説明

建築用パネルの端部を圧縮する装置および方法、および圧縮された端部を有する建築用パネル

圧縮されるとともに湾曲した端部を有する建築用パネルを製造する装置および方法は、押圧手段と、加熱装置と、注油装置とを備えている。建築用パネルは、当該装置および方法により製造された湾曲した端部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、建築用パネル、とりわけ、木材繊維をベースとしたコアと、装飾層とを有するフロアボードの端部を圧縮し、これによって湾曲した端部を設ける装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
限定はされないが、とりわけ本発明は、湾曲した形状を有するとともに圧縮された端部を有する積層フロアパネルに関する。しかしながら、本発明は、一般的な建築用パネルにも適用可能である。さらに、本発明は、木材繊維をベースとしたコア、例えば、HDF、MDF、パーティクルボードおよび合板と、装飾層と、水平および/または垂直方向における連結のための機械的係止システムとを有し、前述の方法および装置により製造されたタイプのフロアパネルに関する。
【0003】
このタイプの装置、方法およびフロアパネルは、国際公開第2006/088417号パンフレット(特許文献1)に示されている。この特許文献1は、積層フロアパネルの端部を圧縮し、これによって、傾斜した端部を有する堅固な木材フロアパネルのように見える湾曲した形状の端部を有する積層フロアパネルを提供することができる装置および方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/088417号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、装飾層を有するよう成形されるとともに、湾曲した端部を有する建築用パネル、とりわけフロアボードを製造するために改良された装置および方法を提供することを目的とする。本発明の装置および方法によれば、上記のフロアボードを高速で製造することもできる。また本発明によると、周知の技術の場合と比べて、より深く湾曲した端部を製造することが可能となる。
【0006】
本発明はさらに、装飾層と湾曲した端部とを備え、前記装置および方法により製造される建築用パネルを提供することを目的とする。
【0007】
このタイプの装置、方法およびフロアパネルは、前述の特許文献1において知られている。特許文献1は、積層フロアパネルの端部を圧縮し、これによって、湾曲した端部形状を有する積層フロアパネルを提供する装置および方法を開示している。周知の装置は、パネルの端部を加熱し圧縮するための加熱装置および押圧手段を備えている。
【0008】
周知の方法は、以下の工程を備えている。
・装飾層をコア上に載置し、建築用エレメントを形成する工程。
・建築用エレメントを建築用パネルに切断する工程。
・建築用パネルの端部の表面に熱および圧力を印加し、これによって、装飾層の下にあるコアを圧縮するとともに、表面層をコアの裏面に向かって恒久的に曲げる工程。
【0009】
この周知の装置および方法の欠点は、圧力が高速に印加された場合、または圧縮の程度が高い場合、装飾層にクラックが生じる点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における第1の目的は、改良された装置を提供することである。本発明による装置は、加熱装置と、押圧手段と、押圧手段に注油する注油装置とを備えている。これらにより、建設用パネルを高速で製造することが可能となる。
【0011】
好ましくは、当該手段は、回動可能に設けられるとともに、建築用パネルの端部に圧力を印加するときに回転するよう構成されている。
【0012】
好ましくは、注油装置は、押圧手段に潤滑用の添加剤を加えるよう設けられている。潤滑用の添加剤は、本発明の装飾面から拭うことが容易なグリースまたはオイルのうちどのようなタイプのものであってもよい。好ましい例は、合成テフロン(登録商標)オイルである。しかし、装飾面から取り除くことができ、かつ同等の流動性および潤滑特性を有する無機および有機オイルを使用することもできる。
【0013】
好ましくは、加熱装置は、IR(赤外線)加熱エレメントを有している。好ましい形態において、当該手段も加熱される。
【0014】
好ましくは、当該手段の形状は、楕円形の溝を有している。この場合、大きい方の半径は、装飾面に平行な平面上にあり、従って、小さい方の半径は、装飾面に垂直な平面上にある。このことにより、より深く/大きく見える傾斜面が生じる。
【0015】
好ましくは、当該手段の表面は研摩されている。これによって、装飾面と押圧手段の間における摩擦が小さくなり、このことにより、装飾面において生じるクラックが少なくなる。
【0016】
本発明における第2の目的は、圧縮された端部を有する建築用パネルを製造する改良された方法を提供することである。当該方法は、以下の工程を備えている。
