説明

建設機械の冷却装置

【課題】上流室に積雪があった場合の融雪機能を発揮し、かつ、低温下での暖機効率を高める。
【解決手段】カバー材11で覆われたエンジンルーム12内に、吸気口13から排気口14に向かう冷却空気の流れに沿って上流側から熱交換器15、冷却ファン16、エンジン17を設けるとともに、熱交換器15とカバー材11の相対向する面間の隙間Cを仕切り部材18で塞ぐことにより、エンジンルーム12内を上流室12aと下流室12bとに仕切る。この構成を前提として、上記隙間Cを開閉し得るように仕切り部材18を回動可能に構成し、この仕切り部材18を開いて下流室12b内の暖気を上流室12aに導入することにより上流室12aを加温するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンルーム内が熱交換器及び仕切り部材を境として上流室と下流室とに仕切られた建設機械の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
図14に示すように上部旋回体の後部に、エンジンガードやカウンタウェイトの一部等のカバー材1で囲われたエンジンルーム2が設けられている。
【0004】
このエンジンルーム2を形成するカバー材1の一端部(図の左側端部)の上部に、外部から冷却空気を取り込む吸気口3、他端部(同、右側端部)の上部に冷却済み空気を排出する排気口4がそれぞれ設けられ、吸気口3から排気口4に向かう空気の流れに沿って上流側から順に熱交換器5、冷却ファン6、エンジン7が配置される。
【0005】
熱交換器5とカバー材1の相対向する四周面間には、この部分の隙間を塞ぐ仕切り部材8が全周に設けられ、熱交換器5及びこの仕切り部材8によってエンジンルーム2内が上流室2aと下流室2bとに仕切られている。
【0006】
なお、熱交換器5は、エンジン冷却用のラジエータをはじめ、オイルクーラー、インタークーラー等の複数のもので構成されるが、図では説明の便宜上、一つのものとして示している。
【0007】
この構成において、冷却ファン6の回転により、実線矢印で示すように外部から吸気口3を介して上流室2aに吸入された冷却空気が熱交換器5を通って下流室2bに入り、破線矢印で示すようにエンジン7まわりを通って排気口4から外部に排出される。このエンジンルーム2内の空気流によって熱交換器5及びエンジン7が冷却される。
【0008】
このような冷却装置の基本的構成は特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2006−206034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記公知技術によると、降雪時に、雪が吸気口3から上流室2a内に侵入して二点鎖線で示すように熱交換器5前に積もった場合に、この積雪により空気の流れが阻害されて熱交換器5の冷却機能が低下し、エンジン7がオーバーヒートを起こす可能性がある。
【0010】
また、この雪害を抜きにしても、低温下での暖機効率が悪く、始動時の暖機に長時間を要するととともに、暖機のための燃費が悪いという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上流室に積雪があった場合の融雪機能を発揮し、かつ、低温下での暖機効率を高めることができる建設機械の冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、カバー材で囲われたエンジンルーム内に、冷却空気の流れに沿って上流側から熱交換器、冷却ファン、エンジンを設けるとともに、熱交換器とカバー材の相対向する面間の隙間を仕切り部材で塞ぐことにより、エンジンルーム内を熱交換器及び仕切り部材を境として上流室と下流室とに仕切り、上流室に、外部から冷却空気を取り込む吸気口、下流室に、冷却済み空気を排出する排気口をそれぞれ設けた建設機械において、上記上流室と下流室とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する連通路開閉部材とを設け、この連通路開閉部材を開いて下流室内の暖気を上流室に導入し上流室内を加温する加温操作を行い得るように構成したものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、仕切り部材の少なくとも一部を、熱交換器とカバー材の相対向する面間の隙間を閉じる位置と開く位置との間で移動し得る連通路開閉部材、この連通路開閉部材で開閉される隙間部分を連通路としてそれぞれ構成したものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、熱交換器とカバー材の相対向する下面間の隙間を塞ぐ仕切り部材の少なくとも一部のみを連通路開閉部材として構成したものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2または3の構成において、下流室の空気を連通路を介して上流室の上流側に導く導風板を設けたものである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1の構成において、上流室と下流室を結ぶダクトを設けることによって連通路を形成したものである。