説明

建物外壁の施工方法

【課題】四辺合じゃくりを利用した外壁材の施工方法に代わる新規な施工方法を提供するものであり、段差加工の無い縦端面と合じゃくり部の接合において、防水性の確保が可能な技術を提供する。
【解決手段】 三辺に合じゃくり部が形設される四角板状の外壁材1A・1B・1Cと、各辺に合じゃくりが形設される断面略L字状の出隅コーナー材20A・20Bと、接合用役物6と、を用いる建物外壁の施工方法であって、複数配列される外壁材1A・1B・1Cの少なくとも一つの外壁材について横幅方向の寸法調整を行うとともに、切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面1nと、裏合じゃくり部24a、及び/又は、隣り合う他の外壁材の裏合じゃくり部13aとを、前記接合用役物6を用いて接合する、建物外壁の施工方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯業系サイディングなどの外壁材(出隅コーナー材なども含む)を用いた建物外壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窯業系サイディングなどの外壁材を接合する形態として、四角形の板状の外壁材の四辺に合じゃくり加工を施し、上下に隣り合う外壁材の間の横目地部、左右に隣り合う外壁材の縦目地部において、それぞれ合じゃくり接合を形成する施工方法が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、四角形の板状の外壁材の四辺は、工場において合じゃくり加工がなされたうえで出荷されるものであるが、通常、施工現場において、外壁材の横幅の寸法調整が必要とされることになる。外壁材の幅寸法は規格化されており、規格化された幅寸法のものを並べただけでは、外壁全体の幅寸法と一致させることは困難であるからである。
【0004】
そこで、施工現場において、切断によって外壁材の幅寸法を縮小させることで寸法調整をするとともに、切断端面に合じゃくり加工を施すことで、寸法調整された外壁材についても合じゃくり接合を形成することが知られている。また、このような施工現場における合じゃくり加工の加工性について改善を図る技術も知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−345682号公報
【特許文献2】特開2005−105701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、合じゃくり接合による建物外壁の施工方法は、施工現場での外壁材の幅寸法の調整や、合じゃくり加工の必要が生じることが考えられ、特許文献2に示されるような専用の切削刃物や、加工作業などが必要となる。このため、施工現場での外壁材の合じゃくり加工を発生させないで接合できることが望ましいといえる。つまり、施工性に優れた接合方法が望まれるのである。
【0007】
一方、単に外壁材の幅寸法を縮小するためだけの切断加工であって、合じゃくり加工などの段差加工が不要である場合には、仮に施工現場での外壁材の加工作業が生じた場合であっても、その作業負担は、合じゃくり加工をする場合と比較して、短時間で簡易に行うことができるため、作業負担は少ないものと考えられる。
【0008】
ところが、切断された外壁材の縦端面に合じゃくり部などの段差加工を行わないとすると、隣り合う外壁材の合じゃくり部との間において、目地部における防水性を確保するための新たな構造が必要となる。段差加工の無い縦端面と合じゃくり部を接合させるためである。
【0009】
仮に、目地部における防水性を確保しつつ、段差加工の無い縦端面と合じゃくり部を接合させる接合形態を実現することができれば、横方向に隣り合う外壁材において、一方の外壁材を切断加工するだけで、施工現場において容易に調整作業が行えることになる。
【0010】
なお、段差加工の無い縦端面と接合させる合じゃくり部については、外壁材の裏面側を切り欠くことによって形成される裏合じゃくり部であることが前提とされる。外壁材の表面側を切り欠くことによって形成される表合じゃくり部であると、合じゃくり部を隠すための別部材が必要になるためである。
【0011】
他方、外壁材の高さ寸法の調整については、一般的に、外壁材は下列から上列に向かって積み上げられるものであり、最上列に配置される外壁材の上辺側を切断除去するようにして高さ寸法の調整が行われることになる。そして切断により新たに形成される端面については、軒天などの近くに配置されて他の外装材に接合されることは無いため、特段の処理は不要である。
