説明

弁座体および弁装置

【課題】従来よりも高い流体圧に耐えうる弁座体、およびこの弁座体を備えた弁装置を提供する。
【解決手段】弁装置20は、弁体4と弁座体5とを備えている。弁座体5は、軸線方向Zに延びる厚肉円筒形状をなし、その外周に周方向に連続するシール溝59を有し、その内周に軸線方向Zに連続する大径部51および小径部52を有し、大径部51と小径部52の間に弁体4が着座する弁座部54を有している。シール溝59の軸線方向Zの位置は、弁座部54の軸線方向Zの位置と同じかそれよりも高圧側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体を封じる弁座体およびこの弁座体を具備する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、弁装置は、ハウジング内に形成された弁室に、弁座と、弁座に対し近接及び離反する方向に移動可能な弁体とを備えている。弁座は、ハウジングとは別体の弁座体として形成されて、弁室内に配置されることがある。上記弁装置は、流体の経路が弁室を通るように流路(例えば、配管等)と接続されて、弁の開閉により流路の開閉を行ったり、流体の流れを制御したりするために用いられる。
【0003】
図16は従来の弁装置の概略構成を示す断面図である。図16に示す従来の一般的な弁装置100は、ハウジング21に形成された弁通路内に弁座体5と弁体4とを備えている。弁通路は、一次通路32、二次通路33、および一次通路32と二次通路33の間に設けられた弁室31から構成されている。弁室31の二次通路33との接続部分に、厚肉円筒形状を有する弁座体5が配置されている。弁座体5の外周と弁室31の内壁との間はシール部材58で封止されている。弁座体5の内周は弁室31と二次通路33とを連通する連通路50であって、連通路50の一次通路32側の開口縁に弁座部54が形成されている。弁体4は、弁座部54に対して進退できるように弁室31内に配置されている。上記構成の弁装置100において、弁体4が弁座部54に着座することにより弁が閉止され、弁体4が弁座部54から離反することにより弁が開放される。
【0004】
従来の弁装置において、通常、ハウジングおよび弁体は金属製であって、高い剛性を備えている。一方で、ハウジングとは別体に構成された弁座体は、合成樹脂製のもの(特許文献1参照)や、金属製であって弁座部に樹脂等の軟質材料製のシート部材が接着されたもの(特許文献2参照)が知られている。このように、弁座体において少なくとも弁座部が樹脂で構成されることにより、弁の気密性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−307972号公報
【特許文献2】特開2006−2861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
弁座体に用いられる樹脂の一つとして、エンジニアリングプラスチックと呼ばれる強度に優れた合成樹脂が知られている。エンジニアリングプラスチック製の弁座体は、一般的に、弁が封じる流体の最大圧が高圧(例えば、35MPa)以下の範囲の弁装置に用いられる。換言すれば、従来のエンジニアリングプラスチック製の弁座体は、上記高圧を超える流体圧に耐えうる強度を備えていない。
【0007】
図16に示す従来の弁装置100において、閉弁時の弁座体5のうち、一次通路32側の端面と、一次通路32側の端部からシール部材58と接触している部分までの外周面とに、一次通路32内の流体圧(一次圧P1)が作用する。同じく弁座体5のうち、内周面と、二次通路33側の端面と、二次通路33側の端部からシール部材58と接触している部分までの外周面とに、二次通路33内の流体圧(二次圧P2)が作用する。したがって、弁座体5には、内周面側から半径方向に加わる圧力(内圧)と外周面側から半径方向に加わる圧力(外圧)とが均衡しない部位(図16に、墨塗りで示された部位)が存在する。この部位に作用する内圧と外圧との差が大きくなると弁座体が変形したり破壊したりする。このようにして従来の弁座体は、弁装置に対して設定された最大の流体圧よりも高圧の流体を封じるときに、強度不足により変形したり破壊したりする。
【0008】
上述のように弁座体の強度が不足する場合に、樹脂製の弁座体に代えて特許文献2に示されるような金属製の弁座体を用いれば強度不足を解消できる。しかし、金属製の弁座体であっても強度不足を解消するにはその肉厚を厚くするなどの対策が必要となる。
【0009】
本発明は上記に鑑み、簡単な構造にて高圧の流体を封じることのできる弁座体、およびこの弁座体を備えた弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る弁座体は、弁体が着座する弁座部を有する厚肉円筒状の弁座体であって、前記弁座体の外周に設けられた第1のシール部材配置部と、前記弁座体の内周に設けられた大径部および小径部と、前記大径部と前記小径部の間に設けられた弁座部とを備え、前記大径部は、前記弁体が軸線方向から進入可能なように当該大径部に進入する前記弁体の外径よりも大きい内径を有し、前記小径部は、前記弁体の外径よりも小さい内径を有し、前記第1のシール部材配置部の前記軸線方向の位置は、前記弁座部の前記軸線方向の位置と重複する又はその重複する位置よりも高圧側にあるものである。なお、ここで「弁体の外径」とは、弁座体の内周に挿入される弁体の部分の最大の外径である。弁座体の内周に挿入される弁体の部分の外径が変化する場合、例えば、弁体の弁座体の内周に挿入される部分が大径部とそれより先端側の小径部とを有し、この大径部と小径部との間に弁座体の弁座部に着座する弁部が設けられているような場合は、弁座体の大径部は弁体の大径部よりも大きな内径を有し、弁座体の小径部は弁体の大径部より小さく且つ弁体の小径部より大きな内径を有する。
【0011】
また、本発明に係る弁装置は、ハウジングと、前記ハウジングに収容された前記弁座体と、前記弁座体の前記弁座部へ着座する閉位置と前記着座部から離れた開位置との間を前記軸線方向に移動可能に設けられた弁体と、前記弁座体の前記第1のシール部材配置部に設けられて前記ハウジングと前記弁座体との間を封止する第1のシール部材とを備えたものである。
【0012】
上記において、「第1のシール部材配置部の軸線方向の位置」とは、第1のシール部材配置部に配置されるシール部材により弁座体と当該弁座体を収容している部材とを封止している部分の軸線方向の位置を指す。また、「軸線方向の位置」とは、基準軸線をz軸とし、z軸上の或点を原点としたときのz座標をいう。さらに、「高圧側」とは、流体の中に置かれた弁座体又は弁装置が閉弁状態になったときに、弁座体の上流側又は下流側のうち高圧となる側のことをいう。
【0013】
上記構成の弁座体および弁装置において、第1のシール部材配置部の軸線方向の位置が弁座部の軸線方向の位置と重複すれば、第1のシール部材配置部に配置された第1のシール部材により弁座体とその外周に配置される部材(ハウジング)とが封止される位置と、弁座部に着座した弁体により弁座体と弁体とが封止される位置が、軸線方向に重なる。したがって、弁座体に弁体が着座して閉弁状態となったときに、弁座体の内周側から半径方向に作用する圧力(内圧)と、外周側から半径方向に作用する圧力(外圧)とが、軸線方向にわたってほぼ均衡する。これにより、弁座体が変形したり破壊したりする大きさの応力が弁座体に作用せず、弁座体の変形や破壊が抑制される。また、上記構成の弁座体および弁装置において、第1のシール部材配置部の軸線方向の位置が弁座部の軸線方向の位置より高圧側であれば、弁座体の第1のシール部材配置部の軸線方向の位置から弁座部の軸線方向の位置までの領域は、閉弁状態において外圧よりも高い内圧が作用し、内圧負荷の条件となる。このように、弁座体に内圧と外圧の不均衡な領域が存在するが内圧負荷の条件となるので、弁座体に作用する内圧と外圧との差が著しく大きくなっても、弁座体の変形や破壊が抑制される。よって、本発明に係る弁座体および弁装置によれば、弁座体の耐圧性を、肉厚を大きくしたりより高強度材料を用いたりすることなく、弁座体の形状によって高めることができる。
