説明

建築用装飾材の取付金具、建築用装飾材、装飾壁及び装飾壁施工方法

【課題】装飾材の下地材に対する取付面の形状を単純化することができ、その製造コストの低減を図ることができる装飾材の取付金具を提供することである。
【解決手段】取付板12と板ばね13とによって構成された取付金具11において、前記取付板12の上端部に取付板12の正面側へ屈曲された係合片14、下端部に背面側へ屈曲された差込片22、中間部にその取付板12の正面側へ屈曲された中間係合片19、取付穴18が設けられ、前記板ばね13が前記取付板12の正面に固定され、その弾性部13bが取付板12の正面側に突き出すように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の外壁又は内壁に装飾材を取り付けるための取付金具、その取付金具を一体化した建築用装飾材、前記装飾材を用いた装飾壁及び前記装飾壁の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築用の壁面に装飾性を付与するのみならず、耐熱・耐候性等をも付与すべく、レンガタイルやセラミック外壁材等の装飾材を壁面に取り付けることが従来から行われている。この場合、装飾材を取り付ける際の施工の簡便さ、耐熱・耐候性を増大させる等の観点から、上下方向に一定間隔をおいて水平方向の係合凸条を多段状に多数設けた窯業系材料の下地材が用いられる(特許文献1、2)。
【0003】
前記の下地材を用いた場合、装飾材の背面には前記の係合凸条に係合する係合凹部が設けられるとともに、ばね性のあるクリップが取り付けられる。装飾材は、その係合凹部と下地材の係合凸条とを係合させるとともに、その係合部にクリップのばね力を作用させることにより下地材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−67741号公報
【特許文献2】特許第3128706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、従来の装飾材の取付構造は、装飾材の背面に係合凹部を設ける必要があるが、その係合凹部は逆傾斜面(いわゆる、アンダーカット)となるため、装飾材の背面の構造が複雑となり、成形コストが高くつく要因となっていた。
【0006】
また、装飾材は、一定厚さのものを用いることが普通であるため、デザイン的な観点からは凹凸性に乏しく、あえて厚さの異なるものを用いるとすると、厚さの異なる装飾材を別に製作する必要があり、材料コストが高くつく要因となる問題もあった。
【0007】
そこで、この発明は、前記従来の装飾材における上記の問題を解消することを課題とする。この発明においては、装飾材を下地材に取り付けるために取付金具を用いるが、その取付金具を装飾材本体の裏面に固定した組立体を建築用装飾材又は単に装飾材と称する。
【0008】
この表現に従って、前記課題を具体的にいえば、装飾材本体の背面構造を単純な構造にできる取付金具、その取付金具と装飾材本体との組み合わせからなる建築用装飾材、その建築用装飾材を用いた装飾壁、特に、一種類の装飾材本体を2通りの方法で使用することにより、低コストで凹凸性に富んだデザインを創出できる装飾壁面、及び前記装飾壁の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決する建築用装飾材の取付金具に係る発明は、取付板とその取付板の正面に固定された板ばねとによって構成され、前記取付板の上端部にその取付板の正面側へ屈曲された係合片、前記取付板の下端部にその取付板の背面側へ屈曲された差込片、装飾材本体に対する取付部がそれぞれ設けられ、前記板ばねの弾性部が前記係合片より低い位置に設けられ、前記係合片が下地材の係合凸条の上面に係合され、前記板ばねの弾性部が前記下地材の係合凸条の下面に弾性的に押し当てられる構成としたものである。
【0010】
前記の構成に加え、前記係合片と板ばねの弾性片との中間部分に、前記取付板の一部を正面側に切り起こして中間係合片を設け、当該中間係合片を前記下地材の係合凸条の上面に係合させるようにした構成を採る場合がある。
【0011】
また、建築用装飾材に係る発明は、装飾材本体と前記の取付金具との組み合わせからなり、前記装飾材本体の下地材に対向した取付面に当該装飾材本体の長さ方向のスリットが全長にわたり形成され、前記取付金具の背面を当該装飾材の前記取付面に当て、その取付金具の差込片が前記スリットに差し込まれ、前記取付部において該取付金具が前記装飾材本体に固定された構成としたものである。
