説明

建設機械

【課題】
簡便な構成で建設機械本体に対する位置、傾斜等を含む姿勢を正確に、而もリアルタイムで検出可能とした姿勢検出装置、及び該姿勢検出装置を具備した建設機械を提供する。
【解決手段】
建設機本体14と、該建設機本体に設けられた工事作業具8と、前記建設機本体の機械中心に対して既知の位置に設けられた2つのカメラ18,19と、前記工事作業具に設けられ、前記2つのカメラの視野にそれぞれ含まれる様に配置された少なくとも3のターゲット21と、前記2つのカメラで取得したステレオ画像から各画像中で共通する少なくとも3のターゲット像を抽出し、該各ターゲット像の3次元位置を求め、求めた3次元位置に基づき前記工事作業具の前記建設機本体に対する位置、姿勢を算出する演算処理装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブルドーザ、パワーショベル等の建設機械、特に排土板、バケット等の工事作業具の建設機械本体に対する位置、姿勢を検出可能とした建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木工事、例えばブルドーザによる整地作業で、整地面に対する整地器具(ブレード)の位置、傾斜等の姿勢を正確に把握することは精度の高い整地作業を実行する上で不可欠であり、又建設機械操縦者が勘に頼らず計画された整地作業を実行する上で、整地器具の位置、傾斜等の姿勢を正確に検出することが必要である。
【0003】
従来、建設機械で整地器具の高さ位置を検出するものとして特許文献1に示されるものがある。
【0004】
特許文献1の図6には、レーザ光線5を回転照射して基準面を形成する回転レーザ装置1、及び整地器具2にポール3を立設し、該ポール3に取付けられた受光器4が示されている。該受光器4でレーザ光線5を受光し、前記基準面を検出し、前記受光器4が検出した基準面の位置に基づき前記整地器具2の鉛直方向の位置を検出していた。
【0005】
特許文献1では、基準面、即ち整地面に対する整地器具2の位置を検出することができるが、建設機械本体6に対する整地器具2の位置、姿勢を検出することはできなかった。一方、操縦者が整地器具2を操作する場合は、建設機械本体6を基準とした位置調整、傾斜等の姿勢調整となる。従って、得られた検出結果に基づく調整作業が、作業者の感覚と一致するとは限らず、誤作業を招く虞れがあった。
【0006】
又、特許文献2では、建設機械としてブルドーザ7が示され、該ブルドーザ7のブレード8にポール9が立設され、該ポール9の上端に第1のGPSアンテナ11が設けられ、更にブルドーザ7自体にも前後に第2、第3のGPSアンテナ12,13が設けられたことが開示されている。
【0007】
特許文献2では、図7に示される様に、第1のGPSアンテナ11によりブレード8の上方方向の絶対位置が検出でき、又第2、第3のGPSアンテナ12,13により、ブルドーザ7の位置、方向が検出できる。又、第1のGPSアンテナ11による位置検出結果と第2、第3のGPSアンテナ12,13による位置検出結果に基づき前記ブルドーザ7に対するブレード8の相対位置を演算により求めることも可能である。
【0008】
ところが、GPSアンテナを含む位置検出装置は高価であり、更にブレードの前記相対位置を求めるには3組を必要とする等、非常に高価なものとなる。
【0009】
又、前記ブレード8が前後方向に傾斜した場合、前記ポール9も傾斜し、前記第1のGPSアンテナ11で検出する水平位置、上下位置と実際の前記ブレード8の位置にずれが生じる。又、前記ポール9を中心として前記ブレード8が水平方向に回転した場合は、前記第1のGPSアンテナ11の検出結果に変化がない為、前記ブレード8の水平方向の回転位置は検出することができない。
【0010】
又、ブレード8のブルドーザ7に対する傾斜をチルトセンサで検出する場合もあるが、チルトセンサの応答性が悪く、又振動に対しても反応するので、動いているものの傾斜検出には適しているとはいえない。
【0011】
【特許文献1】特開2005−337741号公報
【0012】
【非特許文献1】米国特許7317977B2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は斯かる実情に鑑み、簡便な構成で建設機械本体に対する工事作業具の位置、傾斜等を含む姿勢を正確に、而もリアルタイムで検出可能とした姿勢検出装置、及び該姿勢検出装置を具備した建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、建設機本体と、該建設機本体に設けられた工事作業具と、前記建設機本体の機械中心に対して既知の位置に設けられた2つのカメラと、前記工事作業具に設けられ、前記2つのカメラの視野にそれぞれ含まれる様に配置された少なくとも3のターゲットと、前記2つのカメラで取