説明

弁フィルタ及びこの弁フィルタが設けられた電磁弁

【課題】カムシャフト、エンジンの振動下においても高い作動精度を有しかつ狭隘なスペースでも装着できる弁フィルタ及びこの弁フィルタを有する電磁弁を提供する。
【解決手段】この弁フィルタ75及び電磁弁10は、ベルト部53、フィルタ部55、弁シート部57、弁リード部59がこの順に薄板状に一体に形成され、弁リード部59を弁シート部57に重ね合わせ、この弁シート部57を弁リード部59を内側にしてフィルタ部55に重ね合わせて弁フィルタ本体75を構成し、この弁フィルタ本体75を、内側から外側に作動流体を通過させるスリーブ13の吐出ポート25に、この吐出ポート25を覆うように配置し、ベルト部59をスリーブ13に巻回して前記弁フィルタ本体をスリーブに装着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポートが形成されたスリーブの外周に装着された弁フィルタ及びこの弁フィルタが設けられた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンカムシャフトに搭載されるVCT(可変カムシャフトタイミング、以下VCTという。)アクチュエータは、OCV(オイルコントロールバルブ、以下OCVという。)から供給される圧油により、カムシャフトトルク負荷に抗してカムシャフトの位相を変更、保持するものである。近年、エンジンの省燃費化により油圧ポンプの吐出能力低下が進み、低回転、高油温条件等においては、油圧、油量ともに従来に比較して大幅に低下している。このため、従来の体格では、発生トルクが低下し応答性が不足するという問題点があった。例えば、カムの負トルク時に進角しようとしても、正トルクで戻されることを繰り返しながら徐々に進角することになり、高応答が難しい。
【0003】
これに対して、従来アクチュエータ側の対策としては、特許文献1に開示されたものが知られている。これは、ポンプからOCVを通して供給された油圧、油量をアクチュエータ油圧室へ導く通路を、ドレインリターン通路とは独立に設け、その途中に油圧室に入る方向を許容する一方向弁を追加し、油の逆流を防ぎ、位相の戻りを防止している。この一方向弁の装着位置は、油漏れの低減上VCTアクチュエータ内が最も望ましいが、反面、エンジン(カム)の回転数変化に伴い遠心力が変動し、一方向弁の摺動抵抗をばらつかせ、作動精度が低下してしまうおそれがあった。また、カムシャフトによりエンジンバルブを作動させる際の強いトルク変動に起因する振動が一方向弁シール部に作用し、異常磨耗等を生じるおそれがあった。また、従来の構造に対してチェック弁を追加することは、搭載性を悪化させるおそれがあった。
【0004】
一方、OCV側の対策としては、VCT進角室、遅角室へ連通するスリーブポートをポンプ供給路、ドレインリターン路から独立させ、そこに一方向弁を装着する方法が考えられる。しかしながら、すでに異物除去フィルタを装着しているOCVについては、一方向弁をさらに装着しようとすると、そのためのスペースが必要となり体格が大きくなるとともに、装着構造が複雑化しコスト増につながるという問題点があった。また、無理に狭いスペースに一方向弁を設置しようとすると、スペースの制約により十分な性能を発揮できないという問題点もあった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−27108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決することをその課題とし、カムシャフト、エンジンの振動下においても高い作動精度を有しかつ狭隘なスペースでも装着できる弁フィルタ及びこの弁フィルタを有する電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、ベルト部(53)、フィルタ部(55)、弁シート部(57)、弁リード部(59)がこの順に薄板状に一体に形成され、前記弁リード部(59)を前記弁シート部(57)に重ね合わせ、前記弁シート部(57)を前記弁リード部(59)を内側にして前記フィルタ部(55)に重ね合わせて弁フィルタ本体(75)を構成し、この弁フィルタ本体(75)を前記シート部(57)を内側にして開口(25,27)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)をこの開口(25,27)が形成された筒体(13)に巻回して固定するという手段を採用することができる。
【0008】
