説明

建物の柱に斜材を取り付ける取付け部の構造

【課題】建物の柱への斜材の取付けに用いる部材の縁部を前記柱に結合する手段を小型化できるようにし、前記柱への前記斜材の取付けを経済的に行えるようにすること。
【解決手段】建物の柱に斜材を取り付ける取付け部の構造は、前記柱に上下方向に間隔を置いて固定された第1部材及び第2部材であって水平な下端部を有する第1部材及び該第1部材の前記下端部から下方へ隔てられた水平な上端部を有する第2部材と、前記第1部材の前記下端部と前記第2部材の前記上端部との間に配置された第3部材であって前記第1部材の前記下端部に密着された上端部と、前記第2部材の前記上端部に密着された下端部と、前記上端部と前記下端部との間に水平方向に間隔を置かれた2つの縁部であって一方の縁部が前記柱に結合され、他方の縁部が前記斜材に結合された2つの縁部とを有する第3部材とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の柱に斜材を取り付ける取付け部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、水平方向に間隔を置かれた2つの柱と、該柱の間に間隔を置いて設けられた梁と、該梁の下方に配置され、該梁と前記柱のうち一方の柱とに取り付けられた斜材とを有するものがある(特許文献1参照)。前記一方の柱への前記斜材の取付けは取付け用部材によりなされている。
【0003】
従来、建物の柱に斜材を取り付ける取付け用部材には、一方の面が前記柱に結合されたベースプレートと、一端部が該ベースプレートの他方の面に固定された、該ベースプレートに対して垂直なガセットプレートとを有するものがある。前記ガセットプレートの他端部は前記斜材に結合されている。
【0004】
前記柱への前記ベースプレートの前記一方の面の結合は結合手段によりなされている。前記ベースプレートは、間隔を置かれた複数の貫通穴を有し、前記結合手段は、一端部が前記柱の内部に固定された、該柱から各貫通穴を経て水平方向に伸びるボルトと、該ボルトの他端部に螺合されたナットとからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−171729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地震時に前記斜材に軸力が作用し、該軸力は前記ガセットプレートに伝わり、該ガセットプレートに前記軸力の上下方向成分が作用する。このとき、前記軸力の上下方向成分は前記ガセットプレートから前記ベースプレートに伝わり、該ベースプレートは前記柱に対して上下方向にずれようとする。このため、前記ボルトにせん断力が作用し、前記ボルトは前記せん断力を負担しなければならない。これにより、前記ボルトの本数は比較的多く、前記ボルトの断面積は比較的大きく、前記結合手段は比較的大型である。よって、前記結合手段の購入費が高くつき、前記柱への前記斜材の取付けに多くの費用を要する。
【0007】
本発明の目的は、建物の柱への斜材の取付けに用いる部材の縁部を前記柱に結合する手段を小型化できるようにし、前記柱への前記斜材の取付けを経済的に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、柱に上下方向に間隔を置いて固定された第1部材及び第2部材であって水平な下端部を有する第1部材及び該第1部材の前記下端部から下方へ隔てられた水平な上端部を有する第2部材と、前記第1部材の前記下端部と前記第2部材の前記上端部との間に配置され、上端部が前記第1部材の前記下端部に密着され、下端部が前記第2部材の前記上端部に密着され、一方の縁部が前記柱に結合され、他方の縁部が前記斜材に結合された第3部材とを有する。これにより、地震時に前記斜材に作用した軸力が前記第3部材に伝わったとき、前記軸力の上下方向成分を前記第3部材から前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに伝達させ、これらに負担させるようにし、前記軸力の上下方向成分を、前記第3部材の前記一方の縁部を前記柱に結合する手段に負担させることがないようにする。これにより、前記手段の小型化を可能にし、前記柱への前記斜材の取付けを経済的に行えるようにする。
【0009】