得したステレオ画像から各画像中で共通する少なくとも3のターゲット像を抽出し、該各ターゲット像の3次元位置を求め、求めた3次元位置に基づき前記工事作業具の前記建設機本体に対する位置、姿勢を算出する演算処理装置とを具備する建設機械に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記カメラはビデオカメラであり、前記演算処理装置は、各フレーム画像毎にターゲットの位置、姿勢を算出する様にした建設機械に係り、又前記ターゲットは円形の反射部、及び該反射部の周囲に非反射部が形成された板又は板状である建設機械に係り、又前記ターゲットの反射部が形成するターゲット像は、カメラ受光部の少なくとも5画素以上を占め、前記演算処理装置はターゲット像の中心をモーメント法により算出する建設機械に係り、又前記建設機本体に設けられ、該建設機本体の位置座標を求めるGPS装置を更に備え、前記演算処理装置は前記GPS装置が測定した位置座標に基づき、前記工事作業具の位置座標を演算する建設機械に係り、更に又前記GPS装置は、前記2つのカメラの視野に含まれる様配置されたターゲットを有し、前記演算処理装置は前記GPS装置が測定した位置座標に基づき、前記工事作業具の位置座標を演算する建設機械に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、建設機本体と、該建設機本体に設けられた工事作業具と、前記建設機本体の機械中心に対して既知の位置に設けられた2つのカメラと、前記工事作業具に設けられ、前記2つのカメラの視野にそれぞれ含まれる様に配置された少なくとも3のターゲットと、前記2つのカメラで取得したステレオ画像から各画像中で共通する少なくとも3のターゲット像を抽出し、該各ターゲット像の3次元位置を求め、求めた3次元位置に基づき前記工事作業具の前記建設機本体に対する位置、姿勢を算出する演算処理装置とを具備するので、複雑で高価な装置を用いることなく、建設機械本体に対する工事作業具の位置姿勢を簡単に、而もノイズ、機器の応答遅れを考慮することなくリアルタイムで検出することができる。
【0017】
又本発明によれば、前記カメラはビデオカメラであり、前記演算処理装置は、各フレーム画像毎にターゲットの位置、姿勢を算出する様にしたので、動作中の工事作業具の位置姿勢を簡単に、而もリアルタイムで検出することができる。
【0018】
又本発明によれば、前記ターゲットは円形の反射部、及び該反射部の周囲に非反射部が形成された板又は板状であるので、複雑な画像処理をすることなく、画像中から簡単にターゲット像を抽出でき、又反射部は円形であるので、ターゲットがカメラ光軸に対して傾いたとしても、中心位置は正確に検出することができる。
【0019】
又本発明によれば、前記ターゲットの反射部が形成するターゲット像は、カメラ受光部の少なくとも5画素以上を占め、前記演算処理装置はターゲット像の中心をモーメント法により算出するので、中心位置の検出精度が向上する。
【0020】
又本発明によれば、前記建設機本体に設けられ、該建設機本体の位置座標を求めるGPS装置を更に備え、前記演算処理装置は前記GPS装置が測定した位置座標に基づき、前記工事作業具の位置座標を演算し、更に又本発明によれば、前記GPS装置は、前記2つのカメラの視野に含まれる様配置されたターゲットを有し、前記演算処理装置は前記GPS装置が測定した位置座標に基づき、前記工事作業具の位置座標を演算するので、工事作業具の位置を基にした位置情報の管理・施工が可能となる等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0022】
先ず、図1に於いて、本発明が実施される建設機械の一例を説明する。
【0023】
図1では、建設機械としてブルドーザ7が示されており、該ブルドーザ7は前面に工事作業具としてブレード8を具備している。該ブレード8はブルドーザ本体14に設けられたアーム15の先端に設けられている。又、前記ブレード8は多機能の使用に対応して、種々の姿勢をとり得る様に、前記ブルドーザ7に対して4軸方向に回転可能となっている。
【0024】
前記アーム15は前記ブルドーザ本体14に水平なO軸を中心に傾動可能に設けられ、前記ブレード8は前記アーム15に対して、水平なP軸を中心に回転可能に、又鉛直なQ軸を中心に回転可能に、又前記ブルドーザ本体14の前後方向に水平なR軸を中心に回転可能に設けられている。
【0025】
尚、特に図示していないが、各軸に対応して駆動用に油圧シリンダ(図示せず)が設けられ、前記アーム15を傾動させ、又前記ブレード8をP軸、Q軸、R軸を中心にそれぞれ独立して回転可能となっている。
【0026】