【0014】
前記弁座体において、前記第1のシール部材配置部に配置される第1のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第1のシール部材の前記弁座体の外周との接触部の前記軸線方向の位置と、前記弁座部の前記軸線方向の位置とが重複するように構成されていてよい。
【0015】
また、前記弁座体において、前記第1のシール部材配置部に配置される第1のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第1のシール部材の前記軸線方向の高さ範囲内に、前記弁座部の前記軸線方向の位置が含まれるように構成されていてよい。
【0016】
或いは、前記弁座体において、前記弁座体における前記第1のシール部材配置部の前記軸線方向の位置が、前記弁座体における前記弁座部と前記弁座体における高圧側の端部との間にあるように構成されていてよい。
【0017】
さらに、前記弁装置において、前記ハウジングは、厚肉円筒形状をなし、その内周に設けられた前記弁座体の収容部と、その外周に周方向に連続して設けられた第2のシール部材配置部とを有し、前記第2のシール部材配置部の前記軸線方向の位置は、前記第1のシール部材配置部の前記軸線方向の位置と重複する又はその重複する位置よりも高圧側にあることがよい。
【0018】
上記構成の弁装置において、第2のシール部材配置部の軸線方向の位置が第1のシール部材の軸線方向の位置と重複すれば、第2のシール部材配置部に配置された第2のシール部材によりハウジングとその外周に配置される部材とが封止される位置と、第1のシール部材配置部に配置された第1のシール部材によりハウジングと弁座体とが封止される位置とが、軸線方向に重なる。したがって、弁座体に弁体が着座して閉弁状態となったときに、弁座体の内周側から半径方向に作用する圧力(内圧)と、外周側から半径方向に作用する圧力(外圧)とが、軸線方向にわたってほぼ均衡する。これにより、ハウジングが変形したり破壊したりする大きさの応力がハウジングに作用せず、ハウジングの変形や破壊が抑制される。また、上記構成の弁装置において、第2のシール部材配置部の軸線方向の位置が第1のシール部材の軸線方向の位置より高圧側であれば、ハウジングの第2のシール部材配置部の軸線方向の位置から第1のシール部材配置部の軸線方向の位置までの領域は、閉弁状態において外圧よりも高い内圧が作用して内圧負荷の条件となる。このように、ハウジングに内圧と外圧の不均衡な領域が存在するが内圧負荷の条件となるので、ハウジングに作用する内圧と外圧との差が著しく大きくなっても、ハウジングの変形や破壊が抑制される。よって、本発明に係る弁装置によれば、ハウジングの耐圧性を、肉厚を大きくしたりより高強度材料を用いたりすることなく、ハウジングの形状によって高めることができる。
【0019】
前記弁装置において、前記第2のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第2のシール部材の前記軸線方向の高さ範囲と、前記第1のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第1のシール部材の前記軸線方向の高さ範囲とが、少なくとも一部重複するように構成されていてよい。
【0020】
また、前記弁装置において、前記ハウジングにおける前記第2のシール部材配置部の前記軸線方向の位置が、前記弁体部における前記第1のシール部材配置部と前記ハウジングにおける高圧側の端部との間にあるように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る弁座体または弁装置によれば、閉弁状態において、弁座体の軸線方向全域にわたって弁座体に作用する内圧と外圧とが均衡するか、若しくは、一部均衡しない部分が存在するが、弁座体が変形や破壊する大きさの応力が弁座体に作用しない。つまり、弁座体の耐圧性を、肉厚を大きくしたりより高強度材料を用いたりすることなく、弁座体の形状によって高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る弁装置(開弁状態)の概略構成を示す断面図である。
【図2】弁装置(閉弁状態)の概略構成を示す断面図である。
【図3】弁座体のシール部材配置部の別態様を示す図である。
【図4】弁体の弁部の別態様を示す図である。
【図5】本発明に係る弁座体の数値計算モデルの断面図である。
【図6】比較例に係る弁座体の数値計算モデルの断面図である。
【図7】厚肉円筒に内圧と外圧が加わったときに作用する応力を説明する図である。
【図8】本発明に係る弁座体の変形例の数値計算モデルの断面図である。
【図9】実施の形態1に係る弁装置の基準軸線に平行な断面図である。
【図10】実施の形態2に係る弁装置(開弁状態)の基準軸線に平行な断面図である。
【図11】図10に示す弁装置(閉弁状態)の基準軸線に平行な断面図である。
【図12】図10に示す弁装置の変形例を示す図である。
【図13】実施の形態3に係る弁装置の基準軸線に平行な断面図である。
【図14】図13に示す弁装置の変形例1を示す図である。
【図15】図13に示す弁装置の変形例2を示す図である。
【図16】従来の弁装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0024】
図1および図2はいずれも本発明に係る弁装置20の概略断面図であり、図1は開弁状態、図2は閉弁状態をそれぞれ示している。図1および図2に示すように、弁装置20は、弁部41を有する弁体4と、弁座部54を有する弁座体5とを備えている。弁装置20は、一次側(供給側)から二次側(排出側)へ流れる流体の流路に設けられており、弁体4の弁部41が弁座体5の弁座部54に着座したり、弁部41が弁座部54から離れたりすることにより、流体の流れが制御される。弁装置20は、基準軸線Lを有し、弁体4と弁座体5はその軸線が基準軸線Lと一致するように配置されている。以下では、基準軸線Lに沿う軸線方向Zにおいて、図の上部側を「Z1向き」又は「Z1側」といい、図の下部側を「Z2向き」又は「Z2側」という。
【0025】
弁座体5は、基準軸線Lを中心線とする厚肉円筒形状を有している。弁座体5は、エンジニアリングプラスチック製の一体品である。ここで、エンジニアリングプラスチックとは、一般に、耐熱温度が100℃以上で、引張強度500kgf/cm2以上、且つ曲げ弾性率20000kg/cm2以上の、機械的強度や耐熱性に優れた合成樹脂である。但し、弁座体5はエンジニアリングプラスチック等の合成樹脂製に限定されず、金属製であってもよい。
【0026】
弁座体5は、弁座体5の外周形状と合致する内周形状を有する収容部9に収容されている。収容部9は、例えば、ハウジングに形成された弁通路の一部を構成している。弁座体5の外周には、シール部材配置部としてのシール溝59が設けられている。シール溝59は、弁座体5の外周において周方向に連続する環状の凹部である。図1,2においてシール部材配置部はシール溝59として弁座体5の軸線方向Zの中間に設けられているが、図3に示すように、弁座体5のZ1側端部とZ2側端部の間に設けられる切り欠き(段差部)として設けられていても良い。シール溝59には環状のシール部材58が配置され、シール部材58によって収容部9の内周と弁座体5の外周との間の流体の流通が阻止されている。このようにシール部材58によって封止されている収容部9の内周と弁座体5の外周との間を「第2の封止部S2」と呼ぶこととする。
【0027】
