説明

弁装置

【課題】シール部へのダストの噛み込みが起こり、弁箱の下方より水蒸気が上昇してきてシール部へ湿気を与えるため、同シール部にダストが付着し易くなる。
【解決手段】弁箱1の上部からシール部5へ向けて気体を強制的に送給する第1パージ機構6と、弁箱1の下部から同弁箱1の下方開口1bに向けて気体を送給する後述の第2パージ機構7とを備える。第1パージ機構6は、ホッパー2の側面に設けたパージ用気体供給口6aと、流入管3の長手方向に沿って外設された気体供給路6bと、該気体供給路6bと連通すべく同流入管3の下部側に外設された環状通路6cと、シール部5に形成されたパージ用ノズル6dとから構成される。第2パージ機構7は、弁箱1の下位に付設されたパージ用気体供給口7aと連通し同弁箱1の傾斜面1aに周設された環状通路7bと、傾斜面1aに沿って平行に開放されるべく形成されたパージ用スリット7cとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として高温の鉄鉱石粒や粉体等のダストを含む流体(以下、単に高温粉粒体という)が通過する弁箱を備えた弁装置の改良に関し、更に詳しくは、バルブの開閉作動時に生ずるシール部へのダストの噛み込みを防止してシール面の高温損傷を回避することができるのみならず、弁装置の下方より上昇してくる水蒸気にてシール部が湿気を帯びてしまうことに起因する弊害、すなわち、ダストが付着し易くなるといった不都合をも解決した有用な弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、斯かる弁装置としては、放熱性を有する壁面からなる気密性弁箱と、該弁箱の略中央に配設された第1の弁体を備えた弁箱を二分割可能な隔壁と、前記弁箱に流体を導く流入管と、該流入管の開口部を弁箱の入口で遮蔽可能な第2の弁体と、前記弁箱から流体を排出する排出管と、該排出管開口部を遮蔽可能に配設された第3の弁体と、前記流入管の外周に摺動可能に挿嵌され、前記弁箱内で流入管開口部と排出管開口部とを接続する摺動管と、該摺動管を駆動する駆動機構と、前記摺動管を待避収納する補助室とを備えている。
【特許文献1】特開平6−17943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特開平6−17943号公報に開示されている弁装置にあっては、シール面の高温損傷を回避できるため、良好なシール状態を長期間に亘って保持できるといった利点を有するものの、昨今にあっては、バルブの開閉作動時にシール部へのダストの噛み込みを防止して高温粉粒体とガスとをより完全に遮断できる弁装置が要望されている。
【0004】
特に、弁箱の下方より水蒸気が上昇してきてシール部へ湿気を与えるため、この湿気でシール部にダストが付着し易くなるといった問題があり、シートにダメージを与えるのみならず、気密性をも阻害してしまう一凶になっている。
【0005】
本発明はこのような従来の要望に鑑みてなされたもので、バルブの開閉作動時にシール部への湿気の流入やダストの噛み込みを防止して高温粉粒体とガスとをより完全に遮断できる有用な弁装置の提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の如き従来の問題点を解決し、所期の目的を達成するため本発明の要旨とする構成は、気密性の弁箱と、該弁箱の略中央に配設された流入管と、該流入管の下端開口に開閉自在に設けられた弁体と、該弁体と前記流入管とを気密に封止するシール部とを備えてなる弁装置において、前記弁体の一部若しくは全部にダスト溜まりを設けてなる弁装置に存し、延いては、前記流入管の外周に、弁体のシール部に向けて強制的に気体を送給せしめる第1パージ機構を備えてなる弁装置に存する。
【0007】
また、前記弁箱の上部及び/又は下部に、弁体のシール部若しくは弁箱の下方開口に向けて気体を噴出せしめる第2パージ機構を設けるのが良い。
【0008】
更に、前記シール部は、流入管のダスト流入路より外側に位置するように同流入管の外周若しくはその延長上に設けるのが良い。
【0009】
また、前記弁体は、ボール弁、エキセントリック弁若しくはスイング弁であるのが良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成され、弁体の一部若しくは全部にダスト溜まりを設けたことによって、特に上流側に付設されているバルブを全閉してダストを含む流体を、一旦、止めた後、次のガスシールを目的としたバルブを閉める時、上流側に残存していた少量のダストが落下しても、前記弁体のダスト留まりで受け止めることができる結果、シール部にまでダストが行かないため、従来の如き同シール部へのダストの付着や噛み込みを防止できるといった優れた効果を奏するものである。
