建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造
【課題】 防振マウント装置の交換時の作業性、及びキャブの分離又は取付時の作業性を向上できる建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造を提供する。
【解決手段】 キャブの外面に取り付けたブラケットと、車体フレーム上に取り付けたキャブベースと、キャブベース上に取り付けた支持フレームとを備え、支持フレームに防振マウント装置を介してブラケットを取り付け、防振マウント装置とブラケットとの取付部はその取付手段をキャブ外部から取外し可能な位置に設けられる。支持フレームは、キャブの外方に向けて開口した防振マウント取付部を備える。
【解決手段】 キャブの外面に取り付けたブラケットと、車体フレーム上に取り付けたキャブベースと、キャブベース上に取り付けた支持フレームとを備え、支持フレームに防振マウント装置を介してブラケットを取り付け、防振マウント装置とブラケットとの取付部はその取付手段をキャブ外部から取外し可能な位置に設けられる。支持フレームは、キャブの外方に向けて開口した防振マウント取付部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブルドーザ、油圧ショベル等建設車両では、車体フレーム側からキャブへの振動の影響を低減するために、車体フレームに防振マウント装置を介してキャブを取り付ける構造としている。例えば特許文献1によると、図6及び図7に示すように、大型油圧ショベル1は、下部走行体2上に旋回自在に搭載された旋回体フレーム3上の、前部左右中央に作業機4を上下揺動自在に取り付け、前部左側に所定高さを有するキャブベース45を設け、このキャブベース45の上面部に防振マウント装置40を介してキャブ6を設置している。キャブベース45は、四方を前後面板及び左右側面板によって囲まれ上部が開口した箱状の外枠体41と、外枠体41の上部内側に水平方向に延在して設けられ、四隅部に幅広のブラケット部42Aが形成されたキャブ支持板42とを備えている。
【0003】
キャブ6の下部内側には、図7に示すように床板用ブラケット7が溶接等で一体に設けられており、床板用ブラケット7にはキャブ6の床面となる床板8がボルト(図示せず)等で固定されている。床板8の下面側には、前後左右の四隅部に防振マウント装置40の上端側を取り付けるための取付座43が溶接等で取り付けられている。防振マウント装置40は、複数のゴム板と薄鋼板とをサンドイッチ状に積層化して形成された積層ゴムからなり、上下両端側に上側取付板40Aと下側取付板40Bとを一体に設けている。そして、この防振マウント装置40は、下側取付板40Bがキャブ支持板42のブラケット部42A上にボルト等で取り付けられ、上側取付板40Aがキャブ6の床板8の取付座43にボルト等で取り付けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−136545号公報(第5頁、第1、3,5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の防振マウント装置の取付構造では、防振マウント装置の故障時に防振マウント装置を交換する際に、上記特許文献1での記載は無いが通常装着されている、床面を覆う樹脂製カバーを取り除いた後、キャブ6の床板用ブラケット7と床板8とを固定しているボルト(図示せず)を取り除き、次いでキャブ6をクレーン等で吊り上げて取り除き、この後ボルト等を取り除いて防振マウント装置40を取り外さなければならない。このため、防振マウント装置40の交換作業には多大な時間を要し、メンテナンス性が良くないという問題がある。また、大型油圧ショベル1の場合、トレーラ車で運搬する際に運搬可能な大きさ、重量となるようにキャブ6とキャブベース45とを分離する必要があり、その際の分離及び再組立作業が非常に面倒で多大な時間がかかるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、防振マウント装置の交換時の作業性、及びキャブの分離又は取付時の作業性を向上できる建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明は建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造において、
キャブの外面に取り付けられたブラケットと、
車体フレーム上に取り付けられたキャブベースと、
キャブベース上に取り付けられた支持フレームとを備え、
前記ブラケットは前記支持フレームと防振マウント装置を介して取り付けられた構成としている。
【0008】
第2発明は、第1発明において、前記支持フレームは、キャブの外方に向けて開放した防振マウント取付部を備えた構成としている。
【0009】
