説明

建築物の採光調温構造および採光調温方法

【課題】従来の建築物に付設されるサンルームの技術が有する問題点を解消して、日射を利用した室内空間の採光および調温を効率的かつ適切に行ない、居住者にとって快適な採光および温度環境を容易に実現する。
【解決手段】建築物10の室内空間L1に屋外から採光するとともに室内空間L1を調温する構造であって、室内空間L1に隣接し屋外側に張り出して配置される張出空間Sと、張出空間Sの屋外側に隣接して配置される蓄熱空間Hと、蓄熱空間Hと張出空間Sとを開閉自在に仕切り透光性を有する引き違いガラス戸などからなる内側仕切り部50と、蓄熱空間Hと屋外とを開閉自在に仕切り透光性を有する蛇腹状伸縮仕切り材などからなる外側仕切り部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の採光調温構造および採光調温方法に関し、詳しくは、住宅等の建築物の室内空間に、屋外の日射を効果的に採光するとともに、日射熱あるいは外気を有効に利用して室内空間を調温する採光調温構造と、このような採光調温構造を使用して室内空間を適切に採光および調温する方法を対象にしている。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建築物において、外壁に設けられたガラス窓などから、屋外の日射を室内空間に取り込むことで、室内空間の採光を果たすとともに、日射熱による室内空間の加温を果たすことは良く行なわれている。ガラス窓を開いて、室内空間よりも低温の外気を入れることで室内空間を冷やすことも行なわれる。ガラス窓の外側あるいは内側にブラインドなどの日除け材を取り付けて、室内空間に入る日射の強さを調整することも行われる。
住宅にサンルームを付設することで、日射熱をより効率的に利用すること技術も提案されている。
例えば、特許文献1には、戸建住宅などのベランダやバルコニーで、室内空間との間の開口を仕切るガラス戸のさらに外側に、サッシュ枠に嵌め込まれた窓ガラスを組み立ててサンルームを設置する技術が示されている。サンルームの天井に断熱部材を設けることでサンルームの保温を図ったり、サンルームで温められた空気を、ファンやダクトで他の部屋に送ったりする技術も提案されている。前記した断熱部材をヒンジで動かして、夏季に日除けとして利用する技術も提案されている。
【特許文献1】特開平8−68218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来におけるサンルームの技術では、サンルームおよび室内空間を適切な温度に調整することが難しかったり、採光が悪くなったりするという問題がある。
例えば、冬期においても、真昼のように日射が非常に強いときには、サンルーム内は非常に昇温して、暑く感じるほどになる。日射が強くて眩しいほどになることもある。サンルームの外周に日除け部材を設ければ、日射を遮ることができ、サンルーム内の過熱を防ぐことができるが、その間は採光ができない。夕方などに日がかげって日射が弱くなると、今度はサンルーム内の温度が急激に低下する。
特に、サンルームを施工しない通常のベランダなどにおけるガラス戸は、屋外に広い空間が開放されているため、十分な採光が可能である。しかし、サンルームを設置した場合は、ガラス戸の外側に、サンルームのガラス窓が二重に存在することになる。日光は、サンルームのガラス窓、サンルームの内部空間、および、壁面のガラス戸を通過しなければ室内空間には入らないため、室内空間の採光条件はかなり悪くなる。特に、日射の方向が変わると、採光が極端に悪くなる。例えば、南向きのガラス戸の外側にサンルームの窓ガラスが存在すると、朝方あるいは夕方の日光は、サンルームの窓ガラスおよび壁面のガラス戸に対して、かなりの角度がある斜め方向から当たることになる。ガラス面に対して斜め方向の光は、ガラス面で反射されたり屈折されたりすることで、室内空間に透過する光の量は大幅に低下し、採光が非常に悪くなる。
【0004】
本発明の課題は、前記した建築物に付設されるサンルームの技術が有する問題点を解消して、日射を利用した室内空間の採光および調温を効率的かつ適切に行ない、居住者にとって快適な採光および温度環境を容易に実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる建築物の採光調温構造は、建築物の室内空間に屋外から採光するとともに室内空間を調温する構造であって、前記室内空間に隣接し屋外側に張り出して配置され張出空間と、前記張出空間の屋外側に隣接して配置される蓄熱空間と、前記蓄熱空間と前記張出空間とを開閉自在に仕切り透光性を有する内側仕切り部と、前記蓄熱空間と前記屋外とを開閉自在に仕切り透光性を有する外側仕切り部とを備える。
〔建築物〕
住宅等の通常の建築物に適用される。
具体的には、戸建住宅、集合住宅、店舗、大規模商業施設、公共施設、工場、オフィスビルなどが含まれる。平屋のほか、二階建あるいは三階建以上の複層階建築物にも適用できる。複層階建築物の場合、採光調温構造は、地上階だけでなく、二階以上の上層階にも設置できる。