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5の構成において、ダクトを、一端が上流室に、他端が下流室にそれぞれ開口する状態でエンジンルーム外に配置したものである。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6の構成において、ダクトの一端を上流室の上流位置に開口させたものである。
【0019】
請求項8の発明は、請求項5の構成において、ダクトを、一端が下流室に、他端が上流室にそれぞれ開口する状態でエンジンルーム内に配置したものである。
【0020】
請求項9の発明は、請求項8の構成において、ダクトを、エンジンルーム内の下部に配置したものである。
【0021】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれかの構成において、連通路開閉部材を、水平軸を中心に回動して連通路を開閉するように構成したものである。
【0022】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかの構成において、排気口の少なくとも一部を開閉する排気口開閉部材を設け、加温操作の一部として連通路開閉部材の開き時にこの排気口開閉部材を閉じ得るように構成したものである。
【0023】
請求項12の発明は、請求項2〜4のいずれかの構成において、下流室における上流室との境界部分に排気口を、開閉自在な仕切り部材が開いた状態で少なくとも一部が同部材によって塞がれる状態で設けたものである。
【0024】
請求項13の発明は、請求項2〜12のいずれかの構成において、連通路開閉部材を作動させる連通路開閉機構と、エンジン冷却水の温度を検出するセンサと、上記連通路開閉機構の駆動源を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、上記センサによって検出されるエンジン冷却水温度が上流室の加温の必要がある値であるときに、連通路開閉機構の駆動源を連通路開き方向に作動させて加温操作を行わせるように構成したものである。
【0025】
請求項14の発明は、請求項11または12の構成において、連通路開閉部材を作動させる連通路開閉機構と、排気口開閉部材を作動させる排気口開閉機構と、エンジン冷却水の温度を検出するセンサと、上記連通路開閉機構及び上記排気口開閉機構の駆動源を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、上記センサによって検出されるエンジン冷却水温度が上流室の加温の必要がある値であるときに、連通路開閉機構の駆動源を連通路開き方向に作動させるとともに、排気口開閉機構の駆動源を排気口閉じ方向に作動させて加温操作を行わせるように構成したものである。
【0026】
請求項15の発明は、請求項13または14の構成において、制御手段は、検出されるエンジン冷却水温度が上流室が十分加温された温度として予め設定された加温終了温度に達したときに加温操作を停止させるように構成したものである。
【0027】
請求項16の発明は、請求項15の構成において、加温操作の開始から計時作動を行うタイマを備え、制御手段は、エンジン冷却水温度が加温終了温度に達する前に加温操作の開始から予め設定された時間が経過したときに加温操作を停止させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、上流室と下流室とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する連通路開閉部材とを設け、この連通路開閉部材を開いて(請求項10では回動により開いて)下流室内の暖気を上流室に導入し上流室内を加温する加温操作を行い得るように構成したから、上流室に雪が積もって熱交換器の冷却機能低下の懸念がある場合にこの加温操作を行うことにより、上流室の積雪を融かして熱交換器の冷却機能を維持し、ひいてはエンジンのオーバーヒートを防止することができる。
【0029】
また、下流室の暖気を上流室に送り、熱交換器を通して下流室に戻すことになるため、積雪が無い場合でもエンジン始動時にこの加温操作を行うことによって暖機効率を高めることができる。このため、暖機時間を短縮し、暖機のための燃費を節約することができる。
【0030】
