説明

建築用ブラケット

【課題】 従来のブラケットと比較してその製造工程が少なく、また、色彩や耐食加工を容易に行えることができるブラケットを提供する。
【解決手段】 柱に固定する基面11と、その基面11と垂直に設けられ、梁に固定する支持面12と、前記基面11および支持面12と連続しており、基面11および支持面12に対して垂直に設けられるリブ面13とからなり、所定の形状を有する一枚の鋼板を折り曲げることによって形成される柱と梁とを接続する構造体用ブラケット10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造体の梁と柱とを連設するときに用いられるL字型の構造体用のブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−115565号公報
【0003】
従来、立体駐車場や屋外建築物などの構造体の梁と柱を連設するブラケット100は、図7に示すように、長方形状の鋼板を直角に折り曲げて形成されるL字型のブラケット本体101と、直角三角形状の鋼板を前記ブラケット本体に隅肉溶接することにより形成されるリブ102とからなる。このようなブラケットは構造体の外観から見える部位、見えない部位に取り付けられる。そして、両部位への設計要素の一つとして耐食性が要求されており、見える部位には美観性も要求される。このような要求を満たすためにはメッキ加工、塗装加工などの後加工を鋼板に施さなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のブラケットは二枚の鋼板からなるため、二枚の鋼板を溶接してブラケットを成型後、ペンキや合成樹脂材料等を塗布する後加工を施す必要があった。また、あらかじめ表面加工が行われている鋼板(たとえば、メッキ鋼板、カラー鋼板)を用いることが考えられるが、このような鋼板を溶接するには溶接する部位周辺の表面加工処理を素材が見えるまで剥ぐか特殊な溶接棒を使用しなければならなかった。また、溶接焼けが生じるステンレス鋼板などは使用することができなかった。さらにこのような構造体用ブラケットの製造には溶接にかかるコストの割合が大きいという問題があった。
特許文献1には、当接面と受面とからなるL字型のブラケットであり、このL字の角部の両端に、内角方向に屈曲されて傾斜する傾斜面が左右対称位置に対向して設けられていることを特徴としている一枚の鋼板から形成される支持ブラケットが開示されている。
しかし、この支持ブラケットも当接面と構造体の柱とを溶接によって固定している。また、立体駐車場や屋外建築物などの大型の構造体に必要である耐久性を充分に満たすものではなかった。
本発明は、従来のブラケットと比較してその製造工程が少なく、また、色彩や耐食加工を容易に行えることができるブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構造体用ブラケット(請求項1)は、柱と梁とを連設するL字型ブラケットであって、前記柱に固定する基面と、その基面と垂直に設けられ、前記梁に固定する支持面と、前記基面および支持面と連続しており、基面および支持面に対して垂直に設けられるリブ面とからなり、所定の形状を有する一枚の鋼板を折り曲げることによって形成されることを特徴としている。
このようなブラケットであって、前記鋼板がメッキ鋼板、ステンレス鋼板またはカラー鋼板であるものが好ましい(請求項2)。また、前記基面および/または支持面の少なくとも一部が折り曲げた鋼板同士が重なって構成されているものが好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0006】
本発明の建築用ブラケット(請求項1)は、所定の形状を有する一枚の鋼板を折り曲げることによって基面、支持面、リブ面を形成しているため、従来に比べて製造工程を少なくして製造でき、その製造コストを下げることができる。また、隅肉溶接を行わないため、使用する鋼板の厚さを薄くすることができる。つまり、一個当たりに使用する鋼板の量を小さくすることができ、製造コストを一層下げることができる。
また本発明のブラケットのリブは設計上荷重を受ける主たる部品であり据付時にはブラケット本体と一固体とならなければならない。荷重を受けるリブの固定は曲げ加工ができる範囲でリブの部分が据付時に固定できるよう成型を施し施工時にボルト/ナット等の固定手段で構造体と共締めすることにより一固体となりリブ本来の機能をはたす。
【0007】