本発明に係る、建物の柱に斜材を取り付ける取付け部の構造は、前記柱に上下方向に間隔を置いて固定された第1部材及び第2部材であって水平な下端部を有する第1部材及び該第1部材の前記下端部から下方へ隔てられた水平な上端部を有する第2部材と、前記第1部材の前記下端部と前記第2部材の前記上端部との間に配置された第3部材であって前記第1部材の前記下端部に密着された上端部と、前記第2部材の前記上端部に密着された下端部と、前記上端部と前記下端部との間に水平方向に間隔を置かれた2つの縁部であって一方の縁部が前記柱に結合され、他方の縁部が前記斜材に結合された2つの縁部とを有する第3部材とを含む。
【0010】
地震時に前記斜材に作用した軸力が前記第3部材に伝わり、該第3部材に前記軸力の上下方向成分が作用する。前記第3部材の前記上端部及び前記下端部がそれぞれ前記第1部材の水平な前記下端部及び前記第2部材の水平な前記上端部に密着されているため、前記軸力の上下方向成分を前記第3部材から前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに伝達させることができ、これらに負担させることができる。これにより、前記軸力の上下方向成分を、前記第3部材の前記一方の縁部を前記柱に結合する手段に負担させないようにすることができ、前記手段を小型化することができ、前記柱への前記斜材の取付けを経済的に行うことができる。
【0011】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記柱と一体をなすものとすることができる。前記第3部材は、前記柱に固定された、水平面に対して垂直な第1部分と、該第1部分及び水平面のそれぞれに対して垂直な第2部分であって前記斜材に固定された第2部分と、前記第1部分の上の水平な第3部分であって前記第1部材の前記下端部に隣接する第3部分と、前記第1部分の下の水平な第4部分であって前記第2部材の前記上端部に隣接する第4部分とを有する。
【0012】
前記第3部材が、前記第1部材の前記下端部に隣接する水平な前記第3部分を有するため、前記軸力の上下方向成分を前記第3部材から前記第1部材に伝達させるとき、前記軸力の上下方向成分を前記第1部材の前記下端部の全部に分散して作用させることができる。これにより、前記軸力の上下方向成分が前記第1部材の前記下端部の一部に集中して作用することを防ぐことができ、前記第1部材の前記下端部が前記第3部材から前記軸力の上下方向成分を受けて破壊することを防止することができる。
【0013】
前記第3部材が、前記第2部材の前記上端部に隣接する水平な前記第4部分を有するため、前記軸力の上下方向成分を前記第3部材から前記第2部材に伝達させるとき、前記軸力の上下方向成分を前記第2部材の前記上端部の全部に分散して作用させることができる。これにより、前記軸力の上下方向成分が前記第2部材の前記上端部の一部に集中して作用することを防ぐことができ、前記第2部材の前記上端部が前記第3部材から前記軸力の上下方向成分を受けて破壊することを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地震時に前記斜材に作用した軸力が前記第3部材に伝わったとき、前記軸力の上下方向成分を前記第3部材から前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに伝達させ、これらに負担させることができる。これにより、前記軸力の上下方向成分を、前記第3部材の前記一方の縁部を前記柱に結合する手段に負担させないようにすることができ、前記手段を小型化することができ、前記柱への前記斜材の取付けを経済的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例に係る建物の縦断面図。
【図2】図1の線2における建物の拡大図。
【図3】柱に斜材が取り付けられていない状態の、柱への斜材取付け部の構造の側面図。
【図4】図3の線4における、柱への斜材取付け部の構造の正面図。
【図5】本発明の第1実施例に係る、柱への斜材取付け部の構造の斜視図。
【図6】本発明の第2実施例に係る、柱への斜材取付け部の構造の側面図。
【図7】本発明の第3実施例に係る、柱への斜材取付け部の構造の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、建物10が構築されており、該建物は、第1水平方向(図1における左右方向)に間隔を置かれた第1柱12及び第2柱14と、第1柱12と第2柱14との間に配置され、第1柱12と第2柱14とに取り付けられた斜材16とを有する。第1柱12及び第2柱14のそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0017】
