説明

建具

【課題】召合せ部における気密・水密性能を十分に高めることができる建具を提供すること。
【解決手段】上部障子20の下端部(下框22および縦框23の下端部)に設けた横気密材223と、引寄せ部材50の第1気密片部521とが接続(当接)され、かつ下部障子の上端部に当接されるとともに、引寄せ部材50の第2気密片部522が縦枠に当接されるので、召合せ部における横気密ラインが窓枠まで連続して形成され、隙間等ができるおそれがないため、召合せ部の気密性および水密性を確保することができる。上部障子20の下端部両端部側に設けた一対の引寄せ部材50によって、下部障子の上端部を引き寄せることで、横気密材223および第1気密片部521と下部障子の上端部とを強固に当接させることができ、気密・水密上の弱点になりやすい召合せ部端部における気密性および水密性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関し、詳しくは、窓枠と、この窓枠内にスライド開閉自在に支持された可動障子とを備え、室内外一対の召合せ部が見込み方向に重なって可動障子が閉じる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の外壁開口部に設けられる建具(サッシ窓)として、上下一対の障子を備えた上げ下げ窓が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この上げ下げ窓では、上下の障子が縦枠に沿って上下スライド開閉可能に構成されるとともに、上部障子(外障子)の縦框室内側側面および下部障子の縦框室外側側面と、縦枠に保持された縦気密材とが摺接することで、窓枠と障子との間の気密・水密が図られている。そして、上下の障子の召合せ框間においては、上部障子の下框に設けた横気密材を下部障子の上框の室外側側面に当接させるとともに、上下の障子の召合せ部に対応した縦枠の見付け方向内側に取り付けた気密ブロックを上下の障子に当接させることで、召合せ部における気密性および水密性を確保するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3505480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の上げ下げ窓では、上下の障子を閉じた状態において、召合せ框間の横気密材と気密ブロックとの接続が不十分になって、これらの間に隙間ができてしまうことがあり、気密性および水密性が十分に高められないという問題がある。さらに、従来の上げ下げ窓では、召合せ框に設けられたクレセント錠を施錠することで召合せ框同士を引き寄せることができるものの、クレセント錠からの距離が離れた召合せ框両端部(つまり、縦枠近傍)での引き寄せ力が弱まり、この位置における横気密材の当接力が不足して気密・水密性能上の弱点となってしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、召合せ部における気密・水密性能を十分に高めることができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、上枠、下枠、および左右の縦枠を有する窓枠と、この窓枠内にスライド開閉自在に支持された少なくとも1枚の可動障子と、パネル体とを備え、当該可動障子の召合せ部とパネル体の召合せ部とが見込み方向に重なって前記可動障子が閉じる建具であって、前記可動障子の召合せ部およびパネル体の召合せ部のうちの一方の召合せ部には、当該召合せ部の長手方向に沿って設けられて他方の召合せ部に当接する気密材と、前記可動障子を閉じた際に他方の召合せ部を引き寄せる引寄せ部材とが設けられ、前記引寄せ部材は、当該召し合わせ部の長手方向両端部側にそれぞれ設けられた一対で構成されるとともに、他方の召合せ部に摺接する傾斜面を有した引寄せ部と、前記気密材に接続されかつ他方の召合せ部に当接する第1気密部と、この第1気密部に連続しかつ前記縦枠側に突出して当該縦枠に当接する第2気密部とを有して構成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、本発明の建具としては、可動障子が左右にスライド開閉自在に設けられた引違い窓や片引き窓、引違い戸や片引き戸であってもよく、可動障子が上下にスライド開閉自在に設けられた上げ下げ窓であってもよい。また、パネル体としては、可動可能に構成された可動パネル体(可動障子等)であってもよく、可動不能に構成された固定パネル体(固定面材等)であってもよい。固定パネル体としては、固定面材(障子をFIXした固定障子、中骨や縦骨を有して固定された面材タイプ等)であってもよく、壁体であってもよい。