また本発明のブラケットであって、前記鋼板がメッキ鋼板、ステンレス鋼板またはカラー鋼板である場合(請求項2)、これらの鋼板を直接折り曲げることによってブラケットを成形できるため、ブラケットを製造した後に後加工を施す必要がない。そのため、色彩を有するブラケットまた耐食性の高いブラケットを容易に製造することができる。
【0008】
さらに、前記基面および/または支持面の少なくとも一部が折り曲げた鋼板同士が重なって構成されている場合(請求項3)、基面および/または支持面での厚さを厚くすることができる。従来ブラケットと柱または梁をボルト/ナットで固着する場合、基面または支持面で負荷が大きい方の負荷に耐えうる板厚、または、据付時に使用するボルト/ナット等の締め付圧または締め付トルクに耐えうる板厚を基準にブラケットに使用される鋼板全体の板厚は設定されていた。しかし、基面または支持面で負荷が大きい方の厚さ、または、基面および/または支持面のボルト/ナットの取り付け部の厚さを、鋼板を重ねるようにして厚くすることにより、他の部位で不必要な厚さを設けることなくブラケットを成型することができ、材料の節減を一層図ることができる。これにより構造体によっては異なるが立体駐車場や屋外建築物などの大型の構造体に使用する鋼板の厚さを1.6〜6.0mm、好ましくは2.3〜4.5mmとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明のブラケットの実施形態を図面を用いて説明する。図1は本発明のブラケットの実施形態を示す斜視図、図2は図1のブラケットの展開面を示す展開図、図3は図1のブラケットを用いて柱と梁の連設を表す概略図、図4は本発明のブラケットの他の実施形態を示す斜視図、図5は図4のブラケットの展開面を示す展開図、図6a、図6bは本発明のブラケットのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【0010】
図1に示す構造体用ブラケット10は、柱に固定する基面11と、その基面と垂直に設けられ、梁に固定する支持面12と、その基面11および支持面12の側縁11a、12aと連続しており、基面11および支持面12に対して垂直に設けられるリブ面13とからなる。
基面11および支持面12には、柱と梁をボルト/ナットによって固定することができるように、取付孔14a、14bが形成されている。
リブ面13は、その形状が直角三角形であり、直角を形成するがそれぞれ基面11の側縁11aおよび支持面12の側縁12aと連続している。
【0011】
このような構造体用ブラケット10は、図2に示すブラケット10の展開面である鋼板15を折り曲げて成型することができる。この鋼板15としては、特に限定されるものではないが、メッキ鋼板、ステンレス鋼板、カラー鋼板の使用が好ましく、特に溶融亜鉛メッキ、電気亜鉛メッキを施した亜鉛メッキ鋼板が好ましい。
【0012】
鋼板15は、基面11を構成する第1長方形16と、その第1長方形16と1つの辺(長辺)18aで連続しており、支持面12を構成する第2長方形18と、その第2長方形の辺18aと連続している辺(短辺)18bと直角を挟む2辺のうち一方の辺20aで連続している2つの直角三角形21と、直角三角形の直角を挟む2辺のうち他方の辺20bと連続している2つの第3長方形22とからなる。また、第1長方形16と第3長方形22には同じ大きさの孔23a、23bが互いに直角となるように形成されており、第2長方形18にも、大きさが異なる孔24が形成されている。
【0013】
この鋼板15を次のように折り曲げてブラケット10を形成する。始めに、この鋼板15の両側にある2つの直角三角形21を第2長方形18に対して垂直に折り曲げる。次に、第3長方形22を直角三角形21に対して垂直に折り曲げる。ここで第3長方形22を先に折り曲げ、次に直角三角形21を折り曲げても良い。
最後に第3長方形22に被さるように第1長方形16を第2長方形18に対して垂直に折り曲げる。これにより第1長方形の孔23aと第2長方形の孔23bとが互いに重なり、図1の取付孔14aを形成し、ブラケット10が形成される。
このときブラケットの基面11は第1長方形16と第3長方形22によって構成され、支持面12は第2長方形によって構成される。さらに、リブ面13は2つの直角三角形21によって構成される。このとき、ブラケット10は鋼板15を折り曲げることによって形成されているため、基面11の第1長方形16と第3長方形22との間にはスプリングバックによる隙間ができることがある。しかし、このブラケット10をボルト/ナットによって柱に固定することにより、その隙間をボルト/ナットの締め付けによって解消することができ、リブ面13を固定し、基面11、支持面12と一固体を形成する。