【0011】
また、前記流入管の外周に、弁体のシール部に向けて気体を強制的に送給する第1パージ機構を備えたことによって、シール部へのダストの噛み込みを防止することができるといった効果を奏するものである。
【0012】
更に、前記弁箱の上部及び/又は下部に、弁体のシール部若しくは弁箱の下方開口に向けて気体を噴出せしめ第2パージ機構を設けたことによって、仮令、弁箱の下方より水蒸気が上昇してきても、パージ機構から噴出する気体が同水蒸気を押し返すため、シール部に湿気を与えることがなく、従来の如きシール部へのダストの付着を減滅することができるといった効果を奏すると共に、弁箱内への水蒸気の流入をも防止することができる。
【0013】
更に、前記シール部は、流入管のダスト流入路より外側に位置するように同流入管の外周若しくはその延長上に包持することによって、シール部が流入管からの輻射熱や高温粉体に直接晒されることがないため、高温で歪んだりダストによる摩耗で劣化することがない。
【0014】
このように本発明の弁装置は、高温粉粒体とガスとをより完全かつ確実に遮断して、弁箱内への湿気や粉粒体の流入、シール部でのダストの噛み込み、残留(堆積)に伴う作動不良を皆無とする他、構成が単純であるため、大量生産に適し、価格も低廉なものとして需要者に提供できるなど、本発明を実施することはその実益的価値が甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
弁体の一部若しくは全部にダスト溜まりを設けると共に、前記流入管の外周に、弁体のシール部に向けて気体を強制的に送給する第1パージ機構を設け、更には、前記弁箱の上部及び/又は下部に、弁体のシール部若しくは弁箱の下方開口に向けて気体を噴出せしめる第2パージ機構を設けるのが良い。
【実施例】
【0016】
次に、本発明の第1実施例を図1〜図3を参照しながら説明する。図中Aは、本発明に係る弁装置であり、この弁装置Aは、所望大きさの弁箱1と、該弁箱1の上位に連通されホッパー2と、該ホッパー2の中心開口に設けられた流入管3と、該流入管3の下端開口に開閉自在に設けられた弁体4と、該弁体4を封止するシール部5とを備えている。
【0017】
前記弁箱1は、例えば、上部、下部、両側部、正面及び背面がいずれも断熱材を施してない放熱性及び気密性を有する鋼鈑から成形されており、弁箱1の上部からシール部5へ向けて気体を強制的に送給する第1パージ機構6と、弁箱1の下部から同弁箱1の下方開口1bに向けて気体を送給する後述の第2パージ機構7とを備えている。
【0018】
第1パージ機構6は、前記ホッパー2の側面に設けたパージ用気体供給口6aと、流入管3の長手方向に沿って外設された気体供給路6bと、該気体供給路6bと連通すべく同流入管3の下部側に外設された環状通路6cと、後述するシール部5に形成されたパージ用ノズル6dとから構成されている。
【0019】
従って、斯かる第1パージ機構6は、前記ホッパー2の側面に設けたパージ用気体供給口6aから供給される気体を、図2に示すように、気体供給路6b、環状通路6c、パージ用ノズル6dを経てシール部5へと強制的に送給することができるものである。
【0020】
一方、弁体4は、流入管3に臨む側(上面)にダスト溜まり4aが凹設された逆エキセントリック弁からなり、図3に示すように、基軸4b側が弁軸8に回動自在に支承され、エアシリンダ(図示せず)の力を介して開弁(全開)位置では流入管3の側面に待避し、閉弁位置では後述する環状のゴムシート5bと当接して流入管3を気密に遮蔽するものである。
【0021】
シール部5は、流入管3の下端開口に突設された環状の弁座5aと、該弁座5aに包持されたゴムシート5bと、該ゴムシート5bの近傍に連通するパージ用ノズル6dとを備えている。
【0022】
ゴムシート5bは、流入管3の流下位置よりも外側に位置すべく同弁座5aの内周壁面5a で囲繞さ れるように包持されているため、流入管3からの輻射熱や高温粉体に直接晒されることがない。
【0023】