そして、引違い窓や引違い戸の場合、および上下の可動障子を備えた上げ下げ窓の場合には、一対の可動障子(戸)における室内外の召合せ框によって一対の召合せ部が構成される。この場合、可動可能な可動パネル体(可動障子)を含めて一対の可動障子(戸)が構成される。また、片引き窓や片引き戸、上げ下げ窓であって、可動障子と固定障子(固定パネル体)とを有する場合には、これらの可動障子および固定障子である固定パネル体における室内外の召合せ框によって一対の召合せ部が構成され、中骨や縦骨を有して固定された固定面材や壁体等に沿って可動障子が開閉される場合には、可動障子の召合せ框と固定面材の中骨や縦骨、壁体の端縁部等とで一対の召合せ部が構成されていればよい。
また、引寄せ部材は、別部材から形成した引寄せ部と第1および第2の気密部とを一体化したものでもよく、また硬質樹脂および軟質樹脂を用いた二色成形により引寄せ部と第1および第2の気密部とを一体に形成したものでもよい。
【0008】
以上の本発明によれば、一方の召合せ部に設けた気密材と引寄せ部材の第1気密部とを当接させるとともに、これらの気密材および第1気密部を他方の召合せ部に当接させ、さらに引寄せ部材の第2気密部を窓枠に当接させたことで、一対の召合せ部間の気密ラインが窓枠まで連続して形成され、隙間等ができるおそれがないため、召合せ部の気密性および水密性を確保することができる。
さらに、一方の召合せ部の長手方向両端部側に設けた一対の引寄せ部材の引寄せ部によって他方の召合せ部を引き寄せることで、気密材および第1気密部と他方の召合せ部とを強固に当接させることができ、気密・水密上の弱点になりやすい召合せ部の両端部における気密性および水密性を高めることができる。そして、引寄せ部で他方の召合せ部を引き寄せることで、召合せ部同士がずれにくくなって可動障子と窓枠との位置ずれが起きにくくなるため、引寄せ部材の第2気密部と窓枠との当接状態を良好に維持することができ、この点でも気密・水密性能を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の建具は、前記窓枠に設けられた前記パネル体である上部障子と、この上部障子の室内側に沿って上下スライド開閉自在に設けられた前記可動障子である下部障子とを備えた建具であって、前記上部障子および下部障子は、それぞれ上框、下框、左右の縦框、および面材を有し、前記上部障子の下框を含む下辺部によって前記一方の召合せ部が構成され、前記下部障子の上框を含む上辺部によって前記他方の召合せ部が構成され、前記縦枠には、前記上部障子と前記下部障子との見込方向中間位置において見付け方向内方に突出する見付け片が設けられ、前記縦枠の見付け片と、前記上部障子および下部障子の各々の縦框との間には、一方に取り付けられて他方に当接する縦気密材が設けられ、前記引寄せ部材の第2気密部は、前記縦框間の隙間に挿入され、かつ前記縦枠の見付け片に当接するとともに、前記縦気密材側に延びて設けられていることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、気密性および水密性の向上が可能な上げ下げ窓を構成することができる。そして、縦枠の見付け片と上下の障子の縦框との間に縦気密材を設けて縦気密ラインを形成するとともに、引寄せ部材の第2気密部を縦框間の隙間に挿入しかつ見付け片に当接させて設けることで、召合せ部における横気密ラインと縦気密ラインとが連続し、上げ下げ窓における気密・水密性能を一層向上させることができる。さらに、上部障子と下部障子とを閉じれば引寄せ部材の引寄せ部で召合せ部同士が引き寄せられて縦横の気密材の当接力を高めることがきるとともに、障子を開いて引寄せ部の引き寄せ力が解除されれば気密材の当接力が弱まるので、下部障子の開閉抵抗が小さくでき、開閉操作の操作性を良好にすることができる。
【0011】
さらに、本発明の建具では、前記引寄せ部材の第2気密部は、前記縦枠の見付け片に当接する当接部と、前記縦気密材に向かって延びる一対の突出部と、を有して平面略コ字形に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、引寄せ部材の第2気密部を当接部および一対の突出部を有して形成することで、縦枠の見付け片と上部障子および下部障子の縦框と縦気密材とで形成される隙間を、第2気密部によって塞ぐまたは狭くすることができ、気密性および水密性を一層向上させることができる。
【0012】
