説明

建物群の導風システム

【課題】建物間の共用空間に自然の風を取り込んだり、遮断したりという積極的な制御をおこなうことが可能な建物群の導風システムを提供する。
【解決手段】間隔を置いて構築された住宅1A,1Bの間に中庭2が形成されるペア住宅10の導風システムである。
そして、中庭2の住宅1A,1Bに面していない外周面21,21に、ペア住宅10の外周に吹く風NWの風向を変えて中庭2内に取り込むことが可能なウインドキャッチャー3が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の住宅(建物)の間に形成される共用空間に風を取り込むための建物群の導風システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、風や太陽光などの無限の自然エネルギーを利用することで、化石燃料などの二酸化炭素を排出する有限な資源エネルギーの使用量を抑え、自然環境に対する負荷の少ない住環境を形成する方法が提案されている(特許文献1−3参照)。
【0003】
例えば特許文献1には、まちの外周や道路に効果的に植栽を配置することで、風の流れをコントロールしたり、日射や熱をコントロールしたりする微気候を考慮したまちづくりの緑化方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、マンションなどの集合住宅に隣接して換気塔を設け、集合住宅の各階と換気塔とをそれぞれ連通させ、換気塔の内部に太陽熱や風力などの自然エネルギーによって生成された気流を利用して各階の換気をおこなう自然換気システムが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、中庭を覆う屋根の開口に設けるルーバー装置の羽根板を透光性板と太陽光パネルとによって構成することで、中庭の採光が確保される太陽光発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−104972号公報
【特許文献2】特開2009−133526号公報
【特許文献3】特開2003−221896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された微気候を考慮したまちづくりの緑化方法は、植栽を利用した構成であるため、風を取り込んだり、遮断したりという積極的な制御をおこない難い。
【0008】
また、特許文献2に開示された換気塔は、あくまで居室内の空気を入れ替えるための換気塔であって、空間に風を通すことによって快適性を高めることが可能な構成にはなっていない。
【0009】
さらに、特許文献3の中庭の上方に設けるルーバー装置は、上から外気を取り込んだり、中庭の空気を排出させたりすることはできるが、このルーバー装置だけでは中庭に横方向の風を起こすのは難しい。
【0010】
そこで、本発明は、建物間の共用空間に自然の風を取り込んだり、遮断したりという積極的な制御をおこなうことが可能な建物群の導風システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の建物群の導風システムは、間隔を置いて構築された建物の間に共用空間が形成される建物群の導風システムであって、前記共用空間の前記建物に面していない少なくとも一面に、前記建物群の外周に吹く風の風向を変えて前記共用空間内に取り込むことが可能な風向き調整手段が設けられることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記風向き調整手段が、前記共用空間の複数の面に設けられていることが好ましい。また、前記風向き調整手段は、異なる方向に開閉する複数の導風板を備えた構成とすることができる。
【0013】
さらに、前記共用空間には、太陽熱によって上昇気流を生成させることが可能な採風塔が設けられていてもよい。
【0014】
また、前記共用空間が屋根で覆われた構成とすることができる。さらに、前記屋根の少なくとも一部が透光性のある太陽光発電装置によって形成されていてもよい。
【0015】
また、前記共用空間には、前記建物の1階床高さと略同じ高さの床面が形成された構成とすることができる。さらに、前記建物は2階以上の高さに構築されており、前記共用空間には、前記建物の2階床高さと略同じ高さの透光性の床面が形成された構成とすることができる。
【0016】
また、前記共用空間を通風可能な間仕切りで区切るとともに、その区切られた各空間に対してそれぞれ一つの建物の開口部を対面させる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
このように構成された本発明の建物群の導風システムは、複数の建物の間に形成される共用空間に対して、建物群の外周を吹く風の風向を変えて取り込むことが可能な風向き調整手段を備えている。
【0018】
このため、共用空間が電動の送風機などを備えていなくても、自然の風を利用した空調をおこなうことができる。また、風が強いときは、風向き調整手段を閉じて、共用空間への風の取り込みを止めることができる。
【0019】