図2ないし5に示すように、第1柱12に斜材16を取り付ける取付け部の構造18は、第1柱12に上下方向に間隔を置いて固定された第1部材20及び第2部材22と、第1部材20と第2部材22との間に配置された第3部材24とを有する。第1部材20及び第2部材22のそれぞれは第1柱12から第1水平方向内方(図2における右方)に突出している。
【0018】
第1部材20は水平な下端部26を有し、第2部材22は水平な上端部28を有し、第2部材22の上端部28は第1部材20の下端部26から下方へ隔てられている。第1部材20及び第2部材22のそれぞれは、前記第1水平方向に対して垂直な板状であり、鉄筋コンクリートからなる。第1部材20及び第2部材22のそれぞれは第1柱12と一体をなしている。第1柱12とそれぞれが該第1柱と一体をなす第1部材20及び第2部材22とは、プレキャストコンクリートからなるものでもよいし、現場打ちコンクリートからなるものでもよい。
【0019】
第1部材20は、第1柱12に前記第1水平方向に隣接する、コンクリートからなる本体30と、該本体の内部に上下方向に間隔を置いて配置された複数の鉄筋32とを有する。各鉄筋32は、本体30の内部に固定され、前記第1水平方向と直交する第2水平方向(図2における奥行き方向)に伸びる中央部32a(図4)と、それぞれが該中央部に対して垂直な、前記第2水平方向に間隔を置かれた、平行な2つの端部32bとを有する。各端部32bは、本体30から第1柱12の内部へ前記第1水平方向に伸び、第1柱12の内部に固定されている。
【0020】
第2部材22も、第1部材20と同様に、第1柱12に前記第1水平方向に隣接する、コンクリートからなる本体34と、該本体の内部に上下方向に間隔を置いて配置された複数の鉄筋36とを有する。各鉄筋36は、本体34の内部に固定され、前記第2水平方向に伸びる中央部36a(図4)と、それぞれが該中央部に対して垂直な、前記第2水平方向に間隔を置かれた、平行な2つの端部36bとを有する。各端部36bは、本体34から第1柱12の内部へ前記第1水平方向に伸び、第1柱12の内部に固定されている。
【0021】
第3部材24は第1部材20の下端部26と第2部材22の上端部28との間に位置し、第3部材24の上端部38は第1部材20の下端部26に密着され、第3部材24の下端部40は第2部材22の上端部28に密着されている。第3部材24は、上端部38と下端部40との間に前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの縁部42、44を有し、該縁部のうち一方の縁部42は第1柱12に結合され、他方の縁部44は斜材16に結合されている。
【0022】
第3部材24は、鋼製であり、第1柱12に固定された、水平面に対して垂直な第1部分24aと、該第1部分及び水平面のそれぞれに対して垂直な第2部分24bとを有し、該第2部分は斜材16に固定されている。また、第3部材24は、第1部分24aの上の水平な第3部分24cと、第1部分24aの下の水平な第4部分24dとを有し、第3部分24c及び第4部分24dはそれぞれ第1部材20の下端部26及び第2部材22の上端部28に隣接している。
【0023】
第1柱12への第3部材24の一方の縁部42の結合は結合手段46によりなされている。第3部材24の第1部分24aは、間隔を置かれた複数の貫通穴48を有し、結合手段46は、一端部が第1柱12の内部に固定された、該第1柱から各貫通穴48を経て前記第1水平方向に伸びるボルト50と、該ボルトの他端部に螺合されたナット52とからなる。
【0024】
施工上、第3部材24の上端部38と第1部材20の下端部26との間、第3部材24の下端部40と第2部材22の上端部28との間及び第3部材24の一方の縁部42と第1柱12との間のそれぞれに隙間が生じ、該隙間を、無収縮コンクリートからなる充填材(図示せず)で満たすことがある。この場合、第3部材24の上端部38と第1部材20の下端部26との間、第3部材24の下端部40と第2部材22の上端部28との間及び第3部材24の一方の縁部42と第1柱12との間のそれぞれに前記充填材が介在する。
【0025】
