説明

建造物壁面の変状部検出方法、変状部検出装置および変状部検出プログラム

【課題】本件は、建造物壁面の変状部を検出する変状部検出方法、変状部検出装置および変状部検出プログラムに関し、変状部の検出精度を向上させる。
【解決手段】異なる2つの時間帯における温度分布測定から得られる2つの温度分布画像のそれぞれから平均値を取り去って2つの差分画像(画像値F,G)を作成し、互いに対応する画素ごとにD=F-G、A=|F+G|の双方を変数とする評価値E=(D-A)/2を求め閾値Tと比較して変状部を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、建造物壁面の変状部を検出する変状部検出方法および変状部検出装置、並びに、情報処理装置を変状部検出装置として動作させる変状部検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトンネルやビルなどの建造物は建造時から長期間経過すると老朽化が避けられず、老朽化した部分を適切な時期に適切に補修してその建造物の長寿命化を図ることが求められている。この老朽化のあらわれ方の一つとして、トンネルの内壁やビルの外壁などの表層部分が浮き上がるという現象が多く見られ、このような壁面の浮き上がりを早期に発見して壁が崩れ落ちる前に補修することによって、壁の崩壊による事故の未然防止や、補修に要する手間や費用の削減が求められている。
【0003】
このような、壁面が浮き上がった変状部の検出方法として、赤外線温度センサを用いて壁面の温度分布を測定する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
壁面の変状部は、壁面の表層が浮いた部分であり、その表層の裏には空気層が形成されてその空気層が一種の断熱層として作用し、外気温度が上昇している途中では、壁面の表層の浮きが見られない健全部と比べ温まり易く健全部と比べ比較的高温となり、外気温度が下降している途中では、変状部の方が健全部よりも先に冷え易く健全部と比べ比較的低温となることが知られている。
【0005】
赤外線温度センサを用いて壁面の温度分布を測定して変状部を検出する方法は、上記の温度差を利用するものであり、典型的には以下の演算により変状部が検出される。
【0006】
すなわち、赤外線センサを用いて、日中の、外気温度が上昇しつつあるときに壁面の温度分布を測定して温度分布画像を得るとともに夜間の外気温度が下降しつつあるときも同様にして壁面の温度分布画像を得る。
【0007】
それら2つの温度分布画像を得たときの壁面の温度は一般には互いに異なっているため次に、2つの温度分布画像それぞれについて、各温度分布画像の各画素について各画素の画像値とその温度分布画像の各画素の周囲の平均値(平均温度)との差分を求めることによる平均温度からの温度差分を画素値とする2つの差分画像を求める。
【0008】
このようにして求めた2つの差分画像のそれぞれの画素値を各差分画像ごとに代表させてF,Gとしたとき、それら2つの差分画像の、壁面の同一点を表わす一対の画素ごとに、それら一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gを算出し、その差分を閾値Tと比較して周囲とは温度変化が異なった変状部を検出する。
【特許文献1】特開2004−347585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の演算により、壁面の健全部については温度が一様に変化し、変状部については外気温度上昇時には温度が必ず先に上昇するとともに外気温度下降時には必ず先に下降する、という外乱の少ない条件下では変状部を検出することが可能であるが、実際の壁面では、例えば壁面の一部が日照で高温になるなど、日中に得た画像にのみ外乱が入ったり、あるいはどちらか一方の画像のみに高温物体あるいは低温物体の反射があったりなど、様々な外乱が存在し、上記の演算では精度上不充分であるという問題がある。この精度が不充分である点を補うためには、上記の閾値Tを、健全部を変状部として誤検出することがあっても変状部を見逃がすことがないレベルに設定して誤検出を含む変状部を検出し、検出された変状部の全領域について例えば人手をかけてハンマで打診して健全部か変状部か判定する必要を生じる。この人手による判定を行なうには例えば車両の通行量の多いトンネルの場合は高所作業車を用意する必要があり、また高層ビルの場合は高所作業を必要とするなど、多大な困難と費用を伴うことになる。このため、変状部の検出精度の向上が強く求められている。
【0010】
そこで、本件開示の発明の課題は、変状部の検出精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件開示の建造物壁面の変状部検出方法のうちの第1の建造物壁面の変状部検出方法は、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および健全部の表面温度よりも変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより、測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得ステップと、
上記2つの温度分布画像それぞれに関し、その温度分布画像を構成する各画素の画素値と、各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成ステップと、
上記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出ステップと、
評価値算出ステップで算出された評価値Eに基づいて、建造物壁面の測定領域内の変状部を検出する変状部検出ステップとを有する。
【0012】
また、本件発明の建造物壁面の変状部検出方法のうちの第2の建造物壁面の変状部検出方法は、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、健全部の表面温度よりも変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および健全部と変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより、測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得ステップと、
上記3つの温度分布画像それぞれに関し、その温度分布画像を構成する各画素の画素値と、各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、3つの差分画像を求める差分画像生成ステップと、
前記3つの差分画像のうちの前記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、前記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、前記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去ステップと、
前記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値算出ステップで算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出ステップとを有する。
【0013】
また、本件開示の建造物壁面の変状部検出装置のうちの第1の建造物壁面の変状部検出装置は、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および健全部の表面温度よりも変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
