説明

建造物の表面構造

【課題】ヒートアイランド現象を抑止するとともに、集中豪雨が発生した場合においても水害を抑制することのできるような建造物などの表面構造を提供する。
【解決手段】建造物1の表面に形成される表面構造において、外側表面に向かって、基材4と、赤外線反射吸収層50と、外気の水分を吸着する水分吸着層60とを設けるようにする。そして、この水分吸着層60を珪藻土、火山灰、活性炭などの多孔性粒子を含有する水分吸着材で構成するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家屋やビル、電話ボックス、ガードレールなどの表面に設けられる構造に関するものであり、より詳しくは、熱を反射吸収することによって温度上昇を防止し、ヒートアイランド現象を抑制できるようにした表面形成構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の外壁部材などには、赤外線を反射吸収させるようにした塗料などが塗布されている。このような塗料としては、例えば、NTTアドバンステクノロジ株式会社が「アットシールド・カラー」なる塗料を提案しており、このような塗料を建造物の屋根などに塗布することにより、赤外線を約60%〜80%反射できるようにしている(非特許文献1)。また、下記の特許文献1〜3などには、外壁部材における高断熱化を図るために、建造物の外装表面に赤外線反射膜を形成するための塗料などが種々提案されている。
【非特許文献1】「NTT AT 先端技術紹介サイト」(www.keytech.ntt-at.co.jp/environ/prd_4004.html)2006.1.25確認
【特許文献1】特開2005−186062号公報
【特許文献2】特開2004−351406号公報
【特許文献3】特開2004−238968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような赤外線反射材を外壁部材の表面に形成した場合であっても、必ずしも100%の断熱効果をあげることはできず、外壁部材に熱が蓄積されてしまうのが現状である。このため、外壁部材に熱が蓄積されてしまうと、室内空間に熱が伝達され、特に、暑い時期などにおいては、冷房による消費電力が高くなって省エネルギー化を図ることができず、都市部におけるヒートアイランド現象を助長することとなっている。
【0004】
また、近年の都市部などにおいては、このヒートアイランド現象に基づいて、比較的短時間に記録的な集中豪雨が発生することが多くなってきている。このような雨は都市部における温度上昇を抑制する働きを有しているが、記録的な集中豪雨は水害などを発生させる問題ともなっている。
【0005】
そこで、本発明は上記問題に着目してなされたもので、ヒートアイランド現象を抑止するとともに、集中豪雨が発生した場合においても水害を抑制できるような建造物などの表面構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、建造物の表面に形成される表面構造において、外側表面に向かって、基材と、赤外線反射吸収層と、外気の水分を吸着する水分吸着層とを設けるようにしたものである。
【0007】
このようにすれば、外気の水分を吸収することによって外部からの熱を気化させることができ、外壁部材などにおける温度上昇を抑止することができるようになる。また、雨天時などにおいても、雨水を屋根や壁面で一時保留させることができるので、集中豪雨が発生した場合であっても水害を抑止することができるようになる。
【0008】
また、別の発明では、基材の表面に外気の水分を吸着する単一の赤外線反射吸収・水分吸着層を設けるようにする。
【0009】
このようにすれば、上述のように気化熱による温度上昇を抑止し、水害を防止するこができるうえ、さらに、表面側に赤外線反射層と水分吸着材を設けるようにしているため、表面での熱の遮断を効果的に行うことができるようになる。
【0010】
さらに、このような水分吸着材として多孔性粒子を含有してなる材料を用いる。このような多孔性粒子を含有する材料しては、例えば、珪藻土、火山灰、活性炭などを用いるようにする。
【0011】
このようにすれば、自然の材料を用いるために環境に優しい表面構造にすることができるとともに、多孔性粒子によって、大気中における有害物質を吸着することができ、さらには、防音効果を果たすことから騒音問題を解決することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、建造物の表面に形成される表面構造において、外側表面に向かって、基材と、赤外線反射吸収層と、外気の水分を吸着する水分吸着層とを設けるようにしたので、外気の水分を吸収することによって外部からの熱を気化させることができ、外壁部材などにおける温度上昇を抑止することができるようになる。また、雨天時などにおいても、雨水を屋根や壁面で一時保留させることができるので、集中豪雨が発生した場合であっても水害を抑止することができるようになる。また、別の発明では、基材の表面に外気の水分を吸着する単一の赤外線反射吸収・水分吸着層を設けるようにしたので、表面での熱の放出や遮断を効果的に行うことができる。また、このような水分吸着材として、例えば、珪藻土、火山灰、活性炭などを用いるようにしたので、環境に優しい表面構造にすることができ、また、大気中における有害物質を吸着し、さらには、防音効果を高めることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態における建造物1の表面構造は、図1や図2などに示すような一般家屋などにおける外壁部材2や屋根部材3(屋上を含む)などの表面構造であって、基材4の表面に赤外線反射材を形成し、さらに、その上に大気中の水分を吸収する水分吸着層60を設けるようにしたものである。