斜材16はダンパーからなる。斜材16は、鋼管54と、該鋼管の中に配置され、該鋼管と同軸的に伸びる、低降伏点鋼からなる芯材56と、鋼管54を満たす、モルタルからなる充填材(図示せず)とを有する(例えば、商品名「アンボンドブレース」 新日鉄エンジニアリング株式会社製)。芯材56は前記充填材に定着されておらず、芯材56の一端部及び他端部はそれぞれ鋼管54の一端部及び他端部の外方に位置する。芯材56は軸力を受けて変形し、鋼管54及び該鋼管を満たす前記充填材は芯材56の座屈を防止する。このため、芯材56は、圧縮力を受けたとき、座屈することなく変形する。斜材16は、芯材56が変形することにより、地震時に第1柱12及び第2柱14のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する。斜材16は、鋼管54と、該鋼管の中に配置された芯材56と、鋼管54を満たす前記充填材とを有する上記の例に代え、オイルダンパーのような他のダンパーからなるものでもよい。
【0026】
第1柱12に斜材16を取り付けるとき、まず、第1柱12に上下方向に間隔を置いて固定された第1部材20及び第2部材22を用意し、次に、第1部材20の下端部26と第2部材22の上端部28との間に第3部材24を配置する。このとき、第3部材24の上端部38及び下端部40がそれぞれ第1部材20の下端部26及び第2部材22の上端部28に密着されるようにする。その後、第3部材の一方の縁部42を第1柱12に結合し、第3部材24の他方の縁部44を斜材16に結合する。
【0027】
地震時に第1柱12と第2柱14とが水平力を受けて振動することにより、第1柱12及び第2柱14のそれぞれに振動エネルギーが作用する。このとき、建物10の全体が曲げ変形又はせん断変形し、斜材16は第1柱12及び第2柱14から軸力を受ける。図1に示したように、斜材16の下端部は第1柱12に取り付けられ、斜材16の上端部は第2柱14に取り付けられている。このため、前記軸力は、前記水平力が第1柱12から第2柱14に向けて(図1における右向き)の力であるときに引張力であり、前記水平力が第2柱14から第1柱12に向けて(図1における左向き)の力であるときに圧縮力である。斜材16は前記軸力を受けて変形し、斜材16の芯材56は降伏する。これにより、前記振動エネルギーは低減され、第1柱12及び第2柱14のそれぞれの振動は小さくなる。
【0028】
前記軸力は第3部材24に伝わり、該第3部材に前記軸力の上下方向成分が作用する。前記軸力の上下方向成分の向きは、前記軸力が引張力であるときに上向きであり、前記軸力が圧縮力であるときに下向きである。第3部材24の上端部38が第1部材20の水平な下端部26に密着されているため、前記軸力の上下方向成分の向きが上向きであるとき、前記軸力の上下方向成分を第3部材24から第1部材20に伝達させることができ、前記軸力の上下方向成分を第1部材20に負担させることができる。また、第3部材24の下端部40が第2部材22の水平な上端部28に密着されているため、前記軸力の上下方向成分の向きが下向きであるとき、前記軸力の上下方向成分を第3部材24から第2部材22に伝達させることができ、前記軸力の上下方向成分を第2部材22に負担させることができる。このため、第3部材24が第1柱12に対して上下方向にずれることはなく、結合手段46のボルト50にせん断力が作用することはなく、ボルト50がせん断力を負担することはない。これにより、ボルト50の本数は比較的少なく、ボルト50の断面積は比較的小さく、結合手段46は比較的小型である。よって、結合手段46の購入費を低減させることができ、第1柱12への斜材16の取付けを経済的に行うことができる。
【0029】
なお、図2に示した例では、斜材(第1斜材)16の下方に第2斜材58が配置され、第3部材24の他方の縁部44は第1斜材16と第2斜材58とに結合されている。地震時に第1斜材16に作用する軸力が引張力であるとき、第2斜材58に作用する軸力は圧縮力である。このため、第3部材24が第1斜材16から受ける軸力の水平方向成分は第1柱12から第2柱14に向けての力であるのに対して、第3部材24が第2斜材58から受ける軸力の水平方向成分は第2柱14から第1柱12に向けての力であり、両者は相殺される。他方、第1斜材16に作用する軸力が圧縮力であるとき、第2斜材58に作用する軸力は引張力である。このため、第3部材24が第1斜材16から受ける軸力の水平方向成分は第2柱14から第1柱12に向けての力であるのに対して、第3部材24が第2斜材58から受ける軸力の水平方向成分は第1柱12から第2柱14に向けての力であり、両者は相殺される。
【0030】