この場合、請求項2〜4の発明によると、熱交換器とカバー材の相対向する面間の隙間を塞ぐ仕切り部材の少なくとも一部を連通路開閉部材として利用するため、構造が簡単でコストが安くてすむ。
【0031】
また、請求項3の発明によると、四周の仕切り部材のうち下面側の仕切り部材の少なくとも一部のみを連通路開閉部材としたから、下流室の暖気が熱交換器の下部から集中して上流室に導入される。
【0032】
従って、上流室の積雪に、より直接、多くの暖気を当てることができること、及び暖気を下側から導入することで暖気の上流室での滞留時間を長くとれることにより融雪効果を高めることができる。
【0033】
しかも、下側のみに連通路開閉部材を設けるため、コスト面でも有利となる。
【0034】
請求項4の発明によると、下流室からの暖気を導風板によって上流室の上流側に導くため、熱をより効率良く上流室に吸収させることができる。とくに請求項3の下側導入と組み合わせることで融雪効果及び暖機効果をさらに高めることができる。
【0035】
請求項5〜9の発明、すなわち上、下流室をダクトで結ぶダクト方式によると、上流室の暖気の導入口を融雪または暖機効率の最も良い任意の位置(請求項7では上流位置)に設定することができる。
【0036】
この場合、請求項6,7のようにダクトをエンジンルーム外に配置する外部ダクト方式によると、内部ダクト方式と比べてダクト、及びエンジンルーム内機器のレイアウトの自由度が高い。
【0037】
これに対し、請求項8,9の内部ダクト方式によると、外部ダクト方式において吸気口の上方を通るルートでダクトを設けた場合のように吸気口の一部がダクトで塞がれる弊害や、外観を損ねたり後方視界の妨げとなったりする弊害が生じない。
【0038】
また、外部への直接放熱がないため、融雪、暖機効率が良いものとなる。
【0039】
請求項11,12の発明によると、連通路開閉部材の開き時に排気口の少なくとも一部を閉じる(排気口が複数ある場合の全部または一部を閉じ、あるいは開口面積を減らす)ため、下流室から外部へ逃げる暖気量を0にし、または減少させることができる。このため、融雪、暖機効率の点で有利となる。
【0040】
この場合、請求項12の発明によると、連通路開閉部材が排気口開閉部材を兼ねるため、両部材を別々に設ける場合と比べて構造を簡素化し、コストを安くすることができる。
【0041】
請求項13〜16の発明によると、エンジン冷却水の温度が上流室の加温を必要とする値であるときに、自動的に連通路を開き、または同時に排気口の閉じ動作を行わせるため、加温操作をオペレータの判断でかつ手動で行う場合と比べて、オペレータの操作負担を軽減できるとともに、的確な融雪、暖機作用を得ることができる。
【0042】
この場合、請求項15の発明によると、融雪または暖機完了時(エンジン冷却水温度が加温終了温度に達したとき)に加温操作を自動停止させるため、オペレータが加温操作を停止させる場合と比べて、加温操作の過不足がないとともに、オペレータによる操作負担を軽減することができる。
【0043】
また、加温操作が過剰に行われてオーバーヒートの原因となるおそれがない。
【0044】
請求項16の発明によると、エンジン冷却水温度が加温終了温度に達する前でも、加温操作の開始から設定時間経過すると加温操作を停止させるため、たとえばエンジンのオーバーヒートが起こらない融雪状態が得られると推測される時間を設定時間として選択することにより、オーバーヒート防止と作業能率とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の実施形態を図1〜図13によって説明する。
【0046】
以下の実施形態において、
(A)上部旋回体の後部に、エンジンガードやカウンタウェイトの一部等のカバー材11で囲われたエンジンルーム12が設けられる点、
(B)このエンジンルーム12を形成するカバー材11の一端部(図の左側端部)の上部に、外部から冷却空気を取り込む吸気口13、他端部(同、右側端部)の上部に冷却済み空気を排出する排気口14がそれぞれ設けられ、吸気口13から排気口14に向かう空気の流れに沿って上流側から順に熱交換器15、冷却ファン16、エンジン17が配置される点、
(C) 熱交換器15とカバー材11の相対向する四周面間には、この部分の隙間Cを塞ぐ仕切り部材18が全周に設けられ、熱交換器15及びこの仕切り部材18によってエンジンルーム2内が上流室2aと下流室2bとに仕切られる点
は、図14に示す公知技術と同じである。
【0047】
第1実施形態(図1〜図3参照)
第1実施形態においては、上、下、左、右の各仕切り部材18がそれぞれ連通路開閉部材として独立して、かつ、カバー材11側に取付けたヒンジ19によって水平軸まわりに回動可能な状態で設けられ、この仕切り部材18…の回動によって連通路としての隙間Cを開閉するように構成されている。