上記2つの温度分布画像それぞれに関し、その温度分布画像を構成する各画素の画素値と、各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成部と、
上記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、建造物壁面の測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを備えている。
【0014】
また、本件開示の建造物壁面の変状部検出装置のうちの第2の建造物壁面の変状部検出装置は、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、健全部の表面温度よりも変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および健全部と変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
上記3つの温度分布画像それぞれに関し、その温度分布画像を構成する各画素の画素値と、各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより3つの差分画像を求める差分画像生成部と、
上記3つの差分画像のうちの上記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、第3の差分画像の画素値をNとしたとき、上記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、上記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去部と、
上記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、建造物壁面の測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを備えている。
【0015】
さらに、本件開示の変状部検出プログラムのうちの第1の変状部検出プログラムは、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、その情報処理装置を、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および健全部の表面温度よりも変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
上記2つの温度分布画像それぞれに関し、その温度分布画像を構成する各画素の画素値と、各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成部と、
上記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを有する建造物壁面の変状部検出装置として動作させるプログラムである。
【0016】
さらに、本件開示の変状部検出プログラムのうちの第2の変状部検出プログラムは、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、その情報処理装置を、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、健全部の表面温度よりも変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および健全部と変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
上記3つの温度分布画像それぞれに関し、温度分布画像を構成する各画素の画素値と、各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより3つの差分画像を求める差分画像生成部と、
上記3つの差分画像のうちの上記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、上記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、上記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去部と、
上記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、建造物壁面の測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを有する建造物壁面の変状部検出装置として動作させるプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本件開示の発明によれば、変状部を高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本件の実施形態を説明する。
【0019】
ここでは、トンネル内壁の変状部の検出を例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、本件開示の変状部検出方法の第1実施形態の概略フローを示す図である。
【0021】
この図1に概略フローを示す変状部検出方法は、画像取得ステップS11、差分画像生成ステップS12、評価値算出ステップS13、および変状部検出ステップS14の4ステップから構成されている。
【0022】
ここで、画像取得ステップS11は、本実施形態では、車両に搭載された、トンネル壁面の温度分布を測定して温度分布画像を得る温度分布測定装置を用いて実行され、その画像取得ステップS11以外の差分画像生成ステップS12、評価値算出ステップS13、および変状部検出ステップS14は、画像取得ステップS11で得た温度分布画像のデータを持ち帰った後、データ処理を担当するデータ処理装置を用いて実行される。ここでは、先ず、画像取得ステップS11について説明する。
【0023】
図2は、トンネル内壁の断面を示す模式図である。
【0024】
トンネル内壁10の変状部は、表層11がその表層11よりも奥の層12から浮き上がり、表層11の背面側に空気層13が形成されている部分である。図2には、表層11が奥の層12にしっかりと固着していて空気層13が存在しない健全部の温度分布が実線で示されており、空気層13が存在する変状部の温度分布が破線で示されている。
【0025】
図2(A)は、日中の、外気温度が上昇しつつある時点の温度分布を示した模式断面図であり、変状部の場合、空気層13が断熱層として作用し、外気により表層11のみが温められて温度が先に上昇する。一方、健全部の場合、空気層13が存在しないことから外気から表層11に伝わった熱はその奥の層12に流れ、表層11の温度は変状部ほどは上昇せず、したがって変状部は健全部と比べΔtだけ温度が高い状態となる。
【0026】
図2(B)は、夜間の、外気温度が下降しつつある時点の温度分布を示した模式断面図である。外気の温度が下がると表層11の熱が外気に奪われるが、変状部の場合、空気層13が存在することによって表層11のみ先に温度が低下し、健全部の場合は奥の層12から熱が伝えられて表層11の温度の低下が抑えられる。このため、変状部の表層11の温度は健全部と比べΔtだけ温度が低い状態となる。
【0027】
本件は、この現象を利用して変状部を検出するものであり、その点に関しては前述の従来例と同様である。
【0028】
