説明

建築構造体および建築構造体の施工方法

【課題】コストを増やすことなく部材間の連結強度が十分に確保できる建築構造体及び建築構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】一方部材1と他方部材2と接合材6と一方側ボルト3と他方側ボルト4とナット5を備え、接合材6は、一方部材1に当接する当接面を有する一側片6aと、その一側片6aの一端部から屈曲して他方部材1の側壁に当接する他側片6bとからなる略L字部を有しており、一方側ボルト3は、一方部材1と接合材6の一側片6aとが当接して重なるボルト孔7a,7b同士を挿通し、他方側ボルト4は、他方部材2と接合材6の他側片6bとが当接して重なるボルト孔7a,7b同士を挿通し、ナット5は、一方側ボルト3と他方側ボルト4にかけて締結し、接合材6の一側片6aの他方部材2との当接面からボルト孔7aまでの距離は、一方部材1の一端側からボルト孔7bまでの距離より小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁と柱を接合する構造の建築構造体と施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の建築構造体としては、特開平11−293767号公報がある。この建築構造体は、一方部材と他方部材とを、略L字型をなす接合材とボルト及びナットで締結するものであり、接合箇所には、ボルトの頭部に先尖状の凸部が突設してある特殊な固定具を使用しており、ボルトにかけたナットの締め付けにより凸部を溝壁に食い込ませて接合するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開平11−293767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に開示されるものでは、特殊なナットを使用しなければならなかった。また、それ以外でも一方部材と接合材との接合部においては、通常のボルトナットで締結するだけなので、当接面に粗面処理を施してナットのズレを防止するなどの特別な工程を経る必要がある。さらに、一方部材の狭まった箇所で締結作業をしなければならず施工が容易ではない。このことから、施工手間が多く、しかも、特殊なボルトとナットを使用するなどの補強コストが割高になる問題点があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、コストを増やすことなく部材間の連結強度が十分に確保できる建築構造体及び建築構造体の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、一方部材と他方部材と接合材と一方側ボルトと他方側ボルトとナットを備え、一方部材の一端側が他方部材に当接しており、接合材は、一方部材に当接する当接面を有する一側片と、その一側片の一端部から屈曲して他方部材の側壁に当接する他側片とからなる略L字部を有しており、一側片と他側片と一方部材と他方部材には各々にボルト孔が設けてあり、一方側ボルトは、一方部材と接合材の一側片とが当接して重なるボルト孔同士を挿通し、他方側ボルトは、他方部材と接合材の他側片とが当接して重なるボルト孔同士を挿通し、ナットは、一方側ボルトと他方側ボルトにかけて締結し、接合材の一側片の他方部材との当接面からボルト孔までの距離は、一方部材の一端側からボルト孔までの距離より小さいことを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項2記載の発明では、一端側から所定距離のところにボルト孔が設けてある一方部材に、ボルト孔が設けてあり且つ一方部材との当接面を有する一側片と、ボルト孔が設けてあり且つ他方部材との当接面を有する他側片とからなると共に、他方部材との当接面から一側片のボルト孔までの距離が一方部材の一端側からボルト孔までの距離よりも小さい接合材を、ボルト孔同士を重ねて挿通した一方側ボルトにナットをかけて仮止めする第一の工程、一方部材の一端側を他方部材の側壁に当接させると共に、接合材の他側片を他方の部材の側壁に対向させる第二の工程、他方部材と接合材の他側片のボルト孔同士を挿通する他方側ボルトとナットを締結する第三の工程、一方側ボルトとナットを締結する第四の工程を経ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1および2記載の発明によれば、接合材の一側片に設けてあるボルト孔から他側片の他方部材との対向面までの距離が、一方部材に設けてあるボルト孔から一端側までの距離よりも小さいことにより、接合材の他側片を他方部材に当接して重なるボルト孔同士に他方側ボルトを挿通してナットで締めたときに、一方部材に他方部材からの圧縮力が加わるとともに、接合材が他方部材側に引き寄せられることで、一方部材と接合材の一側片のボルト孔が相反する方向に移動する。