説明

建物の制震装置並びに建築構造物

【課題】粘性材に対して速度分布に差がなく作用する減衰装置を配置することで圧力変動を防止し、また、制震壁等の減衰装置による階層を閉鎖することなく、減衰装置の大きさを最小限の大きさとする制震装置を提供する。
【解決手段】建築構造物の上下層間に設置されて上下層の一方の第1層に一端部が連結される支持脚と、前記第1層に第1のピン結合される抵抗体と、一端が前記上下層の他方の第2層に第2のピン結合がなされ他端が前記抵抗体と第3のピン結合がなされるとともに前記支持脚の他端部と結合して回転中心ともなるピン支持点が設けられるアームとからなり、前記ピン支持点から第2のピン結合までの距離と、前記ピン支持点から第3のピン結合との距離による距離比より変位を増幅させて、増幅させた変位を前記抵抗体に印加することで前記距離比に係る抵抗力を発生させて前記建築構造物に作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物の制震装置に関し、特に構造物の制震と交通等の振動対策に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物が地震等を受けて振動すると振動エネルギーを持ち、この振動エネルギーが大きいと建物が破壊することがある。
【0003】
ところで、建築構造物の完全な運動方程式は,エネルギー逸散を表す項、つまり減衰力項を含む。この減衰力は、粘性減衰力と構造減衰力に区分される。そこで、建築構造物の粘性減衰力を更に高めて振動エネルギーを吸収させて建物の破壊を防ぐことができる。
【0004】
この粘性減衰力は速度依存性を有する。すなわち、粘性材に作用する歪み速度、すなわち速度をせん断隙間で割った商である歪速度が大きくなれば、大きな減衰力すなわち抵抗力を発生する。また、粘性材とそれに接する容器等との接触面積を増大すれば大きな減衰力を発生させられる。
【0005】
例えば制震壁に粘性体を用いた例における速度と減衰力との関係を図8のグラフに示す。図8は、振動数を1Hz、粘性材を介して接触する2種の部材間の隙間dy=5mm、粘性材粘度をμ30、30℃において97、000poiseかつ温度20℃の時の速度と面積1cmにおける粘性減衰力の関係を示したものである。粘性減衰力は、略20カイン(cm/s)A点まで速度に比例して増大し、速度が20カインを超えると減衰力は略一定となる。
【0006】
しかし、現実に発生し得る大地震であっても層間速度は10カイン程度(図8のB点)にしかならない。すなわち、大地震が発生しても粘性材はその減衰力の最大能力を発生していないこととなる。
【0007】
このため、層間速度を増幅させて減衰力の増大を図る必要性が生じていた。例えば、層間速度を増幅させる手段として、梃子の原理を利用する方法が、出願人らによって特許文献1において提案されている。
【0008】
一方、層間変形を同じく壁制震ダンパと梃子の原理を用いたダンパについて開示されている。特に複数層に及ぶ大きな層間変形を利用して大きな減衰力を発生させることができる。
【0009】
【特許文献1】特許第1704249号公報
【特許文献2】特開2000−314243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、第2抵抗板によって粘性材に作用する増幅された速度は、回転中心であるピンからの距離によって異なる。すなわち、上部階から回転中心までの距離と比較して回転中心からの距離が短い点の速度は、却って本来の層間速度より梃子の原理によって減少する。さらに、粘性材に作用する速度が回転中心からの距離によって異なるので、各部位での減衰力が異なり、粘性材に圧力変動が生じる。すなわち、粘性材に同一の速度で作用する必要が生じている。
【0011】
また、特許文献2では、各装置に2階層分の領域が必要であり、装置が巨大であるという課題が生じている。さらに、抵抗体として制震壁を用いるが、その大きさが大きいために、2階層のうち1階層を全て閉鎖する必要がありという課題が生じている。
【0012】
さらに、粘性減衰装置のコストは、抵抗体の減衰力によって決まる。例えば、減衰力が100トンの抵抗体の値段は、減衰力が20トンの抵抗体の値段の3〜5倍である。
【0013】
また、減衰装置の精度は、増幅する前の減衰装置の大きさが小さくなるほど高まるため、大きな減衰力を得るためには増幅機構を使う必要がある。
【0014】