この手段によると、カムシャフト、エンジンの振動下においても作動精度を高く維持することができるとともに、狭隘なスペースでも装着が可能で低コストのフィルター付一方向弁を提供することができる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、前記弁シート部(57)は、外周フレーム部(65)とこの外周フレーム部(65)によって囲まれる開口部(67)とを有し、前記弁リード部(59)は、その外周を前記外周フレーム部(65)に重ねあわせることによって前記開口部(67)を閉鎖するようになされている手段を提供することができる。したがって、組立が簡単で応答性の高いフィルター付一方向弁を提供することができる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、前記弁シート部(83)は、隣接する2つの外周フレーム部(87)とこれら2つの外周フレーム部(87)に囲まれた2つの開口部(89)を有し、前記リード部(85)は、外周フレーム部(93)と、この外周フレーム部(93)からそれぞれ舌状に突出して形成された2つの弁体(95)とを有し、前記2つの弁体(95)のそれぞれの外周を前記弁シート部(83)の2つの外周フレーム部(87)に重ね合わせることによって前記開口部(89)を閉鎖するようになされている手段を採用することができる。したがって、さらに弁の応答性を向上させることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、ベルト部(53)、フィルタ部(55)、弁リード部(103)がこの順に薄板状に一体に形成され、前記弁リード部(103)を前記フィルタ部(55)に重ね合わせて弁フィルタ本体(105)を構成し、この弁フィルタ本体(105)を前記弁リード部(103)を内側にして開口(17)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)を前記開口(17)が形成された筒体(13)に巻回して固定した手段を採用することができる。したがって、カムシャフト、エンジンの振動下においても作動精度を高く維持することができるとともに、狭隘なスペースでも装着が可能で低コストのフィルター付一方向弁を提供することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、前記フィルタ部(55)は、外周フレーム部(61)とこの外周フレーム部(61)の内側に形成されたメッシュ部(63)とを有し、前記弁リード部(103)はその外周を前記外周フレーム部(61)に重ねあわせることによって前記メッシュ部(63)を閉鎖するようになされていることを特徴とする請求項4に記載の弁フィルタ。したがって、より応答性の高いフィルター付一方向弁を提供することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、スプール(15)が摺動可能に挿入されたスリーブ(13)に、このスリーブ(13)内周側から外周側に作動流体を通過流出させるポート(25,27)が形成された電磁弁(10)において、前記スリーブ(13)の外周に請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の弁フィルタ(51,81)を、前記弁フィルタ本体(75,99)を前記シート部(57,83)を内側にして前記ポート(25,27)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)を前記スリーブ(13)に巻回して装着する手段を採用することができる。したがって、エンジン等の振動下においても作動精度を高く維持することができるとともに、狭隘なスペースでも装着が可能で低コストの電磁弁を提供することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するため、スプール(15)が摺動可能に挿入されたスリーブ(13)に、このスリーブ(13)外周側から内周側に作動流体を通過させるポート(17,21)が形成された電磁弁(10)において、前記スリーブ(13)の外周に請求項4又は請求項5に記載の弁フィルタ(101)を、前記弁フィルタ本体(105)を前記弁リード部(103)を内側にして前記ポート(17,21)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)を前記スリーブ(13)に巻回して装着する手段を採用することができる。したがって、同様にエンジン等の振動下においても作動精度を高く維持することができるとともに、狭隘なスペースでも装着が可能な電磁弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図10を参照して説明する。
【0016】
図1は、内燃機関のVCTシステムに使用される本発明の実施の形態を示す図である。この図において、符号10は電磁弁を示す。この電磁弁10は、筒状のスリーブ13と、このスリーブ13内に往復動可能に挿入されたスプール15とを有している。
【0017】
スリーブ13の軸方向一端部には、第1のドレインリターン油流入ポート17が形成され、この第1のドレインリターン油流入ポート17のスリーブ軸心を挟んで反対側には、第1のドレインリターン油流出ポート19が形成されている。また、スリーブ13の軸方向他端部には、第2のドレインリターン油流入ポート21が形成され、この第2のドレインリターン油流入ポート21のスリーブ軸心を挟んで反対側には、第2のドレインリターン油流出ポート23が形成されている。
