防止しつつ、通気部32A,33Aを通して通気や換気が実施でき、室内の居住性を向上することができる。さらに、障子操作部5の操作により障子3をメンテナンス位置まで開放すれば、障子3を扉体2から取り外したり、通気部32A,33Aの掃除したり等のメンテナンス作業を容易に実施することができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る建具であるドア1Aについて、図12に基づいて説明する。
図12は、第2実施形態のドア1Aを示す縦断面図であり、障子3を開いた状態を示している。
本実施形態のドア1Aは、前記第1実施形態のドア1に対して障子操作部5の構成が相違するのみで、その他の構成は、第1実施形態と略同様である。以下、相違点について説明する。
【0034】
図12において、ドア1Aに設けられた障子操作部5は、第1実施形態と同様にベース部51と、操作アーム52と、スライド部材53と、付勢手段(不図示)とを有して構成されている。そして、スライド部材53の室外側端部には、障子3の縦框33に沿って上下に延びる鉛直片部53Bが設けられている。そして、鉛直片部53Bの上端部および下端部に前記係止溝53Aと同様に上下に長く形成された2つの係止溝53Aが形成されている。また、障子3の縦框33には、前記被係止ピン55と同様の被係止ピン55が二箇所に設けられ、これらの被係止ピン55がそれぞれ二箇所の係止溝53Aに、見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている。
【0035】
このような障子操作部5では、操作アーム52の回動によるスライド部材53のスライドに伴って、鉛直片部53B、係止溝53Aおよび被係止ピン55を介して障子3が見込み方向に突没移動されるようになっている。そして、第1実施形態と同様に、突没移動に際して支持アーム43の回動軌跡に沿って障子3が上側にずれる、あるいはメンテナンス位置への移動に際して障子3が下がったとしても、被係止ピン55が係止溝53Aに沿って上下に摺動することで、障子3の突没移動が規制されないようになっている。
【0036】
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(6)の効果に加えて以下のような効果がある。
(7)すなわち、スライド部材53に設けた鉛直片部53Bの上下二箇所の係止溝53Aで障子3の被係止ピン55を係止し、これら二箇所で障子3を押し引きして突没移動させることで、障子3を見込み方向に沿って直線的に移動させることができ、障子3が上下に傾いて移動されるような異常な開閉が防止でき、開閉操作の操作性をさらに良好にすることができる。
【0037】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る建具であるドア1Bについて、図13および図14に基づいて説明する。
図13は、第3実施形態のドア1Bを示す姿図であって、室外側から見た外観姿図である。図14は、ドア1Bを示す横断面図であり、障子3を閉じた状態を示している。
本実施形態のドア1Bは、前記第1および第2実施形態のドア1,1Aにおける障子3の室外側にガラスパネル34を覆って格子体6を取り付けたもので、扉体2や障子3、障子支持部4、障子操作部5の構成は、第1または第2実施形態と略同様である。
【0038】
図13および図14において、格子体6は、障子3の縦框33の室外側側面に室内側からビス止め固定された左右一対の縦枠材61と、これらの縦枠材61間に渡って固定された複数の横材62と、これらの横材62に交差して横材62の室外側に固定された複数の縦材63とを有して構成されている。そして、格子体6は、障子3の開閉移動に伴って障子3と一体に開閉されるようになっている。このような格子体6は、前述したように障子3をメンテナンス位置に開放した状態で、室内側からビスを外すことで、障子3に対して脱着可能に構成されている。また、前記止水片部31Aおよび通気部32A,33Aを格子体6に形成し、格子体6の脱着とともに止水片部31Aや通気部32A,33Aの交換、清掃等が実施できるように構成してもよい。
【0039】
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(6)および(7)の効果に加えて以下のような効果がある。
(8)すなわち、障子3におけるガラスパネル34の室外側を覆う格子体6を設けたことで、ガラス破り等の不法行為を防止することができ、ドア1Bの防犯性を向上させることができる。さらに、格子体6が室内側からビス止め固定されているので、障子3が閉鎖位置および開放位置にある状態において、室外側から格子体6を取り外すことができず、防犯性をさらに向上させることができる。また、障子3をメンテナンス位置に移動させれば、室内側からビスを外すことで室外側から格子体6を取り外すことができるので、交換や補修等を容易に実施することができる。
【0040】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態では、建具として出入り口に設けられるドア1,1A,1Bについて説明したが、本発明の建具は、ドアに限らず、窓であってもよい。そして、建具の枠体としては、ドア1,1A,1Bの扉体2に限らず、建物に固定された窓枠や、建物の躯体に形成された開口部であってもよい。
【0041】
