説明

建物内光伝送路

【課題】建物内光伝送路において、短期工事で、低コストで敷設することを可能とすることである。
【解決手段】建物内光伝送路10は、幹線光ケーブル18から建物12内に引き込まれる支線光ケーブル20と、建物12内に配置され、支線光ケーブル20を建物12の各階16−1〜16−nへ分岐する階別分配器22と、階別分配器22に基端側が接続され、建物12のエレベータ昇降路24内に配線され、配線用孔32を介して建物12の各階16−1〜16−nへ敷設される階別光ケーブル26と、階別光ケーブル26の終端に固定され、建物12の各階16に配置され、各階16の室内機器からの配線を接続するための機器からなる終端ユニット28とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内光伝送路に係り、特にエレベータ昇降路を利用した建物内光伝送路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル等の建物においては、入居者やテナントが容易に通信配線を利用できるように予め建物に光ケーブル等を配線した通信用伝送路を整備することが行われている。これにより、建物自体の付加価値を高めることができるからである。
【0003】
複数階を有する建物における光伝送路の敷設方式は、例えば、幹線光ケーブルから分岐した支線光ケーブルを建物に引き込み、この支線光ケーブルを分配器等で分配し、更に建物の高さ方向に配線しつつ、各階の居住者・テナント等に配線する。
【0004】
新規に建築される建物では、予め配線配管等の配線経路が確保されて建物が建築されるので、居住者・テナントは容易に通信配線を利用することが可能である。一方、既存の建物について、建物の高さ方向の配線経路を確保する場合に、建物の床壁をX線による非破壊検査等で各階間の電気ケーブルや配管の位置を調査する。この事前調査後、電気ケーブルや配管を避けて建物の床壁に配線用孔を開けて配線用配管を設置し、建物の高さ方向の配線経路を形成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、既存建物の光伝送路の敷設方式では、非破壊検査等の事前調査が必要である。また、建物の床壁は、600mm程度の厚みがあり、配線用孔の孔開け施工も大規模な作業となる場合がある。これらの事情に伴って、工期とコストが増大するという問題がある。また、非破壊検査や孔開け施工中には、その室内は使用できないという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、短期工事で、低コストで敷設することが可能な建物内光伝送路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建物内光伝送路は、幹線光ケーブルから建物内に引き込まれる支線光ケーブルと、建物内に配置され、支線光ケーブルを建物の各階へ分岐する階別分配器と、階別分配器に基端側が接続され、建物のエレベータ昇降路内に配線され、建物の各階へそれぞれ敷設される複数の階別光ケーブルと、階別光ケーブルを通すために、エレベータ昇降路の垂直壁に各階ごとに設けられる複数の配線用孔と、階別光ケーブルの終端にそれぞれ固定され、各階の室内機器からの配線と接続する終端ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る建物内光伝送路において、階別光ケーブルは、敷設される階に応じて、それぞれ長さが異なることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る建物内光伝送路において、終端ユニットは、光分配器で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建物内光伝送路によれば、支線光ケーブルと、階別分配器と、建物のエレベータ昇降路内に配線され、建物の各階へそれぞれ敷設される複数の階別光ケーブルと、エレベータ昇降路の垂直壁に各階ごとに設けられる複数の配線用孔と、階別光ケーブルの終端にそれぞれ固定され、各階の室内機器からの配線と接続する終端ユニットとを有する。このように、エレベータ昇降路を用いて各階に光ケーブルを敷設するので、建物内光伝送路を短期工事で、低コストで敷設することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、図面を参照し説明する。
【0012】
まず、本実施形態の建物内光伝送路の全体構成について説明し、次に、建物内光伝送路の敷設方法について説明する。図1は、本実施形態の建物内光伝送路が建物に敷設された全体構成を示す図である。本実施形態の建物内光伝送路10は、既存の建物12に好適に適用され、建物12は、エレベータシステム14を備え、複数の階16−1〜16−nを有している。図1の建物12は、4階建てであるが、これに限定されない。なお、建物12は、一般居住者用のマンション、複数のテナントが入居するオフィスビルであっても良い。
【0013】