また第3発明は、第1又は第2発明において、前記防振マウント装置が複数個取り付けられたプレートを前記支持フレームに取り付ける構成としている。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によると、防振マウント装置とキャブ側ブラケットとの取付部を、その取付手段をキャブ外部から取外し可能な位置に設けたため、キャブと防振マウント装置との分離作業の際に従来のようにキャブ内側からカバーやボルト等を取り除く必要が無く、キャブ外部から容易に取付手段(ボルト等)を取外しできる。従って、防振マウント装置の交換作業及びキャブの分離作業の作業性を大幅に向上できる。
【0011】
第2発明によると、防振マウント装着部がキャブの側方に向けて開口しているため、キャブをクレーン等で持ち上げることなく、防振マウント装置をキャブ側方に抜いて取り外すことができる。このため、防振マウント装置の交換作業が非常に容易である。
【0012】
また第3発明によると、複数の防振マウント装置を1つのユニットとして一括で取付又は取外しができるため、防振マウント装置の交換作業時間をさらに短くすることができ、作業性が非常に良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では、本発明の適用機械として大型油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0014】
図1に、油圧ショベルのキャブの取付部斜視図を示している。油圧ショベルの旋回体フレーム(車体フレームの一例である。図示せず。)上の前部左側にキャブベース5を設け、キャブベース5の上面部の左右略中央部に複数の防振マウント装置15,…を介してキャブ6を取り付けている。それぞれの防振マウント装置15,…は、キャブ6の下部左右に配置された防振マウント取付部10,10に装着されている。
【0015】
キャブベース5は、図2に示すように、略直方体形状に構成されたフレーム枠体の外側面に、前面板16a、後面板16b、及び左右側面板16c、16dをそれぞれ取り付けた枠体16と、枠体16の上面部フレームに溶接等で固定された支持フレーム11とを備えている。支持フレーム11は、平面視で矩形状をしたフレーム枠体で構成されており、左右に設けた支持ブラケット17a,17bと、前後に設けたフレーム17c,17dとを溶接等で接合して構成されている。前後のフレーム17c,17dの上面には、図3に示すように、中央部に貫通孔18aを形成した上面プレート18を両フレーム17c,17d間を覆うように取り付けられている。なお、図2では枠体16のフレーム枠体構造を説明のために簡潔に表してある。
【0016】
左右の支持ブラケット17a,17bは互いに左右略対称で、略同一の構成をしており、開放方向が反対であるだけなので、ここでは図4を参照して左側の支持ブラケット17aの構成を説明する。支持ブラケット17aは、側面部材21と開口プレート23と支持プレート24とを溶接等で接合して構成されている。側面部材21は、平面視でU字形状をしており、そのU字開放部がキャブ6の左方に向けて設けられている。開口プレート23は、左右方向側方(ここでは左方)に向けて開放した切欠部22が長手方向に所定間隔L1で形成されており、その切欠部22を側面部材21の開放部側に向けて、側面部材21の上面に接合されている。支持プレート24は、開口プレート23の隣接する切欠部22,22の間にそれぞれ設けられて、側面部材21及び開口プレート23と溶接等で接合され、開口プレート23を支持している。
【0017】
前記防振マウント取付部10,10は、上記支持ブラケット17a,17bと、複数の防振ユニット12と、キャブ6側の複数のブラケット13とを有している。防振ユニット12は、所定個数の防振マウント装置15を装着するための孔12bが形成されたプレート12aと、該孔12b内に挿入され、該プレート12aにボルト26等の取付手段で取り付けられる複数個の防振マウント装置15とを備えており、前記プレート12aは、支持ブラケット17a,17b上にボルト25等の取付手段で取り付けられる。ブラケット13は、側面視でU字形状をしたブラケットの水平部材13aにマウント取付孔13bを有し、基端部がキャブ6の左右側面壁6a,6bの外面下部に溶接等で取り付けられている。
【0018】
なお、プレート12aの前記孔12bの数は図示の3個に限定されず、ユニットとしての防振マウント装置取付個数に応じて形成すればよい。本例では、キャブ6の後部壁面の外面左側にエアコン9を取り付けているため、左側の防振マウント取付部10には防振マウント装置15を8個、右側の防振マウント取付部10には防振マウント装置15を7個装着可能としている。従って、左側に取り付けるプレート12aは、孔12bの数が3個のものと、2個のものとが使用され、右側に取り付けるプレート12aは、孔12bの数が3個のものと、1個のものとが使用される。
【0019】
