説明

建設機械の遠隔無線操縦システム

【課題】 無線LANによる中継で遠距離からの遠隔操作を可能とし、かつ、無線区間のエラー対策がなされた信号を用いた無線LANでの中継を実現すること。
【解決手段】 操作機から、機械操作指令データに誤り検出符号データを付加した信号を、操作信号/LAN信号変換手段へ入力して、インターネットプロトコルに対応する信号に変換し、この信号をLAN集線手段で多重化して、無線LAN通信手段によって、基地ステーションから操作中継ステーションに送信する。操作中継ステーションでは、受信した信号を分配してLAN信号/操作信号変換手段に与え、LAN信号/操作信号変換手段からの信号が出力される無線送信手段で、入力されてきた信号を高周波信号に変換した操作指令を、建設機械に対して特定小電力無線により送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の自走式の建設機械や該建設機械に搭載された機器を、無線により遠隔操作(遠隔操縦)する建設機械の遠隔無線操縦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害復旧現場、ダム工事現場、火山活動が激しい現場などといった、人が立ち入ることが危険な作業現場においては、無人の建設機械を安全かつ効率よく運用し、施工や監視活動が行われることが望まれている。このような危険な作業現場で用いるための建設機械としては、400MHzの特定小電力無線を利用して、遠隔から操作(操縦)できる遠隔操作型の建設機械が製品化されている。
【0003】
そして、建設機械を遠隔地から効率よく制御するために、建設機械に搭載した監視用のカメラの撮影映像を無線伝送する技術や、カメラの向きやズーム倍率を上記の特定小電力無線を利用して遠隔地から操作する技術と、上記の遠隔操作型の建設機械の遠隔操作技術とを組み合わせて、遠隔無線操縦システムを構築し、危険な作業現場での施工に運用されている。
【0004】
図5は、従来の建設機械の遠隔無線操縦システムの構成例を示す図である。図5において、Swは、各種の遠隔操作型の建設機械が稼動する作業現場、Svrは、作業現場Swまたは作業現場Swに近い場所に設けられた無人の映像中継ステーション、Sbは、作業現場Swと特定小電力無線による交信が可能な場所に設けられ、複数の操作機(無線操作機)を操作する複数のオペレータが駐在する基地ステーションであり、基地ステーションSbと映像中継ステーションSvrとは、両者の間に映像伝送の障害となるものがない、もしくは映像伝送の障害となるものが可及的に少なくなるような、配置関係をとるように設定されている。
【0005】
100、131、133は、油圧ショベル、ブルドーザ、クローラダンプなどといった自走式の建設機械であり、102’、132’、134’は、建設機械100、131、133にそれぞれ1対1に対応する操作機(無線操作機)である。各建設機械100、131、133は、対応する操作機102’、132’、134’から送信される制御用電波により、それぞれ遠隔操作(遠隔操縦)される。また、建設機械100には、監視用のカメラ106がカメラの撮影方向を上下左右に変更可能な電動雲台103を介して搭載されている(ここでは、建設機械100を代表させてカメラを搭載させた例を示しているが、他の建設機械にも必要に応じて搭載される)。カメラ106の方向およびカメラ106のズーム倍率の制御は、操作機(無線操作機)105’から送信される制御用電波を受信する無線受信制御手段104からの指令に応じて、電動雲台103を駆動制御し、またカメラ106のズーム制御部を駆動制御することによって行われる。
【0006】
建設機械100のカメラ106で撮影した映像は、映像用無線機107から送信され、映像中継ステーションSvrに設置した映像用無線機108で一旦受信される。映像用無線機108は指向性の高いアンテナを有しているため、映像用無線機108はカメラ109と共に電動雲台110上に固定されており、映像の受信に先立ち、カメラ109で撮影した映像を参照しながら、操作機(無線操作機)122の操作により、映像用無線機108のアンテナの方向を建設機械100の映像用無線機107に向けるようになっている。
【0007】
また、映像中継ステーションSvrには、各建設機械100、131、133の様子や作業現場Swの様子を監視するために、電動雲台112上に固定されたカメラ111が設置されており、このカメラ111により、各建設機械100、131、133の様子や作業現場Swの様子が撮影可能となっている。
【0008】
さらに、映像中継ステーションSvrには、映像を基地ステーションSbに送信するための映像用無線機113、116が設置されており、映像用無線機113、116はそれぞれカメラ114、117と共に、電動雲台115、118に固定されている。この映像用無線機113、116からは、映像中継ステーションSvrの各カメラ109、111、114、117で撮影した映像、映像用無線機108で受信した映像の中から、映像選択器140で選択された2つの映像が送信される。映像切替器140は、操作機(無線操作機)120’からの送信映像指定を受ける無線受信機119により制御されて、送信する映像の切り替えを行う。映像用無線機113、116から送信された映像は、基地ステーションSbに設置された映像用無線機123、126で受信され、映像切替器141を介してモニタ129、130上に表示される。