【0012】
なお、前記装飾材本体は、幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ前記のスリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定されたものを用いる場合がある。
【0013】
装飾壁に係る発明は、建物に固定された下地材に前記の建築用装飾材を取り付けて構成され、前記下地材の前面に水平方向の係合凸条が上下方向に一定の間隔をもって形成され、前記取付金具の係合片が前記係合凸条の上面に係合され、前記板ばねが前記係合凸条の下面に弾性的に押し当てられることにより前記係合片の係合部分に押圧力を付与し、その押圧力により前記取付金具を介して前記装飾材が前記下地材に係合固定された構成としたものである。
【0014】
装飾壁施工方法に係る発明は、前記のように、装飾材本体が幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ前記のスリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定されたものを用いる場合において、前記建築用装飾材を下地材に係合固定するに際し、予め幅の広い取付面に取付金具を固定したものと、幅の狭い取付面に取付金具を固定したものとを設け、両者を上下方向に交互に配置しつつ下地材に係合固定する方法を採る。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明に係る建築用装飾材の取付金具は、板ばねとともに係合片も備えているので、装飾材本体の取付面は取付金具の位置決めのためのスリットを設けるだけの単純な形状となる。このため、装飾材本体の製造コストのみならず、その装飾材本体と取付金具の組み合わせからなる装飾材等のコストも低減することができる。
【0016】
また、前記板ばねを取付板の正面に取り付け、その板ばねの弾性部を前記係合片と上下に対向するように設けたことにより、取付板の上下幅を装飾材本体の上下幅内に収まるサイズに形成することができる。このため、この取付板を用いて構成された装飾壁を前面から見た場合、上下間の装飾材のすき間から取付板の一部が見えることがないので、装飾壁の美観が向上する。
【0017】
また、前記係合片と板ばねの弾性片との中間部分に、前記取付板の一部を正面側に切り起こして中間係合片を形成した構成を採ることにより、係合個所が増え、下地材に対する係合が一層安定する。
【0018】
装飾材本体として、幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ取付金具の位置決め用スリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定された構成を採ることにより、一種類の装飾材本体によって、幅の広い面と狭い面が交互に現れ、かつ壁面から前方へ突き出す高さが交互に異なる変化に富んだデザインの装飾壁面を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】は、実施形態1の取付金具の正面図である。
【図2】は、図1のX1−X1線の断面図である。
【図3】は、図1の正面側の斜視図である。
【図4】は、実施形態2の取付金具の正面図である。
【図5】は、図4のX2−X2線の断面図である。
【図6】は、図4の正面側の斜視図である。
【図7】(a)から(f)は、実施形態3の装飾材本体の諸例を示す断面図である。
【図8】は、同上の装飾材の取付状態の一部を示す断面図である。
【図9】は、同上の他の装飾材の取付状態の一部を示す断面図である。
【図10】は、図9の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づき具体的に説明する。
[実施形態1]
【0021】
実施形態1に係る建築用装飾材の取付金具11は、図1から図3に示したように、鋼、ステンレス鋼等の金属製の取付板12と板ばね13との組み合わせからなる。
【0022】
前記の取付板12は矩形に形成され、その上端部に正面(図8参照。取付金具11の下地材26に対する面)側へ屈曲された一定幅の係合片14が設けられる。この係合片14は、下地材26(図8参照)の係合凸条29の上面32の傾斜角に一致するよう、一定の角度θ(55°程度)で下方へ傾斜している(図2参照)。