防振マウント装置15は、本実施例では図5に示すようなオイル封入式のダンパマウントを用いている。この液体封入式ダンパマウントは、容器状のケース30内にシリコーンオイル等の高粘性液体31を封入し、ケース30の上部開口部を密閉するように同心円状に複数の弾性体と環状部材とが加硫接着等によって積層された弾性体32を設け、弾性体32の中心部に加硫接着したスリーブ33の内部に上下摺動自在にシャフト34を挿入し、このシャフト34の下端面に下向きカップ状のダンパ部材35を前記高粘性液体31内に浸るように取り付けている。ダンパ部材35とケース30の底面との間に、該防振マウント装置15で支持する対象物(キャブ6等)の荷重を受けるばね部材36を挿入し、このばね部材36によりシャフト34を上方に付勢している。なお、シャフト34は、上端面に取付ねじ穴34aが形成されている。
【0020】
弾性体32とケース30とで囲まれた密閉空間には、高粘性液体31で満たされた下部液体封入室36a、上部液体封入室36bと、空気で満たされた空気封入室36cとが形成されている。下部液体封入室36aと上部液体封入室36bとの間は、ダンパ部材35の外周面下部とケース30の内周面とで挟まれた流路隙間H1、及びダンパ部材35の外周面上部とケース30上部に設けた中部弾性体37とで挟まれた流路隙間H2により連通し、また上部液体封入室36bと空気封入室36cとの間は、中部弾性体37とスリーブ33とで挟まれた流路隙間H2により連通している。
【0021】
また、図1に示すように、キャブ6のブラケット13近傍の左右側面壁6a,6bには、少なくとも前後2箇所に所定距離離間して、上下方向の雌ねじが形成されたナット部材19,19が溶接等によって接合されている。このナット部材19にはボルト20が螺合しており、ボルト20の下端部は左右支持ブラケット17a,17bの開口プレート23に当接させている。
【0022】
次に、図4を参照して、キャブ6の取付手順を説明する。キャブ6を、キャブベース5の上面に設けられた支持フレーム11上に載せる。このとき、支持フレーム11の左右支持ブラケット17a,17bを、キャブ6の左右側方に位置させる。防振ユニット12の防振マウント装置15が、左右支持ブラケット17a,17bの開口プレート23の切欠部22内にそれぞれ入るように、防振ユニット12をキャブ6の左右外側からそれぞれ挿入して左右支持ブラケット17a,17b上に設置し、プレート12aを複数のボルト25で左右支持ブラケット17a,17bに取り付ける。なお、この際、ボルト20をねじ込んでその下端部を左右支持ブラケット17a,17bの開口プレート23に押し付けることによって、キャブ6のブラケット13を少し浮かすことができるため、上記の防振ユニット12を左右外側から挿入する作業がより容易になる。そして、ボルト14を、ブラケット13のマウント取付孔13bを経由して、それぞれの防振マウント装置15のシャフト34の取付ねじ穴34aにねじ込み、キャブ6を防振マウント装置15に取り付ける。
【0023】
防振マウント装置15を取外すとき、又はキャブ6を取外すときには、上記と逆の作業をやればよい。この際、オペレータはキャブ6の外部から、すなわち上記実施例ではキャブ6の左右側方から容易にボルト14を取り除く作業ができるので、従来のようにキャブ6の内部から床面のカバー等を剥ぐってボルトを取り除くなどの作業が不要となる。この後、ボルト25を取り除くだけで、左右支持ブラケット17a,17bの左右外方に開口した切欠部22から防振ユニット12を左右外方に抜き出すことができるため、キャブ6を取り除かない状態のままで防振マウント装置15の取り外しが非常に容易である。また、防振ユニット12として複数の防振マウント装置15を一括で抜き出すことができるため、作業性がさらに良い。
【0024】
また、キャブ6の外部からボルト14を取り除くだけでキャブ6を取外すことができるため、キャブ6の取外しが短時間でできる。
防振ユニット12の防振マウント装置15を左右支持ブラケット17a,17bの切欠部22内に入れ込むようにして取り付けているので、防振マウント取付部10の高さを低い位置にすることができ、外観が良い。
【0025】
なお、上記実施形態により説明した本発明に係る各構成要素は、これに限定するものではなく、本発明の主旨を満たす範囲内で各構成要素の形状、取付位置、取付個数等を変更することは可能である。
例えば、本発明に係る防振マウント取付部10の位置はキャブ6の下部左右側方に限定されず、キャブ6の下方でも構わないが、要は、キャブ6と防振マウント装置15との連結部のボルト等取付手段を取り除く作業がキャブ6の外部から可能であるような位置であればよい。
【0026】
また、左右の防振マウント取付部10,10に取り付ける防振マウント装置15の個数は、適用機械のキャブの大きさ、振動の大きさ、防振マウント装置15の特性等を考慮して適宜設定すればよい。さらに、防振ユニット12の防振マウント装置15の取付個数は3個に限らず、適用箇所に応じて適切な個数であればよい。さらにまた、防振マウント装置15は液体封入式ダンパマウントに限らず、例えばゴム式防振マウントであってもよい。