【0009】
映像中継ステーションSvrのカメラ109、111、114、117の方向およびカメラ109、111、114、117のズーム倍率の制御は、操作機(無線操作機)122’から送信される制御用電波を受信する無線受信制御手段121からの指令に応じて、電動雲台110、112、115、118を駆動制御し、カメラ109、111、114、117のズーム制御部を駆動制御することによって行われる。また、3つの電動雲台110、115、118を駆動制御することによって、映像中継ステーションSvrの映像用無線機108の指向性の高いアンテナを、建設機械100の映像用無線機107の指向性の高いアンテナに対向させ、映像用無線機113、116の指向性の高いアンテナを、基地ステーションSbの映像用無線機123、126の指向性の高いアンテナにそれぞれ対向させるようになっている。なお、基地ステーションSbの映像用無線機123、126も、方向調整のためにカメラ124、127と共に、電動雲台125、128上に固定されており、基地ステーションSbの映像用無線機123、126側においても、カメラの方向(アンテナの方向)を調整可能になっている。
【0010】
ところで、上述した図5の従来の建設機械の遠隔無線操縦システムにおいては、映像信号を除いた操作用の制御信号の無線伝送には、400MHzの特定小電力無線を利用しており、この特定小電力無線の通信可能距離は最大でも300m程度である。したがって、火山活動が激しい作業現場などのように、できるだけ遠距離から無線による遠隔操作を行いたいという要求を満たすことができない。また、さまざまな無線機器を使用していることから、これらの無線機器をなるべくまとめて扱いたいという要求もある。
【0011】
そこで、基地局において、操作機からの操作指令であるシリアル信号をLAN伝送用のインターネットプロトコル(TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)形式)に変換して、LANの集線装置(ハブ)により複数の操作機による操作指令を多重化し、インターネットプロトコルに対応する操作指令を、1つの無線LANユニットから送信するようにして、この無線LANによる送信信号を、現場を遠隔制御により無人走行する車両に設けた中継局の無線LANユニットで受信して、中継局のLAN集線装置で分配したインターネットプロトコルに対応する操作指令を、特定小電力無線による操作指令に変換して、各作業機械に送信するようにしたシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−61192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、操作指令のシリアル信号をLAN伝送用のインターネットプロトコル(TCP/IP)に変換するだけでは、無線による遠隔操作の制御が確実に動作するかは不確かであり、動作検証と不具合発生時の対策に時間がかかる場合がある。さらに、操作機によっては、操作指令のシリアル信号を出力しない機器があるため、これらの操作機については、操作機の新規開発が必要となるため、無線通信可能な距離を延ばしたいというニーズには迅速に対応できないことになる。
これについて、以下に説明する。
【0013】
図6は、従来の特定小電力無線を利用した建設機械の遠隔無線操縦システムの概要を示す図で、上段が送信側、下段が受信側である。送信側(操作機側)では、操作機のレバーやスイッチ200a〜200dのレバー角度状態やON/OFF状態をデータとして読み取り(201段の回路)、読み込んだデータが規定値内であれば、機械操作指令(シリアル信号)を生成する(202段の回路)。生成した機械操作指令は、無線通信区間でのノイズ混入を検出する目的で、機械操作指令にエラー検出のためのデータ(誤り検出符号)を付加する(203段の回路)。機械操作指令にエラー検出データを付加したシリアル信号は、操作機の高周波回路入力に好適な信号変調が施され(204段の回路)、最後に、高周波信号に変換されて(205段の回路)、アンテナ206より電波として送信される。
【0014】
受信側(建設機械側)では、アンテナ210で受信した電波を低周波信号に変換し(211段の回路)、この低周波信号を復調してシリアル信号に変換する(212段の回路)。受信してシリアル信号に戻されたデータは、エラー検出のために付加したデータを用いて通信エラーが発生しているかを検出し、エラーがなければ次段に機械操作指令のデータを出力する(213段の回路)。次に、機械操作指令が機械操作が可能な規定値内にあるかチェックして、問題がなければ次段に機械操作指令のデータを出力し(214段の回路)、続いて、機械操作指令に基づき各アクチュエータにアクチュエータ操作指令を出力し(215の回路)、これにより各アクチュエータ216a〜216dが動作するようになっている。なお、図示していないが、受信側では、データエラーを検出した場合、適切なエラー処理がなされるようになっている(エラー処理の内容は、操作機によって異なる)。