【0023】
前記の取付板12には、その正面の左右両側辺に沿った部分と、中間部分の2個所に上下方向の4本の平行な補強リブ15が幅方向に所定の間隔をおいて設けられる。これらの補強リブ15は、背面側から正面側に突き出すようにプレス加工され、これらの補強リブ15によって取付板12の正面及び背面は、中間部12a及びその中間部12aを挟んだ左右両側部12b、12cの三部分に区分されている。中間部12aが最も広く、両側部12b、12cはそれより狭い同じ幅に形成される。
【0024】
前記中間部12aの下端部には、下端が開放された下向きコの字形の切欠き部16が設けられる。この切欠き部16は、その左右に存在する前記リブ15に接近するように幅広く形成される。
【0025】
前記の板ばね13は、前記切欠き部16の幅より若干狭く形成され、前記中間部12aの上下方向のほぼ中間から下端に達する固定部13aと、その下端部において正面側へL形に屈曲された弾性部13bとからなる。弾性部13bは、図2に示したように、波形の凹凸が付与される。
【0026】
前記板ばね13の固定部13aを中間部12aの正面に当て、弾性部13bの凸部の位置を一定の高さに保持した状態で、板ばね13はバーリング加工によって中間部12aに固定される。そのバーリング加工部を符号17で示す。バーリング加工部17の穴は、同時に取付板12を装飾材本体24(図8参照)に固定するための取付穴18となっている。
【0027】
前記の板ばね13は、その固定部13aのほぼ下半分が切欠き部16の幅内に臨み、弾性部13bの先頭に作用する押し込み方向の外力p(図2参照)に対し、取付板12の厚さ分だけ背面側へ弾性変形する余裕を与えている。
【0028】
前記左右の両側部12b、12cにおいては、前記中間部12aの取付穴18と同じ高さにおいて、取付穴18がそれぞれ設けられ、各取付穴18と各側部12b、12cの下端のほぼ中間において、切り起こしによって中間係合片19が設けられる。中間係合片19は、取付板12の正面側へ屈曲され、前記係合片14の傾斜角θと同じ傾斜角をもって下方へ傾斜している。各中間係合片19の取付板12からの突き出し高さhは、前記係合片14の突き出し高さHの半分程度である。
【0029】
なお、3個所の取付穴18は、後述のように、装飾材本体24にこの取付金具11を取付ネジ28や釘によって固定する場合に用いられる(図8参照)。接着により固定される場合もあるが、その場合はこの取付穴18は不要である。取付穴18や接着によって固定される部分を「特許請求の範囲」においては「取付部」と総称している。
【0030】
中間係合片19を切り起こした後の四角穴21は、その中間係合片19の面積よりも大きく形成され、これによって取付金具11の軽量化を図っている。切り起こしの容易さを考慮して、中間係合片19の両端部は四角穴21の両内側辺より多少内側に寄った位置に形成される。
【0031】
前記両側部12b、12cの下端部には、取付板12の背面側へ直角に屈曲された差込片22が設けられる。この差込片22は、後述のように、装飾材本体24のスリット27(図8参照)に差し込まれ、装飾材本体24に対する取付金具11の位置決めを行う。
【0032】
前記係合片14の屈曲部下面と中間係合片19の屈曲部下面の間隔D1(図2参照)は、上下に隣接する後述の係合凸条29(図8参照)の上面先端間の間隔F1に等しく設定される。また、中間係合片19の屈曲部下面と板ばね13の弾性部13bの凸部の間隔D2は、1つの係合凸条29の上面32の先端部と下面31との間の間隔F2に等しく設定される。
【0033】
このような関係に設定することにより、この取付金具11は、図8に示したように、その係合片14が下地材26の係合凸条29の上面32に係合され、板ばね13の弾性部13bが前記係合凸条29の下面31に弾性的に押し当られる。その弾性部13bのばね力により係合片14と中間係合片19がそれぞれ係合凸条29に係合固定される。
【0034】
また、取付金具11の高さEは、図8に示したように、装飾材本体24の取付面30の高さAと同等又は小さく設定される(E≦A)。このような関係に設定されているので、取付金具11は装飾材本体24の背面に隠れ、その前面からの視野に入ることがない。
[実施形態2]
【0035】