【0027】
本発明の適用機械は大型油圧ショベルに限らず、他の中小型油圧ショベル、ブルドーザなどの建設車両であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る油圧ショベルのキャブの取付部斜視図である。
【図2】本発明に係るキャブベースの斜視図である。
【図3】本発明に係るキャブベースの平面図である。
【図4】本発明に係るキャブの取付構造の説明図である。
【図5】本発明に適用される防振マウント装置例を表す断面図である。
【図6】油圧ショベルの側面図である。
【図7】従来技術に係る防振マウント装置の取付構造を表す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…大型油圧ショベル、3…旋回体フレーム(車体フレーム)、5…キャブベース、6…キャブ、6a,6b…左右側面壁、7…床板用ブラケット、8…床板、9…エアコン、10…防振マウント取付部、11…支持フレーム、12…防振ユニット、12a…プレート、13…ブラケット、14…ボルト、15…防振マウント装置、16…枠体、17a,17b…支持ブラケット、17c,17d…フレーム、19…ナット部材、20…ボルト、21…側面部材、22…切欠部、23…開口プレート、24…支持プレート、25…ボルト、26…ボルト、30…ケース、31…高粘性液体、32…弾性体、33…スリーブ、34…シャフト、34a…取付ねじ穴、35…ダンパ部材、36…ばね部材、37…中部弾性体、40…防振マウント装置、42…キャブ支持板、43…取付座、45…キャブベース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブルドーザ、油圧ショベル等建設車両では、車体フレーム側からキャブへの振動の影響を低減するために、車体フレームに防振マウント装置を介してキャブを取り付ける構造としている。例えば特許文献1によると、図6及び図7に示すように、大型油圧ショベル1は、下部走行体2上に旋回自在に搭載された旋回体フレーム3上の、前部左右中央に作業機4を上下揺動自在に取り付け、前部左側に所定高さを有するキャブベース45を設け、このキャブベース45の上面部に防振マウント装置40を介してキャブ6を設置している。キャブベース45は、四方を前後面板及び左右側面板によって囲まれ上部が開口した箱状の外枠体41と、外枠体41の上部内側に水平方向に延在して設けられ、四隅部に幅広のブラケット部42Aが形成されたキャブ支持板42とを備えている。
【0003】
キャブ6の下部内側には、図7に示すように床板用ブラケット7が溶接等で一体に設けられており、床板用ブラケット7にはキャブ6の床面となる床板8がボルト(図示せず)等で固定されている。床板8の下面側には、前後左右の四隅部に防振マウント装置40の上端側を取り付けるための取付座43が溶接等で取り付けられている。防振マウント装置40は、複数のゴム板と薄鋼板とをサンドイッチ状に積層化して形成された積層ゴムからなり、上下両端側に上側取付板40Aと下側取付板40Bとを一体に設けている。そして、この防振マウント装置40は、下側取付板40Bがキャブ支持板42のブラケット部42A上にボルト等で取り付けられ、上側取付板40Aがキャブ6の床板8の取付座43にボルト等で取り付けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−136545号公報(第5頁、第1、3,5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の防振マウント装置の取付構造では、防振マウント装置の故障時に防振マウント装置を交換する際に、上記特許文献1での記載は無いが通常装着されている、床面を覆う樹脂製カバーを取り除いた後、キャブ6の床板用ブラケット7と床板8とを固定しているボルト(図示せず)を取り除き、次いでキャブ6をクレーン等で吊り上げて取り除き、この後ボルト等を取り除いて防振マウント装置40を取り外さなければならない。このため、防振マウント装置40の交換作業には多大な時間を要し、メンテナンス性が良くないという問題がある。また、大型油圧ショベル1の場合、トレーラ車で運搬する際に運搬可能な大きさ、重量となるようにキャブ6とキャブベース45とを分離する必要があり、その際の分離及び再組立作業が非常に面倒で多大な時間がかかるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に着目してなされたもので、防振マウント装置の交換時の作業性、及びキャブの分離又は取付時の作業性を向上できる建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明は建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造において、