【0006】
室内空間の内部構造や用途、機能などは自由に設定できる。例えば、居間や寝室、食堂、作業室、廊下など、採光および調温が必要とされる室内空間であればよい。
〔採光調温構造〕
採光調温構造は、建築物の室内空間に屋外から採光するとともに室内空間を調温する。調温には、保温、暖房と降温、冷房の両方が含まれる。採光調温構造は、室内空間に屋外の新鮮な空気を供給したり、室内空間の空気を屋外に排出したりする換気の機能も果たすことができる。
採光調温構造は、建築物の外周に面した室内空間の屋外側に施工される。したがって、室内空間は、少なくとも一面が屋外に面している必要がある。屋外に面する外壁面は、良好な日射が当たる南面や南東面などが有効である。室内空間にベランダやバルコニーなどが隣接していて、建築物の外壁から屋外側に張り出している構造を有する場所を利用することができる。室内空間が、庭や通路などに面している個所にも適用できる。
【0007】
室内空間が地上階に存在する場合、室内空間から屋外に張り出す露台や縁側などの構造に採光調温構造を適用できる。室内空間の上層階から軒先面が張り出している部分を利用すれば、採光調温構造に新たな屋根を設ける必要がない。
室内空間のうち、屋外に面している外壁面には、採光調温構造を設置する開口あるいは開放面を有している必要がある。開口は、室内空間の床面から天井面まで達するものが、採光および空気の流通を良好に行なえる。開口が、室内空間の高さ方向の一部しか存在しない場合もある。例えば、バルコニーに通じる開口は、室内空間の床面から天井面まで開放されていることがある。窓の開口は、室内空間の高さ方向の途中から天井近くまでに設けられていることが多い。
【0008】
〔張出空間〕
室内空間に隣接し屋外側に張り出して配置される。
張出空間は、室内空間と一体となって、居住などに利用される。特に、十分な採光が得られることで、日光浴を行なうサンルームとしての機能を果たすことができる。良好な採光が必要とされる各種作業場として利用することもできる。
室内空間と屋外との間を仕切る外壁面の一部を開放し、この開放部分の外側に張出空間が配置される。外壁面の全面に張出空間を設けることもできるし、外壁面の一部のみに張出空間を設けることもできる。室内空間の一面だけに張出空間を設けても良いし、複数面のそれぞれに張出空間を設けることもできる。
【0009】
張出空間と室内空間との境界面は、通常は平面であるが、円筒面などの曲面であってもよい。凸曲面を呈する境界面の外側にさらに張り出す張出空間を設けることもできる。
張出空間の屋外側の形状は、蓄熱空間の配置関係によっても違ってくるが、基本的には、屋外からの採光が良好になるように設定すればよい。建築物が施工された場所における日射の方向や高さ、その時間的変化、季節的変化等を考慮して、目的とする採光条件が適切になるように設定すればよい。我が国における標準的な条件では、南向きに張り出した張出空間に、東向きの面および西向きの面を有していれば、何れの方向からの日射も良好に受け入れることができる。
【0010】
具体的には、張出空間の平面形状あるいは水平断面形状を、室内空間との境界を底辺とし屋外側に突き出す三角形状に設定できる。頂角が90度の直角三角形、および、頂角が鈍角あるいは鋭角の三角形状も採用できる。左右対称の二等辺三角形状が採用できる。台形状や、それ以上の多角形状も採用できる。半円形状、半長円形状などの曲線形状も採用できる。直線と曲線との組み合わせ形状も採用できる。
〔蓄熱空間〕
張出空間の屋外側に隣接して配置される。
蓄熱空間は、日射に含まれる熱エネルギーを蓄積し、必要に応じて、張出空間および室内空間に熱エネルギーあるいは熱エネルギーを含む空気を供給する機能を果たす。また、張出空間および室内空間が過剰な日射を受けたり、屋外からの過剰な伝熱を受けたりすることを防ぐ機能も果たす。
【0011】
蓄熱空間は、一つの張出空間に一つだけ配置してもよいし、一つの張出空間に複数の蓄熱空間が配置される場合もある。
蓄熱空間の配置構造のうち、内周形状については張出空間の外周形状に対応する。蓄熱空間の外周形状は、張出空間の外周形状を一回り大きくした相似形が採用できる。張出空間の外周形状を囲む簡単な幾何学図形状を採用することもできる。蓄熱空間の外周形状と内周形状との間には、蓄熱機能を果たす空気を十分な量で収容できる間隔を設ける必要がある。この間隔は、屋外と張出空間との間の断熱性や日射の低減を図るためにも有効である。
【0012】
例えば、蓄熱空間の配置構造として、前記した水平断面形状が三角形状をなす張出空間に対して、左右の斜辺のそれぞれに隣接する一対の蓄熱空間を配置することができる。それぞれの蓄熱空間を、張出空間の前記斜辺のそれぞれを底辺として屋外側に張り出す三角形状に設定できる。張出空間が直角三角形状で、前記一対の蓄熱空間も直角三角形状であれば、張出空間と一対の蓄熱空間とを足し合わせた全体形状を矩形状にできる。外観的に体裁が良いとともに、採光も良好に行える。
〔内側仕切り部〕
蓄熱空間と張出空間とを開閉自在に仕切り透光性を有する。
【0013】