弁座体5の厚肉円筒の内周には、Z1側の大径部51と、Z2側の小径部52とが設けられている。大径部51内は、弁体4が収容される弁体室55の一部を形成しており、弁体室55は一次側と連通している。大径部51は、弁体4がZ1側から大径部51へ進入できるように、弁体4の外径より大きい第1の流路径D1を有している。また、小径部52内は、弁体室55と二次側とを接続する連通路50である。小径部52は、第1の流路径D1よりも小さく、且つ、弁体4の外径より小さい第2の流路径D2を有している。大径部51と小径部52とは軸線方向Zに連続しており、大径部51から小径部52へ内径が変化するZ1向きの段差面53に弁座部54が設けられている。弁座部54の軸線方向Zの位置は、シール溝59の軸線方向Zの位置と重複している。なお、ここで「軸線方向Zの位置」とは、基準軸線Lをz軸とし、z軸上の或点を原点としたときのz座標をいう。なお、ここで「弁体の外径」とは、弁座体5の内周に挿入される弁体4の部分の最大の外径である。弁座体5の内周に挿入される弁体4の部分の外径が変化する場合、例えば、弁体4の弁座体5の内周に挿入される部分が大径部とそれより先端側の小径部とを有し、この大径部と小径部との間に弁座体5の弁座部54に着座する弁部41が設けられているような場合は、弁座体5の大径部は弁体4の大径部よりも大きな内径を有し、弁座体5の小径部は弁体4の大径部より小さく且つ弁体4の小径部より大きな内径を有する。
【0028】
弁体4は、軸線方向Zに延びる柱状体である。弁体4のZ2側の端部は、弁座体5の大径部51内にZ1側から挿入されている。弁体4には、弁座体5の弁座部54に着座する弁部41が設けられている。弁体4は、弁部41が弁座部54に着座して弁通路が閉塞される閉弁位置と、弁部41が弁座部54から離れて弁通路が開放される開弁位置との間で、弁体室55内を軸線方向Zへ往復移動可能である。弁体4が閉弁位置にあるときに、弁座部54に着座した弁部41により封止されている弁座体5と弁体4との間を「第1の封止部S1」と呼ぶこととする。弁座体5側の第1の封止部S1は弁座部54であり、弁体4側の第1の封止部S1は弁部41である。
【0029】
なお、図1,2に示す弁装置20では、弁座体5の内周の段差面53の内周縁に弁座部54が設けられ、弁体4のZ2側の端面の面取りされた縁に弁部41が設けられている。但し、弁座部54と弁部41の形状の組み合わせはこれに限定されるものではなく、例えば図4に示すように、弁座体5の段差面53に弁座部54が設けられ、弁体4のZ2側の端面に突出成形された円環リップ状の先端に弁部41が設けられていても良い。この場合には、弁座体5の段差面53の弁部41が接触する部分が弁座体5側の第1の封止部S1であり、弁体4側の第1の封止部S1は弁部41である。
【0030】
上記弁装置20において、第2の封止部S2では、収容部9の内周とシール部材58の外周とが接触している外周側接触部と、弁座体5の外周とシール部材58の内周とが接触している内周側接触部とで、収容部9と弁座体5との間を実質的に封止している。シール部材58はゴム製リングであり、弁装置20の使用状態においては流体圧を受けて圧縮変形している。圧力で変形したシール部材58は、弁座体5の外周面および収容部9の内周面に線よりも広い幅で接触していることがあり、また、外周側接触部と内周側接触部とが軸線方向Zにずれていることがある。上記事情を考慮して、シール溝59に配置されるシール部材58が流体圧を受けて圧縮変形したときのシール部材58の軸線方向Zの高さ範囲を「シール帯SL」といい、このシール帯SLに第1の封止部S1の軸線方向Zの位置が含まれるときに「第1の封止部S1と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置は重複している」という。
【0031】
弁装置20において、第1の封止部S1と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置は重複している。なお、最も望ましくは、第1の封止部S1と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置が重複しており、シール溝59に配置されたシール部材58が流体圧を受けて圧縮変形したときのシール部材58の軸線方向Zの中央の位置と、第1の封止部S1の軸線方向Zの位置とが重複している。
【0032】
図2では、閉弁状態の弁装置20において、弁座体5に作用する一次側圧力が一次圧P1の矢印で示され、弁座体5に作用する二次側圧力が二次圧P2の矢印で示されている。閉弁状態の弁座体5の外周のうち、第2の封止部S2よりZ1側には一次圧P1が作用し、第2の封止部S2よりZ2側には二次圧P2が作用している。また、閉弁状態の弁座体5の内周のうち、第1の封止部S1よりZ1側の大径部51には一次圧P1が作用し、第1の封止部S1よりZ2側の小径部52には二次圧P2が作用している。第1の封止部S1と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置は重複しているかまたは極めて近接しているので、閉弁状態の弁座体5において内周面から半径方向に作用する圧力(以下、「内圧」ともいう)と外周面から半径方向に作用する圧力(以下、「外圧」ともいう)とが、軸線方向Zにわたってほぼ均衡している。この結果、弁座体5に弁座体5を変形や破壊させるような応力が作用しないか、生じたとしても弁座体5を変形や破壊させる大きさとはならない。
【0033】
上記の通り、弁座体5は、第1の封止部S1と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置が重複するか又は近接する形状を有することによって、閉弁状態の耐圧性が高められている。つまり、弁座体5の耐圧性は、肉厚を大きくしたりより高強度材料を用いたりすることなく、弁座体5の形状によって高められている。しかも、このような弁座体5の形状は特殊な加工が不要な単純形状であって、従来通りの樹脂成形加工や切削加工により容易に製造することができる。そして、このように高い耐圧性を備えた弁座体5を具備する弁装置20は、従来よりも高圧の流体の流れに配置することが可能である。例えば、エンジニアリングプラスチック製の弁座体5を備えた弁装置20を、従来の高圧(35MPa程度)を超える超高圧(例えば、70MPa程度)の流体を封じるために使用することができる。
【0034】
次に、上記構成の弁装置20の弁座体5の強度を例証するために行った数値計算1,2の結果を説明する。
【0035】
(数値計算1)
数値計算1では、本発明に係る弁座体5と比較例に係る弁座体105とをそれぞれモデル化して、閉弁状態において各弁座体に作用する応力の大きさを計算した。図5は本発明に係る弁座体の数値計算モデルの断面図、図6は比較例に係る弁座体の数値計算モデルの断面図である。図5に示すように、本発明に係る弁座体5の数値計算モデルは、大小2つの内径を有する厚肉円筒体であって、小径部52の内径(半径)をr1とし、大径部51の内径(半径)をr1’とし、弁座体5と接触しているシール部材58の最小径(半径)をr2とした。一方、図6に示すように、比較例である従来の弁座体105の数値計算モデルは、厚肉円筒体であって、内径(半径)をr1とし、弁座体105と接触しているシール部材58の最小径(半径)をr2とした。比較例に係る弁座体105では、弁座部54は弁座体105のZ1側の端部に配置され、シール溝59およびシール部材58は弁座部54よりもZ2側に配置されている。この比較例に係る弁座体105では、第1の封止部S1が第2の封止部S2よりもZ1側に位置している。
【0036】
弁座体5では、第1,2の封止部S1,S2よりZ1側において内周面上の第1の部位k1および外周面上の第2の部位k2と、第1,2の封止部S1,S2よりZ2側において内周面上の第3の部位k3および外周面上の第4の部位k4とを、計算対象部位とした。一方、比較例に係る弁座体105では、第1の封止部S1よりZ2側且つ第2の封止部S2よりZ1側において内周面上の第1の部位k1および外周面上の第2の部位k2と、第1,2の封止部S1,S2よりZ2側において内周面上の第3の部位k3および外周面上の第4の部位k4とを、計算対象部位とした。弁座体5の各計算対象部位k1,k2,k3,k4と比較例に係る弁座体105の各計算対象部位k1,k2,k3,k4とは対応関係にあり、計算対象部位k1,k2の軸線方向Zの位置はほぼ等しく、計算対象部位k3,k4の軸線方向Zの位置はほぼ等しい。