また、本発明の建具は、前記窓枠に設けられた前記パネル体である上部障子と、この上部障子の室内側に沿って上下スライド開閉自在に設けられた前記可動障子である下部障子とを備えた建具であって、前記上部障子および下部障子は、それぞれ上框、下框、左右の縦框、および面材を有し、前記上部障子の下框を含む下辺部によって前記一方の召合せ部が構成され、前記下部障子の上框を含む上辺部によって前記他方の召合せ部が構成され、
前記縦枠には、前記上部障子と前記下部障子との見込方向中間位置において見付け方向内方に突出する見付け片が設けられ、前記上部障子および下部障子の各々の縦框には、前記縦枠の見付け片に当接する縦気密材が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、上部障子の下辺部に引寄せ部材を設けるとともに、上部障子および下部障子の縦框に縦気密材を設けたことで、縦枠に風止板や縦気密材を設ける場合と比較して、窓枠の見込寸法を小さくすることができ、建具をコンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建具である上げ下げ窓1を示す縦断面図である。図2は、上げ下げ窓1を示す横断面図である。図3は、上げ下げ窓1の召合せ部を拡大して示す縦断面図である。図4は、上げ下げ窓1の縦枠13部分を拡大して示す横断面図である。図5は、上げ下げ窓1における上部障子20の下端部側端を拡大して示す斜視図である。図6(A)〜(C)は、上部障子20の下部側端部に取り付けられる引寄せ部材50を示す三面図である。
図1および図2において、上げ下げ窓1は、戸建て住宅等の建物の外壁開口部に設けられて建物の室内空間と室外空間とを仕切る建具であって、上枠11、下枠12、および左右の縦枠13を四周枠組みした窓枠10と、この窓枠10の内側に支持された上部障子20および下部障子30と、これらの室外側に開閉自在に支持された網戸40とを備えて構成されている。
【0014】
上げ下げ窓1の上部障子20および下部障子30は、それぞれ上框21,31、下框22,32、および左右の縦框23,33を四周框組みした内部に、ガラスパネル(複層ガラス)24,34を嵌め込んで構成されている。上部障子20は、窓枠10の上枠11および縦枠13に位置決めされて固定され、下部障子30よりも室外側に設けられている。下部障子30は、窓枠10の縦枠13に案内され、上部障子20の室内側に沿って上下スライド開閉可能に支持されている。これらの上部障子20の下框(外召合せ框)22と下部障子30の上框(内召合せ框)31とが見込み方向に重なって上げ下げ窓1が閉じられるようになっている。そして、下部障子30の上框31略中央部にはクレセント錠が設けられ、上部障子20の下框22には錠受けが設けられており、上部障子20および下部障子30を閉じた状態でクレセント錠を錠受けに係合させることで、上げ下げ窓1が施錠されるようになっている。
【0015】
下部障子30は、左右の縦框33の上端部に設けられたラッチ装置35の突起部35Aと、下部障子30の下端部である下框32および縦框33下端に連結されたスライド部材(スライドシュー)36とが縦枠13に案内されることで上下スライド可能に構成されている。ラッチ装置35の突起部35Aは、縦枠13側に突出して室内側見付け片131に係合するとともに、縦框33側に没入操作可能に構成されており、突起部35Aを縦框33側に没入させることで室内側見付け片131との係合が外れるようになっている。また、スライド部材36は、縦枠13の室内側見付け片131と中間部見付け片132とで囲まれた内部に挿入され、図示しないバランサに連結されている。そして、スライド部材36と下部障子30下端部とは、水平方向に延びる回動軸を有した回動機構37で連結されており、ラッチ装置35の突起部35Aと縦枠13の室内側見付け片131との係合を外すことで、回動機構37を中心として下部障子30は、室内側に回動(内倒し)可能に構成されている。このように下部障子30を内倒しすることで、その室外面を室内空間から清掃することができるようになっている。
【0016】
次に、図3〜図6も参照して上げ下げ窓1の気密・水密構造について説明する。
図3に示すように、上部障子20の下框22の下端部には、室内側に延びるとともに上方に折れ曲がった鉤状の係合片(煙返し)221が設けられており、この係合片221の下部には、横気密材(AT材)223を保持する気密材保持部222が形成されている。横気密材223は、下框22の長手方向(水平方向)に沿って延びて連続配置されるとともに、室内側に突出して下部障子30の上框31の室外側側面に当接するようになっている。一方、下部障子30の上框31の室外側側面には、室外側に延びるとともに下方に折れ曲がった鉤状の係合片(煙返し)311が設けられており、この係合片311は、下部障子30を閉じた際に上部障子20の係合片221と係合するようになっている。そして、上部障子20の係合片221の水平方向両端部には、後述する引寄せ部材50が取り付けられている。