基本的には、通常の建築物における採光窓や採光戸、採光障子、採光面の技術が適用できる。
透光性の材料としては、ガラスのほか、透明樹脂や透明セラミック材料が使用できる。光の波長成分によって透過性、反射性、吸収性が異なる材料を、目的の応じて選択して使用することができる。例えば、可視光線の透過性に優れた材料は、採光を良好にできる。紫外線を透過させ難い材料は、室内空間における居住者や家具設備への紫外線の影響を抑えることができる。赤外線や遠赤外線を透過させ易い材料は、室内空間に日射熱を取り入れ易く、赤外線や遠赤外線を遮断する材料は、室内空間が日射で暑くなるのを防ぐ。透光性材料として、二枚のガラスを、その間を真空状態にしたり空気やガスを封入したりして構成されたペアガラスは、蓄熱空間と張出空間との間における断熱性を非常に良好にできる。
【0014】
内側仕切り部は、全体が開閉してもよいし、通風や出入りに必要な一部が開くだけでも構わない。但し、実質的に全面が密閉された状態を構成できる必要がある。開閉動作のために必要な機構や部材間に、わずかな隙間や孔が存在していることは差し支えない。
具体的構造として、引き違い戸、引き戸、開き戸、折畳み戸などの戸あるいは障子の構造が適用できる。戸板や障子面は、外周のサッシ枠材や格子枠を除いて全面が、ガラスなどの透光性材料で構成されていれば、採光性が良好になる。透光性材料が、上半分などの一部だけで、残りの部分は非透光性の材料で構成されていてもよい。
内側仕切り部の配置構造は、蓄熱空間と張出空間との境界面の形状配置に合わせて設定される。平面形状で直線状のもののほか、屈曲線状、曲線状、さらには複数種類の線を組み合わせたより複雑な線状をなすものも構成できる。
【0015】
〔外側仕切り部〕
蓄熱空間と屋外とを開閉自在に仕切り透光性を有する。
基本的には、前記した内側仕切り部と共通する技術が適用できる。内側仕切り部と外側仕切り部とを同じ材料および構造で、内外に間隔をあけて配置することもできるし、それぞれの機能や要求性能に合わせて、使用する材料や開閉構造などを変えることができる。
例えば、一方の仕切り部に、気密性や防音性、防犯機能、遮水性などの建築物の外殻構造に要求される機能を持たせれば、他方の仕切り部ではこれらの機能がなかったり弱かったりしても構わない。通常は、内側仕切り部に、基本的な建築物の外壁における開閉戸や開閉窓の機能を持たせ、外側仕切り部には、蓄熱空間における蓄熱機能などを持たせるだけにしておくことができる。外側仕切り部の構造や施工を簡単にすることができる。これとは逆に、外側仕切り部に、通常の開閉戸や開閉窓の機能を持たせ、内側仕切り部には、蓄熱空間と張出空間とを仕切る機能だけを持たせることもできる。
【0016】
外側仕切り部に好適な技術として、透光性材料からなる蛇腹状伸縮仕切り材が採用できる。蛇腹状伸縮仕切り材は、アコーデオンカーテンとも呼ばれる構造である。
〔蓄熱構造〕
蓄熱空間は、内部に存在する空気によって蓄熱機能を果たすが、それに加えて、別の蓄熱構造を設けておくことができる。
蓄熱構造としては、通常の建築物や蓄熱暖房装置などに採用されている蓄熱材料とその収容構造や蓄熱機構が適用できる。
具体的には、コンクリートやセメント硬化材料、天然石などの熱容量が大きく蓄熱作用の高い材料が使用できる。砂粒や無機多孔質材料、発泡樹脂材料なども使用できる。液体やジェル状の蓄熱材料も使用できる。
【0017】
蓄熱構造は、蓄熱空間の床面、天井面あるいは内外周面に設けられる。但し、内外周面については、内側仕切り部および外側仕切り部における採光や通風の機能を阻害しない範囲で設けられる。通常は、蓄熱材料そのもの、あるいは、蓄熱材料を充填した層からなる蓄熱層を施工面に貼り付けておくことができる。床面や天井面を構成する建材の一部に蓄熱層を積層しておくこともできる。例えば、建材としても知られる蓄熱性のあるセメント硬化板を、蓄熱空間の床面あるいは天井面に施工しておくことができる。
蓄熱層の外側には断熱層を配置しておくことができる。蓄熱層に蓄熱された熱エネルギーの流出を防止できる。断熱層としては、通常の建築施工に利用されている断熱材料が使用できる。例えば、発泡ポリスチレンボードのような発泡樹脂材料が使用できる。ガラスウールなどの繊維集積材料も使用できる。真空断熱材なども使用できる。
【0018】
〔日除け部〕
外側仕切り部の外周側に、開閉自在な日除け部をさらに備えることができる。日除け部を設けることで、蓄熱空間、張出空間および室内空間に、過剰な日射が当たったり過剰に昇温されたり居住者に眩しい思いをさせたりするのを防止できる。室内空間の照明が屋外に漏れたり、屋外から室内空間が見えたりするのを防ぐ機能もある。
日除け部としては、通常の建築物において、窓や出入り口に設置される日除け材料や日除け装置が採用できる。例えば、ブラインド、ブラインドシャッター、スダレ、ヨシズ、カーテン、ロールカーテン、採光雨戸などが使用できる。
【0019】