また、前記各実施形態では、障子支持部4を開口部2Aの左右の開口端縁23に設け、障子3の縦框33に支持アーム43を連結したが、これに限らず、障子支持部4を開口部2Aの上下の開口端縁21,22に設けて、障子3の上框31および下框32に支持アーム43を連結してもよく、さらに障子支持部4を開口部2Aの上下左右の開口端縁21,22,23に設けて、障子3の上框31、下框32、および左右の縦框33に支持アーム43を連結してもよい。
【0042】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建具を示す室内側から見た姿図である。
【図2】前記建具を室外側から見た姿図である。
【図3】前記建具を示す縦断面図である。
【図4】前記建具を示す横断面図である。
【図5】前記建具において面材が開放位置にある状態を示す縦断面図である。
【図6】前記建具において面材が開放位置にある状態を示す横断面図である。
【図7】前記建具における面材の支持構造を示す横断面図である。
【図8】(A),(B)は、前記支持構造の動作を示す側面図である。
【図9】前記建具における面材の開閉操作部を示す横断面図である。
【図10】前記建具において面材がメンテナンス位置にある状態を示す縦断面図である。
【図11】前記建具において面材がメンテナンス位置にある状態を示す横断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る建具を示す室外側から見た姿図である。
【図14】前記建具を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0044】
2…枠体である扉体、2A…開口部、3…面材である障子、21,22,23…開口端縁、43…支持アーム、44…一端側連結部であるピン、45…他端側連結部であるピン、46…連結部材である回転軸、52…操作部材である操作アーム、53…スライド部材、53B…鉛直片部、54…操作部材である操作ハンドル、A…軸線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関し、詳しくは、枠体の開口を塞ぐ閉鎖位置と枠体の見込み方向一方側に突出した開放位置との間を開閉移動可能な面材を有した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
面材が窓枠等の枠体から突出して開放される突出し窓(押出し窓)等の建具が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1および特許文献2に記載された突出し窓は、それぞれ面材(特許文献1ではガラス障子、特許文献2では窓本体)が枠体に対して略平行に突没することで開閉するように構成されている。
すなわち、特許文献1の突出し窓において、枠体には、左右一対のガイド部材と、これらのガイド部材に案内されて見込み方向に進退可能な一対のスライド部材とが設けられ、このスライド部材に取り付けられた面材がスライド部材の進退移動に伴って突没可能に支持されている。そして、特許文献1の突出し窓では、ガイド部材に軸支された回転レバーとスライド部材とがアーム部材(押し出しアーム)で連結されており、回転レバーを回動操作することでアーム部材を介してスライド部材が進退移動され、これにより面材が開閉操作可能に構成されている。
【0003】
一方、特許文献2の突出し窓において、面材は、その上下左右の各辺がパンタグラフ機構(支持機構)等の平行リンク機構を介して枠体に支持されており、これらの平行リンク機構の見込み方向への伸縮に伴って面材が突没可能に支持されている。そして、特許文献2の突出し窓では、枠体に軸支されるとともに見込み方向に進退自在に支持されたアーム部材(揺動アーム)に面材が連結されており、このアーム部材を回動操作してから見込み方向に突没操作することで、面材が開閉操作可能に構成されている。
【0004】
【特許文献1】実登第2532939号公報
【特許文献2】特開平10−2149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、2に記載された従来の突出し窓では、枠体に対して略平行に突没可能に面材を支持する支持構造(ガイド部材およびスライド部材で構成された特許文献1の機構や、特許文献2の平行リンク機構)が複雑になって部品点数が増加し、製造コストの増大を招いてしまうという問題がある。
さらに、従来の突出し窓では、面材の開放時において複雑な支持構造が枠体の開口部に露出するために、窓の外観意匠性が損なわれてしまうという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構造にできてコスト増加を招くことなく、かつ外観を良好にすることができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、開口部を有した枠体と、この枠体に支持された面材とを備え、この面材が前記枠体の開口部を塞ぐ閉鎖位置と、前記枠体の見込み方向一方側に突出した開放位置との間を開閉移動可能に設けられた突出し形式の建具であって、前記枠体の前記開口部を形成する開口端縁には、当該開口部を挟んで互いに対向する少なくとも一対の支持アームが設けられ、これら一対の支持アームは、それぞれ一端側が前記開口端縁に回動自在に連結され、かつ他端側が前記面材に回動自在に連結され、前記一対の支持アームは、前記開口端縁の長手方向に沿って互いに離隔した位置に複数組が設けられるとともに、これら複数組のうちの少なくとも一組における一対の支持アーム同士が互いの回動を同期させる同期手段で接続されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、枠体としては、建物等の躯体に固定されたものでもよく、また枠体自身が躯体等に開閉移動可能に支持されたものでもよい。