又、前記ブレード8について基準位置が設定される。該ブレード8の基準位置として、前記O軸、P軸、Q軸、R軸のそれぞれについて、基準位置(0゜)が設定される。基準位置としては、例えば、前記ブレード8の下縁が水平であり、又前記ブルドーザ本体14の走行面と高さで一致し、又該ブルドーザ本体14の進行方向に対して直角であり、更に又前記ブレード8の下面が水平である状態で前記O軸、P軸、Q軸、R軸に於ける角度が0゜とされる。
【0027】
次に、本発明に係る姿勢検出装置17は、主に、所要位置、例えば運転室20の屋根の前部に設けられた2台のカメラ(第1撮像部,第2撮像部)18,19、該カメラ18,19の視野に入る様に所要箇所、所要数、例えば5箇所に設けられたブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21e、照明装置22及び図2に示される演算処理装置23によって構成される。
【0028】
前記ブレード8は泥や水、埃により汚れ易いので、該ブレード8に貼付けたブレード検出用ターゲット21も同様に汚れ易く前記カメラ18,19で認識できなくなる虞れがある。そこで、前記ブレード8には出来るだけ多数の前記ブレード検出用ターゲット21を貼付ける様にする。
【0029】
前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eは、それぞれ所定の外形形状、例えば正方形或は円形の板又は板状物である。前記ブレード検出用ターゲット21は、低反射部の中央に所定の大きさの円形の高反射部が形成されたものとなっており、低反射部と高反射部との間に所定値以上の反射率の差異があればよい。例えば、黒色を背景として中央に反射塗料が塗布されたものが用いられる。尚、後述する様に、前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eは、少なくとも3あればよいが、ブレード検出用ターゲット21が死角に入ったり、或は泥等が付着して反射光が得られなくなることを想定し、4以上のブレード検出用ターゲット21が設置される。
【0030】
前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの設置場所は、前記ブレード8に対する設置位置を特定することで、該ブレード8と前記ブルドーザ本体14の中心位置(以下機械中心)(図示せず)との機械的な関係から、前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eと前記機械中心との関係(距離、水平角、鉛直角等)を特定できる。
【0031】
又、前記カメラ18,19についても、前記運転室20の屋根に対して設置位置が確定できれば、屋根と機械中心との機械的関係から機械中心と前記カメラ18,19との位置関係が特定できる。更に、前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eと前記カメラ18,19とについても、機械中心を介して位置関係が特定できる。
【0032】
即ち、前記ブレード8を基準位置(例えば、O軸、P軸、Q軸、R軸に関する回転角がそれぞれ0°)とした状態で、前記カメラ18,19と前記各ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eとの距離、前記カメラ18,19の視準中心線に対する前記各ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの鉛直角、水平角等が特定できる。得られた位置関係については、後述する記憶部に設定入力される。
【0033】
又、前記ブレード8の基準位置で、前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの取付ける向きが、それぞれ前記カメラ18,19に対して同等の角度となる様に設定される。例えば、1つのブレード検出用ターゲット21の中心を通る垂線が、ターゲット中心と前記カメラ18とを結ぶ直線と、ターゲット中心と前記カメラ19とを結ぶ直線とが成す角の2等分線となる様に設置される。
【0034】
又、前記カメラ18と前記カメラ19との関係についても、該カメラ18,19間の距離、該カメラ18,19の2つの光軸間の角度等を機械的な位置関係から求め、予め特定する。
【0035】
更に、後述する様に前記カメラ18,19で取得した画像のマッチングを実行する為に、前記カメラ18,19の位置関係に基づきキャリブレーションを行う。
【0036】
尚、前記カメラ18,19についてはデジタルカメラが使用され、前記カメラ18,19の受光部は画素の集合体であるCCD、或はCMOS等である。受光部に於いて、受光する画素の位置が特定でき、又画素の位置から画角が求められる様になっている。
【0037】
前記カメラ18,19としてはビデオカメラが用いられ、或は10枚/秒以上、好ましくは20枚/秒程度で静止画像が撮像できるカメラが用いられる。
【0038】