図4から図6に示した実施形態2の取付金具11は、前記実施形態2の場合と同様に、取付板12と板ばね13とによって構成される。また、前記取付板12の上端部にその取付板12の正面側へ屈曲された係合片14、中間部に取付板12の正面側へ屈曲された中間係合片19、前記取付板12の下端部に背面側へ屈曲された差込片22、前記装飾材本体24への取付穴18がそれぞれ設けられる。
【0036】
前記板ばね13が前記取付板12の正面にバーリング加工によって固定された固定部13aと、その固定部13aの下端から正面側に屈曲された弾性部13bとから構成される。さらに、前記係合片14と中間係合片19が下地材26の上下2段の係合凸条29の上面32に係合され、前記板ばね13の弾性部13bが下段の係合凸条29の下面31に弾性的に押し当てられる点で、実施形態1の場合と基本的な構成において共通している。
【0037】
また、取付板12の正面及び背面が中間部12aとその両側の左右の両側部12b、12cの三部分に区分されている点も共通する。
【0038】
しかし、以下の構成において相違している。即ち、前記の区分は取付板12の幅方向に間隔をおいて設けられた2本の縦リブ15によって区分されており、4本の縦リブ15によって区分される実施形態1の場合と相違する。
【0039】
また、左右両側部12b、12cにおいて、その下端と側辺に開放された逆L形の切欠き部16が設けられ、また板ばね13がこれら両側部12b、12cの正面に配置固定される点、中間部12aに切り起こしによる中間係合片19が設けられる点において相違している。
【0040】
板ばね13及び中間係合部19の位置と数は実施形態1の場合と相違するが、その板ばね13自体の構造やその取付構造、及び中間係合部19の構造は同一であるので、その説明は省略する。また、装飾材本体24に取付金具11を一体化することにより装飾材25が構成される点、その装飾材25を下地材26に係合固定する点等においても同じ構成である。
【0041】
[実施形態3]
次に、装飾材本体24と前記実施形態1又は2の取付金具11を組み合わせた装飾材25、その装飾材25を用いた装飾壁及びその装飾壁の施工方法についいて、図7から図10に基づいて説明する。
【0042】
装飾材本体24は、木材、人工木材、タイル、石材等によって形成されたものであり、その断面形状(縦断側面形状)は、図7(a)から(f)に例示したように、長方形、正方形、正面が山形、凹形等種々である。また、各図において二点鎖線で示したように、これらの装飾材本体24は、軽量化、材料節約等の理由から中空にする場合がある。
【0043】
これらの装飾材本体24は共に高さAが一定であり、下地材26に対向した背面が取付面30となっている。その取付面30の下端から一定高さaの位置に長さ方向のスリット27が一定の幅と深さをもって全長に渡り形成される。スリット27の幅と深さは、前記取付金具11の差込片22を差し込むことができるサイズに形成される。
【0044】
なお、スリット27の高さaは取付面30の下端からスリット27の上端面までをいうものとする。
【0045】
前記の下地材26は、通常は窯業系材料の板状の成形品であり、図8に示したように、前面に水平方向の係合凸条29が上下方向に一定の間隔をおいて多段状に設けられる。本実施形態の場合は、上下に隣接した2段の係合凸条29が1個の取付金具11に対応する関係となっている。
【0046】
前記係合凸条29の断面形状は、図8に示したように、下面31は水平面であるが、上面32は前記取付金具11の係合片14の傾斜角度θ(図2参照)に合致する逆傾斜面となっている。この下地材26は、釘等によって建物の胴縁33を通して柱に固定される。
【0047】
前記の装飾材本体24の取付面30に前述の取付金具11を沿わせるとともに、差込片22をスリット27に差し込む。取付穴18に取付ネジ28をねじ込む等の手段で取付金具11を装飾材本体24の取付面30に固定したものが前述の装飾材25である(図8参照)。
【0048】
前記装飾材25を用いた装飾壁を作る際は、その取付金具11の係合片14を対応する上下2段の係合凸条29のうちの上段の係合凸条29の上面先端部に引っ掛け(図8の二点鎖線参照)、その引っ掛けた部分を支点として装飾材25の下端を下地材26の方向に押し込む。これによって中間係合片19が下段の係合凸条29の上面32に係合し、同時に板ばね13の弾性部13bが弾性変形しつつ当該係合凸条29の下面31に弾性的に押し当てられる。