また、面材としては、ガラスパネルや樹脂製パネル等の板材から形成されたものでもよく、上下左右の框材を四周框組みした内部に板材を嵌め込んで形成された障子でもよい。
さらに、支持アームの一端部が回動自在に連結される少なくとも一対の開口端縁としては、例えば、枠体の開口部が矩形状に形成された場合であれば、その開口部を形成する左右の二端縁(縦辺)であってもよく、また上下の二端縁(横辺)であってもよい。さらに、上下左右の四端縁の全てに支持アームの一端部が連結されていてもよく、この場合には、上下の開口端縁に連結された支持アーム同士が一対とされ、左右の開口端縁に連結された支持アーム同士が一対とされればよい。
また、一対の支持アーム同士を同期させる同期手段としては、支持アーム同士を直接連結する連結部材等で構成されていてもよく、またギアやベルト、ロープ(ワイヤ)、プーリ、滑車等を用いた連動手段を介して接続されていてもよい。
【0009】
以上の本発明によれば、枠体と面材とを支持アームで直接連結し、この支持アームの回動により面材を突没移動自在に構成したので、従来のような複雑な支持構造を用いなくてもよく、支持構造を簡単化して部品点数を削減し、建具の製造コストを抑制することができる。すなわち、従来の支持構造では、ガイド部材およびスライド部材で構成した機構や平行リンク機構によって、枠体に対して見込み方向に直線的に面材が突没されるのに対し、本発明では、支持アームの回動軌跡(円弧)に沿って面材が突没されるようになっている。そして、支持アームの長さ(一端側連結部と他端側連結部との距離)や、枠体と面材とのクリアランス等を適宜設定することで、面材の開閉移動に支障をきたさないようにしつつ支持構造を簡単にすることができる。また、複数組の支持アームごとに長さを同一にすれば、枠体に対して平行を維持させたまま面材を突没させることができ、複数組の支持アームごとに長さを適宜変更すれば、枠体に対して角度を持たせて面材を突没させることもできる。
また、枠体の開口端縁の長手方向に沿って互いに離隔した位置に複数組の支持アームを設けたことで、開口端縁の中央付近の目立つ位置を避けて支持構造を設置するなど配置の自由度を高めることができ、面材を開放した状態で支持構造が目立たないようにして建具の外観意匠性を良好にすることができる。
さらに、少なくとも一対の支持アーム同士を同期手段で接続したことで、開閉操作の際に、一対の支持アームのうちのいずれか一方だけが回動し他方が回動せずに面材が枠体に対して捻れて突没される異常な開閉が防止でき、開閉操作の操作性を良好にすることができる。
【0010】
この際、本発明の建具では、前記面材が閉鎖位置にある場合の前記支持アームの他端側連結部と、前記面材が開放位置にある場合の当該支持アームの他端側連結部とは、前記開口端縁の長手方向に沿った軸線であり、かつ当該支持アームの一端側連結部を通る軸線に対し、見込み方向の略対称位置に位置することが好ましい。
このような構成によれば、面材の閉鎖位置と開放位置とで支持アームの他端側連結部が見込み方向に略線対称位置になるように構成したことで、閉鎖位置にある面材を見込み方向に直線的に突出させたのと略同一の開放位置に面材が突出され、開放状態における建具の意匠性や開閉操作の操作性を良好にすることができる。
【0011】
また、本発明の建具では、前記枠体の開口部は、上下および左右の開口端縁から略矩形状に形成されており、前記一対の支持アームは、前記左右の開口端縁における上部および下部に二組が設けられ、これら二組のうちの下部に設けられた一対の支持アーム同士を連結する連結部材で前記同期手段が構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、開口部の左右の開口端縁に支持アームを設けたことで、支持アームと開口端縁および面材とが略水平な回動軸回りに回動自在に連結され、支持アームが鉛直面に沿って縦に回動されることとなる。そして、左右の開口端縁における下部の支持アーム同士を連結部材で連結して、これらの支持アームの回動を同期させるようにしたことで、この連結部材を面材の下端縁に近い位置や面材の下端縁で覆われる位置に設ければ、連結部材を目立たなくすることができ、開放時における建具の意匠性をより一層向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の建具では、前記左右の開口端縁における高さ方向略中間位置には、前記枠体の見込み方向に沿ってスライド自在に支持されたスライド部材と、このスライド部材をスライド移動させる操作部材とが設けられ、前記スライド部材に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されていることが好ましい。
このような構成によれば、操作部材を操作してスライド部材を見込み方向にスライドさせることで、スライド部材に対して見込み方向に移動不能に係止された面材を突没させて、建具を容易に開閉操作することができる。そして、開閉途中における面材が前述のように支持アームの回動軌跡に沿って円弧状に移動しても、面材がスライド部材に対して上下方向に移動可能に係止されているので、面材の移動を拘束することがなく、スムーズな開閉操作を実現することができる。
【0013】