【0012】
このようなことから、外壁材の上辺と下辺については、従来どおり工場などにおいて合じゃくり加工を予め実施しておき、上下に隣り合う外壁材同士にて合じゃくり接合を実施することについては、特段の問題が生じることはない。
【0013】
本発明は、以上の問題に鑑みたものである。つまり、四辺合じゃくりを利用した外壁材の施工方法に代わる新規な施工方法を提供するものであり、横方向に隣り合う外壁材の段差加工の無い縦端面と合じゃくり部の接合において、防水性を確保できる新規な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1に記載のごとく、
上辺に表合じゃくり部が形設され、
下辺に裏合じゃくり部が形設され、
右辺と左辺のいずれか一方の縦辺に裏合じゃくり部が形設され、他方の縦辺に段差加工の無い縦端面が形設されることにより、
三辺に合じゃくり部が形設される四角板状の外壁材と、
上辺に表合じゃくり部が形設され、
下辺に裏合じゃくり部が形設され、
側端部の二つの縦辺に裏合じゃくり部が形設されることにより、
各辺に合じゃくりが形設される断面略L字状の出隅コーナー材と、
横方向に隣り合う一方の外壁材の裏合じゃくり部と他方の外壁材の段差加工の無い縦端面を接合するための接合用役物であって、両外壁材の接合箇所から浸入する水を排水するための上下方向の縦溝部を有する接合用役物と、
を用いる建物外壁の施工方法であって、
複数配列される前記外壁材の少なくとも一つの外壁材について横幅方向の寸法調整を行うとともに、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面と、前記出隅コーナー材の縦辺の裏合じゃくり部とを、前記接合用役物を用いて接合する、
及び/又は、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面と、隣り合う他の外壁材の裏合じゃくり部とを、前記接合用役物を用いて接合する、
建物外壁の施工方法とするものである。
【0016】
また、請求項2に記載のごとく、
前記外壁材の縦辺の裏合じゃくり部には、
前記接合用役物の一部が挿入され、
挿入された接合用役物の部位と、前記裏合じゃくり部の間、
及び、
挿入された接合用役物の部位と、前記段差加工の無い縦端面の間、
には、パッキン材が介設されることで、シール面が形成されることとするものである。
【0017】
また、請求項3に記載のごとく、
前記出隅コーナー材の縦辺の裏合じゃくり部には、
前記接合用役物の一部が挿入され、
挿入された接合用役物の部位と、前記裏合じゃくり部の間、
及び、
挿入された接合用役物の部位と、切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面の間、
には、パッキン材が介設されることで、シール面が形成されることとするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
外壁材を用いて構成されるべき外壁の横幅寸法が、外壁材の加工前の横幅寸法の合計値よりも狭い場合には、出隅コーナー材の隣に配置される外壁材を切断して寸法調整するだけで対応できることとなる。
また、横方向に隣り合う外壁材の間に形成される縦目地部、及び、外壁材と出隅コーナー材の間に形成される縦目地部において、水が浸入するような場合であっても、浸入する水を接合用役物によって排水できることになるため、合じゃくり部と段差加工の無い縦端面、及び、合じゃくり部と切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面を接合する形態において、防水性を確保することが可能となる。
また、上下に隣り合う外壁材の間に形成される横目地部、及び、上下に隣り合う出隅コーナー材の間に形設される横目地部、については、それぞれ、合じゃくり接合による防水性を確保することが可能となる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明においては、
外壁材と接合用役物の間における水の浸入を防止することができ、防水性を確保することが可能となる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明においては、
