説明

建築現場管理システム

【課題】建築現場の状況を遠隔した複数の地点においてネットワークを介してリアルタイムに情報共有すること、あるいはそれら現場の状況に関して各地点において前記情報共有下に視覚的な操作を行って意見交換を可能とする。
【解決手段】少なくとも一個所の建築現場と少なくとも一つの地点のそれぞれに接続可能とされているシステムサーバと、前記建築現場と前記地点に設置されたクライアントシステムとを備え、前記クライアントシステムは、前記システムサーバの映像伝送部と通信回線を介して接続可能な映像再生部を備え、建築現場に設置されているクライアントシステムが、前記ネットワークを介して前記システムサーバの映像伝送部に映像データを送出することが可能な映像取得手段を備え、該映像取得手段によって生成された建築現場の映像データが前記システムサーバの映像伝送部から前記各クライアントシステムの大画面表示装置に伝送・表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は建築現場管理システムに係わり、特に二以上の互いに遠隔した場所においてリアルタイムで建築現場に関する状況、情報を共有することを可能とする建築現場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野では、建築物を実現するに当たって、その建築物の計画、設計、施工、検査等に多くの組織が係わり、それらの組織の所在は互いに地理的に(空間的に)遠隔しているのが普通である。したがって、実際に建築作業が行われている建築現場の状況をそれらの関係組織が十分に把握して作業工程が円滑に進行するように管理することが重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、建築現場の状況を遠隔地で把握することはなかなか困難であるため、通常は、建築現場ごとに設計者、設計監理者などが現場へ出向いて定期的な打ち合わせを行っているのが現状であり、そのために要する費用と時間はしばしば軽視し得ないものとなることがある。また建築現場では予期しない突発的な状況の変化が起こることも多く、定期的な打ち合わせのほかにその状況に対応可能な人員が不定期に現場へ出張しなければならないことも多い。そしてこの際に、現地出張員と設計監理部門との間で電話やファクシミリに頼って情報伝達を行う場合、設計監理部門での十分な状況把握や現地との意思疎通を達成することが難しい問題がある。また、リアルタイムで現場の進行状況を把握することが難しいために、設計部門からの技術的な指示事項等が正確に現場へ伝えられてその通りに施工されているかどうかを確認するのが難しい問題がある。さらに、監視カメラシステムなどをシステム単体で導入すればそれなりの効果が得られるが、システム間での有機的な連携がとられない場合には、効果的に運用されないことがあるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の、及び他の課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、少なくとも一個所の建築現場と、少なくとも一つの地点をネットワークで接続してその少なくとも二個所の間でのリアルタイムの情報共有を可能としている建築現場管理システムであって、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点のそれぞれに接続可能とされているシステムサーバと、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点に設置されたクライアントシステムとを備え、前記システムサーバは、映像データを伝送するための映像伝送部を少なくとも備え、前記クライアントシステムは、前記システムサーバの映像伝送部と通信回線を介して接続可能とされている映像再生部を備え、前記クライアントシステムのうち、建築現場に設置されているクライアントシステムが、前記ネットワークに接続可能であって該ネットワークを介して前記システムサーバの映像伝送部に映像データを送出することが可能に構成されている映像取得手段を備えており、該映像取得手段によって生成された建築現場の映像データが前記システムサーバの映像伝送部から前記ネットワークを介して各クライアントシステムに接続されている大画面表示装置に表示されるように構成されていることを特徴とする。この態様において、前記建築現場に設置されているクライアントシステム又は前記建築現場の映像取得手段に付帯して警報入力部を、前記他のクライアントシステムに警報出力部を設け、該警報入力部から警報入力がなされると、他のクライアントシステムの前記警報出力部から人の感覚器を刺激する警報が出力されるように構成することができる。
【0005】