【0018】
第2のドレインリターン流入ポート21のスリーブ軸方向中央寄りには、VCTアクチュエータ進角室への吐出ポート25が形成されており、ドレインリターン流入ポート17のスリーブ軸方向中央寄りには、VCTアクチュエータ遅角室への吐出ポート27が形成されている。また、第1のドレインリターン流出ポート19と第2のドレインリターン流出ポート23との間のスリーブ軸線方向中央部には、ポンプ油流入ポート29が形成されている。
【0019】
一方、スプール15の軸方向中央部には、ポンプ油流入ポート29と進角室への吐出ポート25又は遅角室への吐出ポート27を連通する中央縮径部31が形成されている。また、スプール15の軸方向一端部には、第1のドレインリターン流入ポート17と第1のドレインリターン流出ポート19とを連通する第1の縮径部33が形成され、スプール15の軸方向他端部には、第2のドレインリターン流入ポート21と第2のドレインリターン流出ポート23とを連通する第2の縮径部35が形成されている。
【0020】
このようなスプール15の第2の縮径部35側の端部には、スリーブ13内壁との間にスプリング37が装着されており、スプール15を第1のドレインリターン流入ポート17側に押圧している。また、スプール15の第1の縮径部33側の端部には、コイル部に設けられたシャフト39が当接しており、スプール15をスプリング37の押圧力に抗してスプリング側に移動させるようになっている。
【0021】
このような構成において、VCTアクチュエータ進角室への吐出ポート25には、図2ないし図4に示すような弁フィルタ51が装着されている。この弁フィルタ51は、図3に示すような弁フィルタシート52から成型される。この弁フィルタシート52は、薄い金属板をエッチング、プレス加工等によって同時に一体成型されたもので、ベルト部53、フィルタ部55、弁シート部57、弁リード部59がこの順に帯状に形成されている。フィルタ部55は矩形板状に形成され、外周フレーム部61と、この外周フレーム部61内に形成されたメッシュ部63を有している。弁シート部57は、矩形板状に形成された外周フレーム部65と、この外周フレーム部65内に形成された開口67とを有している。弁リード部59は、一端を弁シート部57の外周フレーム部65に接続支持され、他端が自由端となっており、この他端には突起60が形成されている。この弁リード部59は、自己復帰力をもたせるように材料、板厚、幅を設定し、弁シート部57との連結部の肉厚を調整する。ベルト部53は、帯状のベルト本体69とこのベルト本体69の端部に形成された係止部71とを有している。また、フィルタ部55と弁シート部57との間には離間部56が、弁シート部57と弁リード部59との間には離間部58がそれぞれ形成されており、折曲げた後、フィルタ部55と弁シート部57との間に所定の間隔があくようになっている。この離間部56には、係止部71と係合する係止穴73が形成されている。
【0022】
なお、これらベルト部53、フィルタ部55、弁シート部57、弁リード部59は、折曲げ後に図2に示すように全体として円弧状になるように、図4に示すように(弁リード部59については二点鎖線で示す)それぞれ交互に円弧上に成型されている。
【0023】
このような構成の弁フィルタシート52は、まず図4に示すように、弁リード部59を弁シート部57に対して折曲し、弁リード部59を弁シート部57に重ね合わせる。ここで、弁リード部59と弁シート部57は1方向弁を構成する。次いで、弁リード部59が折曲された弁シート部57をフィルタ部55に対して折曲して、弁リード部59を内側にしてフィルタ部55に重ね合わせる。そして、図2に示すように、この折曲された状態におけるフィルタ部55、弁シート部57、弁リード部59が弁フィルタ本体75を構成する。ここで、この弁フィルタ本体75は、離間部56,58を有しているので、フィルタ部55と弁シート部57との間に弁リード部59が開閉するための空間を確保することができる。したがって、弁リード部59は弁シート部57に接触する弁閉鎖状態と弁シート部から離間する弁連通状態の2位置をとることができる。また、弁リード部59の自由端には突起60が形成されているので、弁連通状態においても、弁リード部59はフィルタ部55に接触することはなく、メッシュ部63を通しての連通を確保することができる。
【0024】
また、弁フィルタ本体75が組み上がった状態において、弁リード部59は自然状態で弁シート部57を僅かに押圧して閉鎖している状態に設定されている。
【0025】
このようにして組み立てられた弁フィルタ本体75を、図2に示すように、その弁シート部57を内側にして吐出ポート25に装着する。そして、ベルト部53をスリーブ13に巻き付け、その係止部71を係止穴73に係合して装着を完了する。
【0026】
なお、このような弁フィルタ51は、VCTアクチュエータ遅角室への吐出ポート27にも同様に装着される。