出隅コーナー材と接合用役物の間における水の浸入を防止することができ、防水性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の施工方法について示す正面図。
【図2】実施例1の施工方法について示す水平断面図。
【図3】実施例1の上下に隣り合う外壁材同士の合じゃくり接合について示す縦断面図。
【図4】(a)は外壁材の正面側斜視図。(b)は外壁材の裏面側斜視図。(c)は出隅コーナー材の正面側斜視図。(d)は出隅コーナー材の裏面側斜視図。
【図5】実施例2の構成を出隅部に配置する例について示す斜視図。
【図6】実施例2の構成について示す水平断面図。
【図7】実施例2の構成を横方向に隣り合う外壁材の接合部に配置する例について示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態では、図1乃至図6に示すごとく、
上辺11に表合じゃくり部11aが形設され、
下辺12に裏合じゃくり部12aが形設され、
右辺13と左辺14のいずれか一方の縦辺(図の例では右辺13)に裏合じゃくり部13aが形設され、他方の縦辺(図の例では左辺14)に段差加工の無い縦端面14aが形設されることにより、
三辺に合じゃくり部が形設される四角板状の外壁材1A・1B・1Cと、
上辺21(図4(c)(d)参照)に表合じゃくり部21aが形設され、
下辺22(図4(c)(d)参照)に裏合じゃくり部22aが形設され、
側端部の二つの縦辺23・24(図4(c)(d)参照)に裏合じゃくり部23a・24aが形設されることにより、
各辺に合じゃくりが形設される断面略L字状の出隅コーナー材20A・20Bと、
横方向に隣り合う一方の外壁材1Aの裏合じゃくり部13aと他方の外壁材1Bの段差加工の無い縦端面14aを接合するための接合用役物6であって、両外壁材1A・1Bの接合箇所から浸入する水を排水するための上下方向の縦溝部17a・17b(図6参照)を有する接合用役物6と、
を用いる建物外壁の施工方法であって、
複数配列される外壁材1A・1B・1Cの少なくとも一つの外壁材について横幅方向の寸法調整を行うとともに、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面1nと、前記出隅コーナー材20Bの縦辺24の裏合じゃくり部24aとを、前記接合用役物6を用いて接合する、
(及び/又は、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面1nと、前記出隅コーナー材20Aの縦辺23の裏合じゃくり部23aとを、前記接合用役物6を用いて接合する、)
及び/又は、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面1nと、隣り合う他の外壁材の裏合じゃくり部13aとを、前記接合用役物6を用いて接合する、
建物外壁の施工方法とするものである。
【0024】
特に、実施例1では、図1及び図2に示すごとく、
前記出隅コーナー材20Bの隣に配置される外壁材1Cについて、縦辺に裏合じゃくり部13aを有する部位1Mを切断除去することで、外壁材1Cの横幅方向の寸法調整を行うとともに、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面1nと、前記出隅コーナー材20Bの縦辺24の裏合じゃくり部24aとを、前記接合用役物6を用いて接合する、
建物外壁の施工方法とするものである。
【0025】
以上により、図1に示すごとく、外壁材1A・1B・1Cを用いて構成されるべき外壁の横幅寸法Yが、外壁材1A・1B・1Cの加工前の横幅寸法の合計値(図1、図2の例では、横幅寸法Y1の3倍)よりも狭い場合には、出隅コーナー材20Bの隣に配置される外壁材1Cなどを切断して寸法調整するだけで対応できることとなる。
【0026】
また、図1及び図2に示すごとく、横方向に隣り合う外壁材の間に形成される縦目地部M1、及び、外壁材と出隅コーナー材の間に形成される縦目地部M2において、水が浸入するような場合であっても、浸入する水を接合用役物6によって排水できることになるため、合じゃくり部13aと段差加工の無い縦端面14a、及び、合じゃくり部24aと切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面1nを接合する形態において、防水性を確保することが可能となる。
【0027】