また本発明の他の態様は、少なくとも一個所の建築現場と、少なくとも一つの地点をネットワークで接続してその少なくとも二個所の間でのリアルタイムの情報共有を可能としている建築現場管理システムであって、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点のそれぞれに接続可能とされているシステムサーバと、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点に設置されたクライアントシステムとを備え、前記システムサーバは、映像データを蓄積伝送するための映像蓄積伝送部と、ネットワーク会議機能提供部とを備え、前記クライアントシステムは、前記システムサーバの映像蓄積伝送部と通信回線を介して接続可能とされている映像再生部と、前記システムサーバのネットワーク会議機能提供部と通信回線を介して接続可能とされて該ネットワーク会議機能提供部を介して他の地点と映像及び音声データを授受可能とされるネットワーク会議機能端末とを備え、さらに、上記クライアントシステムと通信回線を介してさらにリンクされている映像取得手段を備えるとともに、上記クライアントシステムは前記映像再生部及びネットワーク会議機能端末からの画像を表示するためのガラススクリーン表示装置を備え、該ガラススクリーン表示装置がさらにスクリーン上の座標入力装置を備えており、前記クライアントシステムが実装する座標入力処理装置によって当該座標入力装置を通じた座標入力操作をスクリーン画像上に可視化して表示することができることを特徴とする。この態様において、前記システムサーバのネットワーク会議機能提供部に情報記憶部を接続可能に設け、当該情報記憶部に紙ファイリングエミュレータを連携させて、画面上で紙ファイルを操作するのと同等のユーザインターフェイスが提供されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の建築現場管理システムによれば、建築現場の状況を遠隔した複数の地点においてネットワークを介して、大画面上でリアルタイムにかつ視覚的に共有することができる。また、それら現場の状況に関して各地点において前記情報共有下に視覚的な操作を行って意見交換を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をその実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0008】
《第一の実施形態》
《システム全体の構成とシステムサーバ》
本発明の第一実施形態に係る建築現場管理システムの全体構成ブロック図を図1に示す。この建築現場管理システムは、設計会社が設計した建築物を、複数の施工会社X、Y、Zが各現場で実際に施工するケースについて本発明を適用した場合である。
【0009】
設計会社には、ネットワークに接続可能なコンピュータであって本システムの中核をなすシステムサーバ10が設けられており、本実施形態の場合、各施工会社X、Y、Z向けに別個に設置されている映像伝送サーバ(映像伝送部)10X、10Y、10Zを有している。これらの映像伝送サーバ10X、10Y、10Zは、通信回線としてのインターネット等のネットワークNWに接続されていて、後述するクライアントシステムや映像取得手段と、所定のプロトコルで通信可能とされている。このシステムサーバ10は通常設計会社の本社内に設けられるが、設置に関して地理的な制約はないから、本社以外のデータセンタなどに設置することは自由である。
【0010】
設計会社にはまた、監理者クライアント12a、12b、12cが設置される。これらの監理者クライアント12a、12b、12cは、後述する各建築現場のいずれかを担当してその現場監理を行うもので、それぞれがインターネットに接続可能なコンピュータとして構成されている。そして、前記各映像伝送サーバ10X、10Y、10Zから送出される映像データを受信して適宜の表示デバイスに出力することができる映像処理クライアントソフトウェアがインストールされて映像再生部を構成している。本実施形態では、監理者クライアント12aがX施工会社の担当するA現場、B現場、C現場を監理し、監理者クライアント12bがそれぞれY施工会社、Z施工会社の担当するD現場、E現場を監理している。さらに他の施工会社や建築現場を監理するための監理者クライアント12c等を設けることも可能である。
【0011】
本実施形態では、各監理者クライアント12a、12bが映像伝送サーバ10X、10Y、10Zから例えばストリーミング方式で受信した映像データを、各クライアントに接続したプロジェクタ(図示せず)によって、大画面ガラススクリーン12aD、12bDに投影するように構成している。例えば、監理者クライアント12aは4台のプロジェクタによって大画面ガラススクリーン12aDを四分割で使用して現場映像を投影しており、本実施形態の場合A現場〜C現場の三ヶ所の映像を投影している。監理者クライアント12bの場合は、同様にD現場及びE現場の映像を大画面ガラススクリーン12bDに投影している。ガラススクリーンとしては、乳白加工を施した大型ガラスパネルを用いることができ、ほぼ3m×2mから最大3m×8m程度までの大画面を実現することができる。