日除け部は、日射を完全に遮断する状態、日射を低減させる状態、日射を完全に通過させる状態を選択的に設定できることが望ましい。板状の日除け部材であれば、スライド移動や回転移動により開閉状態あるいはその中間状態に設定できる。膜状の日除け部材であれば、巻き上げたり解き拡げたりすることで、開閉量が調整できる。ブラインドのように、巻き上げ引き降ろしに加えて多数の日除け片を傾斜させることで採光量を調整することもできる。
日除け部の開閉動作は、手動操作するものであっても、室内空間から遠隔操作できるものであってもよい。光センサなどを利用して、日射の強さに応じて自動制御されるものであってもよい。
【0020】
〔採光調温方法〕
以上に説明した採光調温構造を用いて、建築物の室内空間に屋外から採光するとともに室内空間を調温することができる。
<蓄熱段階(a)>
内側仕切り部および外側仕切り部を閉鎖する。蓄熱空間が実質的に密閉状態になる。屋外から外側仕切り部を透過して蓄熱空間へ入る日射により蓄熱空間の空気が加温される。蓄熱空間に日射の熱エネルギーが効率的に蓄積される。
日射の熱エネルギーが蓄熱空間に蓄えられることで、内側仕切り部を通過して張出空間から室内空間に到達する熱エネルギーが低減される。張出空間および室内空間が暑くなり過ぎない。
【0021】
内側仕切り部および外側仕切り部は透光性を有するので、日射の可視光成分による採光は、張出空間および室内空間に良好に到達する。特に、内側仕切り部が、室内空間の外壁面よりも屋外側に張り出していることで、日射を効率的に張出空間から室内空間へと取り入れることができる。日射の方向が変わっても、日射の通過量が極端に少なくなることが起こらない。日中だけでなく朝方や夕方でも良好な採光が可能になる。
さらに、内側仕切り部および外側仕切り部とその間の蓄熱空間とが、一種の断熱構造を構成するので、屋外側と張出空間および室内空間との間における熱伝達を抑制する。室内空間において冷暖房装置によって調整された冷熱あるいは温熱が、屋外側に漏れることが防止できる。
【0022】
<放熱段階(b)>
外側仕切り部は閉鎖したままで内側仕切り部を開放し、前記段階(a)において蓄熱空間で加温された空気を、張出空間を経て室内空間へ移動させる。張出空間および室内空間が加温される。
日射が弱くなったり無くなったりしても、蓄熱空間が保有する熱エネルギーを徐々に張出空間および室内空間に放出させることで、室内空間を保温することができる。室内空間で機械的な暖房装置を稼動させる必要がなくなったり、暖房強度を弱めたりできる。
内側仕切り部を完全に開放せずに開放割合を調節すれば、蓄熱空間から室内空間に供給される空気量あるいは熱量を制御して、室内空間をより適切に調温できる。
【0023】
放熱段階は、日射が強い状態で行なってもよい。この場合は、蓄熱空間および張出空間が、外側仕切り部で囲まれたサンルームの状態になる。蓄熱空間および張出空間の空気が暖められて室内空間へと送り込まれる。空気は蓄熱空間に滞留せずに室内空間へと移動するので、蓄熱空間に高温の空気を溜めたり大量の熱エネルギーを蓄積させたりすることはできない。
<出窓段階>
外側仕切り部を開き、内側仕切り部を閉じる。
この状態は、実質的に通常の出窓と同じ構造になる。出窓と同様に、日射を有効に取り入れることができる。
【0024】
蓄熱空間に外気が入り、風が流通することになる。蓄熱空間に溜まった熱エネルギーが放出される。外気温が、内側仕切り部を介して張出空間および室内空間に伝わって調温する機能も発揮される。室内空間の熱を、内側仕切り部を介して屋外側に放出させることもできる。外気は室内空間に入らないので、埃や花粉などの侵入が阻止できる。
<通風段階>
外側仕切り部と内側仕切り部とを、両方とも開放する。
屋外と張出空間および室内空間とが連通し、空気が自由に出入りする。
屋外の新鮮な空気を室内空間に送り込み、室内空間の汚れた空気を屋外に排出する換気ができる。屋外と室内空間との温度差を利用して、室内空間の調温ができる。
【0025】
この場合も、各仕切り部の開放割合を調節することで、通風量の調整および通風による室内空間の温度調整ができる。
<日除け部の併用>
上記した何れの段階においても、日除け部材の開閉動作を組み合わせることで、より細かな採光および調温の調整が可能になる。
蓄熱段階で、日除け部による日射の遮断を行なうと、蓄熱空間における蓄熱が中断あるいは低減される。室内空間への日射の侵入も遮断できる。日射が強過ぎるときに有効である。
【0026】
放熱段階、出窓段階、通風段階でも、日除け部による日射の遮断を行なって、室内空間への強い日射の侵入を遮ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる建築物の採光調温構造では、室内空間および張出空間と蓄熱空間と屋外とを、内側仕切り部と外側仕切り部との開閉操作で選択的に開放したり閉鎖したりすることで、室内空間を適切な採光状態および調温状態に設定することができる。
具体的には、閉鎖状態の蓄熱空間に屋外からの日射が当たれば、蓄熱空間には空気が自由に出入りできないので、蓄熱空間に日射の熱エネルギーが有効に蓄えられて効率的に昇温する。この状態では、日射エネルギーの大部分は蓄熱空間に溜まるので、張出空間から室内空間が、強い日射で過剰に暑くなることが防止できる。蓄熱空間が、内部に空気が充填された断熱層として機能し、屋外と室内空間とを良好に断熱できる。