・建築用パネルの端部を加熱する工程。
・建築用パネルの端部または押圧手段に注油する工程。
・押圧手段によって建築用パネルの端部を圧縮する工程。
【0017】
好ましくは、当該方法はさらに、前記手段を加熱する工程を備えている。
【0018】
好ましくは、当該方法は、建築用パネルを、コンベアを介して前記手段に対して移動させる工程を備えている。コンベアの速度は、好ましくは50m/minより大きく、さらに好ましくは100m/min以上である。
【0019】
本発明の第3の目的は、前述の装置および方法により、湾曲した端部を有する改良された建築用パネルを提供することである。建築用パネルは、好ましくは、楕円形状の外側端部を有している。好ましくは、湾曲した形状の端部におけるコアは、0.5mmより大きく圧縮されており、さらに好ましくは、0.7mmより大きく圧縮されている。圧縮の好ましい範囲は、0.5mmから1mmの間である。本発明による方法および装置において、装飾層にクラックを生じさせることなく、そのような深い圧縮を有する建築用パネルを製造することが可能である。
【0020】
湾曲した端部を有する建築用パネルが特許文献1に開示されている。湾曲した端部における2つの主要なタイプが特許文献1に示されており、このうち古いタイプのものは、建築用パネルの端部においてコアの一部を切断し、または、建築用パネル全体を押圧し、これによって湾曲した形状を形成することを含んでいる。そして新しいタイプのものは、端部の圧縮を含んでいる。2つのタイプは同じように見えるが、しかしながら、新しいタイプのものは、その端部に高い密度で圧縮されたコアを有している。特許文献1はまた、2つのタイプを区別するための測定方法を開示している。本発明による建築用ボードは、特許文献1に記載されている測定方法によって、古いタイプのものから区別することができる。また本発明による建築用ボードは、湾曲した端部における装飾層のクラックが少ない、またはクラックがないので、新しいタイプのものから区別することができる。相違は、半径が大きくなるほど、また圧縮の程度が大きくなるほど増大する。
【0021】
“エレメント、装置、構成要素、手段、工程、など”のすべての参照は、明示的に述べられていない限り、少なくとも前記エレメント、装置、構成要素、手段、工程、などの一例を率直に表すものとして解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付の図は、図によって本発明の形態を示すものである。
【図1】図1(a)(b)(c)は、周知技術による装置および方法を示す図。
【図2】図2は、本発明による建築用パネルの形態を示す図。
【図3】図3は、本発明による建築用パネルの形態を示す図。
【図4】図4は、本発明による装置および方法の形態を示す図。
【図5】図5は、本発明による、建築用パネルの端部を圧縮して形成する押圧手段の形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2乃至図5に示されているように、本発明は、圧縮されるとともに湾曲した端部を有する建築用パネルを製造する装置および方法に関する。また本発明は、当該装置および方法により製造される建築用パネルに関する。
【0024】
先行技術における、圧縮されるとともに湾曲した端部を有する建築用パネルを製造する装置および方法が、図1(a)−(c)を参照して示されている。図2および図3において、本発明による装置および方法により製造された、本発明による建築用パネルの形態が示されている。この建築用パネルは、周知の機械的係止システムを有している。
【0025】
図1(a)−(c)は、圧縮された端部を形成する先行技術による方法を三段階で示している。図1(a)において、建築用エレメントが示されている。次のステップである図1(b)において、建築用エレメントは2つの建築用エレメント(2、2’)に切断されるとともに、端部の溝が設けられる。建築用エレメントは、木材繊維をベースとした材料、好ましくはHDF、MDF、またはパーティクル板からなるコア(3)と、ベニヤ、ペーパーシートと樹脂とを有する積層材、または装飾用印刷物からなる装飾面(4)と、平衡層(5)とを備えている。後の段階において製造される機械的係止システムが点線で示されている。第二段階において、加熱装置(8)によって端部に熱が印加される。図1(c)に示されているように、第三段階において、押圧手段(9)が建築用パネルの端部でコアを圧縮し、これによって湾曲した形状(10、10’)が形成される。
【0026】