また、風向き調整手段が共用空間の複数の面に設けられていれば、建物群の外周に吹く風の向きが一つの風向き調整手段によって捕捉することができない場合でも、他の風向き調整手段によって捕捉させることで風を取り込むことができる可能性が高くなる。
【0020】
さらに、一つの風向き調整手段から取り込んだ風を、共用空間を経由して他の風向き調整手段から排出させるという風の流れを生成することもできるようになる。また、風向き調整手段を異なる方向に開閉する複数の導風板を備えた構成にすることによっても、様々な向きの風を捕捉することができるようになる。
【0021】
また、太陽熱によって上昇気流を生成可能な採風塔を共用空間に設けることによって、天気の良い風の無い日であっても共用空間に風を生成することができる。
【0022】
さらに、共用空間を屋根で覆うことによって、共用空間を完全な屋外ではない半室内空間として利用することができる。また、その屋根を透光性のある太陽光発電装置によって形成すれば、共用空間の採光を確保したうえで、太陽光による発電をおこなうことができる。
【0023】
また、共用空間に建物の1階床高さと略同じ高さの床面を形成することで、建物からの出入りがし易くなって、共用空間を有効に活用することができる。さらに、2階床高さと略同じ高さの透光性の床面を形成した場合は、共用空間の1階の採光が確保できるうえに、圧迫感を低減することができる。また、2階床高さの床面も、サンルームやバルコニーとして利用することができる。
【0024】
また、共用空間を通風可能な間仕切りで区切ることで、共用空間の風の流れが間仕切りで遮断されることが低減されるうえに、区切られた各空間に対して一つの開口部を対面させることによって、各建物のプライバシーを守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態のペア住宅の導風システムの構成を説明する1階の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態のペア住宅の導風システムの構成を説明する立面図である。
【図3】上半が本発明の実施の形態のペア住宅の導風システムの構成を説明する平面図、下半が2階の平面図である。
【図4】実施例1のウインドキャッチャーの構成を説明する斜視図である。
【図5】実施例2の住宅街区の導風システムの構成を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図2は、建物群としてのペア住宅10の導風システムの構成を説明するための立面図、図1はその1階高さの平面図、また、図3は屋根上方からの平面図と2階高さの平面図とを図の上下に示したものである。
【0027】
このペア住宅10は、間隔を置いて構築された建物としての住宅1A,1Bと、それらの住宅1A,1B間に形成される共用空間としての中庭2とを備えている。
【0028】
これらの住宅1A,1Bには、図1に示すようにそれぞれ玄関12,12が独立して設けられており、中庭2に面してそれぞれ開口部としての大型窓11,11が設けられている。
【0029】
また、これらの住宅1A,1Bは、図2に示すように、1階部131,131、2階部132,132及び屋根14,14の高さが同じになる2階建てである。
【0030】
そして、住宅1A,1B間の中庭2には、図1,2に示すように、木製の板材などによって住宅1A,1Bの1階部131,131の床高さに合わせた床面になるようにウッドデッキ51が設けられる。
【0031】
また、図2,3に示すように、透光性及び通風性を備えたグレーチング材などによって住宅1A,1Bの2階部132,132の床高さに合わせた床面になるようにグレーチングバルコニー52が設けられる。
【0032】
一方、図1に示すように、略四角形の中庭2の住宅1A,1Bに面していない2つの外周面21,21には、それぞれ袖壁33,・・・が設けられる。この袖壁33は、例えば、ウッドデッキ51とグレーチングバルコニー52との間を塞ぐように設けられる。
【0033】
また、図1,2に示すように、中庭2の外周面21の略中央には袖壁33が設けられていない箇所があり、そこには風向き調整手段としてのウインドキャッチャー3が設けられる。
【0034】
このウインドキャッチャー3は、図1,2に示すように、回転中心となる回転軸32と、その回転軸32を中心に回転可能な導風板31とによって主に構成される。
【0035】
この導風板31は、図示していないが、ストッパーなどによって任意の開度で固定することができる。また、この導風板31の開閉は、手動又は電動のいずれであってもよい。さらに、電動制御にする場合は、後述する太陽光発電装置によって発電された電力を利用することができる。
【0036】
そして、図1に示すように、ペア住宅10の外周を吹く自然の風NWに対して導風板31(図1下側)を開いて突出させれば、その導風板31に当たって向きが変更された風Wが中庭2に向けて流れ込む。
【0037】
また、図1に示すように、中庭2は略中央で間仕切りとしての格子柵22によって2つに区切られている。この格子柵22は、通風可能であるため、この格子柵22によって中庭2の風Wの流れが遮断されることはほとんどない。このため、図1の下側のウインドキャッチャー3から中庭2に取り込まれた風Wは、格子柵22を通過してもう一方のウインドキャッチャー3(図1上側)からペア住宅10の外部に排出される。
