説明

建設機械の透明板取付構造

【課題】透明板を容易に取り外せる建設機械の透明板取付構造を提供する
【解決手段】ガラス板101の内側(運転室側)でガラス板101をシールおよび挟持するシール材114やゴム板111と、ガラス取付面102との間にプレート115を設けるように構成した。これにより、ゴム板111やシール材114がガラス取付面102に固着するのを防止できるので、ガラス板101の交換の際に、ガラス板101をガラス取付面102から容易に取り外すことができる。したがって、ガラス板101の交換作業の時間短縮や工数削減が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の透明板取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の運転室の開口部分へ窓ガラスを固定するために、ゴム板で挟持したガラス板を押さえ板で押圧することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−306066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の透明板取付構造では、運転室の開口部分とガラス板との間のゴム板が運転室の開口部分およびガラス板と固着してしまい、ガラス板が取り外しにくくなることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明による建設機械の透明板取付構造は、建設機械の運転室の開口に透明板を固定する透明板取付構造において、開口の外側周囲の建設機械の外表面で、透明板の運転室側の面の周縁を挟持して、透明板を前記外表面に弾性的に支持する第1の弾性部材と、開口の外側周囲の建設機械の外表面で、透明板の外界側の面の周縁を挟持して、透明板を外表面に弾性的に支持する第2の弾性部材と、開口の外側周囲の建設機械の外表面と第1の弾性部材との間に挟持され、かつ開口の外側周囲の建設機械の外表面との固着を起こさない板状部材と、外表面に沿って配設され、第1の弾性部材、第2の弾性部材、および、板状部材を介して透明板を外表面に固定する押さえ部材と、押さえ部材を透明板の周縁の外側で外表面に固定する取付部材とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1の記載の建設機械の透明板取付構造において、板状部材と開口の外側周囲の建設機械の外表面との間には、硬化前には塗布可能であり硬化すると弾性を有する固体に変化するシール剤が塗布されていることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の建設機械の透明板取付構造において、透明板を介した建設機械の運転室の外側には、作業用の通路が設けられていることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建設機械の透明板取付構造において、透明板は、建設機械の運転室の前部の開口に対して、上端が下端よりも前方に位置する状態で固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、透明板を容易に取り外せる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜11を参照して、本発明による建設機械の透明板取付構造を油圧ショベルに対して適用した、一実施の形態を説明する。図1は、油圧ショベルの外観を示す図である。この油圧ショベル10は、走行体1と、走行体1上に旋回可能に設けられた旋回体2とを有する。油圧ショベル10は、いわゆる超大型機と呼ばれる大型の油圧ショベルである。
【0008】
旋回体2には、旋回体2の上部前方に設けられた運転室3と、旋回体2の中央からの後方側にかけて設けられたエンジン室4と、エンジン室4の下部後方に取り付けられたカウンタウエイト5と、旋回体2の前方に取り付けられ、ブーム11とアーム12とバケット13とからなる多関節型のフロント装置6とが設けられている。
【0009】
走行体1は、左右一対の履帯1aを備え、履帯1aは走行モータ1bにより駆動される。旋回体2は、その中心部に設けられた旋回モータ(不図示)により走行体1に対して旋回される。ブーム11、アーム12、バケット13は、それぞれブームシリンダ14、アームシリンダ15、バケットシリンダ16の伸縮により回動される。これらの各モータおよび各シリンダはエンジン室4に設けた油圧ポンプ(不図示)からの圧油によって駆動される。
【0010】
旋回体2の側面の歩行、および、旋回体2に設けられた油圧ショベル10の各機器をメンテナンスするために、旋回体2の下部側面には通路2aが設けられている。通路2aの左側側面であって、油圧ショベル10の旋回中心よりも後方には、旋回体2上と地上との間でオペレータや作業員が昇降するための昇降装置2bが設けられている。運転室3は、旋回体2上面、すなわち、通路2aが設けられたフロア面よりも高い位置に設けられている。そのため、通路2aと運転室3が設けられたフロア面との間でオペレータや作業員が昇降するための階段2cが、運転室3の後方に設けられている。