【0015】
ところで、上記の操作機(無線操作機)から操作指令であるシリアル信号は、操作機の仕様により、図4のAまたはBまたはCのいずれか1つから出力されるように限定される。したがって、シリアル信号を無線LAN用のインターネットプロトコルに対応する信号に変換して、遠隔操作を行う場合には、Aから出力される信号は受信側のA’に入れ、Bから出力される信号は受信側のB’に入れ、Cから出力される信号は受信側のC’に入れ、Dから出力される信号は受信側のD’に入れることで、遠隔操作を実現できる。しかしながら、無線区間で発生する通信エラーを考慮した遠隔操作が行えるのは、送信側のCと受信側のC’、または送信側のDと受信側のD’を無線LANで接続した場合のみである。このため、遠隔操作用の操作機のシリアル出力がAまたはBである場合には、遠隔操作の不具合が発生する可能性があるため、十分な事前検討が必要であり、危険地域に建設機械が進入してから不具合が確認された場合の対策が困難になるという問題がある。前記した特許文献1に示された技術では、このような観点での配慮がなされていない。
【0016】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、無線LANによる中継で遠距離からの安定した遠隔操作を可能とするとともに、無線区間のエラー対策がなされた信号を用いた無線LANでの中継を実現することで、遠隔操作の信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記した目的を達成するため、操作場所から離れた場所で遠隔操作される2台以上の自走式の建設機械を動作させるための遠隔無線操縦システム、または、操作場所から離れた場所で遠隔操作される1台以上の自走式の建設機械および該建設機械に搭載されて遠隔操作される1つ以上の被操作機器を動作させるための遠隔無線操作システムにおいて、
前記操作場所である基地ステーションには、オペレータによって操作される前記建設機械に1対1に対応する操作機またはオペレータによって操作される前記被操作機器に1対1に対応する操作機と、該各操作機から出力される操作信号をインターネットプロトコルに対応する信号にそれぞれ変換する複数の操作信号/LAN信号変換手段と、該各操作信号/LAN信号変換手段からそれぞれ出力されるインターネットプロトコルに対応する操作信号を多重化するLAN集線手段(HUB)と、該LAN集線手段から多重化されて出力されるインターネットプロトコルに対応する操作信号を無線LANで送信する無線LAN通信手段とを、設け、
前記基地ステーションと所定距離をおいて設置される操作中継ステーションには、前記基地ステーションの前記無線LAN通信手段からの送信信号を受信する無線LAN通信手段と、該無線LAN通信手段で受信したインターネットプロトコルに対応する操作信号が入力され、入力された信号を分配するLAN集線手段(HUB)と、該LAN集線手段で分配されたインターネットプロトコルに対応する操作信号を、元の操作信号に変換する複数のLAN信号/操作信号変換手段と、該各LAN信号/操作信号変換手段から出力される操作信号に基づき、対応する前記建設機械または前記被操作機器にそれぞれ特定小電力無線方式で操作指令を送信する複数の無線送信機とを、設けた、
構成をとる。
さらに、前記操作信号/LAN信号変換手段に入力される前記操作信号は、前記操作機をオペレータが操作したことに基づく機械操作指令データに誤り検出符号データを付加した信号、あるいは、前記操作機をオペレータが操作したことに基づく機械操作指令データに誤り検出符号データを付加した信号を高周波信号に変換して無線で送信し、受信した高周波信号を低周波信号に変換した信号とされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作中継ステーションに設置する再送信のための無線送信機として、音声信号入力に対応した市販の送信用無線機が採用できるため、無線送信機の新規開発・検証を行う必要がなく、短期間で安価な遠隔無線操作システムが構築できる。また、無線LAN通信を行うシステムとすることにより、簡易なシステムとすることができ、かつ、インターネットプロトコルに適合した機器を自由に接続できることから、システムの機能付加が容易となる。
さらに、本発明では、無線LAN通信であっても、従来の無線操作機で行われていたのと同様の、機械操作指令データに誤り検出符号データを付加した信号を、操作信号/LAN信号変換手段への入力信号としているので、通信エラー対策を施した遠距離の無線操作システムを実現することができ、以って、遠隔操作の不具合発生を可及的に低減できる。また、通信エラー処理のための新規開発・検証を行う必要がないので、安全性に優れたシステムを、短期間で安価に構築できる。