キャブの外面に取り付けられたブラケットと、
車体フレーム上に取り付けられたキャブベースと、
キャブベース上に取り付けられた支持フレームとを備え、
前記ブラケットは前記支持フレームと防振マウント装置を介して取り付けられた構成としている。
【0008】
第2発明は、第1発明において、前記支持フレームは、キャブの外方に向けて開放した防振マウント取付部を備えた構成としている。
【0009】
また第3発明は、第1又は第2発明において、前記防振マウント装置が複数個取り付けられたプレートを前記支持フレームに取り付ける構成としている。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によると、防振マウント装置とキャブ側ブラケットとの取付部を、その取付手段をキャブ外部から取外し可能な位置に設けたため、キャブと防振マウント装置との分離作業の際に従来のようにキャブ内側からカバーやボルト等を取り除く必要が無く、キャブ外部から容易に取付手段(ボルト等)を取外しできる。従って、防振マウント装置の交換作業及びキャブの分離作業の作業性を大幅に向上できる。
【0011】
第2発明によると、防振マウント装着部がキャブの側方に向けて開口しているため、キャブをクレーン等で持ち上げることなく、防振マウント装置をキャブ側方に抜いて取り外すことができる。このため、防振マウント装置の交換作業が非常に容易である。
【0012】
また第3発明によると、複数の防振マウント装置を1つのユニットとして一括で取付又は取外しができるため、防振マウント装置の交換作業時間をさらに短くすることができ、作業性が非常に良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では、本発明の適用機械として大型油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0014】
図1に、油圧ショベルのキャブの取付部斜視図を示している。油圧ショベルの旋回体フレーム(車体フレームの一例である。図示せず。)上の前部左側にキャブベース5を設け、キャブベース5の上面部の左右略中央部に複数の防振マウント装置15,…を介してキャブ6を取り付けている。それぞれの防振マウント装置15,…は、キャブ6の下部左右に配置された防振マウント取付部10,10に装着されている。
【0015】
キャブベース5は、図2に示すように、略直方体形状に構成されたフレーム枠体の外側面に、前面板16a、後面板16b、及び左右側面板16c、16dをそれぞれ取り付けた枠体16と、枠体16の上面部フレームに溶接等で固定された支持フレーム11とを備えている。支持フレーム11は、平面視で矩形状をしたフレーム枠体で構成されており、左右に設けた支持ブラケット17a,17bと、前後に設けたフレーム17c,17dとを溶接等で接合して構成されている。前後のフレーム17c,17dの上面には、図3に示すように、中央部に貫通孔18aを形成した上面プレート18を両フレーム17c,17d間を覆うように取り付けられている。なお、図2では枠体16のフレーム枠体構造を説明のために簡潔に表してある。
【0016】
左右の支持ブラケット17a,17bは互いに左右略対称で、略同一の構成をしており、開放方向が反対であるだけなので、ここでは図4を参照して左側の支持ブラケット17aの構成を説明する。支持ブラケット17aは、側面部材21と開口プレート23と支持プレート24とを溶接等で接合して構成されている。側面部材21は、平面視でU字形状をしており、そのU字開放部がキャブ6の左方に向けて設けられている。開口プレート23は、左右方向側方(ここでは左方)に向けて開放した切欠部22が長手方向に所定間隔L1で形成されており、その切欠部22を側面部材21の開放部側に向けて、側面部材21の上面に接合されている。支持プレート24は、開口プレート23の隣接する切欠部22,22の間にそれぞれ設けられて、側面部材21及び開口プレート23と溶接等で接合され、開口プレート23を支持している。
【0017】
前記防振マウント取付部10,10は、上記支持ブラケット17a,17bと、複数の防振ユニット12と、キャブ6側の複数のブラケット13とを有している。防振ユニット12は、所定個数の防振マウント装置15を装着するための孔12bが形成されたプレート12aと、該孔12b内に挿入され、該プレート12aにボルト26等の取付手段で取り付けられる複数個の防振マウント装置15とを備えており、前記プレート12aは、支持ブラケット17a,17b上にボルト25等の取付手段で取り付けられる。ブラケット13は、側面視でU字形状をしたブラケットの水平部材13aにマウント取付孔13bを有し、基端部がキャブ6の左右側面壁6a,6bの外面下部に溶接等で取り付けられている。
【0018】