そこで、本発明では、粘性材に対して速度分布に差がなく作用する減衰装置を配置することで圧力変動を防止し、また、制震壁等の減衰装置による階層を閉鎖することなく、減衰装置の大きさを最小限の大きさとする制震装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために本発明に係る建物の制震装置は、建築構造物の上下層間に設置されて上下層の一方の第1層に一端部が連結される支持脚と、前記第1層に第1のピン結合される抵抗体と、一端が前記上下層の他方の第2層に第2のピン結合がなされ他端が前記抵抗体と第3のピン結合がなされるとともに前記支持脚の他端部と結合して回転中心ともなるピン支持点が設けられるアームとからなり、前記ピン支持点から第2のピン結合までの距離と、前記ピン支持点から第3のピン結合との距離による距離比より変位(速度)を増幅させて、増幅させた変位(速度)を前記抵抗体に印加することで前記距離比に係る抵抗力を発生させて前記建築構造物に作用させる。
【0016】
また、前記アームのピン支持点が水平アーム部と鉛直アーム部との交点となってもよく、またアームは鉛直アームのみから構成されてもよい。
【0017】
さらに、本発明に係る建物の制震装置は、建築構造物の上下層間に設置されて上下層の一方の第1層に一端部が連結される支持脚と、前記第1層から突設される2つの基礎部に水平に掛け渡されて連設される抵抗体と、一端が前記上下層の他方の第2層に第2のピン結合がなされ他端が前記両抵抗体の中間で第3のピン結合がなされるとともに前記支持脚の他端部と結合して回転中心ともなるピン支持点が設けられるアームとからなり、前記ピン支持点から第2のピン結合までの距離と、前記ピン支持点から第3のピン結合との距離による距離比より変位を増幅させて、増幅させた変位(速度)を前記抵抗体に印加することで前記距離比に係る抵抗力を発生させて前記建築構造物に作用させる。
【0018】
そのうえ、アームと第2層との結合部がルーズホールからなってもよく、支持脚は、ブレース構造であってもよい。さらに、支持脚は、一方が上下層と鉛直方向に配置されてもよい。また、支持脚と第一層との連結点と、抵抗体と第一層との連結点がほぼ重なるように配置することで支持脚と抵抗体とが同一面内となるように配置されてもよい。その上、抵抗体はオイルダンパであってもよい。
【0019】
また、抵抗体は、同軸上に異なる半径の内輪と外輪とを備えて前記内輪より前記外輪に質量が集中する回転体からなっても良い。
【0020】
さらに、回転体は、相対変位可能に互いに接続される第1および第2の連結部材からなり、この第1の連結部材は、少なくともその接続側に案内ねじ部が形成された第一のロッドと、この案内ねじ部に係合すると共に案内ねじ部との相対変位に基づき案内ねじ部上を回転摺動するよう軸支される案内ナットと、前記第1のロッドより大きな径を有すると共にこの径より充分大きな軸方向長さとを有し前記案内ナットを介して回転摺動可能に挿着される円筒形状回転体とからなり、前記第2の連結部材は、前記円筒形状回転体及び案内ナットを収容する円筒形状ケーシングからなる減衰装置であって、少なくとも前記円筒形状ケーシングの内壁と前記円筒形状回転体との間隙に減衰用の粘性体および/または粘弾性体を充填する。
【0021】
さらに、本発明に係る建築構造物は、建築構造物の上下層間に設置されて上下層の一方の第1層に連結される支持脚と、前記第1層に連結される抵抗体と、一端が前記上下層の他方の第2層にピン結合して他端が前記抵抗体とピン結合するとともに前記支持脚と回転中心ともなるピン支持点が設けられるアームとからなり、前記ピン支持点からの両ピン結合までの距離比により変位を増幅させて、増幅させた変位からさらに前記距離比に係る抵抗力を発生させて前記建築構造物に作用させる建物の制震装置を設けてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る制震装置の実施の形態を、図1乃至図7を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明に係る制震装置の第一の実施例の構成図である。
【0024】
本発明に係る制震装置4は、建築構造物の柱1と、梁2、3とによって構成された架構内に設置される。この梁2、3の間に、支持脚6a,6bと、減衰コマ8a,8bと、アーム18が配置される。
【0025】