さらに、基地ステーションにおいて、操作機として従来からの無線操作機からの無線出力を無線受信機で受信し、これをインターネットプロトコルに対応する信号に変換するようにした構成をとると、従来の無線操作機に何らの変更を加えることなく(適宜の信号処理段から信号を取り出すための端子や信号線を設けることを行わず)、そのまま用いることができ、しかも、ワイヤレスで無線LANに接続できることから、基地ステーションでの操作機(無線操作機)のレイアウトの自由度が高まる。また、無線LANに接続するための、無線操作機の無線出力を受信する無線受信機は、市販の音声信号受信機でよいため、短期間で安価なシステムが構築できる。また、基地ステーションと作業現場とで同一の周波数が使用できるため、電波の有効活用が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る建設機械の遠隔無線操縦システムの構成を示す図である。図1において、Swは、各種の遠隔操作型の建設機械が稼動する作業現場、Srは、作業現場Swまたは作業現場Swに近い場所に固定的に設けられた無人の操作中継ステーション、Sbは、操作中継ステーションSrと無線LAN通信による交信が可能な距離範囲内に設けられ、複数の操作機を操作する複数のオペレータが駐在する基地ステーションであり、基地ステーションSbと操作中継ステーションSrとは、両者間での無線LAN通信が安定して行える固定的な配置関係となるように設定されており、かつ、両者の間に映像伝送の障害となるものがない、もしくは映像伝送の障害となるものが可及的に少なくなるような、配置関係をとるように設定されている。なお、図1において、図5に示した構成要素と同一のものには同一符号を付してある。
【0020】
100、131、133は、油圧ショベル、ブルドーザ、クローラダンプなどといった自走式の建設機械、106は、撮影方向を上下左右に変更可能な電動雲台103を介して、建設機械100に搭載された監視用のカメラであり(ここでは、建設機械100を代表させてカメラを搭載させた例を示しているが、他の建設機械にも必要に応じて搭載される)、104は、カメラ106の方向およびカメラ106のズーム倍率の制御指令を受けるために建設機械100に搭載された無線受信制御手段、107は、カメラ106で撮影した映像を送信するために建設機械100に搭載された映像用無線機である。各建設機械100、131、133は、操作中継ステーションSrから送信される制御用電波により、それぞれ遠隔操作(遠隔操縦)され、カメラ106の方向およびカメラ106のズーム倍率の制御は、操作中継ステーションSrから送信される制御用電波を受信する無線受信制御手段104からの指令に応じて、電動雲台103を駆動制御し、あるいはカメラ106のズーム制御部を駆動制御することによって行われる。なお、図示していないが、各建設機械100、131、133および無線受信制御手段104には、操作中継ステーションSrから400MHzの特定小電力無線によって送信されてくる制御電波を受信して各部を制御するため、図6の受信側の構成と同一の構成が備えられている。
【0021】
建設機械100のカメラ106で撮影した映像は、映像用無線機107から送信され、操作中継ステーションSrに設置した映像用無線機108で一旦受信される。映像用無線機108は指向性の高いアンテナを有しているため、映像用無線機108はカメラ109と共に電動雲台110上に固定されており、映像の受信に先立ち、カメラ109で撮影した映像を参照しながら、基地ステーションSbからの遠隔操作により、映像用無線機108のアンテナの方向を建設機械100の映像用無線機107に向けるようになっている。また、操作中継ステーションSrには、各建設機械100、131、133の様子や作業現場Swの様子を監視するために、電動雲台112上に固定されたカメラ111が設置されており、このカメラ111により、各建設機械100、131、133の様子や作業現場Swの様子が撮影可能となっている。
【0022】
さらに、操作中継ステーションSrには、映像を基地ステーションSbに送信するための映像用無線機113、116が設置されており、映像用無線機113、116はそれぞれカメラ114、117と共に、電動雲台115、118に固定されている。この映像用無線機113、116からは、操作中継ステーションSrの各カメラ109、111、114、117で撮影した映像、映像用無線機108で受信した映像の中から、映像選択器140で選択された2つの映像が送信される。映像切替器140は、基地ステーションSbからの遠隔操作により、送信映像指定を受ける制御手段143により制御されて、送信する映像の切り替えを行う。映像用無線機113、116から送信された映像は、基地ステーションSbに設置された映像用無線機123、126で受信され、映像切替器141を介してモニタ129、130上に表示される。
【0023】
