説明

建設機械

【課題】小型かつ簡単な構造でオイルタンクを効果的に冷却することができ、オイルタンク内のオイルの温度が過度に上昇することを防止できる建設機械を提供する。
【解決手段】杭打機10のオイルタンク室14に、外気を導入する外気導入口14eと、オイルタンク室内の空気を外部に排出する排気口14dと、外気導入口14eから外気をオイルタンク室内に取り込んで排気口14dからオイルタンク室内の空気を外部に排出する空気流れを形成するための吸気ファン22とを備えると共に、該吸気ファン22の動力源となる電力を発電させる太陽電池25と、該太陽電池25で発電した電気を蓄電するバッテリ26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機や油圧ショベルなどの油圧で作動する建設機械に係り、特に、オイル(作動油)を貯留したオイルタンクを、エンジン室とは別に独立した状態で区画されたオイルタンク室の内部に収容した建設機械におけるオイルタンクの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機や油圧ショベルなどの建設機械では、エンジンにより駆動される油圧ポンプの昇温、油圧シリンダなどに供給するオイルの昇温を抑えるため、エンジンのラジエータ部分にオイルクーラを配置し、エンジンで駆動される冷却ファンによって冷却空気を流通させることにより、ラジエータと共にオイルクーラを冷却するようにしている。
【0003】
また、エンジン室から区画したポンプ室内に油圧ポンプを収容したものでは、ポンプ室内に貫流ファンを設けて外気を取り込むことにより、ポンプ室内の温度上昇を抑えるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−211613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、夏場の外気温が高いときにも十分にオイルを冷却するためには、大型のオイルクーラを設置する必要があり、また、上述の特許文献1のものでは、ポンプ室内に貫流ファンを設けていることから、ポンプ室の容積が大きくなるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、小型かつ簡単な構造でオイルタンクを効果的に冷却することができ、オイルタンク内のオイルの温度が過度に上昇することを防止できる建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、下部走行体の上部に設けた上部旋回体に、オイルタンクを収容するオイルタンク室を備えた建設機械において、前記オイルタンク室に外気を導入する外気導入口と、前記オイルタンク室内の空気を外部に排出する排気口と、前記外気導入口から外気を前記オイルタンク室内に取り込んで前記排気口からオイルタンク室内の空気を外部に排出する空気流れを形成するためのファンとを備えると共に、該ファンの動力源となる電力を発電させる太陽電池と、該太陽電池で発電した電気を蓄電するバッテリとを備えていることを特徴とし、前記太陽電池を、前記上部旋回体の車体後方に設けられるカウンタウエイトの上部に配設し、前記バッテリを、前記カウンタウエイトの内部に配設しても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設機械によれば、ファンを作動させることにより、オイルタンク室内に外気を取り込みつつ、温度が高いオイルタンク室内の空気を排気口から外部に排気することができるので、作業時にオイルが温度上昇してもオイルタンクを介してオイルを効率よく冷却することができる。また、ファンは、太陽電池で発電した電力により作動することにより極めて経済的であると共に環境的にも良好であり、太陽電池で発電した電気を蓄電するバッテリを備えていることから、太陽電池の発電量が所定値以下に低下した際でも、バッテリからファンへ電力を供給でき、天候や昼夜を問わず、常にファンを作動させることができるとともに、エンジンに付属するバッテリやオルタネータの負担を軽減することができる。また、前記太陽電池をカウンタウエイトの上部に配設し、バッテリをカウンタウエイトの部分に配設することにより、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態例を示す杭打機の要部側面図である。
【図2】同じく杭打機の要部平面図である。
【図3】同じく杭打機の下部走行体と上部旋回体の側面図である。
【図4】同じく杭打機の下部走行体と上部旋回体の平面図である。