また、図1及び図3に示すごとく、上下に隣り合う外壁材1A・1Dの間に形成される横目地部M3、及び、上下に隣り合う出隅コーナー材20A・20Cの間に形設される横目地部M4、については、それぞれ、合じゃくり接合による防水性を確保することが可能となる。
【0028】
また、図5及び図6に示すごとく、
前記出隅コーナー材20Bの縦辺24の裏合じゃくり部24aには、
前記接合用役物6の一部が挿入され、
挿入された接合用役物6の部位と、前記裏合じゃくり部24aの間、
及び、
挿入された接合用役物6の部位と、切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面1nの間、
には、パッキン材73が介設されることで、シール面16a・16b(図6参照)が形成されることとするものである。
【0029】
これにより、出隅コーナー材20Bと接合用役物6の間における水の浸入を防止することができ、防水性を確保することが可能となる。
【0030】
また、図7に示すごとく、
前記外壁材1Bの縦辺(右辺13)の裏合じゃくり部13aには、
前記接合用役物6の一部が挿入され、
挿入された接合用役物6の部位と、前記裏合じゃくり部13aの間、
及び、
挿入された接合用役物6の部位と、前記段差加工の無い縦端面14aの間、
には、パッキン材73が介設されることで、シール面(図6に示すシール面16a・16bと同様のもの)が形成されることとするものである。
【0031】
これにより、外壁材1B・1Cと接合用役物6の間における水の浸入を防止することができ、防水性を確保することが可能となる。
以下、実施例を用いて詳細について説明する。
【実施例1】
【0032】
図4(a)(b)に示すごとく、本実施例1では、四角板状の外壁材1Aについて、上辺11に表合じゃくり部11a、下辺12に裏合じゃくり部12a、右辺13に裏合じゃくり部13a、がそれぞれ形設される一方、左辺14は段差加工の無い縦端面14aで構成され、全体として三辺合じゃくりを有する外壁材1Aが構成されるものとしている。なお、本明細書中の説明における上下左右の位置関係は、外壁材1Aの外装面を構成するおもて面1c側を見たときを基準とするものであり、例えば、図4(a)においては、紙面上側が上、紙面下側が下、紙面右側が右、紙面左側が左、とされるものである。
【0033】
また、本明細書中において、図4(b)の縦端面14aのような「段差加工の無い縦端面」とは、外壁材を施工現場にて外壁面に対して垂直方向に切断することで単純に形成される垂直切断面(切りっ放し端面ともいう)や、工場などで規格寸法に形成された状態で単純な垂直端面を形成している端面も含むものであり、合じゃくり加工のように「積極的に特定の段差を形成することを意図した加工」がなされていない端面をいうものである。
【0034】
また、図4(a)(b)に示すごとく、上辺11の表合じゃくり部11aは、外壁材1Aの外装面を構成するおもて面1cの上辺11部分の縁を取り除くことで形設されるものである。また、下辺12の裏合じゃくり部12a、及び、右辺13の裏合じゃくり部13aは、それぞれ、外壁材1Aの裏面1bの下辺12部分の縁、右辺13部分の縁をそれぞれ取り除くことで形設されるものである。
【0035】
また、図4(c)(d)に示すごとく、本実施例1において使用される出隅コーナー材20Aは、断面視略L字状の部材であって、上辺21に表合じゃくり部21a、下辺22に裏合じゃくり部22a、側端部の二つの縦辺23・24に裏合じゃくり部23a・24a、がそれぞれ形設される。これにより、出隅コーナー材20Aについては、全ての端辺に、合じゃくり部が形設されるようになっている。
【0036】
また、図4(c)(d)に示すごとく、出隅コーナー材20Aも図4(a)(b)の外壁材1Aと同様に、上辺21の表合じゃくり部21aについては、出隅コーナー材20Aの外装面を構成するおもて面20cの上辺21部分の縁を取り除くことで形設されるものである。また、下辺22の裏合じゃくり部22a、及び、側端部の二つの縦辺23・24の裏合じゃくり部23a・24aは、それぞれ、出隅コーナー材20Aの裏面20bの下辺22部分の縁、二つの縦辺23・24部分の縁をそれぞれ取り除くことで形設されるものである。
【0037】
そして、図4(a)〜(d)に示される外壁材1Aと出隅コーナー材20Aを用い、図1及び図2に示すごとく、外壁の施工を行う。なお、各外壁材1A・1B・1C・・・は同一の構成であり、また、各出隅コーナー材20A・20B・・・は同一の構成であって、説明の便宜上、異なる符号を付しているものである。
【0038】