【0048】
なお、ヒンジ19は熱交換器15側に設けてもよい。
【0049】
また、上下左右の各仕切り部材18及び隙間Cの一部のみを連通路開閉部材及び連通路として構成してもよい。「一部」とは、各仕切り部材18…の中央部や端部といった一部分の場合や、たとえば上側と下側の仕切り部材18,18のみの場合、あるいは上側及び下側仕切り部材18,18の全体と左右仕切り部材の一部分の場合等をいう。
【0050】
また、仕切り部材18の開閉は、外部に導出したハンドルで直接手動で操作するようにしてもよいし、ケーブルを介して操作し易い場所で手動操作するようにしてもよい。あるいは、後述するように電動機で回動中心軸またはケーブルを駆動して仕切り部材18を開閉させる構成をとることもできる。
【0051】
この構成において、上流室12aに積雪S(図2中に二点鎖線で示す)があり、空気の流れがこの積雪Sで阻害されるおそれがある状況で、仕切り部材18を開いた状態でエンジン17を始動させる(図2,3参照)。
【0052】
こうすれば、エンジン運転によって暖められた下流室12bの空気(暖気)の大部分が、上流室圧力<下流室圧力の関係に基づいて上流室12aに流入し、熱交換器15を通って下流室12bに戻る。
【0053】
この暖気の循環作用によって上流室12a内が加温され、上流室12a内の積雪Sが速やかに融けるため、積雪Sにより空気の流れが阻害されてエンジン17がオーバーヒートを起こすおそれがない。
【0054】
また、暖気の循環作用によってエンジン17が効率良く暖機されるため、積雪Sの有無に関係なく、暖機時間を短縮できるとともに、暖機のための燃費を節約することができる。
【0055】
しかも、上、下流室12a,12bを仕切る仕切り部材18を連通路開閉部材として利用するため、専用の連通路開閉部材を別途設ける場合と比べて構造が簡単でコストが安くてすむ。
【0056】
なお、仕切り部材18を開いた状態のまま定常運転に入ると、今度は暖気の循環作用によってエンジン17がオーバーヒートを起こす弊害が生じる。そこで、加温操作終了時に仕切り部材18を閉じ、外部空気を導入して熱交換器15を冷却する本来の冷却状態に戻す。
【0057】
第2実施形態(図4参照)
以下の実施形態については、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0058】
第2実施形態においては、請求項3に対応する実施形態として、四周の仕切り部材18…のうち下側のもの(区別のため開閉仕切り部材と称し、枝符号付きの18aと表記する)のみが連通路開閉部材として回動可能に構成されている。
【0059】
また、請求項4に対応する構成として、熱交換器15の下面から上流室12aの上流側に水平に延びる導風板20が設けられ、開閉仕切り部材18aが開いた状態でこの導風板20により下流室12bの暖気を上流室12aの上流側に導くように構成されている。
【0060】
この構成によると、開閉仕切り部材18aを開いた状態で、下流室12bの暖気が熱交換器15の下部から集中して上流室12aに、しかも導風板20によって上流側に導入される。
【0061】
従って、
i. 上流室12aの積雪Sに対してより直接、多くの暖気を当てることができること、
ii. 暖気を下側から導入することで暖気の上流室12aでの滞留時間を長くとれること、
iii. 下流室12bからの暖気を導風板20によって上流室12aの上流側に導くため、熱をより効率良く上流室に吸収させることができること
により、融雪効果を高めることができる。
【0062】
しかも、下側の仕切り部材18aのみを連通路開閉部材として構成するため、コスト面でも有利となる。
【0063】
第3実施形態(図5参照)
第3実施形態においては、請求項5〜7に対応する構成として、エンジンルーム12外に連通路としてのダクト21が設けられている。
【0064】
このダクト21は、エンジンルーム12の上方において、一端が下流室12bに、他端が上流室12aにそれぞれ開口する状態で設けられ、上流室12a側の開口部21aに、これを開閉する連通路開閉部材としてのダクト開閉部材22がヒンジ23により水平軸まわりに回動可能に取付けられている。
【0065】
この構成によると、上流室12aの暖気の導入口を、融雪または暖機効率の最も良い任意の位置(図例では熱交換器15のコア面と対向する面=最上流位置)に設定することができる。
【0066】
また、ダクト21をエンジンルーム12外に配置するため、内部に配置する場合と比べてダクト21、及びエンジンルーム内機器のレイアウトの自由度が高い。
【0067】
なお、ダクト21をエンジンルーム12外の前後の側方または下方に設けてもよい。
【0068】
第4実施形態(図6参照)
第4実施形態においては、第3実施形態の内部ダクト方式に対して、ダクト24がエンジンルーム12内に設置された内部ダクト方式がとられている。