他方、第2パージ機構7は、弁箱1の下位に付設されたパージ用気体供給口7aと、該パージ用気体供給口7aと連通し同弁箱1の傾斜面1aに周設された環状通路7bと、一端側が該環状通路7bに連通し他端側が同傾斜面1aに沿って平行に開放されるべく同傾斜面1aの外周と座部7dとの間に形成されたパージ用スリット7cとから構成されており(図2(b)参照)、弁箱1の下方開口1bに向けて気体が噴出できるように工夫されている。
【0024】
このように構成される第1実施例の弁装置は、まず、バルブの閉作動時に生ずるダストを弁体4のダスト溜まり4aで受けることができると共に、第1パージ機構6で、気体をパージ用気体供給口6a、気体供給路6b、環状通路6c及びパージ用ノズル6dを介してシール部5(詳しくは、ゴムシート5b)へと吹き込むことができるため、同ゴムシート5bへのダストの噛み込みを防止することができる。
【0025】
しかも、弁箱1の下部には、同弁箱1の下方開口1bに向けて気体を噴出せしめる第2パージ機構7を設けているため、仮令、同弁箱1の下方より水蒸気が上昇してきても、パージ用スリット7cから噴出する気体が同水蒸気を押し返すため、シール部5に湿気を与えることがなく、弁箱1内への水蒸気の流入をも防止することができる。
【0026】
次に、本発明の第2実施例を図4乃至図5を参照しながら説明する。尚、理解を容易にするため、前述した第1実施例と同一部分は同一符号で示し、構成の異なる処のみを新たな番号を付して以下に説明する。
【0027】
図4中、9,9は、弁箱1の上方に設けられた水平隔壁1cに形成された左右一対のパージ用ノズルであり、このパージ用ノズル9,9は、弁箱1の上位に形成された第1パージ機構6を構成する気体供給路6a,6aの環状通路6a ,6a に連通しており、同気体供給路6a,6aから強制的に供給される気体を同弁箱1の下方開口1bに向けて噴出させるもので、比較的小さな弁箱1の場合に適するパージ機構である。
【0028】
次に、本発明の第3実施例を図6を参照しながら説明する。尚、理解を容易にするため、前述した第1実施例と同一部分は同一符号で示し、構成の異なる処のみを新たな番号を付して以下に説明する。
【0029】
図6は、エキセン弁を示す弁装置であり、弁体4は、デスクホルダー4cにデスク4dを支持させてなり、上面にダスト溜まり4aが凹設してある。
【0030】
また、デスク4dには、ゴムシート押え5cを介して環状のゴムシート5bが付設されており、斯かるシール部5に向けて後述するパージ用ノズル6d,6dが臨んでいる。
【0031】
弁箱1には、第1パージ機構6と第2パージ機構7とが付設されている。第1パージ機構6は、パージ用気体供給口6aと連通する環状通路6a を介してパージ用ノズル6d、6dが形成されている。換言すれば、前記パージ用気体供給口6aから強制的に供給される気体が、環状通路6a を介してパージ用ノズル6d、6dに至り、ゴムシート5bに向けて勢い良く噴出するのである。
【0032】
一方、第2パージ機構7は、パージ用気体供給口7aと連通する環状通路7bを介してパージ用ノズル9が形成されており、弁箱1の下方開口(図示せず)に向けて気体を勢いよく噴出せしめるものである。
【0033】
尚、本発明の弁装置は、本実施例(第1乃至第3実施例)に限定されることなく、本発明の目的の範囲内で自由に設計変更し得るものであり、本発明はそれらの全てを包摂するものである。
【0034】
例えば、弁体4としては、本実施例で示したエキセントリック弁、エキセン弁のみならず、ボール式弁、スイング弁にも採用できるものであり、本発明はこれらの全てを包摂するものである。
【0035】
また、弁箱1,流入管3の内周面に、それぞれ断熱材(図示せず)をライニングさせて、高熱が外部に漏れ難くしても良い。
【0036】
更に、本発明の弁装置に水冷式や空調式等の冷却手段を採用しても良く、また、弁体4の駆動機構としてエアシリンダや油圧シリンダを用いても良い。尚、本弁装置は、本実施例で示した粉粒体以外の流体にも適用できることは云うまでもない。
【0037】
また、本発明の弁装置を他の弁装置と組み合わせて使用できることは云うまでもなく、例えば、図7に示すように、上段弁としてダストの流量をコントロールするダストコントロール弁装置(弁形式:エキセントリック弁)11を、中段弁としてダストの流れを止めるダストカット弁装置(弁形式:エキセントリック弁)12を、下段弁としてガスをシールするガスシール弁装置(弁形式:スイング弁)13を組み合わせてダスト排出装置を構成しても良い。
【0038】