【0012】
各監理者クライアント12a、12b、…にはさらに、例えばインターネットのWWWブラウザソフトウェアに組み込む形態で警報入力部(図示せず)が設けられるとともに、適宜の出力ドライバを介して警報出力部としての警報表示灯12a1、12a2、…が接続されている。警報入力部は、前記大画面ガラススクリーン12aD、12bDを監視している監理者がなんらかの注意喚起を要する事態に気づいた場合に、監理者クライアント12a、12bのモニタスクリーン上でブラウザの該当ボタンをクリックするなどの操作を通じて、他のクライアントに対して警報信号を送信することができるように構成されている。一方、警報表示灯12a1、12a2、…は前記警報信号を受信したクライアントが発する出力信号の入力によって動作する、例えば回転体に発光体を取り付けてなる警報灯であってよく、その他にも、ブザー等の警音装置や他の適宜の出力装置を採用することができる。なお、このような監理者クライアントシステムは、例えば建築現場の地域ごと、担当施工会社ごとに別室にするなど設置の形態は必要に応じて様々に変更して対応することができる。
【0013】
《施工会社及び現場システム》
次に、同じく図1を参照して施工会社及び建築現場に設けられるシステムについて説明する。本実施形態では各施工会社X、Y、Zに関して設けられるシステムの構成は実質的に同等であるので、X施工会社の場合に例をとって説明する。
【0014】
まずシステムサーバ10の映像伝送サーバ10Xからの映像データを受信して表示するため、X施工会社本社クライアント20X、A現場事務所クライアント22Xが設置される。それぞれのクライアント20X、22Xは、設計会社の監理者クライアント12a、12b…に関して説明したのと同様に、インターネットNWに接続可能であって、映像伝送サーバ10Xからの映像データを受信してこれを適宜の表示デバイスに出力することを可能とするクライアントソフトウェアがインストールされて映像再生部が実装されたコンピュータとして構成されている。表示デバイスとしては、上述した大画面ガラススクリーンとプロジェクタの組み合わせのほか、LCDディスプレイなど、設置場所の規模に応じたものを選択することができる。
【0015】
X施工会社の各クライアント20X、22Xにはまた、それぞれ前記警報入力部が設けられるとともに、警報表示灯20Xa、22Xa、…が接続される。
【0016】
建築現場には、現場の状況を撮影して映像データを送出するためのポータブルクライアント24Xがそれぞれ設けられる。このポータブルクライアント24Xは一般に、建築現場での持ち運びに適した堅牢なポータブルコンピュータと、これに付帯する無線LANアダプタ等の通信インターフェイスと、前記コンピュータに接続されたビデオカメラ24Xaとを備えてなる。ポータブルクライアント24Xには、ビデオカメラ24Xaから入力された映像データに所定の処理を行ってシステムサーバ10の映像伝送サーバ10Xに転送するクライアントソフトウェアがインストールされている。
【0017】
また、ポータブルクライアント24Xには携帯電話等の通信端末24Xbを付帯させてもよい。これによってポータブルクライアント24Xを携行する人員が現場事務所などと随時連絡を取ることができるほか、前記した通信インターフェイスとしてポータブルクライアント24Xと組み合わせて使用することもできる。
【0018】
なお、図1にY施工会社の例として図示しているように、建築物の施主である企業等の組織にクライアント26Yを設置して、施主との間でも必要に応じてリアルタイムな映像データの共有を行えるようにすることもできる。
【0019】
《本実施形態の作用》
各建築現場では、ポータブルクライアント24X、24Y、…に付帯するビデオカメラ24Xa、24Ya、…によって取得された映像データがクライアント24X、24Y、…内で処理され、無線LAN等の通信回線を介してインターネットNWに送出されて、システムサーバ10内の映像伝送サーバ10X、10Y、…へ転送されこれに受信される。各映像伝送サーバ10X、10Y、…は、その映像データをインターネットNWに送出し、現場事務所、施工会社、設計会社のクライアント12a、12b…、20X、20Y…、22X、22Y…がこれを受信して大画面ガラススクリーン12aD、12bD等の表示装置に表示する。これにより、建築現場のリアルタイム映像を、地理的に離れたところにいる関係者が居ながらに共有して適切な施工監理に役立てることができる。
【0020】