【0028】
外側仕切り部および内側仕切り部を通じて張出空間および室内空間の採光は十分に確保できる。特に、張出空間が存在するので、いわゆる出窓と同様の機能で、室内空間への採光が良好になる。日射の方向が変わっても、内側仕切り部から張出空間へと良好に日射を受けることができる。外側仕切り部と内側仕切り部とが二重に存在していても、採光を阻害することが少ない。
蓄熱空間に過剰な日射エネルギーが蓄えられた場合は、外側仕切り部を開けば、屋外との間の通風によって、過剰な熱を逃がすことができる。
蓄熱空間に十分な日射エネルギーが蓄えられたあと、内側仕切り部を開いて蓄熱空間と張出空間および室内空間を通じれば、蓄熱空間で加温された空気が室内空間へと供給されて、室内空間を加温することができる。蓄熱空間が十分に加温されたあとは、日射が少なくなったり無くなったりしても、蓄熱空間に蓄えられた熱エネルギーを徐々に放出させることで、室内空間の加温を続けることができる。例えば、夕方から夜間、さらには朝方までも、蓄熱空間から室内空間へと熱を供給することができる。
【0029】
内側仕切り部および外側仕切り部の両方を開けば、屋外と室内空間との間で自由に通風でき、室内空間の熱気を逃がしたり室内空間を冷却したり室内空間に屋外の新鮮な空気を取り込んだりできる。
さらに、内側仕切り部は閉じ、外側仕切り部を開いた状態では、張出空間と内側仕切り部とで、通常の出窓構造を構成することになる。蓄熱空間における日射エネルギーの蓄積を行なわないこともできる。
これらの各段階あるいは機能を、任意に選択して切り替えることができるので、建築物の室内空間を、常に快適な採光および調温の状態に維持することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1〜図7に示す実施形態は、一般的な戸建住宅に採光調温構造を設置した場合を示す。
〔住宅の全体構造〕
図1、2に示す住宅10は、二階建ての戸建住宅である。説明を判り易くするために、基本的な構造を模式的に簡略化して表示している。
地盤Eに埋設された基礎構造11の上に、床面12や壁、二階の床14、屋根などの上部構造が施工されている。一階の室内空間L1および二階の室内空間L2が存在する。室内空間L1、L2は、換気口や階段空間などの通風口18を有し、互いに空気が流通するようになっている。外壁に設置された通風口18や屋根に設置された通風口18などを通じて、室内空間L1、L2と屋外との間でも空気が流通するようになっている。室内空間L1、L2における空気の温度変化による上昇流や対流、風などによって、室内空間L1、L2と屋外との間は通風口18を通じて換気が行なわれる。
【0031】
<張出構造>
一階の室内空間L1は、南向き外壁の一部が開放されている。室内空間L1の床面12に続く張出床13が屋外側に延びて、露台あるいはベランダになっている。室内空間L1の天井すなわち二階の床面14も屋外側に延びて、バルコニー15が構成されている。室内空間L1の外側で、一階の床面13と二階のバルコニー15の下面すなわち軒先との間に挟まれた空間を、張出空間Sおよび蓄熱空間Hに利用する。
図に破線矢印で示すように、日射は、屋外から蓄熱空間Hおよび張出空間Sへと良好に照射される。
【0032】
〔採光調温構造〕
図2〜図4は、採光調温構造を詳細に示している。
<蓄熱床>
図2に示すように、張出床13の上面には断熱層24および蓄熱層22が設けられている。蓄熱層22は、蓄熱性の高いセメント系硬化板が用いられ、断熱層24は発泡スチレンボードが使用される。
<張出空間と蓄熱空間>
図3に詳しく示すように、室内空間L1と屋外とを仕切る外壁の一部が開放されている。この開放部分の外側に張出空間Sが設けられる。
【0033】
図4に平面形状を示すように、張出空間Sは、室内空間L1との境界線を底辺とする直角二等辺三角形状をなしている。例えば、張出空間Sの平面寸法を、底辺2.8m、高さ2.4mの直角二等辺三角形状に設定できる。張出空間Sには、椅子や机などの家具を置いたり、居住者が日光浴を行なったりできる広さが確保されている。
張出空間Sの外側に蓄熱空間Hが設けられる。図4に示す平面形状において、張出空間Sの左右の斜辺にそれぞれ対称形をなす蓄熱空間Hが配置されている。蓄熱空間Hの平面形状は、張出空間Sの斜辺を底辺とする直角二等辺三角形状である。
したがって、張出空間Sと左右の蓄熱空間H、Hを合わせた全体形状が、横長の矩形状を呈している。
【0034】
<内側仕切り部>
図3に示すように、張出空間Sと蓄熱空間Hとの間は、内側仕切り部50で仕切られている。
内側仕切り部50は、二枚の引き違いガラス戸52,52で構成されている。引き違いガラス戸52、52は、矩形状のサッシ枠に矩形の透明ガラス板が嵌め込まれており、ほぼ全面が良好な透光性を有する。
図4(b)に示すように、ガラス戸52を閉めれば、張出空間Sと蓄熱空間Hとの間は、ほぼ気密状態で遮蔽される。図4(b)に示すように、ガラス戸52を開ければ、張出空間Sと蓄熱空間Hとの間は、自由に空気が流通することになる。なお、二枚のガラス戸52が重なった部分でも、ある程度の透光性は発揮できる。