図3は、一日のうちの健全部と変状部の表面温度の変化を示した図である。
【0029】
日中の、外気温度が上昇する時間帯Aでは、健全部よりも変状部の表面温度が高く、夜間の、外気温度が下降する時間帯Bでは、健全部よりも変状部の表面温度が低い。また、時間帯Aから時間帯Bに移行する中間の時間帯C1、および時間帯Bから時間帯Aに移行する中間の時間帯C2は、健全部と変状部の表面温度がほぼ等しい時間帯である。ここでは、時間帯Aのいずれかの時点においてトンネル内壁の温度分布を測定して温度分布画像を求めるとともに、時間帯Bのいずれかの時点においてもトンネル内壁の温度分布を測定して温度分布画像を求める。
【0030】
尚、後述する第2実施形態では、さらに時間帯C1又は時間帯C2においてもトンネル内壁の温度分布が測定されて第3の温度分布画像が求められるが、この第2実施形態については後述することとし、ここでは、時間帯A,Bにおける2つの温度分布画像を求める場合について説明を続ける。
【0031】
図4は、赤外線温度測定装置の原理説明図である。
【0032】
この図4に示す赤外線温度測定装置20には、スキャナミラー21、フォーカスレンズ22、チョッパミラー23、結像レンズ24、および赤外線センサアレイ25が配置されている。
【0033】
赤外線センサアレイ25は、数百個程度の赤外線センサが一次元的に配列されたものであり、トンネル内壁の水平方向の所定長(例えば200mm等)の一次元画像の結像を受け、その一次元画像を数百の画素に分けて受光するものである。
【0034】
結像レンズ24は、トンネル内壁の一次元画像を赤外線センサアレイ25上に結像させる複数の単レンズの組合せからなるレンズ、フォーカスレンズ22は、トンネル内壁との間の距離の変化に伴って光軸方向に移動し、トンネル内壁の一次元画像を赤外線センサアレイ25上に合焦させるピント調整用のレンズである。
【0035】
チョッパミラー23については後述する。
【0036】
さらに、スキャナミラー21はトンネル内壁を上下方向に繰り返し走査するミラーである。
【0037】
したがって、スキャナミラー21がトンネル内壁を上下方向に一回走査するごとに、赤外線センサアレイ25では、トンネル内壁の水平方向について例えば200mm幅であって、上下方向についてはスキャナミラー21の振れ角(例えば100度)に応じた長さの1つの温度分布画像が得られる。
【0038】
また、この赤外線温度測定装置20には、さらに、複数の基準熱源26a〜26fが備えられ、さらに、それらの基準熱源26a〜26fの1つを選択してその選択した基準熱源からの放射赤外線を赤外線センサアレイ25に導くための基準熱源レンズ27が備えられている。これらの基準熱源26a〜26fは、赤外線センサアレイ25の校正用の熱源である。具体的には、それらの基準熱源26a〜26fは、それぞれ別々の温度に精密に調整されており、現在測定中のトンネル内壁の表面温度の変化温度範囲を挟む2つの基準熱源(例えば基準熱源26aと基準熱源26b)が以下のようにして交互に選択されて赤外線センサアレイ25の校正に利用される。
【0039】
スキャナミラー21は、トンネル内壁を例えば下から上へと所定速度で一回走査し終わると上から下へと高速に戻るが、その戻りの期間中は、チョッパミラー23が基準熱源レンズ27から出射した赤外線を赤外線センサアレイ25に導く角度に傾き、基準熱源レンズ27によって選択された1つの基準熱源(図4の場合、基準熱源26b)から放射された赤外線が赤外線センサアレイ25で受光されて、その赤外線センサアレイ25を構成する数百個の赤外線センサそれぞれの校正に利用される。
【0040】
スキャナミラー21が高速に上から下に走査された後の、下から上に向かって再度走査する際には、チョッパミラー25は、再び、トンネル内壁の一次元画像が赤外線センサアレイ25上に結像されるように傾きを変えてスキャナミラー21が下から上に走査することにより次の1つの温度分布画像が得られる。その間、基準熱源レンズ27は、もう一方の基準熱源(例えば基準熱源26a)を選択し、スキャナミラー21が次に上から下に高速走査する間はチョッパミラー23が再び基準熱源ミラー27で反射した赤外線を赤外線センサアレイ25に導く角度に傾いて基準熱源レンズ27より選択された1つの基準熱源(基準熱源26a)から放射された赤外線が赤外線センサアレイ25で受光されて校正に利用される。
【0041】
このように校正と測定が交互に繰り返し行なわれ、トンネル内壁の温度分布が例えば0.05℃程度の高分解能で測定された温度分布画像が生成される。トンネル内壁の表面温度が2つの基準熱源26a,26bで挟まれた温度範囲から外れることが予想されるときは、新たに予想される温度範囲を挟む2つの基準熱源が選択し直され、上記と同様にして校正と測定が繰り返される。
【0042】
図5は、図4に示す構成の赤外線温度測定装置を用いた、トンネル内壁の温度分布測定の様子を示した模式図である。
【0043】
ここでは、赤外線温度測定装置20が車両30に設置され、その車両30が例えば50km/hの速度でトンネル内を走行し、その間、トンネル内壁40が繰り返し走査されて多数枚の温度分布画像が生成される。また、この車両30には、距離計29も搭載されており、この距離計29では、車両30が10mm走行するごとに10mm走行したことをあらわす信号が出力される。さらに車両30には、大容量の記憶装置(図示省略)が搭載されており、上記のようにして多数枚得られた温度分布画像(データ上の画像)は、距離計29からの出力信号とともに、その記憶装置に記憶される。
【0044】
図1に示す変状部検出方法のうちの画像取得ステップS11は、以上の温度分布画像収集のプロセスを、図3に示す時間帯Aの間のいずれかの時刻と時間帯Bの間のいずれかの時刻との双方で行なうステップである。
【0045】
次に、図1に示す変状部検出方法のうちの差分画像生成ステップS12、評価値算出ステップS13、および変状部検出ステップS14について説明する。
【0046】
これら差分画像生成ステップS12、評価値算出ステップS13、および変状部検出ステップS14の各ステップは、本実施形態では、コンピュータシステム内で変状部検出プログラムが実行されることによりそのコンピュータシステム内で実行されるステップである。そこで以下では、そのコンピュータシステムのハードウェアおよび変状部検出プログラムについて順に説明することで、図1に示す変状部検出方法のうちの差分画像生成ステップS12、評価値算出ステップS13、および変状部検出ステップS14についても合わせて説明する。
【0047】
図6は、演算処理を行なうためのコンピュータシステムの外観図である。
【0048】
このコンピュータシステム100は、CPU、RAMメモリ、ハードディスク等を内蔵した本体部110、本体部110からの指示により表示画面121上に画像を表示するディスプレイ120、このコンピュータシステム100内にオペレータの指示や文字情報を入力するためのキーボード130、表示画面121上の任意の位置を指定することによりその位置に表示されていたアイコン等に応じた指示を入力するマウス140を備えている。
【0049】
本体部110は、さらに、CDやDVD(以下、それらを合わせてCD/DVDと称する)が装填されるCD/DVD装填口を有しており、その内部には、装填されたCD/DVD(図1には図示せず。図2参照)をドライブする、CD/DVDドライブ111(図2参照)が内蔵されている。
【0050】