【0069】
このダクト24は、エンジンルーム内の下部、すなわち熱交換器15の下面側において、一端が下流室12bに、他端が上流室12aの上流側にそれぞれ開口する状態で水平に設けられ、下流室12b側の開口部24aにダクト開閉部材25がヒンジ26により水平軸まわりに回動可能に取付けられている。
【0070】
この構成によると、第3実施形態の外部ダクト方式において図5に示すように吸気口13の上方を通るルートでダクト21を設けた場合のように吸気口13の一部がダクト21で塞がれる弊害や、外観を損ねたり後方視界の妨げとなったりする弊害が生じない。
【0071】
また、融雪及び暖機作用の面でも、
(イ)外部への直接放熱がないこと、
(ロ)ダクト24を下側に設けているため、ダクト上面からの直接放熱作用を含めて上流室12aの積雪に対してより直接、多くの熱を加えることができること、
(ハ)暖気を下側から導入することで暖気の上流室12aでの滞留時間を長くとれること
により、融雪及び暖気効果をより高めることができる。
【0072】
なお、ダクト24をエンジンルーム12内の前後の側方または上方に設置してもよい。
【0073】
第5実施形態(図7,8参照)
第5実施形態では、請求項11に対応する構成として、排気口14に排気口開閉部材27がヒンジ28により水平軸まわりに回動して排気口14を開閉する状態で設けられ、加温操作時に連通路開閉部材を開くととともに、この排気口開閉部材27によって排気口14を閉じる構成がとられている。
【0074】
ここでは、加温操作時に仕切り部材18…を開く第1実施形態の構成を前提とした場合を例にとっているが、第2、第3両実施形態の構成を前提とすることもできる。
【0075】
また、すべての排気口14を開閉式としてもよいし、その一部のみを開閉式としてもよい。また、すべての排気口14またはその一部を部分的に開閉して、閉じ状態で開口面積を減少させる構成をとってもよい。
【0076】
この構成によると、下流室12bから外部へ逃げる暖気量を0にし、または減少させることができるため、融雪、暖機効率の点で有利となる。
【0077】
第6実施形態(図9,10参照)
第6実施形態は請求項12に対応する。すなわち、仕切り部材18で隙間Cを開閉する第1実施形態の構成を前提として、下流室12bの下流側に設けられた排気口14とは別に、下流室12bにおける上流室12aとの境界部分に下部排気口29が設けられ、加温操作時に、下部仕切り部材18を開いた状態で同部材18によってこの下部排気口29を閉じる構成がとられている。
【0078】
なお、下部排気口29の全部を閉じてもよいし、一部のみを閉じてもよい。また、第5実施形態と組み合わせ、下流室下流側の排気口14をも同時に開閉する構成をとってもよい。
【0079】
この構成によると、連通路開閉部材を兼ねる仕切り部材18が排気口開閉部材をも兼ねるため、専用の排気口開閉部材を設ける場合と比べて構造を簡素化し、コストを安くすることができる。
【0080】
第7実施形態(図11〜図13参照)
第7実施形態では、請求項13〜16に対応する構成として、加温操作を自動的に開始しかつ終了する構成がとられている。
【0081】
ここでは、加温操作時に仕切り部材18を開くととともに、排気口開閉部材27によって排気口24を閉じる第5実施形態の構成を前提としている。
【0082】
仕切り部材18及び排気口開閉部材27は、それぞれケーブル30,31を介して、仕切り部材用、排気口開閉部材用両モータ(電動機)32,33によって開閉駆動される。
【0083】
この両モータ32,33は、図12に示すようにタイマ34を備えた制御手段としてのコントローラ35によって制御される。
【0084】
このコントローラ35は、エンジン冷却水温度を検出する冷却水温度センサ36からの信号が入力され、
(I)エンジン冷却水温度が加温操作の必要がある温度として予め設定された値(加温必要温度)T1以下であるときに、両モータ31,32を回転させて仕切り部材18を開くとともに排気口開閉部材27を閉じ、
(II)冷却水温度が、上流室12aが十分加温された温度として予め設定された値(加温終了温度)T2以上となったときに加温操作を停止させ、
(III)エンジン冷却水温度が加温終了温度に達する前に加温操作の開始から予め設定された時間が経過したときに加温操作を停止させる
ように構成されている。
【0085】
この点の作用を図13のフローチャートによって説明する。
【0086】
たとえばキースイッチのオン操作によって制御が開始され、ステップS1でエンジン冷却水温度が加温必要温度T1以下か否かが判断される。
【0087】
ここでNOとなると、加温操作の必要がないとして、ステップS2で仕切り部材閉じ指令と、排気口開閉部材開き指令が出され、仕切り部材18が閉じたまま、排気口開閉部材27が開いたままとなる。