【0014】
この外壁部材2の基材4としては、例えば、窯業サイディングや金属製サイディング、木製サイディングなどの種類が用いられ、好ましくは、熱伝導率の低いサイディングを用いる。もちろん、これ以外のサイディングであってもよい。そして、これらのサイディングの外側表面(外部空間に表出している側の面)に建材の段階で赤外線反射吸収材550を塗布する。
【0015】
この赤外線反射吸収材5としては、赤外線を外部に反射させ、もしくは、吸着することによって赤外線を内部に透過させないようにする希釈溶媒などを用いる。この赤外線の反射率もしくは吸着率としては、少なくとも30%以上反射させ、また、30%以上吸着させるようにすることが好ましい。赤外線を30%以下であることが好ましい。この希釈溶媒は、例えば、NTTアドバンステクノロジ株式会社の「アットシールド・カラー」などを用いるようにしてもよく、また、特開2005−220176号公報などに記載されているように、バインダーに対して1重量%以上5重量%以下で平均粒径100nm以下の六ホウ化ランタン微粒子や、バインダーに対して2重量%以上10重量%以下で平均粒径100nm以下の酸化水酸化鉄や、或いは、バインダーに対して3重量%以上10重量%以下のベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の有機紫外線吸収材料、常温硬化性バインダー、希釈溶媒を含む透明熱線紫外線遮蔽膜形成用塗料などを用いるようにしてもよい。また、これ以外にも、一液弱溶剤反応硬化型シリコン変性樹脂塗料や水溶性の赤外線反射吸収材5など種々の塗料を用いることができる。なお、ここで、赤外線反射吸収材5とは、赤外線を反射吸収することによって、赤外線の透過量を少なくすることのできる塗料や粒状体、或いは、フィルムなどの形成体や組成物をいう。
【0016】
そして、この赤外線反射吸収材5の表面には水分吸着層60が形成される。この水分吸着層60としては、例えば、珪藻土、火山灰、活性炭などの多孔性粒子を含む塗料を用いる。このような多孔性粒子を用いると次のような効果を得ることができる。
(A)大気中における水分を吸収し、高温時には水分を放出することができる。
(B)表面の防かび効果を有する。
(C)多孔構造によって断熱効果を有し、表面の温度上昇を抑止することができる。
(D)空気中における窒素酸化物、ホルムアルデヒドなどの有害物質を除去できる。
(E)消石灰などを含有させた場合は、空気中の二酸化炭素を吸収する。
(F)タバコやペットなどの臭いを除去することができる。
(G)騒音を吸収することができる。
【0017】
このような塗料を塗布する場合粘土などの固化剤を混入させて赤外線反射吸収材5の表面に固化させるようにする。このような水分吸着層60を形成する場合、水分吸着層60が厚いと多くの水分を吸収することができるため、気化熱による温度上昇を抑止することができる。一方、あまり水分吸着層60が厚すぎると水分吸着時にその層が重くなり、赤外線反射吸収材5から剥がれ落ちてしまう可能性がる。このため、好ましくは厚さ3mm以下で水分吸着層60を形成するようにする。
【0018】
次に、このように構成される表面形成構造の形成方法について説明する。
【0019】
まず、第一の方法では、建造物1の外壁部材2や屋根部材3などにこのような表面構造を形成する場合、あらかじめ、外壁部材2や屋根部材3などの建材の状態で基材4の表面に赤外線反射吸収材5を塗布しておく。そして、工場内で強制的に赤外線反射吸収材5を乾燥させ、その後、その表面に水分吸着材6をエアガンなどによって薄く塗布していく。そして、同様に乾燥させた後、現場で建造物1の表面に取り付けるようにする。
【0020】
このように工場内で赤外線反射吸収材5や水分吸着層60を設けるようにすれば、天候に左右されることなく効率的に赤外線反射吸収材5や水分吸着層60を形成することができるようになる。
【0021】
また、第二の方法では、同様に、外壁部材2や屋根部材3などの建材の状態で表面に赤外線反射吸収材5を塗布し、その赤外線反射吸収材5が乾燥する前に、その表面に水分吸着材6をエアガンなどによって薄く塗布していく。そして、工場内において強制的に乾燥させ、現場で建築物の表面に取り付けるようにする。
【0022】
このような方法を用いた場合は、図4に示すように、赤外線反射吸収層50の表面に水分吸着材6が薄く浸透するため、仮に水分吸着材6に水分が吸着されたとしても水分吸着材6が剥がれ落ちるようなことがなくなる。また、赤外線反射吸収層50を形成する場合、水溶性の材料を用いれば、水分吸着材6を塗布する際に水分を吸収することができ、より迅速に赤外線反射吸収層50や水分吸着層60を形成することができるようになる。
【0023】
さらに、第三の方法では、外壁部材2や屋根部材3などの建材の表面に、赤外線反射吸収材5と水分吸着材6とを混合させた混合材を塗布して単一の層を形成する。そして、工場内において強制的に乾燥させて、現場における建築物の表面に取り付けるようにしてく。