ここでは、CD/DVD101に変状部検出プログラムが記憶されており、このCD/DVD101がCD/DVD装填口から本体部110内に装填され、CD/DVDドライブ111によりそのCD/DVD101に記憶された変状部検出プログラムがこのコンピュータシステム100のハードディスク内にインストールされる。このコンピュータシステムのハードディスク内にインストールされた変状部検出プログラムが起動されると、このコンピュータシステム100は、変状部検出装置の一実施形態として動作する。
【0051】
図7は、図6に示す外観を有するコンピュータシステムのハードウェア構成図である。
【0052】
ここには、中央演算処理装置(CPU)113、RAM114、ハードディスクコントローラ115、CD/DVDドライブ111、マウスコントローラ116、キーボードコントローラ117、ディスプレイコントローラ118、およびインタフェース119が備えられており、それらはバス109で相互に接続されている。
【0053】
CD/DVDドライブ111は、図6を参照して説明したように、CD/DVD101が装填され、装填されたCD/DVD101をアクセスするものである。
【0054】
またインターフェイス119は、前述の記憶装置から温度分布画像をこのコンピュータシステム100に取り込む役割りを担っている。
【0055】
また、ここには、ハードディスクコントローラ115によりアクセスされるハードディスク105、マウスコントローラ116により制御されるマウス140、キーボードコントローラ117により制御されるキーボード130、ディスプレイコントローラ118により制御されるディスプレイ120も示されている。
【0056】
図8は、変状部検出プログラムの概要を示す図である。
【0057】
この図8に示す変状部検出プログラム200は、画像取得部201、差分画像生成部202、評価値算出部203、および変状部検出部204の4つのプログラム部品から構成されている。
【0058】
これら4つのプログラム部品のうちの差分画像生成部202、評価値算出部203、および変状部検出部204は、コンピュータシステム100内で実行されることにより、図1に示す変状部検出方法のうちの差分画像生成ステップS12、評価値算出ステップS13、および変状部検出ステップS14を実行するプログラム部品であるが、画像取得部201は、画像取得ステップS11に対応するステップではなく、画像取得ステップS11の実行によって上述のようにして収集された温度分布画像をインタフェース119を介してコンピュータシステム100内に取り込んで後述する処理を実行するためのプログラム部品である。
【0059】
この図8に示す変状部検出プログラム200は、上述したように、例えばCD/DVD101に記憶されており、そのCD/DVD101がコンピュータシステム100の本体部110に装填され、CD/DVDドライブ111によりその変状部検出プログラム200が読み出されてハードディスク105内にインストールされる。このハードディスク105にインストールされた変状部検出プログラム200がRAM114上に展開されてCPU113で実行されると、このコンピュータシステム100は変状部検出装置として動作する。
【0060】
図9は、変状部検出装置の機能ブロック図である。
【0061】
この変状部検出装置210は、画像取得部211、差分画像生成部212、評価値算出部213および変状部検出部214から構成されている。これら画像取得部211、差分画像生成部212、評価値算出部213、および変状部検出部214は、それぞれ、図6に示す変状部検出プログラム200を構成する各プログラム部品である画像取得部201、差分画像生成部202、評価値算出部203、および変状部検出部204がコンピュータシステム100内で実行されることによりそのコンピュータシステム100内に構築される機能であり、したがって以下では、図9の変状部検出装置210の各部211〜214の作用を説明することで、図8に示す変状部検出プログラム200を構成する各プログラム部品としての各部201〜204を合わせて説明するものとする。また、図9の変状部検出装置210の画像取得部211を除く他の各部212〜214を説明することにより、図1に示す変状部検出方法のうちの、画像取得ステップS11を除く各ステップS12〜S14についても合わせて説明するものとする。
【0062】
図9に示す変状部検出装置210の画像取得部211は、前述のようにして収集されて記憶装置(図示せず)に記憶された温度分布画像を、インタフェース119を介してコンピュータシステム100内に取り込み、各種の幾何学的な補正を行なうものである。
【0063】
この幾何学的な補正としては、図5に示す車両30の走行速度変化に起因する、画像の走行方向のずれの補正や、車両30の、道路の幅方向の走行位置の変化、すなわち車両30に搭載された温度分布測定装置20とトンネル内壁との間の距離の変化に起因する画像の拡大/縮小の補正等がある。画像の走行方向のずれの補正は、距離計29からの10mm走行ごとに出力される信号に基づいて補正され、拡大/縮小についてはトンネル内壁の同一領域から得られた複数の画像のパターンマッチング等により補正される。このような補正により、図3に示す2つの時間帯A,Bのそれぞれにおける温度分布測定により得られた2つの温度分布画像であって、それら2つの温度分布画像の互いに対応する画素ごとにトンネル内壁の同一点の温度を表わす2つの温度分布画像が生成される。
【0064】
尚、ここでの幾何学的な補正自体は従来の手法を適用すればよく、ここでのこれ以上の詳細説明は省略する。また、ここでは、画像取得部211で上記の補正を行なうものとして説明したが、温度分布画像をこの変状部検出装置210(図6、図7に示すコンピュータシステム100)に取り込む前に補正を行ない、すなわち、図1に示す変状部検出方法のうちの画像取得ステップS11の役割りとし、画像取得部211は補正後の温度分布画像を取り込むものであってもよい。
【0065】
図9に示す変状部検出装置210の差分画像生成部212では、画像取得部211で得られた、幾何学的な補正が行なわれた後の2つの温度分布画像それぞれに関し、その温度分布画像を構成する各画素の画素値と、各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分が算出され、これにより2つの差分画像が求められる。平均的な画素値を求める周辺領域の広さは、その1枚の温度分布画像全域に対応するトンネル内壁の表面温度が比較的安定しているときはその温度分布画像全域についての平均値であってもよく、あるいは、安定性が比較的低いときは、各画素の周囲の一部領域の平均値であってもよく、あるいは、各画素の周囲の画素値の分布を統計的に調べ、その分布に応じて平均値を求める周囲領域の広さを適応的に変更してもよい。いずれにしろ、各画素の画素値(その画素に対応する、トンネル内壁の一点の表面温度)の、周囲からの温度変化分が画素値となるように演算が行なわれる。ここでは、このようにして求めた2つの差分画像のそれぞれの画素値を、各差分画像ごとに代表させて、F,Gで表わす。
【0066】
本実施形態では、図3の時間帯Aにおける測定で得られた温度分布画像から得た差分画像の画素値をF、時間帯Bにおける測定で得られた温度分布画像から得た差分画像の画素値をGとする。各画素値F,Gは、周囲の平均的な表面温度からの差分を表わしており、したがってプラス/マイナスのいずれの値をもとり得るものである。図3から分かるように、典型的には、変状部については画素値Fはプラスの値をとり、画素値Gはマイナスの値をとる。
【0067】