【0088】
一方、ステップS1でYESとなると、加温操作が必要として、ステップS3で仕切り部材開き指令及び排気口開閉部材閉じ指令が出され、仕切り部材18が開くとともに排気口開閉部材27が閉じる。これにより、前記加温操作が開始される。
【0089】
次のステップS4でタイマ34が始動して計時作動を開始するとともに、ステップS5でエンジン冷却水温度が加温終了温度T2以上か否かが判断され、NOの場合はステップS6でタイマ設定時間が経過したか否かが判断される。
【0090】
ここでNO(経過していない)となるとステップS5に戻り、ステップS5で冷却水温度が加温終了温度T2に達するか、ステップS6でタイマ設定時間が経過するか、いずれか早い方で仕切り部材閉じ指令と排気口開閉部材開き指令が出され(ステップS7)、制御終了となる。
【0091】
この構成によると、加温操作をオペレータの判断でかつ手動で行う場合と比べて、オペレータの操作負担を軽減できるとともに、的確な融雪、暖機作用を得ることができる。
【0092】
また、融雪または暖機完了時(エンジン冷却水温度が加温終了温度に達したとき)に加温操作を自動停止させるため、オペレータが加温操作を停止させる場合と比べて、加温操作の過不足がないとともに、オペレータによる操作負担を軽減することができる。さらに、加温操作が過剰に行われてオーバーヒートの原因となるおそれがない。
【0093】
加えて、ステップS5〜S7の処理により、エンジン冷却水温度が加温終了温度T2に達していなくても、加温操作の開始からタイマ設定時間経過後に加温操作を停止させるため、たとえばエンジンのオーバーヒートが起こらない程度の融雪状態が得られると推測される時間をタイマ設定時間として選択することにより、オーバーヒート防止と作業能率とを両立させることができる。
【0094】
なお、エンジン冷却水温度が加温終了温度T2に達したときのみに加温操作を終了するようにしてもよいし、逆にタイマ設定時間の経過のみによって加温操作を終了するようにしてもよい。
【0095】
また、このような自動制御は、ダクト方式をとる実施形態、及び排気口14を開閉しない実施形態にも同様に適用することができる。
【0096】
ところで、開閉する仕切り部材18等の連通路開閉部材、及び排気口開閉部材27を、上記実施形態のような回動式でなく、スライド運動によって連通路や排気口14,29を開閉するスライド式に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態を示す概略断面図である。
【図2】同実施形態において加温操作を行っている状態の図1相当図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態を示す概略断面図である。
【図8】同実施形態において加温操作を行っている状態の図7相当図である。
【図9】本発明の第6実施形態を示す概略断面図である。
【図10】同実施形態において加温操作を行っている状態の図9相当図である。
【図11】本発明の第7実施形態を示す概略断面図である。
【図12】同実施形態のブロック構成図である。
【図13】同実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図14】従来技術を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0098】
11 カバー材
12 エンジンルーム
12a 上流室
12b 下流室
13 吸気口
14 排気口
15 熱交換器
16 冷却ファン
17 エンジン
18 仕切り部材兼連通路開閉部材
18a 開閉仕切り部材
19 ヒンジ
C 熱交換器とカバー材の隙間
20 導風板
21 外部ダクト
22 ダクト開閉部材(連通路開閉部材)
23 ヒンジ
24 内部ダクト
25 ダクト開閉部材(連通路開閉部材)
26 ヒンジ
27 排気口開閉部材
28 ヒンジ
29 上流室と下流室の境界部分に設けた排気口
31 連通路開閉機構及び排気口開閉機構を構成するケーブル
32,33 同モータ
34 タイマ
35 コントローラ
36 冷却水温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー材で囲われたエンジンルーム内に、冷却空気の流れに沿って上流側から熱交換器、冷却ファン、エンジンを設けるとともに、熱交換器とカバー材の相対向する面間の隙間を仕切り部材で塞ぐことにより、エンジンルーム内を熱交換器及び仕切り部材を境として上流室と下流室とに仕切り、上流室に、外部から冷却空気を取り込む吸気口、下流室に、冷却済み空気を排出する排気口をそれぞれ設けた建設機械において、上記上流室と下流室とを連通させる連通路と、この連通路を開閉する連通路開閉部材とを設け、この連通路開閉部材を開いて下流室内の暖気を上流室に導入し上流室内を加温する加温操作を行い得るように構成したことを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項2】