又、前記ブルドーザ本体14の所要位置、例えば前記運転室20の屋根にGPSアンテナ(図示せず)が設けられ、前記運転室20等所要位置に前記GPSアンテナからの信号により地上での位置(絶対座標位置)を測定するGPS信号処理装置(図示せず)が設けられている。前記GPSアンテナ、前記GPS信号処理装置は、GPS装置32(後述)を構成する。
【0039】
図2に於いて、前記姿勢検出装置17を説明する。
【0040】
前記カメラ18,19はステレオカメラ25を形成し、又撮像した画像データは同期制御部26を介して制御演算部27、記憶部28に入力され、前記制御演算部27、前記記憶部28には画像処理部29が接続されている。前記演算処理装置23は前記同期制御部26、前記制御演算部27、前記記憶部28、前記画像処理部29により構成される。
【0041】
前記制御演算部27は、前記画像処理部29による画像処理の結果を基に前記ブレード8の位置姿勢を検出し、検出結果に基づき該ブレード8の位置制御、姿勢制御を行う為の指令信号をブレード制御部31に発し、該ブレード制御部31は指令信号に基づき図示しない油圧シリンダを駆動する様になっている。
【0042】
前記制御演算部27にはGPS装置32からの信号が入力され、前記記憶部28は前記信号を基に前記ブルドーザ本体14の位置を演算する。
【0043】
尚、前記GPS装置32によって前記ブルドーザ本体14の位置(絶対座標位置)が測定され、該ブルドーザ本体14の機械中心に対する前記GPSアンテナの位置、前記ブレード8の位置は既知であるので、該ブレード8の絶対座標位置も測定できる。
【0044】
又、前記GPS装置32の測定結果から、前記ブルドーザ本体14の機械中心の座標位置を求めることができるので、前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの画像処理により求められた、前記ブルドーザ本体14との位置関係に基づき、前記ブレード8の位置を前記ブルドーザ本体14の位置座標と同じ座標系で求めることが可能となる。従って、前記ブルドーザ7の前記ブレード8の位置を、グローバルな測地系状の座標で扱うことが可能となる。
【0045】
前記画像処理部29は、ターゲット探索部33、ターゲット位置検出部34等を有し、該ターゲット位置検出部34は、前記カメラ18,19で取得したそれぞれのカメラ毎の画像データについて1フレーム毎の画像からブレード検出用ターゲット21を検出し、又フレーム間でブレード検出用ターゲット21の追尾処理を行い、又ブレード検出用ターゲット21を検出し、前記カメラ18の画像と前記カメラ19の画像間でブレード検出用ターゲット21のマッチングを行い、又検出したブレード検出用ターゲット21の中心位置を検出する。
【0046】
前記記憶部28には、前記ブルドーザ本体14の機械中心に対する前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの基準位置データ、更に前記機械中心に対する前記カメラ18,19の位置データ等のデータが格納される。又、ブレード検出用ターゲット21の位置情報から、前記ブレード8の前記ブルドーザ本体14に対する高さ、傾きから得られる前記ブレード8の姿勢を演算するブレード位置、姿勢演算プログラム、又演算されたブレード8の位置、姿勢に基づき該ブレード8の位置、姿勢を制御する姿勢制御プログラム等のプログラムが格納されている。
【0047】
本発明では、前記カメラ18,19で取得した2つの画像から、前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの位置を測定し、得られたブレード検出用ターゲット21の位置情報から前記ブレード8の前記ブルドーザ本体14に対する相対的な高さ、相対的な傾き、姿勢を演算により求めるものである。
【0048】
図3を参照して、本発明の作用について説明する。
【0049】
作業に入る前に標定作業を行う。標定作業は2つのカメラとターゲットの位置を関係づける作業であり、2つのカメラから撮像した、一対の画像を用い、両画像中で相互に対応付られたターゲット像を用いて標定を行う。
【0050】
STEP:01 前記照明装置22を点灯し、前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eに照射する。尚、昼間で該ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eから充分な反射光が得られる場合は、前記照明装置22は点灯する必要がない。
【0051】
前記ブレード8を基準位置に設定し、前記カメラ18,19により前記ブレード8を撮像する。取得した画像中には前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eが含まれる。取得した画像は、デジタル画像データとして前記記憶部28に格納される。