【0027】
このような構成において、ポンプ油流入ポート29から供給された圧油は、中央縮径部31を通って吐出ポート25に装着された弁フィルタ本体75に至り、その油圧によってリード部59を押し上げる。これによって、圧油は弁シート部57の開口67を通って弁フィルタ本体75に流入する。そして、この圧油は、フィルタ部55のメッシュ63を通って弁フィルタ本体75を通過し、VCTアクチュエータ進角室へ供給される。
【0028】
一方、作動油が途切れたり圧力が低下すると、弁リード部59は、その自己復帰力や受けた圧力によって弁シート部57の開口67を閉鎖し、作動油の逆流を防止する。
【0029】
以上説明したように、この弁フィルタ51及び電磁弁10は、ベルト部53、フィルタ部55、弁シート部57、弁リード部59がこの順に薄板状に一体に形成され、弁リード部59を弁シート部57に重ね合わせ、この弁シート部57を弁リード部59を内側にしてフィルタ部55に重ね合わせて弁フィルタ本体75を構成し、この弁フィルタ本体75を、内側から外側に作動流体を通過させるスリーブ13の吐出ポート25に、この吐出ポート25を覆うように配置し、ベルト部59をスリーブ13に巻回して装着しているから、VCTアクチュエータ内の正圧側となる部屋に、位相変動による戻し圧が発生しても、この弁フィルタ51が吐出ポート25を自己復帰力と正圧によって遮断し、油の戻りによる漏れを防止することができる。
【0030】
また、OCVへ装着する事で、VCTへの装着時に伴う遠心力による摺動負荷変動の影響を受けることなく作動精度を高く維持することができる。さらに、軽量の薄板で弁リード部59を構成しているため、OCVが受ける振動に対する耐振動面での信頼性も十分維持することができる。
【0031】
さらに、弁フィルタシート52は、薄板からエッチング、プレス等で容易に加工できるとともに、その後円弧上の成型、折り曲加工のみで、一方向弁やフィルタとして要求される全てを製造することができる。したがって、材料コスト、製造コスト共に大幅に削減することができる。また、フィルタと一方向弁の取付け部を1箇所にすることができ、したがって、体格を大きく拡大する必要がなく簡単に装着することができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態について図1、図5ないし図7を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一構成の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
VCTアクチュエータ進角室への吐出ポート25には、図5ないし図7に示すような弁フィルタ81が装着されている。この弁フィルタ81は、図6に示すような弁フィルタシート82から成型される。この弁フィルタシート82は、弁フィルタシート52と同様に薄い金属板をエッチング、プレス加工等によって同時に一体成型されたもので、ベルト部53、フィルタ部55、弁シート部83、弁リード部85がこの順に帯状に形成されている。弁シート部83は、矩形板状に形成された外周フレーム部87と、この外周フレーム部87内に形成された2つの開口89と、この2つの開口89を仕切る連結部91を有している。弁リード部85は、矩形板状に形成された外周フレーム部93と、この外周フレーム部93からそれぞれ舌状に突出して形成された2つの弁体95とを有している。この弁体95は、自己復帰力をもたせるように材料、板厚、幅を設定し、外周部93との連結部の肉厚を調整する。また、この弁リード部85の端部には、突起97が設けられている。
【0034】
また、弁フィルタシート52と同様に、フィルタ部55と弁シート部83との間には離間部56が、弁シート部82と弁リード部85との間には離間部58がそれぞれ形成されている。
【0035】
このような構成の弁フィルタシート82は、まず図7に示すように、弁リード部85を弁シート部83に対して折曲し、弁シート部83をフィルタ部55に対して折曲する。そして、図5に示すように、この折曲された状態におけるフィルタ部55、弁シート部83、弁リード部85が弁フィルタ本体99を構成する。
【0036】
このようにして組み立てられた弁フィルタ本体99を、図5に示すように、その弁シート部83を内側にして吐出ポート25に装着し、ベルト部53をスリーブ13に巻き付け、その係止部71を係止穴73に係合して装着を完了する。
【0037】
なお、このような弁フィルタ81は、VCTアクチュエータ遅角室への吐出ポート27にも同様に装着される。
【0038】
このような構成において、ポンプ油流入ポート29から供給された圧油は、その油圧によって弁体95を押し上げ、弁シート部83の開口89を通って弁フィルタ本体99に流入する。そして、この圧油は、フィルタ部55のメッシュ63を通って弁フィルタ本体99を通過し、VCTアクチュエータ進角室へ供給される。一方、作動油が途切れたり圧力が低下すると、弁体95は、その自己復帰力や受けた圧力によって弁シート部83の開口89を閉鎖し、作動油の逆流を防止する。