【0037】
そして、弁座体5,105の各計算対象部位k1,k2,k3,k4について、r2=2×r1と仮定し、半径方向の応力σ、周方向の応力σθおよび最大主せん断応力τを一次圧P1がp1で二次圧P2が0の場合(以下、「ケース1」という)と一次圧P1が0で二次圧P2がp2の場合(以下、「ケース2」という)についてそれぞれ算出した。
【0038】
弁座体5,105の数値計算モデルに作用する応力の大きさの計算では、一般的な厚肉円筒の応力計算式を利用した。図7は厚肉円筒に内圧と外圧が加わったときに作用する応力を説明する図である。弁座体5,105を、図7に示すような内周の半径がr1で外周の半径がr2の厚肉円筒に見立て、厚肉円筒に内圧α1と外圧α2が作用していると仮定して、半径r且つ角度θに位置する部位に作用する半径方向の応力σ、周方向の応力σθ、最大主せん断応力τをそれぞれ算出した。厚肉円筒に作用する半径方向の応力σは次に示す数式1を、周方向の応力σθは次に示す数式2を、最大主せん断応力τは次に示す数式3をそれぞれ利用して算出することができる。
【0039】
【数1】

【0040】
【数2】

【0041】
【数3】

【0042】
【表1】

【0043】
上記表1では、数値計算1の計算結果を示している。ケース1において、本発明に係る弁座体5では、第1の部位k1に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第2の部位k2に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っている。同じく、第3の部位k3に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第4の部位k4に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っている。この計算結果から、ケース1において、弁座体5に作用する内圧と外圧は均衡していることがわかる。
【0044】
一方、ケース1において、比較例に係る弁座体105では、第1の部位k1に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第2の部位k2に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っていない。一方で、第3の部位k3に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第4の部位k4に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っている。よって、ケース1において、弁座体105の第2の封止部S2よりもZ1側に作用する内外圧の不均衡が生じていることがわかる。
【0045】
また、ケース2において、本発明に係る弁座体5では、第1の部位k1に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第2の部位k2に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っている。同じく、第3の部位k3に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第4の部位k4に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っている。この計算結果から、ケース2において、弁座体5に作用する内圧と外圧とが均衡していることがわかる。
【0046】
一方、ケース2において、比較例に係る弁座体105では、第1の部位k1に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第2の部位k2に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っていない。一方で、第3の部位k3に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθと、第4の部位k4に作用する半径方向の応力σおよび周方向の応力σθとは釣り合っている。この計算結果から、ケース2において、弁座体105の第2の封止部S2よりもZ1側に作用する内外圧の不均衡が生じていることがわかる。
【0047】
上記数値計算1の結果から明らかなように、本発明に係る弁座体5は、閉弁状態において軸線方向Zに亘って内圧と外圧とが均衡する。これにより、弁座体5が変形したり破壊したりする大きさの応力が弁座体に作用せず、弁座体5の変形や破壊が抑制される。このように弁座体5は、肉厚を大きくしたり、より高強度材料を用いたりすることなく、弁座体5の形状により耐圧性が高められている。逆の観点からは、本発明に係る弁座体5と比較例に係る弁座体105とに同じ流体圧に耐えうる仕様が要求されるときに、本発明に係る弁座体5は比較例に係る弁座体105よりも強度の低い材料で構成したり肉厚を薄くしたりすることができる。
【0048】
(数値計算2)
上記数値計算1では、本発明に係る弁座体5の第1,2の封止部S1,S2の軸線方向Zの位置は重複している。但し、弁座体5の形状に制約がある場合などは、第1,2の封止部S1,S2の軸線方向Zの位置をずらさねばならないこともある。そこで、数値計算2では、第1,2の封止部S1,S2の軸線方向Zの位置がずれている弁座体5について応力計算を行った。図8に示す弁座体5の数値計算モデルでは、第1の封止部S1の軸線方向Zの位置は第2の封止部S2の軸線方向Zの位置よりもZ2側にある。第1の封止部S1の軸線方向Zの位置と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置とは近接していて、第2の封止部S2は第1の封止部S1の軸線方向Zの位置と弁座体5の高圧側(ここではZ1側)の端部の軸線方向Zの位置との間にある。ここで、弁座体5の第2の封止部S2から第1の封止部S1までの軸線方向Z間の領域を「内外圧不均衡領域ΔL」という。閉弁状態の弁装置20において、弁座体5の内外圧不均衡領域ΔLでは、内周面に一次圧P1が作用し、外周面に二次圧P2が作用する。一次圧P1が二次圧P2より高い場合に領域ΔLは内圧負荷の状態となり、一次圧P1が二次圧P2より低い場合に領域ΔLは外圧負荷の状態となる。
【0049】
数値計算2では、弁座体5の内外圧不均衡領域ΔLが内圧負荷の場合と外圧負荷の場合とにおいて、弁座体5に加わる応力の大きさをそれぞれ計算した。図8に示すように、弁座体5の数値計算モデルは、大小2つの内径を有する厚肉円筒体であって、大径部51の内径(半径)がr1であり、シール部材58の最小径(半径)がr2であり、r2=2×r1である。この弁座体5の数値計算モデルの第2の封止部S2は、第1の封止部S1よりもZ1側に位置している。そして、第1の封止部S1と第2の封止部S2に挟まれた内外圧不均衡領域ΔLにおいて内周面に位置する第5の部位k5および外周面に位置する第6の部位k6を計算対象部位とした。各計算対象部位に関し、内外圧不均衡領域ΔLが内圧負荷(一次圧P1がp1で二次圧P2が0)の場合と、内外圧不均衡領域ΔLが外圧負荷(一次圧P1が0で二次圧P2がp2)の場合とにについて、半径方向の応力σ、周方向の応力σθおよび最大主せん断応力τをそれぞれ算出した。応力の大きさの計算では、前述の数値計算1と同様に、弁座体5を図7に示すような内周の半径がr1で外周の半径がr2の厚肉円筒に見立て、数式1〜3に示す式を利用した。次の表2では、上記数値計算2の計算結果を示している。
【0050】
【表2】

【0051】