支持脚6a,6bは、上側の梁2にV字状に上端がそれぞれ連結される。減衰コマ8a,8bは、前記上側梁2に2点でそれぞれ第1のピン7a,7bによってピン結合される。一方、減衰コマ8a,8bの下端は、柱に対して水平に配置されるアーム18の両端と第3のピン12a、12bによってピン結合がなされる。アーム18の中央で前記支持脚6a,6bの下端とピン支持点14で回動可能に連結される。アーム18は、このピン支持点14から鉛直下方向に延設され下端が梁3に第2のピン10によってピン連結される。ピン結合10における開口部は上下移動可能となるようにルーズホール(ピン−ローラ)が設けられる。
【0026】
図2は、図1に示され抵抗体である減衰コマ8a,8bを示し、速度増幅部30と、伝達部32と、減衰部34とから構成される。速度増幅部30内にその端部からねじ溝の刻設された案内ねじ部36が挿入され、ボールベアリング40を介して案内ナット42と螺合され、この案内ナット42は速度増幅部30の外筒44とスラスト軸受け46を介して回転可能に接合される。
【0027】
この案内ナット42は伝達部32内で回転内筒48と接合されて、回転内筒48は減衰部34内を回動する。減衰部34の外筒50と回転内筒48の間には粘性体52が封入され外筒50端部のシール54で封止され、粘性体52が漏れない構造となっている。このリニア軸56と外筒50の一方が、アーム18とピン接合し、他方が上側梁2とピン結合となる。
【0028】
係る構成において、建物が地震力や風力を受けて振動するとその振動エネルギー(層間に生じた相対速度)は、梁3からピン結合10を介してアーム18に伝達され、かつアーム18のピン14を中心とする振動によって増幅される。増幅比は、ピン14からピン10までの距離に対してピン14からピン12a又は12bまでの距離の比となる。ピン12a又は12bから減衰コマ8a,8bに対して収縮と伸張の効果が生じる。相対変位から発生される圧縮および引張りの両荷重に対応して、案内ねじ部36上を回転し且つ図示上下方向へ摺動するよう軸支されている。ねじ部の直線変位を回転内筒の回転運動に変換する簡単且つ小形な(特に、長手方向に延在された)構成で、しかも、従来のこの種の装置に比較して極めて大きな減衰効果を容易に達成することができる。ここで、得られた粘性減衰力は梃子比倍の抵抗力となって作用する。
【0029】
実際の地震で発生する振動を本発明に適用した場合について説明する。ここで、ピン14からピン10までの距離1に対してピン14からピン12a又は12bまでの距離の比である梃子比を5と設定する。
【0030】
図9は、この場合に、地震で層間速度5カインが生じた場合、従来の梃子比がない場合には、1cm当り0.525kg/cmの抵抗力が生じる。本発明においては、梃子比が5であるため速度は5×5=25カインに増幅され、粘性材部における粘性減衰力は1.206kg/cmと約2.3倍となる。この粘性減衰力が梃子比倍の抵抗力となるから、1.206kg/cm×5=6.03kg/cmの抵抗力を得ることとなる。従って、従来の抵抗力である0.525kg/cmに比して11倍の抵抗力となる。
【0031】
層間速度が10カインの場合は、従来型は0.8524kg/cmで本発明は粘性材部の粘性減衰力は1.206kg/cmと変わらず、従って6.03kg/cmの抵抗力を得、性能は従来比で約7倍となる。このことは同じ減衰力を得るために、内壁の鋼板面積を性能比倍小さく製造することが可能となる。
【0032】
あるいは、従来、制震壁等に使用されていた粘度は高いものの温度依存性の大きいポリイソブチレンに代わり、ポリイソブチレンに比べて粘度は低いが温度依存性の小さいシリコーン等の材料の使用が可能となる。
【実施例2】
【0033】
図3は、本発明に係る制震装置の第二の実施例の構成図である。
【0034】
本発明に係る制震装置74は、建築構造物の柱1と、梁2、3とによって構成された架構内に設置される。この梁2、3の間に、支持脚76a,76bと、油圧ダンパ78a,78bと、アーム88が配置される。
【0035】
支持脚76a,76bは、上側の梁2にV字状に上端がそれぞれ連結される。一方、前記上側梁2に基礎部79a、79bが両柱の近傍でそれぞれ鉛直下向きに突設される。油圧ダンパ78a,78bは、この両基礎部79a、79bの間に連設して挿入されて、それぞれ両基礎部79a、79bの側面から水平方向に突設される。両油圧ダンパ78a,78bの中央でピン82によってアーム88の一端がピン結合し、他端が梁3にルーズホール80でピン結合する。アーム88の下端近傍で支持脚76a,76bの下端とピン84でアーム88は回動可能に連結される。