建物内光伝送路10は、幹線光ケーブル18から建物12内に引き込まれる支線光ケーブル20と、建物12内に配置され、支線光ケーブル20を建物12の各階16−1〜16−n(以下、単に各階16と記す)へ分岐する階別分配器22と、階別分配器22に基端側が接続され、建物12のエレベータ昇降路24内に配線され、建物12の各階16へ敷設される階別光ケーブル26と、階別光ケーブル26の終端に固定され、建物12の各階16に配置され、各階16の室内機器からの配線を接続するための機器からなる終端ユニット28と、を備えている。
【0014】
なお、本実施形態において、幹線光ケーブル18、支線光ケーブル20,階別光ケーブル26等の光ケーブルは、一般的な光ケーブルで構成することができ、心線がプラスチック又は高純度のガラスで構成され、その周囲が合成樹脂等のカバーで被覆されているものである。これら光ケーブルは必要とされるデータ伝送容量に応じて適宜選択される。
【0015】
幹線光ケーブル18は、インターネット網や地域IP網光ケーブル等で構成され、支線光ケーブル20は、この幹線光ケーブル18から分岐し、所定の建物12に引き込まれる光ケーブルである。図1において、1本の支線光ケーブル20が、建物内に引き込まれているが、複数本であっても良い。
【0016】
階別分配器22は、支線光ケーブル20を複数の階別光ケーブル26に分岐する機能を有する光分配器である。階別分配器22は、支線光ケーブル20を接続する入力側接続端子と、複数の階別光ケーブル26を接続する出力側接続端子を有し、入力側接続端子と出力側接続端子は光配線回路で接続されている。階別分配器22は、建物12内の任意の場所に配置することができる。なお、階別分配器22は、建物12の外側でも良く、建物内エレベータ昇降路24内に配置されても良い。この階別分配器22は、例えばMDF(Main Disutribution Frame)装置やPON(Passive Optical Network)装置等で構成することができる。
【0017】
階別光ケーブル26は、その基端側が階別分配器22に接続され、支線光ケーブル20を建物12の各階16へ分岐する光ケーブルである。本実施形態においては、この階別光ケーブル26が、エレベータ昇降路24内に配線されている。このように、エレベータ昇降路24内に、建物12の高さ方向の縦系列の配線となる階別光ケーブルを配線することとしたので、背景技術で説明したような、高さ方向の配線経路を確保するための事前調査や床壁の孔開け作業を不要とすることができる。この階別光ケーブル26は、例えば、各階16毎に一本の光ケーブルが用意され、図1に示す4階建ての建物12であれば、階別光ケーブル26は4本配線される。このように、階別光ケーブル26は、階別に1本配線されることが好ましく、このようにすることで、エレベータ昇降路24内の敷設スペースを最小限に抑えることができる。また、階別光ケーブル26により階別に配線することとしたので、ケーブル重量を分散することができる。また、階別光ケーブル26が配線されるエレベータ昇降路24内は、防火区画になっているので、災害時においても通信経路を確保することができる。
【0018】
終端ユニット28は、階別光ケーブル26の終端に固定され、各階16に配置される。
例えば、各階16の天井裏空間に配置される。このような配置は、建物12の室内とエレベータ昇降路24を仕切るエレベータ昇降路壁30に配線用孔32を形成し、この配線用孔32に階別光ケーブル26を貫通することで行うことができる。この終端ユニット28は、各階16の室内機器からの配線を接続するための機器からなる。例えば、1階の天井裏空間に配置された終端ユニット28には、1階の室内機器からの配線が接続される。
【0019】
図2は、終端ユニット28の具体例を示す図である。図2に示すように、この終端ユニット28は、例えば、メディアコンバータ34と、HUB36と、メディアコンバータ34へ電源を供給する電源装置38と、を備えている。メディアコンバータ34に階別光ケーブル26が接続され、これらの機器34,36,38が、例えば、1つのボックスに収められることにより、階別光ケーブル26と終端ユニット28が固定することができる。このように、終端ユニット28は、室内機器からの配線を接続するための機器を備えているので、室内の端末やLANケーブル等のHUB36に接続するだけで、室内機器を建物内光伝送路10へ接続することができる。
【0020】
なお、終端ユニット28は、各階16の室内機器からの配線を容易にすることを目的としている。従って、例えば、個別のユーザまで更に終端ユニット28から光ケーブルを配線する場合には、終端ユニット28は光分配器等で構成するのみでも良い。
【0021】
上述した階別光ケーブル26と終端ユニット28は、建物12に光伝送路を形成する前までに、図2に示すように、両者を予め固定し、終端ユニット付き階別光ケーブル40として構成しておくことが好適である。これにより、後述するように建物での敷設作業を短期に行うことができる。この場合において、建物12の規模や室内機器の数に応じて、階別光ケーブル26、終端ユニット28の適当なものを選択して終端ユニット付き階別光ケーブル40を作製することができる。
【0022】