【0052】
STEP:02 前記画像処理部29に於いて、前記記憶部28に格納された画像について、画像中からターゲット像を抽出する。ターゲット像の抽出は、予め取得したターゲット像のテンプレート取得画像とのテンプレートマッチングにより行うか、或は夜間等ブレード検出用ターゲット21から反射光が背景より際だっている場合は画像データを2値化し、ブレード検出用ターゲット21を抽出する。又、前記ブレード8にブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eを設けているので、ブレード検出用ターゲット21自体が特徴点となり、画像処理により特徴点を抽出する必要がない。又、ブレード検出用ターゲット21から突出した反射光が得られるので、前記画像処理部29による画像処理の負担が少なくなり、又低画質の画像でも容易に前記ブレード検出用ターゲット21の抽出が可能となる。
【0053】
尚、前記ブレード制御部31により、前記ブレード8の位置、姿勢は油圧シリンダを通じて制御されている。従って、前記ブレード制御部31の制御の状態に基づいて、前記カメラ18,19又は、機械中心に対する前記ブレード8の位置、姿勢を予測することが可能である。例えば、前記演算処理装置23は、前記ブレード制御部31から得られた制御信号に基づいて、前記ブレード8の位置、姿勢を推定し、前記カメラ18,19で取得される画像の内、ブレード検出用ターゲット21が配列されているブレード上のラインを推測する。推定されたラインに沿ってブレード検出用ターゲット21を検出する為の画像処理を行うことで、ターゲット検出のスピードを速めることができる。或は、前記ブレード8の位置、姿勢の予測から、ブレード検出用ターゲット21の位置を予測し、予測した位置に基づいてブレード検出用ターゲット21を検出することで、ターゲット検出のスピードを速めることが可能となる。
【0054】
上記、テンプレートマッチングの方法としては、SSDA法(sequential similarity detection algorithm:テンプレートとマッチングウィンドウとの濃淡値の残差を求め、残差が最小となる位置を求める)、或は正規化相互相関法(Cross correlation:テンプレートとマッチングウィンドウとの相関値を算出して対応点を検索する)、或は最小二乗マッチング法(Least squares matching:アフィン変換を用いてマッチングウィンドウの形状も未知パラメータとして設定し、テンプレートに対するマッチングウィンドウの位置及び形状を求める)等がある。
【0055】
撮像した画像中の前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの画像と、前記ブレード8に設けられた前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eとの関連付けは、画像上の前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの相互位置、及び前記ブレード8の基準位置と前記カメラ18,19との既知の位置関係により特定できる。
【0056】
前記カメラ18と前記カメラ19の両画像中のターゲット像の位置関係を比較し、ターゲット像で共通するものがあるかどうかが判断され、更に共通する位置にあるターゲット像が所定数、少なくとも3、例えばブレード検出用ターゲット21a,21b,21cが選択される。
【0057】
STEP:03 選択したターゲット像について、それぞれの中心を演算により求める。上記した様にターゲット即ち反射部は円形であるので、前記カメラ18,19の光軸に対してブレード検出用ターゲット21が傾斜し、取得画像が楕円となっていても、中心は正確に検出できる。
【0058】
画像中からターゲットの中心を検出する一例としては、モーメント法が用いられる。
【0059】
モーメント法は、ターゲット像を2値化(0,1)し、設定した座標上で1を示す座標の各モーメントを求め、各モーメントの総和に基づきターゲットの中心座標を求める。
【0060】
即ち、前記ターゲット像を含む領域をSとし、又ターゲットを含む2値化処理した小画像を、
【0061】
f(i,j)={0(i,j)∈(属さない)S;1(i,j)∈(属する)S}
と表したとき、領域Sのモーメントは次式で定義される。
pq=Σip q f(i,j)
この時、ターゲットの中心座標(x,y)は、次式によって算出できる。
x=M10/M00
y=M01/M00
【0062】
上記モーメント法により中心座標を求める場合、1を示す信号が好ましくは10、少なくとも5以上得られる様にする。即ち、1の信号を出力する受光素子の画素が少なくとも5以上となる様に、ブレード検出用ターゲット21の大きさ、該ブレード検出用ターゲット21と前記カメラ18,19間の距離を設定する。