なお、プレート12aの前記孔12bの数は図示の3個に限定されず、ユニットとしての防振マウント装置取付個数に応じて形成すればよい。本例では、キャブ6の後部壁面の外面左側にエアコン9を取り付けているため、左側の防振マウント取付部10には防振マウント装置15を8個、右側の防振マウント取付部10には防振マウント装置15を7個装着可能としている。従って、左側に取り付けるプレート12aは、孔12bの数が3個のものと、2個のものとが使用され、右側に取り付けるプレート12aは、孔12bの数が3個のものと、1個のものとが使用される。
【0019】
防振マウント装置15は、本実施例では図5に示すようなオイル封入式のダンパマウントを用いている。この液体封入式ダンパマウントは、容器状のケース30内にシリコーンオイル等の高粘性液体31を封入し、ケース30の上部開口部を密閉するように同心円状に複数の弾性体と環状部材とが加硫接着等によって積層された弾性体32を設け、弾性体32の中心部に加硫接着したスリーブ33の内部に上下摺動自在にシャフト34を挿入し、このシャフト34の下端面に下向きカップ状のダンパ部材35を前記高粘性液体31内に浸るように取り付けている。ダンパ部材35とケース30の底面との間に、該防振マウント装置15で支持する対象物(キャブ6等)の荷重を受けるばね部材36を挿入し、このばね部材36によりシャフト34を上方に付勢している。なお、シャフト34は、上端面に取付ねじ穴34aが形成されている。
【0020】
弾性体32とケース30とで囲まれた密閉空間には、高粘性液体31で満たされた下部液体封入室36a、上部液体封入室36bと、空気で満たされた空気封入室36cとが形成されている。下部液体封入室36aと上部液体封入室36bとの間は、ダンパ部材35の外周面下部とケース30の内周面とで挟まれた流路隙間H1、及びダンパ部材35の外周面上部とケース30上部に設けた中部弾性体37とで挟まれた流路隙間H2により連通し、また上部液体封入室36bと空気封入室36cとの間は、中部弾性体37とスリーブ33とで挟まれた流路隙間H2により連通している。
【0021】
また、図1に示すように、キャブ6のブラケット13近傍の左右側面壁6a,6bには、少なくとも前後2箇所に所定距離離間して、上下方向の雌ねじが形成されたナット部材19,19が溶接等によって接合されている。このナット部材19にはボルト20が螺合しており、ボルト20の下端部は左右支持ブラケット17a,17bの開口プレート23に当接させている。
【0022】
次に、図4を参照して、キャブ6の取付手順を説明する。キャブ6を、キャブベース5の上面に設けられた支持フレーム11上に載せる。このとき、支持フレーム11の左右支持ブラケット17a,17bを、キャブ6の左右側方に位置させる。防振ユニット12の防振マウント装置15が、左右支持ブラケット17a,17bの開口プレート23の切欠部22内にそれぞれ入るように、防振ユニット12をキャブ6の左右外側からそれぞれ挿入して左右支持ブラケット17a,17b上に設置し、プレート12aを複数のボルト25で左右支持ブラケット17a,17bに取り付ける。なお、この際、ボルト20をねじ込んでその下端部を左右支持ブラケット17a,17bの開口プレート23に押し付けることによって、キャブ6のブラケット13を少し浮かすことができるため、上記の防振ユニット12を左右外側から挿入する作業がより容易になる。そして、ボルト14を、ブラケット13のマウント取付孔13bを経由して、それぞれの防振マウント装置15のシャフト34の取付ねじ穴34aにねじ込み、キャブ6を防振マウント装置15に取り付ける。
【0023】
防振マウント装置15を取外すとき、又はキャブ6を取外すときには、上記と逆の作業をやればよい。この際、オペレータはキャブ6の外部から、すなわち上記実施例ではキャブ6の左右側方から容易にボルト14を取り除く作業ができるので、従来のようにキャブ6の内部から床面のカバー等を剥ぐってボルトを取り除くなどの作業が不要となる。この後、ボルト25を取り除くだけで、左右支持ブラケット17a,17bの左右外方に開口した切欠部22から防振ユニット12を左右外方に抜き出すことができるため、キャブ6を取り除かない状態のままで防振マウント装置15の取り外しが非常に容易である。また、防振ユニット12として複数の防振マウント装置15を一括で抜き出すことができるため、作業性がさらに良い。
【0024】
また、キャブ6の外部からボルト14を取り除くだけでキャブ6を取外すことができるため、キャブ6の取外しが短時間でできる。
防振ユニット12の防振マウント装置15を左右支持ブラケット17a,17bの切欠部22内に入れ込むようにして取り付けているので、防振マウント取付部10の高さを低い位置にすることができ、外観が良い。
【0025】
なお、上記実施形態により説明した本発明に係る各構成要素は、これに限定するものではなく、本発明の主旨を満たす範囲内で各構成要素の形状、取付位置、取付個数等を変更することは可能である。