例えば、上述した例では、階別光ケーブル26は、階毎に1本用意されている。例えば、ある階では、大容量のデータ通信容量を確保しなければならない場合には、その階だけ階別光ケーブル26を数本用意しても良い。当然、階別光ケーブル26が数本敷設される場合には、それに対応して終端ユニット28の構成を適宜変更する。
【0023】
また、階別光ケーブル26は、敷設される階に応じて、ケーブル長を予め調整しておくと良い。
【0024】
また、建物12の階数や階面積に応じて大体のレベル別にわけ、階別光ケーブル26の数や終端ユニット28の構成、及びその組み合わせ等を決定しても良い。
【0025】
階別光ケーブル26と終端ユニット28は、後の敷設作業や管理を容易にするために設置階が識別可能な階別マークを付することが好ましい。例えば、この階別マークは、階をを表す文字、階毎に互いに異なるカラーシールを階別光ケーブル26と終端ユニット28に付することで実施することができる。また、階別光ケーブル26を被覆する樹脂カバーの色を変えても良い。また、階別光ケーブル26の基端側は、階別分配器22に接続されるので、基端側にも識別可能なマークを付しておくことが好ましい。
【0026】
次に、本実施形態の建物内光伝送路の敷設方法について説明する。図3は、終端ユニットと階別光ケーブルを配線する様子を示す図であり、図4は、作業の流れを示すフローチャートである。この建物内光伝送路の敷設は、エレベータシステム14のリニューアル工事の際に行うと好適である。
【0027】
上述した終端ユニット付き階別光ケーブル40を、予め建物12の規模や室内機器の数に応じて作製しておく(S10)。次に、昇降路壁30にエレベータ昇降路24と建物室内空間が連通するように、昇降路壁30に配線用孔32を形成する(S12)。配線用孔32は、望ましくは、各階16の天井裏空間に連通する位置に開けることが好ましい。これにより、階別光ケーブル26を室内空間に露出させずに、配線することができる。配線用孔32の施工作業は、作業員Sがエレベータかご42に乗り、エレベータかご42を足場にして行うことができる。作業員Sの移動は、エレベータかご42をメンテナンスモードなどの低速運転により行うと良い。
【0028】
次に、エレベータかご42に終端ユニット付き階別光ケーブル40を載せる。そして、上方階から下方階にエレベータかご42を下降させながら、配線用孔32から終端ユニット28を天井裏空間に配置して行く(S14)。天井裏空間に終端ユニット28を配置した後は、この配線用孔32を熱膨張用材料からなるキャップ等で塞ぎ、防火区画の対策を行う。また、配線用孔32から階別光ケーブル26がエレベータ昇降路24側に垂らされることになるので、階別光ケーブル26が傷つかないように、例えば、配線用孔32から、円を描くようにして、下方に垂らすようにすると良い。
【0029】
このようにして、4階、3階、2階、1階へとエレベータかご42を下降させながら、終端ユニット28を天井裏空間に配置させていけば、エレベータかご42に載せられた階別光ケーブル26の巻きが自然にほどかれて、エレベータ昇降路24内に配線される(S16)。
【0030】
階別光ケーブル26の配線の際には、絡まらない様に、メッセンジャーワイヤ等に巻き付けて配線すると好適である。このメッセンジャーワイヤは、エレベータ電気ケーブル用に使用されている既設のものを用いても良いし、別途階別光ケーブル26用に設けても良い。なお、上層階からの階別光ケーブル26等は、その重量が重くなることが考えられるので、階別光ケーブル26の途中でエレベータ昇降路24の内壁に固定したり、エレベータ昇降路24内を螺旋状に配置し、配線しても良い。その後、階別光ケーブル26を階別分配器22に接続する(S18)。
【0031】
上述した実施形態では、エレベータかご42を上層階から下層階へ下降させながら敷設作業を行っているが、下層階から上層階へ上昇させながら敷設作業を行っても良い。
【0032】
なお、上記敷設作業においては、配線用孔32の孔開け作業や終端ユニット28の配置の際に、エレベータかご42を所定の位置に停止させる必要がある。従って、所定の位置に簡単に停止できるような運転モードをエレベータ制御装置に設けても良い。
【0033】
終端ユニット28及び階別光ケーブル26の配線前又は配線後、図1に示すように、幹線光ケーブル18から建物内に支線光ケーブル20を引き込み、階別分配器22に接続する。これにより、建物内の光伝送路が完成する。
【0034】
このような配線方法においては、エレベータかご42をエレベータ昇降路24内での敷設作業の足場とすることができる。
【0035】
上述したように、階別光ケーブル26を、エレベータ昇降路24内に配線することとしたので、背景技術で説明したような、事前調査や床壁の孔開け作業を不要となり、短期に敷設作業をすることができる。
【0036】
また、上述した敷設方法においては、エレベータかご42を敷設作業の移動可能な足場とすることができるので、これにより、作業効率を向上させることができる。
【0037】