【0035】
<外側仕切り部>
図3に示すように、蓄熱空間Hと屋外の間は、外側仕切り部40で仕切られている。
外側仕切り部40は、直角三角形の二辺をそれぞれ、透明樹脂シート材料からなり、細長い帯状部分を互いに屈曲自在に連設してなる蛇腹状伸縮仕切り材で構成している。この構造は、いわゆるアコーデオンカーテンとして知られている伸縮可能は仕切りの構造と共通している。図3の右側部分に示すように、多数の帯状部分を折り畳めば、全体が短くなって、蓄熱空間Hと屋外の間が開放される。図3の左側部分に示すように、多数の帯状部分を長く延ばすようにすれば、蓄熱空間Hと屋外の間が遮蔽される。外側仕切り部40の各辺の両端には、蛇腹状伸縮仕切り材の端辺を支持する細い支持柱42が設定されている。支持柱42は十分に細いので、屋外からの日射が蓄熱空間Hや張出空間Sに入るのを邪魔することは少ない。室内空間L1から屋外を眺めたときに目障りになることもない。
【0036】
<日除け部>
図2および図4(a)に示すように、外側仕切り部40の屋外側には、ブラインド30が設置されている。
ブラインド30は、通常の住宅用のブラインドあるいはシャッターブラインドが使用される。上下に多数のブラインド片が取り付けられ、ブラインド片の傾斜を調整することで、日射を遮ったり、ブラインド片の隙間から日射を通過させたりすることができる。雨を遮断することもできる。日射を遮っている状態でも、ブラインド片の隙間から通風を行なうことができる。ブラインド片を立てて上下のブラインド片を連結すれば、通風を遮断することもできる。ブラインド30を上方に巻き上げてしまえば、外側仕切り部40は完全に屋外に開放され、日射を遮るものは全くなくなる。
【0037】
図4(a)に示すように、ブラインド30は、矩形状を構成する外側仕切り部40の各辺に沿って配置されている。日射の方向が変わっても、何れかの方向のブラインド30で日射を調整することができる。
〔採光調温方法〕
図4〜図6はそれぞれ異なる状態あるいは段階での採光調温方法を示している。これらの段階は、季節、時間帯、天候などの状況に合わせて、何れかを選択することで、適切な採光調温状態を維持することができる。
<蓄熱段階>
通常、昼間の日射が強い場合に適用される。
【0038】
図4(a)に示すように、内側仕切り部50および外側仕切り部40の何れもが閉じられている。蓄熱空間Hは実質的に密閉状態になっている。
屋外からの日射は、外側仕切り部40を通過して蓄熱空間Hに入り、蓄熱空間Hの内部の空気を加温する。空気だけでなく蓄熱空間Hの床を構成する蓄熱層22も加温する。日射エネルギーが、空気および蓄熱層22に蓄積されることになる。密閉状態の蓄熱空間Hでは、外部に熱が逃げ難いので、非常に効率的に熱が蓄積される。
このとき、日射の光自体は、蓄熱空間Hから内側仕切り部50を通過して、張出空間Sから室内空間L1へも到達する。張出空間Sおよび室内空間L1の採光も果たすことができる。外側仕切り部40と内側仕切り部50とを構成する透光性材料の波長特性を適切に設定すれば、日射に含まれる波長成分のうち、加熱作用の高い長波長の赤外線や遠赤外線は、外側仕切り部40は良好に通過するが内側仕切り部50は通過し難くし、可視光線は、外側仕切り部40および内側仕切り部50の両方を良好に通過し、紫外線は、外側仕切り部40および内側仕切り部50の両方で遮断できるようにすることができる。
【0039】
蓄熱空間Hが昇温しても、内側仕切り部50で仕切られた張出空間Sは、それほど高温にはならない。外側仕切り部40と内側仕切り部50とその間の蓄熱空間Hとで、いわゆる二重断熱ガラス戸と同じような断熱構造を構成するので、内側仕切り部50の内側には、屋外からの過剰な熱が伝わり難いのである。張出空間Sでは、適度な日射を受けて日光浴をしたり、豊富な採光を利用して各種の作業を行ったりすることができる。
また、室内空間L1で冷房や暖房を行なっている場合、室内空間L1と屋外との間に、前記した外側仕切り部40と内側仕切り部50とその間の蓄熱空間Hとによる二重断熱構造が存在することで、室内空間L1の温熱あるいは冷熱が屋外に逃げ難いという利点がある。
【0040】
なお、日射が強過ぎて、張出空間Sや室内空間L1でも眩しかったり暑くなったりした場合は、ブラインド30を操作して、日射の一部あるいは全てを遮断することもできる。
<放熱段階>
通常、日射が弱くなる夕方から夜間に適用される。
外側仕切り部40は閉めたままで、内側仕切り部50を開く。二枚のガラス戸52が重なる状態になり、内側仕切り部50の幅の半分が開放される。蓄熱空間Hと張出空間Sおよび室内空間L1とは、空気が自由に出入りできる状態になる。
前記の蓄熱段階で、蓄熱空間Hに十分に熱エネルギーが蓄えられ、加温された空気が、張出空間Sから室内空間L1へと送り込まれて、それらの空間を加温する。蓄熱空間Hの蓄熱層22から徐々に熱が放出されるので、蓄熱空間Hから張出空間Sへと継続的に加温された空気が供給される。