さらに、本発明の建具では、前記スライド部材の前記面材側端部には、上下に延びる鉛直片部が設けられ、この鉛直片部の上端部および下端部の二箇所に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されていることが好ましい。
このような構成によれば、スライド部材に設けた鉛直片部の上下二箇所を面材に係止し、これら二箇所で面材を押し引きして突没移動させることで、面材の上部および下部の一方が回動し他方が回動せずに枠体に対して傾いて突没される異常な開閉が防止でき、開閉操作の操作性をさらに良好にすることができる。
【0014】
また、本発明の建具は、建物の出入口に開閉可能に設けられた扉体から前記枠体が構成されるとともに、この扉体に対して室外側に突出して前記面材が開閉可能に設けられたドアであることが好ましい。
このような構成によれば、扉体に面材を突没開閉可能に支持させたことで、前述の各作用効果を有したドアを構成することができるとともに、扉体を閉じた施錠状態で面材を開放すれば、防犯性を有したままで通気や換気を実施することができ、快適な室内環境を得ることができる。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1および図2は、それぞれ本発明の第1実施形態に係る建具であるドア1を示す姿図であって、図1は、ドア1を室内側から見た内観姿図であり、図2は、ドア1を室外側から見た外観姿図である。図3および図4は、それぞれドア1を示す縦断面図および横断面図であり、障子3を閉じた状態を示している。図5および図6は、それぞれドア1を示す縦断面図および横断面図であり、障子3を開いた状態を示している。ここで、図3および図5は、図1に矢視III −III 線(矢視V−V線)で示す断面図であり、図4および図6は、図1に矢視IV−IV線(矢視VI−VI線)で示す断面図である。
図1〜図6において、ドア1は、戸建て住宅や集合住宅等の建物の出入り口(玄関や勝手口)に設けられて建物の室内空間と室外空間とを仕切るとともに、開閉することで居住者等が出入り可能、かつ施錠することで防犯性を有して構成されたものである。なお、各図において、ドア1が取り付けられる建物の外壁や、外壁に固定されたドア枠等の図示を省略した。
【0017】
ドア1は、金属製の板材を組み合わせて全体略矩形状に形成された枠体としての扉体2と、この扉体2の開口部2A部分に支持された面材としての障子3と、扉体2をヒンジを介して開閉可能に支持するドア枠(不図示)とを備えて構成されている。扉体2の略中央部には、上下左右の開口端縁21,22,23(図5、6参照)から縦長矩形状に形成された開口部2Aが設けられている。
障子3は、上框31、下框32、および左右の縦框33を四周框組みした内部に、ガラスパネル34を嵌め込んで構成されている。この障子3は、扉体2の開口部2Aを塞ぐ閉鎖位置(図3および図4の位置)と、扉体2の見込み方向室外側に突出した開放位置(図5および図6の位置)との間を突没移動可能に支持されている。そして、障子3の上框31には、室内側に向かって突出した止水片部31Aが形成され、下框32および左右の縦框33には、室内側に向かって突出して網で覆われた通気部32A,33Aが形成されている。これらの止水片部31Aおよび通気部32A,33Aは、開放位置における障子3の上框31、下框32、および左右の縦框33と扉体2の上下左右の開口端縁21,22,23との隙間を覆うようになっており、これによって上方からの雨の浸入を防止するとともに虫や埃等の侵入を防止しつつ、通気部32A,33Aを通して通気や換気が実施できるようになっている。
【0018】
そして、ドア1には、障子3を見込み方向に突没移動可能に支持する障子支持部4と、障子3を開閉操作するための障子操作部5とが設けられている。以下、障子支持部4および障子操作部5の構造について、図7〜図9も参照して詳しく説明する。
図7は、障子支持部4を示す横断面図であり、図8(A),(B)は、障子支持部4の動作を示す側面図である。図9は、障子操作部5を示す横断面図である。なお、図7および図9は、それぞれ障子3を後述するメンテナンス位置まで開放した状態における障子支持部4および障子操作部5を示している。
【0019】
障子支持部4は、扉体2の左右の開口端縁(縦開口端縁)23における上下に離隔した位置である上部および下部に、それぞれ開口部2Aを挟んで互いに対向して一対ずつが2組(4箇所に)設けられている。これらの障子支持部4は、図7に示すように、開口端縁23に固定された枠側ブラケット41と、障子3の縦框33に固定された障子側ブラケット42と、これらの枠側ブラケット41および障子側ブラケット42に両端部がそれぞれ軸支された支持アーム43とを有して構成されている。支持アーム43は、その一端側がピン(一端側連結部)44によって略水平な回動軸回りに回動自在に枠側ブラケット41に連結されるとともに、他端側がピン(他端側連結部)45によって略水平な回動軸回りに回動自在に障子側ブラケット42に連結され、略鉛直な面内で回動可能に構成されている。
【0020】
枠側ブラケット41は、折り曲げた板材から断面略コ字形に形成され、対向する一方の側面部41Aが扉体2の開口端縁23にビス止め固定され、他方の側面部41Bに支持アーム43の一端側が連結されている。そして、枠側ブラケット41の他方の側面部上面は、円弧状に形成されており、この上面により支持アーム43の側面から突出して設けられた突出ピン43Aを案内することができるようになっている。
また、左右の開口端縁23における上部に設けられた障子支持部4(上部障子支持部4A)の支持アーム43のピン44を挟んで他端側のピン45と反対側端部には、後述するメンテナンス位置まで障子3が開放された際に、枠側ブラケット41の背面部41Cに当接する当接面部43Bが形成されている。