【0014】
このブラケット10は図3に示すように使用される。始めに基面の取付孔14aが柱の所定取付部に位置するように、ブラケット10を柱25に当接する。その後、ボルト/ナットによってブラケットの基面11と柱24を固着する。次に、梁26が柱25に対して垂直となるように、そして、梁の一端が柱25と当接するように、梁26を支持面の上に配置させ、支持面12と梁26をボルト/ナットによって固着する。このような柱25または梁26としては、いわゆるH鋼、C鋼などの建築用鋼材が用いられる。柱25または梁26としては、いわゆるH鋼、C鋼、角パイプなどの建築用鋼材が用いられる。
【0015】
ここでブラケット10と柱25は、ボルト/ナットを締め付けることにより基面11と柱25との間に発生する摩擦力により固定され梁に加わる重量を支持する。それに対してブラケット10と梁26は、梁からかかる重量とボルト/ナットを締め付ける力とにより支持面12と梁との間に発生する摩擦力により固定されている。この基面11と柱25との間および支持面12と梁との間の締め付けトルクは、構造体の大きさとそれによるブラケットにかかる力によって決定されるが、立体駐車場や屋外建築物の構造体では通常20〜300N・m、好ましくは80〜240N・mである。そしてこのようなブラケットを締め付けることに使用されるボルトはその等級がF10Tのものが好ましく、また呼びがM10〜M20、好ましくはM12〜M20である。
【0016】
しかし、ブラケット10では、基面11が鋼板15の第1長方形16と第3長方形22とを重ね合わせて構成しているため、基面11の厚さは鋼板の厚さの二倍になり、従来の規格より薄い鋼板を用いてブラケットを形成しても、建築物に充分な強度を与えることができる。その結果従来のブラケット10よりその材料を節減することができる。
【0017】
また、このように鋼板15を折り曲げて形成されるブラケット10はその強度を保つために、その縁が切れている面(第1長方形と第3長方形)をしっかり固定しなければならない。しかし、縁が切れている面によって締め付けトルクが高い基面11が構成されているため、その懸念を解消することができ、強固な構造体(建築物)を構築することができる。
【0018】
上述のようにブラケット10の使用方法を説明したが、これは最も効果的な使用方法を示しただけであり、この使用方法に限定されるものではない。たとえば、鋼板15の第2長方形18を基面とし、第1長方形を支持面とするようにブラケットを形成し、使用してもよい。
また、ブラケット10を構成する各面の形状も特に限定されるものではなく、鋼板15の第1長方形、第2長方形、第3長方形のいずれかまたは全部を正方形にしてもよい。さらに、鋼板15の直角三角形の斜辺が内側または外側に湾曲していてもよい。また鋼板15の直角三角形が台形などの矩形であっても、リブ面として働く形状であれば特にその形状は限定されるものではない。
さらに、この実施の形態ではブラケットと柱または梁の固定手段としてボルト/ナットを開示しているが、これらの固定手段にスポット溶接でサポートしてもよい。またケーブルで固定したりサポートしても良い。特に梁と支持面との固定はボルト/ナットを用いることなくスポット溶接だけで固定してもよい。
【0019】
図4に示すブラケット30は、基面31と、支持面32と、リブ面33とからなり、図5に示す鋼板35の展開面を折り曲げることにより形成され、他の構成は図1のブラケット10と実質的に同じである。
鋼板35は、支持面32を構成する第2長方形36と、その第2長方形の長辺36aと直角を挟む一方の辺37aで連続している2つの直角三角形38と、直角三角形の直角を挟む他方の辺37bと連続している2つの第3長方形39とからなる。また、第3長方形および第2長方形にはそれぞれ孔40a、40bが形成されている。
この鋼板35の2つの直角三角形38を第2長方形36に対して垂直に折り曲げ、さらに、2つの第3長方形39を直角三角形に対して垂直に折り曲げることにより形成される。ここで第3長方形39は互いに重なりあい、基面31を構成する。
このようにブラケット30は形成されることにより、図1のブラケット10と同じ作用を奏する。
【0020】