また、各クライアントソフトウェアに警報入力部及び警報出力部を含むネットワーク警報システムが付帯されている場合には、ポータブルクライアント24X、24Y、…を含むいずれかのクライアントから発報された警報信号が他のクライアントへインターネットNWを経由して転送されることにより、各クライアントに付設されている警報表示灯22Xa、22Xb、…を動作させる、一斉警報を送ることができる。
【0021】
《第二の実施形態》
《システム全体の構成とサーバシステム》
本発明の第二の実施形態に係る建築現場管理システムの全体構成ブロック図を図2に、建築現場に設けられる現場事務所システム及びこれと接続される現場ポータブルシステムの構成を示すブロック図を図3に示す。
【0022】
図2に図示するように、本第二実施形態の建築現場管理システムは、本発明を一の建設会社に適用した場合を例示しており、本システムの中核をなす本社サーバシステム100と、支店クライアントシステム200と、現場事務所システム300と、施主企業、設計事務所等に設けられた社外組織システム400とがインターネットNWで相互に接続されて構成されている。この場合、インターネットNWに代えて、公衆回線、あるいは専用線を介して相互接続するようにすることができる。
【0023】
本社サーバシステム100はさらに、本社内イントラネットINTを介して例えば本社内の会議室100Aや工程管理部門に設置されたクライアントシステム、あるいは人員管理、資材管理等に用いられる他の業務管理サーバ170などの本社内個別システムと接続されている。
【0024】
本社サーバシステム100は、主として映像蓄積伝送サーバ110とテレビ会議システムサーバ120とを備えてなり、本建築現場管理システムにおける情報・データ共有機能と、本社、支店等のネットワークによって相互接続された各拠点間における情報通信機能とを提供する。
【0025】
映像蓄積伝送サーバ110は、建築現場に設置されたビデオカメラ(例えば後述する現場ポータブルシステム350に設けられるビデオカメラ等)から伝送されてくる映像データを受信して図示しないハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置に蓄積する。記憶される映像データは、あらかじめエンコーダ/デコーダ112によって符号化圧縮され(例えばMPEG-4フォーマットなど)、記憶装置の容量を有効に利用することができるようにしている。また、サーバ110は、現地等のビデオカメラ等から伝送されてくる映像データを、本社会議室100Aのクライアントシステム、および支店クライアントシステム200等の他の拠点クライアントシステムへ向けてリアルタイムで配信することができる。この場合、配信される映像データは符号化圧縮された状態で各クライアントシステムへ配信されるから、映像データ伝送に要するネットワークのトラフィックを軽減させることができる。各クライアントシステムへ伝送された符号化圧縮映像データは、クライアントシステムに実装されている対応デコーダによって復号化されて表示されるから、本社、支店、現場事務所等の拠点間で同時に特定の現場映像を共有することができる。
【0026】
次に、本社サーバシステム100に設けられるテレビ会議システムサーバ120について説明する。このテレビ会議システムサーバ120は、本社内会議室100Aのクライアントシステム、支店クライアントシステム200、現場事務所システム300、社外組織システム400等の各拠点に設けられたテレビ会議クライアントにセキュアサーバ122を通じてインターネットNW等のネットワークを経由して接続されている。セキュアサーバ122は、テレビ会議システムサーバ120が仲介する各クライアントからの映像・音声データを暗号化して配信することによって、会議内容がネットワークを介して漏洩することを防止している。
【0027】
このテレビ会議システムサーバ120は、さらに、ドキュメントファイル共有およびアプリケーション共有機能を提供する。すなわち、テレビ会議システムサーバ120は文書データベース124および/またはCADデータベース126と連携されていて、文書データベース124に格納されているワープロ文書ファイル、表計算ファイル、プレゼンテーションファイル、あるいはCADデータベース126に格納されているCADデータファイルを各拠点のクライアントシステム間で共有することができる。また同時に前記アプリケーション共有機能によって、例えばある拠点のクライアントシステムに実装されているが他の拠点には実装されていないアプリケーションソフトウェア(一例として、ある拠点のコンピュータにはプレゼンテーションソフトウェアとがインストールされているが他の拠点のコンピュータにはない、といったケース)について、それが実装されていないクライアントシステムにおいてもあたかもそれ自体に実装されているかのように操作することができる。
【0028】