一方、左右の開口端縁23における下部に設けられた障子支持部4(下部障子支持部4B)の支持アーム43同士は、枠側ブラケット41の他方の側面部41Bを貫通するとともに障子3の下框32の下側に沿って延びる回転軸(連結部材)46で互いに連結されており、この回転軸46により一対の支持アーム43同士の回動を同期させる同期手段が構成されている。
【0021】
以上の各障子支持部4における支持アーム43のピン(他端側連結部)45は、図8に示すように、円弧状の回動軌跡Cを描いて回動するようになっており、障子3が閉鎖位置にある状態(図中、一点鎖線で示す)と、障子3が開放位置にある状態(図中、実線で示す)とで、開口端縁23の長手方向に沿いかつ支持アーム43のピン(一端側連結部)44を通る軸線Aに対して見込み方向の略対称位置に位置するようになっている。すなわち、閉鎖位置にある障子3と開放位置にある障子3とが略同一の高さ位置に位置するようになっており、開放または閉鎖途中の障子3は、閉鎖位置および開放位置よりも若干上側にずれた位置を通過するようになっている。ただし、障子3の突没距離に比べて支持アーム43の回動半径(ピン44,45間の距離)を比較的大きく(例えば、2倍以上などに)設定しておくことで、障子3の上側へのずれ量を極めて小さくすることができる。具体的には、例えば、障子3の突没距離を25mm、支持アーム43の回動半径を65mm程度に設定したとすると、開閉中間位置における障子3の上側へのずれ量が1mm程度となる。このように障子3の突没移動の軌跡が、見込み方向に沿った直線移動の軌跡に近似しているので、設計上、障子3の上側へのずれ量をほぼ無視しても大きな問題を生じないようにできる。
【0022】
次に、障子操作部5は、図3〜図6および図9に示すように、扉体2の左右の開口端縁23における高さ方向略中間位置の室内側側面に固定されたベース部51と、このベース部51に回動自在かつ見込み方向にスライド自在に支持された操作アーム52と、この操作アーム52に回動自在に連結されかつベース部51に対して見込み方向にスライド自在に支持されたスライド部材53と、このスライド部材53を室外側に向かって付勢する図示しない付勢手段とを有して構成されている。
ベース部51の略下半分は、分割されて下方にスライド自在に設けられたスライドベース部51Aとされており、後述するように障子3をメンテナンス位置に移動させる際にスライド操作可能になっている。
【0023】
左右一対の操作アーム52同士は、操作ハンドル54で連結されており、これらの操作アーム52および操作ハンドル54によって本発明の操作部材が構成されている。そして、操作ハンドル54を操作して操作アーム52を、図3、4の状態から図5、6の状態に回動させることで付勢手段に付勢されたスライド部材53が室外側に向かってスライドされ、逆方向に操作アーム52を回動することで付勢手段の付勢力に抗してスライド部材53が室内側に向かってスライドされるようになっている。また、スライド部材53が室内側または室外側にスライドされた二位置において、それぞれ操作アーム52の室外側側面がスライドベース部51Aの室内側側面に当接することで、操作アーム52およびスライド部材53が位置決めされるようになっている。
【0024】
スライド部材53の室外側先端部には、上方に開口して上下に長く形成された係止溝53Aが形成されており、この係止溝53Aには、障子3の縦框33の高さ方向略中間位置に固定された被係止ピン55が挿入されている。そして、被係止ピン55は、スライド部材53の係止溝53Aによって、見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている。従って、操作アーム52の回動によるスライド部材53のスライドに伴って、係止溝53Aおよび被係止ピン55を介してスライド部材53に連結された障子3が見込み方向に突没移動されるようになっている。そして、前述したように、突没移動に際して障子3が上側にずれることとなるが、被係止ピン55が係止溝53A内で上下に摺動することで、上側へのずれが吸収されて障子3の突没移動が規制されないようになっている。
【0025】
以上のような障子支持部4および障子操作部5によって開閉可能に支持された障子3は、図10および図11に示すように、開放位置よりもさらに室外側に突出したメンテナンス位置まで開放できるようになっている。
図10および図11は、それぞれドア1を示す縦断面図および横断面図であり、障子3をメンテナンス位置まで開いた状態を示している。
このメンテナンス位置まで障子3を開放した状態において、扉体2と障子3との間に形成される隙間から手や工具を挿入することで、障子支持部4の連結を解除して障子3を扉体2から取り外したり、通気部32A,33Aの網を交換または掃除したりすることができるようになっている。
【0026】
このようなメンテナンス位置へ障子3を開放するためには、先ず、図5に示すように操作アーム52を下方に回動させた状態で、スライドベース部51Aを図10に示すように操作アーム52よりも下方までスライドさせる。これによりスライドベース部51Aと操作アーム52との当接が解除され、操作アーム52が室外側にスライド可能になる。次に、操作アーム52を室外側に押し出すことで、スライド部材53が室外側にスライドされ、このスライドに伴ってスライド部材53に連結された障子3がメンテナンス位置まで突出される。この際、障子支持部4の支持アーム43は、図8に二点鎖線で示す位置まで回動し、そのピン(他端側連結部)45が回動軌跡Cに沿って下方に移動する。つまり、障子3全体が下方に下がることとなるが、障子3の被係止ピン55がスライド部材53の係止溝53A内を下側に摺動するため、障子3の移動が規制されないようになっている。