上記計算結果において、内圧負荷時の一次圧P1と外圧負荷時の二次圧P2とが等しいと仮定したときに、外圧負荷時の方が内外圧不均衡領域ΔLに大きな圧縮応力が作用することとなる。したがって、第1,2の封止部S1,S2の軸線方向Zの位置をZ1側またはZ2側へ大きくずらす場合には、閉弁状態の弁座体5に作用する内圧と外圧が不均衡な部分において内圧が外圧よりも大きくなることが条件となる。閉弁状態の弁座体5において内外圧不均衡領域ΔLが内圧負荷となるためには、第2の封止部S2の軸線方向Zの位置が、第1の封止部S1の軸線方向Zの位置よりも高圧側(一次圧側)であればよい。なお、第1の封止部S1の軸線方向Zの位置と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置が近接していることがよい。第1,2の封止部S1,S2の軸線方向Zの位置の変位量は、弁座体5に加わり得る最大の流体圧、弁座体5の構成材料等に応じて、弁座体5の内外圧不均衡領域ΔLに作用する内圧と外圧の差によって弁座体5が変形や破壊しない範囲内で適宜定められる。なお、外圧負荷となる場合であっても、弁座体5の構成材料が考慮された上で内外圧不均衡領域ΔLが十分に小さく設定されれば、弁座体5に作用する内圧と外圧の差により生じるために十分な強度を備えることができる。
【0052】
[実施の形態1]
ここで、図9を参照しつつ、本発明に係る弁装置20の好適な実施の形態1について説明する。図9は実施の形態1に係る弁装置の基準軸線に平行な断面図である。実施の形態1に係る弁装置20Aは、供給側から排出側へ流れる流体の流路に設けられ、供給側から供給される一次側の流体の二次側への排出を制御する電磁式開閉弁である。
【0053】
弁装置20Aは、ハウジング21と、弁体4と、電磁駆動機構23と、弁座体5とを備えている。弁装置20Aは、基準軸線Lを有し、ハウジング21、弁体4、電磁駆動機構23、および弁座体5は、その軸線が基準軸線Lと一致するように配置されている。以下では、基準軸線Lに沿う軸線方向Zにおいて、図9の紙面上方を「Z1向き」又は「Z1側」、紙面下方を「Z2向き」又は「Z2側」という。
【0054】
ハウジング21には、弁室31、一次通路32、および二次通路33が形成されている。弁室31は、基準軸線Lに沿って形成された円柱状の空間であって、Z1向きに開放された開口21aを有する。この開口21aを通じて弁室31へ弁体4が挿入されている。弁室31には、一次通路32の下流側が接続されている。一次通路32は、基準軸線Lと交わる向きに延びるように形成されている。一次通路32の上流側の開口は一次ポート32Aであって、供給側と連通している。一方、弁室31のZ2側の端面には、二次通路33の上流側が接続されている。二次通路33は、基準軸線Lに沿って延びるように形成されており、その孔径は弁室31の孔径より小径である。二次通路33の下流側の開口は二次ポート33Aであって、排出側と連通している。上記構成の一次通路32、弁室31及び二次通路33により、一次ポート32Aと二次ポート33Aとを繋ぐ弁通路が形成されている。
【0055】
弁座体5はエンジニアリングプラスチック製であって、基準軸線Lを中心線とする厚肉円筒形状を有する一体品である。弁座体5は、Z2側の端面が弁室31のZ2側の端面と接触し且つ外周面が弁室31の内周面と近接するように弁室31内に配置されている。弁座体5は、弁室31の内径とほぼ等しい外径を有している。弁座体5の外周面には、シール部材配置部としてのシール溝59が設けられている。シール溝59は、弁座体5の外周面において周方向に連続し、弁座体5の外周面のZ1側を弁座体5の軸線方向Zの中途部まで切り欠くことにより段差部として形成されている。シール溝59にはシール部材58が配置され、このシール部材58により、弁座体5の外周面と弁室31の内周面とが封止されている。このようにシール部材58によって封止されている弁室31の内周と弁座体5の外周との間を「第2の封止部S2」と呼ぶこととする。
【0056】
弁座体5の厚肉円筒の内周には、Z1側の大径部51と、Z2側の小径部52とが軸線方向Zに連続して設けられている。弁座体5の大径部51内は、弁体4が収容される弁体室55の一部分を形成しており、一次通路32側と連通している。また、弁座体5の小径部52内は弁体室55内と二次通路33側と連通している連通路50である。大径部51から小径部52へ内径が変化する段差面53の内周縁に弁座部54が設けられている。弁座部54の軸線方向Zの位置は、シール溝59の軸線方向Zの位置と重複しているかまたは近接している。
【0057】
弁体4は、軸線方向Zに延びる柱状体であって、軸線方向Zに変位可能に弁室31に挿入されている。弁体4は、軸線方向Zにおいて弁室31と一次通路32とが接続されている辺りで縮径している。そして、弁体4は弁座体5の大径部51内に進入しており、弁体4には弁座体5の弁座部54に着座する弁部41が形成されている。弁体4は、弁部41が弁座部54に着座して弁通路を閉塞する閉弁位置と、弁部41が弁座部54から離れて弁通路が開放される開弁位置との間で移動することができる。
【0058】
弁体4は、弁部41が設けられた弁体部25と、該弁体部25のZ1側に接合された可動鉄心部26とで構成されている。弁体部25は、非磁性材料、例えば非磁性のステンレス鋼により構成されている。一方、可動鉄心部26は、磁性材料、例えば耐腐食性に優れた電磁ステンレス鋼などにより構成されている。
【0059】
上記構成の弁体4は、円筒形状のガイド部材30に内挿されている。ガイド部材30は、ハウジング21に対して基準軸線Lを軸として相対回動不能となるように、弁室31内に螺着されている。ガイド部材30のZ2側の端面は、弾性部材62および均圧部材61を介して、弁座体5のZ1側の端面を押圧している。このように弁座体5が弁室31の底面とガイド部材30との間に挟まれることによって、弁室31内で弁座体5の位置が保持されている。ガイド部材30は、ハウジング21の開口21aからZ1向きに突出しており、この突出部分を包囲するように電磁駆動機構23が設けられている。
【0060】
電磁駆動機構23は、ガイド部材30に外嵌されたボビン35と、ボビン35に巻き付けられたコイル36と、ボビン35及びコイル36を外周側から被覆するソレノイドケーシング27と、強磁性体から成る固定磁極29とを備えている。コイル36の内側には、弁体4の可動鉄心部26が位置している。固定磁極29は、ガイド部材30へZ1側から挿入されており、固定磁極29のZ2側の端面は弁体4のZ1側の端面と対向している。対向する固定磁極29と可動鉄心部26とは、間隔をあけて配置され、それらの間には、圧縮コイルばね37が設けられている。圧縮コイルばね37は、可動鉄心部26をZ2向きに押圧している。これにより、弁体部25の先端部に位置する弁部41が弁座体5の弁座部54に押し付けられる。
【0061】
上記構成の弁装置20Aでは、コイル36に電流が流れると、磁気力を発生して可動鉄心部26及び固定磁極29が磁化される。これにより、可動鉄心部26が固定磁極29に磁気吸引され、弁体4がガイド部材30に案内されながらZ1向きに移動する。やがて弁体部22aが弁座部54から離脱し、弁通路が開かれる。なお、弁体4は、Z1側の端面が固定磁極29に当接する開位置までZ1向きに移動し続ける。コイル36に流れていた電流を止めると、固定磁極29及び可動鉄心部26に作用していた磁気力がなくなり、圧縮コイルばね37の付勢力により弁体4が弁座部54へ向って押圧される。これにより、弁体4がZ2向きに移動し、やがて弁部41が弁座部54に着座して弁通路が閉じられる。弁体4が閉弁位置にあるときに、弁座部54に着座した弁部41により封止されている弁座体5と弁体4との間を「第1の封止部S1」と呼ぶこととする。
【0062】
閉弁状態の弁装置20Aにおいて、弁座体5の外周のうち、第2の封止部S2よりZ1側には一次圧(一次ポート32A側の流体圧)が作用し、第2の封止部S2よりZ2側には二次圧(二次ポート33A側の流体圧)が作用している。また、閉弁状態の弁座体5の内周のうち、第1の封止部S1よりZ1側の大径部51には一次圧が作用し、第1の封止部S1よりZ2側の小径部52には二次圧が作用している。閉弁状態の弁装置20Aでは、第1の封止部S1と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置は重複しているかまたは近接しているので、弁座体5に作用する内圧と外圧とが軸線方向Zに亘って均衡している。この結果、弁座体5に、弁座体5を変形や破壊させる応力が生じないか、生じたとしても弁座体5を変形や破壊させる大きさとはならない。