次に、建物外壁の施工手順について説明する。
図1に示すごとく、まず、柱4・4や間柱7・7などの各下地材に対し、防水シート5を貼付した状態とし、柱4・4に対して接合用役物6・6を固定した状態とする。そして、出隅コーナー材20A・20Bを留め金具8・8を用いて固定するとともに、向かって左側に配置される出隅コーナー材20Aに近い側から順に、外壁材1A・1Bを設置し、適宜、留め金具8・8にて外壁材1A・1Bを留め付ける。
【0039】
また、図1及び図2に示すごとく、外壁材1Bと出隅コーナー材20Bの間の空間の横幅寸法Ymは、外壁材1Cの横幅寸法Y1よりも狭いため、外壁材1Cについて、切断工具を用い、裏合じゃくり部13aを有する部位1Mを取り除いて、横幅寸法Ymとなるように寸法調整を実施する。
【0040】
また、図1及び図2に示すごとく、寸法調整された外壁材1Cについては、段差加工の無い縦端面1nが新たに形設されることになり、この縦端面1nが、出隅コーナー材20Bの縦辺24の裏合じゃくり部24aと接合されることになる。
【0041】
また、図1及び図2に示すごとく、外壁材1Aと外壁材1Bの間、外壁材1Bと外壁材1Cの間の接合部には、それぞれ縦目地部M1が形成され、出隅コーナー材20Aと外壁材1Aの間、外壁材1Cと出隅コーナー材20Bの間の各接合部には、それぞれ縦目地部M2が形設されることになり、これら縦目地部M1・M2の裏側には、それぞれ、接合用役物6・6が配置されるようになっている。
【0042】
また、この接合用役物6は、詳しくは後述するが、図5及び図6に示すごとく、外壁材1Cの裏面1bや出隅コーナー材20Bの裏面20bに浸入した水を排水するための縦溝部17a・17bを有しているため、仮に、各接合部(縦目地部M1・M2(図1、図2参照))において水が浸入した場合であっても、この縦溝部17a・17bによって、裏面1b・20bでのさらなる広範囲の水の浸入を防止することができ、各接合部における防水性を確保することが可能となる。
【0043】
また、図1及び図2に示すごとく、上下方向に隣り合う出隅コーナー材20A・20C、外壁材1A・1Dの間の接合部にそれぞれ形設される横目地部M3・M4ついては、それぞれ、図3に示されるように、合じゃくり接合されることになるため、横目地部M3・M4における防水性を確保できることとなる。なお、図3の例においては、止水材18が挟装される構成とし、防水性を向上させる構成としている。
【0044】
以上のように、本実施例1によれば、図1及び図2に示すごとく、三辺合じゃくりを有する外壁材1A・1B・1Cを用いて構成されるべき外壁の横幅寸法Yが、外壁材1A・1B・1Cの加工前の横幅寸法の合計値よりも狭い場合において、出隅コーナー材20Aの隣に配置される外壁材1Cを切断して寸法調整するだけで対応できることとなり、施工性に優れた建物外壁の施工方法を実現することができる。
【0045】
また、図1及び図2に示すごとく、縦目地部M1・M2、横目地部M3・M4のそれぞれにおいて、防水性を確保することができるため、三辺合じゃくりを有する外壁材1A・1B・1Cを用いて外壁を施工する場合においても、確実な防水性を確保することが可能となる。
【0046】
なお、本実施例1では、図4(a)(b)に示すごとく、外壁材1Aの右辺13について裏合じゃくり部13aを形設し、左辺14については段差加工の無い縦端面14aとすることで、三辺合じゃくりが構成されることとしたが、この逆に、右辺13について段差加工の無い縦端面とし、左辺14について裏合じゃくり部を形設することとしてもよい。
【0047】
また、本実施例1では、図1に示すごとく、各外壁材1A・1Bの右辺13に裏合じゃくり部13aを形設し、向かって左側から順に右側へ向かって外壁材1A・1Bを留め付ける形態とし、最後に留め付ける外壁材1Cについて幅寸法を調整する形態とするものである。この形態においては、左手で外壁材1Aを押さえながら、右手で留め金具8を柱4に固定して、外壁材1Aを留め付けるという作業が可能となるため、特に、右利きの作業員にとって、作業が行い易い形態とすることができる。
【0048】
また、本実施例1では、図1に示すごとく、外壁材1Cについて、切断工具を用い、裏合じゃくり部13aを有する部位1Mを取り除いて、横幅寸法Ymとなるように寸法調整を実施したが、外壁材1A・1Bについて、寸法調整を実施してもよい。なお、外壁材1A・1Bについて寸法調整を実施した場合には、切断により二分されたもののうち、裏合じゃくり部13aを有する部位が利用されることになる。このように、出隅20Aの右隣に配置される外壁材1Aや、両側が他の外壁材1A・1Cに挟まれる外壁材1Bについて横幅の寸法調整をしてもよく、つまりは、少なくとも一つの外壁材1A・1B・1Cについて、寸法調整を実施することで、本発明を適用することができるのである。