【0024】
このような方法を用いた場合は、赤外線反射吸収材5が外壁部材2などの表面に露出するため、赤外線反射吸収率を向上させることができる。
【0025】
また、上述のような方法はいずれも工場内において赤外線反射吸収材5と水分吸着層60とを形成するようにしているが、既成の建造物1に対してはこのような方法を採用することができない。このため、まず、建造物1の外壁部材2や屋根部材3に対して赤外線反射吸収材5を塗布し、同様に赤外線反射吸収材5が乾燥し、もしくは、乾燥する前に水分吸着材6をエアガンなどで塗布するようにする。
【0026】
このように上記実施の形態によれば、建造物1の表面に形成される表面構造において、外側表面に向かって、基材4と、赤外線反射吸収層50と、外気の水分を吸着する水分吸着層60とを設けるようにしたので、外気の水分を吸収することによって外部からの熱を気化させることができ、外壁部材2などにおける温度上昇を抑止することができるようになる。また、雨天時などにおいても、雨水を屋根や壁面で一時保留させることができるので、集中豪雨が発生した場合であっても水害を抑止することができるようになる。
【0027】
また、基材4の表面に赤外線反射吸収層50と水分吸着材6を混合させた層を形成するようにしたので、表面で赤外線を効果的に遮断することができるようになる。
【0028】
さらに、このような水分吸着材6として珪藻土、火山灰、活性炭などの多孔性粒子を含有してなる材料を用いるようにしたので、地球環境に優しい表面構造にすることができるとともに、多孔によって、大気中における有害物質などを吸着することができ、さらには、防音効果を果たすことから騒音問題を解決することができるようになる。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0030】
例えば、上記実施の形態では、建造物1として一般家屋やビルなどを例に挙げて説明したが、これに限らず、電話ボックス、ガードレール、電柱、花壇、屋外ロッカー、カーポート、屋外施設など、屋外に設けられる多種多様の構造物に対して適用することができる。
【0031】
また、上記実施の形態では、赤外線反射吸収材5と水分吸着材6とをそれぞれ別に設けて赤外線反射吸収層50や水分吸着層60などを形成するようにしたが、赤外線反射吸収材5自体に水分吸着の性質を有している場合は、その赤外線反射吸収層50だけを設けるようにしてもよい。
【0032】
さらに、上記実施の形態では、基材4上に赤外線反射吸収材5と水分吸着材6を設けるようにしているが、これ以外に他の層を設けるようにしてもよい。例えば、図5に示すように、基材4から順に、赤外線反射吸収層50、紫外線反射吸収層70、水分吸着層60を設けるようにしてもよく、また、図6に示すように、基材4から順に、赤外線および紫外線の一体的な反射吸収層57、水分吸着層60などを設けるようにしてもよい。また、図7に示すように、基材4上に防水膜80、赤外線反射吸収層50、水分吸着層60などを設けるようにしてもよい。このような防水層80としては、ゴムやセラミックなどによって形成する。セラミックによって防水層80を形成した場合は、断熱効果をより高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態における建造物の概要を示す図
【図2】同形態における外壁部材や屋根部材の表面構造を示す図
【図3】第二の実施の形態における外壁部材や屋根部材の表面構造を示す図
【図4】第三の実施の形態における外壁部材や屋根部材の表面構造を示す図
【図5】第四の実施の形態における外壁部材や屋根部材の表面構造を示す図
【図6】第五の実施の形態における外壁部材や屋根部材の表面構造を示す図
【図7】第六の実施の形態における外壁部材や屋根部材の表面構造を示す図
【符号の説明】
【0034】
1・・・建造物
2・・・外壁部材
3・・・屋根部材
4・・・基材
5・・・赤外線反射吸収材
6・・・水分吸着材
50・・・赤外線反射吸収層
60・・・水分吸着層
57・・・赤外線紫外線反射吸収層
70・・・紫外線反射吸収層
80・・・防水膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の表面に形成される表面構造において、基材から外側表面に向かって、赤外線反射吸収層と、外気の水分を吸着する水分吸着層とを設けるようにしたことを特徴とする建造物の表面構造。
【請求項2】
建造物の表面に形成される表面構造において、基材の表面に赤外線を反射もしくは吸着させるとともに外気の水分を吸着させる単一の赤外線反射吸収・水分吸着層を設けたことを特徴とする建造物の表面構造。
【請求項3】
外気の水分を吸着する材料が、多孔性粒子を含有してなる材料である請求項1または2に記載の建造物の表面構造。
【請求項4】
前記多孔性粒子が、珪藻土、火山灰、活性炭を含むものである請求項3に記載の建造物の表面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−198034(P2007−198034A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18697(P2006−18697)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(505409694)株式会社東建ハウジング (7)
【Fターム(参考)】