第3部材24が、第1部材20の下端部26に隣接する水平な第3部分24cを有するため、前記軸力の上下方向成分が第3部材24から第1部材20に伝達されるとき、前記軸力の上下方向成分が第1部材20の下端部26の全部に分散して作用する。このため、前記軸力の上下方向成分が第1部材20の下端部26の一部に集中して作用することを防ぐことができ、第1部材20の下端部26が第3部材24から前記軸力の上下方向成分を受けて破壊することを防止することができる。
【0031】
第3部材24が、第2部材22の上端部28に隣接する水平な第4部分24dを有するため、前記軸力の上下方向成分が第3部材24から第2部材22に伝達されるとき、前記軸力の上下方向成分が第2部材22の上端部28の全部に分散して作用する。このため、前記軸力の上下方向成分が第2部材22の上端部28の一部に集中して作用することを防ぐことができ、第2部材22の上端部28が第3部材24から前記軸力の上下方向成分を受けて破壊することを防止することができる。
【0032】
第1部材20の厚さは、図2に示した例では、一定であるが、これに代え、図6に示すように、上方に向けて漸減してもよい。これにより、第1部材20の下端部26の支圧強度を維持しつつ第1部材20の体積を減らすことができ、該第1部材の材料費を低減させることができる。第2部材22の厚さは、図2に示した例では、一定であるが、これに代え、図6に示したように、下方に向けて漸減してもよい。これにより、第2部材22の上端部28の支圧強度を維持しつつ第2部材22の体積を減らすことができ、該第2部材の材料費を低減させることができる。
【0033】
第1部材20の鉄筋32のうち隣接する2つの鉄筋32の間の間隔は、等間隔でもよいし、下方に向けて狭くなってもよい。これにより、第1部材20の下端部26の支圧強度を強くすることができ、第1部材20の下端部26が第3部材24から前記軸力の上下方向成分を受けて破壊することを防止することができる。第2部材22の鉄筋36のうち隣接する2つの鉄筋36の間の間隔は、等間隔でもよいし、上方に向けて狭くなってもよい。これにより、第2部材22の上端部28の支圧強度を強くすることができ、第2部材22の上端部28が第3部材24から前記軸力の上下方向成分を受けて破壊することを防止することができる。
【0034】
第1部材20及び第2部材22のそれぞれは、第1柱12と一体をなす図2に示した例に代え、第1柱12と別個の部材でもよい。第1部材20及び第2部材22のそれぞれは、鉄筋コンクリート製である図2に示した例に代え、鋼製でもよい。なお、第1部材20及び第2部材22のそれぞれが、第1柱12と別個の部材である場合、第1部材20及び第2部材22のそれぞれが第3部材24から前記軸力の上下方向成分を受けたとき、第1部材20及び第2部材22のそれぞれが第1柱12に対して僅かにずれ、前記軸力の上下方向成分を第1部材20及び第2部材22のそれぞれに確実に負担させることができない可能性がある。これに対して、第1部材20及び第2部材22のそれぞれが第1柱12と一体をなす場合、第1部材20及び第2部材22のそれぞれが第3部材24から前記軸力の上下方向成分を受けたとき、第1部材20及び第2部材22のそれぞれが第1柱12に対してずれることはなく、前記軸力の上下方向成分を第1部材20及び第2部材22のそれぞれに確実に伝達させることができる。
【0035】
建物10は、図1に示したように、第1柱12から第1水平方向外方(図1における左方)へ間隔を置かれた第3柱60と、第1柱12と第3柱60との間に上下方向に間隔を置いて配置された複数の第1梁62、62aとを有し、該第1梁のうち1つの第1梁62aは第3部材24と同じ高さに位置する。このため、地震時に1つの第1梁62aが水平力を受けて該1つの第1梁に振動エネルギーが作用したとき、前記水平力は1つの第1梁62aから第3部材24を介して第1斜材16及び第2斜材58のそれぞれに効果的に伝わる。このため、第1斜材16及び第2斜材58のそれぞれは、第3部材24から効果的に軸力を受けることができ、前記振動エネルギーを効果的に吸収することができる。第3柱60及び第1梁62、62aのそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。建物10は、第2柱14から水平方向外方(図1における右方)へ間隔を置かれた第4柱64と、第2柱14と第4柱64との間に上下方向に間隔を置いて配置された複数の第2梁66とを有する。
【0036】