差分画像生成部212で、以上のようにして2つの差分画像が得られると、次に、評価値算出部213において、健全部と変状部とを判別するための評価値が求められる。この差分画像生成部212では、2つの差分画像の互いに対応する一対の画素ごとに、一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とが算出され、各画素ごとに、それら差分Dと和の絶対値Aとを変数とする関数f(D,A)で表わされる評価値E=f(D,A)が算出される。典型的には、この評価値Eとして、E=C・(D−A)(但し、Cは比例定数であり、本実施形態では0.5が採用される。前述した従来法は、評価値EとしてE=Dを採用するものであり、定数C=0.5は、その従来の評価値E=Dとのスケールを合わせるためのものである。ただし、これは従来法との比較のためであって変状部の検出の目的としてはスケールを合わせることは必ずしも必要ではないため、Cは0.5以外の値の定数であってもよい。また、従来法では評価値Eとして差分Dを採用していたのに代わり、和の絶対値Aを評価値の一因として加えることに意味があるのであって、評価値Eは、E=C・(D−A)に限らず、例えば差分Dと和の絶対値Aとの間で重み付けをした評価値
E=C・(d1・D−d2・A)
但し、d1+d2=1.0
を採用してもよく、あるいは、さらに複雑な演算式を採用してもよい。
【0068】
ここでは、評価値EとしてE=0.5・(D−A)=(D−A)/2を採用することとし、説明を続ける。
【0069】
図9に示す変状部検出装置210の変状部検出部214では、評価値算出部213で算出された評価値Eに基づいて、トンネル内壁の測定領域内の変状部が検出される。具体的には、評価値算出部213で算出された各画素ごとの評価値Eが閾値Tと比較され、閾値Tを越える評価値Eが算出された画素が変状部に相当する画素であると判定される。閾値Tは、トンネル内壁の材質等に応じて、経験的又は統計的に適切な値が定められる。
【0070】
ここでは、変状部検出のための演算例として2つの差分画像の画素値F,Gの組合せについて説明する。
【0071】
ここでは、高温部、すなわち周囲よりも高温の画素の画素値を+10、背景部、すなわち健全部を表わす平均画素値を0、低温部、すなわち周囲よりも低温の画素の画素値を−10とする。
【0072】
このとき、画素値F,Gの取り得る組合せは、
F:高温/G:高温 F:高温/G:背景 F:高温/G:低温
F:背景/G:高温 F:背景/G:背景 F:背景/G:低温
F:低温/G:高温 F:低温/G:背景 F:低温/G:低温

の9通りとなる。
【0073】
この9通りの組合せについて上記の演算を行なうと表1のようにあらわされる。
【0074】
【表1】

【0075】
評価値EとしてE=(D−A)/2を採用し、閾値Tとして5を採用すると、画素値Fが背景よりも高い温度であって画素値Gが表示よりも低い温度である画素cのみが抽出されることが分かる。
【0076】
従来法では、評価値EとしてE=Dが採用されており、この場合は、画素cの値に、画素k,fも抽出される。これらの画素b,fは、画素値F,Gを求める基になった2つの温度分布画素のうちの一方において高温物体あるいは低温物体の反射があった場合に相当すると考えられる。また画素bは、図3に示す時間帯Aにおける測定で得られた画像の一部が日照で高温になり、時間帯Bにおける測定では夜になって温度が均一化した場合も考えられる。
【0077】
次に高温部と低温部の温度変化が相互に異なっている場合の影響について説明する。高温部の画素値を+12、低温部の画素値を−8とすると、以下の表2が得られる。
【0078】
【表2】

【0079】
この表2のD=F−Gの欄を見ると、画素bは12、画素Cは20、画素fは8の値が得られている。表1の場合、画素b,c,fはそれぞれ10,20,10であって、評価値E=Dを用いて本実施形態と同様の検出結果を得ようとすると閾値T=11とすればよいことになるが、閾値T=11とすると、表2のように高温部の温度変化と低温部の温度変化が+12,−8と異なる場合、画素cのみでなく画素bも検出されてしまい、その時その時の僅かな条件変化によって判定結果が異なってしまうことになる。
【0080】
これに対し、本実施形態の場合は、高温部と低温部の温度変化が異なっていても変状部を安定的に高精度に検出することができる。
【0081】
図10は、変状部検出結果の一例を示す図である。
【0082】
図10(A)は従来法の、評価値Eとして差分Dを採用したときに変状部として検出された領域を示し、図10(B)は、評価値EとしてE=(D−A)/2を採用したときに変状部として検出された領域を示している。(D−A)を2で割る(0.5を掛ける)ことにより評価値Eのスケールを合わせているため、閾値としては、図10(A)、図10(B)とで同一の値を採用している。
【0083】
図10(A)、(B)を比較すると、従来法では誤検出を多く含み、変状部として広い領域が検出されており、本実施形態では、誤検出が減ることにより変状部が高精度に検出されていることが分かる。
【0084】
次に、本件の第2実施形態について説明する。
【0085】
図11は、本件の第2実施形態の変状部検出方法の概要を示すフローチャートである。
【0086】
この第2実施形態の変状部検出方法は、画像取得ステップS21、差分画像生成ステップS22、背景除去ステップS23、評価値算出ステップS24、および変状部検出ステップS25の各ステップで構成されている。
【0087】
前述した第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0088】
図11に示す第2実施形態の変状部検出方法の画像取得ステップS21では、トンネル内壁の温度分布を、図3に示す時間帯A,Bの双方で測定して2つの温度分布画像を得るのに加え、さらに、健全部と変状部の温度が同一となる時間帯C1又は時間帯C2においてもトンネル内壁の温度分布測定が行なわれ、第3の温度分布画像が得られる。それ以外の点については前述の第1実施形態の場合と同様である。
【0089】
図11に示す第2実施形態の変状部検出方法の他のステップS22〜S25については、第2実施形態の変状部検出プログラムおよび変状部検出装置と合わせて後述する。
【0090】
図12は、第2実施形態の変状部検出プログラムの概要を示す図である。
【0091】
この図12に示す第2実施形態の変状部検出プログラム300は、画像取得部301、差分画像生成部302、背景除去部303、評価値算出部304、および変状部検出部305の5つのプログラム部品で構成されている。これら5つのプログラム部品のうちの差分画像生成部302、背景除去部303、評価値算出部304、および変状部検出部305は、コンピュータシステム100内で実行されることにより、図11に示す変状部検出方法のうちの差分画像生成ステップS22、背景除去ステップS23、評価値算出ステップS24、および変状部検出ステップS25を実行するプログラム部品であるが、画像取得部301は、画像取得ステップS21に対応するステップではなく、画像取得ステップS21の実行によって収集された3つの時間帯の温度分布画像をインタフェース119を介してコンピュータシステム100内に取り込んで処理するためのプログラム部品である。
【0092】
この図12に示す変状部検出プログラム300も、前述に、図8に示す第1実施形態の変状部検出プログラム200と同様、例えばCD/DVD101に記憶されており、そのCD/DVD101がコンピュータシステム100の本体部110に装填されCD/DVDドライブ111によりその変状部検出プログラム200が読み出されてハードディスク105内にインストールされる。このハードディスク105にインストールされた変状部検出プログラム300がRAM114上に展開されてCPU113で実行されると、このコンピュータシステム100は第2実施形態の変状部検出装置として動作する。
【0093】