【0038】
なお、ウインドキャッチャー3,3は、中庭2の2つの外周面21,21のそれぞれに設けられているので、外周を吹く風NWの向き及びウインドキャッチャー3,3の開閉方向によって、いずれの外周面21,21からも風Wを取り込むことができる。
【0039】
さらに、住宅1A,1Bに設けられた大型窓11,11は、この格子柵22で区切られた空間のそれぞれに一つずつ設けられている。すなわち、図1では、住宅1Aの大型窓11は、格子柵22の下側に設けられており、図1の下側の中庭2には住宅1Aの居住者のみが出ることができる。反対に、住宅1Bの大型窓11は、格子柵22の上側に設けられており、図1の上側の中庭2には住宅1Bの居住者のみが出ることができる。
【0040】
また、中庭2の略中央には、採風塔としてのソーラーチムニー4が設けられる。このソーラーチムニー4は、図1,2に示すように、1階床高さのウッドデッキ51上面からペア住宅10を突き抜ける高さまで延伸される円筒状の塔部41によって主に構成される。
【0041】
この塔部41の下部には、図2に示すように塔部41の内外を連通させる取込口41bが設けられる。また、塔部41の上部には黒鉄板等の熱を吸収しやすい材料によって集熱部41aが設けられている。
【0042】
このソーラーチムニー4では、集熱部41aが太陽によって暖められると、その熱が伝達されて塔部41の内部の空気の温度が高くなり、暖められて比重が小さくなった上部の空気は塔部41の上端開口から排気OAされる。一方、塔部41の空気が排気OAされると、塔部41の内部の圧力が低下して中庭2の空気が取込口41bに流れ込む。このため、中庭2には、ソーラーチムニー4に向けた風Wの流れを生成させることができる。
【0043】
また、このソーラーチムニー4の塔部41の下にはベンチ43を設け、その上方には庇42を取り付けることができる。すなわち、ソーラーチムニー4に向かって風Wが生成されるのであれば、その周辺に設けられたベンチ43では風Wに当たって涼むことができる。さらに、その上に日除けの庇42が取り付けられていれば、強い日差しがあっても中庭2で快適に過ごすことができる。
【0044】
また、住宅1A,1Bの屋根14,14間には、図2に示すように中庭2の上空を覆う屋根6を設ける。この屋根6は、図3に示すように、少なくとも一部を太陽光発電装置としての透光性ソーラーパネル61,・・・によって形成する。
【0045】
この透光性ソーラーパネル61は、太陽光発電がおこなえるうえに、光を下方に透過させることができる。このような透光性ソーラーパネル61は、ガラス等の透光性材料を太陽光パネルの間に介在させたり、発電素子に微小な透過孔を多数開けたりすることによって製作することができる。
【0046】
このように透光性のある屋根6の下のグレーチングバルコニー52は、光が差し込みサンルームのようになる。また、グレーチングバルコニー52も透光性を有しているため、その下方のウッドデッキ51まで光が差し込む。また、庇42の下には日陰ができる。
【0047】
次に、本実施の形態のペア住宅10の導風システムの作用について説明する。
【0048】
このように構成された本実施の形態のペア住宅10の導風システムは、複数の住宅1A,1Bの間に形成される中庭2に対して、ペア住宅10の外周を吹く自然の風NWの風向を変えて取り込むことが可能なウインドキャッチャー3を備えている。
【0049】
ここで、自然の風NWには、海風、山から吹き下ろす風、偏西風などの季節風によって起きる風、台風や低気圧による風など様々な種類がある。この自然の風NWは、人によって心地良いものもあれば、台風による風など遮断したい風もある。また、同じ風の強さでも、夏の暑いときと冬の寒いときとでは感じ方が異なり、風NWを積極的に取り込みたい場合と完全に遮断したい場合とがある。
【0050】
一方、住宅1A,1B間に形成される中庭2は、屋外又は半屋外(屋根6で覆われている場合など)になるため、エアコンなどの空調装置を設置しても効率が悪く、出来るだけ自然の状態で快適な空間になるようにしたい。しかしながら、住宅1A,1Bに挟まれたり囲まれたりした中庭2は、風NWを取り込み難く、自然にまかせたままでは快適性を向上させるのが難しい。
【0051】
これに対して本実施の形態のように中庭2の外周面21にウインドキャッチャー3を設けることで、積極的に自然の風NWを取り込んだり、遮断したりすることができるようになる。
【0052】
このため、中庭2に電動の送風機などを設置しなくても、自然の風NWを取り込む量を調整して中庭2の快適性を向上させることができる。また、風NWが強いときは、ウインドキャッチャー3を閉じて、中庭2への風Wの取り込みを止めることができる。
【0053】
また、ウインドキャッチャー3,3を、中庭2を挟んだ対向する2つの外周面21,21にそれぞれ設けることで、外周に吹く風NWの向きが一つのウインドキャッチャー3によって捕捉することができない場合でも、他のウインドキャッチャー3によって風NWを捕捉して取り込むことができる。
【0054】