【0049】
このとき、中間係合片19が対応する係合凸条29の上面32の先端部に干渉する可能性があるが、その突き出し高さhを相対的に小さく形成することにより、干渉を防ぐようにしている。
【0050】
また、弾性部13bの先端部係合凸条29の下面31に引っ掛るなどして押し込み方向の外力P(図2、図5参照)が作用することがあるが、前述のように、板ばね13はその後方の切欠き部16の内側に弾性変形して円滑に押し込まれる。
【0051】
弾性部13bが前記のように係合凸条29の下面31に弾性的に押し当てられることにより、係合片14及び中間係合片19がそれぞれ対応する上段及び下段の係合凸条29の上面32にばね力を付与し、そのばね力により装飾材25が下地材26に係合固定される。同様の方法で順次装飾材25を下地材26に係合固定させることにより、装飾壁が構成される。
【0052】
なお、前記係合凸条29の下面31を傾斜角δの逆傾斜面(図8及び図10参照)に形成することにより、板ばね13の弾性部13bの係合力を一層増すことができる。
【0053】
図8に示したように、下地材26の係合凸条29の間隔及び取付金具11のサイズが一定である場合において、装飾材本体24の高さAは、3段の係合凸条29の下面31間の間隔Pと、下端からスリット27の上端までの寸法aと、装飾材本体24の相互間のスキマcによって定まる大きさ、即ち、A=P−cに設定される。
【0054】
図7(a)図に示したような断面形状が長方形の場合において、縦横の寸法に一定の関係がある装飾材本体24の場合は、以下に述べるように、一種類の装飾材本体24を2つの態様に使い分けることができる。
【0055】
即ち、図9及び図10に示したように、装飾材本体24の特定のコーナ部C(図10参照)を挟んで、高さがXである幅の狭い取付面30a、これと直交する長辺の長さがY(Y>X)である幅の広い取付面30bが形成される。幅の狭い取付面30aの場合は、下端からの寸法aの位置にスリット27が設けられる。幅の広い取付面30bにおいては、その下端から寸法bの位置にスリット35が設けられ、Y=X+bの関係があるように設定される。
【0056】
装飾材本体24は一種類であるが、幅の狭い取付面30aに取付金具11を固定した装飾材36a(図9、図10参照)、幅の広い取付面30bに取付金具11を固定した装飾材36b(図9、図10参照)を予め製作しおてき、両者が上下方向に交互の配置となるよう下地材26に係合固定する。
【0057】
この場合、各装飾材36a、36b間のスキマcが一定であるとし、前記寸法b及びYの大きさを以下の(2)(3)式のように定めることにより、装飾材36aと36bの下地材26に対する係合固定構造は、上下2段の装飾材36a、36bごとに同じパターンとなり、そのパターンが下地材26の上端まで繰り返される。
【0058】
図10に示したように、1段目の装飾材36aと2段目の装飾材36bに着目すると、次の関係が成り立つ。
2(X+c)+b+a=2P+a ……(1)
ゆえに、 b=2(P−X−c) ……(2)
Y=2(P−c)−X ……(3)
【0059】
即ち、装飾材36bのb及びYの寸法を(2)(3)式のように設定することにより、4段の係合凸条29ごとに装飾材36aと36bの位置関係が繰り返される。これにより、装飾壁を正面から見た場合に、一種類の装飾材本体24によって上下方向の幅が交互に異なり、また壁面からの高さが交互に異なった変化に富んだデザインを得ることができる。
【0060】
なお、前記の幅の狭い取付面36aと幅の広い取付面36bは、上述のようにコーナ部Cを挟んで直交する平面であることが必要であるが、他の2面は任意の形状とすることが可能であるので、そのような形状を採ることにより一層変化に富んだデザインを得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
11 取付金具
12 取付板
12a中間部
12b、12c 側部
12c 中間部
13 板ばね
13a 固定部
13b 弾性部
14 係合片
15 リブ
16 切欠き部
17 バーリング加工部
18 取付穴
19 中間係合片
21 四角穴
22 差込片
24 装飾材本体
25 装飾材
26 下地材
27 スリット
28 取付ネジ
29 係合凸条
30 取付面
30a 幅の狭い取付面
30b 幅の広い取付面
31 下面
32 上面
33 胴縁
35 スリット