上記の図3において、終端ユニット付き階別光ケーブル40は、エレベータかご42の天井に乗せるものとして説明したが、終端ユニット付き階別光ケーブル40をエレベータかご42の室内に置いて、エレベータかご42の室内から順次階別光ケーブル26をエレベータかご40の天井側に繰り出すこともできる。この繰り出しのための開口としては、エレベータかごの天井部に設けられ、通常は蓋がされている一般救出用口を用いることができる。また、好ましくは、繰り出しのための適当なケーブルガイドが設けられるとよい。
【0038】
図5は、そのような構成を有するエレベータかご42の様子を示す図である。この図は、建物内光伝送路を敷設するときのエレベータかご42の室内、およびエレベータかご42の天井付近の様子を示す図である。建物内光伝送路を敷設するとき、エレベータかご42の天井部の一般救出用口50から図示されていない蓋が取り外される。そして、エレベータかご42の室内に、終端ユニット付き階別光ケーブル40が載せられる。この場合、図3で示すように、各階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40を順次積み上げてもよいが、好ましくは、図5に示すように、回転できるドラム52に各階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40を巻いたものを用いるとよい。このような光ケーブルを巻き付けたドラム52を用いることで、光ケーブルの敷設作業性を向上させることができる。
【0039】
ドラム52には、各階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40を別々に巻き取るようにしてもよいが、図2に示すように、各階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40の長さと位置の関係が予め定まっているので、その長さの位置関係を維持しながら、各階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40を相互に結び付けておくことができる。例えば、各階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40の長さがそれぞれ7mの差があるものとすると、最上階の終端ユニット付き階別光ケーブル40の先端から7m下の位置に、その次の各階用の終端ユニット28がくるように、相互に結び付けておく。以下同様に、全部の各階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40を相互に結び付けておいて、これをドラム52に巻き取っておくことができる。こうすることで、最上階の終端ユニット付き階別光ケーブル40をドラム52から引き出せば、その7m後ごとに、順次次の階の終端ユニット付き階別光ケーブル40を引き出すことができる。なお、この結び付けの方法は図3で説明した終端ユニット付き階別光ケーブル40についても適用できる。
【0040】
ケーブルガイド60は、エレベータかご42の一般救出用口50の近傍に設けられ、ドラム52から順次繰り出される階別光ケーブル26を適当に案内して保持する機能を有する部材である。このケーブルガイド60は、エレベータかご42に最初から標準的に設けておくこともできるが、好ましくは、エレベータかご42には、取付ネジ穴等の取付部を設けるのみとすることがよい。このようにすることで、通常のときにはエレベータかご42の天井部に余分な部材を設けず、光ケーブル敷設のときに、この取付部を用い、着脱自在にケーブルガイド60を特別に取り付けるものとすることができる。
【0041】
図6は、ケーブルガイド60が、エレベータかご42の天井部の外側で、一般救出用口50の近傍に取り付けられる様子を示す図である。ケーブルガイド60は、ガイドロール62,66をそれぞれ先端に有する支持アーム64,68と、これらの2つのガイドロール62,66が相互に接近するように付勢するバネ等の付勢手段70と、一方の支持アーム64の根元を固定し、他方の支持アーム68を回動自在に指示する基台72とから構成される。ガイドロール62,66は、金属製またはプラスチック製の円筒ロールを用いることができ、その円筒面は滑らかに加工され、好ましくは潤滑性表面処理が施される。基台72は、エレベータかご42の天井部の一般救出用口50の近傍に設けられる取付部51にしっかりと着脱自在に取り付けられる。取付部51は、取付ネジ穴のほか、例えば、一般救出用口50をふさぐ図示されていない蓋を着脱自在に止めるスナップ穴等を用いてもよい。
【0042】
ケーブルガイド60の作用は以下の通りである。ケーブルガイド60は、光ケーブルの建物内敷設に際し、エレベータかご42の一般救出用口50を覆う蓋を外し、その近傍に予め設けられている取付部51に基台72がしっかりと取り付けられて設定される。このとき、2つのガイドロール62,66は、付勢手段70により互いに接触している。階別光ケーブル26を敷設するときは、エレベータかご42の室内のドラム52から、所定の階の階別光ケーブル26をエレベータかご42の天井部の開口である一般救出用口50に導き、この2つのガイドロール62,66の間に挟む。そして、その階別光ケーブル26を2つのガイドロール62,66の間に挟んだ状態で繰り出せば、ガイドロール62,66はケーブルの繰り出しの動きに適当な付勢力で適応しながら相互の間隔を変化させつつ回転してケーブルを支持しながら案内する。このようにして、階別光ケーブル26は、ケーブルガイド60にその位置を案内されながら、エレベータかご42の室内のドラム52から順次エレベータかご42の天井部の外側に繰り出される。