因に、斯かるダスト排出装置を開弁する際は、下段弁(全開)、中段弁(全開)、上段弁(中間開)の順で開弁し、閉弁する際は、上段弁、中段弁、下段弁の順で全閉するものである。
【0039】
また、上段弁は、ダストの流量をコントロールすることとダストの大きな流れを止めることを目的とする。中段弁は、上段弁を閉じても(上段弁はシール面が摩耗しているため)、ダストの流れは完全に止められないため、同弁を閉じてダストの流れを止めることを目的とする。
【0040】
更に、下段弁は、ガスをシールすることを目的とするものであり、中段弁を閉じてダストの流れを止めても弁箱1や流入管3の壁部に付着している少量のダストが落下してくることがあるが、この時、本発明のダスト溜まり4aが有効に働くことは云うまでもない。尚、図中14は散水ノズル、15はスクレーバ、16はパグミル、17は除塵器本体である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る弁装置の第1実施例(エキセントリック弁式)を示す要部断面図である。
【図2】図2(a)は同弁装置のシール部におけるパージ用ノズル(第1パージ機構)を示す要部拡大断面図、図2(b)は同弁装置の下方開口におけるパージ用ノズル(第2パージ機構)を示す要部拡大断面図である。
【図3】同弁装置で使用する弁体の支承状態を示す要部断面図である。
【図4】本発明に係る弁装置の第2実施例を示す要部断面図である。
【図5】同弁装置で使用する弁体の支承状態を示す要部断面図である。
【図6】本発明に係る弁装置の第3実施例(エキセン弁式)を示す断面図である。
【図7】本発明に係る弁装置を組み合わせたダスト排出装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 弁箱
1a 傾斜面
1b 下方開口
2 ホッパー
3 流入管
4 弁体
4a ダスト溜まり
4b 基軸
4c デスクホルダー
4d デスク
5 シール部
5a 弁座
5a 内周面
5b ゴムシート
5c ゴムシート押え
6 第1パージ機構
6a パージ用気体供給口
6a 環状通路
6b 気体供給路
6c 環状通路
6d パージ用ノズル
7 第2パージ機構
7a パージ用気体供給口
7b 環状通路
7c パージ用スリット
7d 座部
8 弁軸
9 パージ用ノズル
10 ダストパージ用エア供給ポート
11 ダストコントロール弁装置(上段弁)
12 ダストカット弁装置(中段弁)
13 ガスシール弁装置(下段弁)
14 散水ノズル
15 スクレーバ
16 パグミル
17 除塵器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性の弁箱と、該弁箱の略中央に配設された流入管と、該流入管の下端開口に開閉自在に設けられた弁体と、該弁体と前記流入管とを気密に封止するシール部とを備えてなる弁装置において、前記弁体の一部若しくは全部に、ダスト溜まりを設けたことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記流入管の外周に、弁体のシール部に向けて気体を強制的に送給する第1パージ機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記弁箱の上部及び/又は下部に、弁体のシール部若しくは弁箱の下方開口に向けて気体を噴出せしめる第2パージ機構を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項4】
前記シール部は、流入管のダスト流入路より外側に位置するように同流入管の外周若しくはその延長上に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の弁装置。
【請求項5】
前記弁体は、ボール弁、エキセントリック弁若しくはスイング弁であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−275081(P2006−275081A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91244(P2005−91244)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000221524)東鉄工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】