説明

建設機械のキャノピ構造

【課題】キャノピの柱の強度を向上させ、かつ柱の歪みを最小限に抑えることができる構造を提供する。
【解決手段】柱部2に異型鋼管4を用い、該異型鋼管4内に補強部材5を配置させ、その柱部2に天井板3を接続させてキャノピを形成させた。
【効果】キャノピ1の柱2の強度が向上し、また部材間に間隙を生じさせない形態も自在に形成できるので、従来のような柱2に歪みが生じるというおそれもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設機械のキャノピ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械のキャノピは、各壁を形成する合わせ板の一方または双方を外方に膨らませて中空部を形成し、その中空部を柱(ピラー)とする構造が主流であった。
【0003】
しかし、近年、搭乗者保護の観点からキャノピの強度向上が要請され、特開平9−25648号公報(特許文献1)や特許第3474417号公報(特許文献2)において、柱を補強する構造が提案されている。図7は特開平9−25648号公報に開示された一例であり、柱6内に鋼管7(または棒鋼)を配置させている。また図8は特許第3474417号公報に開示された一例であり、柱8内に曲折状板部材9を配置させている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−25648号(図2〜4、図8、図11)
【特許文献2】特許第3474417号(図2〜5、図10〜14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの補強構造は、合わせ材を接合した柱を基礎とすることによる強度向上の限界があることに加え、補強部材の接合工程に起因する理由によって、キャノピに過重がかかった際、柱に生じる歪みを最小限に抑えることが困難となっている。すなわち、補強部材の配置は、まず補強部材を、柱を形成する一の合わせ材(例えばアウタパネル)と接合させた後、補強部材を挟むように他方の合わせ材(例えばインナパネル)を前記一の合わせ材に接合することで行う。ここで、他方の合わせ材の接合時においては、加工誤差や溶接歪みを考慮して、補強部材との間にある程度の間隙(各図中、sで示す)を設ける必要がある。しかし、この間隙があることによって、キャノピに過重がかかった際、間隙の分だけ柱に歪みが生じてしまうのである。
【0006】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、キャノピの柱の強度を向上させ、かつ柱の歪みを最小限に抑えることができる構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、この発明に係る建設機械のキャノピ構造は、柱部に異型鋼管を用い、該異型鋼管内に補強部材を配置させ、その柱部に天井板を接続させてキャノピを形成させたたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記異型鋼管とは、鋼管を加圧等の加工をして、断面形状を円以外の所定形状にしたものをいう。
【0009】
本発明は、柱部の構成部材として異型鋼管を用いているので、それだけで強度が向上しているが、さらにその異型鋼管内に補強部材を配置させているので、強度がさらに向上する。また、異型鋼管内に補強部材を配置させて接続させる構造のため、異型鋼管内に挿入できる形状であれば寸法上の制約はなく、このため部材間に間隙を生じさせない形態とすることが自在である。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、キャノピの柱の強度が向上し、また部材間に間隙を生じさせない形態も自在に形成できるので、従来のような柱に歪みが生じるというおそれもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の具体的実施形態の一例を図面に基づき説明する。なお、以下の形態例は本発明を具現化した一例に過ぎず、本発明がそれに限定されるものではないことは当然である。
【0012】
図1は油圧ショベルのキャノピに適用された一例であり、同図(a)はキャノピ全体の説明図、(b)は柱部の断面図である。
【0013】
図示のように、本形態例は、4本の柱部となる柱2で四角を形成させ、それらの柱2の上部に天井板3を接続させてキャノピ1を形成させている。
【0014】
前記柱2は、いずれも同図(b)に示すように、鋼管を加圧変形させた異型鋼管4により形成され、該異型鋼管4内に補強部材5が配置されている。補強部材5は、図示のように断面が変形S字状の曲折鋼板であり、それを異型鋼管4内に配置させた際、その両端辺5a,5bが異型鋼管4の内周に密接するように、異型鋼管4内周形状に沿った形状に曲折加工させている。また、両端辺5a,5bの中間部5cは、異型鋼管4の対面する内周間の距離とほぼ同じ幅に形成させている。したがって、補強部材5を異型鋼管4に配置させると、図示のように、両端辺5a,5bが鋼管内周面に間隙なく当接される。この当接部を溶接することで、補強部材5は異型鋼管4内で間隙なく固定される。また本形態例では、補強部材5の固定状態において、その中間部5cがキャノピの横方向(後述する実施例におけるX方向。以下同じ)と同方向に延出して配置される。このため、この本形態例においては、キャノピ1の横荷重に強い柱構造となっている。