【実施例2】
【0049】
図5及び図6は、本発明の実施に用いられる接合用役物6の実施例について示す図である。
図5及び図6に示すごとく、横方向に外壁材1Cと出隅コーナー材20Bが隣接して配設され、外壁材1Cの右辺13の端部には、幅調整によって切断されることで、新たな段差加工の無い縦端面1nが形成され、出隅コーナー材20Bの縦辺24には、裏合じゃくり部24aが形成されている。
【0050】
また、図5及び図6に示すごとく、外壁材1Cの縦端面1nと出隅コーナー材20Bの裏合じゃくり部24aが対向する位置において縦目地部M2が構成されるようになっている。また、この縦目地部M2が形成される位置においては、図示せぬ固定具によって接合用役物6が防水シート5を介して柱4に固定されるようになっている。なお、接合用役物6は、柱4の他、縦胴縁、間柱、胴縁、下地用ボード材などの各種の下地材に対して取付けることもできる。
【0051】
また、図5に示す構成において、外壁材1Cと出隅コーナー材20Bは、図示せぬ留め金具によって柱4などに対して留め付けられるようになっており、この留め金具によって、各外壁材1Cの裏面1bと出隅コーナー材20Bの裏面20bと防水シート5の間に通気空間15が形成され得るようになっている。
【0052】
また、図6に示すごとく、接合用役物6は、長尺の部材であって上下方向に長く配設されるものである。この接合用役物6は、出隅コーナー材20Bの室内側に配置され防水シート5側に固定される第一の固定板部61と、第一の固定板部61から室外方向に延設され、裏合じゃくり部24aの室内外方向端面24uに対面する第一の縦板部62と、裏合じゃくり部24aの横方向端面24vに対面する第一の横板部63とを有している。また、接合用役物6は、外壁材1Cの室内側に配置され防水シート5側に固定される第二の固定板部64と、第二の固定板部64から室外方向に延設される第二の縦板部65と、裏面1bに対面する第二の横板部66と、縦端面1nに対面する第三の縦板部67を有している。
【0053】
また、図6に示される接合用役物6の各板部は、金属などからなる板材を板金加工することによって、連続的に構成されている。なお、このように板金加工によって各板部を構成するほか、金属を押出成形することによって各板部が形成されることとしてもよい。
【0054】
また、図6に示すごとく、外壁材1Cの縦端面1nは、出隅コーナー材20Bの縦端面24eに対向して配置され、縦端面1nと縦端面24eが互いに突き合わされるようになっている。
【0055】
また、図6に示すごとく、第一の横板部63と第三の縦板部67には、裏合じゃくり部24aの横方向端面24v、及び、外壁材1Cの縦端面1nに当着し得るパッキン材73が貼設されており、第一の横板部63と横方向端面24vの間の隙間と、第三の縦板部67と縦端面1nの間の隙間が、それぞれパッキン材73によって埋められ得るようになっている。これにより、第一の横板部63と横方向端面24vの間にシール面16aが、第三の縦板部67と縦端面1nの間にシール面16bがそれぞれ形設され、このシール面16a・16bによる止水を図ることができる。なお、パッキン材73は、ゴムや樹脂などの弾性のある素材にて構成することができる。また、パッキン材73は、本実施例のように断面L字状のものとするほか、他の形態であってもよく、第一の横板部63と第三の縦板部67にそれぞれ個別に設けられるものであってもよい。
【0056】
そして、以上の構成においては、図6に示すごとく、裏合じゃくり部24aに対して接合用役物6の第一の縦板部62、第一の横板部63、及び、第三の縦板部67が挿入された状態としつつ、パッキン材73によってシール面16a・16bが形成されることにより、これらシール面16a・16bによって、第一段階の止水を実現することができる。なお、本実施例2のようにパッキン材73を設けることに加え、室内外方向端面24uと第一の縦板部62の間、及び、裏面1bと第二の横板部66の間、にそれぞれ、同様のパッキン材が設けられることとしてもよい。
【0057】