本実施形態にあっては、上記した文書データベース124に格納する文書ファイルを管理するために、紙ファイリングエミュレータ130をサーバシステムに実装している。このエミュレータ130は、紙書類にパンチ穴を開けて所定のバインダに綴じ込んで保管するという実世界における書類管理手法をそのまま文書ファイルの電子的管理に直感的なグラフィカルユーザインターフェイスとして取り入れたアプリケーションソフトウェアである。通常ワープロ文書などの文書ファイルをコンピュータ上で操作するには、コンピュータのOSに実装されたファイル管理ツールを用いるが、ここにいうエミュレータ130は、コンピュータディスプレイ上にメタファとしての紙バインダの画像を表示するとともに、特定の文書ファイルを表示させた状態でこれを紙バインダイメージ上にドラッグアンドドロップ操作することで、あたかもその文書が紙の状態で紙バインダに綴じ込まれたかのようなユーザインターフェイスを提供する。このようにして保存された文書ファイルは、個別の紙バインダの目次ページから呼び出して、あたかもバインダに綴じ込まれた書類を指でめくるように次々と閲覧することができるものである。このようなユーザフレンドリーなインターフェイスを採用することにより、例えばテレビ会議システムの参加者は、このエミュレータ130を介してファイル共有された文書ファイルをとまどうことなく閲覧等することができる効果がある。
【0029】
《クライアントシステム》
全体システム構成に関して説明したように、本実施形態の建築現場管理システムにあっては、本社サーバシステム100に同じ本社内にある会議室100A等に設置されたクライアントシステムが社内イントラネットINTにより接続されており、そしてさらにインターネットNWを介して、本社から遠隔の支店クライアントシステム200、現場事務所クライアントシステム300、および社外組織クライアントシステム400が接続されている。
【0030】
本実施形態において、本社内には例えば建築現場及び遠隔の各拠点を結んでテレビ工程会議などを実施することを想定し、本社会議室にクライアントシステムが設備されているものとし、これはサーバシステム100と社内イントラネットINTで接続されている。本社会議室100Aのクライアントシステムは、クライアントコンピュータ140を備えており、このクライアントコンピュータ140に、入出力機器としてのカメラ142、マイク144、プロジェクタ146、座標入力機能つきガラススクリーン150が接続されている。
【0031】
クライアントコンピュータ140としては、例えば所要の能力を有するプロセッサ、メモリ、ネットワーク機能を搭載したPCなど、適宜のコンピュータを用いることができ、インターネットNWを介して接続されている本社サーバシステム100の映像蓄積伝送サーバ110、及びテレビ会議システムサーバ120との間のデータ授受を行えるようにするためのデータデコーダ等の対応クライアントソフトウェアが実装されている。また、テレビ会議システムを通じて共有するファイルを操作するための、あるいはこのコンピュータを単体で使用する際に用いるアプリケーションソフトウェアが必要に応じてインストールされている。
【0032】
カメラ142はテレビ会議において参加者を撮影するため等に接続されており、種々のWebカメラ等を用いることができる。また手元資料などを撮像するためのいわゆる書画カメラ等の画像入力装置を接続することもできる。マイク144はテレビ会議参加者の発言を集音するために設けられるものである。カメラ142で撮影される映像データとマイク144によって収集される音声データとは、コンピュータ140のクライアントソフトウェアによって符号化圧縮されインターネットNWを介してテレビ会議システムサーバ120に伝送される。そしてそこから各拠点のクライアントシステムに配信され、各拠点において復号化され、出力される。
【0033】
プロジェクタ146は、コンピュータ140のディスプレイに表示されている画像を多人数で共有するために拡大投影すべく設けられている、コンピュータ140のビデオ出力に接続されたビデオプロジェクタである。このプロジェクタ146からの投影映像は通常スクリーンに映せば足りるが、本実施形態においては、当該スクリーンに表示された映像に対して直感的な操作を行うことを可能とするため、次に説明する座標入力機能つきガラススクリーン150を採用した。
【0034】