操作中継ステーションSrのカメラ109、111、114、117の方向およびカメラ109、111、114、117のズーム倍率の制御は、基地ステーションSbからの遠隔操作による制御指令を受ける制御手段144からの指令に応じて、電動雲台110、112、115、118を駆動制御し、カメラ109、111、114、117のズーム制御部を駆動制御することによって行われる。また、3つの電動雲台110、115、118を駆動制御することによって、操作中継ステーションSrの映像用無線機108の指向性の高いアンテナを、建設機械100の映像用無線機107の指向性の高いアンテナに対向させ、映像用無線機113、116の指向性の高いアンテナを、基地ステーションSbの映像用無線機123、126の指向性の高いアンテナにそれぞれ対向させるようになっている。なお、基地ステーションSbの映像用無線機123、126も、方向調整のためにカメラ124、127と共に、電動雲台125、128上に固定されており、基地ステーションSbの映像用無線機123、126側においても、カメラの方向(アンテナの方向)を調整可能になっている。
【0024】
基地ステーションSbには、建設機械100、131、133にそれぞれ1対1に対応し各建設機械を遠隔操作するための操作機102、132、134と、建設機械100に搭載されたカメラ106の撮影方向やズーム倍率を遠隔操作するための操作機105と、操作中継ステーションSrから基地ステーションSbへ送信される映像の切り替えを遠隔操作するための操作機120と、操作中継ステーションSrの各カメラの撮影方向・ズーム倍率および各映像用無線機のアンテナの向きを遠隔操作するための操作機122とが、設けられている。各操作機122、132、134、105、102、120からは、操作機をオペレータが操作したことに基づく機械操作指令データに誤り検出符号データを付加したシリアル信号を変調した信号(図6のDに相当する信号)がそれぞれ出力され、各操作機122、132、134、105、102、120の出力信号は、信号線を通じて、各操作機に1対1に対応する操作信号/LAN信号変換手段(ここでは音声信号/LAN信号変換手段)150a〜150fにそれぞれ入力される。各操作信号/LAN信号変換手段150a〜150fは、入力されてきたシリアル変調信号である操作信号をインターネットプロトコルに対応する信号に変換し(LANの信号形式に変換し)、各操作信号/LAN信号変換手段150a〜150fの出力は、LAN集線手段(HUB)151に入力される。LAN集線手段(HUB)151では、インターネットプロトコルに対応する操作信号を多重化し、この多重化された信号は、無線LAN通信手段152から、操作中継ステーションSrに送信される。なお、各操作機122、132、134、105、102、120からは、操作機をオペレータが操作したことに基づく機械操作指令データに誤り検出符号データを付加したシリアル信号(図6のCに相当する信号)を、各操作信号/LAN信号変換手段150a〜150fに出力するようにしてもよく、このようにした場合も、通信エラー対策を施した遠距離の無線操作システムを実現することができる。
【0025】
操作中継ステーションSrには、基地ステーションSbの無線LAN通信手段152からの送信信号(無線LAN信号)を受信する無線LAN通信手段153が設けられていて、無線LAN通信手段153は、無線LAN通信手段152からのインターネットプロトコルに対応する多重化された操作信号を受信して、これをLAN集線手段(HUB)154に出力する。LAN集線手段154では、無線LAN通信手段153から受け取った多重化された信号を識別して、識別結果に基づき、インターネットプロトコルに対応する操作信号を、それぞれ対応するLAN信号/操作信号変換手段(ここではLAN信号/音声信号変換手段)150a〜150fに分配・出力する。ここで、LAN信号/操作信号変換手段155d〜155fは操作機102、132、134にそれぞれ対応し、LAN信号/操作信号変換手段155cは操作機105に対応し、LAN信号/操作信号変換手段155bは操作機120に対応し、LAN信号/操作信号変換手段155aは操作機122に対応する。
【0026】
各LAN信号/操作信号変換手段155a〜155fは、インターネットプロトコルに対応する操作信号を、元の操作信号に変換し(図6のDに相当する信号に戻し)、LAN信号/操作信号変換手段155c〜155fの出力は無線送信機156a〜156dに入力され、LAN信号/操作信号変換手段155bの出力は制御手段143に入力され、LAN信号/操作信号変換手段155aの出力は制御手段144に入力される。
【0027】
無線送信機156bからは、元の操作信号に戻したシリアル変調信号を、高周波信号に変換した信号(図6のアンテナ206からの出力に相当)が、無線出力として建設機械100に送信され、建設機械100はこれを受信することにより動作する。この場合、建設機械100側では、図6のアンテナ210への無線入力に相当する操作指令が入力されるため、図6を用いて先に説明したように、従来の無線操作機を用いて遠隔操作を行った場合と同様に、通信エラー検出を行った後マシンの制御を行うため、通信距離延長のための中継無線通信に無線LANを用いる構成であっても、通信エラーによる遠隔操作の不具合の発生を確実に防止することができるようになっている。