【0063】
所定数の画素について、モーメント法により中心座標を算出することで、位置精度が向上する。例えば、10画素について、中心座標を算出した場合、1画素について座標位置を算出した場合に対して精度は10倍に向上する。
【0064】
STEP:04 前記カメラ18,19の2つの画像(ステレオ画像)により各ブレード検出用ターゲット21a,21b,21cの3次元座標が算出される。
【0065】
図4に示される様に、ブレード検出用ターゲット21の3次元座標をP(X,Y,Z)、前記カメラ18の受光面36、前記カメラ19の受光面37、前記カメラ18の焦点位置O1、前記カメラ19の焦点位置O2、前記カメラ18,19の焦点距離f、焦点位置O1と焦点位置O2との距離B、前記受光面36,37上のターゲット中心位置p1,p2とすると、3次元座標P(X,Y,Z)の算出は、以下の式によって算出することができる。
【0066】
X=x1×B/(x1−x2)
Y=y1×B/(x1−x2)
Z=−f×B/(x1−x2)
B:ステレオカメラの基線長、f:カメラの焦点距離、
ターゲットの画像座標 左座標:p1(x1、y1)
右座標:p2(x2、y2)
【0067】
STEP:05 前記制御演算部27は、各ブレード検出用ターゲット21a,21b,21cについて得られた3次元座標に基づき、前記ブレード8の前記ブルドーザ本体14に対する相対位置、姿勢を演算し、演算結果に基づき前記ブレード制御部31に制御信号を発して、該ブレード制御部31を介して前記ブレード8の位置、姿勢を制御する。
【0068】
STEP:06 該ブレード8の位置、姿勢を連続的に制御する場合は、前記カメラ18で経時的に得られた画像毎に前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eの抽出が行われると共に画像間でのトラッキングが実行される。同様に、前記カメラ19で経時的に得られた画像についても、ターゲット像の抽出、トラッキングが行われる。
【0069】
更に、抽出したターゲット像について、3次元座標が算出される。前記カメラ18,19がビデオカメラである場合は、前記カメラ18,19によりブレード検出用ターゲット21を連続的に撮像し続け、連続性のあるブレード検出用ターゲット21の画像を取得し、取得した動画像についてリアルタイムで画像処理を行う。連続して撮像しているので、前画像データと次画像データとのずれは僅かであり、同一のブレード検出用ターゲット21は前画像データと、次画像データとで関連付けることができる。従って、ブレード検出用ターゲット21それぞれを連続した画像に於いて順次(ID等の認識による識別を用いないで)特定すること、即ちトラッキングすることができる。(途中で消えた場合)前画像と、次画像のブレード検出用ターゲット21の画像に整合性が無くなった場合は、画像データによるトラッキングを中止する。又は、明瞭に整合が取れる画像から順次に使用して、トラッキングを継続する。少なくとも3点のターゲット像が取得できればよい。
【0070】
各フレーム画像毎に3次元座標の算出が実行される。従って、1秒間に取得される画像が30フレームであった場合は、30フレーム画像について3次元座標の算出が実行されるので、リアルタイムで前記ブレード8の3次元位置、姿勢が得られる。得られた位置、姿勢に基づきSTEP:01〜STEP:05が繰返し実行され、前記ブレード8のリアルタイムでの位置制御が可能となる。
【0071】
尚、上記実施の形態では、本発明がブルドーザに実施された場合を示したが、他の建設機械、例えばパワーショベルに実施され、バケットの位置、姿勢を検出する様にしてもよい。
【0072】
上記説明中、STEP:03に於いてターゲット中心を検出する方法として、モーメント法を説明したが、他の検出方法でも行うことができる。以下に他の検出方法を説明する。
【0073】
照明装置22を点灯、又は点滅させて、ブレード検出用ターゲット21に照射し、該ブレード検出用ターゲット21を強く光らせる。画像処理部29は、画像中からブレード検出用ターゲット21を抽出する際、反射光が明るい順に解析に用いる。ブレード検出用ターゲット21を強く光らせ、ターゲット像の2値化処理からその中心位置を高精度に検出する様にする。又、ブレード検出用ターゲット21は中心部(高反射部)の大きさが既知であり、2値化処理で検出した円形(ターゲット像)の大きさ(直径)を判別し、既知の値に対して所定の偏差以上の大きさである場合、そのブレード検出用ターゲット21を除外する。ブレード検出用ターゲット21の大きさは、ステレオカメラ25とブレード検出用ターゲット21との距離Hは予め行う標定により既知なので、ブレード検出用ターゲット21の円形の大きさ:ΔXYを計算できる。
ΔXY=H×ΔP/f ΔPは画素サイズ、fは焦点距離
【0074】