図13は、本件の第2実施形態の変状部検出装置の構成ブロック図である。
【0094】
この変状部検出装置310は、画像取得部311、差分画像生成部312、背景除去部313、評価値算出部314、および変状部検出部315から構成されている。これら画像取得部311、差分画像生成部312、背景除去部313、評価値算出部314、および変状部検出部315は、それぞれ図12に示す変状部検出プログラム300を構成する各プログラム部品である画像取得部301、差分画像生成部302、背景除去部303、評価値算出部304、および変状部検出部305がコンピュータシステム100内で実行されることにより、そのコンピュータシステム100内に構築される機能である。したがって第1実施形態の場合と同じく、以下では図13の変状部検出装置310の各部311〜315の作用を説明することで図12に示す変状部検出プログラム300を構成する各プログラム部品としての各部301〜305を合わせて説明するものとする。また図13の変状部検出装置310の画像取得部311を除く他の各部312〜315を説明することにより、図11に示す変状部検出方法のうちの画像取得ステップS21を除く各ステップS22〜S25についても合わせて説明するものとする。また、ここでは、前述した第1実施形態との相違点について説明する。
【0095】
図13に示す変状部検出装置310の画像取得部311は、第1実施形態の変状部検出装置210(図9参照)の画像取得部211と同様である。ただし、この図13に示す変状部検出装置310の画像取得部311では、時間帯A,Bにおける測定で得られた温度分布画像に加え、さらに時間帯C1又は時間帯C2における測定で得られた第3の温度分布画像もコンピュータシステム100内に取り込まれて、幾何学的な補正が行なわれる。
【0096】
また、図13の変状部検出装置300の差分画像生成部312の作用も第1実施形態の変状部検出装置210(図9参照)の差分画像生成部212と同様である。ただし、この変状部検出装置310の差分画像生成部312では、時間帯C1又は時間帯C2における測定で得られた第3の温度分布画像についても同様にして、第3の差分画像が生成される。ここでは時間帯Aにおける測定で行なわれた温度分布画像から求められた差分画像の画素値を代表させてF、時間帯Bにおける測定で得られた温度分布画像から求められた差分画像で画素を代表させてG、時間帯C1又は時間帯C2における測定で得られた第3の温度分布画像から求められた第3の差分画像の画素値を代表させてNで表わす。
【0097】
次に、図13に示す変状部検出装置310の背景除去部313では、時間帯Aにおける測定に由来する第1の差分画像と時間帯C1又は時間帯C2の測定に由来する第3の差分画像について、互いに対応する画素ごとに画素値F,Nの差分F′=F−Nが求められ、またこれと同様に、時間帯Bにおける測定に由来する第2の差分画像と時間帯C1又は時間帯C2における測定に由来する第3の差分画像について、互いに対応する画素ごとに画素値G,Nの差分G′=G−Nが求められる。
【0098】
トンネル内壁から放射される赤外線を測定して得られる温度分布画像はトンネル内壁の表面温度の分布を正確にあらわしたものではなく、その温度分布画像の画素値はトンネル内壁の模様や色によっても影響を受ける。上記のようにして健全部と変状部の温度がほぼ同一の時間帯の測定に由来する第3の差分画像を求めると、その第3の差分画像は健全部であるか変状部であるかにかかわらない画像となる。そこで、この第2実施形態では、健全部と変状部の温度がほぼ同一の時間帯の測定に由来する第3の差分画像を求めて、時間帯A,Bの測定に由来する2つの差分画像から差し引くことにより、トンネル内壁の模様や色による影響を取り除いている。こうすることにより、変状部の、一層高精度の検出が可能となる。
【0099】
図13に示す変状部検出装置310を構成する評価値算出部314および変状部検出部315の作用は、図9に示す変状部検出装置210を構成する評価値算出部213および変状部検出部214の作用とそれぞれ同じである。ただし、図9に示す変状部検出装置210の評価値算出部213では画素値F,Gをそのまま用いて評価値Eを求めたのに対し、図13に示す変状部検出装置310の評価値算出部314では、画素値F,Gをそのまま用いることに代えて、背景除去部313で求められた画素値F′,G′を採用して評価値Eが求められる。
【0100】
図14は、変状部検出結果の一例を示す図である。
【0101】
図14(A)は、前述の第1実施形態における検出結果であり、図10(B)と同一の検出結果を表わしている。図14(B)は、第2実施形態を採用したときの検出結果であり、特に破線で囲んだ領域が消え、誤検出がさらに低減されて変状部のみがさらに高精度に検出されている。
【0102】
尚、ここでは、閾値Tを1つのみ設定して変状部を検出したが、閾値Tを2段階等、複数段階に設定し、確実に変状部である領域と、変状部と疑われる領域を区別して判定して表示あるいは通知してもよい。
【0103】
また、ここでは、トンネル内壁の変状部検出について説明したが、本件は例えばビルディングや家屋等の建物の外壁の変状部の検出にも適用可能である。また、温度分布測定装置を固定した状態で複数の時間帯の温度分布を測定することができる環境にあるときなどは画像の幾何学的な補正は不要である。
【0104】
以下、本件の各種形態を付記する。
【0105】
(付記1)
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、該建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得ステップと、
前記2つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成ステップと、
前記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、当該一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値算出ステップで算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出ステップとを有することを特徴とする建造物壁面の変状部検出方法。
【0106】
(付記2)
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および該健全部と該変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、該建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得ステップと、
前記3つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、3つの差分画像を求める差分画像生成ステップと、
前記3つの差分画像のうちの前記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、前記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、前記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去ステップと、
前記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値算出ステップで算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出ステップとを有することを特徴とする建造物壁面の変状部検出方法。