例えば、本発明に係る防振マウント取付部10の位置はキャブ6の下部左右側方に限定されず、キャブ6の下方でも構わないが、要は、キャブ6と防振マウント装置15との連結部のボルト等取付手段を取り除く作業がキャブ6の外部から可能であるような位置であればよい。
【0026】
また、左右の防振マウント取付部10,10に取り付ける防振マウント装置15の個数は、適用機械のキャブの大きさ、振動の大きさ、防振マウント装置15の特性等を考慮して適宜設定すればよい。さらに、防振ユニット12の防振マウント装置15の取付個数は3個に限らず、適用箇所に応じて適切な個数であればよい。さらにまた、防振マウント装置15は液体封入式ダンパマウントに限らず、例えばゴム式防振マウントであってもよい。
【0027】
本発明の適用機械は大型油圧ショベルに限らず、他の中小型油圧ショベル、ブルドーザなどの建設車両であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る油圧ショベルのキャブの取付部斜視図である。
【図2】本発明に係るキャブベースの斜視図である。
【図3】本発明に係るキャブベースの平面図である。
【図4】本発明に係るキャブの取付構造の説明図である。
【図5】本発明に適用される防振マウント装置例を表す断面図である。
【図6】油圧ショベルの側面図である。
【図7】従来技術に係る防振マウント装置の取付構造を表す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…大型油圧ショベル、3…旋回体フレーム(車体フレーム)、5…キャブベース、6…キャブ、6a,6b…左右側面壁、7…床板用ブラケット、8…床板、9…エアコン、10…防振マウント取付部、11…支持フレーム、12…防振ユニット、12a…プレート、13…ブラケット、14…ボルト、15…防振マウント装置、16…枠体、17a,17b…支持ブラケット、17c,17d…フレーム、19…ナット部材、20…ボルト、21…側面部材、22…切欠部、23…開口プレート、24…支持プレート、25…ボルト、26…ボルト、30…ケース、31…高粘性液体、32…弾性体、33…スリーブ、34…シャフト、34a…取付ねじ穴、35…ダンパ部材、36…ばね部材、37…中部弾性体、40…防振マウント装置、42…キャブ支持板、43…取付座、45…キャブベース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造において、
キャブの外面に取り付けられたブラケットと、
車体フレーム上に取り付けられたキャブベースと、
キャブベース上に取り付けられた支持フレームとを備え、
前記ブラケットは前記支持フレームと防振マウント装置を介して取り付けられた
ことを特徴とする建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造。
【請求項2】
前記支持フレームは、キャブの外方に向けて開放した防振マウント取付部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造。
【請求項3】
前記防振マウント装置が複数個取り付けられたプレートを前記支持フレームに取り付ける
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造。
【請求項1】
建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造において、
キャブの外面に取り付けられたブラケットと、
車体フレーム上に取り付けられたキャブベースと、
キャブベース上に取り付けられた支持フレームとを備え、
前記ブラケットは前記支持フレームと防振マウント装置を介して取り付けられた
ことを特徴とする建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造。
【請求項2】
前記支持フレームは、キャブの外方に向けて開放した防振マウント取付部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造。
【請求項3】
前記防振マウント装置が複数個取り付けられたプレートを前記支持フレームに取り付ける
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の建設車両のキャブの防振マウント装置取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2006−45856(P2006−45856A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227124(P2004−227124)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]