図2において、圧縮されるとともに湾曲した端部(10、10’)を有する2つのフロアパネル(1、1’)の間に接合部を備えた本発明の形態が示されている。係止システムの一例が、垂直および水平方向における係止部として示されている。水平方向の係止部は、第1のフロアパネルの端部(24a、24b)から水平に延びるとともに、上方へ突出した係止エレメント(26)を有する係止ストリップ(23)を備えている。この係止ストリップ(23)は、第2のフロアパネルの端部(24a、25a)において、および端部(24a、25a)の下において、係止溝(27)と協働する。垂直方向の係止部は、第1のフロアパネルの端部(24b、25b)に設けられたタング(21)と、第2のフロアパネル(1’)の端部(24a、25a)に設けられたタング溝(21)とを備えている。どのようなタイプの係止部を使用してもよく、例えば垂直方向のみの係止部でもよく、または水平方向のみの係止部でもよい。また、タングロック(WO02/055810参照)を用いてもよく、さらに、接着剤を追加してもよい。
【0027】
図3は、機械的係止部システムと、長側部における湾曲した端部(10、10’)と、対向する短側部(25a、25b)のうち一方にのみ設けられた装飾溝(30)とを有するフロアパネルの形態を示している。
【0028】
本発明による装置および方法の形態が図4に示されている。装置は、建築用パネル(2)を加熱装置(8)に移動させるコンベア(40)を備えている。加熱装置、例えば赤外線加熱エレメントは、建築用エレメントの端部を加熱するために設けられている。第二段階においてコンベアは、建築用パネルの端部を圧縮するため、建築用パネルを押圧手段へと移動させる。好ましくは、対向する端部はどちらも加熱され、その後、回転する押圧手段により同時に圧縮される。装置は、潤滑用添加剤を印加するよう設けられた注油装置(41)をさらに備えており、好ましくは、この注油装置(41)は、押圧手段または建築用パネルの端部に潤滑用添加剤を印加する。
【0029】
好ましい潤滑用添加剤は、合成テフロンオイルである。しかしながら、同等の流動性および潤滑特性を有するとともに、装飾面から取り除くことができる無機および有機オイルを使用することもできる。摩擦をさらに低減するため、押圧手段(9)の表面は、研摩され、および/または焼き戻される。一例として、約30−40HRCの硬度を有する焼き戻し鋼からなる材料を押圧手段に使用することができる。この押圧手段は、窒化、浸炭により約60−70HRCの硬度まで焼き戻されてもよく、さらに好都合には、0.2Raの粗度にまで研摩される。その他の方法が、約3000−4000のビッカース硬度を得るのための焼き戻しを行うために使用される。一般に、より硬く、そしてより滑らかな押圧手段が望ましい。しかしながら、そのような押圧手段には高い費用がかかる。装飾層のいくつかの材料において、および、低い範囲における圧縮において、注油を取り除くことが可能であり、また、研摩されるとともに焼き戻された押圧手段によって所望の結果を達成することが可能である。
【0030】
好ましくは、押圧手段(9)は、円形状(50)または楕円形状(51、52)の溝を有しており、この溝により、建築用パネルの湾曲した端部において、対応する円形状または楕円形状が生成される。装飾面に平行な方向(a)における楕円の半径が、装飾面に垂直な方向(b)における楕円の半径よりも大きい場合、楕円形状によって、湾曲した端部がより深く見えるという視覚効果が生まれる。建築用パネルの中心に近接する押圧手段の端部は、好ましくは、クリアランス角度(53)を有している。
【0031】
図2に示す、本発明による前述の装置および方法により製造された建築用パネルの形態は、好ましくは、木材繊維をベースとした材料からなるコア、例えば好ましくはHDF、MDFと、ペーパーシートと樹脂とを含む積層材、または装飾用印刷物からなる装飾層とを備え、これらは圧縮に適するよう組み合わされる。また、その他のタイプの木材をベースとしたコア、例えばパーティクル板または合板、およびその他の装飾面、例えばベニヤを用いてもよい。好ましくは、建築用パネルは平衡層(5)を有している。
【0032】
好ましくは、湾曲した形状の端部におけるコアは、0.5mmより大きく圧縮されており、さらに好ましくは、0.7mmより大きく圧縮されている。圧縮の好ましい範囲は0.5mmから1mmの間である。また、圧縮の程度をより小さくすることも、またはより大きくすることも当然に可能である。しかし、湾曲した端部または傾斜がこの範囲内にあることが、最も自然に見える。本発明による方法および装置によれば、装飾層にクラックを生じさせることなく、そのような深い圧縮を有する建築用パネルを得ることができる。圧縮された端部は、直線部を有していてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮されるとともに湾曲した端部(10)を有する建築用パネル(1、2)を製造する装置において、
建築用パネルの端部を加熱するよう設けられた加熱装置と、
建築用パネルのコア(3)をその端部において圧縮するよう設けられた押圧手段(9)と、を備え、
圧縮された領域に潤滑用添加剤を供給する注油装置(41)をさらに備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