【0107】
(付記3)
前記評価値算出ステップが、比例定数をCとしたとき、前記評価値Eとして、
E=C・(D−A)
を算出するステップであり、
前記変状部検出ステップが、前記評価値算出ステップで算出された評価値Eと所定の閾値Tとを比較することにより変状部を検出するステップであることを特徴とする付記1又は2記載の建造物壁面の変状部検出方法。
【0108】
(付記4)
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、該建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記2つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、当該一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを備えたことを特徴とする建造物壁面の変状部検出装置。
【0109】
(付記5)
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および該健全部と該変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、該建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記3つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより3つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記3つの差分画像のうちの前記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、前記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、前記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去部と、
前記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを備えたことを特徴とする建造物壁面の変状部検出装置。
【0110】
(付記6)
前記評価値算出部が、比例定数をCとしたとき、前記評価値Eとして、
E=C・(D−A)
を算出するものであり、
前記変状部検出部が、前記評価値算出部で算出された評価値Eと所定の閾値Tとを比較することにより変状部を検出するものであることを特徴とする付記4又は5記載の建造物壁面の変状部検出装置。
【0111】
(付記7)
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、該建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記2つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、当該一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを有する建造物壁面の変状部検出装置として動作させることを特徴とする建造物壁面の変状部検出プログラム。
【0112】
(付記8)
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および該健全部と該変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、該建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記3つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより3つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記3つの差分画像のうちの前記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、前記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、前記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去部と、
前記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを有する建造物壁面の変状部検出装置として動作させることを特徴とする建造物壁面の変状部検出プログラム。
【0113】
(付記9)
前記評価値算出部が、比例定数をCとしたとき、前記評価値Eとして、
E=C・(D−A)
を算出するものであり、
前記変状部検出部が、前記評価値算出部で算出された評価値Eと所定の閾値Tとを比較することにより変状部を検出するものであることを特徴とする付記7又は8記載の建造物壁面の変状部検出プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本件開示の変状部検出方法の第1実施形態の概略フローを示す図である。
【図2】トンネル内壁の断面を示す模式図である。
【図3】一日のうちの健全部と変状部の表面温度の変化を示した図である。
【図4】赤外線温度測定装置の原理説明図である。
【図5】赤外線温度測定装置を用いた、トンネル内壁の温度分布測定の様子を示した模式図である。
【図6】演算処理を行なうためのコンピュータシステムの外観図である。
【図7】図6に示す外観を有するコンピュータシステムのハードウェア構成図である。
【図8】変状部検出プログラムの概要を示す図である。
【図9】変状部検出装置の機能ブロック図である。
【図10】変状部検出結果の一例を示す図である。
【図11】第2実施形態の変状部検出方法の概要を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の変状部検出プログラムの概要を示す図である。
【図13】第2実施形態の変状部検出装置の構成ブロック図である。
【図14】変状部検出結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0115】
10,40 トンネル内壁
11 表層
12 奥の層
13 空気層
20 赤外線温度測定装置
21 スキャナミラー
22 フォーカスレンズ
23 チョッパミラー
24 結像レンズ
25 赤外線センサアレイ
26 基準熱源
27 基準熱源レンズ
29 距離計
30 車両
100 コンピュータシステム
101 CD/DVD
105 ハードディスク
109 バス
110 本体部
111 CD/DVDドライブ
112 MOドライブ
113 CPU
114 RAM
115 ハードディスクコントローラ
116 マウスコントローラ
117 キーボードコントローラ
118 ディスプレイコントローラ
119 インタフェース
120 ディスプレイ
121 表示画面
130 キーボード
140 マウス
200,300 変状部検出プログラム
201,211,301,311 画像取得部
202,212,302,312 差分画像生成部
203,213,304,314 評価値算出部
204,214,305,315 変状部検出部
210,310 変状部検出装置
303,313 背景除去部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、該建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得ステップと、