【0039】
このように、この弁フィルタ81は、ベルト部53、フィルタ部55、弁シート部83、弁リード部85がこの順に薄板状に一体に形成され、弁シート部83には2つの開口89が形成され、弁リード部には2つの弁体95が形成され、弁リード部85を弁シート部83に重ね合わせ、この弁シート部83を弁リード部85を内側にしてフィルタ部55に重ね合わせて弁フィルタ本体99を構成し、この弁フィルタ本体99を、スリーブ13の吐出ポート25に、この吐出ポート25を覆うように配置し、ベルト部59をスリーブ13に巻回して装着しているから、上記弁フィルタ51と同様の作用効果を奏するとともに、2つの弁体95によって、一方向弁の応答性をさらに向上させることができる。
【0040】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図8ないし図10を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一構成の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
第1のドレインリターン油流入ポート17には、図8ないし図10に示すような弁フィルタ101が装着されている。この弁フィルタ101は、図9に示すような弁フィルタシート102から成型される。この弁フィルタシート102は、弁フィルタシート52と同様に薄い金属板をエッチング、プレス加工等によって同時に一体成型されたもので、ベルト部53、フィルタ部55、離間部58、弁リード部103がこの順に帯状に形成されている。弁リード部103は、一端を離間部58に接続支持され他端が自由端となっており、自己復帰力をもたせるように材料、板厚、幅を設定され連結部の肉厚が調整されている。
【0042】
このような構成の弁フィルタシート102は、図10に示すように、弁リード部103をフィルタ部55に対して折曲し、この状態におけるフィルタ部55と弁リード部103が弁フィルタ本体105を構成する。
【0043】
このようにして組み立てられた弁フィルタ本体105を、図8に示すように、その弁リード103を内側にして第1のドレインリターン油流入ポート17に装着し、ベルト部53をスリーブ13に巻き付け、その係止部71を係止穴73に係合して装着を完了する。
【0044】
なお、このような弁フィルタ101は、第2のドレインリターン油流入ポート21にも同様に装着される。
【0045】
このような構成において、第1のドレインリターン油流入ポート17からスリーブ13内に流入しようとする圧油は、フィルタ部55のメッシュ部63を通過した後、その油圧によって弁リード103を押し下げ、スリーブ13内に進入する。そして、第1のドレインリターン油流出ポート19を通って排出される。一方、アクチュエータのドレイン側部屋に負圧が発生した場合は、弁リード部103がメッシュ部63を閉鎖してエアの吸い込みを防止する。
【0046】
このように、この弁フィルタ101は、ベルト部53、フィルタ部55、弁リード部103がこの順に薄板状に一体に形成され、弁リード部103をフィルタ部55に重ね合わせて弁フィルタ本体105を構成し,この弁フィルタ本体105を弁リード部103を内側にして第1のドレインリターン油流入ポート17を覆うように配置し、ベルト部53を第1のドレインリターン油流入ポート17が形成されたスリーブ13に巻回して固定しているから、第1のドレインリターン油流入ポート17からスリーブ13内に流入しようとする圧油は、フィルタ部55のメッシュ部63で濾過されるとともに通過し、その油圧によって弁リード部103を押し下げ、スリーブ13内に進入する。したがって、アクチュエータのドレイン側部屋に負圧が発生した場合は、弁リード部103がメッシュ部63を閉鎖してエアの吸い込みを防止することができる。また、弁リード部103の上流側にメッシュがあるため、異物による弁リード部103の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態である電磁弁を示す概略縦断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態である弁フィルタが装着された状態を示す図1中A−A線に沿う断面図。
【図3】図2に示す弁フィルタのシート状の状態を示す図であって、(a)はその平面図、(b)はその正面図。
【図4】図3に示すシート状の弁フィルタの組立過程を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態である弁フィルタが装着された状態を示す図1中A−A線に沿う断面図。
【図6】図5に示す弁フィルタのシート状の状態を示す図であって、(a)はその平面図、(b)はその正面図。
【図7】図6に示すシート状の弁フィルタの組立過程を示す図。
【図8】本発明の第3の実施形態である弁フィルタが装着された状態を示す図1中B−B線に沿う断面図。