【0041】
その結果、室内空間L1で暖房を行なわなくても、適度な加温状態を得ることができる。暖房を行なう場合でも、暖房を弱くすることができ、稼動コストを節約できる。
このとき、ブラインド30を下ろして、外側仕切り部40に屋外の風が当たるのを遮断しておけば、蓄熱空間Hの熱が、外側仕切り部40を通じて屋外に逃げることを防止できる。ブラインド30を下ろしておけば、外側仕切り部40から屋外空気への放熱あるいは放射冷却を抑えることもできる。
なお、夕方から夜間でも、内側仕切り部50を閉めたままで、室内空間L1では通常の空調装置や暖房装置で調温を行ない、室内空間L1で居住者の活動がなくなる就寝前に、暖房装置などを止め、内側仕切り部50を開けて、蓄熱空間Hからの熱供給を開始することもできる。この場合、就寝時に、暖房装置などの稼動音がせず、蓄熱空間Hからの穏かな熱供給によって保温できるので、快適な睡眠環境を提供できる。
【0042】
<出窓段階>
図5に示す状態は、蓄熱空間Hにおける積極的な蓄熱を行なわずに、通常の出窓と同様の使用形態になっている。
外側仕切り部40は、蛇腹状伸縮仕切り材を折り畳んで一端に寄せた状態にしている。内側仕切り部50は閉めている。
蓄熱空間Hには、屋外の空気が自由に流通する。蓄熱空間Hの空気が過剰に暑くなることがない。床面を構成する蓄熱層22も通風によって熱が奪われるので、過熱されることがない。
【0043】
日射は、内側仕切り部50を通過して張出空間Sから室内空間L1に入る。外側仕切り部40が開いているので、良好な採光が可能になる。内側仕切り部50は、建築物10の壁面よりも屋外側に張り出しているので、通常の出窓構造と同様に、午前と午後とで日射の方向が大きく変わっても、何れかの方向の内側仕切り部50から効率的な採光が可能である。
この場合も、ブラインド30の操作で、室内空間L1に入り込む日射の強さを調整することができる。
<通風段階>
図6に示すように、室内空間L1に外気を取り込んで、換気および冷風による調温を行なうことができる。
【0044】
外側仕切り部40は、開いた状態である。内側仕切り部50も、ガラス戸52を重ねて、残りの幅が開放された状態である。
屋外から蓄熱空間H、張出空間Sおよび室内空間L1へと、空気が自由に出入りする。日射が、外側仕切り部40および内側仕切り部50で遮られることがないので、採光も良好に行なえる。
図1において、屋外から蓄熱空間H、張出空間Sを経て室内空間L1に新鮮な空気が送り込まれると、室内空間L1の空気が押し出され、室内空間L1に存在する通風口18から、あるいは、階上の室内空間L2を経て通風口18から屋外に排出される。その結果、室内空間L1、L2を含む建築物10の内部空間全体の換気および調温を効果的に果たすことができる。
【0045】
<具体例>
上記した実施形態の採光調温構造を設置した住宅における採光調温の機能を具体的に確認した。住宅は、我が国の中緯度地域に設置された。
冬期の日中に、前記した外側仕切り部40および内側仕切り部50を閉鎖する蓄熱段階に設定すると、蓄熱空間Hにおける温度を40℃程度まで上昇させることができた。このとき、外気温は7〜8℃、室内空間L1の室温18℃程度であった。蓄熱空間Hの存在が、室温の低下を効果的に防いでいる。しかも、蓄熱空間Hに比べると、室内空間L1の温度は低い適温範囲に収まっている。通常のサンルームにおいて問題となる、日射によって張出空間Sあるいは室内空間L1が過剰に温度上昇をするようなことは生じなかった。
【0046】
外側仕切り部40および内側仕切り部50を一定時間毎に開いて、一日に5回の換気を行なった。しかし、換気による室温の低下は少なく、外側仕切り部40および内側仕切り部50を閉めて蓄熱段階に戻せば、直ぐに蓄熱空間Hおよび室内空間L1の温度が上昇した。特に、換気の際に、室内空間L1には、蓄熱空間Hを通過して温められた外気が供給される。その結果、換気による室内空間L1の温度低下が抑制された。
さらに、蓄熱空間Hが十分に加温された状態で、外側仕切り部40は閉じたまま内側仕切り部50を開いて放熱段階にすると、室内空間L1をさらに昇温させることができた。日射が弱くなっても、蓄熱空間Hに蓄積された熱エネルギーで、室内空間L1の温度低下を防ぐことができた。
【0047】
〔別の実施形態〕
図7に示す実施形態は、前記実施形態と基本的な構造は共通しているが、一部の配置形態が異なる。共通点は説明を簡略にして、相違点を主に説明する。
建築物10の壁面には比較的に広い空間が開放されている。張出空間Sは、室内空間L1との境界線を底辺とする台形状をなしている。蓄熱空間Hは、張出空間Sの外側を大きく囲む矩形状をなしている。前記実施形態のように左右に二つに分割されておらず、全体が一つの連続した空間になっている。
内側仕切り部50は、前記台形状の斜辺については、前記実施形態と同様の引き違いガラス戸52で構成され、開閉自在になっている。台形状の上辺に相当する部分は、ガラス板をサッシ枠に嵌め込んで固定した嵌め殺し構造になっており、開閉することはできない。
【0048】