【0036】
図4は、本発明に係る制震装置の第二の実施例における油圧ダンパ78a,78bの構造を示す。シリンダ90の内部にシリンダ90の内径より小さい外形であるピストン92と、ピストン92から垂直に立設してシリンダ90の外部に突出しているロッド94とから構成され、シリンダ90内にはオイル96で満たされ、ピストン92の一部にオイル96の通路となるオリフィス98が開口される。このため、ピストン92はシリンダ90内を長手方向に摺動できる。
【0037】
係る構成において、建物が地震力や風力を受けて振動するとその相対速度(層間に生じた相対速度)は、梁3からピン結合80を介してアーム88に伝達される。相対速度は、ピン84を中心とする梃子の効果によってピン82において増幅される。増幅率は、ピン84からピン80の距離に対してピン84からピン82への距離の比となる。ピン82から油圧ダンパ78a,78bに対して増幅した収縮と伸張の効果が生じる。増幅された相対速度は油圧ダンパのロッド94を介してオイル96を押圧または引張することで減衰効果を高めることができる。
【0038】
なお、本実施例2では油圧ダンパを用いたが減衰コマでも当然に達成可能である。
【0039】
図3Bに、本実施例2において、制震装置の奥行きをさらに薄型化した本発明に係る実施例を示す。薄型化を可能とするために、油圧ダンパ78b、78cの長さをブレース構造の梁との連結部分同士の長さより短くすることがある。このように構成することで、Vブレース構造76c、76dと油圧ダンパ78b、78cを同一平面内に配置が可能となるため薄型化が可能となる。
【0040】
図3Cは、図3BにおけるAA断面図であり、Vブレース構造76cと油圧ダンパ78Cとが同一平面状に配置されることが明らかである。
【実施例3】
【0041】
図5は、本発明に係る制震装置の第三の実施例の構成図である。
【0042】
本発明に係る制震装置104は、建築構造物の柱1と、梁2、3とによって構成された架構内に設置される。この梁2、3の間に、支持脚106a,106bと、減衰コマ108と、アーム118が配置される。
【0043】
支持脚106a,106bは、上側の梁2に連結されるが、一方の106aは筋交いとしての機能を有しながら斜めに梁2に連結され、106bは鉛直上に梁2に連結される。減衰コマ108は、前記上側梁2に第1のピン107によってピン結合される。一方、減衰コマ108の下端は、柱に対して水平に配置されるアーム118の一端と第3のピン112によってピン結合がなされる。アーム118の他端で前記支持脚106a,106bの下端とピン支持点114で回動可能に連結される。アーム118は、このピン支持点114から鉛直下方向に延設され下端が梁3に第2のピン110によってピン連結される。ピン結合110における開口部は上下移動可能となるようにルーズホールが設けられる。
【0044】
このように構成されることで、支持脚の一方が鉛直方向に延在するため、一定の広さの空間を確保することができる。
【0045】
係る構成において、建物が地震力や風力を受けて振動するとその振動エネルギー(層間に生じた相対速度)は、梁3からピン結合110を介してアーム118に伝達され、かつアーム118のピン114を中心とする回転によって増幅される。増幅比は、ピン114からピン110までの距離に対してピン114からピン112までの距離の比となる。ピン112から減衰コマ108に対して増幅した収縮と伸張の効果が生じる。相対変位から発生される圧縮および引張りの両荷重に対応して、案内ねじ部36上を回転し且つ図示上下方向へ摺動するよう軸支されている。ねじ部の直線変位を回転内筒の回転運動に変換する簡単且つ小形な(特に、長手方向に延在された)構成で、しかも、従来のこの種の装置に比較して極めて大きな減衰効果を容易に達成することができる
【実施例4】
【0046】
次に本発明に係る実施例1の変形例であって、第一に支持脚と減衰コマとが同時に配置可能となる実施例を図6A、図6B、図6C、図6D、図6Eに示す。
【0047】
図6Aは、支持脚136a,136bの連結点と減衰コマ128との梁との連結を一致させるように配置する。本実施例では、アーム138の長さを延長し、支持脚136a,136bと梁2との連結点127a,127bから鉛直に減衰コマを垂下させるとアーム138の端部となる様に配置される。
【0048】
このように配置することで支持脚136a,136bと、減衰コマとアームとを一体面上に配置できるため極めて省スペースとなる。