【図5】同じく杭打機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図は、本発明の建設機械を杭打機に適用した一形態例を示すもので、杭打機10は、クローラ11aを備えた下部走行体11と、該下部走行体11上に旋回可能に設けられた上部旋回体12とを備え、上部旋回体12の前部にリーダ13を起伏可能に設けている。上部旋回体12は、メインフレーム12a上の右側後方にオイルタンク室14が、右側前方に運転台15がそれぞれ設けられ、左側には、エンジンや油圧ポンプなどを収容したエンジン室16が設けられている。さらに、上部旋回体12の後部には、カウンタウエイト載置部17が設けられ、該カウンタウエイト載置部17に、車体前方の作業能力に応じて車体のバランスを取るための重量を有するカウンタウエイト17aが設けられる。
【0011】
オイルタンク18を収容するオイルタンク室14は、平面視長方形状の天板14a及び底板14bと、四周壁14cとで形成された箱状のものであって、天板14aには、矩形の開口部からなる排気口14dと外気導入口14eとがそれぞれ開口し、車体外側の壁面には点検扉14fが設けられている。
【0012】
排気口14dは、ダクト部材19で覆われている。このダクト部材19は、前記排気口14dよりも大きな取付板19aと、該取付板19aの中央に開口して前記排気口14dに連通する空気流通口19bと、該空気流通口19bの上方を覆うと共に側面に側面開口部19cを備えた偏平なトンネル状のカバー部材19dと、該カバー部材19dの前記側面開口部19cと前記空気流通口19bとの間で前記取付板19aから上方に向かって立ち上がってから側面開口部19cの方向に傾斜し、傾斜部上端縁と前記カバー部材19dの天板下面との間に空気流路を形成する堰板20とを一体に備えている。また、ダクト部材19の天板中央部には、前記オイルタンク18にオイルを供給するための給油口18aと、該給油口18aを塞ぐ給油蓋21とが設けられ、給油蓋21はヒンジを介して給油口18aを開閉可能に形成されている。
【0013】
天板14aの上面には、前記外気導入口14eの上方及び吸気ファン22の周囲を覆う吸気ダクト23が設けられている。この吸気ダクト23は、天板14aの上面に固定される下部フランジ部23aと、上部旋回体12の右側面側に立設したファン取付部23bと、該ファン取付部23bに開口した外気取入口23cと、下部フランジ部23aから立ち上がって前記外気導入口14eの周囲を覆うと共に、ファン取付部23bの上面部分から下方に向かって傾斜したカバー部23dとで形成され、吸気ファン22は、前記外気取入口23cの内周部に側方を向いた状態で設けられている。また、外気導入口14eには、オイルタンク室14内のオイルタンク18の下方に延びるガイド筒24が挿入されている。
【0014】
吸気ファン22は、太陽電池25が発電した電力によって作動するもので、太陽電池25で発電した電力は、バッテリ26に蓄電され、該バッテリ26から前記吸気ファン22に電力が供給される。太陽電池25は、太陽光で発電する周知のもので、カウンタウエイト載置部17の天面に取り付けた支持台27の上面にネジなどによって固設され、バッテリ26は、カウンタウエイト載置部17の内部に設けられている。太陽電池25で発電された電力はバッテリ26に常時充電され、吸気ファン22はバッテリ26を介して得られる電力によって作動する。
【0015】
このように形成したオイルタンク室14を備えた杭打機10は、夏場の外気温が高いときに油圧オーガなどのフロント装置を駆動することによってオイルの温度が上昇し、オイルタンク18の外面温度が高くなった際に、運転台15に設けたスイッチにより前記吸気ファン22を作動させたり、あるいは、オイルタンク室14内の温度又はオイルの温度をセンサで検出し、該センサで検出した温度があらかじめ設定された温度より高くなったときに自動的に前記吸気ファン22を作動させたりすることにより、オイルタンク室14内に外気を取り込んでオイルタンク18を冷却することができる。
【0016】
すなわち、吸気ファン22が作動すると、吸気ダクト23の外気取入口23cから吸気ダクト23内に取り込まれた外気は、外気導入口14eからガイド筒24を経てオイルタンク室14の下部に至る空気流路A1にガイドされてオイルタンク室14の下部に導入される。一方、オイルタンク室14内の温度上昇した空気は、オイルタンク室14の下部に導入された外気により押し出され、オイルタンク室14の上部に形成される排気口14dから空気流通口19b,堰板20の上方を経て側面開口部19cに至る上部空気流路A2を通って強制的に外部に排出される。したがって、オイルタンク室14に熱気が籠もることがなく、外気によってオイルタンク室14を効率よく確実に冷却することができ、オイルの温度が過度に上昇することを防止できる。
【0017】
これにより、オイルタンク18の温度上昇を防ぎ、夏場の暑い時期であってもオイルがオーバーヒートすることを防止でき、オイルクーラの小型化も図れる。また、熱気はオイルタンク室14内を上昇することから、排気側の前記上部空気流路A2をオイルタンク室14の天板14aに設けることにより、熱気を上部空気流路A2から良好に外部に排出することができる。