【0011】
運転室3の左側方および前方には、運転室3の出入口に連続して通路2dが設けられている。通路2dは、運転室3への出入りの他、後述する前方窓100のガラス板101の清掃や交換、不図示の作業用灯火(ライト)の電球交換などの作業の際に使用される。
【0012】
図2(a),(b)に示すように、運転室3は、上辺が底辺より前方に位置するように傾斜した前面31と、略鉛直である側面32とを備えている。前面31および側面32には、油圧ショベル10の前方および側方を視認するための前方窓100および側方窓20が設けられている。前方窓100は、前面31の略全体にわたって設けられた矩形の窓であり、略全体が開口した前面31に対してガラス板101が厚さ方向に押圧されて固定されている。前方窓100の構造については後に詳述する。
【0013】
側方窓20は、側面32に設けられた窓であり、H型ゴム21と、ガラス板22とを備えている。H型ゴム21は、その断面が略H型となるように、外周および内周にそれぞれ溝部が設けられた環状部材である。H型ゴム21の外周の溝部と側面32の開口部分のエッジとが嵌合し、内周の溝部とガラス板22の周端部とが嵌合することで、H型ゴム21は、側面32にガラス板22を固定する。ガラス板22を固定するためには、先に側面32の開口部分のエッジにH型ゴム21を嵌合させる必要がある。その後、側面32の開口部分に嵌合されたH型ゴム21の内周の溝部にガラス板22を嵌合させて、ガラス板22を側面32に固定する。
【0014】
−−−前方窓100の構造−−−
図3、4は、それぞれ図2(b)のIII−III断面およびIV−IV断面を示す図であり、ガラス板101の固定状態を示す図である。図5は、図3に示した断面図と同じ位置から見た、ガラス板101を取り付ける前のピラー33の近傍の断面図である。運転室3の前面31の左右端近傍には、ピラー33が設けられている。36は溶接ビードである。前面31の上部および下部近傍には、上部梁34および下部フレーム前端部35が設けられている(図4)。ガラス取付面102は、ピラー33、上部梁34および下部フレーム前端部35の前方で、矩形の開口部103の外側周囲を一定の幅で取り囲むように設けられた面(外表面)であり、同一平面内に存在している。
【0015】
図3,5に示すように、矩形形状であるガラス取付面102の外周近傍には、ねじ座121が設けられている。ねじ座121は、開口部103から所定距離だけ外側を取り囲むようにガラス取付面102に設けられた部材であり、ガラス取付面102を角型断面のアーチ状に囲う。ねじ座121の当接面122は、ガラス取付面102と平行な面であり、ガラス取付面102から所定距離Hだけ離れている。したがって、当接面122は、ガラス取付面102と平行な同一平面内に存在している。当接面122には、複数の穴123が設けられている。当接面122の背面に相当し、かつ前方から見たときに穴123と一致するねじ座121の内側には、ナット124が固設されている。ナット124には、後述する押さえ板131を固定するボルト133が螺合される。
【0016】
押さえ板131は、開口部103と略一致した開口を有する矩形板状部材を、たとえば矩形形状の四隅で分断した形状を呈する板状部材である。押さえ板131には複数の穴132が設けられている。穴132は、後述するようにガラス板101を固定する際に、ねじ座121に設けられた穴123と一致するように設けられている。
【0017】
ガラス板101は、矩形の開口部103よりも寸法が大きく、ねじ座121の内周部分の寸法よりも小さい矩形形状の透明板である。ガラス板101は、後述するゴム板111,112およびプレート115を介して、ガラス取付面102と押さえ板131との間で押圧されて挟持される。なお、ガラス板101の厚さはtgである。
【0018】
ゴム板111,112は、開口部103と略一致した開口を有し、それぞれが均一な厚さt1,t2である矩形板状の弾性部材である。上述のように、ゴム板111,112は、プレート115と押さえ板131との間でガラス板101の周縁を弾性的に挟持するための部材である。したがって、ゴム板111,112は、ガラス板101を挟持可能な適度な硬度を有する。なお、ゴム板111の厚さt1とゴム板112の厚さt2とは同一である必要はなく、それぞれで異なっていてもよい。
【0019】
ゴム板113は、ねじ座121の内周部分に内接する帯状の弾性部材であり、ガラス板101の周端部がねじ座121に直接接触することを防止する。シール材114は、略円形断面を有する軟質ゴム製の線状部材であり、その直径は、ゴム板111の厚さt1より大きい。シール材114はゴム板111,112よりも軟質であり、直径方向に容易に変形可能である。シール材114は、ガラス板101とプレート115との間に配設されて、運転室3の内部への雨水などの侵入を防止するシールとしての役割を果たす。