【0049】
一方、図6Bは、減衰コマの長さを延長し、その結果支持脚136c,136dと梁2との連結点127bに減衰コマが連結するよう配置するものである。同様に、支持脚136c,136dと、減衰コマ128aとアーム138aとを一体面上に配置できるため極めて省スペースとなる。
【0050】
図6C、図6D、図6Eに、実施例4であってさらに梃子比を向上させた実施例を示す。
【0051】
アーム138bの幅を増大させて、アーム138bの中央に支持脚136e、136fとの連結用ピン133cと、梁3との連結用ピン131cを設けることでピン129cとピン133cとの距離に対するピン133cとピン131cの距離を短くすることで梃子比を稼ぐことができる構成となっている。
【0052】
また、図6D、図6Eに示すように支持脚136e、136fと減衰コマ128bとを同一面上に配置したため制震装置の薄型化が可能となった。
【0053】
なお、図7に示すように本発明に係る制震装置を連接して配置することでより制震効果を高めることができる。特に支持脚に加わる反力は、斜めに梁2に連結されているため、反力を鉛直成分と水平成分とに分割すると連設制震装置の反力の鉛直成分が互いに打ち消しあうこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る制震装置により、広い空間を有してコストの削減が可能となるため、地震の発生が想定される構造物や、日常的に交通による振動が発生している構造物に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る制震装置の第一の実施例の構成図である。
【図2】本発明に係る制震装置の第一の実施例に適用する減衰コマの構成図である。
【図3A】本発明に係る制震装置の第二の実施例の構成図を示す。
【図3B】本発明に係る制震装置の第二の実施例の構成図を示す。
【図3C】本発明に係る制震装置の第二の実施例の断面図を示す。
【図4】本発明に係る制震装置の第二の実施例における油圧ダンパの構成図を示す。
【図5】本発明に係る制震装置の第三の実施例の構成図である。
【図6A】本発明に係る制震装置の第四の実施例の構成図であって減衰コマが鉛直向きとなるものである。
【図6B】本発明に係る制震装置の第四の実施例の構成図であって減衰コマが斜めとなるものである。
【図6C】本発明に係る制震装置の第四の実施例の構成図である。
【図6D】本発明に係る制震装置の第四の実施例の断面図である。
【図6E】本発明に係る制震装置の第四の実施例の断面図である。
【図7】本発明に係る制震装置の第四の実施例の構成図である。
【図8】粘性減衰力の速度依存性を示すグラフである。
【図9】減衰コマの軸速度と軸減衰力の依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
1 柱
2,3 梁
4 制震装置
6a,6b 支持脚
7a,7b 第1ピン
8a,8b 減衰コマ
10 第2のピン
12a,12b 第3のピン
14 ピン支持点
18 アーム
30 速度増幅部
32 伝達部
34 減衰部
36 案内ねじ部
38 リニア軸受けベアリング
40 ボールベアリング
42 案内ナット
44 外筒
46 スラスト軸受け
48 回転内筒
50 外筒
52 粘性体
54 シール
56 リニア軸
74 制震装置
76a,76b 支持脚
78a,78b 油圧ダンパ
79a,79b 基礎部
80 ルーズホール
88 アーム
82 ピン
84 ピン
90 シリンダ
92 ピストン
94 ロッド
96 オイル
98 オリフィス
104 制震装置
107 ピン
106a,106b 支持脚
108 減衰コマ
110 第2のピン
112 第3のピン
114 ピン支持点
118 アーム
127a,127b 連結点
136a,136b 支持脚
138 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の上下層間に設置されて上下層の一方の第1層に一端部が連結される支持脚と、前記第1層に第1のピン結合される抵抗体と、一端が前記上下層の他方の第2層に第2のピン結合がなされ他端が前記抵抗体と第3のピン結合がなされるとともに前記支持脚の他端部と結合して回転中心ともなるピン支持点が設けられるアームとからなり、前記ピン支持点から第2のピン結合までの距離と、前記ピン支持点から第3のピン結合との距離による距離比より変位を増幅させて、増幅させた変位(速度)を前記抵抗体に印加することで前記距離比に係る抵抗力を発生させて前記建築構造物に作用させる建物の制震装置。