【0027】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、扉体2の開口端縁23と障子3の縦框33とが支持アーム43で直接連結され、この支持アーム43の回動軌跡に沿って障子3が突没移動されるので、複雑なリンク機構等を用いることなく障子3を支持することができ、障子支持部4の構造を簡単化して部品点数を削減し、製造コストを抑制することができる。さらに、障子支持部4が左右の開口端縁23の上部および下部に設けられているので、障子3を開放した状態で障子支持部4が目立たないようにでき、ドア1の外観意匠性を良好にすることができる。
【0028】
(2)さらに、障子3の閉鎖位置と開放位置とで支持アーム43のピン(他端側連結部)45の位置が軸線Aに対して見込み方向に略線対称になるように構成されているので、閉鎖位置と開放位置とで障子3が略同一の高さ位置となり、開放状態におけるドア1の意匠性や障子3の開閉操作の操作性を良好にすることができる。さらに、開閉移動中の障子3が閉鎖位置および開放位置から上側にずれるずれ量を小さくすることができ、扉体2の開口端縁23と障子3とのクリアランスを小さくすることができる。
【0029】
(3)また、支持アーム43が左右の開口端縁23に支持され略鉛直面内で回動し、図8に実線で示す状態で開放位置にある障子3を支持するように構成されているので、障子3の重量の大半が支持アーム43の軸力として扉体2に伝達されるため、支持アーム43に大きな曲げ応力が作用せず、支持アーム43の部材断面を小さくすることができ、この点でも製造コストの増加を抑制することができる。さらに、メンテナンス位置に障子3が開放された状態においては、上部障子支持部4Aの支持アーム43に形成された当接面部43Bが、枠側ブラケット41の背面部41Cに当接するようになっているため、メンテナンス位置に開放された障子3を確実に支持することができる。
【0030】
(4)また、開口端縁23における下側の支持アーム43同士が回転軸46で連結されているので、障子3の開閉操作の際に、左右いずれか一方の支持アーム43だけが回動し他方が回動せずに障子3が左右に捻れるようなことがなく、開閉操作の操作性を良好にすることができる。さらに、回転軸46が障子3の下框32の下側に沿って設けられているので、回転軸46を目立たなくすることができ、障子3開放時におけるドア1の意匠性をより一層向上させることができる。
【0031】
(5)また、障子支持部4とは別に開口端縁23の略中間位置に設けられた障子操作部5で障子3が開閉操作されるので、障子操作部5には障子3の重量がほとんど作用せず、小さな操作力でスムーズに開閉操作を実施することができる。そして、障子操作部5のスライド部材53に形成した係止溝53Aで障子3の被係止ピン55が上下に摺動自在に係止されているので、開閉途中における障子3が支持アーム43の回動軌跡Cに沿って円弧状に移動して上側にずれても、このずれを係止溝53Aで吸収することができ、障子3の移動を拘束することなくスムーズな開閉操作を実現することができる。
【0032】
(6)また、障子3を開放位置まで開放した状態において、障子3の上框31、下框32、および左右の縦框33と扉体2の上下左右の開口端縁21,22,23との隙間が、障子3の止水片部31Aおよび通気部32A,33Aで覆われるので、雨の浸入や虫等の侵入を防止しつつ、通気部32A,33Aを通して通気や換気が実施でき、室内の居住性を向上することができる。さらに、障子操作部5の操作により障子3をメンテナンス位置まで開放すれば、障子3を扉体2から取り外したり、通気部32A,33Aの掃除したり等のメンテナンス作業を容易に実施することができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る建具であるドア1Aについて、図12に基づいて説明する。
図12は、第2実施形態のドア1Aを示す縦断面図であり、障子3を開いた状態を示している。
本実施形態のドア1Aは、前記第1実施形態のドア1に対して障子操作部5の構成が相違するのみで、その他の構成は、第1実施形態と略同様である。以下、相違点について説明する。
【0034】
図12において、ドア1Aに設けられた障子操作部5は、第1実施形態と同様にベース部51と、操作アーム52と、スライド部材53と、付勢手段(不図示)とを有して構成されている。そして、スライド部材53の室外側端部には、障子3の縦框33に沿って上下に延びる鉛直片部53Bが設けられている。そして、鉛直片部53Bの上端部および下端部に前記係止溝53Aと同様に上下に長く形成された2つの係止溝53Aが形成されている。また、障子3の縦框33には、前記被係止ピン55と同様の被係止ピン55が二箇所に設けられ、これらの被係止ピン55がそれぞれ二箇所の係止溝53Aに、見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている。
【0035】
このような障子操作部5では、操作アーム52の回動によるスライド部材53のスライドに伴って、鉛直片部53B、係止溝53Aおよび被係止ピン55を介して障子3が見込み方向に突没移動されるようになっている。そして、第1実施形態と同様に、突没移動に際して支持アーム43の回動軌跡に沿って障子3が上側にずれる、あるいはメンテナンス位置への移動に際して障子3が下がったとしても、被係止ピン55が係止溝53Aに沿って上下に摺動することで、障子3の突没移動が規制されないようになっている。