このことから、一方部材の側壁に接合材の一側片が当接して重なるボルト孔同士に通された一方側ボルトは、各々のボルト孔の孔内周部で一方側ボルトを相反する方向から押圧され、一方側ボルトに引張軸力が導入されるため、接合材による一方部材と他方部材との連結が強固となり、簡単な施工で堅牢な建築構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1(a)(b)(c)】(a)は、本実施による建築構造体の横断面図であり、(b)は、縦断面図であり、(c)は、本実施による建築構造体の一部を拡大して示す図である。
【図2(a)(b)(c)(d)】(a)〜(d)は、建築構造体の施工手順を示す横断面図である。
【図3】本発明の建築構造体の他の実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて本実施による建築構造体の実施の形態を説明する。
本実施による建築構造体は、図1(a)のように、横材である一方部材1と、縦材である他方部材2と、一方部材1と他方部材2とを接合する接合材6と、一方部材1および他方部材2と接合材6とを固定する一方側ボルト3と他方側ボルト4とナット5を備えるものである。また、他方部材2は、断面略矩形状をなす中空押出形材の中空部Sに、格子状をなす芯材を挿入したものであり、その芯材の複数箇所には、ナット5を挟み込んで保持できる溝部を有している。
【0010】
一方部材1の側壁と他方部材2の見込み面には、各々にボルト孔7aが設けてあり、接合材6を一方側ボルト3と他方側ボルト4、およびナット5で止める構造となっている。接合材6は、一側片6aとその一側片6aの一端側から屈曲した他側片6bとから略L字型をなしており、一側片6aと他側片6bの両方にボルト孔7bが設けてある。また、他側片6bのボルト孔7bは、他側片6bの他方部材2と対向する端面までの距離が、一方部材1の一端側からボルト孔7aまでの距離よりも小さくなるように設けてある。また、接合材6は、一方部材1の両側の側壁に各々沿わせてあり、一方側ボルト3で一方部材1を2枚の接合材6で挟むことにより、重なる3つのボルト孔7a,7bを挿通し、さらに、ナット5をかけて締結するものである。また、一方側ボルト3と他方側ボルト4は、ボルト頭部の凹穴に六角レンチを差し込んで螺合時の回転力を伝達させる態様のものであり、ナット5は、六角ナットが使用されている。
【0011】
次に、図2(a)〜(d)を参照して本実施による建築構造体の施工手順を説明する。
まず、第一工程として、図2(a)に示すように、一方部材1の両側の側壁に各々接合材6の一側片6aを当接し、重なる3つのボルト孔7a,7bに一方側ボルト3を挿通し、さらに、ナット5をかけて仮止めする。次に、第二工程として、図2(b)に示すように、上記の第一工程で仮組みした一方部材1と接合材6を他方部材2に近付け、当接して重なった接合材6の他側片6bのボルト孔7bと他方部材2のボルト孔7aに、他方側ボルト4を挿通する。次に、第三工程として、図2(c)に示すように、他方側ボルト4を他方部材2の中空部S側に保持してあるナット5に挿通し、他方側ボルト4を締め付けていき、接合材6の他側片6bを他方部材2側に引き寄せていくと、接合材6に先んじて一方部材1の一端側が他方部材2の見込み面に当接する。最後に、第四工程として、図2(d)に示すように、接合材6が他方部材2側に当接する状態となるまで一方側ボルト3を締め込んでいくことにより、ボルト孔7a,7b内での一方側ボルト3のガタツキがなくなり、本実施による建築構造体の施工が完了する。
【0012】