外側仕切り部40は、前記実施形態と同様に、透光性のある蛇腹状伸縮仕切り材で構成されている。但し、矩形状の長辺については、2枚の蛇腹状伸縮仕切り材を連結することで全長を構成している。図示を省略しているが、2枚の蛇腹状伸縮仕切り材は、それぞれ左右の支持柱42、42へと分かれて折り畳まれるように開く。
採光調温方法は、前記実施形態と全く同じように、蓄熱段階、放熱段階、出窓段階、通風段階を適宜に選択することで、張出空間Sおよび室内空間L1の採光および調温さらには換気を居住者にとって快適な環境に維持することができる。
内側仕切り部50のうち、前記した台形の上辺部分は閉じたままであるが、左右の斜辺部分で十分な通風を行なうことができる。必要であれば、前記台形の上辺についても、開閉自在な引き違いガラス戸を設けたり、開きガラス戸にしたりすることで、開閉自在にすることができる。
【0049】
この実施形態では、室内空間L1の外壁の広い範囲を屋外に開放して、より採光状態を良好にしたり、広い張出空間Sにテーブルなどの家具を置いて利用価値を高めたり、蓄熱空間Hを拡げて蓄熱機能を高めたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の採光調温構造は、例えば、二階建の戸建住宅において、一階の室内空間から屋外側に張り出したバルコニー部分と二階の軒先との間に設置することができる。屋外の日射による光と熱エネルギーの有効利用を図ることで、室内空間を適切な採光状態および調温状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態を表す採光調温構造を備えた住宅の模式的断面構造図
【図2】採光調温構造の拡大断面図
【図3】概略斜視図
【図4】蓄熱段階(a)および放熱段階(b)の水平断面図
【図5】別の段階の水平断面図
【図6】別の段階の水平断面図
【図7】別の実施形態の水平断面図
【符号の説明】
【0052】
10 建築物
13 張出床
15 軒先(二階バルコニー)
22 蓄熱層
24 断熱層
30 ブラインド
40 外側仕切り部
50 内側仕切り部
H 蓄熱空間
L1 室内空間
S 張出空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の室内空間に屋外から採光するとともに室内空間を調温する構造であって、
前記室内空間に隣接し屋外側に張り出して配置される張出空間と、
前記張出空間の屋外側に隣接して配置される蓄熱空間と、
前記蓄熱空間と前記張出空間とを開閉自在に仕切り透光性を有する内側仕切り部と、
前記蓄熱空間と前記屋外とを開閉自在に仕切り透光性を有する外側仕切り部と
を備える建築物の採光調温構造。
【請求項2】
水平断面形状において、
前記張出空間は、前記室内空間との境界を底辺とし屋外側に突き出す三角形状をなし、
前記蓄熱空間は、前記張出空間の三角形状のうち、左右の斜辺のそれぞれに隣接する一対の蓄熱空間を有し、
前記内側仕切り部は、前記張出空間の三角形状のうち、左右の斜辺と前記一対の蓄熱空間との間にそれぞれ配置され、
前記外側仕切り部は、前記一対の蓄熱空間と前記屋外との間にそれぞれ配置されてなる
請求項1に記載の建築物の採光調温構造。
【請求項3】
前記蓄熱空間は、その床面に配置される蓄熱層と、蓄熱層の下面に配置される断熱層とを有する
請求項1または2に記載の建築物の採光調温構造。
【請求項4】
前記外側仕切り部の外周側に、開閉自在な日除け部をさらに備える
請求項1〜3の何れかに記載の建築物の採光調温構造。
【請求項5】
前記内側仕切り部は、引き違いガラス戸を有し、
前記外側仕切り部は、透光性材料からなる蛇腹状伸縮仕切り材を有し、
前記日除け部は、巻き上げ自在なブラインドを有する
請求項1〜4の何れかに記載の建築物の採光調温構造。
【請求項6】
前記建築物は、複層階を有する複層建築物であり、
前記張出空間および前記蓄熱空間は、前記建築物の上下層階のうち、下層階の室内空間に隣接し、下層階の床面と上層階の軒下との間で屋外側に張り出して配置されてなる
請求項1〜5の何れかに記載の建築物の採光調温構造。
【請求項7】
前記請求項1〜6の何れかに記載の採光調温構造を備えて建築物において、
建築物の室内空間に屋外から採光するとともに室内空間を調温する方法であって、
前記内側仕切り部および外側仕切り部を閉鎖し、屋外から外側仕切り部を透過して前記蓄熱空間へ入る日射により蓄熱空間の空気を加温する段階(a)と、
前記外側仕切り部は閉鎖したままで前記内側仕切り部を開放し、前記段階(a)において前記蓄熱空間で加温された空気を、張出空間を経て室内空間へ移動させる段階(b)と
を含む建築物の採光調温方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−138442(P2007−138442A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330635(P2005−330635)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】