この座標入力機能つきガラススクリーン150は、乳白加工を施した大型ガラスパネルの背面から前記プロジェクタ146の映像を投影するものであり、ほぼ3m×2mから最大3m×8m程度までの大画面を実現することができる。またこのスクリーン150には投影された画像の上に指や入力ペンを用いて描画等の操作を行うために、画面上の座標入力装置(図示せず)が設けられている。そして、この座標入力装置はペン入力インターフェイス152を介してコンピュータ140に接続されていて、指や入力ペンの位置座標がこれを介してコンピュータ140に入力されるとともに、コンピュータ140からプロジェクタ146に供給される表示データに前記ペン入力インターフェイス装置152により反映され、あたかも指や入力ペンによって直接スクリーンの画像上に描画したかのように操作を行うことができる。この画像はテレビ会議システムを通じて各拠点において同時に見ることができるから、例えば工程表のファイルを表示させて、その上に必要な事項を記入したりマークしたりすることができるようになっている。
【0035】
以上説明した本実施形態における本社会議室設備としてのクライアントシステムが基本的な構成であり、本社内に同等の設備を設けた複数の地域別工程管理室を設置してリアルタイムで建築現場の進行管理を行うようにすることが適宜実現できる。また、国内外の支店クライアントシステム200、建築設計事務所、建物の施主といった社外の組織におけるクライアントシステム400として同等の設備を設けることができる。
【0036】
次に、建築現場に設けられるシステムの構成について説明する。図2は本実施形態の建築現場管理システムにおける現場事務所システム300及び現場ポータブルシステム350を示すブロック図である。現場事務所システム300としてのクライアントシステムの構成は、先に本社会議室設備として説明したのと同等であるが、建築現場の状況を機動的に捉える目的で設けられた現場ポータブルシステム350が付帯していることが異なる。
【0037】
現場ポータブルシステム350は、例えば建築現場を巡回する監視作業員が携帯することを想定しており、画像及び音声を入力するためのビデオカメラ362及びマイク364と、それらが接続されたポータブルエンコーダ360を備える。ビデオカメラ362からの映像データと、マイク364からの音声データは、ポータブルエンコーダ360に入力され、本社サーバシステム100の映像蓄積伝送サーバ110での符号化圧縮形式に適合する形式で、符号化圧縮される。そしてその圧縮データがポータブルエンコーダ360の出力から無線LANアダプタ352に入力され、必要に応じて中継増幅されつつ現場事務所システム300の無線LANアダプタ352に転送される。その転送された圧縮データは、現場事務所システム300のコンピュータ140からインターネットNWを経由して本社サーバシステム100の映像蓄積伝送サーバ110へさらに転送される。映像蓄積伝送サーバ110は、各拠点のクライアントシステムに実装された専用の映像再生ソフトウェアとイントラネットINTあるいはインターネットNWを通じて接続されている。現場ポータブルシステム350によって撮像された映像は、映像蓄積伝送サーバ110を介して、各拠点の前記ガラススクリーン150等の表示装置によってリアルタイムで表示して共有することができる。また映像蓄積伝送サーバ110では現場ポータブルシステム350からの映像データをHDD等の適当な記憶装置に蓄積しているので、各拠点のクライアントシステムからそれらの蓄積された映像データを呼び出して表示させるとともに各拠点間で共有することができる。
【0038】
なお、上記現場ポータブルシステム350には、ビデオカメラ362に代えて、あるいはこれに加えてデジタルスチルカメラ等の他のイメージングデバイスを設けるようにしてもよい。また、現場における温度、湿度等の環境データを測定するためのセンサとその測定データを記録する端末機器をさらに備え、記録された環境データを、無線LAN、インターネットNW等を介して本社サーバシステム100、各拠点クライアントシステム200〜400に伝送する構成を設けてもよい。また、第一実施形態に関して説明した警報入力部及び警報出力部を含むネットワーク警報システムをさらに設けることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一実施形態に係る建築現場管理システムの全体構成ブロック図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る建築現場管理システムの全体構成ブロック図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る建築現場管理システムにおいて、建築現場に設けられる現場事務所システム及びこれと接続される現場ポータブルシステムの構成を例示するブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
10 システムサーバ
10X、10Y、10Z 映像伝送サーバ(映像伝送部)
12a、12b、12c 監理者クライアント
12a1、12b1、20Xa、22Xa 警報表示灯(警報出力部)
20Ya、22Ya、20Za、22Za 警報表示灯(警報出力部)
20X、20Y、20Z 施工会社本社クライアント