【0036】
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(6)の効果に加えて以下のような効果がある。
(7)すなわち、スライド部材53に設けた鉛直片部53Bの上下二箇所の係止溝53Aで障子3の被係止ピン55を係止し、これら二箇所で障子3を押し引きして突没移動させることで、障子3を見込み方向に沿って直線的に移動させることができ、障子3が上下に傾いて移動されるような異常な開閉が防止でき、開閉操作の操作性をさらに良好にすることができる。
【0037】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る建具であるドア1Bについて、図13および図14に基づいて説明する。
図13は、第3実施形態のドア1Bを示す姿図であって、室外側から見た外観姿図である。図14は、ドア1Bを示す横断面図であり、障子3を閉じた状態を示している。
本実施形態のドア1Bは、前記第1および第2実施形態のドア1,1Aにおける障子3の室外側にガラスパネル34を覆って格子体6を取り付けたもので、扉体2や障子3、障子支持部4、障子操作部5の構成は、第1または第2実施形態と略同様である。
【0038】
図13および図14において、格子体6は、障子3の縦框33の室外側側面に室内側からビス止め固定された左右一対の縦枠材61と、これらの縦枠材61間に渡って固定された複数の横材62と、これらの横材62に交差して横材62の室外側に固定された複数の縦材63とを有して構成されている。そして、格子体6は、障子3の開閉移動に伴って障子3と一体に開閉されるようになっている。このような格子体6は、前述したように障子3をメンテナンス位置に開放した状態で、室内側からビスを外すことで、障子3に対して脱着可能に構成されている。また、前記止水片部31Aおよび通気部32A,33Aを格子体6に形成し、格子体6の脱着とともに止水片部31Aや通気部32A,33Aの交換、清掃等が実施できるように構成してもよい。
【0039】
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(6)および(7)の効果に加えて以下のような効果がある。
(8)すなわち、障子3におけるガラスパネル34の室外側を覆う格子体6を設けたことで、ガラス破り等の不法行為を防止することができ、ドア1Bの防犯性を向上させることができる。さらに、格子体6が室内側からビス止め固定されているので、障子3が閉鎖位置および開放位置にある状態において、室外側から格子体6を取り外すことができず、防犯性をさらに向上させることができる。また、障子3をメンテナンス位置に移動させれば、室内側からビスを外すことで室外側から格子体6を取り外すことができるので、交換や補修等を容易に実施することができる。
【0040】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態では、建具として出入り口に設けられるドア1,1A,1Bについて説明したが、本発明の建具は、ドアに限らず、窓であってもよい。そして、建具の枠体としては、ドア1,1A,1Bの扉体2に限らず、建物に固定された窓枠や、建物の躯体に形成された開口部であってもよい。
【0041】
また、前記各実施形態では、障子支持部4を開口部2Aの左右の開口端縁23に設け、障子3の縦框33に支持アーム43を連結したが、これに限らず、障子支持部4を開口部2Aの上下の開口端縁21,22に設けて、障子3の上框31および下框32に支持アーム43を連結してもよく、さらに障子支持部4を開口部2Aの上下左右の開口端縁21,22,23に設けて、障子3の上框31、下框32、および左右の縦框33に支持アーム43を連結してもよい。
【0042】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建具を示す室内側から見た姿図である。
【図2】前記建具を室外側から見た姿図である。
【図3】前記建具を示す縦断面図である。
【図4】前記建具を示す横断面図である。
【図5】前記建具において面材が開放位置にある状態を示す縦断面図である。
【図6】前記建具において面材が開放位置にある状態を示す横断面図である。
【図7】前記建具における面材の支持構造を示す横断面図である。
【図8】(A),(B)は、前記支持構造の動作を示す側面図である。
【図9】前記建具における面材の開閉操作部を示す横断面図である。
【図10】前記建具において面材がメンテナンス位置にある状態を示す縦断面図である。
【図11】前記建具において面材がメンテナンス位置にある状態を示す横断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る建具を示す室外側から見た姿図である。
【図14】前記建具を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0044】