同様に、無線送信機156c、156dからは、元の操作信号に戻したシリアル変調信号を、高周波信号に変換した信号(図6のアンテナ206からの出力に相当)が、無線出力として建設機械131、133に送信され、建設機械131、133はこれを受信することにより動作し、無線送信機156aからは、元の操作信号に戻したシリアル変調信号を、高周波信号に変換した信号(図6のアンテナ206からの出力に相当)が、無線出力として建設機械100の無線受信制御手段104に送信され、無線受信制御手段104はこれを受信することにより、カメラ106の撮影方向およびカメラ106のズーム倍率の制御を行う。これらの場合も、建設機械131、建設機械132、無線受信制御手段104では、図6のアンテナ210への無線入力に相当する操作指令が入力されるため、図6を用いて先に説明したように、従来の無線操作機を用いて遠隔操作を行った場合と同様に、通信エラー検出を行った後、マシンの制御や、カメラの方向制御・ズーム制御を行うため、通信距離延長のための中継無線通信に無線LANを用いる構成であっても、通信エラーによる遠隔操作の不具合の発生を確実に防止することができる。
【0028】
また、LAN信号/操作信号変換手段155bからは、元の操作信号に戻したシリアル変調信号(図6のDに相当する信号)が制御手段143に出力される。この制御手段143は、図6における受信側の212段の回路から後段の各構成要素を少なくとも具備するものとなっていて、制御手段143の212段の回路にはLAN信号/操作信号変換手段155bからの出力が入力され(図6のD’入力に相当する)、したがって、制御手段143は、従来の無線操作機を用いて遠隔操作を行った場合と同様に、通信エラー検出を行った後、映像の切り替え動作を行うため、通信距離延長のための中継無線通信に無線LANを用いる構成であっても、通信エラーによる遠隔操作の不具合の発生を確実に防止することができる。同様に、LAN信号/操作信号変換手段155aからは、元の操作信号に戻したシリアル変調信号(図6のDに相当する信号)が制御手段144に出力される。この制御手段144も、図6における受信側の212段の回路から後段の各構成要素を少なくとも具備するものとなっていて、制御手段144の212段の回路にはLAN信号/操作信号変換手段155aからの出力が入力され(図6のD’入力に相当する)、したがって、制御手段144は、従来の無線操作機を用いて遠隔操作を行った場合と同様に、通信エラー検出を行った後、操作中継ステーションSrのカメラの方向制御・ズーム制御、操作中継ステーションSrの映像用無線機のアンテナの向きの調整を行うため、通信距離延長のための中継無線通信に無線LANを用いる構成であっても、通信エラーによる遠隔操作の不具合の発生を確実に防止することができる。
【0029】
以上のように、本第1実施形態では、操作中継ステーションSrと基地ステーションSbとの間の無線LAN通信を固定間通信としているので、送受信位置関係が変わることに起因する電波の受信強度の変化がなく、したがって、移動式の操作中継ステーションとするシステムに較べると、無線LAN通信の安定化が図れ、かつ、より遠距離からの遠隔操作が可能な遠隔無線操作システムを構築できる。また、操作中継ステーションSrを固定配置することで、操作中継ステーションSrと基地ステーションSbとの間の映像通信も、互いの高指向性のアンテナを正対させることで品質のよい映像の授受を行うことができる。また、操作中継ステーションSrに設置する再送信のための無線送信機156a〜156dとして、音声信号入力に対応した市販の送信用無線機が採用できるため、無線送信機の新規開発・検証を行う必要がなく、短期間で安価な遠隔無線操作システムが構築できる。また、無線LAN通信を行うシステムとすることにより、簡易なシステムとすることができ、インターネットプロトコルに適合した機器を自由に接続できることから、システムの機能付加が容易となる。さらに、無線LAN通信であっても、従来の無線操作機で行われていたのと同様の、機械操作指令データに誤り検出符号データを付加した信号を、操作信号/LAN信号変換手段150a〜150fへの入力信号としているので、通信エラー対策を施した遠距離の無線操作システムを実現することができ、以って、遠隔操作の不具合発生を可及的に低減できる。また、通信エラー処理のための新規開発・検証を行う必要がないので、安全性に優れたシステムを、短期間で安価に構築できる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る遠隔無線操縦システムの簡略化した構成図である。本第2実施形態では、説明の簡略化のために、建設機械100と、該建設機械100に搭載されたカメラの方向制御・ズーム制御とを行うシステムとしてあるが、図1と同様の各種の構成要素を備えたシステムとしても構築可能である(これは、以下の各実施形態においても同様である)。本第2実施形態では、基地ステーションSbに設ける操作機として、図6の送信側の同様の構成の無線操作機102’、105’を用い、無線操作機102’、105’から基地ステーションSbの無線受信機161、162に、図6のアンテナ206からの出力に相当する信号(つまり、無線操作機をオペレータが操作したことに基づく機械操作指令データに誤り検出符号データを付加したシリアル信号を変調した後、高周波信号に変換した信号)を無線で伝送する。無線受信機161、162は、受信した高周波信号を低周波信号に変換してシリアル変調信号とし、これを操作信号/LAN信号変換手段(ここでは音声信号/LAN信号変換手段)150e、150dに出力する。操作信号/LAN信号変換手段150e、150d以降の動作は、図1の前記第1実施形態と同様である。