36a、36b 装飾材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付板とその取付板の正面に固定された板ばねとによって構成され、前記取付板の上端部にその取付板の正面側へ屈曲された係合片、前記取付板の下端部にその取付板の背面側へ屈曲された差込片、装飾材本体に対する取付部がそれぞれ設けられ、前記板ばねの弾性部が前記係合片より低い位置に設けられ、前記係合片が下地材の係合凸条の上面に係合され、前記板ばねの弾性部が前記下地材の係合凸条の下面に弾性的に押し当てられる建築用装飾材の取付金具。
【請求項2】
前記係合片が前記取付板の下端側へ傾斜する傾斜角をもって形成された請求項1に記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項3】
前記係合片と板ばねの弾性片との中間部分に、前記取付板の一部を正面側に切り起こして中間係合片が設けられ、該中間係合片を前記下地材の係合凸条の上面に係合させるようにした請求項1又は2に記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項4】
前記板ばねの固定部が沿う取付板の部分に、該固定部の幅より大きい幅をもち当該取付板の下端に達する切欠き部が設けられた請求項1から3のいずれかに記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項5】
前記取付板が、中央部とその中央部を挟んだ両側部の3部分に区分され、前記中央部に前記板ばねが固定され、前記両側部にそれぞれ前記中間係合部が設けられ、前記両側部の下端背面側に前記差込片が屈曲形成された請求項2から4のいずれかに記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項6】
前記取付板が、中央部とその中央部を挟んだ両側部の3部分に区分され、前記中央部に前記中間係合片がけられ、その中央部の下端背面側に前記差込片が屈曲形成され、前記両側部にそれぞれ前記の板ばねが固定された請求項2から4のいずれかに記載の建築用装飾材の取付金具。
【請求項7】
装飾材本体と、請求項1から6いずれかに記載の取付金具との組み合わせからなり、前記装飾材本体の下地材に対向した取付面に当該装飾材本体の長さ方向のスリットが全長にわたり形成され、前記取付金具の背面が当該装飾材の前記取付面に当てられ、その取付金具の差込片が前記スリットに差し込まれ、前記取付部において当該取付金具が前記装飾材本体に固定された建築用装飾材。
【請求項8】
前記装飾材本体は、幅の大きさに差のある直交した2面の取付面を有し、各取付面にそれぞれ前記のスリットが設けられ、そのいずれか一方の取付面に前記の取付金具が固定された請求項7に記載の建築用装飾材。
【請求項9】
建物に固定された下地材に請求項7又は8に記載の建築用装飾材を取り付けて構成され、前記下地材の前面に水平方向の係合凸条が上下方向に一定の間隔をもって形成され、前記取付金具の係合片が前記係合凸条の上面に係合され、前記板ばねが前記係合凸条の下面に弾性的に押し当てられることにより前記係合片の係合部分に押圧力を付与し、その押圧力により前記取付金具を介して前記装飾材が前記下地材に係合固定された装飾壁。
【請求項10】
前記係合凸条の下面が逆傾斜面に形成された請求項9に記載の装飾壁。
【請求項11】
前記下地材に上下に隣接して係合固定される前記建築用装飾材は、幅の広い取付面で前記下地材に係合固定されるものと、幅の狭い取付面で前記下地材に係合固定されるものが交互に配置された請求項9に記載の装飾壁。
【請求項12】
請求項8に記載の建築用装飾材を下地材に係合固定するに際し、予め幅の広い取付面に取付金具を固定したものと、幅の狭い取付面に取付金具を固定したものとを設け、両者を上下方向に交互に配置しつつ下地材に係合固定する装飾壁施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−2015(P2012−2015A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139673(P2010−139673)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(390036722)神島化学工業株式会社 (54)
【Fターム(参考)】