【0020】
プレート115は、開口部103と略一致した開口を有し、ガラス板101と略同じ大きさの矩形板状部材を、たとえば矩形形状の四隅で分断した形状を呈する板状部材である。プレート115は、ゴム板111やシール材114がガラス取付面102に固着するのを防止するために設けられる部材である。プレート115は、ガラス取付面102と、ゴム板111やシール材114との間で押圧されて挟持されるが、ガラス取付面102からの剥離が困難になるほどに強固に固着することがないように金属製の材料が使用されている。なお、プレート115の厚さはt0である。
【0021】
プレート115とガラス取付面102との間には、シール剤116が塗布されている。シール剤116は、硬化前には塗布可能であり硬化すると弾性を有する固体に変化する、いわゆる液状ガスケットや液体パッキンと呼ばれるものである。プレート115とガラス取付面102との間にシール剤116が塗布されることで、プレート115とガラス取付面102との間から運転室3の内部への雨水などの侵入が防止される。また、プレート115とガラス取付面102との間にシール剤116が塗布されることで、後述するように、ガラス板101を取り外す際に、プレート115をガラス取付面102から容易に剥がすことができる。
【0022】
−−−ガラス板101の取付方法−−−
前方窓100には、ガラス取付面102にガラス板101が次のようにして取り付けられる。まず、図5に示すように、何も取り付けられていないガラス取付面102に対して、図6に示すように、シール剤116を塗布するとともに、ねじ座121の内周部分に内接するようにゴム板113を接着剤などで仮止めする。
【0023】
また、図7に示すように、ガラス板101に対して、ゴム板111とシール材114とを接着剤などで仮止めし、さらにゴム板111やシール材114とプレート115とを接着剤などで仮止めする。なお、プレート115の端部同士が接触する部分には、組み立て後の隙間をなくすためにシール剤116と塗布しておく。
【0024】
次に、図9に示すように、下部フレーム前端部35の前方に設けられたねじ座121の上面にゴム板113を介して、ゴム板111やシール材114、プレート115が仮止めされたガラス板101を載置する。これにより、ガラス板101の重量をねじ座121で支持できる。ガラス板101は前方に倒れないように支えておく(図8,9)。このときのガラス板101の位置が固定位置となる。
【0025】
図10に示すように、固定位置に載置されたガラス板101の前面を、ゴム板112を貼り付けた押さえ板131で押さえるとともに、ボルト133を用いて押さえ板131を当接面122へ固定する。ここで、ガラス取付面102から当接面122間での高さはHであるが、この高さHは、プレート115、ゴム板111,112、およびガラス板101のそれぞれの厚さt0,t1,t2,tgの合計よりも小さくなるように構成されている。したがって、図3に示すように、押さえ板131が当接面122に密着するように固定されると、ゴム板111,112は、ガラス取付面102(プレート115)と押さえ板131との間で押圧されて厚さ方向に撓む。これにより、ガラス板101は、その外周近傍を全周にわたってゴム板111,112の弾性力で挟持されて固定される。
【0026】
すなわち、ガラス板101の厚さ方向の移動は、ゴム板111,112から受ける厚さ方向の面圧によって弾性的に規制される。また、ガラス板101の面に平行な方向の移動は、ガラス板101とゴム板111,112との摩擦力によって弾性的に規制される。さらに、ガラス板101の面に平行な方向の移動は、ねじ座121の内周部分に内接するゴム板113によっても弾性的に規制される。
【0027】
図11(a),(b)に、H型ゴムを使用した従来の窓枠構造と、本実施の形態の透明板取付構造とを比較した図を示す。図11(a)に示すように、H型ゴム311によってガラス板301を固定するためには、H型ゴム311の外周側の溝311aが前面31の開口部303と嵌合する嵌合しろD1が必要であるため、開口部303を嵌合しろD1の分だけ本実施の形態の開口部103より内側に突出させる必要がある。また、開口部303に嵌合されたH型ゴム311の内側端部311bは、開口部303からさらに距離D2だけ内側に突出して視界を遮る。これに対して、本実施の形態の透明板取付構造では、従来の窓枠構造よりも可視部を拡大でき、その拡大幅は1辺につきD=D1+D2である。したがって、左右方向および上下方向の可視部の拡大幅は2Dとなる。なお、従来の窓枠構造におけるガラス板301の固定順序は、上述した側方窓20の場合と同じである。
【0028】
−−−ガラス板101の取り外しについて−−−