【請求項2】
前記アームのピン支持点が水平アーム部と鉛直アーム部との交点となることを特徴とする請求項1記載の建物の制震装置。
【請求項3】
アームは鉛直アームのみから構成されることを特徴とする請求項1記載の建物の制震装置。
【請求項4】
建築構造物の上下層間に設置されて上下層の一方の第1層に一端部が連結される支持脚と、前記第1層から突設される2つの基礎部に水平に掛け渡されて連設される抵抗体と、一端が前記上下層の他方の第2層に第2のピン結合がなされ他端が前記両抵抗体の中間で第3のピン結合がなされるとともに前記支持脚の他端部と結合して回転中心ともなるピン支持点が設けられるアームとからなり、前記ピン支持点から第2のピン結合までの距離と、前記ピン支持点から第3のピン結合との距離による距離比より変位(速度)を増幅させて、増幅させた変位を前記抵抗体に印加することで前記距離比に係る抵抗力を発生させて前記建築構造物に作用させる建物の制震装置。
【請求項5】
アームと第2層との結合部がルーズホールからなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の建物の制震装置。
【請求項6】
支持脚は、ブレース構造または壁構造であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の建物の制震装置。
【請求項7】
支持脚は、一方が上下層と鉛直方向に配置されることを特徴とする請求項1に記載の建物の制震装置。
【請求項8】
支持脚と第一層との連結点と、抵抗体と第一層との連結点がほぼ重なるように配置することで支持脚と抵抗体とが同一面内となるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の建物の制震装置。
【請求項9】
抵抗体はオイルダンパであることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の建物の制震装置。
【請求項10】
抵抗体は履歴ダンパであることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の建物の制震装置。
【請求項11】
抵抗体は、同軸上に異なる半径の内輪と外輪とを備えて前記内輪より前記外輪に質量が集中する回転体からなることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の建物の制震装置。
【請求項12】
回転体は、相対変位可能に互いに接続される第1および第2の連結部材からなり、この第1の連結部材は、少なくともその接続側に案内ねじ部が形成された第一のロッドと、この案内ねじ部に係合すると共に案内ねじ部との相対変位に基づき案内ねじ部上を回転摺動するよう軸支される案内ナットと、前記第1のロッドより大きな径を有すると共にこの径より充分大きな軸方向長さとを有し前記案内ナットを介して回転摺動可能に挿着される円筒形状回転体とからなり、前記第2の連結部材は、前記円筒形状回転体及び案内ナットを収容する円筒形状ケーシングからなる減衰装置であって、少なくとも前記円筒形状ケーシングの内壁と前記円筒形状回転体との間隙に減衰用の粘性体および/または粘弾性体を充填する請求項11記載の建物の制震装置。
【請求項13】
建築構造物の上下層間に設置されて上下層の一方の第1層に連結される支持脚と、前記第1層に連結される抵抗体と、一端が前記上下層の他方の第2層にピン結合して他端が前記抵抗体とピン結合するとともに前記支持脚と回転中心ともなるピン支持点が設けられるアームとからなり、前記ピン支持点からの両ピン結合までの距離比により変位を増幅させて、増幅させた変位からさらに前記距離比に係る抵抗力を発生させて前記建築構造物に作用させる建物の制震装置を設けた建築構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−211503(P2007−211503A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33291(P2006−33291)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(504242342)株式会社免制震ディバイス (16)
【Fターム(参考)】