上記の第一〜第四工程を経て得られた本実施による建築構造体は、一方部材1の一端側が他方部材2に当接してそれ以上の移動が止められるとともに、ナット5にかけてある他方側ボルト4を締め込んでいくことによって、接合材6が他方部材2側に引き寄せられる。このときに、一方部材1に設けてあるボルト孔7aと接合材6の一側片6aに設けてあるボルト孔7aは、図1(c)を参照すれば、互いが重なる位置から相反する方向に移動するので、両方のボルト孔7a,7bに挿通した一方側ボルト3は、各々のボルト孔7a,7bの孔内周部の一部により相反する方向から押圧される。一方側ボルト3と両方のボルト孔7a,7bの孔内周部の一部との隙間がなくなり、その状態でナット5にかけてある一方側ボルト3を締め込めば、一方部材1には他方部材2からの圧力が、一方側ボルト3には一方部材1と接合材6による引張軸力が導入されると共に、それらが均衡した状態になるため、一方部材1と他方部材2と接合材6の接合部は高い剛性を得ることになる。尚、本実施による建築構造体のボルト孔7a,7bの具体的寸法については、まず、一方部材1に設けてあるボルト孔(一端側に近いもの)7bの中心から一端側までの距離が43.0mmであり、接合材6の一側片6aに設けてあるボルト孔(当接面に近いほうのボルト孔)7aの中心から他方部材2との当接面までの距離が41.5mmである。また、ボルト孔7a,7bは13mm径であり、一方側ボルト3は12mm径である。これにより、一方部材1と他方部材2を接合材6で接合したとき、互いのボルト孔7a,7bの中心位置が水平方向に2mm移動してズレることで、ボルト孔7a,7bに挿通した一方側ボルト3は、各々のボルト孔7a,7bの孔内周部の一部と隙間なく当接することになる。
【0013】
本発明の建築構造体は、上記実施形態の他、接合材6が一方部材1と他方部材2における各々のボルト孔7aに沿わせてボルト3,4を挿通できるL字部を有するものであればよい。また、図3のように、他方部材2を板状の縦材または横材とし、その他方部材2の両側壁に各々一方部材1を当接して接合材6により接合するものでもよい。また、上記実施形態では、一方部材1を横材とし、他方部材2を縦材とする接合について記載しているが、横材同士あるいは縦材同士の接合であってもよい。
【符号の説明】
【0014】
1 一方部材
2 他方部材
3 一方側ボルト
4 他方側ボルト
5 ナット
6 接合材
6a 一側片
6b 他側片
7a ボルト孔(一方部材、他方部材に設けられたもの)
7b ボルト孔(接合材に設けられたもの)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方部材と他方部材と接合材と一方側ボルトと他方側ボルトとナットを備え、一方部材の一端側が他方部材に当接しており、接合材は、一方部材に当接する当接面を有する一側片と、その一側片の一端部から屈曲して他方部材の側壁に当接する他側片とからなる略L字部を有しており、一側片と他側片と一方部材と他方部材には各々にボルト孔が設けてあり、一方側ボルトは、一方部材と接合材の一側片とが当接して重なるボルト孔同士を挿通し、他方側ボルトは、他方部材と接合材の他側片とが当接して重なるボルト孔同士を挿通し、ナットは、一方側ボルトと他方側ボルトにかけて締結し、接合材の一側片の他方部材との当接面からボルト孔までの距離は、一方部材の一端側からボルト孔までの距離より小さいことを特徴とする建築構造体。
【請求項2】
一端側から所定距離のところにボルト孔が設けてある一方部材に、ボルト孔が設けてあり且つ一方部材との当接面を有する一側片と、ボルト孔が設けてあり且つ他方部材との当接面を有する他側片とからなると共に、他方部材との当接面から一側片のボルト孔までの距離が一方部材の一端側からボルト孔までの距離よりも小さい接合材を、ボルト孔同士を重ねて挿通した一方側ボルトにナットをかけて仮止めする第一の工程、一方部材の一端側を他方部材の側壁に当接させると共に、接合材の他側片を他方の部材の側壁に対向させる第二の工程、他方部材と接合材の他側片のボルト孔同士を挿通する他方側ボルトとナットを締結する第三の工程、一方側ボルトにかけたナットを締結する第四の工程を経ることを特徴とする建築構造体の施工方法。


【図1(a)(b)(c)】
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【図2(a)(b)(c)(d)】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−189845(P2010−189845A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32275(P2009−32275)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【Fターム(参考)】