油圧ショベル10を使用していると、飛び石などによってガラス板101が次第に傷ついていく。そのため、ガラス板101を適宜交換する必要があるが、ガラス板101は次のようにして取り外される。まず、ガラス板101が前方に倒れないように適宜支えた後、押さえ板131を固定するボルト133を取り外す。これにより、押さえ板131およびゴム板112を取り外すことができる。
【0029】
しかし、上述したようにシール材114やゴム板111がガラス板101およびプレート115に接着剤で接着されているため、ガラス板101とプレート115を分離することは困難である。そこで、ガラス取付面102とプレート115との間に、たとえばドライバのような工具を差し込んで、プレート115をガラス取付面102から浮かしながら、プレート115をガラス取付面102から剥がす。上述したように、ガラス取付面102とプレート115との間にはシール剤116が塗布されているが、シール剤116には接着剤のような接着力はないため、プレート115とガラス取付面102との間にドライバのような工具を差し込むことで、プレート115をガラス取付面102から容易に剥がすことができる。このようにして、シール材114やゴム板111、ガラス板101とともにガラス取付面102からプレート115をガラス取付面102から取り外す。
【0030】
プレート115を取り外した後のガラス取付面102にはシール剤116が残っているので、残ったシール剤116をこすり落とすなどして、ガラス取付面102を清浄にする。その後、新しいガラス板101を上述した手順で再び取り付ける。
【0031】
上述した建設機械の透明板取付構造では、次の作用効果を奏する。
(1) ガラス板101の内側(運転室側)でガラス板101をシールおよび挟持するシール材114やゴム板111と、ガラス取付面102との間にプレート115を設けるように構成した。これにより、ゴム板111やシール材114がガラス取付面102に固着するのを防止できるので、ガラス板101の交換の際に、ガラス板101をガラス取付面102から容易に取り外すことができる。したがって、ガラス板101の交換作業の時間短縮や工数削減が実現できる。
【0032】
(2) ガラス取付面102とプレート115との間にシール剤116を塗布したので、プレート115とガラス取付面102との間から運転室3の内部への雨水などの侵入を防止できる。また、ガラス板101を取り外す際に、プレート115をガラス取付面102から容易に剥がすことができるので、ガラス板101の交換作業を阻害しない。さらに、プレート115やガラス取付面102にうねりがあっても、シール剤116が隙間へ浸透し、プレート115のばたつきを防止できる。
【0033】
(3) 油圧ショベル10は、いわゆる超大型機と呼ばれる大型の油圧ショベルであり、運転室3の前面にも通路2dが設けられているので、ガラス板101の交換作業がし易い。また、運転室3は、上辺が底辺より前方に位置するように傾斜しているので、下方の視認性が良好である。特に超大型機では、運転室3の地上高が高いため、効果的である。
【0034】
(4) ガラス板101をゴム板111,112で厚さ方向に挟持して固定するように構成した。これにより、H型ゴムを使用せずにガラス板101を固定できるので、上述のように、透明板取付構造の可視部を拡大して視界を拡大でき、安全性および利便性を向上できる。
【0035】
(5) H型ゴムを使用していないので、運転室3から前方を見たときに、H型ゴムが見えることがなく、見栄えがよい。
【0036】
(6) H型ゴム311による従来の窓枠構造では、開口部303へ嵌合されたH型ゴム311に対してガラス板301を取付可能とするため、H型ゴム311の強度を下げざるを得ない。また、H型ゴム311自身の強度によってガラス板301を開口部303で保持する構造である。これに対して本実施の形態の透明板取付構造では、ガラス取付面102(プレート115)と押さえ板131との間でゴム板111,112を介してガラス板101の周縁を弾性的に挟持するので、ガラス板101の固定強度は、主にガラス取付面102および押さえ板131の強度に依存する。また、ガラス板101に接触するゴム板111〜113の受圧面積を多くとることができるので、ゴム板111〜113にかかる応力を低減できる。このため、本実施の形態の透明板取付構造は、従来の窓枠構造よりガラス板101の固定強度アップが容易である。したがって、大型のガラス板であっても確実に固定できるので、建設機械の大型化に寄与できる。
【0037】
(7) 上述のように、本実施の形態の透明板取付構造は、従来の窓枠構造よりガラス板101の固定強度を高くできるので、ガラス板101の振動を効率的に抑止できる。このため、運転室3の騒音レベルや振動レベルを低減できるので、運転室を快適にできる。
【0038】