【0043】
図7は、エレベータかご42の室内に置かれたドラム52から階別光ケーブル26を順次繰り出して、終端ユニットと階別光ケーブルを配線する様子を示す図であり、上記の図3に対応するものである。作業の流れは図4で説明したものと同様であり、S14以降の工程の内容が一部異なるのみであるので、その部分を中心に説明する。
【0044】
配線用孔32の施工作業の工程(S12)は、上記のように、作業員Sがエレベータかご42に乗り、エレベータかご42を足場にして行うことができ、作業員Sの移動は、エレベータかご42をメンテナンスモードなどの低速運転により行うと良いことは同様である。
【0045】
次に、エレベータかご42の室内に、終端ユニット付き階別光ケーブル40を巻き取ってあるドラム52を載せる。そして、作業員Sは、エレベータかご42の天井部における一般救出用口50にはめ込まれている蓋を外し、その周辺に設けられている取付部51を用いてケーブルガイド60を取り付ける。次に、ドラム52から、所定の階用の終端ユニット付き階別光ケーブル40を一般救出用口50からケーブルかご42の天井部の外側に出し、ケーブルガイド60に挟み込む。そして、階別光ケーブル26を順次繰り出し、上方階から下方階にエレベータかご42を下降させながら、配線用孔32から終端ユニット28を天井裏空間に配置して行く(S14)。
【0046】
このようにして、4階、3階、2階、1階へとエレベータかご42を下降させながら、終端ユニット28を天井裏空間に配置させていけば、エレベータかご42の室内に載せられたドラム52から階別光ケーブル26が順次繰り出されて、エレベータ昇降路24内に配線される(S16)。その後、階別光ケーブル26を階別分配器22に接続する(S18)。なお、エレベータかご42を下層階から上層階へ上昇させながら敷設作業を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の建物内光伝送路が建物に敷設された全体構成を示す図である。
【図2】終端ユニットの例を示す図である。
【図3】階別光ケーブル及び終端ユニットを配線する様子を示す図である。
【図4】作業の流れを示すフローチャートである。
【図5】終端ユニット付き階別光ケーブルをエレベータかご室内に置く場合の様子を説明する図である。
【図6】ケーブルガイドの構成等を説明する図である。
【図7】終端ユニット付き階別光ケーブルをエレベータかご室内に置く場合の作業の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 建物内光伝送路、12 建物、14 エレベータシステム、16 階、18 幹線光ケーブル、20 支線光ケーブル、22 階別分配器、24 エレベータ昇降路、26 階別光ケーブル、28 終端ユニット、30 エレベータ昇降路壁、32 配線用孔、34 メディアコンバータ、36 HUB、38 電源装置、40 終端ユニット付き階別光ケーブル、42 エレベータかご、50 一般救出用口、51 取付部、52 ドラム、60 ケーブルガイド、62,66 ガイドロール、64,68 支持アーム、70 付勢手段、72 基台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線光ケーブルから建物内に引き込まれる支線光ケーブルと、
建物内に配置され、支線光ケーブルを建物の各階へ分岐する階別分配器と、
階別分配器に基端側が接続され、建物のエレベータ昇降路内に配線され、建物の各階へそれぞれ敷設される複数の階別光ケーブルと、
階別光ケーブルを通すために、エレベータ昇降路の垂直壁に各階ごとに設けられる複数の配線用孔と、
階別光ケーブルの終端にそれぞれ固定され、各階の室内機器からの配線と接続する終端ユニットと、
を備えることを特徴とする建物内光伝送路。
【請求項2】
請求項1に記載の建物内光伝送路において、
階別光ケーブルは、敷設される階に応じて、それぞれ長さが異なることを特徴とする建物内光伝送路。
【請求項3】
請求項1に記載の建物内光伝送路において、
終端ユニットは、光分配器で構成されていることを特徴とする建物内光伝送路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−297212(P2007−297212A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110218(P2007−110218)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【分割の表示】特願2006−133293(P2006−133293)の分割
【原出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】