22X、22Y、22Z 施工会社現場事務所クライアント
24X、24Y、24Z ポータブルクライアント
24Xa、24Ya、24Za ビデオカメラ(映像取得手段)
100 本社サーバシステム
110 映像蓄積伝送サーバ(映像蓄積伝送部)
120 テレビ会議システムサーバ(ネットワーク会議機能提供部)
130 紙ファイリングエミュレータ
140 クライアントコンピュータ
150 座標入力機能つきガラススクリーン
152 ペン入力インターフェイス装置
200 支店クライアントシステム
300 現場事務所システム
360 ポータブルエンコーダ
362 ビデオカメラ(映像取得手段)
364 マイク
400 社外組織システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一個所の建築現場と、少なくとも一つの地点をネットワークで接続してその少なくとも二個所の間でのリアルタイムの情報共有を可能としている建築現場管理システムであって、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点のそれぞれに接続可能とされているシステムサーバと、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点に設置されたクライアントシステムとを備え、
前記システムサーバは、映像データを伝送するための映像伝送部を少なくとも備え、
前記クライアントシステムは、前記システムサーバの映像伝送部と通信回線を介して接続可能とされている映像再生部を備え、
前記クライアントシステムのうち、建築現場に設置されているクライアントシステムが、前記ネットワークに接続可能であって該ネットワークを介して前記システムサーバの映像伝送部に映像データを送出することが可能に構成されている映像取得手段を備えており、該映像取得手段によって生成された建築現場の映像データが前記システムサーバの映像伝送部から前記ネットワークを介して各クライアントシステムに接続されている大画面表示装置に表示されるように構成されている、
ことを特徴とする建築現場管理システム。
【請求項2】
前記建築現場に設置されているクライアントシステム又は前記建築現場の映像取得手段に付帯して警報入力部が設けられており、前記他のクライアントシステムに警報出力部が設けられており、該警報入力部から警報入力がなされると、他のクライアントシステムの前記警報出力部から人の感覚器を刺激する警報が出力されることを特徴とする請求項1に記載の建築現場管理システム。
【請求項3】
少なくとも一個所の建築現場と、少なくとも一つの地点をネットワークで接続してその少なくとも二個所の間でのリアルタイムの情報共有を可能としている建築現場管理システムであって、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点のそれぞれに接続可能とされているシステムサーバと、前記少なくとも一個所の建築現場と前記少なくとも一つの地点に設置されたクライアントシステムとを備え、
前記システムサーバは、映像データを蓄積伝送するための映像蓄積伝送部と、ネットワーク会議機能提供部とを備え、
前記クライアントシステムは、前記システムサーバの映像蓄積伝送部と通信回線を介して接続可能とされている映像再生部と、前記システムサーバのネットワーク会議機能提供部と通信回線を介して接続可能とされて該ネットワーク会議機能提供部を介して他の地点と映像及び音声データを授受可能とされるネットワーク会議機能端末と、を備え、
さらに、上記クライアントシステムと通信回線を介してさらにリンクされている映像取得手段を備えるとともに、上記クライアントシステムは前記映像再生部及びネットワーク会議機能端末からの画像を表示するためのガラススクリーン表示装置を備え、該ガラススクリーン表示装置がさらにスクリーン上の座標入力装置を備えており、前記クライアントシステムが実装する座標入力処理装置によって当該座標入力装置を通じた座標入力操作をスクリーン画像上に可視化して表示することができる
ことを特徴とする建築現場管理システム。
【請求項4】
前記システムサーバのネットワーク会議機能提供部に情報記憶部が接続可能に設けられており、当該情報記憶部には紙ファイリングエミュレータが連携されて画面上で紙ファイルを操作するのと同等のユーザインターフェイスが提供されていることを特徴とする請求項3に記載の建築現場管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−124328(P2009−124328A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294603(P2007−294603)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】