(8) H型ゴム311による従来の窓枠構造では、H型ゴム311が嵌合された開口部303に対してガラス板301を取り付けるため、ガラス板301が大型化すると、H型ゴム311の溝部へガラス板301を嵌合させる作業が非常に困難となる。これに対して本実施の形態の透明板取付構造では、ゴム板111〜113などを仮止めするとともに、図9に示すように、下部フレーム前端部35の前方に設けられたねじ座121の上面にゴム板113を介してガラス板101を載置することでガラス板101の重量を支持できるので、大型のガラス板であっても容易に取り付けできる。したがって、組み立ての面でも透明板取付構造の大型化が容易となり、建設機械の大型化に容易に対応できる。
【0039】
(9) 従来の窓枠構造では、H型ゴム311の構造上、溝部に挟持できるガラス板の厚さは制限される。これに対して本実施の形態の透明板取付構造では、ねじ座121の当接面122の高さを変えることで、ガラス板の厚肉化に容易に対応できる。たとえば、防弾ガラスのように飛来物に対する強度を高めた複層ガラスなども取付可能である。
【0040】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、プレート115は金属製であるが、耐候性があり、固化前のシール剤116が染み込まなければ樹脂製であってもよい。
【0041】
(2) 上述の説明では、プレート115や押さえ板131は、開口を有する矩形板状部材を、矩形形状の四隅で分断した形状を呈する板状部材であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、プレート115や押さえ板131は、開口を有する矩形板状部材を、矩形形状の各辺の略中央で分断したL字形状を呈する板状部材であってもよい。すなわち、プレート115や押さえ板131の分割位置、分割個数は特に限定されない。また、プレート115や押さえ板131がそれぞれ一体ものであってもよい。
【0042】
(3) 上述の説明では、ゴム板112およびねじ座121に固定された押さえ板131の内側の開口部分の大きさが開口部103の大きさと略等しいが、本発明はこれに限定されない。たとえば、図12に示すように、運転室3の室外に向かって見たときに外側へ広がるようにゴム板212およびねじ座121に固定された押さえ板231の内側の開口部分を斜めにカットした傾斜面212a,231aを形成するようにしてもよい。こうすることで、運転室3からの視界をさらに広げることができる。
【0043】
(4) 上述の説明では、下部フレーム前端部35の前方の構造は、上部梁34およびピラー33の近傍の構造と同様であるが、本発明はこれに限定されない。たとえば、図13に示すように、下部フレーム前端部35の前方のねじ座121の上部に受け部121aを設け、ガラス板101の下部を支持可能とすることで、組み立て工程で、下部フレーム前端部35の前方のねじ座121からガラス板101が滑り落ちるのを防止するようにしてもよい。なお、ガラス板101が下部フレーム前端部35の前方のねじ座121から水平方向に移動して滑り落ちることを防止できれば、受け部121aの取付位置、取り付ける相手の部材、取付方法などは上述の説明に限定されない。また、ガラス板101の取付作業前に上述のねじ座121aと同様の機能を有する板部材をねじ座121に取り付けて固定し、ガラス板101の取付作業が終了した後、この板部材をねじ座121から取り外してもよい。
【0044】
(5) 上述の説明では、シール材114を設けているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ゴム板111の形状、材質よってゴム板111にシール機能を持たせることもできるので、シール材114を省略することもできる。
【0045】
(6) 上述の説明では、ゴム板111,112は、開口部103と略一致した開口を有する矩形板状の弾性部材、すなわち、一体成型された物であったが、本発明はこれに限定されない。たとえば、所定の長さの板状部材を適宜継ぎ足して使用してもよい。またゴム板113は、ねじ座121の内周部分に配設される帯状の弾性部材であれば、リング状に一体成型されている物であってもよく、少なくとも1本以上の帯状部材の端部をつなぎ合わせた物であってもよい。また、ガラス板101の周端部に巻き付けられていてもよい。
【0046】
(7) 上述の説明では、シール材114はゴム板111の外側へ配設されていたが本発明はこれに限定されず、シール材114をゴム板111の内側へ配設してもよい。
(8) 上述の説明では、前方窓100の形状は矩形であったが、本発明はこれに限定されない。矩形以外の多角形であってもよく、円形などのように角がない形状であってもよく、これらを組み合わせた形状であってもよい。
【0047】
(9) 上述の説明では、ナット124はあらかじめねじ座121に固設されているが、押さえ板131のボルト止めが容易であれば、固設されていなくてもよい。また、ねじ座121の形状は、外表面に向かう力が与えられた押さえ板131を外表面に対して所定の位置で固定できれば上述した説明に限定されない。また、ボルト133およびナット124に代えて、クランプやいわゆるパッチン錠など、他の方法で押さえ板131をねじ座121に取り付けるようにしてもよい。