さらに、一つのウインドキャッチャー3から取り込んだ風Wを、中庭2を経由して他のウインドキャッチャー3から排出させるという風Wの流れを生成することができる。
【0055】
また、中庭2に太陽熱によって上昇気流を生成可能なソーラーチムニー4を設けることによって、天気の良い風NWの無い日又は風NWが弱い日であっても中庭2に風Wを生成することができる。
【0056】
さらに、中庭2を屋根6で覆うことによって、中庭2を完全な屋外ではない半室内空間として利用することができる。また、その屋根6を透光性ソーラーパネル61によって形成すれば、中庭2の採光を確保したまま、太陽光による発電をおこなうことができる。特に、冬季など太陽光を浴びたいときに、採光が確保された中庭2であれば快適に過ごすことができる。
【0057】
また、中庭2に住宅1A,1Bの1階床高さと略同じ高さのウッドデッキ51の床面を形成することで、住宅1A,1Bからの連続性が確保されて中庭2への出入りがし易くなり、中庭2を有効に活用することができる。
【0058】
さらに、2階床高さと略同じ高さの透光性のグレーチングバルコニー52によって床面を形成することで、中庭2の1階の採光が確保できるうえに、1階の圧迫感を低減することができる。また、2階のグレーチングバルコニー52は、サンルームやバルコニーとして利用することができる。
【0059】
また、中庭2を通風可能な格子柵22で区切ることで、中庭2の風Wの流れが間仕切りで遮断されることが低減されるうえに、区切られた各空間に対して各住宅1A,1Bの大型窓11をそれぞれ一つずつ対面させることによって、各住宅1A,1Bのプライバシーを守ることができる。
【実施例1】
【0060】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例1について、図4を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0061】
この実施例1で説明する風向き調整手段としてのウインドキャッチャー7は、図4に示すように、住宅1A,1Bの1階部131,131間に跨って設置される。
【0062】
このウインドキャッチャー7は、複数の導風板71A,71B,・・・と、それらを取り付ける枠材72とによって主に構成される。ここで、導風板71A,71Bには、左開きの導風板71Aと右開きの導風板71Bとがあり、それぞれ異なる方向に開閉される。
【0063】
また、このウインドキャッチャー7には、5列4段に複数の導風板71A,71B,・・・が配置されている。図4に示した配置は一例であり、様々な配置をおこなうことができる。
【0064】
このようにウインドキャッチャー7に異なる方向に開閉する複数の導風板71A,71B,・・・を設けることによって、様々な向きの風NWを捕捉することができるようになる。
【0065】
また、導風板71A,71B,・・・を開く数や開度を調整することによって、中庭2に取り込む風量を調整することができる。さらに、高さの異なる位置に導風板71A,71B,・・・を設けることによって、様々な高さ又は角度で吹く風NWを取り込むことができる。
【0066】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0067】
以下、前記した実施の形態及び実施例1とは別の形態の実施例2について、図5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0068】
この実施例2では、建物群としての住宅街区100の導風システムについて説明する。この住宅街区100には、建物としての7件の住宅1C,1D,1E,1F,1G,1H,1Iと、それらの間に形成される共用空間としての中央広場2Aと、駐車場101とによって一つの街が形成されている。また、住宅1C−1I及び駐車場101の周囲、並びに中央広場2Aには、多くの樹木102,・・・が植栽されている。
【0069】
そして、住宅1C,1I間と住宅1F,1G間とに位置する中央広場2Aの2つの外周面21A,21Aには、風向き調整手段としてのウインドキャッチャー3A,3Aがそれぞれ設置される。
【0070】
このウインドキャッチャー3Aには、前記実施の形態で説明したウインドキャッチャー3や前記実施例1で説明したウインドキャッチャー7などと同様の構成のものが使用できる。
【0071】
また、中央広場2Aの中心になる住宅1D,1H間(及び住宅1F,1I間)には、ソーラーチムニー4が設置される。
【0072】
そして、住宅街区100の外周を吹く自然の風NWは、ウインドキャッチャー3A,3Aによって中央広場2Aに取り込まれる。また、図5に示すように風NWの無い日であっても、ソーラーチムニー4の塔部41の集熱部41aが太陽光によって暖められると、塔部41内に上昇気流が生成され、中央広場2Aにソーラーチムニー4に向いた風W,Wが流れることになる。
【0073】
このように中央広場2Aを囲んで複数の住宅1C−1Iが建設された住宅街区100においても、外周面21,21にウインドキャッチャー3A,3Aを設置することで、積極的に中央広場2Aに風Wを取り込むことができる。
【0074】
また、風NWの無い日でも、自然エネルギーを利用したソーラーチムニー4によって風Wを生成させることで、化石燃料などの資源エネルギーを使用しなくても中央広場2Aの快適性を向上させることができる。