【図9】図8に示す弁フィルタのシート状の状態を示す図であって、(a)はその平面図、(b)はその正面図。
【図10】図9に示すシート状の弁フィルタの組立過程を示す図。
【符号の説明】
【0048】
13 スリーブ
17 第1のドレインリターン油流入ポート
21 第2のドレインリターン油流入ポート
25 吐出ポート
27 吐出ポート
51 弁フィルタ
53 ベルト部
55 フィルタ部
57 弁シート部
59 弁リード部
65 外周フレーム部
67 開口
75 弁フィルタ本体
81 弁フィルタ
83 弁シート部
85 弁リード部
87 外周フレーム部
89 開口
91 連結部
95 弁体
101 弁フィルタ
103 弁リード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト部(53)、フィルタ部(55)、弁シート部(57)、弁リード部(59)がこの順に薄板状に一体に形成され、前記弁リード部(59)を前記弁シート部(57)に重ね合わせ、前記弁シート部(57)を前記弁リード部(59)を内側にして前記フィルタ部(55)に重ね合わせて弁フィルタ本体(75)を構成し、この弁フィルタ本体(75)を前記シート部(57)を内側にして開口(25,27)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)をこの開口(25,27)が形成された筒体(13)に巻回して固定することを特徴とする弁フィルタ。
【請求項2】
前記弁シート部(57)は、外周フレーム部(65)とこの外周フレーム部(65)によって囲まれる開口部(67)とを有し、前記弁リード部(59)は、その外周を前記外周フレーム部(65)に重ねあわせることによって前記開口部(67)を閉鎖するようになされていることを特徴とする請求項1に記載の弁フィルタ。
【請求項3】
前記弁シート部(83)は、隣接する2つの外周フレーム部(87)とこれら2つの外周フレーム部(87)に囲まれた2つの開口部(89)を有し、前記リード部(85)は、外周フレーム部(93)と、この外周フレーム部(93)からそれぞれ舌状に突出して形成された2つの弁体(95)とを有し、前記2つの弁体(95)のそれぞれの外周を前記弁シート部(83)の2つの外周フレーム部(87)に重ね合わせることによって前記開口部(89)を閉鎖するようになされていることを特徴とする請求項2に記載の弁フィルタ。
【請求項4】
ベルト部(53)、フィルタ部(55)、弁リード部(103)がこの順に薄板状に一体に形成され、前記弁リード部(103)を前記フィルタ部(55)に重ね合わせて弁フィルタ本体(105)を構成し、この弁フィルタ本体(105)を前記弁リード部(103)を内側にして開口(17)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)を前記開口(17)が形成された筒体(13)に巻回して固定したことを特徴とする弁フィルタ。
【請求項5】
前記フィルタ部(55)は、外周フレーム部(61)とこの外周フレーム部(61)の内側に形成されたメッシュ部(63)とを有し、前記弁リード部(103)はその外周を前記外周フレーム部(61)に重ねあわせることによって前記メッシュ部(63)を閉鎖するようになされていることを特徴とする請求項4に記載の弁フィルタ。
【請求項6】
スプール(15)が摺動可能に挿入されたスリーブ(13)に、このスリーブ(13)内周側から外周側に作動流体を通過流出させるポート(25,27)が形成された電磁弁(10)において、前記スリーブ(13)の外周に請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の弁フィルタ(51,81)を、前記弁フィルタ本体(75,99)を前記シート部(57,83)を内側にして前記ポート(25,27)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)を前記スリーブ(13)に巻回して装着することを特徴とする電磁弁。
【請求項7】
スプール(15)が摺動可能に挿入されたスリーブ(13)に、このスリーブ(13)外周側から内周側に作動流体を通過させるポート(17,21)が形成された電磁弁(10)において、
前記スリーブ(13)の外周に請求項4又は請求項5に記載の弁フィルタ(101)を、前記弁フィルタ本体(105)を前記弁リード部(103)を内側にして前記ポート(17,21)を覆うように配置し、前記ベルト部(53)を前記スリーブ(13)に巻回して装着することを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−239951(P2007−239951A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66195(P2006−66195)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】