図6aに示すブラケット40、図6bに示すブラケット45は、それぞれの基面が折りたたまれた鋼板を3枚重ねて構成されている。それ以外は図1に示すブラケット10と実質的に同じである。
図6aのブラケット40は、図2の想像線で示すように第1長方形の延長部43をさらに外側に180度折り曲げたものであり、これにより、基面41の取付孔の42周辺では3枚の鋼板が重なっている。また、図6aの想像線で示すように第1長方形の延長43を内側に180度折り曲げてもよい。
また、図6bのブラケット45は、図5の鋼板35の想像線に示す第1長方形46を第2長方形に対して垂直に折り曲げることによって形成される。これにより基面47は3枚の鋼板によって構成される。
このように基面が3枚の鋼板によって構成されることにより、一層大きい負荷に対して耐えうる。
【0021】
本発明のブラケットは、溶接を行うことなく所定の形状に切り取った鋼板(展開面)を折り曲げることによりそれぞれが垂直に設けられる基面、支持面、リブ面を形成するものであり、その形態は上記に示すものに限定されない。
上述の実施形態では基面の少なくとも一部が重なっているものを開示したが、図2の鋼板15の展開面において第1長方形を省いたものから形成した重なり部位を有さない基面を備えたブラケットも本発明のブラケットに含まれる。このとき、基面は2つの第3長方形によって形成されるが、これらの第3長方形は必ずしも接していなくてもよく、2つに分かれていてもよい。
また、図5の鋼板35の展開面において、直角三角形38および第3長方形39の片方を有さない展開面を折り曲げて形成したリブ面33を一つのみを有するブラケットも本発明のブラケットに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のブラケットの実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のブラケットの展開面を示す展開図である。
【図3】図1のブラケットを用いて柱と梁の連設を表す概略図である。
【図4】本発明のブラケットの他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4のブラケットの展開面を示す展開図である。
【図6】図6a、図6bは本発明のブラケットのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】従来のブラケットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
10 ブラケット
11 基面
12 支持面
13 リブ面
13a、13b 辺
14a、14b 取付孔
15 鋼板
16 第1長方形
18 第2長方形
18a 長辺
18b 短辺
20a 一方の辺
20b 他方の辺
21 直角三角形
22 第3長方形
23a、23b 孔
24 孔
25 柱
26 梁
30 ブラケット
31 基面
32 支持面
33 リブ面
35 鋼板
36 第2長方形
36a 長辺
37a 一方の辺
37b 他方の辺
38 直角三角形
39 第3長方形
40 ブラケット
41 基面
43 第1長方形の延長部
45 ブラケット
46 第1長方形
100 ブラケット
101 ブラケット本体
102 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とを連設するL字型ブラケットであって、
前記柱に固定する基面と、
その基面と垂直に設けられ、前記梁に固定する支持面と、
前記基面および支持面と連続しており、基面および支持面に対して垂直に設けられるリブ面とからなり、
所定の形状を有する一枚の鋼板を折り曲げることによって形成される構造体用ブラケット。
【請求項2】
前記鋼板がメッキ鋼板、ステンレス鋼板またはカラー鋼板である請求項1記載の構造体用ブラケット。
【請求項3】
前記基面および/または支持面の少なくとも一部が折り曲げた鋼板同士が重なって構成されている請求項1記載の構造体用ブラケット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−52582(P2006−52582A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234714(P2004−234714)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(597107593)株式会社タナック (8)
【Fターム(参考)】