また、図6に示すごとく、第一の固定板部61において、第一の縦板部62の反対側となる位置には、第四の縦板部68が室外方向に延設されており、この第四の縦板部68の先端に形設される止水部68aが、出隅コーナー材20Bの裏面20bに当接し得るようになっている。これにより、第一の固定板部61と、第一の縦板部62と、裏面20bと、第四の縦板部68によって取り囲まれた上下方向の縦溝部17aが形成されるようになっている。なお、止水部68aについては、図6に示すように折り返して設けるほか、裏面1bと平行に設けて裏面20bに当接させ、止水部68aと裏面20bの間に幅を有するシール面を構成することとしてもよい。
【0058】
同様に、図6に示すごとく、第二の固定板部64において、第二の縦板部65の反対側となる位置には、第五の縦板部69が室外方向に延設されており、この第五の縦板部69の先端に形設される止水部69aが、外壁材1Cの裏面1bに当接し得るようになっている。これにより、第二の固定板部64と、第二の縦板部65と、裏面1bと、第五の縦板部69によって取り囲まれた上下方向の縦溝部17bが形成されるようになっている。なお、止水部69aについては、図6に示すように折り返して設けるほか、裏面1bと平行に設けて裏面1bに当接させ、止水部69aと裏面1bの間に幅を有するシール面を構成することとしてもよい。
【0059】
以上の構成により、図6に示すごとく、シール面16a、若しくは、シール面16bを通過して、出隅コーナー材20B、若しくは、外壁材1Cの裏側へ向かうように水が浸入した場合でも、この浸入した水を縦溝部17a・17bから下方へ排水することが可能となる。このようにして、縦溝部17a・17bによる第二段階の止水を実現することができる。
【0060】
また、図6に示すごとく、各止水部68a・69aと各裏面20b・1bが当接することで、両者の間にそれぞれシール部16c・16dを形成することができる。
【0061】
これにより、図6に示すごとく、縦溝部17a・17bに水が浸入した場合でも、シール部16c・16dによって、出隅コーナー材20B、外壁材1Cの裏面20b・1bでのさらなる広範囲の水の浸入を防止することが可能となる。このようにして、シール部16c・16dによる第三段階の止水を実現することができる。なお、各止水部68a・69aにゴムや樹脂などからなるパッキン材を設け、各止水部68a・69aと裏面20b・1bの間に、パッキン材が介装される構成としてもよい。また、この他、止水部68a・69aが裏面20b・1bに当接されず、シール部16c・16dが形設されない構成にて実施することも考えられる。
【0062】
また、図6に示すごとく、接合用役物6における第一の固定板部61から止水部68aまでの距離W1、及び、第二の固定板部64から止水部69aまでの距離W2は、それぞれ、通気空間15の奥行幅W3と略同一に形成されるようになっている。即ち、接合用役物6における出隅コーナー材20B・外壁材1Cと防水シート5の間の部位の室内外方向の奥行き寸法(距離W1・W2)は、出隅コーナー材20B・外壁材1Cと防水シート5の間に形設される通気空間15の室内外方向の奥行き寸法(距離W3)と略同一に設定されるものである。これにより、出隅コーナー材20B・外壁材1Cと防水シート5の間に通気空間15が形成される工法において、他のスペーサー部材などを用いずに、接合用役物6を利用することが可能となる。
【0063】
また、図6に示すごとく、接合用役物6の第一の縦板部62が、出隅コーナー材20Bの裏合じゃくり部24aの室内外方向端面24uに対面する配置となっている。また、接合用役物6の第三の縦板部67が、外壁材1Cの縦端面1nに対面する配置となっている。このようにして、接合用役物6が、出隅コーナー材20Bの裏合じゃくり部24aの室内外方向端面24uと、外壁材1Cの縦端面1nに対面する部位(第一の縦板部62、第三の縦板部67)を有することとしている。
【0064】
これにより、図6に示すごとく、仮に、出隅コーナー材20B・外壁材1Cが横方向にずれるような状況が生じた場合においては、第一の縦板部62、第三の縦板部67によって、それぞれ出隅コーナー材20B・外壁材1Cの横方向のズレを規制することが可能となる。この効果は、例えば、出隅コーナー材20B・外壁材1Cを躯体側に固定するための固定金具が、横ずれ防止の機能を有していない場合など、出隅コーナー材20B・外壁材1Cの横ずれの防止が図られていない工法においては、特に有効なものとなる。
【0065】