(10) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0048】
上述の実施の形態およびその変形例において、たとえば、第1の弾性部材はゴム板111に、第2の弾性部材はゴム板112に、板状部材はプレート115に、押さえ部材は押さえ板131に、取付部材はねじ座121に、シール剤はシール剤116に、作業用の通路は通路2dにそれぞれ対応する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による建設機械の透明板取付構造を適用した油圧ショベル10の外観を示す図である。
【図2】運転室3の外観を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【図3】図2(b)のIII−III断面図である。
【図4】図2(b)のIV−IV断面図である。
【図5】図3に示した断面図と同じ位置から見た、ガラス板101を取り付ける前のピラー33の近傍の断面図である。
【図6】ガラス取付面102にガラス板101を取り付ける手順を示す図である。
【図7】ガラス取付面102にガラス板101を取り付ける手順を示す図である。
【図8】ガラス取付面102にガラス板101を取り付ける手順を示す図である。
【図9】ガラス取付面102にガラス板101を取り付ける手順を側面から見た断面図である。
【図10】ガラス取付面102にガラス板101を取り付ける手順を示す図である。
【図11】H型ゴムを使用した従来の窓枠構造と、本実施の形態の透明板取付構造とを比較した図であり、(a)は、従来の窓枠構造を示す図であり、(b)は、本実施の形態の透明板取付構造を示す図である。
【図12】変形例を示す図である。
【図13】変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
3 運転室 10 油圧ショベル
20 側方窓 21、311 H型ゴム
22、101,301 ガラス板 31 前面
32 側面 33 ピラー
34 上部梁 35 下部フレーム前端部
100 前方窓 102 ガラス取付面(外表面)
103、303 開口部 111〜113 ゴム板
114 シール材 115 プレート
116 シール剤 121 ねじ座
121a 受け部 122 当接面
124 ナット 131 押さえ板
133 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の運転室の開口に透明板を固定する透明板取付構造において、
前記開口の外側周囲の建設機械の外表面で、前記透明板の前記運転室側の面の周縁を挟持して、前記透明板を前記外表面に弾性的に支持する第1の弾性部材と、
前記開口の外側周囲の建設機械の外表面で、前記透明板の外界側の面の周縁を挟持して、前記透明板を前記外表面に弾性的に支持する第2の弾性部材と、
前記開口の外側周囲の建設機械の外表面と前記第1の弾性部材との間に挟持され、かつ前記開口の外側周囲の建設機械の外表面との固着を起こさない板状部材と、
前記外表面に沿って配設され、前記第1の弾性部材、前記第2の弾性部材、および、前記板状部材を介して前記透明板を前記外表面に固定する押さえ部材と、
前記押さえ部材を前記透明板の周縁の外側で前記外表面に固定する取付部材とを備えることを特徴とする建設機械の透明板取付構造。
【請求項2】
請求項1の記載の建設機械の透明板取付構造において、
前記板状部材と前記開口の外側周囲の建設機械の外表面との間には、硬化前には塗布可能であり硬化すると弾性を有する固体に変化するシール剤が塗布されていることを特徴とする建設機械の透明板取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建設機械の透明板取付構造において、
前記透明板を介した建設機械の運転室の外側には、作業用の通路が設けられていることを特徴とする建設機械の透明板取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の建設機械の透明板取付構造において、
前記透明板は、建設機械の運転室の前部の開口に対して、上端が下端よりも前方に位置する状態で固定されていることを特徴とする建設機械の透明板取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−290489(P2008−290489A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135465(P2007−135465)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】