【0017】
次に、図4に示すように、縦枠13には、その室内側位置、上部障子20と下部障子30との見込方向中間位置、および室外側位置から、それぞれ縦枠13の見付け方向内方に延びる室内側見付け片131、中間部見付け片132、および室外側見付け片133が設けられている。一方、上部障子20の縦框23の室内側側面の縦枠13側には、縦気密材(AT材)232を保持する気密材保持部231が形成され、下部障子30の縦框33の室外側側面の縦枠13側には、縦気密材(AT材)332を保持する気密材保持部331が形成されている。そして、これらの縦気密材232,332は、それぞれ縦枠13の中間部見付け片132の室外面および室内面に当接するようになっている。
【0018】
引寄せ部材50は、図5、図6に示すように、上部障子20の下框22左右両端部側に設けられたもので、硬質樹脂から形成された引寄せ本体部(引寄せ部)51と、この引寄せ本体部51に取り付けられた軟質樹脂からなる引寄せ気密部52とを有して構成されている。引寄せ本体部51は、下方に向かって室内側から室外側に傾斜した傾斜面部511と、下方に延出して引寄せ気密部52を係止する係止部512と、下框22側に延びて下框22に係止される取付片部513とを有して形成されている。そして、引寄せ本体部51は、取付片部513を係合片221および気密材保持部222で形成された凹溝に圧入することで下框22に取り付けられるようになっている。また、引寄せ気密部52は、室内側に突出して形成されて下框22の横気密材223端部に連続する(当接する)3つの第1気密片部(第1気密部)521と、これらの第1気密片部521に連続して縦框23の縦枠13側(図4の左側)に突出して形成された3つの第2気密片部(第2気密部)522とを有して形成されている。
【0019】
以上のような引寄せ部材50では、下部障子30を閉じた際に、図3に示すように、引寄せ本体部51の傾斜面部511が下部障子30の上框31の係合片311に摺接することで、上部障子20の下框22と下部障子30の上框31とが互いに引き寄せられるようになっている。そして、横気密材223が上框31の室外側側面に密接されるとともに、引寄せ気密部52の第1気密片部521が上框31の室外側側面に密接されるようになっている。さらに、引寄せ気密部52の第2気密片部522は、上部障子20の縦框23の室内側側面と下部障子30の縦框33の室外側側面と中間部見付け片132とで囲まれた(区画された)隙間(空間)に位置し、縦枠13の中間部見付け片132先端に当接する当接部522Aと、縦気密材232,332側に延びる一対の突出部522Bとを有して形成されている。そして、第2気密片部522の突出部522Bの先端と、縦気密材232,332との間には若干の隙間(クリアランス)が設けられている。従って、上部障子20と下部障子30との召合せ部における横気密材223が引寄せ部材50の第1および第2の気密片部521,522を介して、縦枠13および縦気密材232,332に接続され、横気密ラインと縦気密ラインとが連続して形成されるようになっている。
【0020】
なお、引寄せ気密部52の第2気密片部522における突出部522Bの先端は、縦気密材232,332との間にクリアランスを有して設ける以外に、縦気密材232,332に当接して設けられる、つまり中間部見付け片132と縦気密材232,332と縦框23,33とで区画される隙間(空間)を塞ぐようにして設けられていてもよい。すなわち、第2気密片部522の突出部522Bの縦枠13側への突出寸法は、上部障子20の建て込み時において中間部見付け片132に押されて当該突出部522Bが変形する変形量と、公差の範囲内で各部材の位置がずれた場合の当該突出部522Bと縦気密材232,332とのクリアランス量と、の両方を考慮して設定されている。つまり、突出部522Bの突出寸法を長く設定してしまうと、上部障子20の建て込み時に当該突出部522Bの変形量が大きくなって第2気密片部522を所定位置にセットすることができなくなってしまったり、縦気密材232,332とのクリアランスがなくなって突出部522Bが縦気密材232,332を押して変形させてしまったりするという不都合が生じる。一方、突出部522Bの突出寸法を短く設定してしまうと、突出部522Bと縦気密材232,332とのクリアランスが大きくなって気密性能上の不都合が生じる。従って、第2気密片部522の突出部522Bと縦気密材232,332との間に前述のクリアランスが形成されるように、突出部522Bの突出寸法が設定されていることが望ましい。