【0015】
図2乃至図4は柱2を形成する他の形態例を示している。これらの形態例は、異型鋼管4の形状は同様であるが、その内部に配置する補強部材50〜52の形態が異なっている。
【0016】
図2の補強部材50は、断面が変形コ字状の曲折鋼板であり、両端部にフランジが形成される。そして、この補強部材50を異型鋼管4内に配置させた際、その両端フランジ50a,50bと中間部50cが異型鋼管4の内周に密接するように、異型鋼管4内周形状に沿った形状に曲折加工させている。したがって、補強部材50を異型鋼管4に配置させると、図示のように、両フランジ50a,50bと中間部50cの3カ所において鋼管内周面に間隙なく当接される。これらの当接部を溶接することで、補強部材5は異型鋼管4内で間隙なく固定される。本形態例では、補強部材50が異型鋼管4内で3点支持されることになり、キャノピ1の横荷重のみならず縦荷重(後述する実施例におけるY方向。以下同じ)に対しても強い柱構造となっている。
【0017】
図3の補強部材51は断面が長方形状の角形鋼管であり、異型鋼管4の一端側の中空突出部40の両内面に密接できる高さに形成されている。またそれを鋼管4内に配置させて、一端側を中空突出部40に当接させた際(図中、当接部51a,51b)、他端角部51cが鋼管4内面と当接する幅に形成されている。したがって、本形態例では、補強部材51はその当接部51a,51b,51cが溶接されることで、異型鋼管4内の横方向に亘って固定される。このため本形態例では、特にキャノピ1の横荷重に強い柱構造となっている。
【0018】
図4の補強部材52は通常形状の鋼管であり、異型鋼管4の中空部に内接できる径のものが用いられている。したがって、本形態例では、補強部材52はその内接箇所52a,52bが溶接されることで、異型鋼管4内の中空部全体に亘って固定される。このため本形態例では、特にキャノピ1に対する全方向からの荷重に強い柱構造となっている。
【実施例】
【0019】
図2に示す形態例の構造によって、どの程度の強度が向上するのかを断面係数を解析した試験結果で示す。図5に示すように、キャノピの前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)のそれぞれの断面係数を解析した。比較のため、図6に示すような前記異型鋼管4のみ用いて前記補強部材50を用いていない柱の構造についても解析した。解析結果は次のとおりである。
【0020】
X方向: 実施形態例235608.98、比較例166985.87
Y方向: 実施形態例732841.72、比較例558757.63
【0021】
上記値に示すように、本形態例はキャノピの前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)のいずれの方向の断面係数も格段に向上していることが示されている。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、キャノピを備える建設機械に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本形態例の説明図であり、(a)はキャノピ全体の説明図、(b)は(a)中の柱のA−A断面図である。
【図2】他の形態例の説明断面図である。
【図3】他の形態例の説明断面図である。
【図4】他の形態例の説明断面図である。
【図5】断面係数の解析に用いた形態例を示した断面図である。
【図6】断面係数の解析に用いた比較例を示した断面図である。
【図7】特開平9−25648号に開示される柱の断面図である。
【図8】特許第3474417号に開示される柱の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 キャノピ
2 柱(柱部)
3 天井板
4 異型鋼管
5,50,51,52 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱部に異型鋼管を用い、該異型鋼管内に補強部材を配置させ、その柱部に天井板を接続させてキャノピを形成させたたことを特徴とする建設機械のキャノピ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−290103(P2006−290103A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112088(P2005−112088)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】