また、図5に示すごとく、出隅コーナー材20Bと外壁材1Xの接合においても、以上に述べた接合用役物6を使用することができる。この場合、出隅コーナー材20Bの裏合じゃくり部23aと外壁材1Xの段差加工の無い縦端面14aの接合となるため、この接合箇所に配置される接合用役物6においては、裏合じゃくり部14aと外壁材1Cの接合箇所に配置される接合用役物6の上下を反転させた状態で、設置されることになる。
【0066】
さらに、図7に示すごとく、本実施例2の構成の接合用役物6は、四角板状の外壁材1B・1Cが隣り合う縦目地部M1において、外壁材1Bの裏合じゃくり部13aと、外壁材1Cの段差加工の無い縦端面14aを接合する場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の構成は、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、金属系サイディング、ALC板などの板状の外壁材を接合させる接合構造において、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1A 外壁材
1B 外壁材
1C 外壁材
1b 裏面
1n 縦端面
4 柱
5 防水シート
6 接合用役物
7 間柱
8 留め金具
11 上辺
11a 表合じゃくり部
12 下辺
12a 裏合じゃくり部
13 右辺
13a 裏合じゃくり部
14 左辺
14a 縦端面
15 通気空間
16a シール面
16b シール面
17a 縦溝部
17b 縦溝部
20A 出隅コーナー材
20B 出隅コーナー材
20b 裏面
23a 裏合じゃくり部
24a 裏合じゃくり部
73 パッキン材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上辺に表合じゃくり部が形設され、
下辺に裏合じゃくり部が形設され、
右辺と左辺のいずれか一方の縦辺に裏合じゃくり部が形設され、他方の縦辺に段差加工の無い縦端面が形設されることにより、
三辺に合じゃくり部が形設される四角板状の外壁材と、
上辺に表合じゃくり部が形設され、
下辺に裏合じゃくり部が形設され、
側端部の二つの縦辺に裏合じゃくり部が形設されることにより、
各辺に合じゃくりが形設される断面略L字状の出隅コーナー材と、
横方向に隣り合う一方の外壁材の裏合じゃくり部と他方の外壁材の段差加工の無い縦端面を接合するための接合用役物であって、両外壁材の接合箇所から浸入する水を排水するための上下方向の縦溝部を有する接合用役物と、
を用いる建物外壁の施工方法であって、
複数配列される前記外壁材の少なくとも一つの外壁材について横幅方向の寸法調整を行うとともに、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面と、前記出隅コーナー材の縦辺の裏合じゃくり部とを、前記接合用役物を用いて接合する、
及び/又は、
切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面と、隣り合う他の外壁材の裏合じゃくり部とを、前記接合用役物を用いて接合する、
建物外壁の施工方法。
【請求項2】
前記外壁材の縦辺の裏合じゃくり部には、
前記接合用役物の一部が挿入され、
挿入された接合用役物の部位と、前記裏合じゃくり部の間、
及び、
挿入された接合用役物の部位と、前記段差加工の無い縦端面の間、
には、パッキン材が介設されることで、シール面が形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の建物外壁の施工方法。
【請求項3】
前記出隅コーナー材の縦辺の裏合じゃくり部には、
前記接合用役物の一部が挿入され、
挿入された接合用役物の部位と、前記裏合じゃくり部の間、
及び、
挿入された接合用役物の部位と、切断により新たに形設される段差加工の無い縦端面の間、
には、パッキン材が介設されることで、シール面が形成される、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の建物外壁の施工方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102504(P2011−102504A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258224(P2009−258224)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(305003542)旭トステム外装株式会社 (38)
【Fターム(参考)】