【0021】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、一方の召合せ部である上部障子20の下辺部(下框22および縦框23の下端部)に設けた横気密材223と、引寄せ部材50の第1気密片部521とが接続(当接)されるとともに、これらの横気密材223および第1気密片部521が他方の召合せ部である下部障子30の上辺部(上框31および縦框33の上端部)に当接され、さらに引寄せ部材50の第2気密片部522が縦枠13の中間部見付け片132に当接されているので、召合せ部における横気密ラインが窓枠10まで連続して形成され、隙間等ができるおそれがないため、召合せ部の気密性および水密性を確保することができる。
【0022】
(2)そして、上部障子20の下辺部両端に設けた一対の引寄せ部材50の引寄せ本体部51の傾斜面部511によって、下部障子30の上辺部を引き寄せることで、横気密材223および第1気密片部521と下部障子30の上辺部とを強固に当接させることができ、気密・水密上の弱点になりやすい召合せ部端部における気密性および水密性を高めることができる。そして、上部障子20の下辺部と下部障子30の上辺部とが引き寄せられることで、上部障子20と下部障子30とが召合せ部においてずれにくくなって、窓枠10との位置ずれが起きにくくなるため、引寄せ部材50の第2気密片部522と縦枠13との当接状態を良好に維持することができ、この点でも気密・水密性能を向上させることができる。
【0023】
(3)さらに、上部障子20および下部障子30の縦框23,33に設けた縦気密材232,332が、縦枠13の中間部見付け片132に当接され、引寄せ部材50の第2気密片部522が上部障子20の縦框23の室内側側面と下部障子30の縦框33の室外側側面と中間部見付け片132とで区画された隙間(空間)に位置するとともに、当接部522Aが中間部見付け片132に当接し、かつ突出部522Bがが縦気密材232,332側に延びているので、前述した隙間がほぼ塞がれた状態となって召合せ部において横気密ラインと縦気密ラインとが連続され、上げ下げ窓1における気密・水密性能を一層向上させることができる。
【0024】
(4)また、下部障子30を開けば、引寄せ部材50の引き寄せ力が解除されて、横気密材223や第1気密片部521、縦気密材332の当接力が弱まるので、下部障子30の開閉抵抗が小さくでき、開閉操作の操作性を良好にすることができる。
【0025】
(5)また、引寄せ部材50の引寄せ本体部51を硬質樹脂から形成したことで、その傾斜面部511によって下部障子30の上辺部を確実に引き寄せることができるとともに、上部障子20の下框22への取り付け強度を高めることができる。さらに、引寄せ気密部52を軟質樹脂から形成したことで、その第1および第2の気密片部521,522を下部障子30の上辺部や縦枠13の中間部見付け片132に密接させることができ、気密・水密性能が確保できる。
【0026】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、上げ下げ窓1について説明したが、本発明の建具は、上げ下げ窓1に限らず、可動障子が左右(水平方向)に開閉移動自在に設けられた引違い窓や片引き窓であってもよく、また引違い戸や片引き戸であってもよい。この際、引寄せ部材は、召合せ框である障子の縦框上下端部や、縦骨の上下端部などに取り付けられていればよい。
さらに、建具が上げ下げ窓の場合でも、上下二段の障子(上部障子20および下部障子30)を有して構成されていたものに限らず、3枚以上の障子を有して構成されていてもよい。また、前記実施形態では、下部障子30のみが上下にスライド開閉可能に構成されていたが、これに限らず、上部障子20が上下スライド開閉可能に構成されていてもよく、また突出し形式や内倒し形式、開き形式、辷出し形式等で開閉されるものであってもよい。
【0027】
また、前記実施形態では、引寄せ部材50を上部障子20の下端部両端に取り付けたが、これに限らず、下部障子30の上端部両端に引寄せ部材50を取り付けてもよい。さらに、横気密材223を下部障子30の上端部に設け、上部障子30の下端部に当接させてもよい。また、横気密材223と引寄せ部材50の第1気密片部521とは、常時接続されている必要はなく、下部障子30を閉じた状態で接続されていればよい。
また、前記実施形態では、上下の障子20,30の縦框23,33に縦気密材232,332を設け、縦枠13の中間部見付け片132に当接するように構成したが、縦気密材を縦枠13側に設けて縦框23,33に当接するように構成してもよい。この場合でも、縦枠13の縦気密材に引寄せ部材50の第2気密片部522を当接させることで、縦横の気密ラインを連続させることができる。