斜材16は、前記ダンパーである図1に示した例に代え、普通鋼からなる、H形鋼、溝形鋼等のような部材(図示せず)でもよいし、鋼管と、該鋼管の中に配置された、普通鋼からなるからなる芯材と、前記鋼管を満たす、モルタルからなる充填材とを有するもの(図示せず)でもよい。この場合、斜材16は、地震時に第1柱12及び第2柱14から前記軸力を受けたとき、該軸力に抵抗する。これにより建物10の耐震性を高めることができる。第1柱12及び第2柱14のそれぞれは、鉄筋コンクリート製である図2に示した例に代え、鋼製でもよい。
【0037】
取付け部の構造18は、第1柱12への斜材16の取付けに用いられている図1に示した例に代え、図7に示すように、梁68への斜材16の取付けに用いられていてもよい。梁68は第1柱12と第2柱14との間に配置され、第1柱12と第2柱14とに結合されている。第1部材20及び第2部材22は前記第1水平方向に間隔を置いて梁68に固定され、第1部材20は、水平面に対して垂直な端部26を有し、第2部材22は、第1部材20の端部26と向き合う、水平面に対して垂直な端部28を有する。第3部材24は第1部材20の端部26と第2部材22の端部28との間に配置されている。第3部材24は、第1部材20の端部26に密着された一端部38と、第2部材22の端部28に密着された他端部40と、一端部38と他端部40との間に間隔を置かれた上縁部42及び下縁部44とを有し、上縁部42は梁68に結合され、下縁部44は斜材16に結合されている。
【0038】
第3部材24の一端部38が第1部材20の端部26に密着され、第3部材24の他端部40が第2部材22の端部28に密着されているため、地震時に斜材16に作用した軸力が第3部材24に伝わったとき、前記軸力の水平方向成分を第1部材20及び第2部材22のそれぞれに伝達させ、これらに負担させることができる。これにより、前記軸力の水平方向成分を、第3部材24の上縁部42を梁68に結合する結合手段46に負担させないようにすることができ、結合手段46を小型化することができ、梁68への斜材16の取付けを経済的に行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
10 建物
12 第1柱
14 第2柱
16 斜材
18 取付け部の構造
20 第1部材
22 第2部材
24 第3部材
26 第1部材の下端部
28 第2部材の上端部
38 第3部材の上端部
40 第3部材の下端部
42 一方の縁部
44 他方の縁部
24a 第1部分
24b 第2部分
24c 第3部分
24d 第4部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の柱に斜材を取り付ける取付け部の構造であって、
前記柱に上下方向に間隔を置いて固定された第1部材及び第2部材であって水平な下端部を有する第1部材及び該第1部材の前記下端部から下方へ隔てられた水平な上端部を有する第2部材と、
前記第1部材の前記下端部と前記第2部材の前記上端部との間に配置された第3部材であって前記第1部材の前記下端部に密着された上端部と、前記第2部材の前記上端部に密着された下端部と、前記上端部と前記下端部との間に水平方向に間隔を置かれた2つの縁部であって一方の縁部が前記柱に結合され、他方の縁部が前記斜材に結合された2つの縁部とを有する第3部材とを含む、柱への斜材取付け部の構造。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは前記柱と一体をなす、請求項1に記載の柱への斜材取付け部の構造。
【請求項3】
前記第3部材は、前記柱に固定された、水平面に対して垂直な第1部分と、該第1部分及び水平面のそれぞれに対して垂直な第2部分であって前記斜材に固定された第2部分と、前記第1部分の上の水平な第3部分であって前記第1部材の前記下端部に隣接する第3部分と、前記第1部分の下の水平な第4部分であって前記第2部材の前記上端部に隣接する第4部分とを有する、請求項1又は2に記載の柱への斜材取付け部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−36602(P2012−36602A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175935(P2010−175935)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(596033576)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】