【0063】
なお、上述の実施の形態1では、弁装置20Aは電磁力により弁体4を移動させるように構成された電磁弁であるが、弁装置20Aは電磁弁に限定されない。例えば、弁装置20Aは、モーターで駆動される電動弁であってもかまわない。或いは、上述の実施形態では、弁装置20Aは電磁式開閉弁であるが、本発明に係る弁装置は電磁式開閉弁に限定されない。例えば、電磁式開閉弁とは異なる流体制御弁に、本発明に係る弁装置を適用させることもできる。さらに、上述の実施形態では、弁装置20Aにおいて弁座体5の供給側(一次ポート32A側)に弁体4を設けているが、弁座体5の排出側(二次ポート33A側)に弁体4を設ける構成としてもよい。さらに、上述の実施形態において、供給側(一次ポート32A側)と排出側(二次ポート33A側)が、入れ替わる構成としてもよい。
【0064】
[実施の形態2]
続いて、図10および図11を参照しつつ、本発明に係る弁装置20の好適な実施の形態2について説明する。図10は実施の形態2に係る弁装置(開弁状態)の基準軸線に平行な断面図であり、図11は図10に示す弁装置(閉弁状態)の基準軸線に平行な断面図である。実施の形態1に係る弁装置20Aは電磁式開閉弁に適用されているが、実施の形態2に係る弁装置20Bは過流防止弁に適用されている。過流防止弁は、通常時は開弁して流体を一次側から二次側へ流出させる一方、所定流量以上の流体が流れた場合には閉弁して流体の流出を遮断する流量制御弁である。弁装置20Bは、例えば、ガスボンベに加圧状態で貯蔵されているガスをガス使用機器へ供給するガス通路に設けられ、弁装置20Bはガスボンベ99の開口部99aに挿入されている。ガス使用機器の一例は燃料電池であって、この場合、ガスボンベには超高圧(最大で70MPa程度)の水素ガスが貯えられている。
【0065】
弁装置20Bは、弁体4、弁座体5、蓋体6および付勢体7を備えている。弁装置20Bは、基準軸線Lを有し、弁体4、弁座体5、蓋体6および付勢体7は、その軸線が基準軸線Lと一致するように配置されている。以下では、基準軸線Lに沿う軸線方向Zにおいて、図10の紙面右方を「Z1向き」又は「Z1側」、紙面左方を「Z2向き」又は「Z2側」という。なお、流体はZ1側からZ2側へ流れ、Z1側が一次側(供給側)、Z2側が二次側(排出側)となる。
【0066】
弁座体5は、金属製のネジ状部材であって、基準軸線Lを中心線とする厚肉円筒形状を有している。弁座体5は、ガスボンベ99の開口部99aにZ1向きに嵌め込まれている。弁座体5の外周には、シール部材配置部としてのシール溝59が設けられている。シール溝59は、弁座体5の外周において周方向に連続する環状凹部に形成されている。シール溝59にはシール部材58が配置され、シール部材58によってハウジング8の内周と弁座体5の外周との間のガスの流通が阻止されている。このようにシール部材58によって封止されている開口部99aの内周と弁座体5の外周との間を「第2の封止部S2」と呼ぶこととする。なお、本実施の形態に係るシール部材58は、O−リングである。
【0067】
弁座体5の厚肉円筒の内周面は、Z1側の大径部51と、Z2側の小径部52とが設けられている。大径部51と小径部52とは軸線方向Zに連続しており、大径部51から小径部52へ内径が変化する段差面に弁体4の弁部41が着座する弁座部54が設けられている。弁座部54の軸線方向Zの位置は、シール溝59の軸線方向Zの位置と重複している。弁座体5の大径部51内は、弁体4が収容される弁体室55の一部分を形成している。また、弁座体5の小径部52内は、弁体室55と二次側とを接続する連通路50である。
【0068】
弁座体5のZ1側の端面には、Z2向きに蓋体6が嵌め込まれている。蓋体6は、弁座体5のZ1側の端面に開口する大径部51に栓をする形で嵌め込まれており、弁座体5と蓋体6とにより形成される内部空間に弁体4を収容する弁体室55が設けられている。蓋体6の基準軸線Lが通過する部分には一次側から弁体室55内へ流体を流入させる流入口66が設けられている。
【0069】
弁体4は、弁座体5と蓋体6とにより形成された弁体室55に、軸線方向Zに摺動可能に収容されている。弁体4は、軸線方向Zを軸方向とする円柱体であって、Z2側の端面に弁座体5に設けられた弁座部54に着座する弁部41が設けられている。弁体4内には、蓋体6の流入口66と連続する内部通路42が形成されており、流体を内部通路42から弁体室55へ流入させる。また、弁体4の外周には、弁体室55内から連通路50へ向けて流体を通過させる外部通路43(溝)が形成されている。弁体4は、付勢体7によりZ1向きに付勢されている。つまり、弁体4は、付勢部材である付勢体7により開弁する向きに付勢されている。なお、本実施の形態において、付勢体7として圧縮コイルバネが用いられている。
【0070】
上記構成の弁装置20Bにおいて、蓋体6に設けられた流入口66から所定流量未満の流体が流入している場合には、弁体4の外部通路43を流体が通過することによって生じる圧力損失が小さいため、弁体室55内に設けられた弁体4は、付勢体7の付勢力によって弁座部54には着座しない。つまり、流入口66と連通路50とが連通された、開弁状態(非動作状態)となっている。開弁状態では、流入口66から流入した流体は、弁体4の内部通路42を通って弁体室55内へ流入し、弁体4の外部通路43を通過して連通路50へ流入し、連通路50を通って外部へ流出する。一方、弁装置20Bにおいて、流入口66から所定流量以上の流体が流入した場合には、弁体4の外部通路43を流体が通過することによって生じる圧力損失が大きくなるため、弁体室55内に設けられた弁体4は付勢体7の付勢力に抗してZ2向きに移動し、弁部41が弁座部54に着座する。これにより、流入口66と連通路50とは非連通となる、すなわち、閉弁状態(動作状態)となる。弁装置20Bが閉弁状態のときに、弁座部54に着座した弁部41により封止されている弁座体5と弁体4との間を「第1の封止部S1」と呼ぶこととする。
【0071】
弁装置20Bが閉弁状態のときに、二次側の圧力(二次圧)は大気圧程度まで低下するが、一方で、一次側の圧力(一次圧)は高圧が維持される。弁装置20Bが閉弁状態のときに、弁座体5の内周のうち、第1の封止部S1よりZ1側の大径部51には一次圧が作用し、第1の封止部S1よりZ2側の小径部52には二次圧が作用する。また、弁座体5の外周のうち、第2の封止部S2よりZ1側には一次圧が作用し、第2の封止部S2よりZ2側には大気圧が作用する。弁装置20Bでは、第1の封止部S1の軸線方向Zの位置と第2の封止部S2の軸線方向Zの位置とが重複するか若しくは近接している。したがって、閉弁状態の弁座体5では、内圧と外圧とが軸線方向Zにわたって均衡している。この結果、弁座体5が変形したり破壊したりする大きさの応力が弁座体5に作用せず、弁座体5の変形や破壊が抑制される。このように弁座体5の耐圧性を、肉厚を大きくしたり特別な高強度材料を用いたりすることなく、弁座体5の形状によって高めることができる。そして、このように高い耐圧性を備えた弁座体5を具備する弁装置20Bは、従来よりも高圧の流体の流れに配置することが可能である。
【0072】
上記実施の形態では、第1の封止部S1と第2の封止部S2とが軸線方向Zに重複する位置に設けられているが、第1の封止部S1と第2の封止部S2との軸線方向Zの位置をずらしても弁座体5が耐高圧性を備える場合がある。図12は図10に示す弁装置の変形例を示す図である。例えば、図12に示す弁装置20Bでは、第2の封止部S2の軸線方向Zの位置が、第1の封止部S1の軸線方向Zの位置よりもZ1側(高圧側)にある。したがって、閉弁状態の弁装置20Bでは、軸線方向Zにおいて弁座体5の第1の封止部S1と第2の封止部S2との間に内外圧不均衡領域ΔL1が形成される。この内外圧不均衡領域ΔL1において、弁座体5の内周面に一次圧が作用し、外周面に二次圧が作用する。一次圧は二次圧と比較して著しく高いので、内外圧不均衡領域ΔL1では内圧負荷の状態となる。弁座体5に内外圧不均衡領域ΔL1が存在するが、閉弁状態の内外圧不均衡領域ΔL1が内圧負荷であることと、弁座体5の内径と外径に径差があることと、弁座体5の周囲は剛性の高い部材で囲まれていることとから、弁座体5に作用する内圧と外圧との差が著しく大きくなっても、弁座体5が変形したり破壊したりする大きさの応力が弁座体5に作用せず、弁座体5の変形や破壊が抑制される。