【0028】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図2】前記建具を示す横断面図である。
【図3】前記建具の召合せ部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】前記建具の縦枠部分を拡大して示す横断面図である。
【図5】前記建具における上部障子の下端部側端を拡大して示す斜視図である。
【図6】(A)〜(C)は、前記建具に取り付けられる引寄せ部材を示す三面図である。
【符号の説明】
【0030】
10…窓枠、11…上枠、12…下枠、13…縦枠、20…上部障子、30…下部障子、21,31…上框、22,32…下框、23,33…縦框、50…引寄せ部材、51…引寄せ部である引寄せ本体部、52…引寄せ気密部、132…中間部見付け片、223…横気密材、232,332…縦気密材、511…傾斜面部、521…第1気密片部(第1気密部)、522…第2気密片部(第2気密部)、522A…当接部、522B…突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠、および左右の縦枠を有する窓枠と、この窓枠内にスライド開閉自在に支持された少なくとも1枚の可動障子と、パネル体とを備え、当該可動障子の召合せ部とパネル体の召合せ部とが見込み方向に重なって前記可動障子が閉じる建具であって、
前記可動障子の召合せ部およびパネル体の召合せ部のうちの一方の召合せ部には、当該召合せ部の長手方向に沿って設けられて他方の召合せ部に当接する気密材と、前記可動障子を閉じた際に他方の召合せ部を引き寄せる引寄せ部材とが設けられ、
前記引寄せ部材は、当該召し合わせ部の長手方向両端部側にそれぞれ設けられた一対で構成されるとともに、前記他方の召合せ部に摺接する傾斜面を有した引寄せ部と、前記気密材に接続されかつ前記他方の召合せ部に当接する第1気密部と、この第1気密部に連続しかつ前記縦枠側に突出して当該縦枠に当接する第2気密部とを有して構成されている建具。
【請求項2】
前記窓枠に設けられた前記パネル体である上部障子と、この上部障子の室内側に沿って上下スライド開閉自在に設けられた前記可動障子である下部障子とを備えた建具であって、
前記上部障子および下部障子は、それぞれ上框、下框、左右の縦框、および面材を有し、前記上部障子の下框を含む下辺部によって前記一方の召合せ部が構成され、前記下部障子の上框を含む上辺部によって前記他方の召合せ部が構成され、
前記縦枠には、前記上部障子と前記下部障子との見込方向中間位置において見付け方向内方に突出する見付け片が設けられ、
前記縦枠の見付け片と、前記上部障子および下部障子の各々の縦框との間には、一方に取り付けられて他方に当接する縦気密材が設けられ、
前記引寄せ部材の第2気密部は、前記縦框間の隙間に挿入され、かつ前記縦枠の見付け片に当接するとともに、前記縦気密材側に延びて設けられている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記引寄せ部材の第2気密部は、前記縦枠の見付け片に当接する当接部と、前記縦気密材に向かって延びる一対の突出部と、を有して平面略コ字形に形成されている請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記窓枠に設けられた前記パネル体である上部障子と、この上部障子の室内側に沿って上下スライド開閉自在に設けられた前記可動障子である下部障子とを備えた建具であって、
前記上部障子および下部障子は、それぞれ上框、下框、左右の縦框、および面材を有し、前記上部障子の下框を含む下辺部によって前記一方の召合せ部が構成され、前記下部障子の上框を含む上辺部によって前記他方の召合せ部が構成され、
前記縦枠には、前記上部障子と前記下部障子との見込方向中間位置において見付け方向内方に突出する見付け片が設けられ、
前記上部障子および下部障子の各々の縦框には、前記縦枠の見付け片に当接する縦気密材が設けられている請求項1に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−113218(P2007−113218A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303908(P2005−303908)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】