【0031】
このような構成をとる本第2実施形態では、基地ステーションSbにおいて、操作機として従来からの無線操作機102’、105’からの無線出力を無線受信機161、162で受信し、これをインターネットプロトコルに対応する信号に変換するようにしているので、従来の無線操作機に何らの変更を加えることなく(適宜の信号処理段から、信号を取り出すための端子を設けたり取り出し用の信号線を接続する作業を行う必要なく)、そのまま用いることができ、しかも、ワイヤレスで無線LANに接続できることから、基地ステーションSbでの操作機のレイアウト変更が自由に行える。また、無線LANに接続するための、無線操作機102’、105’の無線出力を受信する無線受信機161、162は、市販の音声信号受信機でよいため、短期間で安価なシステムが構築できる。
【0032】
図3は、本発明の第2実施形態に係る遠隔無線操縦システムの変形例の簡略化した構成図である。本変形例が図2の構成と相違するのは、無線操作機102’から無線受信機161に送信する電波の周波数f0と、操作中継ステーションSrの無線送信機156bから建設機械100に送信する電波の周波数f0とを同一に設定し、無線操作機から105’から無線受信機162に送信する電波の周波数fと、操作中継ステーションSrの無線送信機156aから無線受信制御手段104に送信する電波の周波数fとを同一に設定した点にある。このように、基地ステーションの無線操作機から発信する周波数f0、fと、建設機械側で受信する周波数f0、fとを同一の周波数に設定しても、無線LAN通信による中継距離が長ければ、特定小電力無線方式の電波の干渉が発生することがなく、基地ステーションSbと作業現場Swとで同一の周波数が使用できるため、電波の有効活用が図れる。なお、無線LAN通信による中継距離が非常に短く、電波の干渉がある場合でも、無線LAN通信による中継をスイッチ165により停止させることで、基地ステーションSbの無線送信機からの直接の遠隔操作に切り替えることが可能となる。
【0033】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図4は、本発明の第3実施形態に係る遠隔無線操縦システムの簡略化した構成図である。本第3実施形態では、基地ステーションSbと操作中継ステーションSrとの間に、通信距離延長用のサブ操作中継ステーションSrsを設けて、基地ステーションSbの無線LAN通信手段152からの信号を、サブ操作中継ステーションSrsの無線LAN通信手段172で受信して、これをLAN集線手段(HUB)172を介して、サブ操作中継ステーションSrsの無線LAN通信手段173から、操作中継ステーションSrの無線LAN通信手段153に送信するようにしている。
【0034】
このような構成をとる本第3実施形態では、2段の無線LAN通信による中継を行うので、さらなる遠距離からの遠隔装置を行うことが可能となる。また、通信距離延長用のサブ操作中継ステーションSrsによる中継設備は、簡素な構成で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械の遠隔無線操縦システムの構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る建設機械遠隔無線操縦システムの簡略化した構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る建設機械の遠隔無線操縦システムの変形例の簡略化した構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る建設機械の遠隔無線操縦システムの簡略化した構成図である。
【図5】従来の建設機械の遠隔無線操縦システムの構成図である。
【図6】従来の特定小電力無線を利用した建設機械の遠隔無線操縦システムの概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
Sw 作業現場
Sr 操作中継ステーション
Srs 通信距離延長用のサブ操作中継ステーション
Sb 基地ステーション
100、131、133 建設機械
102、105、120、122、132、134 操作機
102’、105’、120’、122’、132’、134’ 無線操作機
103、110、112、115、118、125、128 電動雲台
104 無線受信制御手段
106、109、111、114、117、124、127 カメラ
107、108、113、116、123、126 映像用無線機
129、130 モニタ
143、144 制御手段
140、141 映像切替器
150a〜150f 操作信号(音声信号)/LAN信号変換手段
151、154、172 LAN集線手段(HUB)