潤滑用添加剤は、押圧手段(9)に供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
潤滑用添加剤は、建築用パネルの端部に供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
押圧手段(9)は、回動可能に設けられるとともに、建築用パネルの端部に圧力を印加するときに回転するよう構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
潤滑用添加剤はテフロンオイルからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
加熱装置は赤外線加熱エレメントを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記手段を加熱する装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記手段(9)は、楕円形状または円形状(50、51、52)の溝を有し、このうち大きい方の半径は、装飾面に平行な平面上にあり、小さい方の半径は、装飾面に垂直な平面上にあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
押圧手段の表面は研磨されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
押圧手段の表面は焼き戻されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
コア(3)はHDFまたはMDFを有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
装飾面(4)は、木材ベニヤ、または樹脂を有する積層材からなることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
湾曲した端部を有する建築用パネル(1、2)を製造する方法において、
建築用パネル(1、2)の端部を加熱する工程と、
建築用パネルの端部または押圧手段(9)に注油する工程と、
押圧手段(9)によって建築用パネルの端部を圧縮する工程と、を備えたことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記手段(9)を加熱する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
建築用パネル(1、2)を、コンベア(40)を介して前記手段(9)に対して、好ましくは50m/min以上の速度で移動させる工程を備えたことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
木材をベースとした材料からなるコア(3)と、装飾面(4)と、湾曲した端部(10)とを備え、請求項1乃至12のいずれかに記載の装置により製造され、および/または請求項13乃至15のいずれかに記載の方法により製造された建築用パネルにおいて、
端部は、0.5mm以上の深さ(CD)まで圧縮されたことを特徴とする建築用パネル。
【請求項17】
端部は、0.7mm以上の深さ(CD)まで圧縮されたことを特徴とする請求項16に記載の建築用パネル。
【請求項18】
端部は、0.5mmから1mmの範囲にある深さ(CD)まで圧縮されたことを特徴とする請求項16に記載の建築用パネル。
【請求項19】
湾曲した端部(10)は、楕円形状または円形状を有することを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載の建築用パネル。
【請求項20】
装飾面(4)は、木材ベニヤ、または樹脂を有する積層材からなることを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の建築用パネル。
【請求項21】
コア(3)は、HDFまたはMDFを有することを特徴とする請求項16乃至20のいずれかに記載の建築用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−503552(P2010−503552A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528204(P2009−528204)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000805
【国際公開番号】WO2008/033081
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(504033441)ベーリンゲ、イノベイション、アクチボラグ (17)
【氏名又は名称原語表記】VAELINGE INNOVATION AB
【Fターム(参考)】