仕切り部材の少なくとも一部を、熱交換器とカバー材の相対向する面間の隙間を閉じる位置と開く位置との間で移動し得る連通路開閉部材、この連通路開閉部材で開閉される隙間部分を連通路としてそれぞれ構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の冷却装置。
【請求項3】
熱交換器とカバー材の相対向する下面間の隙間を塞ぐ仕切り部材の少なくとも一部のみを連通路開閉部材として構成したことを特徴とする請求項2記載の建設機械の冷却装置。
【請求項4】
下流室の空気を連通路を介して上流室の上流側に導く導風板を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の建設機械の冷却装置。
【請求項5】
上流室と下流室を結ぶダクトを設けることによって連通路を形成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の冷却装置。
【請求項6】
ダクトを、一端が上流室に、他端が下流室にそれぞれ開口する状態でエンジンルーム外に配置したことを特徴とする請求項5記載の建設機械の冷却装置。
【請求項7】
ダクトの一端を上流室の上流位置に開口させたことを特徴とする請求項6記載の建設機械の冷却装置。
【請求項8】
ダクトを、一端が下流室に、他端が上流室にそれぞれ開口する状態でエンジンルーム内に配置したことを特徴とする請求項5記載の建設機械の冷却装置。
【請求項9】
ダクトを、エンジンルーム内の下部に配置したことを特徴とする請求項8記載の建設機械の冷却装置。
【請求項10】
連通路開閉部材を、水平軸を中心に回動して連通路を開閉するように構成したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の建設機械の冷却装置。
【請求項11】
排気口の少なくとも一部を開閉する排気口開閉部材を設け、加温操作の一部として連通路開閉部材の開き時にこの排気口開閉部材を閉じ得るように構成したことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の建設機械の冷却装置。
【請求項12】
下流室における上流室との境界部分に排気口を、開閉自在な仕切り部材が開いた状態で少なくとも一部が同部材によって塞がれる状態で設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の建設機械の冷却装置。
【請求項13】
連通路開閉部材を作動させる連通路開閉機構と、エンジン冷却水の温度を検出するセンサと、上記連通路開閉機構の駆動源を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、上記センサによって検出されるエンジン冷却水温度が上流室の加温の必要がある値であるときに、連通路開閉機構の駆動源を連通路開き方向に作動させて加温操作を行わせるように構成したことを特徴とする請求項2〜12のいずれか1項に記載の建設機械の冷却装置。
【請求項14】
連通路開閉部材を作動させる連通路開閉機構と、排気口開閉部材を作動させる排気口開閉機構と、エンジン冷却水の温度を検出するセンサと、上記連通路開閉機構及び上記排気口開閉機構の駆動源を制御する制御手段とを備え、この制御手段は、上記センサによって検出されるエンジン冷却水温度が上流室の加温の必要がある値であるときに、連通路開閉機構の駆動源を連通路開き方向に作動させるとともに、排気口開閉機構の駆動源を排気口閉じ方向に作動させて加温操作を行わせるように構成したことを特徴とする請求項11または12記載の建設機械の冷却装置。
【請求項15】
制御手段は、検出されるエンジン冷却水温度が上流室が十分加温された温度として予め設定された加温終了温度に達したときに加温操作を停止させるように構成したことを特徴とする請求項13または14記載の建設機械の冷却装置。
【請求項16】
加温操作の開始から計時作動を行うタイマを備え、制御手段は、エンジン冷却水温度が加温終了温度に達する前に加温操作の開始から予め設定された時間が経過したときに加温操作を停止させるように構成したことを特徴とする請求項15記載の建設機械の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−30472(P2010−30472A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195439(P2008−195439)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】