152、153、171、173 無線LAN通信手段
155a〜155f LAN信号/操作信号(音声信号)変換手段
156a〜156d 無線送信機
161、162 無線受信機
165 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作場所から離れた場所で遠隔操作される2台以上の自走式の建設機械を動作させるための遠隔無線操縦システム、または、操作場所から離れた場所で遠隔操作される1台以上の自走式の建設機械および該建設機械に搭載されて遠隔操作される1つ以上の被操作機器を動作させるための遠隔無線操作システムであって、
前記操作場所である基地ステーションには、オペレータによって操作される前記建設機械に1対1に対応する操作機またはオペレータによって操作される前記被操作機器に1対1に対応する操作機と、該各操作機から出力される操作信号をインターネットプロトコルに対応する信号にそれぞれ変換する複数の操作信号/LAN信号変換手段と、該各操作信号/LAN信号変換手段からそれぞれ出力されるインターネットプロトコルに対応する操作信号を多重化するLAN集線手段(HUB)と、該LAN集線手段から多重化されて出力されるインターネットプロトコルに対応する操作信号を無線LANで送信する無線LAN通信手段とを、設け、
前記基地ステーションと所定距離をおいて設置される操作中継ステーションには、前記基地ステーションの前記無線LAN通信手段からの送信信号を受信する無線LAN通信手段と、該無線LAN通信手段で受信したインターネットプロトコルに対応する操作信号が入力され、入力された信号を分配するLAN集線手段(HUB)と、該LAN集線手段で分配されたインターネットプロトコルに対応する操作信号を、元の操作信号に変換する複数のLAN信号/操作信号変換手段と、該各LAN信号/操作信号変換手段から出力される操作信号に基づき、対応する前記建設機械または前記被操作機器にそれぞれ特定小電力無線方式で操作指令を送信する複数の無線送信機とを、設けたことを特徴とする建設機械の遠隔無線操作システム。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の遠隔無線操作システムにおいて、
前記操作信号/LAN信号変換手段に入力される前記操作信号は、前記操作機をオペレータが操作したことに基づく機械操作指令データに誤り検出符号データを付加した信号であることを特徴とする建設機械の遠隔無線操作システム。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の遠隔無線操作システムにおいて、
前記操作信号/LAN信号変換手段に入力される前記操作信号は、前記操作機をオペレータが操作したことに基づく機械操作指令データに誤り検出符号データを付加した信号を高周波信号に変換して無線で送信し、受信した高周波信号を低周波信号に変換した信号であることを特徴とする建設機械の遠隔無線操作システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の建設機械の遠隔無線操作システムにおいて、
前記操作中継ステーションには、前記建設機械に搭載したカメラで撮影した映像を受信する映像用無線機と、前記建設機械や作業現場を撮影可能なカメラと、該カメラで撮影した映像や前記受信した映像を前記基地ステーションの映像無線機に送信する映像用無線機とが設けられ、
前記操作中継ステーションにおける映像送信用の前記映像用無線機のアンテナに、前記基地ステーションにおける映像受信用の前記映像用無線機の高指向性のアンテナを向けるようにアンテナの方向調整が行われることを特徴とする建設機械の遠隔無線操作システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の建設機械の遠隔無線操作システムにおいて、
前記操作信号/LAN信号変換手段として、音声信号/LAN信号変換器を用い、前記LAN信号/操作信号変換手段として、LAN信号/音声信号変換器を用いることを特徴とする建設機械の遠隔無線操作システム。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の建設機械の遠隔無線操作システムにおいて、
前記基地ステーションと前記操作中継ステーションとの間に、前記基地ステーションの前記無線LAN通信手段からの無線LANによる送信信号を受信する機能と、該機能により受信した信号を無線LANで前記操作中継ステーションの前記無線LAN通信手段に送信する機能とをもつ、通信距離延長用のサブ操作中継ステーションを設けたことを特徴とする建設機械の遠隔無線操作システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−132265(P2006−132265A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325233(P2004−325233)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】