【0073】
[実施の形態3]
続いて、図13を参照しつつ、本発明に係る弁装置20の好適な実施の形態3について説明する。図13は実施の形態3に係る弁装置の基準軸線に平行な断面図である。実施の形態3に係る弁装置20Cは、実施の形態2に係る弁装置20Bと同様に、過流防止弁に適用されている。弁装置20Cは、例えば、ガスボンベに加圧状態で貯蔵されているガスをガス使用機器へ供給するガス通路に設けられ、弁装置20Cはガスボンベ99の開口部99aに挿入されている。ガス使用機器の一例は燃料電池であって、この場合、ガスボンベには超高圧(最大で70MPa程度)の水素ガスが貯えられている。
【0074】
弁装置20Cは、弁体4、弁座体5、蓋体6、付勢体7、およびハウジング8を備えている。弁装置20Cは、基準軸線Lを有し、弁体4、弁座体5、蓋体6および付勢体7は、その軸線が基準軸線Lと一致するように配置されている。以下では、基準軸線Lに沿う軸線方向Zにおいて、図13の紙面右方を「Z1向き」又は「Z1側」、紙面左方を「Z2向き」又は「Z2側」という。なお、流体はZ1側からZ2側へ流れ、Z1側が一次側(供給側)、Z2側が二次側(排出側)となる。
【0075】
ハウジング8は、基準軸線Lを中心線とする厚肉円筒形状を有している。ハウジング8は、ガスボンベ99の開口部99aにZ1向きに嵌め込まれている。ハウジング8の外周には、シール部材配置部としてのシール溝89が設けられている。シール溝89は、ハウジング8の外周において周方向に連続する環状凹部に形成されている。シール溝89にはシール部材88が配置され、シール部材88によって開口部99aの内周とハウジング8の外周との間のガスの流通が阻止されている。このようにシール部材88によって封止されている開口部99aの内周とハウジング8の外周との間を「第3の封止部S3」と呼ぶこととする。なお、本実施の形態に係るシール部材88は、O−リングである。
【0076】
ハウジング8の厚肉円筒の内周面は、Z1側の大径部81と、Z2側の小径部82とが設けられている。大径部81と小径部82とは軸線方向Zに連続している。ハウジング8の大径部81内は、弁座体5が収容される弁座室83である。また、ハウジング8の小径部82内は、弁座室83と二次側とを接続している連通路84である。
【0077】
弁座体5は、金属製のネジ状部材であって、基準軸線Lを中心線とする厚肉円筒形状を有している。弁座体5は、ハウジング8の大径部81にZ2向きに嵌め込まれている。弁座体5の外周には、シール溝59が設けられている。シール溝59は、弁座体5の外周において周方向に連続する環状凹部に形成されている。シール溝59の軸線方向Zの位置は、ハウジング8のシール溝89の軸線方向Zの位置と重複しているかまたは極めて近接している。シール溝59にはシール部材58が配置され、シール部材58によってハウジング8の内周と弁座体5の外周との間のガスの流通が阻止されている。このようにシール部材58によって封止されているハウジング8の内周と弁座体5の外周との間を「第2の封止部S2」と呼ぶこととする。なお、本実施の形態に係るシール部材58は、O−リングである。
【0078】
弁座体5の厚肉円筒の内周面は、Z1側の大径部51と、Z2側の小径部52とが設けられている。大径部51と小径部52とは軸線方向Zに連続しており、大径部51から小径部52へ内径が変化する段差面に弁体4の弁部41が着座する弁座部54が設けられている。弁座部54の軸線方向Zの位置は、シール溝89,59の軸線方向Zの位置と重複しているかまたは極めて近接している。弁座体5の大径部51内は、弁体4が収容される弁体室55の一部を構成している。また、弁座体5の小径部52内は、弁体室55と二次側(弁座室83)とを接続する連通路50である。
【0079】
弁座体5のZ1側の端面には、Z2向きに蓋体6が嵌め込まれている。蓋体6は、弁座体5のZ1側の端面に開口する大径部51に栓をする形で嵌め込まれており、弁座体5と蓋体6とにより弁体4を収容する弁体室55が形成されている。蓋体6の基準軸線Lが通過する部分には一次側から弁体室55内へ流体を流入させる流入口66が設けられている。
【0080】
弁体4は、弁座体5と蓋体6とにより形成された弁体室55に、軸線方向Zに摺動可能に収容されている。弁体4は、軸線方向Zを軸方向とする円柱体であって、Z2側の端面に弁座体5に設けられた弁座部54に着座する弁部41が設けられている。弁体4内には、蓋体6の流入口66と連続する内部通路42が形成されており、流体を内部通路42から弁体室55内へ流入させる。また、弁体4の外周には、弁体室55内から連通路50へ向けて流体を通過させる外部通路43(溝)が形成されている。弁体4は、付勢体7によりZ1向きに付勢されている。つまり、弁体4は、付勢部材である付勢体7により開弁する向きに付勢されている。なお、本実施の形態において、付勢体7として圧縮コイルバネが用いられている。
【0081】
上記構成の弁装置20Cにおいて、蓋体6に設けられた流入口66から所定流量未満の流体が流入している場合には、弁体4の外部通路43を流体が通過することによって生じる圧力損失が小さいため、弁体室55内に設けられた弁体4は、付勢体7の付勢力によって弁座部54には着座していない。つまり、流入口66と連通路84とが連通された、開弁状態(非動作状態)となっている。開弁状態では、流入口66から流入した流体は、弁体4の内部通路42を通って弁体室55内へ流入し、弁体4の外部通路43を通過して連通路50へ流入し、連通路50を通過して弁座室83へ流入し、連通路84を通って外部へ流出する。一方、弁装置20Cにおいて、流入口66から所定流量以上の流体が流入した場合には、弁体4の外部通路43を流体が通過することによって生じる圧力損失が大きくなるため、弁体室55内に設けられた弁体4は付勢体7の付勢力に抗してZ2向きに移動し、弁部41が弁座部54に着座する。これにより、流入口66と連通路84とは非連通となる、すなわち、閉弁状態(動作状態)となる。弁装置20Cが閉弁状態のときに、弁座部54に着座した弁部41により封止されている弁座体5と弁体4との間を「第1の封止部S1」と呼ぶこととする。
【0082】
弁装置20Cが閉弁状態のときに、二次側の圧力(二次圧)は大気圧程度まで低下するが、一方で、一次側の圧力(一次圧)は高圧が維持される。弁装置20Cが閉弁状態のときに、ハウジング8の内周のうち、第2の封止部S2よりZ1側の大径部81には一次圧が作用し、第2の封止部S2よりZ2側の大径部81および小径部82には二次圧が作用する。また、ハウジング8の外周のうち、第3の封止部S3よりZ1側には一次圧が作用し、第3の封止部S3よりZ2側には大気圧が作用する。同様に、弁座体5の内周のうち、第1の封止部S1よりZ1側の大径部51には一次圧が作用し、第1の封止部S1よりZ2側の小径部52には二次圧が作用する。また、弁座体5の外周のうち、第2の封止部S2よりZ1側には一次圧が作用し、第2の封止部S2よりZ2側には二次圧または大気圧が作用する。
【0083】
弁装置20Cでは、第1,2,3の封止部S1,S2,S3が軸線方向Zに重複する位置に配置されている。よって、閉弁状態のハウジング8および弁座体5では、内圧と外圧とが軸線方向Zにわたって均衡している。この結果、ハウジング8および弁座体5が変形したり破壊したりする大きさの応力がハウジング8および弁座体5に作用せず、ハウジング8および弁座体5の変形や破壊が抑制される。このようにハウジング8および弁座体5の耐圧性を、肉厚を大きくしたり特別な高強度材料を用いたりすることなく、ハウジング8および弁座体5の形状によって高めることができる。そして、このように高い耐圧性を備えたハウジング8および弁座体5を具備する弁装置20Cは、従来よりも高圧の流体の流れに配置することが可能である。