2…枠体である扉体、2A…開口部、3…面材である障子、21,22,23…開口端縁、43…支持アーム、44…一端側連結部であるピン、45…他端側連結部であるピン、46…連結部材である回転軸、52…操作部材である操作アーム、53…スライド部材、53B…鉛直片部、54…操作部材である操作ハンドル、A…軸線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有した枠体と、この枠体に支持された面材とを備え、この面材が前記枠体の開口部を塞ぐ閉鎖位置と、前記枠体の見込み方向一方側に突出した開放位置との間を開閉移動可能に設けられた突出し形式の建具であって、
前記枠体の前記開口部を形成する開口端縁には、当該開口部を挟んで互いに対向する少なくとも一対の支持アームが設けられ、これら一対の支持アームは、それぞれ一端側が前記開口端縁に回動自在に連結され、かつ他端側が前記面材に回動自在に連結され、
前記一対の支持アームは、前記開口端縁の長手方向に沿って互いに離隔した位置に複数組が設けられるとともに、これら複数組のうちの少なくとも一組における一対の支持アーム同士が互いの回動を同期させる同期手段で接続されている建具。
【請求項2】
前記面材が閉鎖位置にある場合の前記支持アームの他端側連結部と、前記面材が開放位置にある場合の当該支持アームの他端側連結部とは、前記開口端縁の長手方向に沿った軸線であり、かつ当該支持アームの一端側連結部を通る軸線に対し、見込み方向の略対称位置に位置する請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記枠体の開口部は、上下および左右の開口端縁から略矩形状に形成されており、
前記一対の支持アームは、前記左右の開口端縁における上部および下部に二組が設けられ、これら二組のうちの下部に設けられた一対の支持アーム同士を連結する連結部材で前記同期手段が構成されている請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記左右の開口端縁における高さ方向略中間位置には、前記枠体の見込み方向に沿ってスライド自在に支持されたスライド部材と、このスライド部材をスライド移動させる操作部材とが設けられ、
前記スライド部材に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記スライド部材の前記面材側端部には、上下に延びる鉛直片部が設けられ、この鉛直片部の上端部および下端部の二箇所に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている請求項4に記載の建具。
【請求項6】
建物の出入口に開閉可能に設けられた扉体から前記枠体が構成されるとともに、この扉体に対して室外側に突出して前記面材が開閉可能に設けられたドアである請求項1から請求項5のいずれかに記載の建具。
【請求項1】
開口部を有した枠体と、この枠体に支持された面材とを備え、この面材が前記枠体の開口部を塞ぐ閉鎖位置と、前記枠体の見込み方向一方側に突出した開放位置との間を開閉移動可能に設けられた突出し形式の建具であって、
前記枠体の前記開口部を形成する開口端縁には、当該開口部を挟んで互いに対向する少なくとも一対の支持アームが設けられ、これら一対の支持アームは、それぞれ一端側が前記開口端縁に回動自在に連結され、かつ他端側が前記面材に回動自在に連結され、
前記一対の支持アームは、前記開口端縁の長手方向に沿って互いに離隔した位置に複数組が設けられるとともに、これら複数組のうちの少なくとも一組における一対の支持アーム同士が互いの回動を同期させる同期手段で接続されている建具。
【請求項2】
前記面材が閉鎖位置にある場合の前記支持アームの他端側連結部と、前記面材が開放位置にある場合の当該支持アームの他端側連結部とは、前記開口端縁の長手方向に沿った軸線であり、かつ当該支持アームの一端側連結部を通る軸線に対し、見込み方向の略対称位置に位置する請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記枠体の開口部は、上下および左右の開口端縁から略矩形状に形成されており、
前記一対の支持アームは、前記左右の開口端縁における上部および下部に二組が設けられ、これら二組のうちの下部に設けられた一対の支持アーム同士を連結する連結部材で前記同期手段が構成されている請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記左右の開口端縁における高さ方向略中間位置には、前記枠体の見込み方向に沿ってスライド自在に支持されたスライド部材と、このスライド部材をスライド移動させる操作部材とが設けられ、
前記スライド部材に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記スライド部材の前記面材側端部には、上下に延びる鉛直片部が設けられ、この鉛直片部の上端部および下端部の二箇所に前記面材が見込み方向に移動不能かつ上下方向に移動可能に係止されている請求項4に記載の建具。
【請求項6】
建物の出入口に開閉可能に設けられた扉体から前記枠体が構成されるとともに、この扉体に対して室外側に突出して前記面材が開閉可能に設けられたドアである請求項1から請求項5のいずれかに記載の建具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−328822(P2006−328822A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154481(P2005−154481)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
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