図5は本発明の応用例を示している。
【0075】
ブルドーザ本体14にGPS装置32を設ける。該GPS装置32のアンテナに対して所定の位置となる様ブレード検出用ターゲット21gを前記ブルドーザ本体14に設ける。又、前記GPS装置32と前記ブレード検出用ターゲット21gを一体的に設け、前記GPS装置32の測定位置と前記ブレード検出用ターゲット21gの位置を略同一とみなすか、或は離して設置する場合は互いの位置関係を予め求めておく。尚、図5では前記GPS装置32のアンテナを前記ブレード検出用ターゲット21gと一体に設けた場合を示している。又、前記ブレード検出用ターゲット21gはカメラ18,19の視野内に配置される。
【0076】
該カメラ18,19でブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eと前記GPS装置32の前記ブレード検出用ターゲット21gのステレオ画像データを取得する。
【0077】
前記GPS装置32により、前記ブレード検出用ターゲット21gの位置は、GPS信号の受信により求められた座標に基づき求めることが可能である。前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eと、ステレオ画像に写りこんだ前記ブレード検出用ターゲット21gとの関係、及び該ブレード検出用ターゲット21gの座標位置に基づき前記ブレード検出用ターゲット21a,21b,21c,21d,21eのグローバルな測地座標系上の座標を演算することで、ブレード8の位置、姿勢を求めることが可能となり、該ブレード8の位置を基にした位置情報の管理、施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明がブルドーザに実施された場合を示す斜視図である。
【図2】本発明の姿勢検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に於ける位置、姿勢検出の作動を示すフローチャートである。
【図4】ステレオ画像による位置測定を示す説明図である。
【図5】本発明の応用例の説明図である。
【図6】従来例の整地器具の位置検出を示す説明図である。
【図7】他の従来例のブレードの位置検出を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
7 ブルドーザ
8 ブレード
14 ブルドーザ本体
17 姿勢検出装置
18 カメラ
19 カメラ
21 ブレード検出用ターゲット
22 照明装置
23 演算処理装置
26 同期制御部
27 制御演算部
28 記憶部
29 画像処理部
31 ブレード制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機本体と、該建設機本体に設けられた工事作業具と、前記建設機本体の機械中心に対して既知の位置に設けられた2つのカメラと、前記工事作業具に設けられ、前記2つのカメラの視野にそれぞれ含まれる様に配置された少なくとも3のターゲットと、前記2つのカメラで取得したステレオ画像から各画像中で共通する少なくとも3のターゲット像を抽出し、該各ターゲット像の3次元位置を求め、求めた3次元位置に基づき前記工事作業具の前記建設機本体に対する位置、姿勢を算出する演算処理装置とを具備することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記カメラはビデオカメラであり、前記演算処理装置は、各フレーム画像毎にターゲットの位置、姿勢を算出する様にした請求項1の建設機械。
【請求項3】
前記ターゲットは円形の反射部、及び該反射部の周囲に非反射部が形成された板又は板状である請求項1の建設機械。
【請求項4】
前記ターゲットの反射部が形成するターゲット像は、カメラ受光部の少なくとも5画素以上を占め、前記演算処理装置はターゲット像の中心をモーメント法により算出する請求項1の建設機械。
【請求項5】
前記建設機本体に設けられ、該建設機本体の位置座標を求めるGPS装置を更に備え、前記演算処理装置は前記GPS装置が測定した位置座標に基づき、前記工事作業具の位置座標を演算する請求項1の建設機械。
【請求項6】
前記GPS装置は、前記2つのカメラの視野に含まれる様配置されたターゲットを有し、前記演算処理装置は前記GPS装置が測定した位置座標に基づき、前記工事作業具の位置座標を演算する請求項5の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−117230(P2010−117230A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290388(P2008−290388)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】