【0084】
上記では、第1,2,3の封止部S1,S2,S3が軸線方向Zに重複する位置に配置されているが、これらの軸線方向Zの位置をずらしても弁装置20Cが耐圧性を備える場合がある。以下、実施の形態3に係る弁装置20Cの変形例1,2について説明する。
【0085】
図14は図13に示す弁装置の変形例1を示す図である。図14に示す弁装置20Cでは、第1,2の封止部S1,S2の軸線方向Zの位置は重複しているが、第3の封止部S3の軸線方向Zの位置はそれらよりもZ1側(高圧側)にある。したがって、閉弁状態の弁装置20Cでは、軸線方向Zにおいてハウジング8の第3の封止部S3と第2の封止部S2との間の領域が内外圧不均衡領域ΔL2となる。このハウジング8の内外圧不均衡領域ΔL2では、内周面に一次圧が作用し、外周面に二次圧が作用する。一次圧は二次圧と比較して著しく高いので、内外圧不均衡領域ΔL2では内圧負荷の状態となる。このように、ハウジング8に内外圧不均衡領域ΔL1が存在するが、閉弁状態の内外圧不均衡領域ΔL1が内圧負荷であることと、ハウジング8の内径と外径に径差があることと、ハウジング8の周囲は剛性の高い部材で囲まれていることとから、ハウジング8に作用する内圧と外圧との差が著しく大きくなっても、ハウジング8が変形したり破壊したりする大きさの応力がハウジング8に作用せず、ハウジング8の変形や破壊が抑制される。
【0086】
図15は図13に示す弁装置の変形例2を示す図である。図15に示す弁装置20Cでは、第3の封止部S3が第2の封止部S2よりのZ2側に位置し、第2の封止部S2より第1の封止部がZ2側に位置している。つまり、弁装置20Cの封止部は内側から外側に向けて順にZ1側(高圧側)にずれて配置されている。よって、閉弁状態の弁装置20Cでは、軸線方向Zにおいてハウジング8の第3の封止部S3と第2の封止部S2との間の領域が内外圧不均衡領域ΔL3となる。このハウジング8の内外圧不均衡領域ΔL3では、内周面に一次圧が作用し、外周面に二次圧が作用する。同様に、軸線方向Zにおいて弁座体5の第2の封止部S2と第1の封止部S1との間の領域が内外圧不均衡領域ΔL4となる。この弁座体5の内外圧不均衡領域ΔL4では、内周面に一次圧が作用し、外周面に二次圧が作用する。一次圧は二次圧と比較して著しく高いので、内外圧不均衡領域ΔL3とΔL4はいずれも内圧負荷の状態となる。このように、弁座体5とハウジング8に内外圧不均衡領域ΔL3,ΔL4が存在するが、閉弁状態の内外圧不均衡領域ΔL3,ΔL4が共に内圧負荷であることと、弁座体5およびハウジング8の内径と外径に径差があることと、弁座体5およびハウジング8の周囲は剛性の高い部材で囲まれていることとから、弁座体5およびハウジング8に作用する内圧と外圧との差が著しく大きくなっても、弁座体5およびハウジング8が変形したり破壊したりする大きさの応力が弁座体5およびハウジング8に作用せず、弁座体5およびハウジング8の変形や破壊が抑制される。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0088】
例えば、上述の実施の形態1では、弁座体5はエンジニアリングプラスチックで構成されている。但し、実施の形態1に係る弁座体5はエンジニアリングプラスチック以外の合成樹脂で構成されていても良い。この場合であっても、弁座体5はその形状により従来の弁座体105と比較して弁の閉止時に高い流体圧に耐えうることができる。換言すれば、弁座体5と従来の弁座体105とを同じ圧力条件で使用する場合、弁座体5をより強度の低い樹脂で構成することが可能となり、気密性の確保とコストの削減を両立できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、高圧流体を封止する樹脂製の弁座体を具備する弁装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 第1の封止部
2 第2の封止部
3 第3の封止部
4 弁体
41 弁部
5 弁座体
6 蓋体
7 付勢体
8 ハウジング
20,20A,20B,20C 弁装置
21 ハウジング
23 電磁駆動機構
31 弁室
32 一次通路
33 二次通路
50 連通路
51 大径部
52 小径部
53 段差面
54 弁座部
55 弁体室
58,88 シール部材
59,89 シール溝(シール部材配置部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体が着座する弁座部を有する厚肉円筒状の弁座体であって、
前記弁座体の外周に設けられた第1のシール部材配置部と、
前記弁座体の内周に設けられた大径部および小径部と、
前記大径部と前記小径部の間に設けられた弁座部とを備え、
前記大径部は、当該大径部に軸線方向から進入する前記弁体の外径よりも大きい内径を有し、
前記小径部は、前記弁体の外径よりも小さい内径を有し、
前記第1のシール部材配置部の前記軸線方向の位置は、前記弁座部の前記軸線方向の位置と重複する又はその重複する位置よりも高圧側にある、弁座体。
【請求項2】
前記第1のシール部材配置部に配置される第1のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第1のシール部材の前記弁座体の外周との接触部の前記軸線方向の位置と、前記弁座部の前記軸線方向の位置とが重複する、請求項1に記載の弁座体。
【請求項3】
前記第1のシール部材配置部に配置される第1のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第1のシール部材の前記軸線方向の高さ範囲内に、前記弁座部の前記軸線方向の位置が含まれる、請求項1に記載の弁座体。
【請求項4】
前記弁座体における前記第1のシール部材配置部の前記軸線方向の位置が、前記弁座体における前記弁座部と前記弁座体における高圧側の端部との間にある、請求項1に記載の弁座体。
【請求項5】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容された請求項1〜4のいずれか一項に記載の弁座体と、
前記弁座体の前記弁座部へ着座する閉位置と前記弁座部から離れた開位置との間を前記軸線方向に移動可能に設けられた弁体と、
前記弁座体の前記第1のシール部材配置部に設けられて前記ハウジングと前記弁座体との間を封止する第1のシール部材とを備えた、弁装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、厚肉円筒形状をなし、その内周に設けられた前記弁座体の収容部と、その外周に周方向に連続して設けられた第2のシール部材配置部とを有し、
前記第2のシール部材配置部の前記軸線方向の位置は、前記第1のシール部材配置部の前記軸線方向の位置と重複する又はその重複する位置よりも高圧側にある、請求項5に記載の弁装置。
【請求項7】
前記第2のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第2のシール部材の前記軸線方向の高さ範囲と、前記第1のシール部材が流体圧を受けて圧縮変形したときの当該第1のシール部材の前記軸線方向の高さ範囲とが、少なくとも一部重複している、請求項6に記載の弁装置。
【請求項8】
前記ハウジングにおける前記第2のシール部材配置部の前記軸線方向の位置が、前記弁体部における前記第1のシール部材配置部と前記ハウジングにおける高圧側の端部の間にある、請求項6に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−77906(P2012−77906A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18447(P2011−18447)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】