前記2つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成ステップと、
前記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、当該一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値算出ステップで算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出ステップとを有することを特徴とする建造物壁面の変状部検出方法。
【請求項2】
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および該健全部と該変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、該建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得ステップと、
前記3つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、3つの差分画像を求める差分画像生成ステップと、
前記3つの差分画像のうちの前記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、前記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、前記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去ステップと、
前記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値算出ステップで算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出ステップとを有することを特徴とする建造物壁面の変状部検出方法。
【請求項3】
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、該建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記2つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、当該一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを備えたことを特徴とする建造物壁面の変状部検出装置。
【請求項4】
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および該健全部と該変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、該建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記3つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより3つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記3つの差分画像のうちの前記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、前記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、前記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去部と、
前記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを備えたことを特徴とする建造物壁面の変状部検出装置。
【請求項5】
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、および該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯に、該建造物壁面の、互いに同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する2つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記2つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより、2つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとしたとき、互いに対応する一対の画素ごとに、当該一対の画素の画素値どうしの差分D=F−Gと、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F+G|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを有する建造物壁面の変状部検出装置として動作させることを特徴とする建造物壁面の変状部検出プログラム。
【請求項6】
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
検出対象の建造物壁面の健全部の表面温度よりも該建造物壁面の変状部の表面温度が上まわる第1の時間帯、該健全部の表面温度よりも該変状部の表面温度が下まわる第2の時間帯、および該健全部と該変状部の表面温度がほぼ等しい第3の時間帯に、該建造物壁面の、いずれも同一の測定領域の表面温度分布を測定することにより得られた、該測定領域内の各点の表面温度に応じた画素値を有する3つの温度分布画像を取得する画像取得部と、
前記3つの温度分布画像それぞれに関し、当該温度分布画像を構成する各画素の画素値と、該各画素の周囲領域の平均的な画素値との差分を算出することにより3つの差分画像を求める差分画像生成部と、
前記3つの差分画像のうちの前記第3の時間帯における測定により得られた第3の差分画像を除く2つの差分画像それぞれの画素値をF,Gとし、該第3の差分画像の画素値をNとしたとき、前記2つの差分画像のうちの一方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分F´=F−Nと、前記2つの差分画像のうちの他方の差分画像と前記第3の差分画像との間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分G´=G−Nとを算出することにより、2つの背景除去画像を求める背景除去部と、
前記2つの背景除去画像間の互いに対応する一対の画素の画素値どうしの差分D=F´−G´と、当該一対の画素の画素値どうしの和の絶対値A=|F´+G´|とを変数とする関数f(D,A)で表される評価値E=f(D,A)を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出された評価値Eに基づいて、前記建造物壁面の前記測定領域内の変状部を検出する変状部検出部とを有する建造物壁面の変状部検出装置として動作させることを特徴とする建造物壁面の変状部検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−117259(P2010−117259A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291201(P2008−291201)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(504021415)有限会社ジー・エム・シー (2)
【Fターム(参考)】