【0018】
さらに、吸気ファン22を、太陽電池25で発電した電力で作動させることにより、極めて経済的であると共に環境的にも良好である。しかも、運転台15内のクーラなどに多くの電力を供給しなければならないエンジンのオルタネータに負担を掛けることなく吸気ファン22を作動させることができ、エンジンがアイドリング中でも、クーラを作動させて運転台の冷房を行いながら、吸気ファン22を作動させてオイルタンク18内のオイルを冷却することができる。
【0019】
また、吸気ファン22は、太陽電池25で発電した電気を蓄電するバッテリ26を介して電力が供給されることから、天候や昼夜を問わず、常に吸気ファン22を作動させることができる。また、太陽電池25とバッテリ26とはカウンタウエイト載置部17に設けられることから、ウエイトとして利用することができる。
【0020】
さらに、スペースに制約のある中型又は小型の杭打機であっても、吸気ファン22をオイルタンク室14の上面に設けていることから、オイルタンク室14の容積を大型化することなく、外気を効果的に流通させることができ、オイルタンク室14内を良好に冷却できる。また、前記外気導入口14eの上方を吸気ダクト23で覆い、該吸気ダクト23の側方に開口した外気取入口に前記吸気ファン22を設けると共に、前記排気口14dをダクト部材19で覆うことにより、オイルタンク室14内に雨水が流入することを防止できる。
【0021】
特に、スペースに制約のある中型又は小型の杭打機で、ラジエータ用ファンによって空気の流れが得られるエンジン室16とは別の側に独立したオイルタンク室14を配置した建設機械で、前記ラジエータ用ファンによる気流を得られないオイルタンク室14の場合であっても、オイルタンク室14内に外気を効果的に取り入れることができるので、オイルタンク室14を大型化することなく、オイルタンク18を良好に冷却することができる。
【0022】
尚、オイルタンク室における外気導入口及び排気口の形状や位置、ファンを設ける位置は、外気をオイルタンク室に流通させてオイルタンクを冷却できれば任意の位置に設けることができる。例えば、オイルタンク室の下部に外気導入口を、上部に排気口をそれぞれ設け、排気口に排気ファンを設けるようにすることもできる。また、太陽電池やバッテリの配置も任意であり、運転台の屋根部に太陽電池を配置したり、オイルタンク室の内部にバッテリを収容したりすることもできる。さらに、本発明は、上述の形態例のように杭打機に適用されるものに限らず、油圧ショベルやクレーンなど、その他の各種建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10…杭打機、11…下部走行体、11a…クローラ、12…上部旋回体、12a…メインフレーム、13…リーダ、14…オイルタンク室、14a…天板、14b…底板、14c…四周壁、14d…排気口、14e…外気導入口、14f…点検扉、15…運転台、16…エンジン室、17…カウンタウエイト載置部、17a…カウンタウエイト、18…オイルタンク、18a…給油口、19…ダクト部材、19a…取付板、19b…空気流通口、19c…側面開口部、19d…カバー部材、20…堰板、21…給油蓋、22…吸気ファン、23…吸気ダクト、24…ガイド筒、25…太陽電池、26…バッテリ、27…支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に設けた上部旋回体に、オイルタンクを収容するオイルタンク室を備えた建設機械において、前記オイルタンク室に外気を導入する外気導入口と、前記オイルタンク室内の空気を外部に排出する排気口と、前記外気導入口から外気を前記オイルタンク室内に取り込んで前記排気口からオイルタンク室内の空気を外部に排出する空気流れを形成するためのファンとを備えると共に、該ファンの動力源となる電力を発電させる太陽電池と、該太陽電池で発電した電気を蓄電するバッテリとを備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記太陽電池は、前記上部旋回体の車体後方に設けられるカウンタウエイトの上部に配設され、前記バッテリは、前記カウンタウエイトの内部に配設されることを特徴とする請求項1記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−140820(P2011−140820A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2480(P2010−2480)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】