【0075】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0076】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0077】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、建物として個別の住宅1A−1Iを例に説明したが、これに限定されるものではなく、中庭2のある戸建て住宅、母屋と離れの間に共用空間がある場合、中庭を挟んで2つの集合住宅が建てられた場合などにも本発明を適用することができる。
【0078】
また、前記実施の形態又は実施例2では、共用空間の対向する2つの外周面21,21(21A,21A)にウインドキャッチャー3,3(7,7)をそれぞれ設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、風向き調整手段は共用空間の一面にのみ設けられているだけでもよい。風向き調整手段が一面にしか設けられていなくても、ソーラーチムニー4によって排気OAしたり、上方の開放部から空気を排出したりすることができるので、共用空間に風Wを生成することができる。
【0079】
また、前記実施の形態では、2階床高さと略同じ高さの床面を透光性と通風性の両方を兼ね備えたグレーチングバルコニー52によって形成したが、これに限定されるものではなく、ガラス板のように通風性はなく透光性のみを有する材料によって床面を形成することもできる。
【符号の説明】
【0080】
10 ペア住宅(建物群)
1A,1B 住宅(建物)
11 大型窓(開口部)
2 中庭(共用空間)
21 外周面
22 格子柵(間仕切り)
3 ウインドキャッチャー(風向き調整手段)
31 導風板
4 ソーラーチムニー(採風塔)
51 ウッドデッキ(共用空間の1階床面)
52 グレーチングバルコニー(共用空間の2階床面)
6 屋根
61 透光性ソーラーパネル(太陽光発電装置)
7 ウインドキャッチャー(風向き調整手段)
71A,71B 導風板
100 住宅街区(建物群)
1C−1I 住宅(建物)
2A 中央広場(共用空間)
21A,21A 外周面
3A ウインドキャッチャー(風向き調整手段)
NW (自然の)風
W (共用空間に生成される)風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて構築された建物の間に共用空間が形成される建物群の導風システムであって、
前記共用空間の前記建物に面していない少なくとも一面に、前記建物群の外周に吹く風の風向を変えて前記共用空間内に取り込むことが可能な風向き調整手段が設けられることを特徴とする建物群の導風システム。
【請求項2】
前記風向き調整手段が、前記共用空間の複数の面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物群の導風システム。
【請求項3】
前記風向き調整手段は、異なる方向に開閉する複数の導風板を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物群の導風システム。
【請求項4】
前記共用空間には、太陽熱によって上昇気流を生成させることが可能な採風塔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物群の導風システム。
【請求項5】
前記共用空間が屋根で覆われていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建物群の導風システム。
【請求項6】
前記屋根の少なくとも一部が透光性のある太陽光発電装置によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の建物群の導風システム。
【請求項7】
前記共用空間には、前記建物の1階床高さと略同じ高さの床面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建物群の導風システム。
【請求項8】
前記建物は2階以上の高さに構築されており、前記共用空間には、前記建物の2階床高さと略同じ高さの透光性の床面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の建物群の導風システム。
【請求項9】
前記共用空間を通風可能な間仕切りで区切るとともに、その区切られた各空間に対してそれぞれ一つの建物の開口部を対面させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の建物群の導風システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−97473(P2012−97473A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246499(P2010−246499)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】